集団的自衛権
閣議決定は無効だ
安倍打倒へ 全勢力の結集を
1日、首相官邸周辺は閣議決定に反対する人びとの抗議の声が深夜まで響き渡った |
安倍政権は、1日、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を強行した。これに対して6月30日から7月1日にかけて、首相官邸前や国会周辺、そして全国各地で抗議闘争がおこなわれた。また閣議決定後も、抗議集会やデモが続いている。
今回の閣議決定は、「戦争放棄」をうたった憲法9条を破棄し、自衛隊の海外における武力行使を解禁する文字通りの憲法改悪である。これを閣議決定によって強行することなど断じて許されるものではない。これは「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と定めた憲法99条に違反している。このような閣議決定は無効である。
安倍は閣議決定後の記者会見では、集団的自衛権の行使が限定的なものであり、自衛隊が湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはない、と強調した。しかしこれは口先だけのペテンである。
8日、安倍は外遊先のオーストラリアの国会で演説をおこなった。その時、安倍は「安全保障に関して、日本は長らく内向きだったが、いまや世界有数の経済力を持つ国としての貢献を地域と世界の平和のためにおこなう」、「なるべくたくさんのことを諸外国と共同してできるように、日本は安全保障の法的基盤を一新しようとしている」と胸を張ったのである。ここでいう「諸外国と共同しておこなう地域や世界平和のための貢献」とは、集団安全保障措置への参加ということだ。具体的には、湾岸戦争やイラク戦争時に組織された多国籍軍に自衛隊が参加できるようにするというのだ。そのために「法的基盤を一新する」と米国やその同盟国に対して「公約」したのである。
これまで海外に派遣された自衛隊の活動範囲は「非戦闘地域」に限定されていたが、今回の閣議決定では、その制限を取り払い、「現に戦闘をおこなっている現場」でなければ、自衛隊はどこでも行けるとした。戦闘が中断していれば、最前線にいくこともできる。これで9条の「歯止め」は最後的に失われてしまう。
安倍は、集団的自衛権の行使をふくむ安全保障法制の見直しについて、安保法制担当相を任命して、関連法案を一括して国会に提出しようとしている。安倍政権打倒の大運動をまきおこそう。
川内原発 動かすな
東京5500人が行進
「川内原発を再稼働させるな」表参道・原宿をデモ行進(6月28日 都内) |
6月28日、「さようなら原発1000万人アクション」など3団体が主催する「川内原発を再稼働させるな! さようなら原発首都大行進」が東京・明治公園で開かれ、5500人が結集した。雨の中でオープニングライブが始まった。
司会の木内みどりさんが「この集会も今回で4回目、脱原発が実現するのにこれほど長くかかるとは呼びかけ人の誰もが思ってもいなかっただろう」「その中で署名は840万筆に達した」とあいさつ。
鎌田慧さん・野呂正和さん(川内)・人見やよいさん(福島)らが次々に発言に立った。未だに13万人にのぼる避難者の6割が心身に不調をもち、震災関連死が1700人を超えたという福島の現状が報告された。また、川内における行政の無策ぶりに対するたたかいが語られた。
一方、実害を風評と言いなし、被害を「フクシマ」に押し込め、忘れさせようとする強大な力の存在に、「一人ひとりが当事者性を持とう」と危機感が表明された。
核武装の準備としての原発政策、喫緊の課題となっている集団的自衛権についても、「我々が先週のことを考えている時に、政権は来週のことを考えている」と警鐘が鳴らされた。複数の発言者が先日の福井大飯原発判決に触れ、運動の成果であり、市民運動をますます強めていく必要が確認された。また「希望の星」と表現され、高裁で守り抜くとともに、全国の裁判に広めていく決意が語られた。集会後には、反原発を訴えて表参道・原宿をデモ行進し、一日を終えた。
“平和主義が危ない”
大阪弁護士会主催で6千人
降りしきる雨の中、秘密保護法廃止をかかげ6000人がデモ(6日大阪市内) |
7月6日の午後、大阪弁護士会主催で「平和主義が危ない! 秘密保護法廃止!! 野外集会」が、扇町公園でひらかれた。主催は大阪弁護士会。昼過ぎから降り出した雨の中、6千人が参加した。
集会冒頭、石田法子大阪弁護士会会長が、秘密保護法廃止の声を大きくしていこうと開会宣言。
次に日弁連秘密保護法対策本部事務局次長の太田健義弁護士が集会の趣旨を提起。安倍政権が集団的自衛権の行使容認の閣議決定をした。一方秘密保護法は今年12月に施行される。秘密保護法が施行され、武力行使が限定的に行使されたかどうかを秘密に指定されてしまえば、どのような場面で行使されたか60年も検証すらできなくなる。集団的自衛権行使容認と秘密保護法がセットになれば、政府の情報隠しを止めることができない。戦前の大本営発表と変わらない。私たちは耳をふさがれ口をふさがれてしまう。このような法律を認めることはできない。根本的な問題点を広く世間に訴え、ここ大阪から廃止していこうと提起した。つづいて、秘密保護法に反対している各政党の代表、市民団体、宗教者団体個人など18人からスピーチがおこなわれ、国民をだまし戦争への道を開く安倍政権を倒そうと訴えた。最後に大阪弁護士会秘密保護法対策本部本部長代行の大江洋一さんがアピール文を読み上げ、拍手で確認した。雨が降る中、集会後3つのコースに分かれてデモ行進し、市民に訴えた。
関電株主総会に抗議
大飯・高浜の再稼働阻止
6月26日、関電株主総会(神戸・ワールド記念ホール)前の抗議行動がおこなわれた。福井地裁の大飯原発3、4号機差し止め判決(5月21日)が出たばかりだ。
参加株主は約800人。抗議行動の参加者たちは、関電に対して「原発再稼働するな」と抗議。株主には「危険な原発を止める意思表示を」とアピールした。とめよう原発!! 関西ネットワークはじめ約100人がビラまき、パフォーマンス、アジテーションなど思い思いの直接行動に立ち上がった。八木社長の解任、脱原子力委員会の新設、日本原電との資本関係解消など反原発派株主による25本の提案はすべて否決された。京都市と神戸市の脱原発発言に対し、大阪市長・橋下の経営陣退任要求は、800億円相当額の株式を持つ筆頭株主の利害意識丸出しの発言。「もっと市場競争に堪えられる会社になれ」「原発を国に委ねて手を引け」というもの。そうでないと全株を(ヘッジファンドに)売却するぞ、という新自由主義丸出し。いまなお避難生活を強いられる膨大な人々や、危険な原発を一日も早く止めて欲しいと願う人々の思いとはおよそかけ離れていた。反原発提案支持は16%だったという。許し難いことに八木社長は、反対議論を封殺し、早期再稼働を訴えて閉会した。
会場入り口では、「株主だが、どういう態度を示せばいいか」と声をかけて来る人もおり、「とめ原」の株主仲間を紹介、一緒に会場に入っていった。上牧行動(八木社長の自宅最寄り駅である阪急電車上牧駅前で定期的に抗議行動)の人も太鼓をカバンに入れて会場へ。
この日は、全国の主要電力9社の株主総会で反対動議があり、激しい論戦になった模様。九電の総会では、「実効性ある避難計画が確認されるまで、川内原発の再稼働はしない」という良識ある提案すら否決された。自力で避難することのできない要援護者の避難計画について、伊藤 鹿児島県知事は「10q圏内までしか作らない」と発言。大きな問題になったばかりというのに。(兵庫 S)
2面
集団的自衛権容認は論理破綻
関西大学教授 高作正博さんに聞く(下)
STOP! 安倍6・1シンポジウムの報告から。見出し、文責は編集部。
安倍打倒をかかげ、大阪市内をデモ(6月1日) |
集団的自衛権の問題性
「集団的自衛権とは何か」について、ここでは「集団的自衛権は本当に必要なのか、認められるのか」に絞ってみたい。
安倍首相の会見に見るように、「お母さん、お孫さんが乗っている米軍艦船を守れない日本でいいのか」など、非常に情緒的なことばかり。米軍の艦船が日本の避難民を乗せているなど、想定し難い事例を15ほど出してきている。
よくいわれる「『尖閣』問題が厳しいから、やっぱり必要」という話も、まったく必要のない事例。あえていえば個別的自衛権で対応できる問題で、従来の憲法解釈で十分な範囲内に、集団的自衛権の論議を無理やり持ち込んでいる。完全に間違った論理である。
「米軍を(日本の安全保障のために)引き込むために、日本ももっと協力しなければ」というのも、よく引き合いに出される。これも非常に危うい。同盟関係というのは、あまり接近しすぎると相手の戦争に巻き込まれる。冷戦構造の時期はそうだった。ところが、あまり疎遠になると見捨てられる恐怖というのがある。いま、そういう局面にある。行ったり来たりの「同盟のジレンマ」である。もし一歩踏み込んだらどうなるか、よく考えてみなければならない。
ウクライナ問題で米ロの間にもっと緊張が高まったら日本はどうするのか。日本はいま自衛隊を「西方」にシフトしているが、もう一度「北方」シフトに二極化しなければ「領土」が守れないという状況になる。あえてそういう局面を自分でつくり出すのか。そういう集団的自衛権こそ、むしろ日本の安全にとってマイナスである。
危険な孤立主義へ
さらに、「集団的自衛権は認められるのか」という問題。従来の政府見解では、集団的自衛権は行使できない。以前から「ゼロだ」と答弁してきた。ゼロから有は生まれない。どんなに政府解釈をひっくり返しても、ゼロから「少しでも持っている」ということは出てこない。どんなに都合のいい部分を引っぱってきても整合性はなく、容認論は破綻している。したがって「限定的ならいい」という意見も破綻している。実際は「限定的」といっても、どこへでも行ける。しかも時の首相の判断でできる。歯止めはなく、論外である。
どうやって、この暴走を止めるのか。司法に期待できるのか。集団的自衛権にもとづく派遣命令を拒んだ自衛隊員が処分をうけ、はじめて行政訴訟が始められる。派遣された隊員が亡くなった場合、遺族の方が「憲法違反」と国家賠償を求めるようなとき。仮に裁判所がとりあげるにしても、ずっと先の話になる。しかも憲法解釈を変更するような問題を、裁判所は判断しないだろう。
従来いわれてきた前提は、「日本を守るための必要最小限度の範囲内で、自衛権が認められる」だった。あくまでも「日本を守るため」である。国会でも繰り返し、そう答弁がおこなわれた。ところが、安倍首相は「日本を守るため」という言葉を落とし、政府見解を変えようとしている。
「個別的自衛権だけで自国を守ろうとすると、危険な孤立主義になる」「だから集団的自衛権を容認する」ともいっている。これまで「集団的自衛権は憲法違反だ」といってきて、日本が危険な孤立主義に陥っていたという見解は、私は聞いたことがない。むしろ安倍内閣になって憲法を変えようとして、危険な孤立主義になっているのではないか。アジアとの関係でも危険な孤立主義で、アメリカとの関係でも危うい。いまがいちばん危険な状態に陥っている。安倍首相が述べる「ロジック」はすべて誤りである。
私たちこそアキレス腱に
アメリカは韓国との間で条約を結んでいる。朝鮮半島で何かあれば、アメリカは出かけていく。そのときの根拠は集団的自衛権。そこで集団的自衛権を行使しているアメリカに対し、日本がさらに集団的自衛権を行使できるのか。国際法上、「集団的自衛権の連鎖的効果」といわれるが、これは「できない」というのが一般的見解。
集団的自衛権が機能するのは、あくまでも個別的自衛権で対応する国家に対し、集団的自衛権で対処する。もし朝鮮半島で何かあった場合、集団的自衛権で動き出した米軍に対し、日本が集団的自衛権で行くというのは、従来の国際法上は認められてこなかった。しかし安倍首相はこれ(集団的自衛権の連鎖)を集団的自衛権として出してきている。それを集団的自衛権というのであれば、アメリカが自分の国益をめぐって争う戦争ということになり、それは「朝鮮有事」という問題ではない。
安倍首相のいう「戦後レジームからの脱却」とは何か。戦後をつくったのは、「敗戦、ポツダム宣言」。脱却とは、アメリカに破れる前の日本への回帰。やはり対米的な自立ということだろう。
どうやったら止められるだろうか。時間をおかず事をすすめようというのが安倍政権である。アメリカは安倍政権に冷たく、アメリカ自身が安倍政権のアキレス腱になりかねない。さらにマーケット、経済が傾いたとたんに支持率は落ちる。
これもアキレス腱だが、やはり主権者である私たち自身が、独裁を排し立憲主義を蘇らせるよう貫く。他人頼みでは駄目だろう。私たち自身がアキレス腱になるよう、市民が行動するということを訴えたい。
安倍の未来はいらない
新宿で怒りの集会・デモ
「安倍政権はダメだとはっきり言おう!」のぼり旗やプラカードをかかげ新宿駅東口アルタ前からデモ行進(6月15日 都内) |
6月15日、〈安倍のつくる未来はいらない! 人々〉が呼びかけた「安倍政権はダメだとはっきり言おう! 6・151新宿デモ」がおこなわれた。快晴、炎天下の日曜日の午後2時、新宿東口のアルタ前広場が数百人の参加者で埋まった。
安倍首相に退陣を迫り、辺野古の基地建設着工と「集団的自衛権行使」の閣議決定を止めようという集会・デモだ。
参加者は前回5月10日を上回っている。怒りと運動の広がりを実感した。1時間の熱気あふれる集会の後、3時から西口方面に回るデモが行われた。(東京 K)
秘密保護法、顔認証カメラ
恐るべき監視社会に
「秘密保護法、顔認証カメラ、共通番号制を考える集い」が6月27日、大阪市内でひらかれた(写真)。主催は実行委員会。
国民総背番号制
冒頭、開会あいさつを兼ねて実行委員会から、共通番号制の概要説明があった。共通番号制は、各省庁の93項目にわたる個人情報を共通番号で国が管理する制度で、「社会保障・税番号制度」とか「マイナンバー制度」と称しているが、ようするにかつて大問題になった「国民総背番号制」である。関連法はすでに成立しており、2016年1月から施行される。来年10月には、このための共通番号が住民票のあるすべての住民に送られてくる。
さる3月31日に公布された施行令では、共通番号をキーとして、警察、公安調査庁が令状なしで、個人情報を収集できることになった。
住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)と似たようなものという誤解があるが、全然ちがう。住基ネット番号は、各自が使用しなくても、市民生活に特段の支障はない。だから、日常生活では、あまり意識することはない。ところが、共通番号は、税番号のため、就職やさまざまな公共サービスを受ける際に提示を求められ、これを持ち歩かないと日常生活に支障をきたすことになる。事実上の「身分証明書」常時携帯義務のような状態になる恐ろしい制度である。
大阪駅ビル顔認証カメラ
「究極の監視社会がやってくる」と題して、高作正博さん(関西大学法学部教授)が講演し、大阪駅ビル顔認証カメラの問題点について「プライバシー権」を軸に批判した。
その後、釜ケ崎で活動する方が「釜ケ崎に設置されている監視カメラが15台から81台に増やされようとしている問題」について報告。医療の現場からの発言。最後に〈秘密保護法廃止! ロックアクション〉の服部良一さんが、集団的自衛権をめぐる緊迫した状況にふまえ、閣議決定阻止にむけ、6月30日、7月1日の午後5時から自民党大阪府連の前で大抗議行動をやろうと訴えた。
3面
投稿
“ゲート封鎖”に正義あり
真喜志好一さんが講演
講演する真喜志好一さん(6月22日 大阪) |
「原発あかん・橋下いらん・弾圧やめて―フクシマと結ぶ 音の力 いのちの言葉―」集会の第5回目は沖縄から真喜志好一さんを招いての講演会でした。この集会はいつも、盛りだくさんです。すべてにわたり、まんべんなく報告できればよいのですが、おしどりマコ・ケンさんに至っては目を点にして、そのスピードについていくのに精一杯でした。
「普天間と辺野古とヤンバルの森にある高江の位置関係を頭に入れてほしい」と真喜志さんは言います。「辺野古の基地建設を許し、高江のヘリパッドを許すと、危険なオスプレイがヤンバルの森の上空を飛び回ることになる。辺野古のサンゴ礁の海、ジュゴンの食み跡がある海が、高江の湿潤な亜熱帯の森が消える」とも言う。以下、伝えきれない抜け落ち御免で講演の要旨を報告します(真喜志好一さんのHP「沖縄はもうだまされない」を参照してください)。
「辺野古の新基地建設反対では普天間を固定化する」という主張には根拠がない
真喜志さんは言います。「世界で戦争を起こしているアメリカがどんな戦争をするのか。それは9・11後のアフガニスタン攻撃やイラク攻撃に顕著に現れています。数カ月の開戦準備期間をおいて戦力を配置し、相手国の攻撃を受けない距離からミサイルを撃ち込んで、相手の防空能力、防空網を破壊した後で爆撃機など有人の飛行機で地上戦闘部隊を攻撃し、相手国の戦闘能力をしっかりと奪った上で、海兵隊や陸軍の兵士などの戦闘部隊を上陸させている。つまり、海兵隊は殴り込み部隊だという刷り込みが日本中にありますが、後から入って来るのです。だから、海兵隊が東京にいても、大阪にいても、アメリカ本国にいても一向にかまわない。実際に沖縄にいる海兵隊を乗せてイラクなどにアメリカは出撃していますが、戦闘部隊を乗せる船は佐世保にあって、佐世保から一泊二日くらいで沖縄に来て、兵隊を乗せて沖縄から出て行く。
辺野古への移設を拒否するなら普天間は固定化すると言う。まるで一つの問題であるかのように政府は言う。これだと答えをだせない。新たな基地建設はノーという問題と、危険な普天間基地は閉鎖せよという二つの問題なのです。普天間飛行場は1945年4月、沖縄に上陸した米軍が勝手に作った飛行場です。ブルドーザーで住宅や畑を押し潰して本土爆撃用に作った。今も住宅地の中にあり、危険な普天間基地を返せというのは宜野湾市民の当然な要求です。そういう危険な普天間を返すかわりにどこかに作らせてくれというのは居直り強盗のようなもので、日本政府はその共犯者です。」
SACO合意の沖縄基地返還とは
1995年9月に起きた3名の米兵による少女暴行事件を契機に、基地の整理縮小、日米地位協定などの改定を求める沖縄の怒りと願いを受けた形をとりながら、日米間で96年11月18日に沖縄に関する特別行動委員会(SACO)が発足します。しかし、県民の思いを逆手に取り、翌年の4月15日までのわずか5カ月足らずで出した決定は、アメリカがこれからもずっと世界中で戦争をしていくための基地の合理化、固定化、先鋭化そして、強化以外のなにものでもありませんでした。
ほとんど移設条件つきで返還される基地は3つのグループに分かれます。第1グループは古い施設の更新。移設や新設した後のいらなくなった土地を返すというものです。第2グループは辺野古に基地を作ること。那覇軍港をどこかに移すこと。第3グループはオスプレイを配備するための訓練場を準備しておくことです。北部訓練場の北半分を返し、7カ所のヘリパッドを南に移す。ギンバル訓練場を返し、ブルービーチにヘリパッドを移す。返還と言いながらオスプレイの受け入れ準備をしているのです。
辺野古の海上基地計画には75%の県民が反対しています。97年12月、基地建設の是非を問う名護市民投票は政府の介入にもかかわらず、名護市民は基地建設反対の意志をはっきりと表明し、勝利しました。それでも、日米両政府は移設計画を進めてきました。2004年4月、那覇防衛施設局が海上ボーリング調査に現れました。しかし、「国が法律を犯して調査を強行するのであれば、住民は非暴力直接行動で国の違法行為を止める権利がある」と阻止団による海上での阻止行動と漁港の近くのテント村での座り込みで、2005年9月那覇防衛施設局は海底に1本の穴も掘ることなく、撤収していきました。
仲井真知事の辺野古埋め立て承認のでたらめさと違法性
昨年12月17日、仲井真・沖縄県知事は埋め立てを承認しました。その違法性について真喜志さんは説明します。「埋め立て承認願書にはまさに軍港機能の拡張が書かれている。船をつけることができる護岸の長さは約200mとされていたのが271mに伸びた。この伸びた寸法は257mのボノム・リシャール(母港は佐世保)という強襲揚陸艦、小型航空母艦みたいなものですが、これが、すっぽり入る大きさになっている。岸壁の幅が30m。佐世保の岸壁並みのものがここにできる。」「ほぼ1年の海上での闘いの後、政府はボーリングを断念した。しかし、L字型に滑走路を作り、深い大浦湾に面して軍港機能を持ち込むという計画に変えてきた。」「ハーリーという沖縄の海の祭りがあるが、ハーリーをする浜を埋めて、作業ヤードを作る。漁港の先端にある安全を祈願する祈りの場所、ハーリーの場所を沖の方へ移すと国は言っている。この計画に対して、2年前の知事の意見は『ハーリーの場の消失に関わる環境保全措置として場の移動を検討するとしているが、その場も含んだ上での行事、祭礼であることを認識する必要があり、当該環境保全措置の実施を前提とした評価は適切ではない』と、国の計画を拒否していた。しかし、埋め立て承認後の沖縄県の見解は『周辺自治体との協議を行い、伝統的な行事及び祭礼等の場の移動先について検討します』ということを言っている。沖縄県の言い分は、国が周辺自治体との協議をおこなうと言っているので承認したと言う。しかし、周辺自治体との協議などおこなわれていないのです。」
東村高江のヘリパッド建設阻止の闘い
北部訓練場とは亜熱帯の湿潤なヤンバルの森の中にあり、日本で最大の米軍基地・軍事演習場です。上空2000フィートまで米軍の使用が認められ、最低高度制限はない。SACO合意で返還予定地にあるヘリパッドを東村高江周辺に移設すること、海からの上陸作戦訓練のための水域と土地(宇嘉川河口)を提供することが決定されました。
2006年に公表されたヘリパッドの移転予定地は東村高江の集落を取り囲む様に6カ所のヘリパッド―オスプレイパッドを作るというものでした。2007年7月に建設工事が開始されてから住民の座り込みが続いています。すでに1つのオスプレイパッドが建設され、オスプレイが飛行して来ます。
オスプレイパッド建設予定地はどれも手つかずの森であり、ヤンバルの森にだけ生息する一属一種のノグチゲラが巣穴を作っています。しかし、ヘリパッドができると森の生き物は生きられない。人の暮らしも危険になる。辺野古でも高江でも住民による非暴力直接行動が連綿と続けられています。
最後に真喜志さんは2012年9月末、沖縄へのオスプレイ配備直前の阻止行動で市民がすべての普天間基地のゲートを封鎖したことについて、「アメリカ国防総省は沖縄にオスプレイを配備するにあったって、文書でも航空写真でもクリアゾーンが普天間基地の外にはみ出してることを明記している。危険な普天間の飛行場を閉鎖しない日本政府。危険な普天間にオスプレイを配備した米軍。無責任な日本政府と米軍にかわってゲートを封鎖する住民に正義がある。」と訴えた。(大阪 T)
早期結審を許すな
市東さんの農地裁判 東京高裁
市東孝雄さんを先頭に、東京高裁周辺をデモ (6月25日 都内) |
6月25日、市東さんの農地裁判・控訴審の第2回口頭弁論が開かれた。
控訴審に先立ち、高裁前街頭宣伝、そして高裁包囲のデモがおこなわれた。集会では、市東さんが裁判に臨む決意を語り、さらに早期結審への動きなど控訴審の現状が報告された。
傍聴抽選券配付にむけ並びながら、同時に署名の提出が、市東さん、北原事務局長はじめ反対同盟を先頭におこなわれた。5000筆を超える署名が新たに追加され、第1回提出分とあわせ、13153筆となった。
裁判は午後3時開廷。本来は第1回に続く控訴趣旨の陳述であったが、冒頭に弁護団から、被控訴人(NAAと千葉県)の控訴理由書に対する準備書面(5月30日提出)の不誠実、信義にもとる書面への批判・求釈明がおこなわれた。弁護団提出の準備書面は、一審判決における事実誤認や法解釈の誤りの指摘だけでなく、新たな事実や解釈も加えて、187頁に及ぶ。ところがNAAや千葉県の準備書面は、各々わずか十数ページ。その中身も「原判決のとおり」「否認ないし争う」などを繰り返すだけで、何をどう争うのか具体的記載は一切ない。
貝阿彌裁判長は、一旦は「原審判決に付け加える必要なしということだろう」と助け船を出すも、弁護団の追及に、「主要事実についての認否がなければ裁判所は認否を求める。被控訴人は釈明するように」として論議を引き取った。そして、前回からの控訴趣旨の陳述が30分の予定をこえておこなわれた。
NAA、千葉県は実質論議を回避し、早期終結を狙っている。
3万人署名の拡大を
報告集会では、北原事務局長のあいさつに続いて、市東さんから「負けるわけにはいかないという思いでやっている。問題は、三里塚でどう生き、農業をやっていけるかということ」「今日は、弁護団が間髪入れずの弁論で裁判長の訴訟指揮を止めた」「これからも弁護団、皆さんの力を借りながら必ず勝てるようにがんばりたい」と決意を述べた。弁護団、動労千葉、関西実行委員会、市東さんの農地取り上げに反対する会、沖縄市東さんの会などからあいさつがおこなわれた。
次回口頭弁論は、10月8日午後3時。
早期結審への動きが明らかになる中で、非常にきびしい闘いが続く。ひき続き3万人署名運動を進め、東京高裁、NAA・千葉県の早期結審策動を圧倒する力を結集しよう。
4面
ルポ 中間貯蔵施設・住民説明会
“東京に持って行って”(下)
請戸 耕一
中間貯蔵施設設置問題についての国による住民説明会が、5月31日から6月15日まで16回にわたっておこなわれた。中間貯蔵施設とは福島県内の除染で出た汚染土や汚染度の高い焼却灰などを保管する施設だ。今回は、6月1日の南相馬市・原町会場での住民の発言の一部を紹介する。
南相馬市・生涯学習センターの集会室でおこなわれた住民説明会(6月1日) |
あまりの仕打ちではないですか
双葉町・男性
まず、(石原伸晃)大臣の顔が見えないんですが、どうしたんですか?どういう理由でこの大事な席にこられないんですか? こういう大事な会合に大臣本人が来て、われわれ双葉町民の声を直に聞いていただきたいですよ。
震災と原発事故で、避難場所を9カ所も10カ所も点々とし、家族はバラバラ、隣近所の人もどこにいるかわからない。こういう状況にあるんですよ、私らね。
私らの精神状態を全く考えず、ここに中間貯蔵施設をつくるという。これはあまりの仕打ちではないですか。双葉町民は、ああ、こうやって原発のためにチリヂリバラバラになったんだって、温かい手を差し伸べるという姿勢がぜんぜんないじゃないですか。
ご先祖の労苦
私は6代目です。1代目のご先祖様がこの地にわらじを脱いで早250年。ご先祖様が来たときは、田圃も畑も宅地も何もない荒地ですよ。そこに鍬を入れて、昼も夜も寝ないで働いて、ものすごい苦労をして、築き上げた財産ですよ。それを簡単に手放すわけにはいかないですよ。絶対に手放すことはできません。
双葉町は、3・11の前は、緑がきれい、水がきれい、空気がきれい、すばらしいところだったんですよ。その双葉町を忘れることはできません。必ず双葉町に戻れるよう、待っているんですよ。まあ3年や5年では戻れないでしょう。30年も50年もかかるでしょう。当然、もう息子や孫の代になっています。
そういう風にきれいになって住める状態になったときに、中間貯蔵施設つくられていたらどうなりますか? 絶対に中間貯蔵施設は反対です。いいですか、反対しますよ、どこまでも。
今すぐ最終処分場を探せ
「30年以内に県外の最終処分場に持っていく」と言っているんですが、30年後は、私らの息子や孫の代ですね。われわれの世代ができないのに、息子や孫の代にできるということはない。
双葉町に中間貯蔵施設ができたら、これが最終処分場になってしまうんですよ。みんなこれを心配しているんです。
「30年以内に県外へ」って言うんだったら、30年後じゃなくて、今すぐ最終処分場をつくりなさいよ。だいたい中間貯蔵施設と最終処分場の両方をつくるなんて、経費が膨大です。最初から、最終処分場をひとつつくればいいんですよ。そのようにお願いいたします。
ムシロ旗を掲げてでも
大熊町・男性
私の住んでいる生活圏は、中間貯蔵施設予定のへそです。どうにもならないところです。予定地の地図を見て、ガックリ来ました。
私で4代目です。1代目は北海道で警察官を拝命、殺人犯を逮捕した際に殉職しました。その家族が北海道から大熊町の地に来て、殉職して命に代えたお金で、土地を得て4代にわたって農業生産に従事してきました。先祖が命に代えて得た土地を、簡単に手放せません。 金が欲しいわけではありません。金は要らないから、元のふるさと、それを返してほしいです。中間貯蔵施設、はっきりいって迷惑です。
次の世代には
そこで生まれ育って、遊んで、盆踊りもやって、楽しんで…。帰りたいですよ、ほんとに。悔しいです。30年後、どうなっているか、分かりますよね。たぶん私が一番先にカルシウムになっていると思います。でも、次の世代には、やはりこの汚名は残したくない。基本的には、私は、この中間貯蔵施設に反対します。先祖が命に代えて残した財産ですよ。国がやるというんだったら、私は、命に代えても、ムシロ旗を上げても、たたかうつもりでいます。
ただ、今後いろんな条件が出てくると思います。その内容によっては、多少理解する考えも持ちます。そういうことを考えながら、ケンカしていただきたいと思います。今は、反対・賛成よりも、やっぱりこのふるさとを残したいという考えです。
「全国で応分に」と明記すべき
双葉町・男性
中間貯蔵施設は当然、反対です。避難者が、さらに辛い思いをするような施設を絶対につくってほしくないというのが本音です。
30年後に持ち出し?
で、もし仮につくるとなる場合、一番やっぱり心配するのが、30年以内に本当に持ち出せるのかというところです。恐らくここにいる人のほとんどが、恐らく前に座っている方(政府官僚)も、たぶん30年以内に持ち出せるなんて恐らく思っていないんじゃないかと思います。誰だっていやですからね、自分のところで受け入れるなんて。
で、是非お願いしたいのは法律を作る条文の中に、「もし仮に、決まらなかったら、東京都で受け入れる」とか、「全国の自治体が応分に受け入れる」とか、そういうことを入れてほしい、是非そうして下さい。
核廃棄物最終処分場
なおかつ私が心配するのは、30年たったら、恐らくここにいる人の、私も含め、大部分の人が、亡くなっているかもしれないし、反対もできないくらいになっているかもしれない。人が住まない土地になっていて、反対する人がいない。で日本国内に核廃棄物が一杯あります。そうすると、もしかしたら、日本国内の核廃棄物の最終処分場になる可能性だってあると思います。福島県が、核廃棄物の最終処分場になる。そんな可能性もあると私は思います。
ですから、30年以内に必ず持ち出せるように、具体的な地名を法律に入れて下さい。東京であるとか、すべての自治体であるとか。もちろんすべての自治体といっても、福島県とか、長崎とか、広島とか、原発のない沖縄とか、そういうところは、除いて考えてもいいと思います。
全原発の廃炉を条件に
もしこれを受け入れるときには、私なんか一番感じるのは、こんなにつらい思いをさせられて、こういう思いをもう絶対に他の日本人にはしてほしくないし、できれば、世界中の人に、こんなふるさとを失うような思いをしてほしくないと思いますので、もし仮に中間貯蔵施設を受け入れるときには、交換条件として、すべての原発の廃炉、即廃炉を国に求める、それくらいのことはしてほしいと思っています。
国民として人権を認められてない
双葉町・男性
「浸出水は放射性物質を除去後、河川に放流」(政府配布資料)とあります。原発でも建屋に入る前の地下水をくみ上げて放出するのは許容されていますけど、その施設の中から出てくる水についは、放射性物質を完全に除去する技術がまだ開発されていないと思います。浸出水を河川に放出したら、われわれのふるさとは、ずっと汚染され続けることになるという不安があります。
住民投票は?
(政府配布資料で)「受入是非の判断」と言ってますが、この受け入れの是非というのは誰が最終的に決めるんでしょうか? どういう方法で一人ひとりの意志を確認するんでしょうか?
普通ならば、地区の代表である町議によって話が進められるというのが大半だと思いますが、この受け入れ問題は、一人ひとりの人生に関わる問題です。同じ世帯の中でも、父親と子ども、孫の意見が全く食い違う問題です。そういったものをどういうような形で、汲み上げるのか? 町長ひとりの決断なのか、町議会の決断なのか、住民投票のように一人ひとりの意志を表明する場を設けるのでしょうか?
こんな短期間で
一般に全国でゴミ処理施設をつくるとき、来年1月から建設を始めたいなんて、たった6カ月で着工できるというようなことがあるんですか?
全国の他の地域では、住民たちに対して、こんな短い期間でやるってことを想定すらしないのに、双葉では説明会からたった6カ月で着工という計画になっています。これは、われわれを他の一般国民とは違って、軽視しているんではないのか、基本的人権を認められてないんじゃないのか、そういう風にとらえられてもおかしくないという話なんですよ。
説明会後の取材で:
結局、50年前、原発を持ってきたときと同じやり方。あのときは東京電力だったけど、今度は国が前に出て同じことをやっている。だから今、反対しないといけないと思う。
騙されてる気がしてならない
双葉町・男性
最終処分場が決まんないうちに、中間貯蔵施設をつくることは法律で決まっていると。
今度、最終処分場でもそういうことが起きるはずですよね。双葉町、福島で、これだけいろんな問題が山積みになって、なかなか進まない。これが県外に本当にできるのか。
大熊の復興というけど、何年後に復興を考えているのか、その辺がわかんない。自分たちの時代には復興はできない。子ども、孫の時代か。その孫たちが、中間貯蔵施設があって、風評被害的なものが残っているところに帰ってくるだろうか。子ども、孫が戻ってくるということはほぼ考えられない。
中間貯蔵施設をつくって、大熊・双葉の復興って、どんな構想が立ちますか? 復興と言うが、実感がない。
自分たちも、このままもう気力がなくなって、諦めるというような。それを(国は)なんか待っているような。(復興について、国は)やっている、やっているって言ってるけど、目標も何もなくて、何の目安もなくて、どうにもなんない。結局、自分たちの(人生の計画を)何も決められない。もう矛盾だらけだ。
もう少しなんか考えてもらわないと、もう少し答えを出してもらわないと。 納得いかない。(了)
5面
“普通の場所で生活したい”
異議あり 精神科病棟転換型施設 6・26 東京
緊急集会
6月26日、東京日比谷野外音楽堂を満杯にする3200人の精神障がい者と支援者が集まった。「生活をするのは普通の場所がいい、STOP! 精神科病棟転換型居住系施設!! 緊急集会」だ。主催は〈病棟転換型居住系施設について考える会〉。スローガンは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」。
集会がめざすのは、いま厚労省が進めている、精神病院の病棟を建て替えてアパートやグループホーム、老健施設にし、病院の入院患者をそこに移して、退院させたことにするという施策に反対することだ。厚労省は社会的入院が多すぎるという批判をかわすために、数字上だけ入院者を消そうとしている。同時に、大幅な医療費削減の効果も狙っている。そればかりではなく、「元精神障がい者」を隔離し続けるという社会防衛さえも狙っているのだ。
文字通りの緊急集会で、わずか3週間前に企画されたにもかかわらず、北海道から沖縄まで全国津々浦々から集まった。身体障がい者、視覚障がい者、聴覚障がい者などの他障がいや、精神科の労組や施設の労働者をはじめとする労働者も多い。精神障がい者のための集会にこれだけの人が集まったのは歴史的にも初めてのことだ。
超長期入院者が発言
病院敷地内の「病棟転換型居住系施設」への「退院」では病院の管理監視下に置かれることにかわりはない。そんなものは退院ではない。多くの精神障がい者が「嫌だ」と声をあげた。それに応える形で精神障がい者や支援者が「考える会」を作り、この日の集会を企画した。
集会では20年から38年もの超長期入院から社会に出て暮らしている元入院患者が6人発言した。口々につらかった入院生活と、解放された自由な暮らしの素晴らしさを語った。もし刑務所に38年間入れられていて、出所場所が刑務所の敷地内のアパートに住まわされたら自由になったと思うだろうか。それがなぜ精神障がい者が対象なら許されるのか。
入院したのが東京オリンピックの前で退院が1989年という人も発言した。症状はとっくに良くなっていたのに病院内で労働させられていたのだ。「病院の儲けと患者の人生のどちらが大切か?」と病院敷地内への「退院」など絶対に嫌だとはっきり言った。
続いて全国各地の家族会の代表者が発言。「厚労省の検討会は拙速なまとめをせず、討論を深めて、家族・本人の思いを反映させてほしい」などと述べた。病院労働者、検討会委員が発言した。検討会委員は「検討会では明確に反対しているのは25人の委員のうち4人だけだ」、「政府の精神障がい者関連予算の内、地域支援には3%しか使われておらず、街での暮らしへの支援が弱すぎる」などと述べた。委員の精神障がい者は「転換施設ができたら退院したいという思いを言えなくなる。私は1年間の入院生活で自尊心をズタズタにされた。患者の身になって考えてほしい。どうやって地域に戻すかを考えてほしい」と語った。
地域自立生活の立場から
支援的な立場の精神障がい者2人が発言。私は怒りネットを代表して、「生活保護を守ることや支え合いで、地域自立生活を実現しようとしている。病棟転換施設は地域自立生活を台無しにし、病院で一生を終えることを新たな原則とするものだ。一極集中で地方の病院に医者が集まらなくなっている。通院に対応すればすむアパートや、医者が極端に少なくてすむ老健施設にすることは、病院経営者は歓迎するが、被害を受けるのは精神障がい者や高齢者だ」と発言した。
集会後半では障害者インターナショナル日本会議などの障がい者団体の代表や弁護士が発言。病院労組の代表は「病院が縮小して職がなくなったら自分で職探しをできる」と病院経営を心配する医者たちを批判した。
患者は「固定資産」
日本の精神病院には30万人以上が入院している。そのうち7万人は、症状が改善して入院する必要がないことを厚労省も認めている。この7万人は退院先などの社会的資源がないために退院できない、いわゆる「社会的入院」だ。
実際には10万人以上が社会的入院だと言われている。精神病院の9割が民間経営で、患者を「固定資産」(悪徳精神科病院長や悪徳精神科医の間で広く言われている言葉)と見なしていることが原因だ。厚労省は10年も前にその解消をすると約束したが、そのうち1万人くらいしか退院できていない。批判に迫られた厚労省は、医療費大幅削減の狙いもあり、2013年6月の改正精神保健福祉法成立をうけて、「精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針に関する検討会(現:長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策にかかわる検討会)」を立ち上げた。しかしその構成員25人の内、精神障がい者はわずか2人、家族が1人だ。 一方で日本精神病院協会(日本の民間精神病院の経営者の集まり)の幹部数名を含めて医師が13人と過半数を占める。他にも医師以外の病院労働者の利益代表が多数いる。障がい者施策を決めるときの国際的な基準である「私たち抜きに私たちのことを決めるな」には程遠い。その検討会のなかで施設理事の岩上洋一が「病院で死ぬのと、病院の敷地内にある自分の部屋で死ぬことは大きな違いがある」と「病棟転換型居住系施設」の案を提示した。
もともと日本の精神病院には全世界の精神科入院患者全体の2割にもあたる入院患者がいる。30万人の入院者のうち1年以上が20万人、101年以上が6万5千人、20年以上が3万6千人だ。平均在院日数は301日で欧米の平均18日に比べ突出している。病院で一生を終える人も多く、2011年には1万1千人が病院で亡くなった。毎年同様の多数の人たちが病院で亡くなっている。看板を付け替えれば解決するという問題ではない。死ぬ場所が問題なのではなく、生きる場所が問題なのだ。
厚労省も精神病院協会もこの岩上案に乗っかった。そのための検討会作業部会が作られたが、その中で反対したのは精神障がい者1人の他には1人しかいなかった。検討会に戻されてからも反対したのは精神障がい者2人以外はたった2人だ。厚労省によるアンケート調査の結果、1年以上の入院者の多数が「退院したいが病院の敷地内には住みたくない」とはっきり言っている。病院や医者による支配―被支配の構造を脱する脱権力化が必要なのだ。(脱権力化については『展望14号』の拙稿を参照されたい。)病棟転換施設では支配―被支配が継続してしまいダメなのだ。
厚労省は結論が出る前に予算904億円を付けた。しかもその財源は消費税だ。
闘いはこれからだ
反対の声の大きさにもかかわらず、集会後の7月1日にひらかれた検討会では多数決で結論が出され、「病棟転換型居住系施設」は作られることになった。しかし、集会の影響もあったのか、反対者は8人に増えた。反対意見が強くなったので、全体で実施するのではなく、試行事業にするという制限も付いた。今後、厚労省が具体的なことを決める段階に入る。国会での追及や、労働者民衆が声をあげることで、厚労省の策動を頓挫させよう。その後は、闘いの場は都道府県に移る。都道府県の予算も使うことになるので各議会で審議されるからだ。
まだまだ闘いはこれからだ。各種のメディアを駆使し、草の根の宣伝扇動に努め、全国各地で闘いの声をあげよう。さらなる精神障がい者を反対の陣形に結集し、他障がいを含めた労働者民衆を獲得しよう。
さらに10・30東京・日比谷野音で開かれる障がい者の大フォーラムに結集しよう。(高見 元博)
海外のニュースから
時給最賃15ドルかちとる
アメリカ・シアトル市で
「アメリカ、シアトル市で最低賃金を15ドルに(2021年までに達成)」という「驚くべき」ニュースが届いた。日本はいま、労働時間と関係なく「成果」で賃金を支払う制度(残業代がゼロ)について、「政府は対象者を年収1000万円以上とすることで調整に入った」などと報じられているから、なおさらだ。
シアトル市議会では6月2日、現在9・32ドルである市全体の時給最低賃金を15ドルとすることを満場一致で可決した。円に換算すれば約1500円となる。労働者のたたかいが獲得した、この大きな成果を具体的に見てみよう。
アメリカでは最低賃金は、州、市などで定められており、現在のシアトル市の最低賃金は州であるワシントン州と同じ9・32ドルとなっている。全米(連邦)の平均は7・25ドルで、サンフランシスコ市は全米で最高の10・74ドルである。これからどのように具体化するのであろうか。最初の動きは来年4月から500人以上の企業で、11ドルとなる。経営側は大小4グループに分けられ、それぞれ段階的スケジュールを決め、2021年までに目標の15ドルに到達させる。
最低賃金アップは世論の賛成も高い(ピュー・リサーチなどによれば76%が賛成)。この大きな勝利にとって見逃せない人物が、クシャマ・サワント(Kshama Sawnt)さんである。彼女はインド生まれの40歳。1994年にアメリカに来て、2006年シアトルへ移った。
彼女は社会問題に非常な関心を持ち、ソーシャリスト・オルタナティブ(現社会にとって代わる社会主義)という政治団体に参加し、2011年11月からオキュパイ運動を主体的に担った。2012年の連邦下院選挙に、自分が社会主義者であることを明言して出馬した。当選は果たさなかったが、35%という驚異的な支持を獲得した。引きつづき2013年11月、シアトル市議会選挙に挑戦。サワントさんは、「最賃を上げる。手ごろな住まい。公共交通や公教育のために、豊かな人から税金を」(市広報)を掲げて当選した。16年間在職した民主党の議員を破って、最初の社会主義者の議員となった。それはこの100年間なかったことだった。
労働者といっしょになった、こうした彼女たちの熱心な議会内外での活動と努力があり、市長、議会を動かし、画期的な成果が実現した。
共和党は、最賃アップに反対している。例えばオクラホマ州では、2014年4月、フォーリン知事が「州内の自治体がそれぞれの最賃や諸手当を決めないよう」定めた。オクラホマ州の労働者の平均年収は、現在たったの1万5080ドル(約150万円)である。(之)
〔参考資料 「レイバー・ノーツ」2014年6月3日付 ほか〕
6面
視座 韓国民衆言論が見た
日韓米軍事同盟化の動き(中)
真野 巌
韓国民衆言論 〈プレシアン〉(5月19日付)は、米国のMD構築と三国軍事同盟への動きを論評
「オバマは4月下旬、日本と韓国を順番に訪問し、米韓日三者間のMDシステム構築を議題にした。〈MDの相互運用性の向上〉〈日米韓3カ国間の情報共有〉がそれである。続いてオバマと安倍は、主要な国内的措置をとった。オバマは、三角軍事同盟の設計者である側近、マーク・リッパートを駐韓国大使に任命し、安倍は、解釈改憲による集団的自衛権の行使を策定した。集団的自衛権の目標は、日米同盟の一体化と日米韓のMD体制にあるという点で、両者は分離されたものではない。すぐ開かれる日米韓の国防相会談で、釘を打とうとしている。僅か2カ月間で、日米韓MD体制への動きが進行している。韓国は、MDの明示的対象である北韓(朝鮮民主主義人民共和国)と、潜在的対象である中国・ロシアに最も近い米国の同盟者だ。相手のミサイル発射を出来るだけ早く検出・追跡する上で、韓国の地理、軍事的利点は非常に大きい」と。
2008年11月(イ・ミョンバク政権時)から、毎年開かれてきた〈日米韓三者安全保障討議(DTT)は、パク・クネ政権時に入って、安倍の歴史認識に関する挑発的言動に反撥する国内世論を意識した対日本強硬姿勢によって、その後中断したが、パク・クネは、3月26日オバマ主導よるオランダ・ハーグでの三者首脳会談によって4月再開に同意し、三角軍事同盟に向かっての「指令搭」として機能し始めようとしている。
このDTTの実態は秘密にされて来たが、ウイキリークスによって、日米韓三角軍事同盟を推進する秘密のコントロールタワーだと暴露された。4月中旬ワシントンで行われたその中身は、ハーグ三者首脳会談に沿って、MD体制をめぐる協力強化と、そのための日米韓軍事情報の共有問題を議論したという。
MD体制を発動するためには、日米韓三国間の軍事情報の共有と、三角軍事同盟による自由な戦争行為を妨げる各国の法的制約や、日韓に横たわる「歴史問題・領土問題」の政治的妥協が急がれた。日本国憲法第9条は、MD体制の下での共同の軍事行動にとって障害物であり、また、日本の「右傾化」と「日本の戦争犯罪の遺産」に反撥する韓国民衆運動と、それに足をとられるパク・クネ政権の逡巡は、三角軍事同盟をめざす米国にとって、立ちはだかる障害物となっているからだ。
現在、韓国と米国、日本と米国との間では、軍事情報包括保護協定が締結されている(2007年5月)。しかし、日本と韓国との間に軍事情報包括保護協定はない。軍事同盟は、軍事情報の交換から始まる。米国は、安倍政権と韓国に対し、日韓軍事情報包括保護協定の締結を要求してきたが、2012年6月(イ・ミョンバク政権時)締結寸前になって、アジア侵略と植民地支配の歴史を正当化する安倍政権の挑発的行動に対する韓国の世論の反撥によって延期となった。
しかし、多くの韓国言論の報道によれば、パク・クネは、ハーグ三者首脳会談での主要な議題として米国から提起されていた「日韓軍事情報保護協定」の締結を、「日米韓の軍事情報を共有する了解覚書」という形で検討を開始し、韓国議会の承認を回避し、政府レベルでの迂回戦略によって、実質的な締結に持ち込もうと企んでいるという。
MD体制の構築を基軸にし、軍事情報を共有する「日米韓三角軍事同盟」は、急速にその歩みを加速している。
韓国民衆言論―〈統一ニュース〉(4月22日付)は、日韓関係に対する米国の態度を、日本の過去歴史問題を不問にして、植民地支配者の論理を展開していると指摘
「米国は、アジア太平洋地域での中国の牽制と朝鮮孤立圧殺政策を効果的に実施するには、世界で米国だけを信じて従う唯一の国々、韓国と日本との三角軍事同盟が絶対的に要求されている。・・・しかし、日韓は米国の希望とは違って、過去の歴史問題と領土問題、歴史認識の渡るに難しい川がある。特に安倍政権発足以来、日本の植民地支配など過去犯罪と、日本軍『慰安婦』強制連行などの不正、集団的自衛権行使の主張、歴史教科書問題、戦犯の遺骨のある靖国神社参拝、軍国主義復活策動など、我々民族として容認できない負の要因が積まれている。」
(しかし)「2013年12月6日、ソウルに来たバイデン米副大統領は、ヨンセ(延世)大での政策演説で、“今日まで、数十億ドルをかけて文句を言うことなく韓国をサポートして来た。25000人の米国将兵は韓国軍将兵と共に肩を並べて歩哨に立っている。域内の民主主義国家である韓国と日本は関係を改善しなければならない”と、米国が言うようにせよと、妄言した」
「2014年2月13日ソウルに来たケリー米国務長官は、韓米外相会談を終え、共同記者会見で、“日韓が、互いに過去問題は、少し後回しにしておいて、両者間、三者間の協力を改善させることが出来る方法を探すことができるように、手助けする。過去より、現在の安保問題に焦点を合わすべき”と主張した。」
「米国は、日韓間の積もった過去の清算問題や歴史問題など主要懸案などは念頭におかず、中国包囲と朝鮮孤立圧殺の共助にだけ執着して、三角軍事同盟の強化と、特に北東アジアでの、新冷戦体制を画策している」
「(このように米国は)大統領から上級政策立案者まで、わが民族には、最も残酷で野蛮な植民地支配の侵略者であり、その過去の犯罪に対し謝罪も賠償も再発防止の真正性も見せない日本を、彼等の帝国主義的覇権の野望と、排他的な自己利益だけの為に、戦犯国家(日本)の過去の犯罪に目を閉じたまま、(その)軍隊も交戦権も否定した平和憲法を無視したまま、再武装の道を解除して、軍事大国化と軍事同盟に押し出しているのだ。」(つづく)
「JR大阪駅前街宣弾圧」裁判
大阪地裁が無罪判決
韓基大さんに無罪判決
2012年10月17日にJR大阪駅前(敷地の東北角)付近でおこなわれた「放射能汚染がれきの広域処理」に反対する宣伝活動に対して、同年12月に3人が令状逮捕され、うち韓基大さんのみが「威力業務妨害」で起訴された。
7月4日にひらかれた判決公判で、裁判長は「無罪」を言い渡した。
JR側の主張をしりぞける
判決では、「JR側は20名の職員を動員し、さらに現場には警察官もいた。それに対して、(現場にいた数十人の市民のうち)数人がビラまきをおこなっていたにすぎず、韓さんに加勢した者もいない。韓さんひとりが短時間(副駅長と)言い争ったからといって、副駅長の業務が困難になったとは言えない。」
街宣後の駅コンコース通過問題については、「一般的に駅側は、コンコースへの立ち入りを制限する権限をもつが、駅の秩序が乱される可能性がないのに、(恣意的に)使用を制限することはできない。当日、コンコース通過時に、シュプレヒコール、ビラまき、デモはしておらず、コンコース立ち入りを認めても、秩序が乱される恐れはなかった。にもかかわらず、JRがコンコースの通行を認めなかったことは適法な業務とはいえない。」として、「犯罪の証明はない」と断じた。「地検は控訴するな」の声をあげていこう。
がれき説明会弾圧は有罪
もうひとつの「2012年11・13大阪市がれき説明会弾圧」判決は有罪となった。判決内容は、先の2人(昨年11月28日に判決)と同様で「懲役8カ月、執行猶予2年」の不当判決だった。
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安倍政権は1日、集団的自衛権行使を認める閣議決定を強行しました。集団的自衛権の行使容認と憲法改悪との闘いは歴史的階級決戦になろうとしています。政権を揺るがす運動をまきおこしていくには、資金が必要です。革命的共産主義者同盟再建協議会に対し、支持者・読者の皆さんに特別カンパをお願いします。
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