9条を守れ 3万人
安倍政権への怒り大きく
5月3日 横浜
「戦争させない」東京日比谷野音でおこなわれた「9条こわすな!5・12集会」には2800人が参加した |
3万人が参加した憲法集会。戦争法案へ強い危機感がひろがっている(3日 横浜市) |
5月3日、横浜・臨港パークで開かれた「平和といのちと人権を!5・3憲法集会」には、3万人が参加した。今回の憲法集会は共産党系と平和フォーラム系が共同して実行委形式で開催。昨年は、共産党系、平和フォーラム系が別個に開催し、あわせて5千人だったものが、いっきに3万人の大結集となった。安倍政権への民衆の怒りと危機感がはっきりとあらわれた。
集会はプレコンサートのあと、メインステージで呼びかけ人のスピーチがおこなわれた。
最初は雨宮処凛さん(作家)。「格差・貧困と戦争はつながっている。原発労働者など誰かが犠牲となって経済が成立している社会は許されない。戦争に行くのは、結局貧しい人々、安倍政権によって人の命が犠牲となることが生み出されてくるのではないか」と危機感を語った。
安倍演説のウソ
「脱原発が最後の仕事」と語る大江健三郎さん(作家)は「こういう大きな集まりで声を大きくして語るのはこれが最後であろう」と次のように発言した。
「安倍首相が4月29日にアメリカ両院合同会議でおこなった集団的自衛権の法制化を成立させるとした演説は、あまりにも露骨なウソがある。日本はもう『戦争をしない国』ではない。それを超えてアメリカと一緒に世界中に出ていくことになったと説明している。しかし、安倍はこうしたことを日本国内で、国会などで説明したことはあったのか。実際に集団的自衛権を法制化したわけではない。しかしこの安倍発言については、アメリカ内ではそう受け取られており、日本国内でもはっきりとした拒否の言葉が述べられることはない。そういう安倍の宣伝は世界的には成功しているのではないか、そしてまた日本への宣伝として成功しつつあるのではないのか」
「しかし、私たちは集団的自衛権を拒否しており、積極的平和主義を認めてはいない。今日ここにこれだけの人々が集まっている。今日の集会の『私たちは「平和」と「いのちの尊厳」を基本に、日本国憲法を守り、生かします。集団的自衛権の行使に反対し、戦争のためのすべての法制度に反対します…』という言葉は私の考えの基本であり、私の願いでもあります」。
「戦死者ゼロ」
澤地久枝さん(作家)は「安倍という人は、平和やいのちという大切な言葉をあんなに汚くさせた政治家だ」「戦後70年、公式には戦死者ゼロできたが、戦死者ゼロの歴史が変わった年が2015年だったとならないよう」と発言。
樋口陽一さん(憲法学)は、「政治には2つの役割があり、それは民を飢えさせないことと戦争をしないことだ」という俳優・菅原文太さんの遺言を紹介し、「今の政治は憲法と正反対の方に引っ張ろうとしている。歴史をないがしろにしてはならない」と警鐘を鳴らした。
香川リカさん(精神科医)は、原発再稼働、ヘイトスピーチや教育問題などに触れながら、「私たちは今の憲法を使い切ってもいない。活かせてもいない。憲法を使いこなせない政権に憲法を変える資格などない」ときっぱりと断じた。
辺野古新基地反対を
また山本太郎参院議員は「政府のツラをして、根底から変えようとしているこの憲法を何が何でも守っていこう」とアピール。空撮のためヘリコプターに乗り込んでいった。
民主・共産・社民・生活の各党の代表も登壇、そして沖縄から「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代さんが「平和憲法を求めて日本に復帰したが、基地負担はそのまま、憲法などない状態にずっと置かれていた」沖縄を説明、「憲法を守っていくためにも辺野古に新基地をつくらせてはならない」と発言。
3万人の参加者は、辺野古、原発再稼働、貧困と格差、戦争法案など集団的自衛権の法制化など重大な状況を迎えるこの5〜6月への取り組みに向け、集会場を後にした。(神奈川 深津利樹)
大阪市なくすな 橋下倒せ
世代・階層をこえ一つに
「都構想は乗ってはならないワンウェイチケット」5千人の市民が扇町公園に集まった(10日 大阪市内) |
大阪市を5つの特別区に解体するための住民投票日を1週間後に控えた10日昼、「大阪市をなくすな」の思いで、年齢も立場も違う人たちが扇町公園(大阪市北区)に集った。夏を思わせる日差しの中、司会の笑福亭竹林さんの「はしもとー、おまえ、きらいやー」のおたけびで、大阪市をなくすな! 5・10市民大集会が始まった。参加者は5千人。
参加団体には大阪市商店会総連盟、大阪市地域振興会、大阪市がなくなるで! えらいこっちゃの会、大阪市をなくさんといてよ! 市民ネットワーク、大阪労働者弁護団、自民党や共産党など各政党の市会議員団、大阪府保険医協会や大阪府歯科保険医協会など30近い団体が名を連ねた。
都構想は片道切符
最初に大阪市商店会総連盟理事長の角正基さんが代表あいさつ。都構想の勉強会を重ねたうえで市商連として絶対反対の方向を打ち出したことを報告した。
戦後の闇市が乱立していた混乱期から市商連を立ち上げ、大阪の消費安定に寄与してきたことにふれつつ、橋下市長のやり方を「(大阪市職員に)仕事に誇りを持たせ、やる気を起こさせ、モチベーションを上げていく、それも市長の仕事のひとつではないか」と批判し「橋下市長のおかげで大阪市を考える機会を得た。124年の歴史をふまえ、大阪市と市民がどのように歩んできたか。政令指定都市って一体なんやと学べば学ぶほど、絶対に大阪市をなくしてはならないという思いが募るばかりだ。都構想は、乗ってはならない、戻ることのできないワンウェイチケット。片道切符を絶対買ってはだめだ」と訴えた。
同じく代表として大阪市地域振興会会長の北尾一さんがあいさつ。北尾さんは、4月14日、地域振興会の24区の代表が全員一致で大阪市廃止・分割、特別区設置反対を決議したことを知った橋下が「地域振興会をつぶせ」と言ったことに触れて「負けたらもう2度と取り返しはきかない」と参加者に訴えた。
子どもと教育は
このあと市民、各団体、市会議員がアピール。子育て中の母親代表として安居裕子さんが発言した。
「現在、大阪市が中学卒業までの医療助成をおこなっているが、その大阪市がなくなったら医療助成がなくなるのでは」と不安を訴えた。また、教育や保育行政についても「橋下市長は教育費を5倍にしたと言っているが、塾代やタブレットではなく先生方の負担を減らして、子どもたちひとりひとりに手を差しのべる学校づくりこそ、子どもや保護者が求める教育ではないか」と語り、輝かしい未来ばかりを語る「都構想」を信用することはできないと発言した。
障がい者の不安
つづいて「大阪市をなくすな! 障害者連絡会」代表の西尾元秀さんが登壇。西尾さんは「大阪市との話し合いで、地下鉄にエレベーターが設置され、バスもノンステップ化され、無料パス券も発行されて障がい者は外出しやすくなってきた。しかし大阪市がなくなればそういったものがなくなるのではないか」と不安を訴えた。(大阪N)
2面
争点
沖縄基地が中東出撃拠点
自衛隊の海外派兵を許すな(上)
三船 二郎
4月28日、安倍とオバマは、実際に血を流す戦争をするために日米共同声明を出し、ガイドライン(日米防衛協力の指針)の大改悪をおこなった。この直後、日本の多くの政党がこれを批判したが、そのほとんどが「日本が戦争する国になる」という論調にとどまっている。「殺される立場」の被抑圧民族民衆から日本を見た場合、「日本が戦争する国になるから大変だ」ということだけなら「日本の左翼は自分たちのことしか考えていない」ということになるのではないか。被抑圧民族民衆との連帯の重みをみすえたとき、そこから出てくる立場と実践は、「自国帝国主義の打倒」「革命的祖国敗北主義」である。
安倍は今、憲法が禁ずる「集団的自衛権」について実態を先行させようとしている。改憲をめぐる闘いは今まさに眼前で進んでいるのである。血を流す戦争を可能にする戦争法案を絶対許してはならない。戦争のために命まで差し出せという国と巨大資本、辺野古新基地建設のために沖縄に犠牲になれという国と巨大資本、さらには労働法制改悪・社会保障解体を強行しようとする国と巨大資本。われわれは支配階級に対して、「戦争のために命を差し出せというなら、そんな国と巨大資本こそ死すべきである」ときっぱり宣言しなければならない。
T 有志連合参加に対するわれわれの基本的立場
参戦国化した日本
昨年6月、イラクとシリアにまたがるイスラム国の樹立が宣言された直後、アメリカはこれを、帝国主義の中東支配を根底から揺るがすものとして、イスラム国に対する爆撃を開始した。オバマ大統領による「イスラム国を壊滅するための有志連合」の呼びかけにイギリスは即刻参加を表明し、空爆に加わった。同年9月19日、米国防総省はホームページで有志連合参加国を発表。そこで日本も参加国になっていることが明らかになった。
この時点から日本はイスラム国の「敵国」となったのである。同時に、日本人はこの段階でイスラム国の「敵国人」となったのである。
以後、安倍政権はアメリカと共同してイスラム国を壊滅させる行動を積極的に開始していく。安倍の昨年の一連の中東歴訪がまさにそうであった。そして安倍は今年1月17日、エジプト・カイロで「『イスラム国と闘う国』に2億ドル支払う」と発表し、さらに中東地域全体で新たに25億ドル(約2940億円)相当の支援を表明した。
このジャパン・マネーは回りまわってイスラム国の住民たちを殺戮するために使われることになる。
3月20日、自公与党は安保法制を改悪し、中東を含めて地球上のどこであろうと時の政権が必要と判断すれば自衛隊を派兵し、米軍等への直接の弾薬補給や治安維持活動等を可能にすることまで合意した。今回の日米共同声明のもと、5月14日には改悪法案を閣議決定した。
自国政府の敗北のため
われわれの基本的立場は、自衛隊が米軍と一体となっておこなう被抑圧民族民衆の殺戮を絶対許さないということである。闘うムスリム民衆、パレスチナ民衆、中東の民衆と連帯し、自国帝国主義の敗北のために、あらゆる闘い、そして戦争反対の闘いを巻き起こし、安保法制改悪阻止、辺野古新基地建設阻止を含めてあらゆる手段を通して闘うということである。
U イスラム国生成とアメリカの犯罪
イスラム国については二つの要素がある。一つは英仏露による中東分割としてのサイクス・ピコ協定(1916年)〔注1〕の打破を掲げているということである。中東・ムスリム民衆に対する抑圧の根本原因である帝国主義の植民地支配の打破を求めているのだ。帝国主義と植民地主義に反対する彼らの主張は断固支持すべきものである。
イスラム国を考えるときのもう一つの要素は、イスラム主義による国家建設を掲げていることである。イスラム国にかんして伝えられる情報の多くが大手メディアによって意図的に歪曲されたものであることを考えれば、その評価はより慎重になされるべきである。とくに米英などの帝国主義がこぞってイスラム国壊滅のための軍事行動に出ているおり、それを正当化するためにメディアが動員されているという現状をかんがみればなおさらである。
またもし仮に、ムスリム民衆がイスラム主義を乗り越えるとしても、それは内部からの変革によるしかありえない。中東にどのような国家を作るのか、どのように闘うのかは、現にそこに住み、生活し、帝国主義から抑圧を受けている民衆にまずもって決定する権利がある。
パレスチナの闘い
中東の民衆を苦しめているものはサイクス・ピコ協定とイスラエル「建国」を認めたバルフォア宣言(1917年)〔注2〕である。イスラエル「建国」がいかに中東の民衆、とりわけパレスチナの民衆を苦しめ続けているか率直にみすえなければならない。バルフォア宣言もサイクス・ピコ協定もその本質は帝国主義による中東支配という一点で根っこはつながっている。
イスラエルは「建国」以来、どれだけの土地を奪い、どれだけのパレスチナ、中東の民衆を殺戮してきたのか。アメリカをバックとしたイスラエルこそ中東の民衆にたいする抑圧の本体である。イスラエルは昨年7月、ガザに地上軍を送りこみ、病院、学校、発電所等を攻撃し、大人だけでなく子どもたちを意識的に殺戮した。まさに根絶やしにしようというのである。安倍はそのイスラエルと昨年5月、「準軍事同盟」を締結した。われわれは、帝国主義国の人間として安倍とイスラエルを絶対許さず、闘うパレスチナ民衆、中東民衆と連帯し、自国帝国主義の敗北のために全力を挙げるべきである。
アメリカの犯罪
アメリカは2003年、イラクが大量破壊兵器を隠しているとしてイラク侵略戦争に踏み切った。その圧倒的軍事力の前にフセイン政権はわずか2カ月で倒れたが、ムスリム民衆の激しい抵抗闘争が生まれ、それは今も続いている。
2003年のイラク戦争でアメリカは少なく見ても15万人以上のムスリム民衆を虐殺した。しかし、ムスリム民衆は殺されても殺されても抵抗闘争を続け、イラク戦争はついに泥沼化して今日に至っている。引くに引けなくなったアメリカは2009年1月、オバマがイラクからの撤退を掲げて大統領に就任した。米軍は2011年末、イラクから完全撤退した。またオバマは昨年5月、アフガニスタンに駐留する米軍の撤退を2016年末までに完了すると発表した。
考えてもみてほしい。自分の家族、両親、夫、妻、子どもたちを殺したアメリカとその同盟国にイラクの民衆がどういう思いを持つのか。このことを日本人民は直視しなければならない。
ファルージャの虐殺
フセイン政権崩壊後のイラクの民衆抵抗闘争の最大の激戦地になったのがファルージャであった。ファルージャはユーフラテス川左岸に位置しバグダッドの西約60q、人口約25万人の都市である。2004年3月31日、米民間軍事会社ブラック・ウォーターの傭兵4人がファルージャで民衆の怒りで焼き殺され、ユーフラテス川の鉄橋に吊り下げられた。
米ブッシュはただちにファルージャの街を包囲し、メディアが入るのを禁止し、総攻撃をかけた。攻撃は無差別で救急車、学校、病院もすべて攻撃した。医療関係者への攻撃はジュネーブ協定で禁止されているが、米軍はお構いなしに攻撃した。これは国際人道法が禁ずる集団的懲罰である。
この包囲作戦で女性や子どもを含む700人以上の住民が殺され、ファルージャのサッカースタジアムは300人以上の遺体が埋められ集団墓地となった。市内の惨状がメディアによって明らかになると世界で反米機運が高まり、3日間で作戦は中止された。
しかし、その後もイラク民衆、ムスリム民衆の抵抗闘争は激しく続いた。米軍は同年11月、2回目のファルージャ攻撃をおこなった。今度は「皆殺し作戦」である。米軍の資料でも1万人以上を殺している。米軍はこのとき激しい火傷をもたらす非人道的兵器の白リン弾を使った。また化学ガスも使ったとされており、眼球をえぐるなどの激しい拷問もおこなわれた。
継続する抵抗闘争
前述したとおり、イラク民衆、ムスリム民衆は、殺されても殺されても激しい抵抗闘争を続けている。これはかつてのベトナム戦争と同じである。
今年、ファルージャの虐殺から11年になる。当時10歳以下の子どもたちは今、10代後半の青年になっている。彼らは家族を殺した米軍とその同盟国に対する戦闘主力になっている。イスラム国の前身であるタウヒードとジハード集団は2003年、ファルージャで結成された。イスラム国はファルージャの闘いを引き継いでいる。(つづく)
〔注1〕サイクス・ピコ協定
英、仏、露によるオスマン帝国の秘密分割協定。イラク、シリア、ヨルダン、レバノン等の中東の国境線は同協定に由来する。イスラム国は西洋列強が勝手に決めた国境線を自らの手で引き直すことを掲げている。なお、1917年、革命ロシアは同協定を公表し破棄した。
〔注2〕バルフォア宣言
パレスチナにユダヤ人国家を建設することを支持すると表明した英外相宣言。以後、英、米等の支援を受けたシオニストがパレスチナ民衆を追い出し、土地を奪い、殺してイスラエルを「建国」。ここからパレスチナ民衆の苦難と闘いが始まった。
3面
中之島メーデー
労働運動の再生訴え
安倍・橋下との対決鮮明に
労働法制の大改革を阻むことを誓った(1日 大阪市内) |
「過労死を増やすだけの労働法制改悪反対! 戦争の惨禍を繰り返さすな 安倍さん 橋下さん暴走やめて? 大阪市の分割解体は許さん 第86回中之島メーデー」が、5月1日、大阪市内で開催され、600人を越える労働者が参加。デモは、大阪市役所から関西電力本店を経て西梅田公園まで元気よくおこなわれた。
集会に先立って、事務局三団体(連帯労組・全港湾大阪支部・全労協)など各労組は争議職場への行動を取り組み、その後中之島公園剣先ひろばに結集した。
午後1時から始まった集会では全港湾大阪支部委員長・山元一英さんが主催者あいさつ。安倍戦争政権、橋下・維新との対決を危機感をもって訴え「民主主義の内実が問われている。労働運動の戦闘的再生を」と訴えた。
特別アピールを大阪労働者弁護団の丹羽雅雄弁護士がおこない、労働法制改悪は労働組合の存在そのものを解体するものだと発言。
「しないさせない! 戦争協力」関西ネットワークの中北龍太郎さんは、日米首脳会談は戦争国家への道だ、国民的反対運動をと訴えた。
来賓あいさつは、統一地方選で橋下・維新と闘った社民党、新社会党、緑の党、無所属議員、立憲フォーラムから。
東日本大震災支援活動をしている音楽プロジェクトの「RYUSEI&Co.」につづき、争議組合からアピール。JAL不当解雇争議団、全労協、全港湾。連帯労組関生支部は沖縄・辺野古への派遣報告をおこない注目を集めた。「西成でいごの会」がエイサーを披露した。
今回のメーデーには、韓国民主労総の全北地域本部から、初めてアピールが寄せられた。また、東京日比谷、京都、福島県の小名浜、郡山、「闘うヒロシマメーデー」からアピールが届いた。
最後に、メーデー宣言を採択し、好天のなか、デモ行進に移った。デモ終了後、参加者は市内ビアガーデンで盛大な交流会をおこない、今後の団結を強めた。京都や、兵庫県尼崎市でも戦闘的メーデーが闘われた。
今年はメーデーがはじまって125周年。韓国では民主労総4・24ゼネスト(27万人)に続き、5万人のメーデーが朴槿恵打倒・最低賃金1万ウオンなどを掲げ闘われ、韓国労総との6月再度のゼネスト宣言を発した。
東京では、安倍政権との対決の「全面展開」を宣言した日比谷メーデー(日比谷野音)に7千人が集まった。また2日には渋谷で「自由と生存のメーデー2015」が若者たちを中心におこなわれた。全労連系は代々木公園に2万8千人、全国で311カ所17万人が結集と発表。2015年のメーデーは沖縄現地の闘い、非正規職差別とたたかう郵政産業労働者ユニオン全国スト(既報)、東京メトロの闘いに示されるように安倍政権と対決し、労働運動の再生をめざす闘いとなった。(労働者通信員 M)
ダメなものはダメ
民主主義の根本から改憲阻止へ
兵庫 伊丹
講師の話に聞き入る参加者(4日 伊丹市内) |
5月4日、いたみホールで「ダメなものはダメ! 憲法変えるな5・4集会」が900人の参加で開かれた。
集会では実行委員会を代表して北上哲仁さん(川西市議)が「民主主義のあらゆる手段を尽くして憲法改悪を阻止しよう」とあいさつ。参議院議員の水岡俊一さんはここ数年の憲法審査会の危険な動きを報告した。
前半は関西大学教授の高作正博さんが「7・1閣議決定と安保法制の問題点」と題して講演。高作さんは、昨年の閣議決定が解釈改憲によるクーデターだとし、今次の「安保法制整備」が1つの新法、10の法改正により、いかなる事態にも対応できる「切れ目のない戦争法案」であることを3点にまとめて解説した。
憲法と政治の裂け目
1つは「後方支援」という名での武力行使への関与。2つは今回の集団的自衛権の行使容認の持つ問題性。3つは国会による事前承認の「歯止め」の虚妄である。憲法上の制約を実質的に変更し(海外派兵・徴兵制の禁止、専守防衛、「文官統制」)、政策上でも非核三原則や武器輸出三原則を破棄して、「平和国家・日本」を破壊しようとしている。現時点では認めていない「敵基地攻撃論」や「核保有」まで行きかねない危惧を表明した。
キーワードの「切れ目のない」とは、自衛隊を海外派兵し、そこで戦闘を継続するための法整備のことであり、「このような憲法と政治の『裂け目』の拡大を許してはならない」と結んだ。
民主主義の根本精神
後半は、作家で明治学院大教授の高橋源一郎さんが「民主主義と憲法を根本から考える」と題して講演。高橋さんは自身の人生を語りながら、「問題に対しては一人称で取り組み格闘することが民主主義の基礎」と話し、「あらかじめの決めつけや大上段から語るとき討論が成立しなくなる。そのような手法で民主主義を破壊している代表者が安倍晋三と橋下徹だ」と指摘。
「安倍は4月訪米で、アメリカにたいしては固有名詞で話をするのに、アジアには、中国・韓国という固有の名をあげず、『痛切な反省』一般しか語らない。南京大虐殺や『従軍慰安婦』問題などに言及したくないのだ。演説としては成功かもしれないが、説得力はない。橋下は著書で“友達はいらない”とし、中学生時代はいじめに対して、いじめる側に立つことで応えたという。ここに橋下の人間観・民主主義観がある」
「しかし民主主義はそんな薄っぺらなものではない。70年近く前の文部省が発行した『民主主義』という中学・高校生用の教科書の中には『民主主義を単なる政治のやり方と思うのは、まちがいである。民主主義の根本はもっと深いところにある。それはみんなの心の中にある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神』とある。この精神をよみがえらせ発展させるとき、憲法改悪の動きとたたかうことができる」と訴えた。
ついで呼びかけ人・賛同人から、憲法・自衛隊派兵・労働・生存権・原発・沖縄・女性をテーマにアピールが。最後に憲法改悪、安保法制と闘う集会アピールを呼びかけ人の木下達雄さん(浄土宗大林寺住職)が読み上げ、集会参加者の大きな拍手で採択した。(兵庫 河野乾一)
「在特会」登場の背景に迫る
差別と闘う郵政労働者の集い
5月10日大阪市内で、「5・10差別と闘う郵政労働者の集い」がおこなわれた。主催は同実行委員会。この集会は昨年10月の「狭山の集い」につづいて2回目の取り組み。今回はジャーナリストの中村一成(イルソン)さんが「ヘイト・スピーチと私たちの過去・現在・未来」というテーマで講演した。また、西岡智さん(部落解放同盟)が、「狭山差別裁判の現状」について講演した。
政権と在特会のゆ着
中村さんは、在特会による京都朝鮮学校襲撃事件と大阪・鶴橋でのヘイト街宣について具体的に検証し、在特会が登場したその背景にせまった。
講演は次のような内容だった。
@ヘイト・スピーチは、言葉の暴力というレベルではなく、言葉による殺人である。一方、警察は市民を守ることはなにもせず、むしろ在特会を擁護している。この非対称性について、被害当事者はどのように感じたのかを体験者として怒りを込めて提示した。
Aヘイト・スピーチは、最近出てきた問題ではない。関東大震災時の朝鮮人虐殺に見られる朝鮮人差別は、戦後も克服されずに継続されてきた。すでに戦後の闇市のときに、今日のヘイト・スピーチの原型があらわれている。
Bメディアは在特会からの抗議を恐れ、自主規制をして事件をあまり報道していない。
C差別を禁止する基本法が必要だが、ヨーロッパにおける取り組みのように、反差別と歴史認識の問題としてアプローチすべきだ。学者や弁護士には、「表現の自由を制限する可能性があるから、立法化には問題がある」という意見もあるが、そういう問題ではない。
D今の政府は在特会と完全に融合している。在特会の跳梁(ちょうりょう)が許されてきたのはここに問題がある。あらゆる取り組みを通して、我々はヘイト・スピーチに反撃していく必要がある。
狭山闘争の現状
西岡智さんは、「狭山闘争勝利の暁には、これが国家権力の犯罪であることをクローズアップして、総括することが必要だ。今、その準備をしている」「水平宣言の精神は、あらゆる人間の解放にあった。これからの解放運動は、人間はいかに生きるべきかを、部落民以外の人々にも提示していく必要がある」と語った。
郵政職場から
その後、郵政職場からのたたかいの報告があった。降格処分に対する裁判闘争に勝利した報告。労働契約法20条を盾に非正規雇用労働者の差別待遇を訴える裁判。非正規雇用労働者が春闘ストライキに立ちあがった職場のたたかいの報告など。
それぞれの発言は、職場の労働運動と社会的差別の問題を一体的に課題とし、従来の労働組合の限界を乗り越えていこうとする問題意識にたった発言であった。
労働者による職場解放研運動の成果は、少数ではあるが今日も営々として受け継がれており、また受け継いでいこうとする労働者が存在する。郵政労働者による労働運動の新たな潮流を感じる集会だった。(T)
4面
“未来のために原発はいらない”
「2015原発のない福島を―県民大集会」(3月14日)における発言より
次世代に原子力のない社会を
JA新ふくしま農協 菅野孝志さん
作れば間違いなく放射能汚染されている。これは確実に想定できたことであります。 間違いなく農業王国福島は、地に落ちたと言わざるを得ない状況にまで落ちました。でも、みんなの努力が震災前の水準に復活させるために力を注いできたのが実を結びつつあることも、間違いございません。それでも厳しい環境の中で、日々奮闘している農家の方々がたくさんいらっしゃいます。
一番の不幸は分断
原発の持つ危険性は周知のとおりでありますけれども、一番の不幸なことは、私は分断だと思っています。生産者と消費者の分断、そして、家族、あるいは、隣人、福島県民同士、都市と農村の分断、これをあの原発事故は進めてきたと言わざるをえません。
お届けする園芸品目については、私どものJAだけでも、3万点を超えるモニタリング、そして福島県下の1096万袋を超えるお米についてはすべての検査をしながら、安全を担保するそのような取り組みの中で、間違いなく、25ベクレル以下が99・8%にまでなっている実態をもっと多くの方々にご理解をいただきたいと思います。
暮らし、命を守る
原発は、いろいろな状況等を考えたとき、安全ではない、クリーンでもない、そして安くもない。あの福島原発の周辺に60万トンを超える汚染水が今もって眠っている。この事実をとらえたときに、いつなんどき同じような苦しみに立ち向かわなければならない、そんなこともありうるかもしれません。
でも、これらを何とかきちっと制御をしながら、次の世代に全く核のない、原子力のない社会を手渡すのが、それが我々福島県民の務めだと考えております。
目先の利益の中で原発を推進する、そしてまた、私どもからすれば、国民の暮らし、命を守るそんな点から、TPPの問題も含めて、これらを推進してはならない、そんな思いでこれからも、JAグループとして改めてわれわれの決議をベースとした地道な運動を展開していきます。
原発あるかぎり不安は消えない
JF相馬双葉漁協本所部長 遠藤和則さん
いまだに漁業は、試験操業が続いています。
これまでに、福島海域のすべての魚介類を県の緊急モニタリングで毎週150〜200検体程度を調査して、2月末までに178種、約2万5千検体を超える調査をおこない、放射能の影響がなく、かつ重要な魚種を選定してきました。
その結果、現在漁獲可能な魚種は58種までに拡大してきています。
さらに、販売する前に、漁協の検査機で、魚種ごとに、加工品ではサイズ・品質ごとに自主検査をおこない、検査をクリアしたものだけに証明書を付けて、出荷しています。
本来漁協は、水揚げを基盤として、販売、購買、信用、共済等々の事業の総合的な収益をもって、組合員に利益を還元する、そういう単純なものです。鮮度や品質の良い魚、より付加価値の高い魚を水揚げ販売することに専心し、最終的に消費者に良い魚を提供する形になってきました。
信頼が失われた
それが放射能汚染によって、「常磐もの」として今まで培ってきた信頼が、市場や消費者の中で失われた、というのが現状なんです。
原発があの状態で存在する限り、不安は消えません。補償、賠償と言う言葉に惑わされ、本業を忘れてしまう弱い心との葛藤もあります。
そういう中で、底引き網でのまだら漁、刺し網での真カレイ、引網での白魚、沖かごでの真蛸・水蛸等を継続しながら、今月からは、春本番のコウナゴ漁も始まります。
何とか、漁業の形はとれるようになってきましたけれども、いまだ32種の出荷制限を受けている魚種がある中での今の漁業では、震災前と比べて水揚げ量、金額とも10%にも満たないというのが現状です。福島の漁業、未来の漁業のためにも、原発はいりません。
安全は自分たちが守る
東電と国には、汚染水対策をしっかりとって、情報隠ぺいによって失われた漁業者との信頼を再構築してもらいたい。
本日の県民大会において誓います。試験操業を継続する先に、本操業が見えてくる。このことを信じて、検査をして安全な魚は出荷します。安全は自分たちが守ります。そんな強い信念で漁業も歩を進めてまいりたい、と思っております。(見出し、要約は本紙編集委員会の責任でおこないました)
論考
昆虫の被曝が示すもの
琉球大学大瀧研究室がレポート
ヤマトシジミ
ヤマトシジミは沖縄から東北にかけて生息し、幼虫は都市部や農村部に広く繁殖するカタバミの葉を食べて成長する。幼虫は10ミリほどで、たっぷりとカタバミを食べて、サナギになり(蛹化)、成虫(蝶)になる。前翅は10〜16ミリほどの小さなチョウである。
2011年3月11日に原発事故が起き、ヤマトシジミは幼虫の状態で、地表上で越冬しており、外部からはもちろん、食物により内部からも人工放射線に被曝した。
琉球大学大瀧研究室
琉球大学の大瀧研究室は福島原発メルトダウン・爆発後の5月に現地に赴き、ヤマトシジミを採取して、放射能の昆虫に与える影響についての調査を始めた。
大瀧研究室のホームページにはこれまでに発表された6本の研究論文(英文と日本語)が添付されている。その他に、『科学』(岩波書店)2014年9月号の大瀧丈二論文「原発事故の生物への影響をチョウで調査する」がある。
ここでは、第1論文「福島原発事故のヤマトシジミへの生態学的影響」(2012・8)、第2論文「福島原発事故とヤマトシジミ:長期低線量被曝の生物学的影響評価」(2013・8)、および『科学』誌論文を参考にして、原発事故による昆虫への影響についてレポートする。
第2論文は、第1論文にたいする批判に反論するために、11点について整理しており、第1論文を補強し、より深く理解するのに役立っている。
衝撃的な研究結果
第1論文と第2論文では、調査結果について次の8項目を結論している。
@福島現地で採取したヤマトシジミ(親=P世代)には、色模様、付属肢、触角、パルピ=鼻、複眼、腹部、胸部の形態異常が確認された。5月の採取地点では地面線量と相関関係はなかったが、9月は地面線量と成虫異常率には高い相関関係があった。
A雄の前翅サイズは他地域より小さく、地面線量と高い相関関係があった。
B採取したヤマトシジミ(P世代)の成虫異常率は5月よりも9月の方が高かった。
C現地で採取した雌の子世代(F1)にもさまざまな異常が観察され、原発に近いほど異常率は高かった。
D福島原発の近くで採取したヤマトシジミ(P世代)のF1世代には蛹化、羽化までの育成時間が遅延する傾向があった。
EF1世代には不妊化、生殖腺異常が見られ、F2世代(孫世代)に形態異常の遺伝が観察された。
F沖縄産のヤマトシジミにセシウム137を照射したところ、線量に応じて生存率が低下した。
G沖縄産ヤマトシジミに福島原発事故で汚染したカタバミを食べさせたら、生存率が低下した。
以上の現地調査と内部被曝実験により、大瀧研究室は福島原発から放出された人工放射線によりヤマトシジミの体細胞及び生殖細胞に生理的又は遺伝的損傷が生じたと結論している。
6世代後にピーク
第1論文、第2論文は2011年秋までの調査結果の分析であり、その後については『科学』2014年9月号に発表された大瀧論文によって知ることができる。
大瀧研究室は福島県内7カ所で、2011年春から13年秋にかけて、3年間の春と秋、合計6回の調査をおこなっている。放射線汚染地域では、ヤマトシジミの総異常率は2011年秋から2012年春にピークに達した。ヤマトシジミの世代時間(卵→幼虫→蛹→蝶)は1カ月程度で、6世代後にピークを迎えたことになり、人間の1世代を25年とすれば150年に相当する。
ヤマトシジミの異常率は2011年9月をピークにして減少に転じ、15世代ほど経過した2013年7月時点で、放射線環境に適応できるようになったと考えられる。昆虫と人間を同一に論じることはできないが、人間の15世代後すなわち375年後になってやっと原発事故による環境変化に適応できることになる。福島原発事故由来の放射線は人間社会に数百年規模で影響を与えるのである。
全原発を廃炉に
2012年8月16日の「北海道新聞」によれば、同様の研究は北海道大学の秋元研究室でもおこなわれている。2012年6月に、福島原発から32キロ離れた計画的避難区域でおこなわれた調査で、ワタムシ(アブラムシの1種)の成育に異常がでているという。通常、奇形の発生率は1%未満であるが、原発周辺では約10%に達している。
昆虫は放射線だけではなく、いろいろなストレスに強い生き物である。だからこそ、地球上で最も繁栄しているのである。ある個体だけなら殺虫剤で殺すことはできるが、耐性をもつ個体が生まれるから、その種を根絶することは難しい。
原発事故由来の放射線によって、ヤマトシジミのある個体は死に、ある個体は生きのびて耐性を形成している。人間にとっても、ある子どもは小児甲状腺ガンを発症し、ある子どもは無事に過ごしている。政治家や科学者もどきが「人への被曝量の安全基準」を一律に決めているが、各個人の放射線耐性度や健康度によって安全基準は異なるから、各個人の多様な耐性度を斟酌して決めるべきであろう。
ふたたび原発事故を繰り返さないために、すべての原発の廃炉を決定し、廃炉作業に取りかからねばならない。(高岡 治)
5面
「屈辱の日」
沖縄の民意ふみにじるな
17団体で同時アクション 大阪
沖縄では「屈辱の日」と呼ばれる4月28日、那覇市の県庁前県民広場で「止めよう辺野古新基地建設! 実行委員会」主催の県民大集会が開かれた。これに呼応して大阪中之島公園水上ステージで、午後6時30分から「STOP! 辺野古新基地建設! 大阪アクション」が主催し、「辺野古集会同時アクション・大阪」を開催した。約270人が参加した(写真)。
集会は、冒頭に辺野古で歌われている『座り込めここへ』の合唱から始まった。つづいて辺野古現地に行っている大阪行動のメンバーから電話中継で現地報告がおこなわれた。「この日、抗議船が海上保安庁職員によって転覆させられて4人が海に投げ出され、そのうち1人が病院に搬送された」と、海上保安庁による暴力的弾圧にたいして、怒りをこめた報告がされた。次に、この間、継続して取り組んできた第5管区海上保安本部にたいする抗議行動の報告を受けた。
カンパアピールをはさんで、新たに呼びかけ団体となった岩国・労働者反戦実行委員会と大阪教育合同労働組合からのアピールを受けた。昨年8月、8団体の呼びかけで誕生した「大阪アクション」は、その後、17呼びかけ団体に。最後に、「しないさせない戦争協力!」関西ネットワークの中北龍太郎弁護士よりまとめの発言がおこなわれた。集会後ただちにデモ出発。参加者は「辺野古新基地建設反対」「日本政府は沖縄の民意を踏みにじるな」とシュプレヒコールをあげ、西梅田公園までデモ行進をおこなった。
ロックアクション(5月6日 大阪市内)「戦争法を作るな」と抗議するサウンドデモ。<秘密保護法廃止!ロックアクション>に350人が参加 |
東電本店に抗議(13日 都内)東京電力本店前で「福島第一原発事故の責任をとれ」のコールが響きわたった |
沖縄意見広告しめ切り迫る
6月14日 3紙に掲載連載
沖縄現地の辺野古新基地建設反対運動が翁長県知事を先頭に激しくくりひろげられている時、これに連帯しこの意義を全国に訴えようとする第6期沖縄意見広告運動の締め切りが迫ってきた。
毎年6000人規模の賛同でなされてきたこの運動の締め切りは5月31日で、発表は6月14日の朝日新聞、琉球新報、沖縄タイムス。すでにアメリカでの世論づくりとしてアメリカ紙ウェブ版にも、翁長知事の訪米と連携し掲載されている。
沖縄では5月17日の大集会、6月23日の慰霊の日を前に、「もうこれ以上基地はいらない」の声が高まっている。この声に何としても応え、「安保法制阻止・構造的差別を許すな!」の声をあげていこう。なお、6月20日関西(協同会館アソシエ)、6月21日関東(日本教育会館)で、それぞれ報告集会が開催される。
賛同金振り込みは、郵便振替〔00920―3―281870 意見広告〕
1口個人1000円、団体5000円から、何口でも可。名前の公表(可・不可)も明記のこと。
読書
差別労働行政と格闘する
上野千鶴子『女たちのサバイバル作戦』
(文春新書 2013年9月刊 800円+税)
上野千鶴子さんの本を初めて読んだ。
のっけから、国旗国歌法は「長引く不況ですっかり自信をなくしたオヤジたちが、せめてもの連帯感を味わえるのがナショナリズムというものの仕掛けだ」と一刀両断する。軽快な「話術(記述)」に、ついつい引き込まれ一気に読んでしまった。ネオリベ(新自由主義)改革がジェンダー平等政策を推進した理由は、「答えは簡単です。女に働いてもらいたいから」。出生率の低下による将来の労働力不足の埋め合わせだ、と簡単明瞭。
「結果の平等」と「機会の平等」の違いについて、「職場における女性差別を結果としてなくすというのと、男並みの機会を与えるから男と対等に伍して競争に勝ち抜け、というのでは法律の趣旨が全く違う」と。「男女雇用機会均等法」も「〈名目平等〉と〈実質保護〉の交換は割に合わない取り引きでした」とばっさり。
日本の企業が、均等法の施行前に総合職・一般職のコース別人事管理制度で対抗したのに対し、「雇用の性差別を告発するには、同じ条件で採用されながら性によって異なる処遇を受けた時、初めて不当な差別ということができるのに、最初から採用区分が違えば異なる職種に異なる処遇が伴うのは当たり前になる」と、そのペテン性を一喝。
セクハラについて「職務上与えられた権力を職務外にも及ぼす権力濫用であり、この定義によってセクハラは『私人間(しじんかん)のプライバシー』(の闇)から『職場の労働災害』になった」と鋭い武器に磨き上げる。
ネット上の言論について「ネオリベ改革のせいで格差に苦しみ不遇をかこつ『ボクちゃん』たちは、マイノリティの正義への冷笑からナショナリストたちと同盟を組みます」「『マイノリティの正義』を、さらなるマイノリティ意識からバッシングしていた人々が、ネット上で勝ち馬に乗るマジョリティへの同調者へと転じていく」「逆説」的現象を鋭く分析する。第2次安倍政権を「ゾンビ復活内閣」と言ったり、茶目っ気たっぷり。
この本には、女性労働者のおかれている状況と差別労働行政との格闘が、さまざまな領域で明らかにされている。そのつかみ方と表現が興味津々である。労働運動にかかわる人の必読の書でもあるし、女性労働者はもちろん、男性労働者にとってもとても啓発される本だと思う。一読あれ。上野さんは10・8羽田闘争の山崎博昭さんの大学時代の同級生だと知り、さらに、ぐぐぐっと身近に感じられた。(田村)
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富の集中と貧困の拡大
貧困のワイングラス
1992年版『人間開発報告書』(国連開発計画)によれば、世界人口54億人を5つのグループに分けて、富の配分について報告している。
トップ20%の階層は82・7%の富を独占し、次の20%が11・7%、その次が2・3%、その次が1・9%、そして最下層の20%が1・4%の富で生活している。すなわち、世界人口の60%の人々がたったの5・6%の富を享受しているに過ぎないが、上位階層の富は貧困層の59倍にもなっているのである。
『人間開発報告書』(2005年版)に発表された2000年の実態は上位20%は全世界の富の83%を独占し、下位20%の最貧層は1%の富で生活している。最貧層の所得が以前にも増して減少し、その格差は83倍にふくれあがっているのだ。国連大学世界開発経済研究所も同様の調査をおこなっており、『富の世界分布』(2005年)によれば、最上位2%の階層が50%の富を独占し、上位10%の階層が85%、下位50%の階層がたったの1%の富を分けあって生きていると報告している。
世界的なベストセラー『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著、2014年2月)によれば、さらに富の集中が進んでいるようだ。トップ10%の階層が90%の富を独占し、トップ1%の最上階層はその半分の富(全世界の45%)を手にしているという。
1992年からたかだか20年ほどで、トップ20%の82・7%から、その半分のトップ10%の90%へとさらに集中が進んでいる。そして2000年の最上位2%の階層が50%の富を集中していたが、10年後にはたった1%の最上位階層が半分近くの45%の富を集中しているのだ。
1%の最上富裕層が全世界の45%の富を独占する現代社会の不当を訴えて、2011年9月から「我々は99%だ」というスローガンを掲げて、ウォール街占拠がたたかわれ、世界に拡散した。私たちは世界的格差を拡大し続けるこの社会を根底から覆すことによってしか生きられない。(田端 登美雄)
(注:1960年代の富の格差は下位20%の平均所得と上位20%のそれを比較すると30倍)
6面
寄稿
戦後70年と〈天皇〉連載 @
天皇明仁のパラオ訪問と海上保安庁の役割
隠岐 芳樹
70年前、大日本帝国は2千万人をこえるアジアの民衆を殺し、300万人余の国民の命を奪ったあげくに、自らが仕掛けた侵略戦争に敗北し、崩壊した。
そして今、安倍内閣は〈戦争をする国〉づくりにむかってつきすすんでいる。特定秘密保護法などの法体制の確立、原発再稼働をテコとする核武装化の準備と同時に、さまざまなかたちでナショナリズムをあおって、国民の意識を統合しようとしている。その核をなすものこそ、〈天皇〉である。
今年4月上旬、天皇明仁は皇后とともにパラオ諸島(注1)を訪問して、太平洋戦争の激戦地をめぐった。そこで天皇は「先の大戦によって命を失ったすべての人々を追悼し、遺族の歩んできた苦難の道をしのび、世界の平和を祈りたいと思います」と、慰霊の言葉を述べたことが報じられている。
(注1)1914年、日本が統治下におき、事実上の植民地支配をおこなった。16000人の日本人が戦死。
メディアは口をそろえて、敵(米軍)味方を問わない死者へのねぎらいを「お優しい心根」とたたえ、平和と人道主義の使徒であるかのように称賛した。原発や沖縄の問題で反政府の立場をはっきりと打ち出している『東京新聞』でさえもが、この一大キャンペーンに加担している。そして新聞各紙の投書欄には、「平和を願う陛下を安倍首相も見習え」という類の発言が相次いで発表された。メディアの戦略が効を奏したのである。
昭和天皇の戦争責任を不問に付す共犯性
天皇のパラオ訪問には、二つの大きな問題がはらまれている。まず、天皇の発言の中身である。
戦前の大日本帝国憲法における天皇は、〈統治権の総攬者〉として、行政・軍事・外交にわたるすべての権力を持つ主権者であり(注2)、ただひとり陸海軍にたいする統帥権(注3)を保持していた。
(注2)第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス/第四条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
(注3)軍隊を指揮・命令する権限をさし、天皇のみが有する。内閣や議会の拘束を受けず、まったく独立に運用するものとされた。
なおかつ、昭和天皇は法制上そのような地位にあっただけでなく、アジア太平洋戦争では具体的に指揮をふるっていたのである。田中伸尚『ドキュメント昭和天皇』(緑風出版、全8巻)が、その事実を詳細にわたって明らかにしている。
しかし、それにもかかわらず、天皇はパラオ訪問中に発した言葉のなかで,昭和天皇の犯した罪と責任に一切触れていない。この点において、天皇のパラオ訪問は、戦争で命を落とした人々と遺族を欺まんするものであり、犯罪的でさえある。
昭和天皇の戦争責任に言及しない天皇明仁の姿勢は、戦後70年の総理談話に〈侵略〉や〈植民地支配〉というフレーズを加えようとしない安倍の態度と通底している。明仁は昭和天皇や安倍の共犯者なのである。
海保の船に宿泊した天皇のネライは何か
つぎに問題なのは,天皇が海上保安庁(以下、「海保」と略す)の大型巡視船「あきつしま」に寝泊りし、それに乗って島々を巡ったことである。そのために、艦長室に大がかりな改造をほどこしたという。
この特別な措置は、「1泊2日の日程のなかで効率的に移動するため」とのことである。メディアはこれについても、「両陛下の体調が万全でないにもかかわらず、客船やホテルのような快適な生活を期待できない巡視船に宿泊してまで、戦没者の慰霊に出掛けるのを優先した」と、重ねて天皇の姿勢を称賛している。
今、海保は沖縄辺野古の海で、新基地建設に反対する沖縄県民や本土からの支援者に凶暴に襲いかかっている。海保の船は抗議のカヌーに体当たりして多数で乗り込み、船長を拉致して沖合に連れ去り、寒中の海に放り出すなど、危うく命を落としかねないような狙い撃ち的襲撃を繰り返し加えているのである。それは最早、一般的な意味での強制排除や弾圧のレベルをはるかにこえている。情け容赦のない人民襲撃そのものである。
辺野古基地建設反対闘争への天皇の挑発
天皇のパラオ慰霊の旅を至上の行為として鑽仰し、世論を大いに盛り上げたうえで、それを支えるピースとして海保を登場させている。一般国民の海保に対するイメージアップをはかり、沖縄での凶行を覆い隠そうという意図が透けて見える。
これこそ、辺野古基地建設反対に立ち上がった人民にたいする支配階級の挑発でなくて、何であろう。
ところで、海保とは一体何者なのか。
かつてNHKドキュメント番組に、旧大日本帝国海軍の複数の将校が出演し、つぎのように語った。「敗戦によって陸軍は解体させられたが、海軍は残った。われわれは世界に冠たる機雷除去の掃海技術を継承するという名目で、海軍を生き延びさせる工作をした。その結果として誕生したのが海保なのだ」と。
こうして1948年、海保が設置された。海保はただちに、米軍が日本沿岸に敷設した約1万発の機雷を「航海啓発作業」と銘打って除去した。
1950年6月、朝鮮戦争が勃発するや、同年10月初旬、米極東海軍が朝鮮半島への上陸作戦遂行のため、海保に掃海作戦を要請してきた。海保はそれに応じて掃海艇46隻を派遣し、のべ1200人の部隊を朝鮮半島沿岸に出動させた。
これによって東海岸の元山への米軍上陸が可能となり、それを機に米軍の朝鮮全土への無差別爆撃と大量殺りくが開始されたのである。海保が元山沖で掃海作戦を展開するなかで、機雷に接触して1人が死亡し、18人が負傷している(海保は元山沖以外にも数カ所に出動)。このように、海保の正体は〈軍隊〉そのものである。
(追記)機雷除去は国際法上、戦闘行為とされている。4月末の安倍首相の訪米による日米合意では、今後日本が米軍の作戦と共同して、機雷除去を実施することを含んでいる。安倍はホルムズ海峡などを例示して、この作戦行動を強調している。
天皇とメディアが〈国民一体〉を演出
辺野古基地建設に反対する人々に暴虐の限りを尽くしている海保の僚艦に、天皇が宿泊し、メディアが大きく報道した。われわれはこの事実を重視しなければならない。
天皇明仁は天皇裕仁(昭和天皇)がそうであったのと同様に、温和な表情をたたえながら、軍と一体になって、沖縄県民をはじめとするわれわれ人民大衆に立ち向かってきているのである。
そして、すべてのメディアが天皇を上にいただく〈国民一体〉の姿を演出することに歩調を合わせている。これが戦後70年を迎えようとしている日本の現実である。
中原徹・前大阪府教育長がカジノ参入企業役員に
卒業式などでの口元チェックを強行し、教育委員、教育委員会職員に対して数々のパワハラを繰り返し、大阪府の教育行政を破壊したあげく、今年3月、ついに大きな批判の前に退任に追い込まれた中原徹・前教育長。
なんと、その1カ月半後には、新たな就職先を見つけていた。その会社は、カジノ推進のパチスロ機メーカー最大手「セガサミーホールディングス」で、上席執行役員(法務担当)に就任とのこと。
このような人物が教育長に就いていたこと自体が異常であった。