倒せ 安倍戦争内閣
2年内に改憲発議・国民投票狙う
1日、東京・新宿で「安倍の多重暴力に抗う2・1新宿デモ」がおこなわれ120人が参加。「人質事件を軍備拡大に利用するな」の声があがった(主催:安倍のつくる未来はいらない!人々) |
もはやこれ以上、安倍政権の横暴を許してはならない。
「イスラム国」による日本人人質殺害事件を引き起こした責任は、安倍政権にある。ところが安倍は自己の責任を不問に付し、人質事件を「好機」とばかりに、日本を戦争国家に作りかえるための政策を矢継ぎ早に打ち出している。
4日、安倍は憲法改悪のための国会発議と国民投票の実施時期を「来年夏の参院選後」と具体的に言及した。そして自民党の船田元・憲法改正推進本部長に「改正テーマ」を絞り込むために、与野党の調整を進めるよう指示した。
改憲をめぐって昨年10月自民党は、@大規模災害や有事の際に個人の権利を制限する「緊急事態条項」、A次世代への負担先送りを制限する「財政規律条項」、B国や国民の環境保全の責任を定めた「環境権」など3点を各党に提示している。@の「緊急事態条項」は、国家が戦争遂行のために言論統制、集会・デモの禁止、団体の解散をおこない、さらには反体制的とみなした個人・団体への監視、逮捕、拘束などをも合法化することに道を開くものである。この「緊急事態条項」の提案に、共産党以外の全ての政党が賛成した。恐るべき事態が国会で進行している。
また4日におこなわれた衆院予算委員会の集中審議で、安倍は人質事件にかんする情報の一部が特定秘密保護法の指定対象になる可能性があると言及した。これも重大な問題である。安倍は、政府にとって都合の悪い事実は「特定秘密」として隠蔽しながら、なし崩しのうちに米軍が主導する有志連合の一員として、中東地域への軍事介入に荷担しているのである。秘密保護法が制定される過程で危惧されていた事態が早くも現実のものとなっている。
7日には、シリアに渡航を計画していたフリーカメラマンの男性(58)に対して外務省が旅券返納を命じ、渡航を禁止した。これは許しがたい報道規制である。昨年9月からはじまった「イスラム国」にたいする米軍を主力とする有志連合の空爆は2000回におよぶ。先月、米ウォールストリートジャーナル紙(電子版)は米中央軍幹部がこの空爆によって「イスラム国の戦闘員6000人を殺害した」と報じているが、「イスラム国」が誕生する原因となったのは、アメリカによるイラク侵略戦争(03年)である。そのアメリカによる空爆がさらに事態を悪化させ、多くの民間犠牲者を生み出している。安倍はこうした真実を報道することじたいを禁じたのだ。
安倍は12日、衆参両院でおこなった施政方針演説で「戦後以来の大改革」を声高に叫んだ。その中身は、「TPP交渉の妥結」「法人税率を20%台に大幅引き下げ」、「混合診療導入による国民皆保険制度の解体」、「労働時間規制の撤廃」という露骨な大企業・富裕層への優遇策であり、労働者人民から生きる権利をはく奪する政策である。
さらに日米同盟の強化の下で、原発再稼働の推進と辺野古新基地建設を歌い上げた。安倍はこの演説においても「この道しかない」というフレーズを繰り返したが、その道とはまさに「戦争への道」である。
この数週間で、「安倍戦争内閣」がその姿をはっきりと浮かび上がらせた。「安倍戦争内閣を倒せ」の声を全国各地からまきおこそう。
新労働時間制度 国会提出阻止を
厚労省は、働いた時間でなく成果に応じて賃金を支払う新しい労働時間制度(「高度プロフェッショナル労働制」=残業代ゼロ=「ホワイトカラー・エグゼンプション」の復活)について、年収1075万円以上(最終的には省令で決める)の労働者を対象とする案を、諮問機関である労働政策審議会労働条件分科会に提出していたが、13日、同分科会は、労働者側の反対を押し切り、厚労相に建議した。
これをうけて安倍内閣は、今通常国会に労働基準法改悪案を提出し、来年4月施行を狙う。
新労働時間制度の導入は安倍政権が進める労働法制3改悪(派遣法、解雇自由と並び)の目玉で、労働基準法改悪案の柱となり、戦後労働法制の根本からの破壊である。
「1日8時間まで」などの労働時間規制の適用が除外され、残業代・休日手当ても支払われなくなる。過労死も促進される(本紙157号参照)。
国会提出阻止にむけ、反対運動を強化しよう。
東京で共同アクション
鹿児島と福島の女たち 2・4〜5
鹿児島と福島の女性たちが経産省前で「原発再稼働反対」をアピール(2月4日 東京) |
2月4日、5日の二日間にわたって、「川内原発再稼働阻止・原発いらない! 鹿児島の女たち&福島の女たちの共同アクション」が東京でおこなわれた。鹿児島・福島からは、それぞれ十数人がかけつけた。それぞれの企画に多くの人々が参加した。
まず一日目は経産省前行動・規制委前行動・省庁申し入れ交渉が並行して取り組まれた。交渉は経産省・規制委・内閣府へ事前に提出した質問への回答から始まるものだったが、とっくに論破されたような使い古された言い回しを漫然と述べるだけのおざなりなものだった。またお互いに責任をなすりつけあうようなニュアンスを含ませながら、誰も責任の所在を認めようとしない醜い姿もさらしていた。特に経産省は、当日庁舎前での申し入れ書の受け取りを拒否するという悪質な態度だった。
その後に全体が合流して官邸前抗議。「電力会社の制圧下で声をあげられない人々も危機意識だけは抱き始めている」等の発言があった。
さらにこの日は全労協の労働者集会との連携がおこなわれると共に、定例の九電東京支社抗議行動・東電本店前抗議行動にも合流し、長い一日闘争をやりぬいた。
二日目はあいにくの悪天候で、午前中のテント前フリー集会は屋内会場に変更。「霞が関ランチデモ」を経て午後の院内集会に。鹿児島県全体を対象としたどのアンケートでも原発反対が過半数なのに、知事を先頭に行政はまるで福島事故などなかったかのような態度で押し通しにかかっている、福島で本格化しようとしている焼却炉はミニ原発、等の発言。
「障害者」の女性は、福島事故では実は要介護の高齢者の置き去り餓死が起こっていたこと、放射能問題を通して優勢思想の広がりへの懸念をアピールした。さらに、柏崎刈羽原発、伊方原発地元からの報告、議員特有の闘いを模索する姿勢を鮮明にした山本太郎さんら国会議員からのあいさつ等があった。
2・12 高浜 審査基準適合弾劾する
運転差し止め求め仮処分
大飯3・4号機 高浜3・4号機
1月28日福井地裁で、関西電力大飯原発3・4号機、高浜原発3・4号機の運転差し止め仮処分を求める審尋がおこなわれ、午後4時から福井県弁護士会館で、記者会見が開かれた。
会見で、河合弘之弁護人が審尋の報告をおこなった。この審尋の担当裁判官は昨年5月21日に運転差し止め判決を出した樋口英明裁判官である。「高浜原発の基準地震動を370ガルから550ガルに、また550ガルから700ガルに修整したが、どんな耐震工事をおこなったのか、また予定しているのか」と問い、関電は「根本的な工事はしていない」と答えた。
井戸謙一弁護人は「関電は根本的な工事をやっていないことを認めた。有利な事実だ」と追加した。
高浜原発再稼働阻止へ
さらに裁判官は、使用済み核燃料貯蔵槽や原子炉の計測器の耐震性、免震重要棟の耐震性や放射線遮蔽能力などについて2月27日までに回答を求めた。次回審尋は3月11日。弁護団は3月11日で審尋を終えるよう強く求めた。
なお、上記仮処分申請とは別に、1月30日、滋賀県の住民29人が「高浜原発3・4号機の再稼働禁止」を求めて、大津地裁に仮処分を求めている。
2面
3・4市東さん裁判、3・29成田集会へ
三里塚闘争 意気あがる関西実旗開き
関実旗開きで発言する三里塚空港反対同盟の 萩原富夫さん(1月18日 神戸市内) |
1月18日、三里塚から萩原富夫さんを迎え、三里塚決戦勝利関西実行委員会「2015年団結旗開き」が神戸市内でひらかれ、70人が参加した。
三里塚の闘いは今、市東さんの農地裁判の農地法・行政訴訟(控訴審)の実質審議をめぐる厳しいせめぎ合いの局面を迎えている。また昨年明らかになった「東京オリンピック」を旗印にした第3滑走路計画はじめ成田空港の機能強化・拡張計画が、三里塚はじめ北総地域住民に農業破壊・地域社会の破壊、農地取り上げ、騒音・健康破壊として襲いかかろうとしている。まさに2015年は、三里塚にとって重要な転換点になろうとしている。
反対同盟は、萩原進事務局次長の急逝という大黒柱を失う中で、昨年1年を通してその傷を癒し、日々の攻防をがむしゃらに闘い抜き、新たな闘いの布陣・態勢、決意を整えてきた。
萩原さんの死こえて
はじめにあいさつに立った萩原富夫さんは、義父でもある進さんを亡くしてからの1年を振り返り、反対同盟は事務局メンバーを中心に「よく話し合い、一人一人が進さんになりきって闘い、この1年いい闘いができた」と報告。また今年は反対同盟結成から49年、市東さんの農地裁判も3月4日の控訴審をはじめ「毎回が結審(されかねない)という構えで闘う」と決意を明らかにした。昨年3月、東京で新しい人たちとつながろうと全国集会を開催したが、今年は成田市役所前の栗山公園で全国集会を開催する。とりわけ広く成田市民・空港周辺住民と合流する集会としてかちとりたいと語り、全国からの結集を訴えた。率直に気負うこともなく、困難をのりこえ新しい反対同盟と三里塚闘争を担いぬいていく、心意気を示すアピールだった。
市東さんの農地を守る沖縄の会・金治明さんからのメッセージに続いて、急きょ沖縄から駆けつけた知花昌一さんは、日々24時間続く辺野古新基地建設をめぐる現地攻防を報告した。部落解放同盟全国連の滝岡広治さんは住宅闘争と新たな展望、狭山再審闘争の現状について報告し、共に闘う決意を表明した。
明石住民の会・日原年和さんの音頭で乾杯。
関実世話人である山本善偉さんの自主出版本『ライオン吼える』の出版祝いがおこなわれた。出版に関わった方々が参加し、それぞれお祝いの言葉を述べた。善偉さんには花束が送られた。
続いて永井満関実世話人が、関実38年をふりかえりこれからも反対同盟と一心同体となって闘い抜く決意を明らかにした。さらに北上哲仁川西市会議員のあいさつ、被災地雇用と生活要求者組合・長谷川正夫代表が、阪神淡路大震災から20年の闘いを報告。さらに「浪速の歌う巨人」趙博さんの歌とギター、知花昌一さんの三線・民謡、そして「劇団ほうき星」、ウクレレ漫談、マジックと盛り上がった。そして永井・山本両世話人はじめクリスチャンによる讃美歌、最後に参加者全員で円になって、反対同盟の歌、インターナショナルを大合唱して旗開きを終えた。
3・4東京高裁へ
市東さんの農地裁判・控訴審が3月4日、東京高裁で開かれる。市東さん側の控訴趣旨と空港会社・千葉県側の陳述書が提出されたなかで、何としても実質審理の扉を開くための闘いだ。農地法裁判と一対の耕作権裁判(一審千葉地裁)の5〜6月再開も決定した。
農地・農民、農業を守るための農地法をねじまげ、「証拠」まで偽造して農地強奪をはかる国・空港会社、千葉県の企みを粉砕しよう。
3・4(水)
市東さんの農地裁判
第4回口頭弁論(控訴審)
◇午前10時半
東京高裁前、集合
◇正午 デモ
(日比谷公園霞門から)
◇午後2時10〜30分
整理券交付
◇午後3時 開廷
◇終了後、報告会
JAL 最高裁上告棄却
「裁判所はどこを向いているのか」
JAL不当解雇の撤回を求めた訴訟に対して最高裁は、客室乗務員(原告71名・内田妙子原告団長)について2月4日付(第二小法廷鬼丸かおる裁判長)で、パイロット(原告64名・山口宏弥原告団長)については2月5日付(第一小法廷金築誠志裁判長)でいずれも上告棄却・不受理の不当な決定をおこなった。
会社更生中のJALが2010年末、病欠歴と年齢の高さを基準に、パイロットと客室乗務員165人の解雇を強行したもので、実質は組合を狙い撃ちした大量不当労働行為解雇、国鉄に続く国が介入し仕組まれた国家的不当労働行為事件だったのである。更生計画の実施を優先し、整理解雇法理を解体させようという事案であった。そのために全国の労働者が労組を超えて支援組織をつくり闘いを支援して来たのである。(詳しくは本紙166号)
この決定を受け、内田妙子原告団長は、「まともな審理がおこなわれたとは到底思えない。労働者が不当な判断で社会の隅に追いやられるような社会や企業のあり方でいいのか、と問うていきたい」、山口宏弥原告団長は、「裁判所はいったいどこを向いているのか。最初から結論があったとしか思えない。空の安全と雇用を守るという両面からのたたかいを支援してほしい」と怒りをもって訴えている。支援・共闘の闘いを続けよう。
審理放棄の暴挙
今回の決定は、上告理由書や上告受理申立理由書が到達してからわずか4カ月足らずで、上告人が補充書1、2を提出し、さらに3、4と提出を予定している旨通知しているにもかかわらず、実質的な審理を何らおこなうことなく、上告棄却・上告不受理という決定をおこなった暴挙で、司法が政府の前に屈したものである。
これは東京地裁・東京高裁による解雇正当の不当判決を確定させたことを意味する。
この決定には重大な問題がある。2014年6月の東京高裁判決は、更生計画を遂行する管財人は「合理的な経営判断」をするから不当なことはしないという前提で、解雇を容認する判決を出した。JALが解雇時点での余剰人員の立証をおこなっていないこと、解雇回避努力義務を尽くしていないこと、解雇者に多くの組合活動家が含まれていることなどの事実を無視、整理解雇や不当労働行為の法理の解釈に重大な誤りを含む不当なもので、違憲、整理解雇法理の今後の解釈に関わる労働法上の大問題だったのである。
2014年8月には、東京地裁でJAL管財人の不当労働行為との判決、今年1月28日には大阪地裁がJALの整理解雇者選定の手続きの不当性を認定する判決を出している。これらはこのJAL解雇事件の主要な争点に関わっての重要な判断であった。さらに、国際労働機関・ILOが、大量の解雇者を放置しながら、JALが新たな労働者を雇用し続けていることを不当労働行為として問題にし、運輸関係の国際労働組織も、解雇された労働者の職場復帰を強く求めていたのである。
これら多くの点からすれば、最高裁は、このJAL解雇事件の問題点を一から洗い出す慎重で勇気ある歴史的な判断が求められていた。にも関わらず、このことを全く放棄して棄却・不受理(門前払い!)した暴挙だ。安倍独裁政権が今年もくろむ一連の雇用・労働法制の三改悪の最後の中心=解雇自由を尻押しする〈司法の死〉である。
(森川)
「せめて原発を即時廃炉に」
2・9大飯差し止め裁判控訴審
9日の金沢は雪の降る寒い日だった。この日、大飯原発差し止め訴訟・控訴審第2回口頭弁論が名古屋高裁金沢支部でひらかれた。傍聴席60を求めて、九州、関西、関東、北陸各地から駆けつけてきた100人近くの人々が並んだ。
事務局と抽選に外れた人たちは記者会見会場に移り、原告、弁護団、傍聴者の到着を待った。記者会見では最初に、原告団長の中嶌哲演さんから「原判決では250キロ圏内の住民の人格権を認めたが、控訴審ではさらに万が一にも事故を起こさないために、再稼働を止めねばならない」と穏やかな訴えがあった。
弁護団事務局長の笠原一浩さんが裁判の流れを説明。つぎに原告として意見陳述した福島の地脇美和さんは法廷の感想を話した。福島原発告訴団事務局長でもある地脇さんは意見陳述で「原発事故前の生活、環境に戻すことができないのだから、せめて、原発を即時廃炉にすることが、償いの第1歩であり、人間が地球で生活させていただく条件だと思います」と裁判長に迫った。
舌鋒鋭い弁護団からの報告がつづき、「基準地震動は過去の平均像による目安でしかなく、誤差が大きい」、「過酷事故が起きた場合、逃げ場がない」、「京都の水がめは琵琶湖だけであり、福島なみの事故が起きたら、7日間も水が飲めない」など、玄海原発弁護団からは「1万人訴訟をめざしており、すでに8900人が原告になっている」ことなどが報告された。
マスコミからいくつかの質問があり、志賀原発訴訟原告団長、大飯・高浜原発再稼働差し止め仮処分弁護団、映画『日本と原発』の監督・河合弁護士が発言。地脇さんが第2次告訴への参加要請をおこない、最後に弁護団長の佐藤辰弥さんが締めくくって、記者会見を終えた。告された。
次回の口頭弁論は4月15日。傍聴席60を埋めつくそう。
経産省前テントひろば応援で集会
2・26 不当判決阻止しよう
7日、東京・千代田区の日本教育会館で「テント撤去・原発再稼働を許すな! 2・7集会」が開かれた。主催は〈経産省前テントひろば〉と〈テントひろば応援団〉。300人が参加した。
東京地裁で審理中の経産省によるテント撤去・損害賠償請求の裁判は、昨年12月の第9回口頭弁論で突然結審が通告された。弁護団は直ちに裁判官の忌避を申し立てた。次の裁判が開かれる今月26日に判決が下される恐れが大きい。
集会の司会は講談師の神田香織さん。発言は、淵上太郎さん(経産省前テントひろば)、鎌田慧さん、高松勇さん(小児科医)、森園かずえさん(原発いらない福島の女たち)、青柳行信さん(九電本店前ひろば)、ミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)、河合弘之さん(テント裁判弁護団長)。
弁護団長の河合さんは「思いつめず、それぞれの命を大切にし、形を場所を変えながらでも持続すること」を訴えた。
2月26日は、12時半から経産省前で、午後2時半から東京地裁前で抗議集会。東京地裁を包囲し、不当判決を阻止しよう。
3面
鹿児島「川内方式」の適用を許すな
30キロ圏 自治体を排除
結論ありきの「地元同意」
安倍政権は、昨年11月7日、鹿児島県伊藤知事の「同意表明」を受け「地元同意が得られた」とし、この方式を「川内方式」として、高浜原発をはじめ各原発に今後適用し、再稼働を加速しようとしている。マスコミも伊藤知事の「同意表明」をもって「川内原発は新規制基準の審査に合格した。地元同意手続きも完了し再稼働が確定」と無批判に報じている。
本稿では「川内方式」の問題点について4点にしぼって明らかにしていきたい。「川内方式」の適用を許さず川内原発・高浜原発の再稼働を阻止していこう。
新たな原発安全神話
第1の問題点は、伊藤知事が「同意表明」後の会見で「国民の命を守れ。原発を稼働すると国民の命が守れない。そのようなプロバガンダが大いにおこなわれている」「私は、規制委が相当時間をかけて原発再稼働について、その安全性を徹底的に追求したと思う。もし福島みたいなことが起こっても、もう命の問題なんか発生しない。私はそれを信じている」と語っている点である(以下、伊藤知事の発言は「同意表明」後の会見発言)。
これは、3・11以前の「原発安全神話」にかわる「新たな原発安全神話」そのものだ。「新規制基準に適合すれば安全」とする「新たな安全神話」の登場である。
安倍首相は「規制委で安全が確認された原発は再稼働させる」とくりかえし表明してきた。一方、田中委員長は「新規制基準適合は安全を担保するものではない」とくりかえし明言してきた。
だが、田中委員長は今日にいたるも「安全は確認された」との見解に対し、規制委として公式に抗議し、その訂正を一切求めてはいない。
「新基準」適合のペテン
第2の問題点は、規制委の「全審査プロセス」をも無視して、新規制基準に「適合」したとしている点である。
現在、川内原発は「原子炉設置変更」が了承され、それにふまえた「工事計画」「保安規定」審査、また「起動前」「起動後」検査と続くのである。この全課程が終了して、はじめて、規制委は適合可否の最終的判断を下せるのである。
そもそも「保安規定(ソフト面)」審査内容とは、運転時・事故時に事業者の的確な判断・対応が有効かどうかを審査するものである。すなわち保安規定は「設置変更・工事計画(ハード面)」と並び、ハード・ソフト両面が一体で有効に機能するかどうかにかかわる新規制基準の適合性を判断するうえで不可欠な審査課題なのだ。
また長期間運転停止の原子炉(1・2号機)を、「起動後」検査のために起動すれば、予測不能な事故を引き起こす危険性もあるのである。
第3の問題点は、30キロ圏内各自治体を同意手続きから排除して「地元同意」を強行したことである。その狙いは、この方式が唯一「地元同意」を容易に進めることができるからである。ここに「川内方式」の最大の問題があるのである。
さっそく、菅官房長官は「今後、川内原発での対応が基本となる」と表明した。
これを受け八木電事連会長は「2015年は再稼働に全力をあげる。当面の高浜原発再稼働の地元手続きは福井県と高浜町で進めたい」と述べ、また西川福井県知事は「同意の自治体は福井県と高浜町とする」と明言、野瀬高浜町長は「稼働の判断に係わる自治体が増えると物事が決まらなくなる」などと発言しているのである。
安倍政権は、原子力関連施設を直接かかえる関係自治体に、2015年度から電源3法交付金(年間約1000億円)の配分方法を見直し、実際に発電している場合は現行より大幅に増額、発電していない場合は現行より大幅に減額(現行一律81%)の方針を検討中であり、関係自治体を再稼働容認へさらに誘導しようとさえしているのである。
伊藤知事の発言を見てみよう。
「再稼働同意の範囲は、従来のスキームがよい。同意を得る範囲を一律に拡大すると、原発についての理解や知識が薄い自治体まで含んで、各自治体が再稼働についてそれぞれの結論を出すことになる。例えば今回、UPZ内(30キロ圏内)の姶良市議会が廃炉決議をした。しかし姶良市には、UPZ内に11人しか住んでいない。にもかかわらず、姶良市議会が川内原発の廃炉を求めるなど、これでいいのかと思わざるを得ない」
避難計画の実効性
第4の問題点は、伊藤知事にとっては、避難計画やその実効性は、原子力災害対策特別措置法との関係で、外見上、その法的な整合性さえ整っていればいいいとしている点である。
伊藤知事の発言を確認してみよう。
「新規制基準に合格した川内原発は、100万年に1回の事故の確率だ。もしも万が一、仮に事故が起こっても、最大100テラベクレルの放射性物質が放出されるだけである。だから命の問題など考えなくていい。もし避難する事態が起こっても、時間的余裕があるので大丈夫だ。動く必要がない。家の中にいてもいい。普通に生活してもいいと思っている」との発言からもそれは明確である。
これに対して望月原子力防災担当大臣は、1月19日、鹿児島県を訪問し「県の避難計画はしっかり対策が講じられている」と持ち上げている。
30キロ圏内各自治体には同意可否の権限がある
川内・高浜住民と連携を
以上、川内原発をめぐる今回の「地元同意=川内方式」の問題点について確認してきたが、川内原発は、適合性審査・検査がまだ終わっていないのである。現在、「工事計画認可」「保安規定認可」各申請書について、「設置変更許可審査書」に基づく補正申請書【2基あわせて4万ページ】すら提出されていないのである。
私たちは「地元同意=川内方式」の問題点を明らかにし、「再稼働確定」キャンペーンを粉砕していこう。
規制委の「基準地震動」評価基準、「火山対策」評価基準等の問題点や、今後の審査・検査過程を監視し、その問題点を徹底的に追及していこう。川内、高浜各原発の運転差し止め仮処分申し立てに全力をあげよう。
川内原発・高浜原発30キロ圏内各自治体と住民の連携を強め、「姶良の乱」に続き、「伊藤知事は同意を撤回せよ」「西川知事は再稼働に同意するな」の声とうねりをつくりだしていこう。
5層の多重防護
ここで「原発立地自治体の範囲、権限」について検討していきたい。
安倍政権、電力会社、原発施設直接立地自治体やマスコミ等は、「原発立地自治体とは、直接原発関連施設が立地している市町村と立地県である。同意手続きは、原子力安全協定に沿っておこなう」「立地自治体の同意に、法的定めなどはない」と主張している。
だが原子力規制の法体系の全てが、その立法趣旨・目的として「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保護」を第1にあげている。
その目的実現のための体系・制度として、原子炉等規制法に基づいて施行された新規制基準が定められている。その体系的・制度的柱が「5層の多重防護」(注)である。そしてその「第5層段階」こそが最後の手段なのである。具体的には「広域住民避難とその実効性の担保」として定められているのである。
わが国では、原子力災害特別措置法に基づき施行された原子力災害対策指針で、30キロ圏を災害対策重点区域の範囲に指定し、該当自治体に避難計画策定の法的義務と責任を課している。
しかし今回の福島事故では最悪の場合、250キロ圏におよぶ甚大な被害を及ぼす可能性があった、したがって30キロ圏の範囲指定など全く問題にならないことを確認しておきたい。
「第4層段階」までは、規制委が有効性を審査・評価する責任を負っている。ところが「第5層段階」の有効性を審査・評価する責任主体については、その法的条項が欠落しているのである。
同意手続きは義務
国は「避難計画は法令上、国が審査することになっていない」(山際経産副大臣の国会答弁)、また田中委員長は、「避難計画策定は法の定めで第一義的に自治体に責任がある」と明言している。
ならば、その理論的帰結として、「第5層段階」の有効性の審査・評価の責任主体は、30キロ圏内の各自治体にあるということになる。
仮に、当該自治体において体制的、能力的に避難計画の有効性が担保できないと判断、あるいは地理的、物理的な客観的諸条件で計画策定そのものが無理と判断→その結果は「第5層段階」の実効性が担保できない→「5層の多重防護」体系が破綻する→新規制基準そのものが崩壊する→法的に見れば再稼働など論外となるのである。
電力会社は「同意手続きは原子力安全協定に沿っておこなう」と主張している。だが、明らかにしてきたように、電力会社は、30キロ圏内(現時点)の各自治体にたいして「同意手続き」の法的義務が当然にも生じるのである。このことは衆議院原子力問題調査特別委員会(昨年11月6日開催)での、姉川尚史東電常務執行役(参考人)、規制委員会田中委員長(政府特別補佐人)の答弁を見ればあきらかである。
田中「深層(多重)防護が5段階ある。5段階目が住民の防災、避難計画である。4段階までは規制委が審査・評価する。5段階目は当該自治体がおこなうことになっている。…そこの地域の住民の方々を中心とした関係者のご理解、ご同意が得られなければ再稼働はできない、できないはずである」。
福井地裁判決を武器に
5・21福井地裁判決は言う。
「原発の運転によって、原発から250キロ圏内に居住するものにたいして、直接的に人格権が侵害される具体的危険がある」「原発の技術は、他の技術と比較して、異次元の危険性を持つものである」「なによりも人格権こそ、一切に優先して守られ、尊重されるべきものである」
「人格権こそが一切に優先する」、この根本的考え方を私たち自身の共同の武器として、磨き、たたかっていこう。3・11福島第一原発事故―それがもたらし、もたらし続けている現実―これが私たちの出発点の土台であり、再出発点の土台でもある。
(川村哲一)
(注)IAEAが定める最低の国際基準。第1層、事故の発生を防止する機能。第2層、事故の拡大を抑止する機能。第3層、事故の影響を抑止する機能。第4層、第3層を突破した事故の軽減。第5層、第3層を突破した事故からの公衆の防護。
4面
南相馬 避難地点解除・説明会(12月21日)
「一方的にこんなやり方はないよ」(下)
請戸 耕一
昨年12月21日、南相馬市で「特定避難勧奨地点に関する住民説明会」が開催された。国は当初、昨年10月中の解除を検討していたが、住民の反対の声が強く、いったんは解除決定の延長を余儀なくされていた。今回は「解除」の理由となってる「復興の本格化」について検討する。
「復興の本格化」とは?
南相馬市の市街地から西に車で10〜20分も走ると、大原、大谷、高倉、押釜、馬場、片倉などの行政区がある。阿武隈山地の東のすそ野で飯舘村や浪江町津島に隣接している。自然豊かな農業地帯だった。
原発事故で一帯が高濃度に汚染されたにもかかわらず、避難区域とはならず、特定避難勧奨地点という形で、152世帯(住民約700人)が指定を受けていた。指定世帯で約7割、非指定世帯も含め多くの住民が、市内を中心に避難を続けている。
原子力政策の加速
,復興加速化方針(2013年12月)を打ち出した国は、指定の解除と住民の帰還を急いできた。除染の効果が上がらず、その限界が露わになる中で、年間被ばく線量1ミリシーベルトという基準を長期目標と言い換えて棚上げし、年間20ミリシーベルトを新たな基準に、住民の帰還を促す方針を前面に出してきた。南相馬市小高区、浪江町、飯舘村などの帰還を促進していくためにも、南相馬市の特定避難勧奨地点解除は、国の復興加速化方針の成否がかかった問題となっていた。
前号冒頭に高木本部長の発言を紹介したが、解除決定の意味がよく語られている。
「大幅に線量が低下し、健康影響は考えにくい。こうした事実を内外に伝えていくことが、福島県全体の復興の本格化のために重要だ。こうした状況を総合的に判断して解除する」
まずは、「線量が大幅に低下した」ということも、「健康影響は考えにくい」ということも、国が一方的に主張していることであって、住民は、納得できる事実の提示も説明も受けていない。
このこともさることながら、さらに問題なのは、高木本部長の解除の理由説明の力点が、後段の「復興の本格化」というところにあることだ。「復興の本格化」を内外にアピールするために解除するという論の運びになっている。話の順序が逆だ。当該の住民が第一義ではないのだ。一体、当該住民の意思や健康を無視して推し進められる「復興の本格化」とは何なのか。
一昨年の12月に決定された国の復興加速化方針を見るとそのことがよく分かる。復興加速化方針の基本的な意図を次のように要約することができる。
@福島原発事故の被害規模をできるだけ小さく評価する、A賠償額はできるだけ抑え、東京電力や国の負担を小さくする、B被災地が原子力災害からいち早く立ち直り、廃炉ビジネスなどの新たな原子力政策の拠点となっていくという姿を演出する、C被ばくの影響を危惧する声については風評被害対策としてリスクコミュニケーション(注)で処理する、Dそういう福島復興をもって、全国の原発再稼働と原子力政策を加速する。
「復興の本格化」とはこういうことだ。そのために、原発事故の被害が続いていると訴える住民の声を抑え込んで、特定避難勧奨地点の解除と避難・賠償の打ち切りを強引なやり方で進めたのだ。
(注)リスクコミュニケーション (Risk Communication) とは社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などの利害関係者間で共有し、相互に意思疎通を図ることをいう。合意形成のひとつ。
20ミリで帰還は
高圧的な態度で住民に説明をおこなう高木陽介・内閣府原子力災害現地対策本部長(中央)(昨年12月21日 南相馬市) |
特定避難勧奨地点解除の判断の基準は、年間被ばく線量20ミリシーベルトであった。上でも述べたように、国は年間被ばく線量1ミリシーベルト基準を棚上げし、年間20ミリシーベルト基準で住民帰還を進めている。この20ミリシーベルト基準は、基準の大幅な緩和であり、健康被害リスクの有意な増加が認められるレベルの数値だ。このことは、低線量被ばくのリスクを軽視ないし否定する人びとでも認めざるをえない事実なのだということを強調しておきたい。
たとえば、電気事業連合会(電事連)は、「広島・長崎の原爆被爆生存者調査などから、数百ミリシーベルトという大きな線量の場合であって、100ミリシーベルトよりも低い線量を受けた被ばく者には、がんなどの発生について有意な増加は認められていません」〔※1〕としている。電事連とは電力会社各社の連合会であり、言うまでもなく原子力発電を推進する団体である。
「100ミリシーベルトより低い線量でがんなどの有意な増加はない」という主張に対して、まずは、原子力施設の労働者の調査で、累積10ミリシーベルト前後でも発がんリスクの上昇を示すデータ〔※2〕を反証として挙げることできる。しかし、ここではその議論はおくとしよう。むしろ、ここで見ておきたいのは、かくいう電事連でも、100ミリシーベルトより大きな線量を受ける場合については発がんリスクの有意な増加を認めているということだ。この100ミリシーベルトとは累積の被ばく線量である。
ところで、20ミリシーベルトを下回ったところは帰還という場合の20ミリシーベルト基準とは、そこで生活すれば、1年間で20ミリシーベルトに近い被ばくをするということだ。この20ミリシーベルトとは年間の被ばく線量である。だから、そこで5年生活を続ければ、累積で100ミリシーベルトに近い被ばくになり、5年を過ぎて生活を続ければ累積で100ミリシーベルトを超えていくことになる。もちろん空間線量率は漸減していくが、半減期の長いセシウム137の寄与度が高くなっていくので、空間線量率の下がり方は緩慢になる。
つまり、年間20ミリシーベルト基準の帰還ということは、帰還して数年のうちに(もちろん帰還前の初期被ばくや避難先での被ばくも加算されるわけだが)電事連ですら認めるところの〈がん発生リスク等の有意な増加〉というレベルの累積被ばく線量になるということなのだ。ここで言いたいのは、被ばくのリスクを最も甘く見る人びとの主張に沿ったとしても、そういう結論が導き出されてしまうということだ。〔※3〕
国が復興加速化方針の柱をなす20ミリシーベルト基準による住民帰還方針は、ICRP(国際放射線防護委員会)などの基準をも大幅に逸脱し、原子力を推進する国々の中でももっとも緩い基準になる。
日本が、原子力推進の国際競争でその先頭に立とうという野望なのか。そして、そのために、住民はリスクを甘受せよということなのか。
この日の説明会の最後に、住民が吐き捨てるように言った。「無理を通して道理が引っ込むっていうけど、そんなことは無理じゃないか」
たしかに国は、住民を前にして、「決定だ」と押し切った。しかし予定時間を大幅に超えて論議しても、参加した住民をひとりも説得することはできなかった。住民の心に刻まれたのは、道理のない話を押し通す国の姿であり、取り返しのつかない不信と憤りの蓄積である。 (おわり)
※1 電事連HP「よくあるご質問【8―1】」
※2 文部科学省委託調査報告書「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査(第IV期調査平成17年度〜平成21年度)/この調査に関する論評として、松崎道幸「10ミリシーベルトでも危険」がある。
※3 ここの展開は、井戸謙一「『1年に100ミリシーベルト』は誤解」(河北新報2014年12月8日)を参考にしている。
川内も高浜も動かすな
福井と結び関電大包囲を 1・25大阪
1月25日、大阪市内で「川内も高浜も動かすな 再稼働やめろ!デモ in 御堂筋」集会がひらかれ190人が参加した。主催は、とめよう原発!! 関西ネットワーク。
「1月16日におこなわれた原子力規制委員会との交渉報告」を若狭連帯行動ネットワーク・久保良夫さんがおこなった。川内原発について原子力規制委員会は、基準地震動についてあらためて検討する必要があること、また川内原発周辺のカルデラ噴火に対する対応策がまったくできていないということを事実上認めたとのことだった。
関電包囲1万人集会を
次に、高浜・大飯原発再稼働阻止ネットワーク事務局長の新開純也さんが発言し、高浜原発再稼働阻止にむけて以下の2点を訴えた。「1、福井の現地と結んだ、現地闘争ふくめた運動の強化。現地にたいする働きかけをおこない、福井県の人々と再稼働阻止行動にたちあがろう。2、関電を包囲し、安倍を迎え撃つ数千、数万の集会、具体的な再稼働の政治的プロセスに対抗する集会なしに原発を止められない。関電包囲の1万人集会をたたかいとろう。」
釜ケ崎日雇労働組合の三浦俊一さんが、原発と被ばく労働について発言。「現在、福島第一原発の収束作業には7000人の労働者が動員されているが、原子力規制委員会では、原発の作業に伴う労働者被ばく問題は審査内容からはずされている。多重の下請け構造が労災を隠している。働く人がいなくなっている。再稼働を仲間の命を守るという意味においても止めていく、住民の命を守るという意味においても止めていく。」
集会後、御堂筋デモに出発。日曜の人出で賑わう御堂筋を南下し、難波まで「再稼働するな」の声をあげ行進した。(写真)
5面
「地元・関西」こそ先頭に
高浜原発再稼働とめよう
「若狭原発群の地元=関西から総決起を」と訴える宮下さん(1月23日 京都) |
1月23日、〈高浜・大飯原発再稼働阻止ネットワーク設立準備会〉の呼びかけで、「高浜原発再稼働阻止にむけて」と題する集会が京都市内でひらかれた。
京都大学原子炉実験所元講師の小林圭二さん、原子力発電に反対する福井県民会議事務局長の宮下正一さんが講演した。
ネットワーク立ち上げ
冒頭、同ネットワーク代表の木原壯林さんがあいさつ。「福井県議会議長は、(4月統一地方選を前にして)自分の任期中に再稼働決議をあげると言っている。私たちは、本日、高浜・大飯原発再稼働阻止ネットワークを立ち上げる。1・31〜2・1高浜での車デモ、署名行動、街頭宣伝、2・21原発再稼働を考える 住民の、住民による、住民のための説明会、3・7京都、3・8滋賀の大集会、5月関電本店大包囲の集会に取り組み、裁判闘争もやりぬき、高浜原発再稼働阻止、原発全廃へ」と訴えた。
危険な加圧水型原発
小林圭二さんは、再稼働がもくろまれている高浜原発=加圧水型原子炉の危険性を強調した。(注、3・11の福島第一原発は沸騰水型だが、関西電力は加圧水型原発を使用)。
「福島原発は、3・11の時、地震後5時間でメルトダウンが始まった。米国スリーマイル原発(加圧水型)事故では、1時間後に始まっている。燃料棒の体積比でいうと、同じ体積なら加圧水型のほうが遙かに発生熱量が大きい。つまり、事故の時に、それだけ早く燃料棒が溶け始めるということ。圧力も沸騰水型は70気圧だが、加圧水型は150気圧で、倍以上ある。もし、配管が破れれば、圧力が高い分、それだけ早く水が早く漏れ出し、燃料の空だき=メルトダウンが早く始まる。
福島では全電源喪失でメルトダウンが始まったが、スリーマイル事故では、全電源が正常であるにもかかわらずメルトダウンした。加圧水型のほうが危ない」と警鐘を鳴らした。
原発群の地元・関西
宮下さんは、「西川福井県知事は、4月県知事選に立候補すると言っている。地元同意は、3〜4月県議会が終わった後、4月の終わりから5月頃と予想する。高浜の町長は圧政をしいている。高浜原発から福井市までの距離より、京都市までの距離のほうが近い。原発地元に対して『地元福井』と呼び続ける運動では原発は止まらない。『若狭の原発群の地元・関西』と呼ぶべき。地元に『がんばれ』ではだめだ。若狭湾の原発をとりまくネットワークが必要だ。40年間におよぶ原発ムラの支配で住民はがんじがらめになっている。各地で住民が立ち上がるのを見て、はじめて地元も立ち上がる可能性が出てくる。原発をこの世からなくすよう頑張りたい」と語った。
あらゆる形態の闘いを
同ネットワーク事務局長の新開さんがまとめの提起をおこない、「高浜原発再稼働を止めるために、あらゆる形態の闘いをやろう。そのうちのひとつとして高浜現地に入る運動、そして関電包囲1万人集会を」と結んだ。
あぶない教科書許さない
広範な世論の力を 1・24大阪
1月24日、子どもを戦場に送る教科書はいらない! 全国交流集会が大阪市内でひらかれた。主催は、「教科書シンポジウム」実行委員会。この集会は、今夏、中学校教科書採択が迫るなか、多くの市民団体が「あぶない教科書は許さない」という一点で手をつなぎ、実行委員会を結成し実現したもの。昨年11月29日のシンポジウムに続く2回目の開催となった。
首長権限の強化
14年前の2001年に「新しい歴史教科書をつくる会」(以下、「つくる会」)教科書が登場した。東京都(当時、石原知事)、愛媛県(当時、加戸知事)など、極右の知事が主導して、各地で「つくる会」系教科書が採択されてきた。やがて「つくる会」は分裂し、現在は育鵬社と自由社が侵略賛美の教科書を発行している。
2011年には、横浜市が、それまで18あった採択区を全市1区に統合し、育鵬社を採択することによって、育鵬社は一挙に採択数を伸ばした(全国比率で歴史3・7%、公民4・0%)。
今夏の中学校教科書採択は、教育委員会制度の改悪=首長権限の強化によって、育鵬社・自由社教科書が有利になることが予想されている。
3月末に検定終了
集会は、〈子どもたちに渡すな! あぶない教科書 大阪の会〉の開会あいさつで始まり、「現在、文科省に検定申請されている中学教科書は3月末に検定が終了し、8月に採択される。今日は、前回採択で『作る会』系教科書に占領された地域、危なかった地域から関係者をお招きした。全国から学ぼう」と発言した。
つづいて、同会から基調提案がおこなわれた。「このかん大阪府下43市町村の教育委員会にアンケートを持って申し入れ、ないしは送付したが、回答は31市町村から。今後、教育委員会アンケートを続けると同時に地方選で自民・維新を台頭させないために、地方議員にもアンケートを進めたい」と提起した。
統一戦線の拡大を
パネルディスカッションでは、横浜市から佐藤満喜子さん、東京都杉並区から長谷川和男さん、大阪市から伊賀正浩さんが登壇。
佐藤さんは、「教科書を選んでいる教育委員が、実は教育の専門家ではないということがあまり知られていない。教師や、子どもを知っている人に教科書選定を任せないといけない。自分が使う道具を選ばない職人はいないでしょう」と話した。
長谷川さんは、「杉並では、それまで使われていた『つくる会』系教科書を2011年に阻止した。杉並には様々な人が居たが、統一戦線を作ってたたかった。いま、シングルイシューの運動だけではどうにもならない、安倍政権に対して勝てない、という意識を運動側が強く持ち始めている。先の衆院選で、オール沖縄が自公を打ち負かしたように、教科書問題も大統一戦線でたたかおう。統一戦線拡大して教育に関心のある人を掘り起こしながら取り組んでいきたい」と語った。
伊賀さんは、「大阪市の教育委員は公募とされているが、公募というと広く募集しているのかと誤解されやすい。基準は橋下市長に従うのかどうかということで、実態は橋下市長の右腕になることがはっきりしている人物だけが任命される。教科書採択区は、いままで8地区にわかれていたが、1区に統合された。市と教育委員会の権限が強化されている。広範な世論の力を作っていきたい」と話した。
その後、各地からの報告が続き、最後に関西の諸団体からの発言があり、閉会した。
橋下の思想調査は違法
プライバシー権の侵害
2012年におこなわれた大阪市職員への強制思想調査をめぐり、職員29人と5労組が訴えていた裁判で1月21日、大阪地裁(中垣内健治裁判長)は、設問の一部が憲法で保障された権利を侵害したと認定し、大阪市に慰謝料約40万円を支払うよう命じた。
判決では、22項目の設問のうち、特定の政治家への応援の有無を答えさせる2項目は職務と関係せず、憲法13条・プライバシー権の侵害にあたると認定。労組活動への参加経験などを回答させる3項目も、「労組活動への参加を萎縮させる」として、憲法28条・団結権の侵害にあたると認定した。橋下市長は開き直り、控訴する方針という。
このかん、橋下市長はこの種の裁判で4連敗している。「市庁舎からの労組事務所追い出し」「学校での教研集会不許可」「入れ墨調査」「思想調査」のすべてで敗訴。
1・26 がれき説明会弾圧 大阪高裁が控訴棄却
1月26日、「2012年11・13大阪市がれき説明会弾圧」の控訴審判決があり、大阪高裁第5刑事部(並木政男裁判長)は、「控訴棄却」の不当判決をくだした。
「威力」とは、「業務」とは、「共謀」の有無、抗議の「正当性」、これらすべての争点において、1審有罪判決を追認し、被告側からの反論に答えない、はじめから結論ありきの判決だった。
今回の判決は、被告とされた3人のうち、韓基大さんを除く2人に対してのもの。韓基大さんは「JR大阪駅前街宣弾圧」の裁判と併合されているため、この日の裁判とは分離されている。控訴審はまだ始まっていない。
10・5関電前弾圧 最高裁が上告棄却 1・27
最高裁(第1小法廷、櫻井龍子裁判長)は、1月27日付で、関電前「転び攻防」弾圧Aさんの上告を棄却した。
2012年10月5日、関西電力本店前での抗議行動(関電包囲行動)で、大阪府警の私服警官2人がAさんによって倒されたと言いがかりをつけ不当逮捕した事件。
1審では、警察によるでっちあげが暴かれ、無罪をかちとった。ところが、検察が控訴し、大阪高裁では事実審理もせずに裁判長は検察の主張を丸呑みし、逆転有罪判決「懲役1年6月、執行猶予3年」をくだした。Aさんが上告していた。
6面
視座 アラブの春と「イスラム国」
民衆運動による社会改革へ(下)
速見 賢三
U アメリカの中東政策と「イスラム原理主義」(承前)
アメリカへの怒り
第4に、アメリカの意に従う時には、独裁政権にも「原理主義」運動にも武器や資金を供与して支えるが、意に従わなくなった途端に手のひらを返したように「テロ集団」といいなして攻撃を加えて叩き潰すやり方に、イスラム民衆の忍耐はもはや限度を超えたのである。
第5に、多くのイスラム民衆が戦争の結果、難民として、あるいは生活のために西欧各地に移民として移り住んだが、イスラムに対する日常的な差別と迫害に晒され続けていることである。フランスなどでは、公共の場でのヒジャブ(イスラム教徒の女性が顔を覆うスカーフ、ベール)の着用が法律で禁止されている。
法も正義も通用せず、今やイスラム民衆全体を「テロ集団」とみなし、侮蔑し、迫害し、平気で殺害する欧米にたいし、他の手段がないなかで、多くのイスラムの若者が「原理主義」運動に共感を持ち参加していったことは容易に想像できる。そしてそれがついに、「一国」を形成するに至ったとき、欧米各国で同じような仕打ちを受け、同じ思いで暮らしてきたイスラム系の人々を一気に惹きつけたのであろう。
そしてアメリカへの怒りと憎しみ、反米の気持ちは、西欧式の文化、宗教など欧米の在り方そのものの否定へと進む。アメリカが無差別殺戮を正当化すれば、「原理主義」勢力も欧米のジャーナリストなどへの無差別テロを加える。こうした連鎖が続いているのである。そしてアメリカをはじめとする軍事介入は、ますます内戦を拡大させ、テロ以外に手段を見い出せない人々はますますテロに傾斜する。西欧各国が「テロとのたたかい」を拡大すればするほど、それは世界中に広がっていく。安倍政権もそこに足を踏み入れようとしている。
「イスラム国」
まずは、数多くのイスラム民衆が、テロに突き進まざるを得ない、強いられた歴史と現実を見据えなければいけない。その上でしかし、「イスラム原理主義」運動は人間の普遍的解放をめざすものではないと言わねばならない。「イスラム原理主義」運動は、西欧やアメリカへの激しい憎悪に基づく攻撃を繰り返しているが、それは根拠をもっている。
しかし、欧米、ソ連、イスラム諸国の利害の結果、国民国家を形成することすら認められず、迫害され続けてきたクルド人に対する攻撃など他民族を抑圧している。また宗派の違う人々への迫害もくり返している。さらには、女性の権利や教育を認めず、外出も制限している。そして女性や子どもの人身売買や、12月16日の子どもたち148人の無差別殺害などは決して許されないものである。
欧米諸国は、こうしたことをクローズアップして、イスラム教への恐怖を煽っているが、「イスラム原理主義」運動のこうした思想や行動はイスラム教の本来の教えでは決してない。この思想や行動は、人種、民族、宗教、出自、性の違いを越えた人間の普遍的解放をめざすものではない。
「イスラム国」には、純粋に「イスラム原理主義」を信奉して集まった人もいるが、必ずしもそうではない。打倒されたフセイン政権のバース党関係者なども混ざっている。イスラム民衆のアメリカや西欧に対する激しい怒りの土壌の上に、それと戦おうと命を投げ出す覚悟を持つ青年たちの結集の上に、イスラム教の教義のもとでイスラム国の建設をめざすという理想を掲げながら、打倒された旧政権の支配層なども集まっているのが実態である。
さらに、「イスラム原理主義」勢力は、「イスラム教的世界の実現」を掲げているが、それはイスラム民衆が強いられている差別と迫害からの解放の本質たりえず、また普遍的人間の解放の道でもない(後述)。
V 「イスラム原理主義」とアラブの春
「表現の自由」とは
「表現の自由」は近代民主主義社会においては、最も重要な権利のひとつである。なぜそれが大切とされたのか。それは、権力による情報統制と言論弾圧を許さないということに本質がある。「表現の自由」とは、国家権力が表現を奪うことへのたたかいが本質である。その上で、「表現の自由」とは、何を言っても構わないということでは決してない。まず、事実にもとづかないデマや捏造は「表現の自由」ではない。
さらに、人種、民族、出自、性、文化、宗教への冒涜や誹謗中傷は許されない。それは「表現の自由」ではなく「ヘイト表現」である。京都朝鮮第一初級学校への在特会らの襲撃事件において、在特会は「表現の自由」を主張したが、裁判所は「表現の自由」にはあたらず、ヘイト・スピーチと認定した。国連もヘイト・スピーチの法規制を日本政府に勧告している。
在特会のような露骨極まりないヘイト・スピーチまでいかなくとも、ギリギリの表現が「表現の自由」「言論の自由」の名のもとにまかり通っている。週刊誌では毎号のように、「売れれば何でも良い」とばかりに、「反中」「嫌韓」「愛国心」に関わる煽動のセンセーショナルな見出しが踊っている。それらを法規制すべきかどうかは別として、言論人・報道人は社会的責任を負っている。
風刺も然りである。風刺とは、権力者を揶揄することで、民衆がそれを見て密かに笑い溜飲を下げることに意味があり狙いがあるはずである。しかし、力を持つ者に対してではなく、力のない者、虐げられている者、文化や価値観の違う人たちに向けられた時には、それは風刺ではなく、からかい、侮蔑、罵りに過ぎなくなる。風刺画でイスラム教を嘲り、侮辱をくり広げれば、鬱積したイスラム民衆の怒りがそれに向かうのは必然である。もちろん、たとえ「ヘイト表現」であろうと、テロによって「解決」を図ることは許されないことは言うまでもない。
イスラム民衆への差別
今回のテロ事件を引き金に、「テロとの戦い」が叫ばれれば叫ばれるほど、反イスラムデモや移民排斥デモが勃発し、それはイスラム民衆への襲撃や虐殺を深刻化させている。そしてそれへの報復テロはキリスト教徒やユダヤ人に向けられている。
しかし問題の本質は宗教対立にあるのではない。アメリカをはじめとする帝国主義の中東支配とそのためのイスラム民衆に対する差別と迫害である。資本主義諸国による中東と世界の搾取と収奪、その中での差別と迫害に根本原因がある。したがって、大国の利害のためにイスラム民衆におこなってきたすべての歴史への謝罪と清算抜きに問題は解決しない。アメリカや西欧諸国が、イスラムにたいしてどのような仕打ちをくり広げてきたのか、差別し迫害を加えてきた歴史と事実を真摯に見つめ、それを改めることからしか始まらない。
したがって、キリスト教的世界の実現や、ユダヤ教的世界の実現、イスラム教的世界の実現の中に解決の途があるのでもなければ、その中に人間の普遍的解放の道があるのでもない。特定の宗教の原理主義的絶対化は、他宗教の信者への抑圧と迫害に必ずつながるからだ。
「イスラム原理主義」運動が、女性や子どもを抑圧し、クルド人やユダヤ人などへの攻撃を正当化する根拠はここにある。しかしこうした無差別テロや攻撃は、帝国主義による抑圧と迫害の本質を見誤らせ、民族的宗教的対立を激化させ、民衆同士の殺し合いを生み出すものでしかない。民族的、宗教的迫害を加える帝国主義支配の打倒をめざさねばならない。
「社会主義国」の変質
「イスラム国」にイスラム民衆の支持と共感が集まるのは、人間の普遍的解放をめざすこれまでの思想と運動が荒廃した結果ではないだろうか。共産主義への支持が失墜した結果、「イスラム原理主義」がイスラムの民衆にとっての希望と解放の思想になっているのではなかろうか。
かつてイスラム諸国の中には、相当程度、共産主義勢力が影響力を持っていた。パレスチナ解放人民戦線(PFLP)や79年イラン革命の主力となったフェダイン・ハルク(イラン人民義勇戦士)などがそうである。しかし、ソ連崩壊以降、ソ連が「社会主義」の名のもとにおこなってきた農民や少数民族への弾圧、強制移住と抑圧の実態が暴露され、同じく「社会主義」を名乗るカンボジアのポルポト政権による数百万人の虐殺の実態が暴露された。さらに戦後のアジアの民族解放運動の後背地となってきた毛沢東の中国が、「社会主義」とは似ても似つかぬ共産党独裁によって、党の幹部が国営企業などの利権を独占して新自由主義政策を進め、一方労働者農民は飢えに苦しむという驚くべき格差社会の進行の中で、共産主義・社会主義への信頼と期待は失われていった。
われわれは反スターリン主義を掲げてきたから無縁とは決して言うことはできない。共産主義運動全体がその責任を問われているのであり、われわれもその責任を負っているのである。こうした中で、それに代わるイデオロギーとして「イスラム原理主義」に期待が集まり、実際に激しい反米テロを繰り返す中で相当数の民衆の期待を集めてきたのであろう。もちろん、その一方で、他宗教や他民族、従わない人々への残忍な仕打ちは、大きな反感と怒りも買っている。
未完の民衆革命
2010年12月にジャスミン革命と呼ばれたチュニジアの暴動から始まった民衆の抗議行動は、瞬く間にアラブ諸国全域に波及していった。デモなどの動きがほとんどなかったのは、カタールとアラブ首長国連邦ぐらいであった。大学を卒業しても就職できない若者が中心となり、失業、人権侵害、政府の腐敗への抗議行動が火を吹き、2011年2月にはエジプトのムバラク政権が打倒された。イスラム諸国の民衆による、貧困の廃絶と平等、自由と民主主義を求める民衆革命であった。
「アラブの春」あるいは同時期の2011年の「ウォール街占拠」は飢えや貧困を廃絶し、自由と民主主義と平和を求める、民衆の民主主義に根ざしたたたかいであった。権力によって封殺されてしまったこうしたたたかいを、いかにして復権させていくのかが問われている。
こうした民衆運動の力による社会変革こそが、戦争や暴力によって決着をつけようとする社会のシステムに対抗する道ではないだろうか。富の一極集中とその一方で飢えと貧困に苦しむ膨大な人々を生み出す新自由主義を廃絶しなければならない。平和と人権と民主主義を社会の中に打ち立てなければならない。(おわり)