未来・第178号


            未来第178号目次(2015年6月18日発行)

 1面  国会審議は拒否すべきだ
     戦争法案反対で4千人
     6月7日 大阪

     川内原発を動かすな
     福岡集会に1万5千

     治安弾圧の強化ねらう
     司法取引と盗聴法    

 2面  寄稿 関西大学法学部教授 高作 正博
     動き出した戦争法案(下)
     後方支援から戦争当事国へ

     解説《国会闘争のために》
     拡大する自衛隊の軍事行動
     安保法制の矛盾と破綻

 3面  市東さんの農地裁判控訴審
     違法な不当判決
     

     米軍基地反対運動で3人逮捕
     「白バス」営業をデッチ上げ

     基地は沖縄経済の阻害要因
     沖縄島ぐるみ会議 平良朝敬さんが訴え
     6・6 京都

     追悼
     「相手が諦めるまで闘い続ける」
     藤原好雄さんの逝去を悼む     

 4面  投稿
     社会全体が変質する
     8時間規制撤廃の悪夢

     市民ボランティア奮闘記(2)
     追いつめられた維新
     矢敷 撤

     根津さんら逆転勝利
     「停職6カ月」は違法 東京高裁

     まるで政府広報パンフ
     育鵬社・自由社の教科書

 5面  危険な高浜再稼働
     核廃絶に向けアピール
     5月31日 大阪      

     投稿
     辛淑玉さん大阪で講演
     5・31

     狭山事件再審闘争
     今年こそ最大のヤマ場

     (シネマ案内)
     在日朝鮮人の歴史と生きざま
     『航路(ハンロ)―済州、朝鮮、大阪 ―』
     (監督:キム・ジウン) 2015年/韓国

 6面  寄稿
     戦後70年と〈天皇〉 連載 A
     戦争法案と「八紘一宇」発言
     パワースポットの大流行
     隠岐 芳樹      

             

国会審議は拒否すべきだ
戦争法案反対で4千人
6月7日 大阪

「扇町公園からデモに出発

「戦争法案アカン!」参加者が一斉にメッセージをかかげてアピール
(7日 大阪市内)

6月7日、戦争法案に絶対反対する集会(主催:大阪弁護士会、共催:日弁連、近畿弁護士会連合会)が大阪市内でひらかれ、4千人が参加。安倍政権にたいする怒りのデモが3方向に分かれておこなわれた。
最初に上野千鶴子さん(立命館大特別招聘教授)が発言。上野さんは「戦争法案は憲法違反そのもの。こんなものは審議を拒否すべき。討議して採決に持って行くこと自体が間違っている」と強い怒りを表明。また「自分たちは負ける戦争をなぜ止められなかったのかと親の世代に言ってきた。しかし今度は、『あのとき、あなたは何をしてきたのか』と言われる立場になっている」と自省を込めて指摘した。さらにナチスの迫害に抵抗したマルチン・ニーメラー牧師の有名な言葉を引用し、「『自分には関係ない』と見て見ぬふりをしていたら、自分が迫害されるときには誰も声を挙げてくれる人がいなくなる。戦争法案は決して他人事ではない。今ならまだ引き返せる。闘おう」と訴えた。 最後に、「大阪都構想」を葬った住民投票と同じ5月17日、沖縄では3万5千人の県民大会がおこなわれたことに触れ、沖縄が声をあげ、大阪市民が声をあげたことを讃え、「これからもいっしょに闘おう」と結んだ。
次に全日本おばちゃん党代表代行の谷口真由美さん、ピースボート共同代表の川崎哲さん、日弁連の山岸良太さんが発言。
山岸さんは、埼玉弁護士会と関東弁護士連合会が主催した5月31日の集会に1万人が集まったことを報告。さらに、6月4日の憲法審査会で与野党から推薦された3名の学者がそろって集団的自衛権行使容認は憲法違反であり、後方支援も武力行使と一体だから憲法違反としたことを指摘し、「こんな法律をこの国会で通していいのか」と異議をとなえた。
国会前は連日、抗議行動であふれ、6月24日には全国行動が呼び掛けられている。7月が山場といわれている。国会前行動に参加しよう。

川内原発を動かすな
福岡集会に1万5千

福岡市内に1万5千人(7日)


今夏、再稼働が狙われている九州電力・川内原発の再稼働に反対する「ストップ再稼働! 3万人大集会 in 福岡 〜川内原発のスイッチは押させない!〜」が7日、福岡市内でひらかれ、1万5千人が集まった。主催は、〈原発いらない! 九州実行委員会〉。協賛団体は、さようなら原発1000万人アクション、首都圏反原発連合、原発をなくす全国連絡会、再稼働阻止全国ネットワーク、さようなら原発1000万署名市民の会。福島から、福島原発告訴団団長の武藤類子さんが発言し「(川内原発)再稼働など、福島事故被害者には信じられない」と憤りを表明。川内原発の地元からは鳥原良子さん(川内原発反対連絡協議会会長)が発言。
協賛団体の発言に続き、全国呼びかけ人からは、吉岡斉さん(九州大学大学院教授)、広瀬隆さん(作家)、中嶌哲演さん(福井県小浜市、明通寺・住職)が発言した。
最後に、「川内原発から30キロ圏に位置する9つの自治体を合わせると、その住民の多くは再稼働に大きな不安を抱いており、同意していません。人格権が侵害される具体的な危険があると認められる250キロ圏に生活する九州7県の住民も過半数が再稼働に反対しています。厳重に抗議し、再稼働をやめるよう求めます」という集会宣言を採択してデモ行進にうつった。3コースに分かれ、九電本店などにむけてデモ行進した。

治安弾圧の強化ねらう
司法取引と盗聴法

<秘密保護法廃止へ!実行委員会>が国会前で、盗聴法改悪とマイナンバー制への反対をアピール(8日)

5月26日夜、東京都内で「えん罪をなくせ! 盗聴法の拡大と司法取引の導入に反対する国会議員と弁護士・市民の集い」が200人の参加でおこなわれた。主催は実行委員会。
集会は、ジャーナリストの今井恭平さんの主催者あいさつに続いて、山本太郎参議院議員と小池振一郎弁護士の司会で進められた。刑訴法改悪の問題点について横浜弁護士会の岩村智文弁護士、盗聴法拡大をめぐる問題点について足立昌勝さん、刑事被告人とされた立場から元衆議院議員の鈴木宗男さん、盗聴被害者で元日本共産党国際部長の緒方靖夫さん、司法取引の問題点について新屋達之さん、元衆議院議員の辻恵さん、布川事件元被告の桜井昌司さんらから発言があった。

日弁連が改悪推進に

岩村さんは「『刑事訴訟法等の一部改正法案』は『新時代の刑事司法制度特別部会』の答申を基礎としている。ところが、これまでの捜査、取調べの問題点を何一つ明らかにしていない。数々のえん罪を生み出してきた構造的な問題そのものにメスを入れなければならない。そもそも、現行の刑訴法は日本国憲法を反映したものになっていない。ところが、部会では、憲法について一言も触れていない。」
「憲法に従えば、被疑者、被告人が刑事訴訟手続きの主体でなければならないが、まったくそうはなっていない。こうした現状を前提として、日弁連は、わずかな取調べの可視化と引き換えに改悪推進の側に回った。これは、絶対に許せない。今回の改悪は、治安の強化と警察権力の拡大であり、国民の管理、統制につながる。したがって、戦争法案の国内バージョンである」と刑訴法改悪の狙いを暴露した。

共謀罪と一体の盗聴

足立さんは「盗聴法は、これまでの組織犯罪4類型から、ほとんどすべての一般刑法犯罪に適用を拡大している。」
「その上で、『組織性の用件』を『当該犯罪が、あらかじめ定められた役割の分担にしたがって行動する人の結合体によりおこなわれた…』として、この要件があれば、盗聴できるとしている。これは、何の制限にもならない。一昨年、『秘密保護法』が成立し、共謀罪の独立処罰が認められた。早ければ、秋の臨時国会に共謀罪が上程される。共謀罪捜査のためには盗聴、それも会話盗聴(室内盗聴)が必要で、盗聴法はさらに拡大されることになる。今のうちに、盗聴法改悪に反対しなければなりません」と改悪案の危険性を訴えた。

えん罪の温床

新屋さんは「司法取引は、えん罪の危険性を増大させ、制度化するという問題がある。確かに、『司法取引』はどこの国にもあるが、日本の場合、きわめて特異なものになっている。日本の刑事手続きは取り調べ中心主義で、つまるところ、締め上げて供述をとるというものである。欧米の国々も、取調べはもちろんするが、日本ほどではない。『取り引き』である以上、検察と被告がある程度対等でなければならない(もちろん、現実にはありえないが)。しかし日本では、被告の防御権は不当に制限されており、『司法取引』での検察の権限が強く、そこに警察までが介入してくる。さらに、自らの罪を免れるために、無実の人を引き込んだり、共犯の相手に罪を押し付けたりする可能性が高い。結果、『司法取引』の導入はえん罪の温床になる」と「日本型司法取引」の危険性を明らかにした。

2面

寄稿 関西大学法学部教授 高作 正博
動き出した戦争法案(下)
後方支援から戦争当事国へ

昨年7・1 集団的自衛権の行使容認

周知のとおり個別的自衛権と集団的自衛権の違いは、前者は「自国への武力攻撃」であり、「自国防衛のため」であるのにたいして、後者は「外国への武力攻撃」であり、「自国への攻撃なし」というところにある。
「集団的自衛権は憲法上許されない」というのが、「7・1閣議決定」以前の政府の憲法解釈だ。自衛権行使には次の3要件が求められる。a、日本にたいする急迫不正の侵害がある。b、これを排除するために他に手段がない。c、必要最小限の実力行使にとどまる。以上の3つの要件を満たさなければ自衛隊の武力行使は認められない。
この3要件の大前提となる項目(a)が「わが国と密接に関係のある他国(わが国ではない)に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」に変えられようとしている。「日本に急迫不正の侵害がある」前の段階で、武力行使を目的とした自衛隊の出動をできるようにしようということだ。これが集団的自衛権の行使を容認するポイントとなっている。
しかし、安倍首相は「なぜ集団的自衛権か」ということをはっきりと説明していない。よく言われる理由が、「尖閣諸島を守るため」というものである。しかし、政府の見解では「尖閣諸島は日本の領土」ということになっている。したがって、仮にここで何かが起こっても、個別的自衛権の問題であり、集団的自衛件行使の理由にはならない。
また「米軍による日本防衛を担保するため」だとも言われる。「何かが起こっても、米軍は出てこないかもしれない。そうならないために日本の方から一歩踏み出す必要がある」という考え方である。しかしこの考え方は明らかにおかしい。
ここで、安倍政権がいちばん危惧しているのは「中国の脅威」であろう。しかし、日本がどれだけ踏み出そうと、「アメリカが中国と事を構える」ということはあり得ない。結局、日本はアメリカが始める戦争につき従うだけということになる。
政府が集団的自衛権行使の説明に使っている事例も非現実的である。「避難する日本人を乗せた米軍の艦船を守るためには集団的自衛権の行使が必要」ということを、安倍首相はパネルを使って熱心に説明した。ところが米軍の艦船は外国人を乗せない。過去の経緯でもそのことは明白である。あり得ない想定なのである。
「アメリカに向かう弾道ミサイルを撃ち落とす」という話もある。日本の上空を飛行しワシントンに向かうミサイルを想定しているのである。仮に北東アジア地域からミサイルが発射されたとしよう。その場合、ミサイルは北極圏を経由してアメリカ本土に到達する。日本の上空は通過しないのだ。こうした非現実的な例をあげて集団的自衛権の行使容認を説明するのはまったくおかしい。
百歩も二百歩も譲って、仮に容認が必要であったと想定しても、政府は何をやってもいいのかという問題がある。
「現行憲法下では集団的自衛権の行使はできない」ということを、政府は繰り返し表明してきた。これは確立された憲法解釈である。この解釈を勝手に変えることは、「人による支配」であり、「法による支配」の否定である。日本が法治国家ではなくなるということだ。それがこれからの日本の未来であっていいのか。それを私たちは正面から問わなければならない。

改正手続なき本質的転換

法案審議の過程では、必ず「国会がきちんとチェックするから、安心だ」と「国会承認の重要性」が強調される。しかし、これに簡単に乗るわけにはいかない。
そもそも憲法で「できない」といってきたことと、国会承認で「できる」ということの間には、大きな断絶がある。憲法で「できない」といっていることを、国会で「できる」というのはとうてい許されることではない。立憲的統制と民主的統制とは、まったく意味が違う。
しかも「国会承認」の際、特定秘密保護法によって必要な情報が出されない可能性が高い。それでどうやって事前審査ができるのか。「国会承認」は単なる形式的な手続きになってしまうだろう。そういう形だけの法案がつくられようとしていることを直視しなければならない。
「新たな3要件によって武力行使にきびしく制限が設定されたから、海外派兵は遠のいた」と述べる論者もいるが、このような楽観的な見解に乗っかるのも危険すぎる。法律ができて、それを実際に運用するのは内閣であり、時の政権である。内閣だけが持っている情報に基づいて、「いまが危機だ」とされれば、おそらく国会は承認するだろう。国会審議は形骸化する。そうした現実を無視して、「新3要件」に「歯止め」の役割を期待することはできない。
これらの法案が成立してしまうと、「武力行使を目的とした海外派兵」が認められる。「海外派兵の禁止」と同時に「専守防衛」という柱も失われる。すでに「文官統制」「武器輸出3原則」が廃止された。
「非核3原則」は「陸上には持ち込まない(海上はよろしい)」という密約があり2・5原則、あるいはそれ以下となっているのが現実である。「合憲ではあるが、現時点では認めない」とされているのが「敵基地攻撃」論、「核兵器の保有と行使」論である。この二つについては、さすがに「できない」というのがこれまでの見解だった。しかし、すぐに「その能力は持っておこう」という論が出てくる。
最後に、今回の法案の特徴は「切れ目のない法制」であるということを指摘しておきたい。自衛隊がいきなり海外で戦争に参加するというよりも、最初は「グレーゾーン」での出動からはじまるだろう。続いて「戦争に参加するわけではないが、米艦を守るためにとりあえず出動する」という状況である。これを定めるのが「重要影響事態法」である。出かけた先で米軍が戦争を始めたら、自衛隊は「後方支援」にという形で参加する。「日本周辺」という限定がなくなるため、自衛隊は世界中どこへでも出動可能になる。米軍からの要請があれば、そこから「集団的自衛権の行使」に移行して戦闘に参加するということになる。
まとめると、最初は「グレーゾーン」で出動し、それから後方支援、そして集団的自衛権による戦争参加へと突き進む。これが「切れ目のない行動」の実態であろう。自衛隊は一度出動したら、後は適用する法律の根拠が代わるだけで、軍事行動はつぎつぎと拡大し、あっという間に戦争当事国の軍隊となる。
自衛隊の行動に「切れ目」がなくなると同時に、憲法との「裂け目」は拡大の一途となる。(おわり)

解説《国会闘争のために》
拡大する自衛隊の軍事行動
安保法制の矛盾と破綻

後方支援は安全か

海外派兵恒久法(国際平和支援法)と周辺事態法の改定(重要影響事態法)で、戦争中の米軍等への「後方支援」を定める。法案で「後方支援」と呼ぶ弾薬や燃料の補給などは、国際的には兵站(ロジスティクス)と呼ばれる。「後方支援」という言葉自身が日本政府の造語である。兵站は、戦時国際法で軍事攻撃の目標にされる。
現代戦には前方・後方の区別はない。前方でないから「安全」というのは欺瞞である。防御が弱い兵站部隊を狙うのが戦闘の常道で、その危険性は戦闘部隊より大きい。兵站任務に当たる部隊は戦闘部隊を指揮する指揮官が統一して指揮する。したがって「武力行使と一体でない後方支援」などありえない。米「海兵隊教範」では、兵站について、「武力行使と一体不可分の中心構成要素」と位置づけている。政府は「情勢が急変し、安全とされた地域が危険になった場合、予定していた補給を中断して撤収する」と国会で答弁しているが、そのような「敵前逃亡」や「裏切り」に等しい行為を、米軍など「支援」の対象となる軍が認めるはずがない。

「武器使用」の拡大

従来、政府は、「武器の使用」と「武力の行使」を区別し、「自己防護」のための「武器使用」は「自己保存のための自然権的権利」であり、憲法9条1項で禁じる「武力の行使」に当たらないとしてきた。しかし国連など国際的公式文書には、“Use of force”には「自己防護」に該当する活動での武器使用などもすべて含み、Use of weapons”などという用語は用いられない。
戦争法案はこの「武器使用」を拡大することを狙っている。「自己防護」(自己保存型と武器等防護のための武器使用)に限ってきたものを、PKO法改定案では、「任務遂行型の武器使用」(「業務を妨害する行為を排除する」ための武器使用)も認めている。ゲリラ活動の「排除」はもちろん、一般住民にたいする監視なども「武器の使用」の範囲に含めようとしている。まさに「武装占領業務」そのものではないか。

「事態」の乱用

戦争法案には6つの「事態」が登場する。
@武力攻撃事態=日本が直接武力攻撃を受ける。
A武力攻撃切迫事態=武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している。
B武力攻撃予測事態=事態が緊迫し、武力攻撃が予測される。
C重要影響事態=そのまま放置すれば、日本への武力攻撃にもつながりかねない。周辺事態法から地理的制約をはずし、支援対象も米軍以外に拡大する。
D存立危機事態=日本が攻撃を受けていなくても、日本と密接な関係がある他国が武力攻撃されると集団的自衛権を行使し、海外の戦争に参加する。
E国際平和共同対処事態=自衛隊の海外派遣を随時可能にする新たな恒久法「国際平和支援法」に基づいて他国軍の後方支援をおこなうケース。
このように「事態」を乱立させているが、「重要影響事態」と「存立危機事態」との違いを答弁に立った大臣も区別できないありさまである。
全体として、「事態」の定義を明確にせず、自衛隊出動、派兵の無限の選択権を政府に与えようとしている。(O)

3面

市東さんの農地裁判控訴審
違法な不当判決


12日、東京高裁小林昭彦裁判長は、突然1週間前に判決日を通知した上に、三里塚芝山連合空港反対同盟の市東孝雄さんの農地7200uを成田空港会社に明け渡せという不当判決を強行した。弁護団による裁判長忌避申立中の判決は違法で、無効である。市東さんと弁護団はただちに上告して闘う決意を表明した(写真)

米軍基地反対運動で3人逮捕
「白バス」営業をデッチ上げ

6月4日、大阪府警本部警備部公安三課は、「道路運送法違反」容疑で、反戦・市民運動の活動家3人を逮捕した。さらに、4日、5日の両日で全国10数カ所の個人宅、事務所などに家宅捜索をおこなった。
大阪府警は、京都府京丹後市に建設された近畿初の米軍基地(Xバンドレーダー基地)に反対するため、昨年9月28日、現地で開催された全国集会に大阪からバスに乗車した参加者が燃料代や高速料金を頭割りしたことを「白バス」だと強弁。「無許可で運賃を集めて営業行為をした」とするデッチあげだ。
こんな弾圧がまかり通れば、ワゴン車やバスの乗り合いで集会に参加することができなくなる。市民運動への萎縮効果をねらった弾圧である。
6日、抗議行動がおこなわれた。今回のでっち上げ弾圧の前線本部がおかれている大阪府警西警察署前に100人を越える仲間が集まり、警官隊と対峙しながら1時間にわたって抗議行動がくりひろげられた。大阪府警は、3人をただちに釈放せよ。

経産省前でも不当弾圧

東京でも5月28日夜、経産省本館正面入口前の路上で、「原発再稼働反対」の声をあげていた市民3人が、経産省敷地内に足を踏み入れたという口実で、警視庁により「建造物侵入容疑」で「現行犯」逮捕された。抗議の声が拡大するなかで、3人の仲間は、6月8日、釈放された。

基地は沖縄経済の阻害要因
沖縄島ぐるみ会議 平良朝敬さんが訴え
6・6 京都


6月6日、沖縄島ぐるみ会議の全国キャラバンを京都に迎えて、「基地のない平和な沖縄・日本を! 6・6京都集会」が円山公園音楽堂でおこなわれ、650人が参加した。主催は「京都沖縄連帯集会実行委員会」。京都沖縄県人会など3者が共同代表を出して集会実行委を結成。オール京都の陣形で集会はおこなわれた(写真)

12万人が行方不明

開会のあいさつは京都沖縄県人会の大湾宗則さん。そのあと、沖縄島ぐるみ会議共同代表で、かりゆしグループCEOの平良朝敬さんが講演した。
平良さんは、かりゆしグループのこと、沖縄の歴史、経済の実態、基地の実情などをていねいに説明。沖縄戦の戦没者が20万656人で、うち沖縄県民の犠牲が12万2228人とされているが、1940年から45年の間に沖縄の人口が24万7854人減っている。つまり約12万人もの人々が「疎開・移民・自然死等不明」とされ、行方不明となっている現実を示した。

脱基地経済で成長

1951年4月28日のサンフランシスコ講和条約で沖縄は切り捨てられた。「この日を『独立の日』として祝うということは、沖縄の歴史がわかっていない」と安倍首相を激しく批判した。
「米海兵隊は、朝鮮戦争後の1953年に本土に配備されたが、その後1956年に沖縄に移転した。そもそも海兵隊は沖縄でなければならない理由はない。基地は戦後、銃剣とブルドーザーで強制接収された。安倍と沖縄県民の歴史認識は違う。基地は沖縄経済の阻害要因である。脱基地経済が沖縄を成長させてきた。かりゆしグループは観光業であり、観光は平和産業である」と語る平良さんの話は具体的で説得力があった。
平良さんの講演のあと、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の永井事務局長が、最新の京丹後市の米軍基地を取り巻く状況を説明した。
最後に集会宣言が読み上げられ、京都市役所前までにぎやかにデモ行進した。

追悼
「相手が諦めるまで闘い続ける」
藤原好雄さんの逝去を悼む

「もう少し動きたい」

藤原好雄さんが、去る5月17日に逝去されました。1932年に現在の奈良県田原本町で生まれ、享年82歳でした。昨年11月、新たなガンが肺に見つかり、手術をするかどうか迷っておられました。「安倍政権を倒すために、もう少し動きたいから」と、意を決し12月に手術をおこないました。1月には退院され、私たちは安心していたのです。
4月18日、「天理・柳本飛行場跡の説明板撤去について考える会」主催の集会では開会あいさつをおこなうまでに回復されていました。しかし、これが最後の闘いとなってしまいました。私が藤原さんに会えたのも、この集会が最後となりました。
この集会で、藤原さんは今年1月31日に亡くなったワイツゼッカーの「過去に目を閉ざす者は、現在も見えない」という言葉を引用し、強い調子で歴史修正主義を批判していました。安倍政権にたいする怒りでもあり、私の記憶に焼きついています。また、「戦争に反対する我々の闘いは、まだまだ弱い。ガンジーに学び、相手が諦めるまで、とことん闘いぬくことが必要だ。生あるかぎり、私は闘いぬく」と決意を語っておられました。
安倍政権との闘いは藤原さんにとって人生をかけた闘いであり、その途上で逝かれることとなり、さぞかし心残りであったと思います。
そもそも藤原さんとの出会いは、外登法・入管法に反対する集会でした。その集会賛同をいただきにいったのが始まりです。1989年頃であったと思います。1998年に、私たちは有事立法に反対する「なくそう戦争、100万人署名運動・奈良県連絡会」を作りますが、藤原さんは前年にできた日米安保の新ガイドラインに強く危機感をいだいておられ、それで奈良県連絡会の事務局代表になっていただきました。約10年間、藤原さんとともに街頭で署名を集め、ビラをまき、集会をおこなってきました。「沖縄の高江・辺野古につながる奈良の会」として、今日も活動しています。

朝鮮人問題がベースに

藤原さんは、生涯にわたって戦争反対の反戦運動、生産拠点に根ざした労働組合運動、差別に反対する住民運動をおこなってきましたが、藤原さんにとってこれらは一体でした。その背景には朝鮮人問題がありました。柳本飛行場での戦争体験とその朝鮮人強制連行の掘り起こし、戦後の在日朝鮮人の闘いについて、近代の朝鮮侵略・植民地化の歴史について、朝鮮からの渡来人の歴史など、藤原さんはこれらをライフワークとしてこられました。私たちは藤原さんに学習会やフィールドワークの講師をしていただき、これらを教えていただき、学んできました。
戦争反対の運動について、藤原さんは「わしは何も変わっていないのに、いつの間にか周りがいなくなってしまった」と、よく言っておられました。こういうこともあり、新左翼の反戦運動にも理解を示していただき、行動をともにしていただきました。
藤原さんは何よりも運動家であり、実践家でした。闘争現場に足を運ばれました。イラク派兵反対闘争では、迫力あるアジテーションで集会をまとめていました。これらのことを、つい先日のように覚えています。
今年4月27日、再び日米安保のガイドラインが改悪されました。また、戦争法案(安全保障関連11法案)が国会に上程されました。もう少し藤原さんの力を借りたいところでしたが、それも叶わなくなってしまいました。
藤原さんが亡くなられた5月17日、私たちは橋下大阪市長の「大阪都構想」をうち砕きました。戦争法案を廃案にするには60年・70年安保闘争をこえる闘いが必要です。この事については、藤原さんはきっと心残りであったと思います。しかし、その精神は闘う人々の中に生きつづけ、受け継がれていきます。
私たちは藤原さんの遺志を受けつぎ、かならず戦争法案を廃案にし、安倍政権を打倒します。藤原さん、今はしばらく見守っていてください。長い間、ありがとうございました。(寺田 理)

4面

投稿
社会全体が変質する
8時間規制撤廃の悪

5月21日、「反対!!『定額(低額)働かせホーダイ』5・21緊急集会」(在阪法律家8団体共催)が大阪市内で開かれた。メインの竹信三恵子さん(和光大学教授)の講演はたいへんショッキングな内容だった。以下、感想を交えて簡単に報告しておきたい。 週50時間以上の長時間労働者の割合を国別に比較(表)すると、今でも日本は28・1%とダントツに高い。ほぼ3人に1人が長時間労働になっている。超格差社会のアメリカでも20%、オランダはわずかに1・4%、イタリアは4・2%、ドイツは5・3%である。いかに日本の労働者が長時間労働となっているかということである。
こういう状況で8時間労働という規制を外したら、自分を守る大切な「刀」がなくなってしまう。
1999年、女性の労働時間規制が撤廃され、長時間労働が解禁された。その結果、正社員に採用された女性には長時間労働が求められ、それに耐えられない女性はパートや派遣に行くしかなくなった。その後、この巨大な非正規雇用のプールに派遣法の全面改悪等によって男性労働者も大量に放り込まれていった。
内閣府の資料によれば、グローバル化などで工場が外国にどんどん出ていったことにより、2003年から13年までの10年間で男性労働者は全産業で109万人減少し、女性労働者は104万人増加した。男性労働者の減少分を女性労働者がほぼ補っているが、増加した女性労働者の大半は非正規雇用労働者である。男性労働者も相当数が非正規化してきている。日本の雇用状況は近年急速に変わってきている。それだけではない。女性が仮に男性の半分の賃金で働くとすると社会全体でみると労働者に回ってくる賃金は総額として極端に減っていることになる。

子どもの貧困率

OECD平均では1人働き世帯の子どもの貧困率は15%だが、2人で働けば5%に下がる。しかし、日本では1人働き世帯の子どもの貧困率は13%、2人で働いても10%とほとんど変わらない。日本では大多数の労働者が、長時間労働と非正規雇用の巨大なプールに投げ込まれているため、子どもを育てるためには2人で働いても貧困から脱出できない。
だから、男性が過労死するまで働くという悪循環が生まれてくる。さらに残業しても残業代が入ってこないから、さらに事態は悪くなる。労働時間規制を外せば、悪循環が加速し、ものすごい破壊力で社会全体に巨大な変質をもたらすことになる。

外国人家事労働者

いま国は女性が働きに出るように旗を振っている。女性を働かせようと思ったら家事・育児支援は絶対必要である。では誰が家事・育児をするのか。国が考えているのは外国人の家事サービス労働者である。大阪の家事サービス業界は最賃以下で働かせることを打診しているという。なぜなら、最賃以下でないと日本の多くの労働者家庭が外国人を雇えないからというのである。これは日本社会に巨大な新しい貧困層を作ることである。 シンガポールやマレーシアではインドネシアなどの外国人家事労働者はごく普通になっている。しかし、家事労働者に対する虐待がまん延している。虐待があまりにもひどいのでインドネシア政府は家事労働者を全部引き上げた。すると今度はカンボジアから子どもを連れてきて家事労働をさせているという。国家戦略特区の目玉の1つは外国人家事サービス労働の解禁である。特区で解禁し、これを全体に広げていこうというのである。
全国で6つある国家戦略特区で唯一大阪府の松井知事が昨年、外国人家事サービスの解禁に名乗りをあげた。また、こういうあくどい構想を描いているのは派遣最大手のパソナの代表である竹中平蔵だという。
竹信さんは「8時間規制の撤廃は全社会を変質させる」とし、「正規雇用労働者も非正規雇用労働者も、男性も女性も、働いていてもいなくても、自分の問題として考え、都構想を打ち破ったようにオール日本で打ち破ろう」と訴えた。(Y)

市民ボランティア奮闘記(2)
追いつめられた維新
矢敷 撤

「大阪市廃止反対」の市民運動は、原発推進労組の幹部から脱原発派までが「勝手連」として取り組んだ。街宣車に3〜4人が乗り、運転、アナウンス、ハンドマイクで辻説法と見事な役割分担。ビラの受け取りは非常に良かった。

怪しい公明の動き

維新陣営は「没主体」の典型。演説するとボロが出るから、街宣車は橋下の録音テープ。
さていつも動きが怪しい公明党。統一地方選時はプレミアム商品券ビラを配りまくっていたのに、その後は街頭から姿が消滅。投票1週間前に反対派優勢の調査結果が出ると、政党ポスターに「大阪市廃止反対」のシールが。自民党議員と一緒に反対集会をしたところも。
ところがその内の1区で「勝手に動くな」と党本部から叱責があったのか、動きが止まった。それを傍証できる光景を見る機会に恵まれた。

投票前に勝負アリ

また運動員・支持者のガラもよく現れ、維新支持者が街頭で噛み付いてくる数が日増しに増えた。
彼らのほとんどは特別区設置協定書を読んだことがない。二重行政の効果額を最初は4千億と宣伝していたのに実は1億しかなかったことも知らない。「生活が良くなった」という実例を一つも言えない。最後には「橋下さんを信じんかい!」と怒鳴って行ってしまう。
ある日、彼らの街宣車が突進して来た。こちらの車の窓に手をかけて、最終日には手に持った週刊誌を街宣車にぶち当てる者も。手に持ったゴミ取り用ハサミを運動員に突きつけて、「許可証とってるんか!」と絡む自称「清掃ボランティア」も。
最終盤はマイクを持つが、内容で説得するのではなく、「改革のラストチャンス!」「橋下代表のために賛成票を」と叫ぶだけ。「都構想」がいかにデタラメな妄想かを理詰めで辻説法する反対派に比べると、「勝負あった」と実感できたのである。

根津さんら逆転勝利
「停職6カ月」は違法 東京高裁

2007年卒業式で、「君が代」斉唱時の不起立を理由に、都教委から「職務命令違反」とされ、河原井純子さんが停職3カ月、根津公子さんが停職6カ月の処分をうけた。この処分の取消訴訟の控訴審判決が5月28日にあり、東京高裁(第14民事部、須藤典明裁判長)は、都教委による2人への処分は「裁量権の逸脱・濫用」で「違法」と認定、それぞれの処分を取り消し、さらに精神的苦痛に対する慰謝料各10万円の支払いを命じた。
一審東京地裁では、河原井さんの処分を取り消したものの、根津さんの処分は適法とし、両人の損害賠償請求を棄却していた。

裁量権の濫用で違法

控訴審判決は、完全勝利ではないものの、都教委が過去の処分歴を理由に累積加重処分を繰り返し、根津さんを「停職6カ月」処分したのは「裁量権の濫用で違法」と断じた。
同判決は、「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの 二者択一の選択を迫られることとなり、日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」。「職員の懲戒に関する(都の)条例によれば、停職期間の上限は6月とされていて、停職期間を6月とする本件根津停職処分を科すことは、控訴人根津が更に同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、極めて大きな心理的圧力を加える結果になるものであるから、十分な根拠をもって慎重に行われなければならない」。「根津停職処分において停職期間を6月とした都教委の判断は、具体的に行われた非違行為の内容や影響の程度等に鑑み、社会通念上、行為と処分との均衡を著しく失していて妥当性を欠くものであり、 裁量権の合理的な範囲を逸脱してなされた違法」と言い切った。
根津さんは判決直後、にわかには信じられない気持ちで、「聞き間違い?と半信半疑」だったと語り、「私は生きているうちに勝利判決を手にすることができるとは考えてもいませんでした」と、喜びを語った。
都教委は11日、最高裁に上告した。

まるで政府広報パンフ
育鵬社・自由社の教科書

来年から中学で使用する教科書の採択がこの夏に迫るなかで、6月6日、「子どもを戦場に送る教科書はいらない! この夏、育鵬社・自由社教科書採択ストップ! 6・6市民のつどい」が大阪市内でひらかれ150人が参加した。主催は、〈あぶない教科書はいらない! 2015大阪連絡会〉。
主催者から「教科書の採択は8月だが、攻防のヤマは、6〜7月」と提起されたのち、〈子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会〉が、主に育鵬社の歴史・公民教科書の内容を紹介した。
同社の歴史教科書は、過去の日本による植民地支配、侵略戦争を美化し、昭和天皇を「偉大な聖君」と紹介。子どもたちを戦場に駆り立てる記述に。また、公民教科書は、領土問題を大きくとりあげ、近隣諸国との対立を煽る外務省のホームページそのもの。安倍首相の写真が異様に多く掲載されていて、まるで政府広報のよう。日本会議の主張がストレートに反映した内容だ。

大阪市、東大阪市があぶない

講演は、高島伸欣さん(琉球大学名誉教授)が「2015年、中学校教科書採択がもつ歴史的意味〜 今、私たちがなすべきこと」として、採択方法の変更と領土問題の記述に焦点をあてておこなった。
休憩をはさみ、「大阪市の状況と方針」に関する提案、各地からの報告として、東大阪市、茨木市、箕面市、枚方市、堺市、民団青年会から発言があった。
安倍政権が、昨年、教育委員会制度を改悪し、自治体首長が教科書採択に介入できるように変えたこと。大阪市では、教育委員が橋下市長の息がかかった人物で占められ、かつ採択区が全市1区に統合され、育鵬社・自由社の教科書採択が可能となる条件があること。また、前回、育鵬社の公民教科書が採択された東大阪市は、今回、歴史も危ないという状況であるなどが報告された。
教科書展示会はすでに始まっている。市民アンケートは自分の地域でも他の地域でも書くことが可能。ひとつのテーマで1枚書き、何枚でも提出できる。積極的に書きに行こうと呼びかけられた。(N)

5面

危険な高浜再稼働
核廃絶に向けアピール
5月31日 大阪

「NO!再稼働」を掲げ御堂筋を行進

5月31日に大阪市中央公会堂ホールで、集会「高浜原発 NO! 再稼働〜放射能から子どもを守るために〜」が開かれた。脱原発政策実現全国ネットワーク関西・福井ブロックの主催で、参加者は700人。
集会では、安倍政権による原発再稼働の問題点を指摘し、高浜原発再稼働の危険性が明らかにされた。午前中は映画『日本と原発』(監督:河合弘之)が上映された。
『日本と原発』は、原発をなくすために作られた映画であり、河合弘之弁護士の執念がこもった力作だ。大飯原発運転差し止め訴訟判決の意義、反原発運動における裁判闘争の重要性などが確認できる。原発事故後の福島の映像と福島の人々の証言が説得的だ。この映画を観れば原発についての問題点がよくわかるように作られている。

加圧水型原発の危険性

午後は小林圭二さん(元・京都大学原子炉実験所講師)、飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所・所長)、孫崎享さん(元・イラン大使)の3人がそれぞれ講演をおこなった。
小林圭二さんは、「高浜原発の問題点」について講演した。「規制委員会の新規制基準は加圧水型原発にたいして甘くしている」、「加圧水型原発の方がさらに危険である」ことが確認できた。短い講演であったが、再稼働ありきの新規制基準であることを明らかにした。
飯田哲也さんは、「終わりゆく原発の時代」について。「原発がなくても電力供給は不足しない。節電(電気のムダ使いをなくす)が最大のエネルギー転換」であり、「これからの社会は再生可能エネルギーによる分散ネットワーク型」であること、「世界的にも原子力発電は衰退し、太陽光発電が急速に増加している」ことを明らかにした。
孫崎享さんは、「原子力政策と日米関係」について講演。「日本の原発導入の契機はエネルギー問題ではない。核にたいする民衆の反対をつぶすためであった」こと、「日本の安全保障のために原発が必要であるという意見があるが、これはウソだ。核兵器はすでに使えなくなっており、世界の民衆が力を合わせて反対すれば核兵器をなくすることができる」と述べた。

再稼働反対パレード

集会の最後に、宮下正一さん(原子力発電に反対する福井県民会議・事務局長)から「福井と大阪の市民がいっしょになって、再稼働を阻止しよう」という力強いアピールがあった。
なお、集会では丸田恵都子さんのアルパ演奏があった。集会後、5月のさわやかな風が吹くなか、「再稼働反対」を市民に訴え、元気いっぱい難波までパレードをおこなった。

投稿
辛淑玉さん大阪で講演
5・31



5月31日大阪市内で、辛淑玉さん講演会が340人の参加でおこなわれました。
晴天に恵まれ、この日は30度を超える真夏日。歌あり、コントあり、真面目な話ありの熱気あふれるイベントでした。
この講演会は、5・31集会実行委員会とコラボ玉造(『TAMAZO』)の主催で、今回で7回目となります。「3・11」の直後から三里塚の野菜を被災地・福島へ届ける活動に対する公安警察による弾圧への反撃として、「浪花の歌う巨人パギやん」こと趙博さんからの提案で始まりました。
辛淑玉さんは、ヘイトスピーチやマイノリティのことを聴衆が重く感じないように、また内容もよく分かるように活発なテンポで話しました。
講演の後は、パギやんの司会で辛淑玉さん・石丸次郎さん・李信恵さんの鼎談。李信恵さんが東大阪で闘っている教科書問題や在特会への損賠訴訟などを話し、辛淑玉さんのエールを送る発言が印象的でし た。
第2部トップバッター、スタンダップコメディのナオユキがみんなの笑いを取ったあとアジアプレスの石丸次郎さんによるメディアへの報道干渉の実体報告がありました。最後は福島弾圧当該の古河さんから福島報告。福島行きは今回で38回目とのこと。
三里塚から送られてきた採れたての新鮮な無農薬野菜は完売しました。
次回、8回目の講演会は11月22日あべの区民センターで開催することに。盛りだくさんのサプライズを計画。乞うご期待!(大阪K)

狭山事件再審闘争
今年こそ最大のヤマ場


5月21日「狭山事件の再審を求める市民集会」が日比谷野外音楽堂で開かれた。主催は市民集会実行委員会。3千人が参加した。
集会では、組坂繁之・部落解放同盟委員長の開会あいさつの後、石川一雄さんと早智子さんがアピールに立ち、「不当逮捕52年。新証拠をバネに事実調べ・再審開始を実現したい」「今年こそ、今度こそ、最大の山場」「問われているのは裁判長が犯行現場を歩き、自らの目と耳で事実を確認すること」「石川無罪は仲間の支援なくしてはかちとれない」とそれぞれ訴えた。さらに、石川一雄さんは「新証拠で綻びはじめた司法とて油断厳禁再審開始まで」という短歌をしたためた色紙を披露した(写真)

2点の新証拠を提出

弁護団報告では、中山武敏狭山弁護団主任弁護人と中北龍太郎事務局長が、「高検にある証拠の一覧表開示や開示された取調べの録音テープ分析などを積み重ね、たたかいは着実に前進している」「しかし証拠リスト中、44点が未開示だ」「これから浦和地検などが隠し持つ証拠リストの開示を強く求めていく」と報告。また、中北事務局長はこの日、午前中におこなわれた要請行動で、「東京高裁に万年筆など『秘密の暴露』に関する2点の新証拠を提出した」と報告した。そして、「これまで警察は石川さんの書いた略図をもとにして捜索したとしていたが、開示された録音テープの分析から、その略図は改ざんされたことがあきらかだ」と報告した。
連帯アピールでは、足利事件の菅家利和さん、布川事件の杉山卓男さんと桜井昌司さん、袴田事件の袴田巌さん、姉のひで子さん、〈袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会〉がアピール。
高裁前アピールに取り組む仲間もステージにそろい、鴨居の模型やそろいのハッピを着てたたかいの報告と決意をかたり、銀座方面へのパレードをおこなった。(坂田)

(シネマ案内)
在日朝鮮人の歴史と生きざま
『航路(ハンロ)―済州、朝鮮、大阪 ―』
 (監督:キム・ジウン) 2015年/韓国/95分

この映画は在日朝鮮人の問題をテーマにしたドキュメンタリー。
キム・ジウン監督は釜山に在住している。監督はこの映画を作った理由について2点あげている。一つは朝鮮籍の在日朝鮮人が大韓民国に渡航できないという理不尽さ。もうひとつは日本に住む在日朝鮮人の思い・生き様を、韓国や日本社会に伝えたかったから。
主人公の金哲義は奈良に住む朝鮮籍の在日朝鮮人(3世)で、劇団Mayを主宰し、金民樹は大阪に住む韓国籍の在日朝鮮人(3世)で、劇団タルオルムの代表をしている。2009年、2人はUnit航路(ハンロ)という劇団を結成し、在日朝鮮人の歴史、生きざまをテーマに、ともに演劇で自己表現をしている。金哲義にとって朝鮮籍であること、金民樹にとって韓国籍であることは、芸術に対する魂の出発点なのだ。
自分たちの作品を韓国でも上映したいと思っているが、金哲義には渡航許可(旅行証明書)はおりない。映画は、金民樹だけが釜山にむかうシーン(2012年12月)から始まり、この事に対する2人の心の葛藤を追っていく。
金大中、盧武鉉政権時代には、朝鮮籍の在日朝鮮人に対しても部分的ではあるが韓国に渡航できるようになっていた。しかし、2008年に李明博政権になって以降、朝鮮籍の在日朝鮮人には旅行証明書が発給されなくなったのだ。
キム・ジウン監督は「大韓民国という国家が私は恥ずかしい」と言うが、このような事実について共に生きる日本人はほとんど知らないのではないか。日本による植民地支配のなかで在日を余儀なくされた在日朝鮮人にたいして、このような在留資格を作った日本の方がもっと恥ずかしのではないか。
映画は、この2人の演劇活動を追いながら、在日朝鮮人の歴史と生きざまを追ってゆく。済州島に住むキム・ジウン監督がこの問題に関心を持ったのは、かつて祖父・祖母が在日していたからだと言う。また、金哲義の父は済州島の出身であるし、金民樹の両親は晩年に故郷の済州島に永久帰国し、父はここで亡くなっている。
大阪に移住してきた在日朝鮮人は済州島出身が多い。それは、1945年以降の済州島、朝鮮の歴史がおおきく反映されている。この責任はそもそも日本による植民地支配にあるのだ。
2012年12月におこなわれた韓国大統領選挙で、はじめて在外投票が認められた。映画にはこのときのワンシーンがある。金民樹には投票権があるが、金哲義にはない。今回の「大阪都構想」の住民投票においては、何世代にもわたって大阪市に住みながら日本国籍をもっていない在日朝鮮人には選挙権はなく、その自己決定権さえ剥奪されている。この理不尽を、われわれ日本人は問題にしようとしない。在日朝鮮人の歴史と存在について、日本人は知ろうとしない。
これでよいのだろうか。ひとりでも多くの人がこの映画をみて、まず現実を知り、自分の問題として考えてもらいたい。敗戦後70年の今年だからこそ、「戦後とは何だったのか」を検証するためにも、この映画を見る価値は大きいと思う。
映画は7月4日から10日まで、第七藝術劇場にて上映される。(T)

第七藝術劇場
大阪市淀川区十三本町1―7―27
サンポードシティ6F
(阪急「十三」駅西口より徒歩3分)
06―6302―2073

6面

寄稿
戦後70年と〈天皇〉 連載 A
戦争法案と「八紘一宇」発言
パワースポットの大流行
隠岐 芳樹

新しい「安保法制」=戦争法案の国会審議に先立って、安倍首相は自衛隊の海外派兵の条件のひとつに「電力不足」の可能性を挙げている。中東での資源確保を理由にした戦争を想定しているのだ。中谷防衛大臣も参議院外交防衛委員会で「天然ガスとか原子力(の燃料)とか」の輸入の障害を、自衛隊派兵の条件に挙げている。
資源確保のために武力を行使するというのは、帝国主義の論理そのものである。第2次世界大戦は、「持たざる国」=後発帝国主義のドイツ、イタリアそして日本が、資源確保のために仕掛けた戦争だったことを思い出してほしい。
もうひとつ、今回の一連の戦争法案のなかで、「対テロ戦争」が随所に顔を出している。例えば国際平和支援法案の8条には、「捜索救助活動の実施等」というフレーズがある。
サウジアラビアによるシーア派勢力にたいする空爆によって内戦が泥沼化しているイエメンとアデン湾を挟んで面している小国ジブチには、自衛隊が580人の隊員と護衛艦2隻、P3C哨戒機2機を派遣している。これについて軍事ジャーナリストの前田哲男は「名目は海賊対処だが、イスラム国などの武装勢力の情報収集活動をしていると見るのが自然だ。今回の法案が成立すれば、日本は対テロ戦争に直接参戦することになる」と語っている。

対テロ戦争が泥沼化敗北することは必至

安倍首相は「テロリストには指一本触れさせない」と大見得を切っている。われわれは、かつて日本が中国で「匪賊」(ひぞく。侵略戦争に抵抗して闘う人民)を相手に、泥沼の戦争に突入したことを忘れてはいけない。中国人民解放軍の前身である八路軍や新四軍を「赤匪」と呼び、苦戦を強いられた末に敗北したのである。
戦争体制がおしすすめられるなかで、自衛隊員はどんな状況にあるのだろうか。
防衛省は5月27日の衆議院平和安全法制特別委員会で、特別措置法に基づいてインド洋やイラクに派遣された自衛官のうち、帰国後54人が自死していることを明らかにした(内訳は海自25人、陸自21人、空自8人)。アメリカではイラク帰還兵の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が大きな社会問題になっている。専守防衛が原則で海外派兵を前提としていない自衛隊の場合、事態はさらに深刻である。
自衛隊の幹部の間では「若い隊員はいざ危険な任務を命じられれば、絶対に行かないだろう。誰かが死傷するような前例ができた後は、集団で辞めるような事態が生まれるのではないか」という声もでているそうだ。
こうした状況のなかで、民主党などが今回の戦争法案による自衛隊員のリスク増大を問題にしている。それにたいして安倍首相は「木を見て森を見ない議論だ」と反論している。戦争という大義(森)を前にして、自衛隊員の生命などという小事(木)にこだわってはいられない、と言いたいようだ。
開戦に当って動揺した自衛隊員が抗命・離脱する事態に備えて、すでに一昨年4月、自民党の石破幹事長(当時)は軍事法廷(軍法会議)の設置に言及している。やがて憲兵隊が復活することも予想される。

貧困層の増大で補充する自衛隊の泣き所

政府には、辞めていく自衛隊員がいても、すでにアメリカがそうであるように、ワーキングプアで生活設計の目途が立たない若者を除隊後の厚遇をエサに勧誘すれば、十分に補充できるという目論見があるのかも知れない。しかし、その場合でも致命的に欠けるものがある。自衛隊員が生死を顧みずに戦場に赴いて、「敵」を殺すことを自分に納得させるに足る精神的拠り所である。
メディアがそろって嫌中・嫌韓や「北朝鮮(ママ)の非人道的恐怖政治」をあおりたて、政府は「中国の軍事的膨張」や「テロの脅威」を強調している。しかしこの程度では、若者が国家的人殺しに積極的に身を投じるにいたるまで魂を揺さぶるには遠く及ばない。そこにおいて求められるのは、〈天皇〉の登場以外にない。
天皇と皇后は「公務」という名で、「慰問」と「慰霊」に励んでいる。政治家や役人が足を踏み入れようともしないアジア・太平洋戦争の激戦地を訪問して、「英霊」たちへの「慰霊」を重ねている。東日本大震災など災害発生のたびに現地に赴き、首相や担当大臣よりも懇ろに被災者に接している。膝をついて「お心のこもったやさしいお言葉」を掛けている天皇夫妻の姿は、メディアをとおして多くの国民のなかに強く印象づけられている。

天皇の「慰問・慰霊」は戦時下の予行演習

天皇・皇后の「慰問」「慰霊」はやがて、戦地に向けて出撃する自衛隊を訪問し、自衛隊員に直接声を掛けて親しく督励する光景と重なる。戦死者がでるたびに遺族を訪問して「慰霊」の言葉を述べる姿が、今から想像できる。「名誉の戦死」を遂げた自衛隊員は、天皇の裁可を得て霊璽(れいじ)簿にその名が記され、靖国神社に合祀されることになるだろう。
もうひとつ、戦争をする国づくりに欠かせないのは、排外主義に基づいて戦争を賛美する世論の盛り上がりである。
戦争を支持する世論づくりについては、かつて「満州事変」(中国東北部への謀略的軍事行動)を前にして、軍が直接民衆の感情を巧みにあおって侵略に駆り立てた例がある。1930年末から31年夏にかけて、陸軍は全国各地の公会堂や小学校など1866カ所で演説会を開催した。そこに合計約165万5千人の民衆を集めて、つぎのように扇動した。
例えば農村地帯の場合、「今、左翼の組合は農地の解放を要求している。いいだろう。しかし日本は土地が狭くて人口が過剰だから、全耕地を全農家に平等に分配しても、諸君は息子を中学校に、娘を女学校に通わせることはできない。だが広大な満州を失敬(強奪)すれば、諸君は一躍大地主に、つまり旦那衆になれる」とブチ上げたのである。
聴衆は雲の上の存在であり国家を背負って立つ高級将校から直接励まされたのである。1927年の金融恐慌に続く29年の世界大恐慌によって、お先真っ暗のドン底生活を強いられていた民衆は、希望の道を示された思いに駆られた。彼らは入場したときとはまるで別人のような生き生きとした表情で会場を後にしたという。
「満州事変」を起こすに当って、軍首脳部は果して世論が支持してくれるか否か、不安を抱いていた。ところが「事変勃発」の報に接した民衆が「熱狂的(ママ)に歓迎」の声を挙げたので、大いに驚き、喜んだと『偕行社記事』(注1)に記されている。

(注1)陸軍将校の親睦機関「偕行社」の機関誌で、部外秘とされていた。

侵略のスローガンがまかりとおる世の中

今年3月、国会で自民党の参議院議員三原じゅん子が、「八紘一宇(注2)という根本原理のなかに現在のグローバル資本主義のなかで、日本がどう立ち振舞うべきかが示されている」と、耳を疑いたくなるような発言をした。

(注2)第2次大戦中、「大東亜共栄圏」の建設を象徴して用いられたスローガン。初代天皇とされる神武天皇が橿原の宮で即位したとき「八紘(アメノシタ)を掩(オオ)いて宇(イエ)とせん」と宣言したと日本書紀に記されているのがルーツ。天皇による世界の支配を意味する言葉。

この発言に、いまや戦争に向かおうとする日本の姿が鮮明に透けて見える。これを決して、知性の欠けるタレント議員のアナクロニズムと笑ってすませてはいけない。ここに及んで、野党もマスコミも批判を浴びせない風潮こそ危機なのである。
すでに修学旅行で伊勢神宮に参拝する学校があらわれている。改めて説明するまでもないが、伊勢神宮は天皇の祖先とされる天照大神を祭神とし、戦前は国家神道の頂点に君臨して全宗教界を支配する存在であった。
6月に政府は、来年の主要国首脳会議を三重県志摩市で開催すると発表した。安倍首相はその理由を「伊勢神宮は悠久の歴史を紡いできた。日本の精神性に触れていただくには大変良い場所だ」と発言。
「伊勢(神宮)がでてきたら、戦前と同様に日本の宗教界は拝跪してしまうだろう」と言った宗教ジャーナリスト丸山照雄の言葉が頭をよぎる。かつて奈良の橿原神宮(神武天皇が祭神)、京都の桃山御陵(明治天皇が祭神)とともに、修学旅行の定番コースであった。反動化の波に乗って、今後伊勢神宮をはじめとする皇室ゆかりの神社に参拝する修学旅行が増えることが考えられる。
単なる復古や戦前回帰では若者を獲得できない。橿原神宮では特殊な光線で社殿全体をアート化したページェント「神武祭」を催して、若者を引き寄せている。縁結びが売物の出雲大社に向かう女性をターゲットにした寝台特急サンライズ出雲は超人気で、乗車券を手に入れるために長時間待ちだそうである。
最近急増しているテレビの旅番組では、神社の紹介が目立っている。恋愛・結婚願望をくすぐるパワースポット人気をあおって、若者にアピールしようとしているのだ。そこでは神社関係者やガイドが記紀神話(注3)に基づいて、祭神の功徳を説いている。若者たちはその話に素直に耳を傾け、うやうやしく「ご神体」に手を合わせている。

(注3)天照大神などの神々によって日本の国が創建されたとする「古事記」や「日本書紀」の記述に基づく虚偽のイデオロギー。

キミは肯定するか?「美しき日本」を

もうひとつ最近のテレビは、「美しき国日本」とか「昭和は輝いていた」など、ナショナリズムをかきたてる番組がてんこ盛りである。
スポーツの国際大会の報道では、「大和魂」とか「国威発揚」などのフレーズが当り前のように使われるようになった。生活のあらゆる場面をとおして天皇制イデオロギーを浸透させ、それを軸に国民の意識を統合することが、戦争体制確立に向けて支配階級が最も力を入れているところである。