未来・第172号


            未来第172号目次(2015年3月19日発行)

 1面  3・11 福井地裁
     原発運転差し止め仮処分請求
     高浜は差し止め決定へ

      3・4三里塚 市東さん農地裁判
     東京高裁 裁判終結を宣言

     川内原発、再稼働阻止
     3・2 九電申し入れ行動     

     福島を忘れるな
     再稼働絶対反対

 2面  守れ!経産省前テント シリーズO
     テント撤去・仮執行許すな

     住民説明会なしの高浜町
     再稼働求める意見書可決

     事故続出の米軍へ怒り
     3・1 京都でXバンド集会

     若狭の原発再稼働反対

 3面  寄稿
     原発再稼働に反対し、全原発即時廃炉を求め、
     現在および未来に不安のない社会を創ろう
     「若狭の原発を考える会」共同代表・木原壯林

 4面  3・4 東京高裁
     「裁判長、戻ってこい」
     市東さんの農地裁判 結審強行

     平和な島に自衛隊はいらない
     与那国町民が住民投票を報告

     本の紹介
     『来るべき民主主義』〜小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題〜
     (國分功一郎著)

 5面   市民生活破壊の大阪市分割構想
     住民投票で橋下退場を      

     橋下の手先 中原教育長辞職
     政治介入、口元チェック、パワハラ…

 6面  視座
     人質2人を見殺しにした安倍
     有志連合下で派兵・参戦狙う(下)
     速見 賢三

             

3・11 福井地裁
原発運転差し止め仮処分請求
高浜は差し止め決定へ

仮処分求め福井地裁へすすむ申立人・弁護団
(3月11日)

11日、「高浜原発3・4号機、大飯原発3・4号機運転差し止め仮処分」をめぐる第2回審尋が福井地裁でおこなわれた。
地裁には100人近くの支援者が集まり、申立人と弁護団を見送り、審尋後の記者会見場では200人近くの人々が弁護団の説明に聞き入った。
審尋で、樋口英明裁判長は「機は熟している」と、2回発言したという。記者会見の席で、申立人たちは口々に、裁判長のこの言葉に強い意志を感じ、仮処分決定の確信を語った。

高浜は仮処分決定へ

第1回審尋(1月28日)で、裁判長は関電に4点の釈明を求めていたが、今回は免震事務棟について質問しただけだった。すなわち他の3点(クリフエッジ=限界数値、基準地震動と対策工事、原子炉などの計測器の耐震性)については判断が固まっており、もう聞く必要がなかった。残る免震事務棟の耐震性と放射能の遮蔽性能について尋ねても、関電は言を左右にして答えなかった。申立人弁護団から「まだ出来ていないということでしょ」と念を押され、関電はしぶしぶ「それでいい」と答えた。
規制委員会が「高浜3、4号機は新規制基準に適合した」という判断を出したこともあり、樋口裁判長は「機が熟した」として、高浜と大飯を分離し、「高浜は決定を出す。決定をする期日が決まったら、その5日前までに双方に告知する」、「大飯原発3、4号機については、審理を続行する。次回期日は5月20日」と判断した。この結論に真っ青になった関電弁護団は、退席しようとする裁判官に「忌避」を申し立てた。樋口裁判長は振り向きざま、「それならば、理由を出して下さい」と答えて姿を消した。

追いつめられた関電

関電は、この日有効な反論が出来ず、仮処分決定の流れを止めることが出来なかった。関電は為す術もなくなり、ついに「裁判官忌避」の大ばくちに打って出たが、3日以内に提出する理由書はせいぜい訴訟指揮の当否にあり、ほとんど可能性はない。樋口裁判長による簡易却下が予想され、高浜原発の差し止め仮処分へと直進するだろう。
記者会見では質問が相次いだ。樋口裁判長が仮処分決定の意志を固めたことは、記者も支援者も十分に承知できる状況だが、「裁判官忌避」がどのように取り扱われ、どのような効果があり、どう進展していくのかについて特に質問が相次いだ。
関電の「裁判官忌避」は最後の悪あがき以外の何ものでもない。まさに、3月中に、高浜原発は再稼働が不可能な状況にたたき込まれるのだ。福島原発がメルトダウンを引き起こした4年後の3月11日に、高浜原発は決定的に追いつめられたのである。
司法決定は上級司法で覆されるいうこれまでの苦渋を、労働者市民の力ではね返していく、これまでにない大きなたたかいが必要になっている。いざ、新たな段階のたたかいに挑もう。

3・4三里塚 市東さん農地裁判
東京高裁 裁判終結を宣言

3月4日、東京高裁・小林裁判長は市東孝雄さんの農地裁判で、突然次の期日も決めないまま終結を宣言した。農地法を悪用した農地取り上げ許さず、3・29全国集会(成田市栗山公園)を反撃宣言の場としよう。(詳細4面)

川内原発、再稼働阻止
3・2 九電申し入れ行動


国内のすべての原発が停止しているなか、再稼働一番乗りの口火を切ろうとする九州電力本店(福岡市)にたいして「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委員会」のよびかけで抗議と要請の申し入れ行動がおこなわれた。(写真)
昨年9月に原子力規制委員会が「新規制基準に合格」と判断、立地自治体の鹿児島県と薩摩川内市が同意する切迫した中でのとりくみだった。この日の行動は実行委員会の呼びかけに応えた全国68団体の賛同のもと、平日昼間の行動にもかかわらず全国から600人もの労働者・市民が参加した。
1月からのわずか1カ月半であつまった10万筆の署名が入った段ボール箱を本店前に積み上げ、実行委員会の向原事務局長は「再稼働と言う前に、@30キロ圏内の住民への説明をおこなうこと、A薩摩川内市だけでなく30キロ圏内自治体すべての了解をうけること、B被害を受ける恐れのあるすべての住民にも説明すること」の3点を示して、責任ある人間(社長)が説明するまで要請を続ける、と決意を述べた。
このあと100人の代表団が本店会議室に入り、外では九電包囲一周デモと全国の参加者からの発言と交流をおこなって交渉団を激励した。九電は追及を怖れた社長が雲隠れし、何の責任もとれない「エネルギー広報室」が対応。はじめから終わりまで「住民に対する説明会はしない」が「(都合の良い)広報はする」という不誠実・無責任な対応をつづけ、一方的に話し合いを打ち切って退場した。
この住民無視の対応こそ原発の不正義性と暗黒性をしめすものだ。抗議団は九電と原発にたいする一層の不信と怒りを燃え立たせ、「再稼働は絶対に許さない」ことを全国の仲間と確認し、6時間に及ぶ抗議行動を終えた。

福島を忘れるな
再稼働絶対反対

東京

NO NUKES DAYに2万3千人(3月8日)
会場となった日比谷野外音楽堂はすぐに満員となり、周辺に参加者があふれた。集会終了後、請願デモと国会包囲行動がおこなわれた。

大阪

大阪では3月8日扇町公園に3500人が集まり、2コースにわかれデモ行進をした。

3・11〜4周年 全国で集会・デモ

2面

守れ!経産省前テント シリーズO
テント撤去・仮執行許すな

開廷前に、東京地裁門前で集会(2月26日)

2・26不当判決 仮執行つき

2月26日、経産省前テントひろば裁判の判決公判がひらかれ、東京地裁民事37部・村上正敏裁判長は、不当判決をくだした。
判決はまず、「土地明け渡し、テント撤去、正清被告、淵上被告の両人は立ち退け」というもので、「仮執行」がついた。
さらに判決は、裁判開始時に国が「土地使用料損害金」として請求した1100万円に加え、その後2年間について、1日2万円等を被告に対して請求した。仮にただちに払ったとしても現時点で2800万円を超える金額である。スラップ訴訟そのものだ。

被告のいない法廷で

前回(昨年12月3日)の口頭弁論で、裁判官忌避(裁判などできる人格、責任能力がないという訴え)をしていたので、被告とされた2人は、正常な裁判進行はありえないとして、この日の法廷に臨まなかった。弁護士もだれひとり、法廷内にいなかった。そのような法廷で、裁判長はかぼそく判決を言い渡し、立ち去った。
この不当な判決に対して傍聴人が抗議。裁判官がいなくなっても、廷内から立ち去らない人々や、廷内には入れなかったが、廊下で抗議するひとびと。さいわい逮捕者はなかったものの、ごぼう抜きのように強制排除された人々は、十数人に達した。

行動方針

判決後、参院議員会館講堂で抗議集会がひらかれ400人をこえる人々が集まった。
弁護団の大口弁護士からの報告、福島の黒田節子さん、たんぽぽ舎からの発言などがあり、最後に以下の行動方針が提起された。
@判決が送達されると、いつでも強制執行される。未明に執行官が業者・警察を伴いテントを訪れ、テントを包囲して外部と遮断し退去が勧告され、夜明けとともに撤去がおこなわれると予想される。Aしたがって、強制撤去攻撃に対して非暴力・不服従を貫いて闘い抜く。「福島をはじめ、全国の運動現場の人たちの気持ちに添った闘い」を最重視して国内外に見える闘いとする。B控訴審闘争、仮執行停止を申し立てて闘う。

テントひろばが声明

声明はいう。「われわれには恐れるものは何もない。われわれが、たとえとるに足らない微小なものであっても無力ではないし、たとえ非力であったとしても全国・全世界には何百万、何千万、何億の人々の『脱原発・反原発』の願いと無数の力があり、連帯したこの力は巨大な力を発揮し得るという確信のもとで・・闘う。」

住民説明会なしの高浜町
再稼働求める意見書可決

陳情・意見書を採択

関西電力・高浜原発の立地地元である福井県高浜町議会(定数14)は4日、原子力対策特別委員会(13人)を開き、再稼働に賛成する陳情2件を賛成多数で採択した。同日の午後に開かれた本会議でも同様に採択。なお、再稼働反対の陳情・請願あわせて3件は不採択とした。
さらに同日、「すみやかな再稼働を政府に求める意見書」を本会議において、賛成多数で可決した。反対したのは1人のみだった。

20日に全員協議会

的場輝夫町議会議長は、町議会最終日の20日に全員協議会を開き、議会として「再稼働賛成」の意思表示をする予定と発言。議会の賛成意思表示を受け、町長が判断するという形をとるが、野瀬町長は、「3月中には判断しない」としている。

住民説明会も開かず

福井県も高浜町も、再稼働にむけての住民説明会は開かず、代わりに説明用ビデオを制作した。ビデオ映像を一方的にたれ流して、ケーブルテレビで見るように高浜町住民に促した。これは、高浜町当局が依頼し、原子力規制庁が制作したもので、3月3日から15日まで放映された。これで住民への説明は終わりというのか。これほど住民を愚弄した話があろうか。
高浜3、4号機の再稼働は絶対に認められない。

事故続出の米軍へ怒り
3・1 京都でXバンド集会

現地と京都を結ぼう(3月1日 京都市内)

3月1日、京都市内で「米軍Xバンドレーダー基地反対! 基地撤去のたたかいへ! 3・1京都集会」がひらかれ、会場から溢れる100人を超える人が集まった。主催は米軍Xバンドレーダー基地反対京都連絡会。共同代表の大湾さんが基調報告、事務局長の山本さんが年間方針の提起をおこなった。現地からは、京丹後市峰山の高根さんからのビデオメッセージが上映され、米軍基地建設を憂う宇川有志の会事務局長の永井さんが駆けつけ、最新の現地情勢についてスライドを使って説明した。

騒音問題

永井さんの話では、現地は、騒音問題、交通事故、軍属の宿舎問題など次々と米軍・軍属の約束違反の緊急事態が起こっていて、地元住民の怒りと不安は次の新たな段階へと来ている。騒音問題では、2月17〜19日に、発電機6台のうちマフラーが1台につき2基、3台分6基が取り付けられ、周辺での音は低くなったが九品寺では変わらないし、低周波はわからない。
関電からの電気購入を実現するには、工事に1年以上かかるとされている。京丹後市の基地対策特別委員会は、2月20日に近畿中部防衛局に申し入れをおこなった。基地受けいれに賛成した市議も「約束と違う」と怒っているし、市長も「看過できない」と言っている。

高まる米軍への怒り

交通事故に関しては、2月19日に人身事故が起こり、これで15件目。2月26日にオルブライト基地司令官が宇川の代表区長3人と会い謝罪し、「事故を起こしているのは、レイセオン社の軍属で安全講習を徹底させる」と発言。しかし3月5日には次の事故が起こった。
また網野の島津にシェネガー社の軍属の居住地をつくる予定になっていることが明らかになり、その説明会が3月2日にある。地元の不安は高まっている。またその後、他に軍属30人がすでに民間居住地に住んでいるという約束違反が明らかになっている。
3月1日の時点では、地権者への更新手続きの交渉にはまだ来てない。このままでは、拒否者が続出し、反対運動が高揚することを恐れて、更新の交渉をせずに延長に持っていくつもりかもしれない。どちらにしろ、京丹後での米軍基地について、住民の安全・安心が守れないなら撤収しろという要求が、地元では高まっている。

現地住民と連帯しよう

米軍Xバンドレーダー基地反対近畿連絡会は、3月15日に峰山で、服部良一元衆議院議員を講師にして、日米地位協定についての学習会をおこなう予定だが、今後現地と連帯し、基地撤去の運動をさらに推し進めていこう。
参加者は集会後、雨の中を四条河原町を通って市役所前までデモをした。

若狭の原発再稼働反対

3・7きょうと

3月7日、「バイバイ原発3・7きょうと」の催しが、円山野外音楽堂を中心に円山公園一帯であり、あいにくの雨だったが、2000人を超える人々が集まった(写真)。メイン集会では、福島からの避難者で、京都避難者賠償訴訟の原告団の1人でもある鈴木絹江さんと、福井大飯原発運転差し止め訴訟の原告団事務局長である松田正さんのスピーチがあり、そして小出裕章さんから「福島第一原子力発電所事故から被害者と加害者が学んだ教訓」と題する講演があった。
今年も4年連続で「制服向上委員会」のライブ。その後全員が「再稼働NO!」のプラカードを持ち、四条河原町から市役所前までデモ行進をした。

3・8びわこ

3月8日、「高浜・大飯原発再稼働反対 原発のない社会へ 2015びわこ集会」が、大津市の膳所公園と生涯学習センターであり、約1000人が集まった(写真)。メイン集会では、元東海村村長の村上達也さんがスピーチし、井戸謙一弁護士が基調報告をおこなった。
ついで米原市長平尾道雄さん、日野町長藤澤直広さん、元愛荘町長村西俊雄さんの挨拶があり、滋賀県知事、大津市長、湖南市長、三井寺などからのメッセージが紹介され、滋賀県民一体となった大規模な運動であることを実感した。
集会後、関電滋賀支店前を通り、パルコ前まで、全員が「高浜原発NO! 再稼働」のメッセージボードを持ってデモ行進をした。

3面

寄稿
原発再稼働に反対し、全原発即時廃炉を求め、現在および未来に不安のない社会を創ろう
「若狭の原発を考える会」共同代表・木原壯林

人類の手に負えない装置、原発

原発は人類の手におえる技術ではなく、事故の可能性が極めて高い装置である。事実、過去40年間に稼働した世界の原発570余機の中の9機が大事故を起こしている。中でも5機は最も深刻な炉心溶融事故(福島原発と同様な事故)である。チェルノブイリや福島の事故では、住民十数万人が財産と故郷を失い、多くが関連死され、癌の苦しみ、発癌の不安にさいなまれている。原発から離れた地域でも、飛来あるいは海を移動した放射性物質によって被曝し、風評被害をこうむっている。
福島の事故炉は高放射線で、事故収束の目途は立っていない。汚染土壌の除去・除染、汚染水の漏洩防止、浄化作業はトラブル続きである。使用済み燃料や放射性廃棄物の完全処理は不可能であり、安全保管法もない。原発事故の要因となる地震や火山噴火の時期と規模の予測も不可能である。 
現在科学・技術は原発を制御できるほど進歩していない。

規制委は国民を愚弄

人類の手におえない原発の再稼働の可否を審査するための「新規制基準」は世界一厳しいと規制委や政府は自負するが、このような基準は、すでに国際原子力機関(IAEA)が各国に推奨していたものである。「日本の原発は完全な安全対策がとられており、過酷事故は起こり得ない」と考えていた日本の規制当局が福島事故まで動かなかっただけである。換言すれば、新規制基準は、大筋において国際水準、それも原発推進のための極めて甘い水準に追いついたとは言えるが、多重防護の第5層である「放射線被曝防護計画(避難など、住民を放射線被曝から守るための計画)」が含まれないなど「世界最高水準」とは程遠い。さらに、新規制基準は、福島の事故原因を深く追及し、教訓とする姿勢に欠け、支払い可能なコスト内で、簡単な追加工事などの部分的改善を行えば、既設原発を稼働出来るように巧妙にデザインされている。原発設備の大改造は要求せず、大部分はそのままである。
なお、今回の高浜原発「審査書」は川内原発の審査書に若干手を加えただけであり、高浜原発の特殊性、例えば、MOX燃料装荷による運転の難しさ、燃料溶融のし易さ、過酷事故時の対応の困難さへの対策、あるいは、600mの長い海水取水路の脆弱性などに関する検討はほとんどない。さらに、大気中および水中の放射性物質除去にほぼ無力である放水銃やシルトフェンス、大量の水素発生時には効果が疑われる水素爆発防止装置など、荒唐無稽とも考えられる装置で事故防止や事故拡大防止ができるとするなど無責任極まりない。

高浜原発は、危険度の高い加圧水型・混合酸化物(MOX)燃料原子炉

再稼働が狙われている高浜原発3、4号機

規制委や政府は、加圧水型原子炉(PWR)は、沸騰水型原子炉(BWR)より安全であるとして、PWRである高浜や川内の原発の再稼働を先行させようとしているが、次の理由により、これは大いに疑問である。
@福島原発事故の32年前に炉心溶融事故を起こしたスリーマイル島原発は高浜原発と同型のPWRであった。A高浜原発の炉内圧力は約150気圧で、BWRである福島原発の約70気圧の倍であり、配管が破断したとき、噴出する冷却水の量と勢いは格段に大きい。B事故発生から炉心溶融まで、PWRでは1時間程度(例:スリーマイル島事故)、BWRでは5〜12時間(例:福島事故)と推定される。PWRの出力密度(単位容積あたり取り出せるエネルギー)はBWRの約2倍であり、それだけPWRの方が炉心溶融しやすい。CPWRの方が、中性子照射量が多いため、材料の照射劣化が進行しやすい。D加圧熱衝撃(圧力がかかったまま冷却するなどの衝撃)を受けると、高圧と相まって、原子炉容器の破裂事故―最悪の事故―を招きやすい。この危険性は、中性子などの放射線の照射量に応じて大きくなるため、老朽原発では大問題である。EPWRでは、格納容器内でも水素爆発が起こる。BWRは窒素を充填しているため、格納容器内では水素爆発は起り難い(福島事故での水素爆発は全て格納容器外)。F過酷事故時の挙動がBWRより複雑。PWRは過酷事故時に相変化(液体、気体の間の変化)を伴い、挙動が複雑となり、運転時の判断を誤らせる。GPWRでは、電源が正常であっても、炉心溶融が起こりうる。このような特徴のため、過酷事故はBWRよりPWRの方が起こり易く、起こると急激である。
一方、高浜原発(プルサーマル炉)は、MOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を使っているため、運転出力の増減作業時に炉の制御が難しい。また、MOX燃料には、次のような特徴があるため、過酷事故を起こしやすい。
@中性子の密度が大で、高出力である。A MOXは熱伝導が悪く、燃料温度が高くなり、燃料が溶けやすい。B核分裂で生成するガスとヘリウム(α線)の放出が多く、燃料棒内の圧力が高くなる。C不均質化(プルトニウムの偏り)が起こりやすい。
さらに、D過酷事故時には、猛毒のプルトニウムが飛散して、吸入すると深刻な内部被ばく(とくに肺)を起こす危険性がある。

原発で重大事故が起これば、避難は著しく困難で、故郷を失う

高浜や大飯の原発で福島原発のような重大事故が起これば、若狭の住民は原発から50q以遠に避難しなければならない。しかし、避難ルートは限られ、それも大雪、地震、事故などで寸断されかねない。放射能汚染を検査、除染する場所も限られる。したがって、避難に長時間を要し、その間、相当量の外部・内部放射線被曝を余儀なくされる。避難困難者は置き去りにされる可能性大である。一方、一旦避難できたとしても、高汚染した故郷に二度と帰れなくなることは、@チェルノブイリ原発の30q圏から避難した12万人の中、事故後29年を経た今日までに帰還し得たのは約300人であること、A福島原発周辺からの避難者12万人以上の帰還の目途が今でも立っていないことからも、容易に推測できる。

重大事故がおきれば

福島の事故は、50q 圏内を高濃度放射性物質汚染地域にし、200 q離れた関東にも放射性物質汚染をもたらした。高浜原発から50q圏内には、1450万人の水がめ=琵琶湖、美しい海岸を持つ舞鶴、宮津、伊根がある。200q圏内には近畿全域、中部・北陸、中国、四国のかなりの部分が含まれる。高浜原発が重大事故を起こせば、これらの地域の全てが、被害地になる可能性がある。一方、福島で海洋に流出した放射性物質は、数年後に米国西海岸にも到達しようとしている。高浜で同様な事故が起これば、閉鎖水域である日本海が高濃度汚染する。

原発廃炉は今がチャンス

関西電力や政府は、運転開始後30年を経て危険性が大きい老朽原発、高浜3、4号機を再稼働させようとしている。これらの原発中の核燃料の放射線量および発熱量は、3年以上の運転停止によって、かなり減少していて、今が廃炉のチャンスである。しかし、再稼働すれば、これらは元に戻る。なお、使用済み核燃料は、原子炉から取り出した後、2年〜5年プール内で冷却すれば、キャスクを使った搬送が可能な状態になる。

エネルギー供給は充分

50年後には世界人口は減少に転じ、エネルギー需要は減少する。また、省エネ機器の開発、水力・火力・その他の発電法の効率化、蓄電法の開発は日進月歩である。天然ガス、メタンハイドレート、オイルシェールなども次々に発見され、太陽光、風力、波動、地熱発電法も進歩を重ねている。したがって、何十万年もの保管が必要な使用済み核燃料などの手におえない負の遺産を残す原発は、近い未来に厄介者になる。なお、今のままエネルギー消費を続けても、石油で200年、石炭で1000年以上まかなえると言われている。原発はなくても大丈夫である。

脱原発は世の趨勢

今、原発再稼働を推進している人達でさえ、原発を徐々に減少させると言っている。早晩、脱原発時代は到来する。それなら、即時、全原発を止めるべきである。大事故によって塗炭の苦しみを味わわないために、故郷を失わないために。

人間性豊かな町づくり

原発立地の多くの人たちが、原発の危険性を認識し、原発のない時代は必ず到来すると予感しながら、脱原発後の生活に不安を抱いている。確かに、5機の原発の廃炉が進められているドイツのルブミンの例(費用5400億円の巨大ビジネス)でも、稼働時に働いていた5500人の中、3600人が解雇された。一般に、廃炉は30年以上継続される巨大ビジネスではあるが、このビジネスで生まれる雇用は原発稼働時の10〜40%程度とされる。したがって、脱原発後の雇用拡大には、町の再生プランが重要になる。ルブミンでは、官民一体となった地域整備や内外からの企業誘致によって1260人の新規雇用を生んだ。周辺では、宅地造成やマリーナの建設も進んでいる。若狭には、美しい海と山がある。歴史資源もある。近い未来に京都、大阪に1時間程度で到達できる交通網も整備されるであろう。これらを利用した、老若ともに歓迎する、人間性豊かな町づくりを考えよう。原発事故によって、住めない町になる前に。

おわりに

上記のように、原発は、人類の手におえず、人類にとって不要であり、桎梏である。それでも、規制委、電力会社、政府、財界は、人間の尊厳や人格権を無視し、経済に牛耳られて再稼働を策動している。規制委の審査結果には、科学的裏付けはない。30年以上を経過した老朽原発が安全なはずがない。
私たちは、再びの大事故を生じさせかねない原発再稼働に反対し、全原発の安全かつ早急な廃炉を要求する。また、国民に犠牲を強いる規制委の解散を要求する。

4面

3・4 東京高裁
「裁判長、戻ってこい」
市東さんの農地裁判 結審強行

反対同盟が署名5663筆を東京高裁に提出
(4日)

3月4日、午後3時から東京高裁102号法廷において、市東孝雄さんの農地をめぐる裁判の控訴審第4回口頭弁論が開かれた。東京高裁は傍聴整理券を配る段階から警備員がたくさん待機してものものしい雰囲気だった。2時半の抽選に当たり、傍聴券を受け取って中に入ると空港の手荷物検査のような装置があり、そこで検査を受けて前に進んだ。左右に通っている通路を右折、少し行くと人ひとり通れる幅を開けて係り員が並んでいた。そこで傍聴券を渡し、法廷へ。
記者席を除き一般傍聴席は85。傍聴希望者は200を超えていて、市東さんと三里塚闘争支援の輪が大きいことを感じることができた。

突然の終結宣言

3時ちょうどに裁判官が現れた。まず弁護側が、用意した控訴理由を陳述した。各章ごとに8人の弁護人が代わる代わる要点を陳述。小作権者(市東さん)の同意がない売買は無効である、小作権が失効していないのに底地を買収することは無効であると主張した。そして裁判長に本件は事実上の強制収用であり訴権の濫用であるから不公平な裁判をしないよう訴えた。
ところが、小林裁判長は空港会社や千葉県の代理人に準備書面の確認をすると、次の期日も決めないで終結を宣言し、さっさと退廷してしまった。
法廷は「証拠調べをおこなえ!」「裁判長戻ってこい」という怒号に包まれた。しばらく法廷内は騒然とし、誰も立ち去る人はいない。すると入口とは反対側の扉から40〜50人ぐらいの廷吏や裁判所職員が現れ、退去をするように促した。最初から終結するつもりだったのでこういう体制をとったのだろう。

3・29栗山公園へ

4時半ごろから場所を変えて報告集会がもたれた。市東さんは「(裁判が)4回までできたことは皆様のおかげです」「これで終わったわけではない。この悔しさをバネに現地で頑張る」と決意を述べた。各弁護士から報告と決意が述べられ、裁判終了後、小林裁判長を忌避したことが報告された。
質疑応答に続き、支援の中から動労千葉、関実、市東さんの農地取り上げに反対する会、市東さんの農地取り上げに反対する会・沖縄、動労水戸の挨拶があった。
まとめとして萩原富夫さんが「残念な結果になったが我々は決して負けていない」そして、5663筆の署名をこの日裁判所に提出したこと、これまでに23054筆の署名が集まったこと、これからも署名運動を続けていくこと、3・29栗山公園(成田市)でおこなわれる全国集会への結集を訴えた。
農地を守るべき農地法を悪用した農地取り上げに断固として反対し、市東さんの農地を守り抜こう。(N)

平和な島に自衛隊はいらない
与那国町民が住民投票を報告

3月6日大阪市内で、関西・沖縄戦を考える会による恒例の講演会がもたれた。今回のテーマは、国境の島・与那国からの報告として「平和な島に自衛隊はいらない」だ。沖縄県八重山郡与那国町の町会議員である田里千代基さんが講師として招かれた。

陸自配備で住民投票

与那国町では2月22日に陸上自衛隊沿岸監視部隊配備部隊の是非を問う住民投票がおこなわれた。中学生以上と永住外国人を含む有権者のうち、有効投票数1077票、賛成632票、反対455票で賛成票が過半数を占めた。自衛隊配備賛成が反対を上回ったのは、急激に進行している人口減少に対して切実な危機感を抱いている町民が自衛隊と家族約200人の人口増や防衛予算によるゴミ焼却施設整備などの即効的活性化に期待したこと、配備予定地ですでに土地の造成工事が進んでいることによる諦めの気持ちなどが大きかったといえる。

闘いは終わらない

主催者あいさつに立った「考える会」共同代表の岩井さんは、「住民投票で陸自配備反対が勝利しておれば、今日の集会は勢いあふれるものとなったでしょう。しかし、残念な結果になった直後の関西における集会だけに、むしろ本土の私たちの運動と責任が問われている」と問題を積極的にとらえ返していく姿勢を示した。
続いておこなわれた講演では、講師の田里さんが重要な提起をおこなった。ポイントを列記すると以下の通りである。「与那国島は日本の最西端の国境にあり、辺境の地ですが、石垣島までの127キロよりも台湾までの距離が111キロと近く、国境を開いて台湾と自由に往来できるようにして台湾経済圏とリンクすれば、与那国は経済的にも発展する。現在は人口およそ1600人程ですが、戦前に台湾と自由に往来していた頃は最大で約1万2千人程もあり、活気があった」「2005年に島民全体で『与那国・自立へのビジョン』をまとめましたが、それは@住民主体の自治・島おこし・まちづくり、A国境交流を通じた地域活性化と人づくり、B定住条件の向上と国土(自然)保全への政策支援の強化、を3つの柱としている。たとえ困難であったとしても、この『ビジョン』を着実に押し進め、国境の島から東アジアのヘソとして開かれた島に転換していくことによって、与那国の繁栄は保証される」「そのためにも戦争は絶対にしてはならないし、陸自配備を撤回させていく必要がある。自衛隊とその家族が入ってきたら保革がほぼ拮抗している現状よりもかなりきびしくなるかもしれないが、しかし闘いは決して終わっていないし、むしろまだまだこれからです。ともにがんばっていきましょう」。
この後、〈関西奄美の基地問題を考える会〉と〈米軍Xバンドレーダー基地反対・京都連絡会〉から特別アピールがあり、質疑・応答ののち、最後に事務局からのまとめで終了した。

安倍政権打倒へ

安倍政権が戦争政治に猛突進しているなか、南西諸島の防衛力強化を打ちだし、排外主義を煽り、与那国・石垣・宮古・奄美に自衛隊を配備し、戦争体制を構築していくことに危機感と怒りを持って闘い、戦争遂行を止めていかなければならない。集会や街頭行動などを積み重ね、改憲阻止・安倍政権打倒の広範な陣形を形成していこう。(島袋純二)

本の紹介
『来るべき民主主義』〜小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題〜
(國分功一郎著、幻冬舎新書/780円+税 2013/9/28)

著者は、スピノザやドゥルーズについての著作がある哲学者。小平市の都道328号線建設問題で住民運動とかかわる中で民主主義とは何か、来るべき民主主義のあり方等について考察しており、なかなか面白い。
著者自身の経験で、東京都で初めての住民による直接請求によって住民投票にこぎ着けるのだが、自らの市長選の投票率が37%だった市長が「投票率が50%に満たなければ住民投票は『不成立』とし、開票もしない」という住民投票条例修正案を提出し議会がこれを可決、結局35%で不成立となって負けてしまった。この中で、住民投票や民主主義のあり方について論じている。
住民投票には首長提案、議会提案、住民の直接請求(リコール請求は別)の3種類があって、前の2つは首長や議会多数派の政治の道具に多く使われてきた(大阪市の橋下市長が5月に目指す住民投票はその最たるもの)。戦後実施された住民投票404件中383件のほとんどは「平成の大合併」がらみで、住民直接請求のうち、「合併」の件以外で実施されたのはわずか12件しかなく、議会や首長がほとんどつぶしてきたという。住民投票というのは、その度に住民投票条例を制定しなければならず不便なもの。2000年の愛知県高浜市を最初に、あらかじめ形式や要件を規定した住民投票制度を設ける自治体が61に増えてきているという。一定数の署名が集まれば必ず実施される。私はこれらのことを初めて知った。著者はこういった住民投票を民主主義の手段におおいに活用できないか、追求している。
反対か賛成かを問うものではなく、住民参加により計画案を見直すべきか否かにした経緯や、ファシリテーター(進行役)付き(住民・行政共同参加の)ワークショップ型の協議の提案には、目から鱗。市民運動の会議、討議のあり方そのものを対象化し、さまざまな方法、アイデアを採用していく。BS(ブレーンストーミング)法、KJ(川喜田二郎)法、ワールドカフェ、マインドマップ等々。
民主主義の実現は本当に難しい。プロレタリアートが権力を取れば自動的にプロレタリア民主主義(「民主主義以上の民主主義」)が実現するわけではないし、民主主義に無自覚な政治団体が、ともすればミニスターリン主義に陥るのは痛苦の教訓である。目指す社会の有り様を運動の中につくり出す(バックキャスティングというらしい)必要がある。問題意識の共有・発展が豊かな議論に発展していく、そういう運動、論議にしていくにはどうすればよいか、この本は示唆を与えてくれる。(多田)

5面

市民生活破壊の大阪市分割構想
住民投票で橋下退場を

1月13日にひらかれた大阪府・大阪市特別区設置協議会で、大阪市を解体して特別区を設置するという協定書が、公明党の裏切り賛成により決まった。3月の府議会、市議会で協定書が承認され、5月17日に住民投票がおこなわれるという。大阪市の有権者が投票し、もし投票数の過半数が賛成すれば、大阪市が廃止されて特別区が設置され、政令市大阪は消滅する。逆に投票者の過半数が反対すると、橋下・維新の会の政治的影響力を断つことができる。

詐欺の手口

橋下市長は、協定書など読む必要はなく、今までの大阪の政治に決別するかどうかを判断すればいいと主張する。特別区設置協議会での資料や議論など市民は知らないだろうと、制度の根幹を捻じ曲げ、事実と異なる説明をする。
「大阪都構想」と言っているが、協定書には大阪都というものは書いてない。いまのままでいくと大阪府のまま、大阪市を廃止して五つの特別区を設置することでしかない。朝日新聞の調査ではこの区割り案すら大阪市民の43%が知らないと答えている。橋下・維新はこれまでも、言うことをころころ変え、うそをくり返してきた。地方制度に関しても、関西州→大阪府・市再編→グレーター大阪→大阪市、堺市を普通市に分割→大阪都(大阪市、堺市、周辺9市で20の特別区)→大阪都(大阪市、堺市の分割)と変えている。2011年の府市ダブル選のときは「大阪市をバラバラにしません」「24区は色とりどりに」と言っていた。

「棄権は危険」と訴える市民団体の名刺型チラシ。投票に行って、反対に○をつけないと勝てない。

消えた4000億円

「大阪都構想」をすすめる理由として、維新は大阪府と大阪市の二重行政をなくすことを挙げてきた。最大の例として地下鉄をあげるが、これはまったく二重ではない。地下鉄を民間に売り払うことで財源を生み出そうとしているだけ。市バスも同じだ。大阪市民は2つ大学があっても二重だとは思っていない。図書館も、府立と市立があっても誰も困っていない。
当初、維新は大阪市をなくして「大阪都」にすれば無駄がなくなり、年間4000億円の財源が生まれる、と言っていた。ところがこれは真っ赤なウソだった。浮くのはわずか1億円と言われている。逆に特別区設置の初期費用は680億円、さらに年間20億円程度のランニングコストがかかる。橋下は今では「財政効果なんて意味がない」とうそぶいている。

目的はカジノ

橋下は、大阪を世界の中で闘える街に変える、それが今できていないのは、権限と予算が大阪府と大阪市に分かれているからだと言う。大阪市を解体して具体的に計画しているのは、まずカジノである。カジノで大阪経済は活性化しない。すでにアメリカニュージャージー州アトランタでは2014年に5つのカジノが経営破綻に陥り、カジノビジネスが崩壊した。
さらにリニア(新幹線)の大阪延伸をもっと早めて関空まで結ぶ。地下鉄なにわ筋線を作る、戦略特区として医療の公的制度を民間ベースに変えていく、新しく立地する企業の法人市民税を免除する、雇用規制を大幅に緩和する。教育でも、徹底した競争型の教育に変えていく。

市民生活バッサリ

これまで、維新は市民サービスを軒並み削減してきた。大阪市を解体して住民サービスが向上することはあり得ない。
毎年4000億円浮くというのは大ウソだった。大型公共事業をやるには、大阪市の財源を「大阪都」に吸い上げることで財源を作るしかない。大阪市の財源は5つの特別区に全部割り振られるのではなく、「大阪都」が上前をはねる。今までの大阪市の市民向け予算は減らされる。さらに、市民の財産を切り売りする。地下鉄を売ってしまう、市バスを売ってしまう、住吉病院をやめてしまう。スポーツセンターやプールの削減など、すべて協定書に盛り込まれている。
介護保険や国民健康保険は「大阪都」も特別区もやらない。一部事務組合を作ってそこがやる。一部事務組合には市民の声は全く反映されない。特別区になれば、より身近なところで住民サービスができると言っているがまったくのウソだ。

命脈つきた維新の会

維新は、不祥事のオンパレードで政党としての体をなしていない。飲酒ひき逃げ議員がいた。女子中学生をLINEで威圧・恫喝する議員もいた。買収容疑で維新の党各議員の陣営から逮捕者が続出した。迂回寄付(税逃れ・脱法行為)の議員も、政務活動費(政務調査費)不適切支出の議員も続出した。市民の陳情書をゴミ箱に入れて、その写真をブログにアップする議員までいた。
橋下の目玉施策公募区長や公募校長では、万引き(窃盗)事件、セクハラ事件、パワハラ事件などが続発した。橋下の“盟友”中原教育長による“戦慄が走るほどの”パワハラ事件 。橋下任命の交通局長による入札介入。
勤務実態が不明な橋下市長の特別秘書への高額報酬、橋下自身の“コスプレ”不倫発覚(愛人発覚)スキャンダル含めて、数え切れないほどの不祥事が続出している。
橋下が市長としてやった様々な不当労働行為や人権侵害では労働委員会でも裁判でも橋下側の負けが続いている。
党是というべき「大阪都構想」も府・市の議会で「協定書は無効」という決議があげられ、葬り去られようとしていた。橋下の政治生命が終わる崖っぷちまできていた。
ここで公明党が救いの手を伸べた。

改憲へのヤミ取引

公明党は、「一般市以下の、自立性も魅力も無い、発展・競争性も発揮されない自治体が5つも誕生することになります。統治機構の一元化も、ニア・イズ・ベターも、4000億円の効果額も、中核市並みの特別区の実現も、全ての目的が達成できないことを証明したのが、この特別区設置の協定書であった」とまで言って協定書に反対していた。 ところが昨年末、態度を急変させた。住民投票の実施までは維新に協力するという。府・市議会でも大阪市を5つの特別区に分割する協定書に賛成するという。もともと公明党は橋下と裏で取引してきた。2012年の衆院選で維新は、公明党が候補を立てる大阪と兵庫の6選挙区で立候補を見送った。それと引き替えに公明党が「都構想」に協力することになっていた。しかし「都構想」のあまりのでたらめさに公明党として反対の立場をとらざるを得なくなった。これは橋下の命取りになりかねない事態だった。橋下は「公明にやられたままで人生を終わらせることはできない。やられたらやり返さないと納得できない」と絶叫した。
今年に入り安倍首相と橋下は「(改憲は)与党だけではできない。維新の党に協力していただければいい」、「憲法改正は絶対必要だ。安倍首相にしかできない。できることは何でもしたい」とエールを交換しあった。1月19日には松井府知事と菅官房長官が会談、この二人が中心となって絵図が書かれたという。憲法改悪には衆参両院で3分の2の議席が必要となる。自民党から見れば肝心の9条改憲で公明は不安定要素だ。維新と組めば3分の2を上回り、いつでも公明との連立を解消することができる。権力中枢にしがみつきたい公明党がヤミ取引に応じたという構造だ。
橋下は「『都構想』の住民投票は改憲の予行演習」とまで言い出した。

維新を落とせ

「都構想」を葬り去れば橋下・維新の会の政治生命は終わる。安倍・菅の描く改憲の道筋も思惑通りには行かなくなる。統一地方選挙、住民投票はそのためのたたかいだ。地方選で維新の候補を落とそう。住民投票での反対投票を組織しよう。
今回の住民投票には大きな制度的欠陥がある。条例でおこなわれる住民投票の場合、成立のための投票率を決めるが、今回はいくら投票率が低くても、投票総数の過半数で決まることになっている。反対を投票行動にまで貫く必要がある。そこに向かって「大阪市解体反対」で連携した運動を大きくしていこう。(井上 弘美)

橋下の手先 中原教育長辞職
政治介入、口元チェック、パワハラ…

府知事時代の橋下に民間校長として登用され、その先兵として教育破壊を推進してきた中原徹大阪府教育長。昨年秋、この中原による犯罪行為が明るみに出るや、怒りの声が渦巻き、ついに中原は辞任に追い込まれた。11日にひらかれた府教育委員会で自ら辞職を表明し、12日に辞職した。

教育委員を脅迫

立川さおり教育委員が、中原からパワハラを受けていたことを、昨年10月29日の府教委会議の場で公にした。その内容は、認定こども園の定員変更をめぐる議論のなかで、中原が立川委員に対して「誰のおかげで教育委員になれたと思っているのか。あくまで(定員)25人以下との意見を述べるのであれば、任命してくれた知事に対する裏切り。知事を後ろから刺すようなもの。自分も不信任が出され、職を追われて、辞めなければならない。その時は名誉毀損で訴えますよ」などと脅迫・罵倒したというもの。
今年、2月20日、府教委は、第三者委員会の調査報告書の内容を公表した。報告書は中原教育長による立川教育委員と4人の府教委職員らへのパワハラを認定した。

緊急アクション

府議会では、2日、野党3会派(公明、自民、民主)が「辞職勧告決議案」を議長に提出。 5日、府教委が入る大阪府庁別館前で「パワハラ中原辞任せよ緊急アクション」が取り組まれ、抗議の声が響き渡った。主催は、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク。このアクションにさきだち、「中原教育長辞任要求」署名(追加分)を府教委に提出した(写真)。累計署名数は、団体133筆、個人3024筆におよんだ。
3月10日には、政令指定都市である大阪市、堺市を除く大阪府下41市町村の教育長が、この問題で府教委が「毅然とした対応」をとるよう求める要望書を提出していた。

6面

視座
人質2人を見殺しにした安倍
有志連合下で派兵・参戦狙う(下)
速見 賢三

「『イスラム国』対策」は戦争である

アメリカも安倍も、「テロリストには屈しない」と言い続けるが、「イスラム国」はひと握りの「テロリストのグループ」ではない。広大な領土を実効支配し、行政機構を持ち、軍隊を持ち、それなりの民衆の支持を集め支配している「一国」そのものだ。「イスラム国」と対峙するということは、「ひと握りのテロリストグループ」を相手にするのとはわけが違う。戦争だ。
安倍は、「2億ドル」発言で、「イスラム国」に宣戦布告をおこなったのだ。安倍政権は果たしてどこまでその認識をもっていたのか、決意と体制を持ってのぞんだのか。そもそもわれわれは、「『イスラム国』との戦争」を聞かされていない。誰が決めたのか。安倍が勝手に決めて良いのか。

人道・難民支援を妨害

中東各地で人道支援・難民支援をおこなっているのは安倍政権でもなんでもない。その多くがNGOの活動だ。これまで日本はイスラム世界から、「戦争をしない国」として評価されてきた。従って中東諸国のムスリム(イスラム教徒)は日本に対しては比較的友好的であった。しかし湾岸戦争、イラク戦争あたりから、アメリカ支持を明確化させ始めたことでムスリムの意識も変化し始めている。そして今回の安倍演説で、「『イスラム国』との戦争」を明確化させたことで、NGOなどの難民支援活動に困難が生じ始めている。日本からのNGOスタッフが身の危険を感じざるを得なくなり、活動をセーブせざるをえなくなっている。安倍のやっていることは、人道支援・難民支援ではなく、その妨害だ。

実態はグレーゾーン

ところで、安倍のいう「『イスラム国』と戦う周辺諸国への2億ドルの拠出」の実態はどうか。政府の発表によれば、医薬品や食料、仮設住宅建設などの人道支援・難民支援も含まれてはいるが、「テロリストや武器の流入を防ぐための高性能の監視カメラを周辺国の国際空港に設置するなどの国境管理費用」という軍事や治安とのグレーゾーンも含まれている。安倍政権の発表を鵜呑みにすることはできないが、政府発表ですら「グレーゾーン」の部分がかなり含まれているのだ。そして、実際に中東の各国に拠出されたものが、そのまま人道支援・難民支援に使われるかどうかは不明である。
さらに2月17日に岸田外相が発表した「テロ対策支援を1550万ドル(約18億円)に倍増」では、「国境管理、当局の捜査能力の向上、テロ対策装備」に当てるとしている。これは、「人道支援・難民支援の2億ドル」の中の「国境管理費用」と何ら変わらない。「2億ドル」には「テロ対策費用」も含まれていたことがはしなくも暴露された。 本当に人道支援・難民支援に拠出しようと考えるなら、日本が使用目的をあらかじめ明記することはやめるべきであり、また周辺諸国に軍事目的の転用をさせないことが必要であり、そのためにはNGOやイスラム諸国の赤十字に相当する赤新月社などに委ねるしかない。安倍の言う「2億ドル」は、人道支援・難民支援を口実に、「『イスラム国』と戦う周辺諸国への支援」であると多くのムスリムは感じている。

「人質殺害」を待っていた安倍政権

安倍は単に何もできなかったわけではない。人質を見殺しにしただけでもない。むしろ「イスラム国」に人質が殺害されることを予期して、それを契機に「イスラム国」の残忍さを最大限アピールして民衆に恐怖心を植えつけ、「イスラム国」と戦うこと、テロと戦うことがあたかも正義で必要であるかのように錯覚させ、安全保障体制を一気に強化しようと企んでいた。二人の命を、安倍がやりたい戦争体制の強化に使ったのだ。実に卑劣である。
そして矢継ぎ早に、
@邦人救出のための自衛隊派遣
A日本版CIAの創設 B海賊対策を口実に設けたアデン湾に面したジブチの自衛隊拠点を、多目的使用に変更し、恒久的海外軍事基地拠点にする
C周辺事態法から「周辺」という地理的概念を失くし、米軍以外の他国軍への支援もおこなえるようにし、給油、武器・弾薬の供給も可能とする
D自衛隊の海外派兵を、これまでの「特措法」ではなく、いつでも派兵できるように「恒久法」にする
Eホルムズ海峡の機雷掃海
FこれまでのODA(日本政府の途上国支援)を見直し、他国軍への支援も非軍事に限って可能とする(人道支援・難民支援と同じ手口)。さらにODAで軍事援助も可能にする G2016年の参議院議員選挙の後に改憲の発議をおこなう
H渡航自粛要請、さらにシリアに行こうとしていたフリーランス・フォトグラファーの杉本祐一さんにパスポート返納命令を出し、実質的な渡航制限、取材禁止をおこなった
Iさらに、「イスラム国」に「罪を償わせる」という「報復宣言」をし、「イスラム国」との戦争に前のめりに突き進んでいる。

「自己責任」論と罵倒

湯川さんと後藤さんが「イスラム国」に拘束されていることが判明して以降、「自己責任」論が吹き出した。「危険な場所に勝手に行ったから政府には救出する責任はない。自己責任」という論理だ。ジャーナリストは、ある程度危険が予測される場所にも取材に赴く。それは官製の報道では伝えられない事実を伝えるためだ。「自己責任」論とは、国家の言うとおりに黙って従っていればいい、という論だ。
自民党の高村副総裁は、国家に従わずに危険地帯に取材に行った後藤さんの行為は「蛮勇」だと罵った。しかし一方、日本国家は、兵士が戦争で国家のために命を落としたら、「国のために命を捧げた英霊」として祭り上げるのだ。「靖国」に祭り上げ、「国民は同じように国家のために命を差し出せ」と言うのだ。
安倍は、「最高責任者は私」と豪語し「人命最優先」と言っていたのだから、二人を救出できなかったこと、「国民の命」を守れなかったことに謝罪し、首相を辞任するのが筋である。
後藤さんの母親は何度も安倍との面会を求めたがことごとく拒絶された。いまだに「お悔み」のひとつすら言おうとしない。

なぜ「イスラム国」は伸長したのか

なぜ「イスラム国」が伸長し、ムスリムの中に一定の支持を拡大しているのか、そしてついには「一国」にまで勢力を伸ばしたのかを見なければいけない。それは、もはや決死の戦いにしか希望を見いだせないほどにまで、欧米帝国主義諸国がムスリムへの侵略と殺戮をおこなってきた結果であろう。石油資源の宝庫である中東は、アメリカの世界支配にとっては不可欠であり、アメリカはあらゆる手段を使って支配し続けてきた。時には独裁政権に資金や武器を豊富に提供し、従わなければ武力で崩壊させてきた。時には、反政府武装勢力やイスラム主義勢力にも武器や資金を提供してきた。中東支配のために、何度も戦争を仕掛け、無数の人々を殺戮し難民に追いやってきた。
それは、アメリカやヨーロッパに暮らす多くのイスラムの人々が感じている現実でもある。差別と迫害にさらされ、仕事も見つからず、居場所がなく希望を見出せない。3万人とも4万人とも言われる人々が、「イスラム国」に「義勇兵」として駆けつけている現実はそれを物語っている。
欧米帝国主義諸国が言う、「自由・人権・平和・民主主義」はムスリムには適用されない。このダブルスタンダードに対して、「イスラム国」は西欧型の民主主義も人権もことごとく否定する。キリスト教やユダヤ教、欧米の文化や価値観も否定する。アメリカや西欧は、そして今回、日本も加えられたが、ことごとく否定の対象とされた。しかしかれらによる「無差別のテロや殺害」とされるものは、アメリカ(とそれに加担する西欧諸国や日本)が作り出した結果なのだ。

戦争とテロの応酬

アメリカのオバマ政権は、「イスラム国」への空爆を強め、地上軍の派兵も含めた戦争の拡大を検討し始めている。日本も含めた欧米諸国が、「テロとの戦い」と称して「イスラム国」や「原理主義勢力」に対して、空爆や地上戦も含めた攻撃を強化すればするほど、それは一般のムスリムに多大な犠牲を強いる。
一人の「テロリスト」を殺害するために、何十人何百人の一般民衆が犠牲とされる。こうした無差別殺戮をおこなえば、それへの報復として「イスラム国」や「原理主義勢力」は、欧米諸国や日本の民衆や、キリスト教徒やユダヤ教徒まで攻撃する。そして空爆や地上戦で家族を奪われた人々は、「イスラム国」に兵士として身を投じる。これらはすべて、アメリカの理不尽な中東支配とそこでのおこないがもたらした結果である。それを改めない限り「テロ」は無くならないのだ。むしろ憎悪の連鎖が拡大し、「戦争とテロ」の応酬が続く以外にない。

有志連合下での日本の参戦、空爆と地上戦を許すな

アメリカやヨーロッパ各国では「テロ防止」の名の下に、政府に批判的な意見を持つ人々やイスラム教徒に対して、無差別の監視と逮捕・拘禁、射殺が始まっている。
中には全く無関係の人も含まれており、抗議の声が上がっている。「テロとの戦い」に異を唱えるものはすべてテロリストの同調者とみなす弾圧が始まっているのだ。日本でも無縁ではない。公安警察はイスラム教徒への監視を強め、民主党も共産党も二人の人質事件の際に安倍政権への批判を「自粛」した。「テロとの戦い」であれば何をやっても許されるという風潮が始まっている。

安倍権を倒せ

今回の事態を通して、我々の住む日本は、安倍の勝手な「宣戦布告」によって、「イスラム国」との戦争に引きずり込まれた。このことをはっきりと認識しなければならない。日本は戦争の当事国になったのだ。「テロとの戦い」の名のもとに、日本は本当に戦争をするのかが問われている。ムスリム殺害の加害者となることを拒否し、そして被害者にならないためにも、安倍政権を打倒し、アメリカや西欧のムスリムへの戦争と殺戮をとめよう。なによりも自国・安倍政権の参戦を許すな。空爆と地上戦を許してはならない。
そして「戦争とテロの応酬」を乗り越える道は、民衆自身の自己解放、自己決定に根ざした「アラブの春」の闘いを、イスラム社会においても、欧米や日本においても、目に見える形で実現することだ。(おわり)