派遣法大改悪を許すな
労働法破壊に反撃を
「派遣の全面自由化を許していいのか」と訴える棗一郎弁護(4月14日大阪市内) |
4月14日、エル・シアター(エル・おおさか大ホール)で、在阪法律家8団体による「STOP! 派遣法の大改悪」集会がひらかれ、弁護士、労働組合員など400人が参加した。派遣労働を無制限に認める大改悪派遣法が今国会で成立が狙われるという緊急事態に大阪労働者弁護団、大阪社会文化法律センター、民主法律家協会など労働事件などにかかわる団体の共同開催でもたれたもので、関西の多くの労働団体が結集した。
丹羽雅雄大阪労弁代表幹事の挨拶、萬井隆令龍谷大名誉教授の基調講演、棗一郎日本労働弁護団常任幹事からの国会情勢報告がおこなわれ、「派遣労働を無期限・無制限に利用でき、これまでの直接雇用の正社員の多くが派遣労働者に置き換えられる正社員ゼロへの一里塚となる」大改悪に断固反対、速やかに撤回することを求めるアピールを決議した。
「労働法理への叛旗」
基調講演の萬井さんは、安倍政権・経団連は本来守られるべき「労働者の権利」の全てについて「既得権益」「岩盤規制」として2年間で「ドリルで破る」と公言(1月22日、ダボス会議)情勢だと事態を訴えた。派遣法改悪の経緯を「あり方研」の報告書(昨年8月)や労働政策審議会での討議・建議などを紹介して「従来の改正と性格がまったく異なる」、「直接雇用の原則」を破壊するもので「労働法理への叛旗」であると弾劾した。
「キャリアアップ」
萬井さんは、この法改正推進の目玉イデオロギーに使われている「キャリアアップ」について鋭く批判。「賃金均衡考慮やキャリアアップのために」「職務能力や技術習得の評価を派遣元に伝える」(40条6項)危険性を指摘した。「低い評価労働者の差し替え」に使われるし、実際各企業で「キャリア○○」という部署があり、いずれも「追い出し部屋」で(国鉄分割民営化のときの)「人活センター」となっているとの警戒を訴えた。最後に「本気で反対を」と締めくくった。
リレートークでは、派遣・非正規の金融など2人の女性労働者当該が、パワハラの現状、3ヶ月ごとの派遣労働の深刻な現実を報告した。働き続ける権利として「派遣先との団体交渉権」が強く要求された。さらに、コミュニテイ・ユニオン関西ネット、偽装請負・解雇と闘うJMIUダイキン支部など現場から今次改悪への怒りが次々と表明された。
「08年派遣切り」再来
棗一郎さんは08年派遣村のことを紹介し「派遣労働の全面的自由化をゆるしていいのか」と訴えた。また、異常な派遣業界主導の労政審の様子を暴露し、オブザーバーたるにもかかわらず業者が8割発言し、「業界の、業界による業界のための法改正だ」と弾劾。今国会(6月22日会期末)で派遣法「改正」案が成立してしまうかどうか、ギリギリの情勢であり、国会へ反対意見を集中しよう。安倍政権の猛スピードでの成立の動きを跳ね返す闘い、ネット署名、議員要請、FAX・メールなど全力で、反対行動に立ち上がろうと提起。
派遣法大改悪から始まる労働法制総破壊も、集団的自衛権も、秘密保護法も、監視国家も、刑事法制の改悪も全て一体である。「戦後レジーム」と安倍が呼ぶ「岩盤規制」の破壊なのである。それは何のためか。一部(1%)のグローバル資本にとって「一番の国」をめざすためである。民衆の〈本気〉の総反撃=99%の総反撃の闘いが求められている。
辺野古で海上パレード
海を埋め立てるな
「新基地建設阻止」辺野古浜に450人が結集。この後、抗議船とカヌー隊による海上パレードに移った。(4月19日名護市内) |
4月19日、沖縄県名護市で、「辺野古新基地建設に向けた海上ボーリング調査」阻止・座り込み10周年、海上抗議パレードが開かれた。辺野古浜に県内から闘う仲間450人が集まった。主催は、ヘリ基地反対協と〈基地の県内移設に反対する県民会議〉。
集会を前に、海上には抗議船5隻とカヌー14艇が準備された。浜では辺野古のおじいやおばあたちが海に向かって平和や静かな暮らしを願い、御願をささげた。安次富浩ヘリ基地反対協共同代表は、志半ばで他界した仲間を偲び「彼らの思いを闘いに生かしていく」と決意を新たにした。
カヌー隊の決意表明の後、海上パレードが始まった。抗議船に曳航されたカヌー10艇が連なって出発した。浜にいる参加者と海上パレード の仲間たちが一体となって「新基地建設反対」「辺野古埋め立て許さないぞ」とシュプレヒコールをあげた。
米軍基地建設問題
京丹後現地で反対集会
地元の過半数は反対
米軍基地建設を憂う宇川有志の会の永井友昭さんは「防衛省の説明は住民の『安全・安心』の中身がまったくない」と弾劾した(4月20日 京丹後市内現) |
4月20日、「京都にも沖縄にもどこにも米軍基地はいらないXバンドレーダー基地建設着工反対! 4・20京丹後現地集会」が、京丹後市・宇川農業会館においておこなわれ、関西一円から400人が参加した。主催は、〈米軍Xバンドレーダー基地反対・近畿連絡会〉。
集会には、地元宇川地区から〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉代表・三野みつるさんと事務局長・永井友昭さんが、また京丹後地域からは〈米軍基地建設反対丹後連絡会〉事務局長・近江裕之さんが参加し発言した。
この間、防衛省は袖志(4月13日)、 尾和(14日)、宇川(16日)、峰山(17日)と連続して説明会をおこなったが、その場で「5月着工、12月運用開始」を一方的に通告する一方で、地元住民からの質問は時間制限を理由に打ち切った。「住民の安心・安全」にかんしては具体的な中身がまったくない「説明会」に対して怒りが表明された。
また宇川地区では基地受け入れの撤回を求める署名が、3月段階で有権者の過半数を超え、この署名を京丹後市に提出したことが報告された。
全国の反基地闘争を闘う仲間として、沖縄平和運動センター議長の山城博治さん、岩国市議の田村順玄さん、神奈川からは基地撤去をめざす県央共闘会議副代表の檜鼻達実さんが発言した。
沖縄の山城さんは、「日米地位協定は日本人ではなく米軍を守るために存在している」と沖縄の現実を紹介しながら怒りの発言。「京都の闘いと連帯して闘う」と表明した。
集会後、会場のある久僧地区から、宇川の中心地である中浜地区、そして基地の地権者がいる尾和地区、袖志地区を通る、1時間半を超えるデモをおこなった。地元の住民は軒先から、あるいは田んぼの作業の手を休めて、拍手をしたり、手を振ったりしながらデモ隊を出迎えた。神奈川から来た檜鼻さんは、「反基地の現地闘争でこれだけ地元住民に歓迎されたのは初めて。今日は自分が元気をいっぱいもらった」と語った。また京都からの参加者は「長いデモだったが、きれいな景色と地元の人たちの歓迎で、まったく疲れなかった」「これからも現地闘争に参加したい」と感想を述べた。
地元住民と共に、沖縄や岩国 ・神奈川と連帯して、米軍基地を京都につくらせない闘いをさらに進めていこう。
2面
安倍暴走を阻止しよう
5―6月、怒りの国会包囲へ(上)
集団的自衛権容認から改憲へ
昨年12月に秘密保護法を制定し、沖縄辺野古基地建設にむけた埋め立てを承認させ、さらには中国・韓国・アジアだけでなく、欧米諸国の反対を無視して靖国参拝を強行し、「戦後レジーム打破」をかかげる安倍政権の暴走が止まらない。
とりわけ北岡伸一を責任者(座長代理)とする安保法制懇の5月連休明けの報告をもって、憲法9条を死文化する集団的自衛権容認へ大きく舵を切り、今国会会期中に閣議決定を行おうとしている。
戦後憲法体制の破壊を使命とする安倍政権は、昨年5月から世論動向を見ながら改憲攻撃を進めてきたが、96条先行改憲が破産するや、集団的自衛権の容認による実質改憲に道を定め、安保法制懇での論議を進めてきた。しかし第一次安倍内閣で設置したものの頓挫したこの懇談会は、その人選もNHK人事と同様に要所に「お友達」を配置し、討議内容も始めに結論ありきで、全く正当性を欠く安倍の私的諮問機関にすぎない。
安倍は集団的自衛権容認の小松前駐仏大使を内閣法制局長官にすえ、続いてこの報告でもって、解釈替えに一気につき進もうとしている。
6割の世論が警戒
しかしこの舞台装置が丸見えの「解釈替え」には6割の世論が警戒心を表明している。そもそも、米軍艦船への攻撃に対応する自衛隊の防衛や、空中でミサイルを撃墜するなどの4類型そのものが非現実的である。世界最強の米軍をなぜ自衛隊が防衛するのか。空中でのミサイルを撃墜など、弾丸に弾丸を当てるより困難で、解釈替えの、ためにする論議でしかない。
またここにきて公明党の慎重姿勢も明らかになり、維新の会やみんなの党を責任野党として連立組み換えをも狙っているが、公明党の反発と、維新・みんなの瓦解状況で、これとて簡単ではない。
このため高村副総裁が砂川事件判決を使っての解釈替えを提起したが、これまた集団的自衛権の論議すらなかった砂川事件判決を解釈替えの論拠に使うなど、96条先行改憲を「裏口入学」と批判した保守派からも「権力による憲法泥棒」と批判される始末で、何の説得性も持たず、ますますこの論議の底の浅さを浮きだたせている。
今こそ、集団的自衛権解釈替えの閣議決定阻止! にむけて、5ー6月安倍政権の暴走を止める戦闘的大衆闘争を作り出そう。
4月6日、大阪市内でおこなわれた秘密保護法の廃止を求めるデモ |
原発再稼働と残業代ゼロ許すな
この集団的自衛権容認での憲法9条改悪攻撃と並び、安倍政権の超反動性を浮きだたせたのが4月11日のエネルギー基本計画閣議決定による、原発再稼働・輸出へのなし崩し的回帰と、4月22日から始まった産業競争力会議での、再び「残業代ゼロ」への労働法制の大改悪に他ならない。
「原発ゼロ」を撤回
4月11日の閣議決定では、原子力を「ベースロード電源とする」なし崩しの原発回帰を鮮明にした。だがしかし福島原発事故は収束の目途すら立っておらず、最も困難とされるメルトダウンした核燃料棒の取り出しはいつになるかわからず、廃炉は決めたがその道筋・時期は未定のままである。その間も放射能は消滅せず、住民の帰還のめどは立たず、健康被害はこれから本格化すると言われている。原発全体の使用済み燃料の処分方法・場所も決っていない。また再稼働が狙われている原発立地の避難計画は決まっていない。
にもかかわらず安倍政権は無責任にも原発再稼働へ舵を切った。その上、これまでまともに稼働したことがない超金食い虫=「もんじゅ」まで維持しようとしている。三菱・東芝・日立などグローバル企業で軍需産業でもある原発メーカーと一体で、原発輸出を強行しようとしている。再稼働では安全責任を規制委員会と地元自治体に丸投げし、政権は無関係を貫こうとし、川内原発(鹿児島県)や伊方原発(愛媛県)の再稼働を狙っている。まるで福島原発事故などなかったかのように無責任な姿をさらけ出して恥じないのが安倍政権だ。
だが、昨年9月15日以降、この国では1基の原発も稼働していない。それでも社会は回っている。計画停電はウソの脅しだった。関西でも今夏は原発なしですむ。もう原発はいらないことが現実となっているにもかかわらず、なおかつ原発維持・新設・輸出に進む安倍政権を許してはならない。
賃金・雇用破壊
他方、世界で最も「資本の自由な活動」を保障するとする安倍政権は、解雇特区、派遣法改悪、解雇の金銭解決、裁量労働制の拡大などの攻撃を進めてきたが、4月22日の産業競争力会議で再び残業代ゼロにむけ舵をきってきた。
安倍を座長とする産業競争力会議では、経済同友会代表幹事・長谷川や、次期日本経団連会長・榊原らは、「労働時間でなく、成果をベースに賃金を。働き方の選択で、残業代ゼロではない」などというが、「働き方の自由な選択」の名で派遣・フリーターがこの国に一気に広まり、どれだけ労働者の生涯賃金が下がり、格差・貧困が広まったか。また「本人同意前提」というものの、この雇用情勢にあって個人で拒否などできるわけがない。
一連の労働法制解体の最終仕上げで、アベノミクスの破綻は最終的には労働者の賃金・雇用の破壊、格差・貧困の拡大として襲いかかってくることがはっきりした。ここで立ち上がらなければ労働組合の存在意義はない。14メーデーと春闘で総反撃に立ち上がろう。
教育再生の名による国家統制
その上で安倍政権は「教育再生」に力を入れてきたが、この「教育再生」なるものが、戦後教育の全面破壊と、グローバル資本のための人材育成、さらには教育を通じての国家改造攻撃であることがはっきりしてきた。とりわけ橋下徹などが先行的におこなってきた、「日の丸・君が代」攻撃、労組つぶし、首長の直接教育支配に続き、安倍政権は、教育委員会制度改悪案を今国会に提出し、審議を開始した。「君が代」不起立処分の拡大や、高校日本史必修、道徳教育、「心のノート」配布、教科書内容と教育内容への直接介入などを通じて、戦後教育の全面解体を狙っている。
また他方では、グローバル競争に勝つ人材の育成のため、91年日経連プロジェクト報告での雇用の三形態を教育の場で推進してきている。学校選択制や小学区制の解体、大学間格差の果てしない拡大は、10%のエリート層の育成と、他方で9割を「期限の定めのある」有期雇用に叩き落としていく。4年間全身就職活動漬けにし、身も心も資本に忠実な人間を育成していく。また教育そのものを資本の儲けの対象とし、教育への資本の参入を小学校の英語教育などでも押し進め、塾・教育産業は隆盛を極める。
こうして教育の目的を、人格の陶冶から資本のグローバルな展開に忠実な人材育成に変え、戦後憲法・教育基本法体制を解体し国家改造を押し進めているのである。
新基地と対決するオール沖縄
この安倍政権にとってどうしても突破できないのが、1月名護市長選の敗北に典型の沖縄の闘いである。安倍政権は、今秋沖縄知事選をもにらみながら、反対派には刑事弾圧の脅しをかけ辺野古新基地建設へ工事を強行しようとしている。
しかしこの構造的沖縄差別に対しては、ますます反発が広がり、オール沖縄対安倍政権の構図が浮きあがってきている。本土の労働者・人民は、この沖縄の闘いに学び、表面的にはアベノミクスや浅薄なナショナリズムの鼓吹で、一見支持があるかのような安倍政権と根底的な対決を構えていかなくてはならない。沖縄人民は、安倍政権や日本の支配層の、基地・経済第一主義に対し、命こそ第一と頑張ってきた。この闘いと思想は、儲け第一・安全無視のグローバル資本の政治支配と真っ向から対決する思想である。当座の資本の儲け(アベノミクス)で政治を支配する安倍政権に対し、この支配を根底から変革する闘いを組織しよう。(つづく)
“オール沖縄”と連帯し
「意見広告」全国キャラバン
全国キャラバン集会で発言する安次富浩さん (3月24日徳島市内) |
安倍政権は戦後69年経てもいまだ沖縄に米軍基地を押しつけ、オスプレイ常駐・低空飛行訓練の強行、普天間基地の名護市辺野古への移設強行をめざして仲井真知事に辺野古埋め立て許可を強要し、屈服させた。しかし、1月19日の名護市長選挙では今までにない大差を持って「辺野古新基地ノー」の稲嶺進市長が再選された。沖縄人民の「オール沖縄」の闘いは、「沖縄『建白書』を実現し、沖縄の未来を拓く島ぐるみ会議」(略称・島ぐるみ会議)を発足させ、日米両政府との闘いの大きなうねりをつくりだそうとしている。そうした中、3月24日から26日まで、沖縄意見広告運動「辺野古埋め立て許さない! オスプレイNO!」全国キャラバン、四国ー和歌山ルート第2弾に参加した。
キャラバン隊は、24日早朝に大阪を出発し、一路四国へ。まずはじめに愛媛県庁申し入れ、さらに徳島集会参加、徳島県庁、高知県庁、和歌山県庁と低空飛行訓練ルートにある自治体に対して「辺野古の新基地建設に反対すること、オスプレイの飛行訓練に反対し、抗議の声を上げること」との要請書を提出した。(大阪 N)
3面
全国で最悪レベル
大阪市の生活保護行政
4月9日、生活保護問題対策全国会議など8団体の呼びかけで、「大阪市生活保護行政問題調査団実行委員会結成集会」が大阪弁護士会館でひらかれた。同実行委員会は同時に、200人規模の対大阪市交渉団を結成し、5月28日に対応がひどい複数の区と、翌29日には大阪市本庁との交渉をおこなうことを提起。交渉団への幅広い参加が呼びかけられた。以下、この調査団結成と大阪市との大規模な交渉の意義について述べておきたい。
急増する稼働年齢世帯
大阪市はリーマンショック後の2009年から2010年にかけて、「その他世帯」に分類される稼働年齢世帯が西成区の1400人余を筆頭に東淀川区575人、淀川区473人等と全区で計7000人余の急増となっている。それから4年経った今も、大阪市はリーマンショックの影響により職場は“圧倒”され、現在もその影響下にある。
大阪市の転換
リーマンショック前年の2007年10月、大阪市は「生活保護業務にかかる現場改善について」という報告書を出し、生活保護行政の改善計画を策定していた。しかし、大阪市はリーマンショック後、この計画を中断しただけでなく、むしろ逆行する「生活保護適正化」対策に転換した。
2011年1月、転換の最大の目玉として「保護申請時における就労にかかる助言指導のガイドライン」(以下、ガイドライン)を出した。以後、このガイドラインに基づいて全区で違法な就労指導や激しい締め付けが実行された。
例えば浪速区では、職場で倒れて失業し貯金も使い尽くし、公共料金はおろか家賃4カ月滞納で食べるものもほとんどなくなった申請者に対し、「就職したら生活保護を適用する」という違法な助言指導書を渡して求職活動を要求。この人は、1日1食という生活で飢えをしのぎがら、ハローワークに通い、数社の面接を受けるも採用されなかったことに対し「稼働能力を活用していない」として申請を却下されるという事例まで生まれている。相談を受けた弁護士が同行申請し、激しい攻防を経てようやく保護開始決定に至った。ちなみに当人の最後の所持金は11円となっていた。
全国で唯一減少
違法なガイドラインと激しい締めつけによって大阪市は全国の政令指定都市で唯一生活保護世帯数が減少した。
このことを大阪市は「第6回生活保護適正化連絡会議(資料)」(2013年10月16日)で「政令指定都市において前年に比べると被保護世帯数に増加傾向が見られる中、唯一大阪市において減少が見られた」と誇らしげに述べている。
同資料によれば、大阪市の高齢者世帯は全区で増加傾向にあり全体で2531世帯の増加。他方、高齢者世帯以外(主として稼働年齢層世帯)はほぼ全区で減少し、全体では3003世帯の減少。差し引き432世帯が減少したとしている。つまり、主として稼働年齢層の減少が高齢世帯の増加を吸収してなおかつわずかであるがトータルとして減少させるに至ったということである。
大阪市はこれを「この間の就労自立支援や不正受給対策等の適正化の取り組みの効果が表れてきた」と総括している。
大阪市が全国モデルに
厚労省は大阪市の取り組みを全国モデルにしようとしている。警察官OBの配置や非正規職の任期付ケースワーカー(以下、CW)の大量採用、違法な就労指導の強化等々は大阪市が全国にさきがけて実行している。
大阪市のCWの充足率は政令指定都市で最低の61%である。京都市が101・7%、神戸市が80・1%、堺市が76・4%に比べても格段に低く、経験数でも3年未満の職員が50%を超え、資格を持たないCWも急増している。
また、大阪市は「就労支援」を外部委託している。例えば2010年度の総合就職サポート事業の仕様書によれば、同事業に生活保護受給者1人を受け入れると委託事業者に20万円支給され、就職決定するとさらに20万円、6カ月定着するとさらに20万円の成功報酬が支給される。生活保護申請者の場合、生活保護にならなければ5万円、生活保護になっても就職すれば同じく5万円の成功報酬が支給されることになっている。これはアメリカで導入されている制度だといわれている。
全国的な闘いへ
結成集会で調査団団長の井上英夫さん(金沢大学名誉教授)は、大阪市との闘いを生活保護申請者を門前払いし餓死させた北九州市、札幌市白石区との闘いと並ぶものと位置付け、命があまりにも軽くされていることに怒りを持ち、大阪市のガイドラインをなんとしてもつぶそうと訴えた。
派遣法の大改悪により派遣労働が常態化しようとする中、最後のセーフティネットを破壊しても「ふてぶてしく」平然としている厚労省や大阪市に対して怒りをぶつけていかなくてはならない。(Y)
生活保護行政に関する前段集会と各区交渉
と き:5月28日(水) 午前9時半受付開始
ところ:大阪府保険医協会M&Dホール
主 催:大阪市生活保護行政問題全国調査団実行委員会
生活保護行政に関する前段集会と各区交渉
と き:5月28日(水) 午前9時半受付開始
ところ:大阪府保険医協会M&Dホール
主 催:大阪市生活保護行政問題全国調査団実行委員会
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原発避難は可能か
福井県高浜町でシンポ
4月19日、再稼働申請がされている高浜原発の直近にある福井県高浜町の青郷(せいきょう)公民館で「原発避難を考える集い」が〈福福ネット〉の主催でひらかれた(写真)。地元高浜をはじめ「原発銀座」の若狭一帯から100人を越える参加があった。福島県双葉町の前町長井戸川克隆さん、南相馬市から滋賀県大津市に避難している青田克彦・恵子さん夫妻がメインゲスト。第一部「3・11私たちはどのように避難したか」、第二部シンポジウム「住民が考える地元避難問題」の二部構成で、活発な論議がおこなわれた。
避難などできない
井戸川さんは「避難計画に異議あり/『避難はできない』/我々は騙された/今さら避難計画など意味が無い」と題して、「3・11フクシマ」に直面し、住民の生命を守るために孤軍奮闘してきた経験と、何の責任も取らないばかりか平然とうそをつき、住民をだます国や東電のやり方を怒りをもって弾劾。「避難ではない。全く新しいところへの移動・移住だ」「避難などできない。原発こそ避難すべきだ」と熱く語った。
青田さん夫妻は、福島第一原発から30q圏内の南相馬市に住んでいた。屋内待避の指示のなかで、スーパーやコンビニに物がなくなり、食料や日用品が枯渇するという困難な避難の経験を語った。恵子さんは有名な自作の詩「拝啓関西電力様」を相馬弁で朗読。深い感銘を与えた。
第二部「住民が考える地元避難問題」では、高浜町、舞鶴市、越前市の住民らがそれぞれ地元の避難計画について問題提起。井戸川さんと青田さん夫妻を交えてシンポジウムをおこなった。
そのなかで、福井県などが策定している「避難計画」が、全く現実性のないアリバイ的な机上のプランでしかないことが明らかになった。
若狭地方には敦賀原発、高速増殖炉もんじゅ、美浜原発、大飯原発、高浜原発が東西直線で50qしかないなかに林立している。避難経路に想定されているのは海沿いを走る国道27号線だけ。「若狭は福島より避難は困難」(井戸川さん)なのである。冬期の雪や凍結、自然災害など悪条件が重なった場合は全く身動きが取れない。
地元から声を上げる
原発銀座の若狭では「原発反対」を言うことさえはばかられる状況がながらく続いてきた。原発マネーにしばられ、家族や身内、隣近所が電力会社・原発で働いており、有形無形の重圧・圧力のまえに、多くの住民が沈黙を強いられてきた。それが、3・11フクシマを契機に変わろうとしている。
この4月にあった大飯町長選挙では、さしあたって原発との共存を言いながら将来的には原発に依存しないことを公約に掲げた新人候補が、前町長の後継と目される候補(関電の下請企業の経営者)を破って当選した。大飯町でも、「3・11」「オキュパイ大飯」を経て変化の兆しがある。
福島へボランティアに通っているWさんが、「原発地元の福井から福島を忘れない、福島を支援する」として、〈福福ネット〉を立ち上げた。2月に福島・相馬高校放送局制作のDVD「福島から、今伝えたいこと(仮)」上映会を開催した。この集会を準備するなかで、若狭の地で長く原発に反対してきた人々や、3・11以後あらたに原発に対して取り組みを始めた人々の「何とかしたい」という思いを一つの行動として結びつけてきた。
4・19の「原発避難を考える集い」も、そういう若狭の地元の人々が、集会準備、宣伝、運営、発言などを主体的に担った。若狭の地で、新しい動きが始まっている。
新聞報道によれば、関西電力は耐震基準の見直しを打ち出し、補強工事が必要なため、大飯は年度内は再稼働は無理、高浜原発の再稼働を優先するといわれている。若狭ではじまった地元住民の運動を支え、再稼働反対のたたかいを大きく作り出していく必要がある。(大阪 O)
4面
論考
「福島の復興」とは(4)
南相馬市長選と住民の選択
請戸 耕一
除染作業中の南相馬市立小高病院 (今年2月撮影) |
V 被災者切り捨てと開発依存(承前)
桜井氏は脱原発か?
一応、桜井氏についても、簡単に問題点を挙げておきたい。
桜井氏は、「原発ゼロ、新エネルギーの開発」を掲げている。その点で、横山、渡辺両候補との違いはわかりやすい。横山氏は「脱原発は簡単じゃない。性急な脱原発には態度保留」といい、渡辺氏は「脱原発は当然だが難しい。火力誘致が脱原発政策」という。
この点で桜井氏にいろいろ批判があるが、「脱原発だから投票した」という声は多々あった。
しかし、「被ばく」という問題になると、「脱原発」を掲げる桜井氏においても無頓着だ。実際、桜井市政は、20ミリシーベルト基準の避難解除を受け入れているし、子どもを含む住民の帰還を促している。「脱原発の推進で若年層の帰還を促す」という桜井氏の当選後の会見発言を聞いて、「『脱原発』と唱えると被ばくしないとでも思っているのだろうか」という揶揄する声も出ていた。
もう一つ見逃せないのは、IAEAと連携する「福島県環境創造センター」を推進していることだ。環境創造センターは、三春町と南相馬市に設置が計画されている県の機関だが、原子力推進機関であるIAEAと連携して「安全安心」を発信し、原子力の推進に貢献する施設なのだ。
こういう点で、桜井氏の掲げる「脱原発」に懐疑的な住民も少なくない。
住民を主体にしない
もっとも、「中央とのパイプ」にすがる横山、渡辺両氏の政治スタイルに比べると、「現場はこうなんだ」と訴えて「中央とたたかう」という桜井氏はむしろ真っ当だとも言える。
また、現職故にいやでも現場に向き合っているという点で、その是非はともかく、具体的な対応を打ち出しているのは事実だ。また選挙運動中、仮設住宅を精力的に回っていたのは桜井氏だった。
一方、「人の話を聞かない」「勘違いをしている」「市長になってから変わった」という声をよく耳にする。
こういう例がある。再生可能エネルギーを推進することに住民も異論はない。しかし、その事業計画を市当局が住民に何の相談もなく作ってしまって、建設段階になって、予定地の住民の説得に当たるというやり方をしている。つまり住民を主体にしていない。
「たたかう」という場合もやはり同じ問題がある。市長がその権限と立場で国と交渉するのは当然としても、やはり要求の主体は住民のはずだ。しかし、桜井市長が住民とともに悩み、考える姿は見えない。
見えない対抗ビジョン
住民がいろいろな取り組みをやり、市長や行政に提案して力になろうとしてきたが、「人の話を聞かない」と離れていく住民も少なくない。
住民がいま求めているものの一つはビジョンだ。渡辺氏にビジョンはあるが、その中身が露骨な開発主義だった。しかし、桜井氏の話を聞いても、国の加速化方針や渡辺氏の開発主義と一線を画するビジョンが見えて来ない。ここに住民は戸惑いといら立ちを感じている。
W 別れた住民の選択
こうして見ると、改めて、今回の南相馬市長選が重要な攻防であったことがわかる。国の側、そして、横山、渡辺両氏らには、「福島の原子力災害問題はもう終わりにして、開発政策に舵を切りたい」という意志がはっきりとあって、それを進める上で邪魔になっていた桜井市長を落とそうとして動いた。すくなくとも、客観的にはそういう構図だった。
では、そういう中で、住民はどういう選択をしたのだろうか。
単純な結果では、冒頭(本紙148号)のとおり、横山氏5千票、渡辺氏1万1千票に対して、桜井氏が1万7千票と大差で勝った形になっている。しかし、これをもって「市政継続を市民が選択」とするのは実態とかい離している。
「復興の加速」「中央とのパイプ」と主張した二氏の票を合わせると1万6千票。もし自民党系の両候補が一本化していたら逆の結果になっていた公算が大きい。この状況に注目すべきだろう。
筆者が取材した範囲で、住民の声を列挙してみる。
横山、渡辺氏に投票
「『たたかう』ばかりで迷惑してんだ。何にも前に進みやしない」
「民主党でもう懲りたんだ。桜井さんもいっしょ。官僚が言うこと聞かないし、混乱するだけ」
「お金が回ってこなければここは生きていけない。中央とのパイプを修復してほしい。」
「30年40年先の話はしていられない。いま被災地がまだ注目されている間に、取れるものを取らないと」
「桜井さんには政策能力がない。一成さん(渡辺氏)の方が上。彼に期待するよ」
「若者や子どもがいなくなるよ。町がなくなるよ。市政を変えないと」
「(選挙結果に対して)仮設なんかで、桜井さんにすがろうという層が結構いるんだな。いや驚いたよ」
桜井氏に投票
「一成さんでは昔に戻るだけしょう。ハコモノに戻るの?火力なんて、まるでゾンビだよ」
「桜井さんに問題は多々あるけど、一成さんに戻すわけにはいかないよ」
「一成さん、横山さんは批判ばっかりで。自分たちは何をしてたのよ」
「桜井、横山、渡辺・・・。なんか全部、古いよね。他にいないからしかたないけど」
「脱原発を言っているのは誰?桜井さんしかいないじゃない」
「命や健康を大切にする人に入れたいね」
「仮設に回ってきてくれた。うれしかったよ」
「(選挙結果に対して)3・11以降は一成さんの考えは通用しないね」 公共事業や企業誘致など開発依存の復興、そのための「中央とのパイプ」。これをどう見るかで選択が分かれている。
横山、渡辺両氏に投じた層は、それを肯定し求めている。積極的か必要悪かのニュアンスはあるが、それ以外に選択はないだろうと見ている。
桜井氏に投じた層は、そういう方向への回帰に批判的だ。また「脱原発」や「命と健康」という問題で選択している。ただ、桜井氏の政策に展望を見出しているとは言えない面がある。
開発政策への期待
横山、渡辺両氏を支持した層についてもう少し見てみよう。
横山、渡辺の両氏を支持した住民の多くは、桜井氏への批判票。そこで言われているのはやはり「中央とのパイプ」だ。それが、金による支配だということを認めた上で、さしあたりそうする以外にどういう選択があるのかという追い詰められた地方の現実、被災地の現実がある。
なお、昨年7月参院選時の住民の声だが、これを見ると被災地の複雑な心境の一端がわかる。
「国に棄民されるんじゃないかという不安。だから自民党に入れる。それは、『棄てないで』というアピールでもあるんだ」「アベノミクスがいいのかどうかわかないよ。再稼働も賛成しないよ。でも中央との関係はしっかりしていないと」
被災地の中での分断
さらに「中央とのパイプの回復」という動きと、被災地の住民の中での分断とは、実は表裏一体でもあった。
多くの住民が避難や仮設住宅での生活をしている南相馬市でも、外見上は、ほとんど通常の生活や経済活動がおこなわれている。そして、仮設住宅の現実や被ばくへの不安という問題を、同じ町の中にいても、「忘れる」「見ない」「蓋をする」という空気がある。例えば、上で挙げたように、「仮設住宅なんかで、桜井さんにすがろうという層が結構いるんだな。いや驚いたよ」という言葉。ここには、同じ被災者なのに切り捨てるような冷たい響きがある。あるいは「仮設の人は・・・」「賠償をもらっている人は・・・」という話は少なからず耳にする。また、「放射能とかそういう話が、復興の妨げになっているんだ」という言葉には脅しを含んでいる。
こういう中で、住民は、「言いたいことは山ほど。でも言ってもつらいだけだから言わない」「健康のことは心配だけど、そういうことを言うと人間関係が壊れるからね」という具合に、沈黙を強いられていく。政府の「福島復興加速化方針」という大きな力が被災地に働いている。その下で、痛みに蓋をして開発政策に展望を見出そうとする住民がいる。しかしこれしか選択はないのか。
X「除染して復興」の見直しを
ここからは、国の加速化方針や中央依存・開発依存の復興政策に対して、それとは違うビジョンの可能性を検討してみたい。
住民の除染要求に込められた思いは
国の「除染して帰還」「除染して復興」という方針の遂行が大前提として物事がすべて進んでいるが、はたしてそれでいいのだろうか。ここを問い直すべきだ。
まず、「除染してほしい」という声の背後には、仮設住宅での生活はもう限界だという切実な現実がある。応急仮設住宅というとおり、俄かづくりで2年も3年も住むところではない。だからとにかく仮設住宅を出て自分の家に戻りたい。それが、「除染してほしい」という訴えになっている。つまり安定した住宅が必要なのであって、除染がすべてではないのだ。
さらに、「人の家や庭や地域を放射能まみれにしておいて、何で加害者が掃除に来ないのか。震災の前の状態に戻すのが当然の義務ではないか」。これは、取り返しのつかない破壊と喪失がもたらされている現実の告発であり、その原因者に対する厳しい突きつけだ。単に除染を求めているのではない。
「元に戻せ」―しかしもはや元に戻せない現実。だからこそ、この突きつけに対して、国と東京電力は真剣に向き合い、責任を明確にする必要があるのだ。
ところが、国も東電もこの突きつけに向き合うことはなかった。「除染すれば元に戻る」という嘘をついて責任を逃れようとした。つまり、「除染して帰還」「除染して復興」という方針には、加害責任を曖昧にしていく意図が孕まれていた。
しかし除染の効果が限定的であることははっきりしてきている。今、「除染して復興」という方針そのものを見直すべきだ。そして、「元に戻せ」という突きつけに向き合うところからやり直すべきだ。(つづく)
5面
寄稿
秘密保護法と改憲攻撃
第2回 秘密保護法の性格
永嶋 靖久
秘密法制の歴史
かつて日本には軍機3法と呼ばれる一体の法律があった。まずその中の軍機保護法は日中戦争が始まり日独伊三国防共協定が調印された1937年に大改悪され、国家総動員法の制定に伴い国防資源秘密保護法が1939年に制定され、国防保安法が太平洋戦争開戦直前1941年に公布施行された。いずれも1945年敗戦により廃止されたが、1954年、警察法・防衛庁設置法・自衛隊法制定・国防会議設置などと同時に、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法が制定された。
1978年日米防衛協力の指針が了承された翌年から、国家秘密法(スパイ防止法)の制定運動が開始され、1985年国家秘密法が議員立法で上程された(当時は内閣として提出できず、最終的には成立しなかった)。1986年には国防会議が廃止され、安全保障会議が設置された(中曽根首相は1985年の施政方針演説で「戦後政治の総決算」を打ち出したが、以後、日の丸・君が代掲揚の文部省通達、8・15の首相・閣僚の靖国公式参拝、国鉄分割・民営化、労働者派遣法の成立へと続いていく)。
歴史は、軍事(情報)をめぐる情勢の変化に伴う秘密の質的量的な飛躍的増大が新たな秘密法制を呼び起こすことを教えている。2013年、安全保障会議は国家安全保障会議(日本版NSC)へと改組され、それと同時に「国家安全保障戦略について」が積極的平和主義を打ち出して、1957年決定の「国防の基本方針について」に代わって決定された。
恐怖の3点セット
そして、新たな秘密法が制定された。対テロ戦争の時代、すなわち戦争と治安管理が融合し、戦時と平時の区別が消滅し、軍隊と警察が重なり合う時代に、防衛・外交・特定有害活動の防止(戦争に反対する者はいつの時代も「スパイ」と呼ばれる。そして、今や集団安保のもとでの戦争)・テロリズムの防止(一切の反政府運動が対象となり得る)に関する事項を秘匿の対象として、秘密保護法が成立した。「国家の安全」は「戦争」の言い換えだ。経産省の「改革派官僚」だった古賀茂明は、週刊紙のコラムで、集団的自衛権の行使容認・日本版NSC法・秘密保護法を、「殺し、殺される国」に日本を変える恐怖の3点セットと呼んだ。秘密保護法のこのような性格が、法律制定後も止むことのない反対運動の持続と広がりを呼んでいる。
改憲なき改憲
秘密保護法は、日本版NSC法、集団的自衛権の行使容認と一体のものだが、安倍政権が集団的自衛権の行使容認を解釈改憲によっておこなおうとしていることにとりわけ注目する必要がある。憲法の制約を突破して「戦争をする国」へと日本をいっそう推し進めるために、安倍政権は当初、自衛隊から国防軍へと9条改憲し、公益・公共の秩序を強調して「基本的人権」を根底から転換し、緊急事態制などによって統治機構を改造する全面改憲を狙った。それが困難とみるや、まずは96条改憲を持ち出し、今は解釈改憲によって突破しようとしている。
しかし、憲法を解釈するのが総理大臣であろうと誰であろうと、どこをどう解釈しても、集団的自衛権の行使(他国のための派兵)は、憲法9条が明文で規定する「戦争放棄」「戦力不保持」の限界を超えている。「必要最小限の集団的自衛権の行使」と言ったところで、そもそも憲法に違反しているのだから、その「最小限」は「必要」さえあれば歯止めなしに拡大していく。
「ナチスの手口」
明文改憲をまたずに改憲が進行しているのは9条だけではない。憲法が保障する人権カタログでは、国家や公共の秩序が「基本的人権」に優越し、秘密保護法の制定過程と法律の内容は、政府と議会の関係がどうなっているのかを誰の目にも明らかにした。
ヒトラー内閣に先行したブリューニング内閣・パーペン内閣の下での「静かな憲法の変遷」と「政令政治」は、内閣に立法権を与える全権委任法へ至った。政府への全権委任は「法なき支配」の別名に過ぎない。歴史は回帰しないし、今、我々の目の前にあるのは、30年代とはまったく異なる現実的基盤である。けれど、「ナチスの手口」がどのようなものであったか、しっかりと学ぶ必要がある。
明文改憲をおこなわずに(明文改憲ができずに)解釈改憲を積み重ねて、憲法明文と憲法解釈(統治の実態)があまりにかけ離れたときには、憲法に基づく統治という正当性さえ失われる。そのとき、秘密保護法は、これに続いて準備されている共謀罪や改悪盗聴法など様々な治安法と一体となって、今以上に大きな意味を持つことになるだろう。(おわり)
秘密法廃止へ院内集会
地方議会で続々と意見書
国会前で抗議する人々(4月7日) |
4月7日、衆議院第二議員会館で「『秘密保護法』廃止へ! 実行委員会」主催の院内集会がおこなわれ、220人が参加した。
集会では、冒頭、社民党の吉田党首と共産党の仁比議員があいさつ。
社民党の福島みずほ議員は「(秘密保護法成立後に関係部局から)たくさんの資料をもらった。(成立まで)二年間、役所とやりとりをしてきたのに、なんで成立前に出さなかったのか」「政府は国連に『内部告発者を保護する』と報告しているが、ウソだ」「メディアに対する圧力がかかる。防衛省から琉球新報社に圧力がかかった。行政の報道への介入を許してはならない」と訴えた。
実行委員会からは、国会議員らに特定秘密保護法廃止を求める署名5万2768筆が手渡されたことが報告された。
名古屋で秘密保護法反対集会を取り組んだ人は「『秘密法に反対する全国ネットワーク』を立ち上げ、55団体が参加している」「各自治体の議会で、秘密保護法の廃止を求める意見書が108も挙がっている。(慎重な運用を求めるなど)何らかの意見を述べているものを含めれば150ー170も挙がっている。(全国の地方自治体数1797の)1割が、意見書を採択していることになるが、東京では調布市だけだ」「1966年のビートルズ来日の際の警備記録があることがわかって、情報開示請求した人がいたが、全面非開示決定された。個人が特定されることと、警備体制がわかれば犯罪につながるという理由」と報告した。
新聞労連の大江史浩書記長は「函館市が大間原発の建設差止め訴訟を起こしたが、秘密保護法が立ちはだかる恐れがある」と訴えた。
これ以上処分者を出すな
全国ネット(準)が都内で集会
許すな!『日の丸・君が代』強制 止めよう! 安倍政権の改憲・教育破壊 4・20全国集会が都内で開かれ、全国から159人が参加した(写真)。主催は、集会実行委員会と〈許すな!「日の丸・君が代」強制 止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク準備会(以下、全国ネット)〉。
この流れを変えよう
高橋哲哉さん(東京大学大学院教授)が「安倍政権は憲法と教育をどう変えようとしているのか」と題して講演した。
「2003年から2006年にかけて、特に第一次安倍内閣の時に、教育基本法改悪反対の闘いをみなさんとともに闘った。しかし、改悪を許す結果となり、その後現場では圧力がかかるようになった。今、最低最悪の安倍政権の下、厳しい闘いを強いられている。しかし、全国には闘っている仲間がいる。ネットワークで連帯し、安倍政権を退陣に追い込もう」。
「安倍政権の改憲の意図は改正草案で示されている。それは『戦争ができる国』にするためだ。『集団的自衛権容認』についての解釈改憲では、『限定容認』と言っているが、これは重要な変更になる。なぜならこれを突破口にして、いくらでも解釈改憲が可能となるからだ」。
「安倍政権は国の基本を変えようとしている。現憲法では、『人類普遍の原理』が基本になっているが、改憲案では、『天皇を戴く国家』が基本となっている。これは『人類普遍の原理』の否定である。『国民主権』は(人類ではなく)「国民」という限定的なものであるが、さらにその『国民』以前に『国家』、しかも『天皇を戴く国家』ということになる。天皇は『元首』化され、『国旗・国歌』の尊重義務を教職員だけではなく『国民』全てに要求することになる。『君が代』が国歌であることは憲法違反だ」。
「自民党は『天賦人権説は採用しない』と言っている。これは帝国憲法への先祖返りだ。人権は『天皇を戴く国家』の枠内に制約される。教育再生もすべてそこに行き着く」。
「『教科書改革実行プラン』では政府見解を書き込むように述べている。これでは『国定教科書』になる。また、『近隣諸国条項』の見直しも述べられている。戦前戦中の他国に対する多大な損害・犠牲を与えたことを否定しようとしている」。
「『日の丸・君が代』強制は、自分の頭で考えるやり方を破壊するもので、日本の教育、国を破壊するものだ。しかしこれを否定しようとしている。なんとしても、この流れを止め、変えることが必要だ」。
東京、大阪から
被処分者の会が東京のたたかいを報告。2003年の「10・23通達」以降、今春の卒業式までで延べ461人が処分されたが、たたかいは連綿と続いている。一昨年と昨年には、最高裁において32件、のべ27名の停職・減給処分を取り消させた。しかし、根津さんへの停職処分は不当にも容認している。対する多大な損害・犠牲を与えたことを否定しようとしている」。
大阪からは、「口元チェック」通知を撤回させたこと、「君が代」不起立累積処分(戒告→減給)を一部でストップさせ、「戒告」止まりにしたこと、戒告処分の一部を取り消させた(教委の不手際あり)ことなどが報告された。
6面
争点
政府、マスコミのデマ宣伝を斬る
消費税は社会保障を充実させない
4月1日から消費税が8%に引上げとなった。政府は、マスコミを動員して、「社会保障のために消費税を上げる」と宣伝してきた。しかし、実態はどうであろうか。
この4月から年金で受け取ることができるお金は、0・7%引き下げられた。児童扶養手当、特別児童扶養手当及び特別障害者手当など国の手当ては0・3%の引き下げである。
生活保護については、昨年8月から生活扶助費の引き下げが始まっており、来年4月までに平均で6・5%、最大10%引き下げられる。この4月の引き下げは、消費税値上げ分と相殺されたものの、夫婦と子供の世帯では0・6%の引き下げとなった。また、生活保護費を参考として自治体が困窮家庭に支給している就学援助についても、支給基準が引き下げられたことによって、就学援助を受け取ることができない子どもたちが出てきているのである。
国民年金保険料は、昨年度の1万5040円にさらに210円がプラスされた。介護保険の第2号被保険者の保険料は、厚労省の見込みによれば平均で4996円から5273円へと引き上げられる。
またこの4月から70歳になる高齢者の医療機関での窓口負担は、74歳まで2割負担とされた。そして、現在国会で審議中の医療・介護保険見直し一括法案が成立すれば、来年8月から年間所得280万円以上の人については、介護保険の利用料が2割負担となる。
ここに、消費税増税、電気料金など公共料金の値上げが襲いかかるのである。
景気対策のための増税
では、消費税増税分はどのように使われるのだろうか。
2014年度の消費税引き上げによる増収は5兆円と政府により試算されている。この内約6割(2・95兆円)が年金の国庫負担部分に当てられる。つまり、一般財源を消費税に置き換えたのだ。また、1・3兆円は、国債でまかなわれていた部分に当てられる。0・2兆円は、消費税を上げたために、社会保障予算を増やさなければならない部分に当てられる。結局、社会保障の充実に充てられるのは、0・5兆円だけなのである。「充実分」とされるものの多くは、子育て支援関係に使われることになり、介護保険制度の充実については43億円しか使われないのだ。
他方、今年度予算では、景気対策として約5兆円の予算が組まれている。これでは、消費税増税分で景気対策をおこなっていると言ってもおかしくない。「社会保障のための増税」というのはまったくのペテンだ。そのくせ、財政の危機を宣伝する時には、社会保障のせいにするのが、この国の支配者たちのやり方なのだ。
病院からの追い出し
さらに、政府の「社会保障制度改革推進本部」の下で、社会保障の解体が進められようとしている。その方向とは、一言で言えば、「地域包括ケアシステム」の構築と「尊厳死・安楽死」の推進と言えるだろう。
「地域包括ケアシステム」とは、医療から介護まで地域で受けられるとの宣伝の下で進められているが、実際に起こることは、病院からの患者の早期の追い出しであり、不十分な介護体制の下での本人や家族への負担の増大でしかない。このシステムの担い手も、金融機関を中心とするビジネスモデルで進めていく方向が出されている。
社会保障制度関連法の中で「尊厳死」の推進が盛り込まれてきたが、具体的な、「尊厳死」の法制化については議員立法でおこなおうとしている。今国会にも上程が目指されている。「生きるに値しない生命」という概念を法制化し、社会保障予算を使わないために死なせることを推進しているのだ。
私たち民衆の、生存のための闘いを強力に展開しよう。(関東「障害者」解放委員会 K)
もうやめようTPP
全国からさまざまな職業の人々が参加し、TPP反対の声をあげた。(3月30日東京・日比谷野音) |
3月30日、日比谷野外音楽堂でおこなわれた「もうやめよう! TPP交渉 3・30大行動」に参加した。雨の中、全国からさまざまな職業・階層・立場の人々1200人が集まった。
冒頭、全国農業協同組合中央会参事・馬場利彦さんが「例外なき関税撤廃はわが国の農業に壊滅的打撃を与える。TPPに関する国会決議、自民党決議が守られるよう全力をあげる」と発言。
ニュージーランド反TPP全国行動、オーストラリア製造業労組、米国ライトグリエイドのアピールが読み上げられた。全国農業青年組織委員会の代表は「一人でも多くの人にTPPの危険性を訴える」と決意表明。
離島の暮らしを破壊
リレートークでは、沖縄・南城市のサトウキビ農家の玉城さんが「サトウキビ農家は減少しており、高齢化もあって、栽培面積・収量とも減少している。台風やそれに伴う塩害で2期連続して厳しい状況。TPPによって大打撃を受ける。サトウキビに依存している離島の住民は、暮らしができなくなる。サトウキビ関連(農家や製糖工場等含めて)1420億円の被害が見込まれる」と訴えた。
岩手県生協連の吉田敏恵専務理事は「TPPは復興破壊。内閣府の役人は『TPPは国民でなく企業を動きやすくするため』と言い放った。TPP締結で主食用の米の生産は減るだろうと県の農政部も予測している。何が『攻めの農業』か」と怒りの発言。
「強い農業」のウソ
滋賀県日野町長・藤澤直広氏は「地元のブランド牛・ブランド米を守りたい」と。〈ストップ!! TPP山形県民アクション〉の代表は、「県から『新しい農業が始まります』との資料が来た。日本の農地の7割は中山間地で、集約なんてできない。強い農業≠ニは効率だけのもので、必ず地域破壊をもたらす。」と訴えた。
岩月浩二弁護士は「TPPは1%の利益のために食の安全を破壊するものだ。日本が交渉から撤退すればTPPは潰れる」と発言。
規制撤廃の危険性
東京土建の代表は「震災復興で地元の建設業者が頑張っている。TPPで地域経済が破壊されれば業者がもたない。」と危険性を訴えた。
埼玉県の学校給食の栄養士は「食育教育の一環で地元食材を使っている。生産者がいてこその食育だが、(TPPで地域の農業が破壊されれば)輸入食材を使わなければいけなくなる」。
宮城県塩竃市の医師は「TPPは医薬品・保険の問題に直結する。民医連や医師会はTPPに反対している。TPPは第二の津波。安い薬を作れなくなる。高い薬が押し付けられ、混合診療も押し付けられる」と警鐘を鳴らした。
(東京・福祉労働者 A)
神戸で合同花見会
阪神大震災から19回目
4月13日、神戸市内で被災地雇用と生活要求者組合、しごと開発就労者組合、関西合同労組兵庫支部による団結花見会がおこなわれた。阪神大震災から19回目。30人が参加した。(M)