未来・第148号


            未来第148号目次(2014年3月20日発行)

 1面  住民の安全を無視した
     原発再稼働はやめろ      

     上関原発建設阻止へ
     緊迫する中 7千人が参加
     山口

     「喜んで非国民になる」
     小出裕章さんがアピール
     大阪

     びわこ集会に1千人
     脱原発首長もメッセージ

     再稼働阻止へ決意
     京都・円山野音に2千5百人

 2面  寄稿
     「戒厳令」準備が目的
     自衛隊の防災訓練への参加の意味
     小多 基実夫

 3面  子どもたちに笑顔を
     朝鮮高級学校の無償化へ

     「ほんまやばいでTPP」
     脱原発、労組、三里塚をつなぐ

     「教育再生」が目指すもの
     戦後憲法の否定と国家統制

 4面  論考
     「福島の復興」とは(1)
     南相馬市長選と住民の選択
     請戸 耕一

 5面  直撃インタビュー(第22弾)
     秘密保護法廃止と東アジア平和交流を呼びかける
     前衆院議員 服部良一さん

 6面  全国キャラバンが出発
     新基地とオスプレイに反対

     橋下は96億円を返せ
     WTC住民訴訟 2周年

     投稿
     辺野古新基地反対で10年
     500回目を迎えた大阪行動

       

住民の安全を無視した
原発再稼働はやめろ

8日から9日にかけて原発の再稼働に反対し、すべての原発の廃炉をもとめる集会が全国各地で開催された。東京都内では9日、「0309原発ゼロ大統一行動」が日比谷野外音楽堂と国会議事堂周辺でおこなわれた。呼びかけは、首都圏反原発連合、さようなら原発1000万人アクション、原発をなくす全国連絡会の3団体。のべ3万2千人が参加した。
政府は、都知事選終了後の2月25日、中長期のエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」案を決定した。その内容は、2012年末の衆院選で自民・公明両党が掲げた「脱原発依存」の公約に反して、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、原発を維持・推進するというものである。
13日、原子力規制委員会は九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の新規制基準への適合検査を優先的に進めることを決めた。安倍政権は今夏にも再稼働に踏み切ろうとしているが、規制委じしんも認めているように「規制基準」をクリアしたとしても原発の安全性を保障するものではない。また事故時の避難計画の責任は自治体に押しつけられているが、実際に避難計画を作っている自治体は4割強でしかない。福島第一原発事故のような過酷事故が発生した場合、住民が被ばくせずに避難することはほとんど不可能という指摘もある。政府は住民の安全を無視して再稼働を強行しようとしているのだ。
そもそも、福島第一原発事故の原因究明や検証が終わっていない。事故収束のメドも立っていない中での原発の再稼働を断じて許してはならない。事故現場では核燃料を冷却するための注水作業が続けられており、さらに、原子炉建屋に流れ込む地下水を原因とする汚染水だけでも毎日400トンづつ増えている。高濃度汚染水の漏出も続いている。深刻なのは作業員不足である。この状況で原発再稼働に作業員を動員すれば、収束作業じたいが破綻しかねない。再稼働反対へ行動を起こそう。

上関原発建設阻止へ
緊迫する中 7千人が参加
山口

福島からの避難者が発言(9日)

東日本大震災と福島第一原発事故から3年を前にした8日、「上関原発を建てさせない山口県民大集会」が山口市の維新公園ちょるる広場で開かれた。「福島を忘れない―さようなら上関原発」「新しい時代に。1万人大集会!」という呼びかけに、7千人が参加した。山口県内でひらかれた反原発集会としては過去最大。

原発めぐり緊迫

この日の山口県民大集会は緊迫した状況下で開かれた。中国電力上関原発建設計画をめぐり、山口県知事は中国電力から出された原発予定地の海面埋立免許の延長申請を認めるか否かの判断を先送りしている。最後の新規立地といわれる上関原発の計画は、白紙撤回されていない。上関原発計画にともなう漁業補償金配分案を採決する祝島での組合員集会は3月4日、祝島発着場を埋め尽くす抗議行動で4回目の中止となった。
昨年11月から県内各地域で実行委員会結成と宣伝が積み重ねられた。大型バスがチャーターされ、春闘の真っ只中、労働組合からも青年が多く参加。また20代から80代と参加者の層は厚い。この万単位の行動は山口県での反原発闘争の伝統、つまり1970年代初めからの豊北町、萩市田万川への原発建設計画をすべて中止に追い込んだ戦闘性と継承性を顕わにした。「新しい時代」の到来を感じた集会だった。
基調報告を、阪神大震災を体験した牧師の草地大作さんがおこない、「賛同者は2021人、賛同団体は56。今日は青空のように気持ちが良い」と語った。
メインスピーチは鎌田慧さん。「山口県は豊北の勝利につづいて上関の勝利も近づいている。なぜいろんな地域で原発反対の運動が起こったのか。これは広島・長崎の歴史があったから。そして第五福竜丸の歴史を学んでいたからだ。再稼働も実力で阻止しよう。自分のところの原発を止める。そういう決意が福島の人たちとの連帯だと思う」と力を込めた。

原発事故は終わらない

福島第一原発事故で山口へ避難している「山口県避難移住者の会」5人が登壇。代表の浅野容子さんが「原発事故は何一つ終わっていない。放射能による健康被害も明らかになっている。私たちは、原発計画を30年以上くいとめてきた山口県に避難してきた。全国避難移住者のつながりの一つとなる」と話した。
集会の最後は、祝島からの参加者がのぼり旗を林立させ「エイエイオー」と団結ガンバロー。そして「NON」の紙を高く掲げたパフォーマンス。参加者全員で集会宣言を採択した。 (山口・H)

「喜んで非国民になる」
小出裕章さんがアピール
大阪

再稼働反対 すべての原発をなくそう(9日)

9日、さよなら原発3・9関西行動が大阪市内(扇町公園)でひらかれ7000人が集まった。主催は同実行委員会。12時45分から前段集会が始まり、19団体から1分アピールなどがおこなわれた。午後1時45分から本集会。福島原発告訴団事務局・地脇美和さん、原子力発電に反対する福井県民会議事務局長・水上賢一さん、京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんが発言した。
小出さんは「3年前の福島原子力発電所の事故によって、びわ湖が1・5個も入ってしまう地域が、無人になってしまった。その周辺もおよそ1万4千平方キロメートルという広大な地域が、放射線管理区域にしなければいけないほどの汚染を受けている」と福島の現状を語った。そして「福島の人たちを苦難のどん底に落としながら、なにがオリンピックか。オリンピックに反対すると非国民であるかのような論調があるがそれならば、よろこんで非国民になる」ときっぱり言い切った。
続いて子どもたちが自分で作った横断幕を持って制服向上委員会とともに登壇。「手のひらを太陽に」を歌って拍手喝采をあびた。最後に集会決議文を参加者全員の大きな拍手で確認し、3コースにわかれてパレードした。
午前中には、特別企画(北区民センター)、若者の広場(扇町公園)もおこなわれた。

びわこ集会に1千人
脱原発首長もメッセージ

9日、「原発のない社会へ2014びわこ集会」が滋賀県大津市でおこなわれた。昨年に続いて、滋賀での大きな共同行動として成功した。 膳所公園で、こだわりマーケットとライブ&リレートーク。生涯学習センターではプレ企画がおこなわれた。その後、膳所公園野外ステージでおこなわれたメイン集会には1000人が参加。集会後、大津パルコ前までデモ行進した(写真)。
メイン集会では、元金沢地裁裁判官で志賀原発の運転差し止めを認める判決を出した彦根市在住の井戸謙一さんが基調報告。井戸さんは現在、弁護士として若狭原発再稼働禁止仮処分事件などの弁護団長をつとめている。
労働組合から武庫川ユニオン滋賀支部書記長のローシア・ジョージ・マルシオさんのメッセージが読み上げられた。さらに脱原発首長会議に参加している米原市長と日野町長のメッセージが紹介された。
参加者は再稼働阻止の決意を固め、滋賀県内では久々となる長蛇のデモをおこなった。

再稼働阻止へ決意
京都・円山野音に2千5百人

8日、「バイバイ原発3・8きょうと」が円山公園一帯でひらかれ2500人が参加した。野外音楽堂のメイン集会(写真)では、金子勝さんが講演。制服向上委員会のライブ、福島から地脇美和さんがスピーチ、福島市からの避難者(うのさえこさん)がスピーチした。参加者は再稼働を阻止する決意をかため、市役所前までデモ行進をおこなった。円山公園しだれ桜周辺では、ひろば企画もおこなわれた。

2面

寄稿
「戒厳令」準備が目的
自衛隊の防災訓練への参加の意味
小多 基実夫

今、「3・11東日本大震災、福島原発事故から3年」、95年の「1・17阪神淡路大震災から19年」と新聞を賑わしているが、この20年間で自衛隊をめぐる世論は大きく変化した。
福島原発などでの被曝労働に心を痛める活動家の中には、「被曝作業にこそ自衛官を動員すべき」と主張する人たちも現れ、さらに日本共産党においては、04年不破綱領で防衛戦争までも含めた「自衛隊の活用論」が提唱されている。
自衛隊の活用論や「自衛隊ありがとう」の合唱は、自衛官の側からすればPKO派兵に対して右翼が「国益のために頑張れ」「生命惜しまず活躍を」という激励と一体になって迫って来るものであり、70年前の「兵隊さんありがとう」の国民運動、「国のために犠牲になった英霊」を想起させる。
防災訓練への自衛隊の参加については、これに反対したり拒否したりする自治体が激減し、逆に行政の方から自衛隊に擦り寄り、参加を要請するケースが急増している。防大28期卒の元陸上自衛官1尉で宮城県知事になった村井知事(05年から、現3期目)や、99年以来15年にわたって東京都の防災・治安担当の参与を続ける防大2期卒元陸自北部方面総監の志方俊之の存在はその典型的な例である。
自治体としては、自衛隊の活用による防災関連予算の節約、災害時の人件費の削減、発災時の優先的な救助など様々な思惑もあろうが、これらは勝手な期待に過ぎない。いずれにせよ、そこには兵士を「人間としてではなく、人的資源=兵力」と考える高級将校や政府の兵士観(人間観)と共通のものを感じる。「護るべきもの」と「犠牲にしてもいいもの」に二分して、「犠牲にする命」として自衛官を措定する思想である。
災害派遣、PKOはおろか安倍政権のもとで「集団的自衛権」「憲法改悪」と危機が迫る中、命の危機を強制される最前線に立たされている兵士や家族の恐怖に想いを寄せた運動が必要である。これは誇張ではない。
細野豪志(民主党・菅政権で原発担当大臣と首相補佐官、野田政権で環境大臣を歴任)は、「緊急事態が宣言されていた福島原発事故の情況下では、首相は全権を持っており、民間人にも『命をかけてやれ』と指示できた」(要約)と3・11の朝日新聞で言い切っている。自衛官たちがどのような扱いを受けていたのかは自ずと明らかになる。
安易な「活用論」や「ありがとう運動」は、政府が目指す「軍隊としての自衛隊」の社会的存立基盤の強化にはなるが、それに反比例して自衛官の命と人権は一層軽視されることになるのである。

2009年9月1日、宮城県登米市でおこなわれた防災訓練(登米市のホームページより)

自衛隊と防災訓練

以下、防災訓練を中心に具体的に見ていく。
9・1を前後して全国でおこなわれている大小各種の「防災訓練」であるが、自衛隊は一貫してこれに介入しようとしてきた歴史がある。当初はとにかく「市民権」を得る(自衛隊の存在を容認させる)ということが最大の目的であった。しかし、95年の阪神淡路大震災と11年の東日本大震災を経る中で情況は一変し、上で触れたように「防災のプロ」という理由で自治体の側からの自衛隊への訓練参加要請が急増している状況だ。これでいいのだろうか。
自治体や住民が期待する(目的とする)災害出動と、自衛隊の任務にある「災害派遣」の間には明確な食い違いがある。そこに注意が必要だ。
まず、いうまでもないことだが、自衛隊の出動は災害後であるから「防災」という点で自衛隊は無力ということだ。
自衛隊にできること、また実際におこなってきたことは、災害後の遺体の捜索、がれきの処理等「専門的技術」を要するというより、人海戦術で大量の人数を要する作業である。
自衛隊ならではという分野での活躍は、「自力」で危機を脱し、避難した人を自衛隊のヘリで別の場所に移送したぐらいである。
これらの任務に出動した自衛官たちがその任務を果たすために、他の人たちと同様に一生懸命献身的な努力をしたという面と、その自衛隊は国家的にどういう構想のもとに位置づけられ指揮されているかという二つの側面を区別して見ていかなければならない。 装備面から見ても、例えば、工事現場等でよく見かけるヘルメット装着型のライト。夜間でも両手を使った作業が可能で、被災地での活動には必需品であった(簡単なものは100円均一店でも扱っている)。しかし、自衛隊にはこれがほとんど装備されておらず、被災地に出動した隊員には随分不便であったという。装備しない理由は、隊員がこのような装備の使用に慣れてしまうと、夜間狙撃の標的になってしまう危険があるという軍事的理由からだという。
「ヘリの活躍」については、自衛隊以外にはこれほど多くのヘリを備えていないからというだけのことである。自衛隊の軍用ヘリと費用面で比較すると、防災ヘリならばドクターヘリ、消防ヘリ等平時から実用的に機能する形で何倍もの機数を活用することができる。もちろん今回自衛隊に強いたような、爆発した原子炉への注水のパフオーマンスのために原子炉上空でホバリングさせるという無謀で無意味な命令を下して命を犠牲にさせるなどということは許されないが。

昨年の防災訓練

つぎに例として、昨年度実施された首都圏での防災訓練の実態を見てみる。
@政府主催の総合防災訓練。9・1「防災の日」政府本部運営訓練。「南海トラフ巨大地震」および「首都直下地震」という2大地震を想定。この訓練には、内閣総理大臣はじめ全閣僚が参加、関係地方公共団体及び指定公共機関等との連携が主な演練項目である。
A自衛隊の訓練。自衛隊総合防災訓練では、南海トラフ地震を想定した図上演習。
B九都県市の合同防災訓練。首都直下大地震を想定。東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県・千葉市・横浜市・川崎市・相模原市・さいたま市で実施。
C東京都総合防災訓練。目的は震災時等における自助・共助体制の確立並びに行政及び防災機関の連携。

東京都での訓練

東京都・あきる野市合同総合防災訓練はどのようにおこなわれたか。
●被害想定など内容の一部を参加職員などに示さない「ブラインド訓練」を3年連続で実施。
●防災機関による救出救助では、自衛隊の見世物的な「救出ショー」は鳴りを潜め、消防を中心とした地味な「救出活動」の展示。
●現認した自衛隊の行動は、米軍ヘリによる物資輸送に連携した若干の行動。あるいは、カレーとα米の炊き込みご飯を提供し、訓練に会場を提供した東中学の生徒に配膳させたこと。目立って力を入れていたのは、新隊員の募集業務とそのための資料・ハガキの配布であった。
●全体としては、「自助・共助」が強調されるとともに、自衛隊の動員も年々減少している印象である。要するに「国も自衛隊も都も誰も助けに来ないから自力で対処せよ」という方向に導きたいのであろう。

進む「治安出動体制」

自衛隊の「任務」は、自衛隊法第3条で防衛出動と治安出動が定められており、災害派遣は含まれていない。部隊の編成も配置も装備も訓練も全てがこの2大任務のために組み立てられているのである。災害派遣(同83条)は戦争や治安出動に支障がない範囲での「行動」にすぎないのである。
編成上から見ると「政経中枢師団」を設けており、これら第1・第3師団が首都圏・名古屋・阪神など首都直下地震や南海トラフ地震の被害想定地域に重なっているが、これらに出動する時の最大の任務もやはり暴徒から「政経中枢の治安を守る」ということである。 先に見た東京都(防災)参与の志方俊之は、自衛官に読者が多い某月刊誌で「オリンピックの治安体制として、自衛隊を前面に出した警備」を訴えている。彼の念頭にある「防災」とは何よりも治安なのである。石原都知事の下で志方が陣頭指揮を取った2000年9月の東京都総合防災訓練「ビッグレスキュー東京2000」という訓練が過去最大規模の「防災訓練」である。ここに本質があらわれている。
他方、自衛隊の指揮所演習である「自衛隊統合防災演習」は、99年度から東日本大震災の11年を除き毎年実施しているが、志方のヘゲモニーの下「ビッグレスキュー東京2000」では、その成果を都内全域に部隊を展開して実地点検する実動演習として実施した。
銀座など都内に10会場を設営し、都庁は自衛隊の前線本部として明け渡し、警察、消防を始め主要官公庁、NTT、東京電力、全地下鉄を参加させ、数万人の都民を自衛隊のコントロールのもとにおいて、「戦時下の首都戒厳令」を演出したのである。
翌年の七都県市合同防災訓練の一環として実施された、「ビッグレスキュー東京2001」では約1万5千人を動員し、同時に在日米軍の横田基地と赤坂プレスセンターをも動員した。自衛隊は、この2回の大訓練で首都戒厳体制上の主な課題を明確化したと言われる。以後は、自治体からの参加要請とは裏腹に、区役所等との連携確認などの要所要所を除けば、自衛隊の取り組みは徐々に減っている感である。自衛隊が考える「防災(治安)出動体制」が着実に進められている。 国が想定する震災は、首都直下型大地震と、南海トラフ・東南海地震であるが、毎年訓練を重ねる国の本音は、自然災害をも含む「有事」を想定した「首都機能の保持と治安維持」でありその現在的準備である。そして自衛隊の目指すところは、防災訓練を利用した治安出動体制の確立、より明確に言えば、戒厳令の準備が最大の目標ではないだろうか。
そのような観点から見ると、「偵察」「指定区域」の設定とその軍事的確保および幹線道路等交通網の一元的支配。自治体・警察との連携の重視、そのもとでの被災民の指定区域外への移動=誘導の狙いが鮮明になる。東京で毎年実施される幹線道路である環状7号線外へ車両・被災者の排除(短時間とはいえ救急車の例外も認めない一方通行の実施)、福島第1原発を取り囲む立ち入り禁止の実施等々は、戒厳令下での民衆の排除であり、イラクでファルージャを包囲した米軍を連想させる作戦でもある。
防衛・侵略を問わず戦争こそが軍隊たる自衛隊の基本任務であり、この本務と重なる時、自衛隊の災害出動はありえない。このような自衛隊の出動を当てにする防災計画や防災訓練は、市民・自治体にとって役に立たないばかりか有害である。

3面

子どもたちに笑顔を
朝鮮高級学校の無償化へ

2月28日、朝鮮学校無償化・補助金裁判報告集会が大阪市内で開かれた。主催は、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪。会場の北区民センターは満杯になり、オープニングでは朝鮮中級学校の民族楽器演奏や舞踊があり、生き生きとした笑顔に励まされた。

民族教育を守る

主催者あいさつで藤永壮さん(連絡会共同代表)は、「全国10校ある朝鮮高級学校の内、半数の5校が裁判闘争に立ちあがっている。高校生・卒業生中心に若い人が原告として立ち上がっている貴重な裁判。民族教育を守る闘いを確認していきたい」と発言。
続いて弁護士から裁判の経過報告。大阪朝鮮高級学校出身の若い弁護士は、「これから立証活動になる。皆さんの声をたくさん届けていくようになる」。補助金裁判も「これから立証段階に入るが、不支給の『違法性』が焦点。学習権侵害、国際人権法にも違反している。学びの実態、当事者・保護者の実態や想いを裁判所に伝えたい」と訴えた。
朝鮮高級学校の教員は、「今回の措置は国がある特定の民族集団に対して、差別を目的に現行法までも変更するという極めて異常な措置だ。この措置の直後(昨年)2月24日、鶴橋付近で在特会が『鶴橋大虐殺を実行しますよ』と絶叫していた。排外主義が歯止めの利かないところまで来ている。闘いの輪をもっと広げ現在の状況を打ち破って、真の朝日友好の土俵をしっかりと作っていこう」と訴えた。
城北朝鮮初級学校幼稚園の園児の若い母親は、「自身は日本の学校に通っていたから、こんなあからさまな差別を日本という国がするわけがないと思っていた。逆にニュースにも出ないほど興味の薄くなっていることに問題を感じている。私が子どもを守る方法は、自分のルーツを知って自分を誇れる知識を持たせてあげること」と訴えた。
大阪府庁の昼休みに、毎週火曜日行動に立っている支援する会代表からホンギルトン基金の報告と支援カンパを訴え、歌を披露した。
京都の裁判報告では、「在特会が京都朝鮮学校を3回も襲撃した事件に、去年の12月7日に1200万円以上の支払いを命ずる判決が出た。現在控訴審に移っている。ヘイトスピーチ裁判と言われているが、学びの場に対する人種差別だからこそ損害が大きい。毎回傍聴席が満杯になって、心ひとつに合わせて勝ち取ることができた。3月25日の第1回控訴審(大阪高裁)への傍聴を」と呼びかけた。

3月一斉行動へ

丹羽雅雄弁護士は、「安倍政権が天皇をいただく国家に、総体として国家構造を変えようとしてきているときに、この朝鮮学校・そこで学ぶ子どもたちが、攻撃の標的として表れている。橋下・維新の会の『北朝鮮は暴力団と同じ』発言から始まったが、慰安婦発言・『君が代』攻撃、双方連動している。朝鮮学校は普遍的な国際人権を実践する場所。同胞の地域コミュニティーの拠点。これを消し去ろうとしている。本当の人間関係を結びあえる場として、朝鮮学校とそこで学ぶ子どもたちの実像を、無償化法の適用・補助金の必要を訴える意見・想いを圧倒的に集めて裁判所に出す。大法廷を埋め尽くす傍聴を」と発言。
最後に連絡会事務局長の長崎由美子さんが、3月の一斉行動を提案し終了した。熱い思いが詰まった集会だった。(大阪 S)

「ほんまやばいでTPP」
脱原発、労組、三里塚をつなぐ

様々な分野からの発言(2月16日 大阪市内)

「ほんまやばいで! TPP」2・16シンポジウムが大阪市内でひらかれた。当初、パネリストとして予定されていた2人のうち、萩原進さんが急逝。もうひとりの大野和興さんが大雪のため自宅から東京への交通が途絶し、当日参加できないという大変な状態でおこなわれた。大野さんの話に期待していたが、残念。
山口千春さん(市東(しとう)さんの農地取り上げに反対する会事務局長)は、「TPPが日本の医療、福祉制度を根本からひっくり返す。例えば保険外診療が導入され、医療格差が拡大する」などと医療現場で働いている経験を交え話した。市東さんの農地法裁判について、「はじめて三里塚に接する」参加者も多かったことからか、市東さんの畑をめぐる経緯、農地改革の際、戦地からの復員が遅れた東市さん(孝雄さんのお父さん)が手続きに間に合わず小作(耕作権)のままにされたこと、公団・空港会社が「農地法に違反して農地を秘密裏に買収した。所有者を偽っていた。明け渡し訴訟において書類を偽造している」と、農地取り上げがどのように不当不法におこなわれようとしているか、分かりやすく話した。
京都沖縄県人会会長の大湾宗則さんは、「名護市長選で沖縄の民意が示された。しかし9月に名護市議選(現在、基地反対・市長与党側17人、基地推進派15人)。11月に知事選。仲井真知事は出ないだろうが、この二つの選挙に勝たなければ。国は金と権力をつぎ込み、あらゆる突破をはかってくる」「京丹後市の米軍Xバンドレーダー基地建設も、3月から測量に着手しようとしている」と報告した。
労働組合からは、「TPPは、解雇の金銭解決方向などに示されるように、雇用が危機におかれる」と発言。参加者は約250人。「沖縄、三里塚、福島を結ぶ」三里塚闘争の新たな一歩を踏み出せたのではないか。
いっしょに行った人に聞いてみると「三里塚を知らなかった人たち、労組などから参加も多く、呼びかけ人の思いと苦労が伝わってきた」「わかっている人たちの結集運動というのではなく、みんなでTPPや農業、三里塚、沖縄、反原発を考え行動につなげたいという感じがよかった」という意見の一方、「方向性が分からなかった」という感想もあった。(H・T)

「教育再生」が目指すもの
戦後憲法の否定と国家統制

安倍政権は通常国会で「教育再生」と「集団的自衛権の解釈替え」に全力をあげている。
06年第一次安倍政権での教育基本法改悪と国民投票法制定を受け継ぎ、9条改憲にむけた両者一体の攻撃である。

政権党が教育を支配

「教育再生」は動機として、いじめ・格差などの教育矛盾に教育委員会が対応できていないことをあげているが、事実は全く違う。いじめなどへの抜本的対策は口実にすぎない。本当のねらいは国家が教育を支配し、統制するために、政治的中立を標榜してきた教育委員会を再編・支配することにある。
そのために現行の教育委員会の不十分性(事実そうなのだが)を指摘しているが、結論は「選挙で選ばれたものが責任を持つ」(義家文部科学大臣政務官、当時)と称して教育を政府の意のままにしようとすることだ。
しかしこれほど人民を愚弄した意見はない。そもそも安倍も地方の首長も、「選挙で選ばれた」というが、せいぜい50〜60%の投票率で40%の得票率ではないか。5人に1人の信任でしかない。
選挙のたびごとに交代する為政者が、教育行政と教育内容の生殺与奪権を握るという「猫の目行政」の中で子どもたちが育つわけがない。
安倍や大阪市長の橋下などは「選挙で選ばれたからなんでもできる」というが、とんでもない暴論である。選挙は「白紙委任」ではない。かのヒットラーも選挙で選ばれたのだ。だからヒトラーの行為が正当化されるとでもいうのか。
安倍や橋下は、デマゴギーでマスコミを誘導し「選挙で選ばれた」にすぎない。だがそのような政権は、民衆に災厄以外はもたらさないであろう。こうした連中は歴史の試練に到底堪えるものではない。それは第二次世界大戦のドイツ、イタリア、そして日本で証明されている。

教育の国家統制

「教育再生」攻撃は、一方で教育委員会の再編から教育の国家・政権党支配と、他方で教育への民間教育産業の介入(規制緩和・自由化)として激しく進められている。前者は、教育委員会の統制・政権党による教育支配と、より具体的には、高校日本史の必修化・道徳の教科化・「心のノート」配布・教科書内容への直接的介入など、愛国心教育に一気に進もうとしている。また東京都・大阪府での「君が代」強制・処分乱発などを通じ教職員の統制を強め、職場的団結を徹底的に破壊し、抵抗と反撃の契機を奪おうとしている。
他方「資本の自由な活動」は教育現場にも貫かれる。学校選択制や高校の学区制解体などは、教育全体のさらなる競争・選別をもたらす。大学受験は大手予備校の偏差値で決まる民間資本の独壇場だ。国立大学は独立法人化で激しい競争に叩き込まれ、大学格差は拡大した。学生の圧倒的多数をしめる私学はカタカナ学部を次々増設し就職予備校化し、大学生活の大半が就活一辺倒となった。その上に幼児教育や小学5・6年の英語必修では、出版・塾・語学スクールの介入・隆盛が激しく進む。小学生の英語教育に今の教員が対応できない分は、語学スクールの格好の市場となる。また全国学力テストの成績公表や、中学・高校の定期テスト問題と解答の塾業者への販売、バウチャー制度・塾クーポン券など、教育が巨大市場になり民間資本が激しく介入し、親の経済的資力が子どもの成績に反映され、世代を通じて格差・貧困が拡大し、次世代に継承される。この塾資本の利害の代表が下村文科大臣なのだ。
安倍政権が「教育再生」を重視するのは、国際競争力の人的資源確保と「資本の自由な活動」を教育の場で展開するためである。また安倍の「戦後レジームからの脱却」を、「憲法の精神を教育を通じて実現するという」戦後憲法的在り方を根本から否定し、真逆の方向から教育を通じ統治形態の転換を図ろうとするからである。安倍政権の「教育再生」は、格差と貧困を拡大し、教育を通じて戦争国家を作るものである。この攻撃には教職員・保護者だけでなく、すべての労働者・市民が立ち向かわなくてはならない。

4面

論考
「福島の復興」とは(1)
南相馬市長選と住民の選択
請戸 耕一

目次
T 「復旧復興の遅れ」の現状(※本号掲載。以下、次号以降)
U 帰還促進の徹底―国の加速化方針
V 被災者切り捨てと開発依存
W 別れた住民の選択
X 「除染して復興」方針の見直しを
Y 中央依存・開発依存を超えて

地震、津波、そして原子力災害の直撃を受けた福島県南相馬市。今なお災害は継続し、問題は山積みだ。その南相馬市で、災害から3年を前にして市長選がおこなわれた。1月19日の投票の結果、現職の桜井勝延氏が、前市長の渡辺一成(いっせい)氏、前市議会議長の横山元栄(もとえ)氏を破って再選された。主要メディアは、この結果について、「脱原発候補が再選」「市政継続を市民が選択」と報じた。しかし、この選挙は、それほど単純な構図ではなかった。被災地の現状の複雑さというだけではない。そこで、選挙戦を振り返りながら、国の政策の内容や、この選挙の争点、住民の選択を検証し、課題と展望について考えてみたい。

「復興の加速」

選挙結果は次の通り。
当 桜井 勝延 (58) 17123
  渡辺 一成 (70) 10985
  横山 元栄 (65) 5367
(有権者数5万3943人 、投票率62・82%)
この選挙では国の側から「復興の加速」という大きな力が働いていた。そういう力の下で、「復興の遅れ」「復興の加速」という問題が市長選の争点とされた。
選挙戦における論戦の構図は端的に描けば次のようなものだった。ともに自民党系である横山、渡辺の両氏が、「復旧・復興の遅れ」は「桜井市政の責任」であるとし、「復興の加速」のために「トップの交代」と「中央とのパイプの回復」が必要だと訴えた。それに対して、現職の桜井氏が、「復旧・復興の遅れ」は「国・東電の責任」とし、「国・東電とたたかう」と応戦した。 国の言う「復興の加速」とは何か。「復興」も「加速」もそれ自身、誰しもが望んでいる事柄だ。が、国が「復興の加速」と言うとき、それは〈被災者の切り捨てと復興の名を借りた開発政策〉という意味になる。 国の「復興の加速」に対して住民はどうするのか。南相馬市長選では住民の選択は別れた。選挙自体は終わっているが、その攻防の決着はついていない。住民の間の論議も決着していない。

T「復旧復興の遅れ」の現状

避難1万5千人

南相馬市(震災前人口 約7万2千人)では、震災から3年を迎える現在も、約1万5千人が市外に避難を継続し、また約7千人が市外・県外に転出している。 現在の市内居住者は約4万7千人だが、そのうち約5千人が仮設住宅、約6千人が借上げ住宅などに居住している。 なお、南相馬市では、震災・津波による流失・全壊の家屋が1227戸。原子力災害によって避難区域とされた住民が約1万3千人。津波などによる直接死が525人、震災関連死が437人(昨年11月末時点)。
震災関連死は県内では群を抜いて多い。原因は一概には言えないが、先行きが見えない不安と仮設住宅などでのストレスがあり、そういう中での精神的肉体的な疲労と既往症の悪化などが関わっている。
復興住宅は県の事業として350戸建設中だが、入居できるのは15年末と2年近く先だ。
以上の簡単な数字を見ても、震災とくに原子力災害が依然として継続している状況がわかる。

避難区域の復旧

原発から20キロ圏内にかかった小高(おだか)などの避難区域からは、約1万3千人が強制的に避難している。 市は国の意向に沿う形で、昨年末、「16年4月の避難解除」を決めた。
早期帰還を望む住民は、この決定を好意的に受け止めているが、実際は簡単ではない。
電気・水道はほぼ復旧したが、道路は遅れている。津波で壊れた道路の復旧率は昨年末時点で5・7%、地震で壊れた道路の復旧率は25%。事業所の再開を届け出たのは、区域内約400事業所のうち、今年1月中旬で49件。市では、商店などの再開が進むように補助金制度を作るという。また今年4月から市立小高病院で一部外来の再開をする。しかし、後述するように除染が大幅に遅れている。また、倒壊家屋の解体、がれきの撤去と処理、集団移転の問題など、課題は多い。

「戻らない」31%

一方、20ミリシーベルト基準による避難解除に納得していない住民は少なくない。また、賠償がしっかりおこなわれないまま解除になって賠償が打ち切られるのではという不安がある。さらに、地震・津波被害のなかった住宅の多くが、避難で長期不在だったため、カビ、ネズミ、イノシシなどによって激しく傷み、もはや住める状態にないという問題も深刻だ。
そして、やはり被ばくと健康被害への危惧は大きい。住民の意向調査(昨年8〜9月、市・復興庁による)では、「戻る」24・1%、「戻らない」31・1%と、「戻らない」の方が多いという結果が出ている。また、「戻らない」理由の最多は、「放射能への不安」42・8%だった。とくに若い人ほど、「戻らない」の割合が高く、また、「放射能への不安」の割合も高い。

除染の遅れ

20キロ圏内の除染は国・環境省の直轄事業、その外は市がおこなっている。いずれも当初の計画から大幅に遅れている。
国が、12年4月に策定した除染計画では、除染の実施期間は14年3月末までとされ、小高区の場合、概ね12年度に同区中央部、13年度に同区東部と西部で実施する予定だった。しかし、業者が決まったのが昨年6月、実際に除染が始まったのは、公共施設が昨年8月、住宅については昨年11月という遅さ。予定より1年以上遅れている。
市の方は、11年11月に策定した除染計画で、13年度中に完了予定だったが、こちらも作業は大幅に遅れ、昨年1月に計画を変更し、目標を15年3月に延長。しかし、昨年末時点での進捗は約11%。市は目標を17年3月に再度延長した。
この遅れを象徴とする事態として、国の12年度の決算で除染費用の67・9%、(被災地全体の復興費でも35・2%)が未執行となった。
また市でも、12年度の決算で除染や住宅再建などで使い残しが発生し、6割が執行できなかった。
遅れの原因について、国も市も、仮置き場設置や除染の同意取得に時間がかかっているからとしている。国の場合、仮置き場、除染のいずれも同意取得が3割にとどまっている。市の方は、仮置き場の予定が21カ所、そのうち搬入しているのは10カ所で、6カ所は地元の同意を得られていない。
なお、「復旧・復興に最も必要なものは?」という問いに、38%の住民が「除染」と答えている〔1月19日、NHKの出口調査〕。と同時に、「成果の上がらない除染に金を使うよりも、その金を、移住して生活再建をする人の支援に使った方がずっと有効ではないか」という声も少なくない。

小高駅から望む駅通り
(南相馬市小高区 今年2月)

賠償の遅れと格差

避難区域の住宅・宅地の賠償の手続きは一応進められているが、田畑や山林の財物賠償は、基準すら示されず、開始の目途も立っていない。
避難を強いられた住民は、生活再建の資金を、補償ではなく賠償に頼らざるを得ない仕組みになっており、賠償の遅れが生活再建の遅れに直結している。しかも、住宅・宅地の賠償額が、移住先で新しい住宅を取得できる額にならないなどの例が多い。賠償自体が、「戻らない」選択をできるだけさせない仕組みになっていると言わざるを得ない。
さらに、南相馬市の独特の事情も加わる。南相馬市は、国の避難指示により、原発から20キロ圏内、20〜30キロ圏内、30キロ圏外に分断され、警戒区域、緊急時避難準備区域、計画的避難区域、特定避難勧奨地点の全部が設定された。住民は、同じように危険にさらされ、被ばくし、避難したのに、国の線引きによって、賠償などで格差が生じ、住民の間に軋轢や分断が引き起こされてしまっている。市は、国と東京電力に是正を求めているが動きはない。
さらに、後述するように、昨年末の政府「復興加速化方針」や原賠審「中間指針第4追補」では、帰還困難区域の移住については賠償で支援するが、それ以外の避難区域については、帰還する住民には支援するが、帰還しないで移住する住民には支援しないという方向を打ち出している。

賠償の打ち切り

賠償の打ち切りが始まっている。
ひとつは、就労不能に伴う損害賠償が今年2月で打ち切られた。避難区域設定によって職を失った住民、勤め先が休業・廃業になった住民などが対象。企業が依然として事業再開できない状況、また働きたくても年齢や職種などの条件で新しい職場が簡単に見つからない状況がある中で、賠償打ち切りは、被災者をさらに追い詰めるものになっている。
〔「賠償があるから働こうとしない」という言葉が被災者の間でも言われているが、実態を見る必要がある。求人倍率は後述のように高いが、実態は小売業・サービス業などのパート・アルバイトと建設・除染など。長期に安定して働ける職業は少ない。時給も上昇はしているが、そもそも福島県の最低賃金が675円という低さの方が問題だろう〕
いまひとつは、避難区域設定などで被害を受けた企業に賠償がおこなわれているが、原町区が該当する旧緊急時避難準備区域で休業中の事業所への賠償を来年2月で打ち切るなど、賠償の縮小・打ち切りが打ちだされている。賠償の打ち切りによって、経営が立ち行かなくなる企業は一気に増えることも予想される。

急激な人口減少

さらに、南相馬市の人口の急激な減少が様々な影響を及ぼしている。 11年3月時点の人口が7万2千人だったが、今年1月現在、4万7千人。避難や転出、死亡で約2万5千人が減少。
とくに子どもと若者世代の減少が顕著だ。0〜14歳の人口が震災前に比べて22・3%減、20〜34歳では24・7%減。65歳以上が占める割合である高齢化率は29・3%、11年3月時点より3・4%上昇。市内居住者に限れば高齢化率は33・1%だ。
人口減少の影響は、直接には商圏の縮小や人手不足となっている。さらに市の将来の存続の危機にもなっている。(続く)

5面

直撃インタビュー(第22弾)
秘密保護法廃止と東アジア平和交流を呼びかける
前衆院議員 服部良一さん

秘密保護法制定・沖縄辺野古埋め立て承認・靖国参拝から、集団的自衛権見直しへ安倍政権の暴走が続いている。特定秘密保護法の廃止を求めるロックアクション(6の日行動)など反撃が始まっている。「慰安婦」問題・歴史修正主義への批判も世界に広がり、東アジアの平和交流が求められている。大阪・関西でロックアクションと東アジア青年交流を呼びかける前衆院議員の服部良一さんにお話を伺った。〔聞き手=本紙編集委員会/3月1日、大阪市内〕

―昨年末に秘密保護法が制定され、怒りが今も廃止を求める行動として続いています。秘密法の問題性と今後の運動の方向などについてお聞かせください

秘密保護法は、市民の知る権利と言論の自由を奪い、市民運動への弾圧にもなる、とんでもない法律です。すでに秘密保護法の施行を見越した動きが始まっています。たとえば原発の圧力容器の気圧を抜くベントの取材を電力会社が拒み始めています。今後再稼働にあたっては、当然にも原発の安全装置の設置状況などが問題になるわけですが、これも「原発警備情報は特定秘密になる」として、マスコミへの公開を止めることが始まっているんです。これでは市民の安全は確保されず、政府や電力会社に都合の良い情報以外流れなくなります。
またこの法律の最大の問題として、国会がその機能を停止し三権分立が崩壊していくことが危惧されます。国会や裁判所に特定秘密で開示しなくてよいとなると一体どうなるか。もうそこには、「事実に基づいて審議する」ことがなくなる。国会議員が外交密約に論及できない。マスコミも突っ込めず、政府発表に誘導されていく。戦前のような大本営発表になります。これは国会の自殺行為です。他方で捜査権を持つ警察権力が、大きな力を発揮していく。オスプレイの訓練飛行ルートなどは「特定秘密」になる可能性は高いですから、それを知り住民の安全を守ろうとする市民運動は当然監視・弾圧対象で、電話の盗聴もおこなわれます。

ロックアクション

このような危険性が広く知られるにつれ、反対運動も急速に高まったのですが、昨年12月6日に強行採決されました。で、その後、この法律の廃止を求める動きが生れました。国会でも廃止を求める法案を出す動きがあります。その声を大きくしようと、秘密保護法に鍵をかける6の日行動(ロックアクション)を呼びかけました。1月6日は初出の日で結集を心配しましたが、40団体300人が集まり、2月にはさらに人が増え600人になりました。3月もおこない、4月6日は日曜日ですので、労働組合などとも共催で、これまでで一番大きな行動を大阪・扇町公園でおこないます。
安倍政権が、集団的自衛権の見直しの攻撃を強めています。憲法9条を死文化する一連の動きに対して、運動の方が先手を取る必要性を感じています。特定秘密保護法で内閣支持率が10%下がりました。大衆運動の力で安倍の支持率を下げていくことも可能です。
幸いにもこの呼びかけが関西一円に広がり、全国では20カ所以上になっています。行動も集会・デモだけでなく、繁華街でのパフォーマンス、フラッシュ・モブなど様々な工夫をしていきたい。マスコミも危機感を持っていますし、この機に創意的な運動を広げていきましょう。
集団的自衛権については5月・6月が山場になると思いますので、全国的な行動とも連携し運動を作っていきたい。また原発の再稼働が夏場を前の6月頃が焦点かと思いますので、あらゆる意味で6月を射程に、4月からさらに運動を盛り上げていきたいと思います。

―昨年末、安倍首相が靖国神社に参拝し、中国・韓国だけでなく、欧米も含め国際的な批判を受けました。この中で服部さんは「慰安婦」問題・歴史認識の問題で、2月11日から村山元首相らと韓国を訪問されました

安倍の靖国参拝は、安倍が国粋主義者であることを世界に知らしめました。そのため中国・韓国・アジアだけでなく、アメリカ・ロシアをはじめ欧米各国からも批判を受けました。日本国内でも外交的失敗という意見が資本家の中からも出ています。
「平和と民主主義」、ヤルタ・ポツダム体制という戦後の枠組みに対して、それを右から突き破ろうとする「戦後レジームからの脱却」という安倍の危険な動きには、世界的批判が上がっています。国外からだけでなく国内からの批判をしっかりおこなっていかなくてはならない。靖国神社参拝違憲訴訟も今まで遺族の方や宗教者を中心に「政教分離」を争点に闘われてきましたが、今回はもっと大きくひろげ、憲法にある「平和的生存権」の侵害なども含め、安倍政権の危険な政治を全面的に問う訴訟になるでしょう。「安倍首相の靖国参拝違憲訴訟」の原告を募集していますので、ぜひ参加してほしいと思います。

河野・村山談話

2月11日から3日間、韓国の社会民主主義政党=正義党の招請で村山元総理に随行し訪韓しました。安倍政権による河野・村山談話見直しという動きを許すわけにはいきません。
河野・村山談話については、限界もありますが、戦後50年という節目に村山談話が出たことで、日本は侵略植民地支配への反省に立ちアジアとの最低限の信頼関係を作り、未来志向への歩みを開始した。それを否定し2015年の戦後70年の節目に安倍談話をつくろうという動きなどは許されません。
実は昨年9月に韓国側から村山招請があったのですが、体調のこともあって2月になりました。
韓国国会内で開かれていた「日本軍慰安婦」ハルモニが描いた絵画展会場で、村山元首相がハルモニに慰労の言葉をかけ、その様子はマスコミで大々的に報道されました。
また翌日は国会内で講演会があり、「慰安婦」問題の解決のため日本政府の責任を明らかにし、村山談話を継承しない閣僚は辞任すべきだとも断言されました。リベラルな学者とのシンポジウムも開かれ、私も日本の憲法状況について報告しましたが、歴史修正主義の歴史観がいかに世界の常識とかい離しているかが明らかになった訪韓でした。

―東アジアの平和のため、「東アジア青年交流プロジェクト」を昨年立ち上げ、10月には中国を訪問されました。その意義と役割は

衆議院選挙で敗北し、安倍政権が発足した。他方でヘイトスピーチがはびこり、日本の排外主義的傾向が若者を含めて広がりつつあることに危機感を持ちました。それと今後の日本の政治や市民運動を担う若い世代の方に、維新とか「みんな」のような新自由主義・排外主義でなく、海外の青年とつながるため東アジア各国の青年交流をやるべきではということで、昨年6月に立ち上げました。東アジアの韓国・北朝鮮・中国・台湾・ロシアの5つの国・地域を5年かけて訪問し交流していきます。

雇用・環境・歴史認識

中味的には、若者の雇用の問題、環境問題、歴史認識、二国間に横たわる様々な問題などですが、それらに正面からとりくみ、学習と交流を広げていきたい。去年10月に若者21人と一緒に中国に行きました。一昨年の日中国交回復40年企画が領土問題ですべて吹っ飛んだんです。中国の再生可能エネルギー問題の討論をしたり、盧溝橋記念館を訪ねたりしました。
今年は7月に韓国を訪問する予定です。ソウル市が進めている若者の雇用に関する取り組み、原発1基100万キロワットを節電や自然エネルギーなどで作ろうという動き、韓国の若い地方議員との交流も広げていきたいと考えています。そして来年はロシアの極東を訪ねたい。ありのままで交流、フェイス・ツー・フェイスでの付き合いをおこなえればと思っています。

―今年の社民党大会で全国常任幹事になられました。小さくなったとはいえ、政党要件を満たし、地方議員を多数持つ党として、安倍政権と闘ううえで、全国役員の役割は大きいと思います

いままでは国会議員と中央書記局が中心の全国常任幹事会でしたが、今回3人増え、私や地方の青年議員代表も常任幹事になりました。社民党は主張は間違っていないと思うのですが、それが広がっていかない。それは体質の問題や昔の「大社会党」意識などにも原因があるかもしれない。基本的に労組中心で、市民にとってはフットワークの軽くない政党になっている。

社民党の役割

安倍が憲法を変えようとする時代に社民党の役割は大きいし、そのためにも社民党自身がもっと市民に開かれた政党に変わらないとダメなのではと思っています。私は市民運動出身のため特にそう思ってきました。社民党には結構若い地方議員がいます。
去年の党首選に40歳の東京の区議の石川大我さんが名乗りを上げ、私もそのサポーターになりました。もっと若いエネルギーを入れなくてはダメと思い、石川さんを応援しました。
もっと改革が必要というのは吉田党首を含め共通認識ですが、人事の面でも若い発信力のある人を育てようと、最終的には副党首にはならなかったのですが、34歳の市議が常任幹事になりました。私は国際担当になり、アジア各国に対して社民党ならではのできる事をやりたい。また社民党単独ではなく、市民運動や国会の中でも平和リベラルな勢力との連携が必要と思います。

―最後に改めて抱負や決意などを

 改めて東アジアの平和を考えたい。来年は日韓条約50周年になります。韓国では日韓条約を見直すべきだという議論も出てきています。安倍首相の持つ歴史観は極めて危険で、東アジアの平和の阻害要因です。安倍にいつまでも首相をやらせるわけにはいかない。沖縄、TPP、消費税増税や原発問題も含め様々な課題がありますが、次の国政選挙まで、いや今年こそ政治の潮目を変えて安倍を追い込んでいかなくてはならない。時間が限られていますが、全力でがんばっていきたいと思います。
まず来年の統一地方選挙が一つの勝負ですので、志のある方は自薦他薦で名乗りをあげてもらい、ぜひ一緒に闘いたいと思います。

6面

全国キャラバンが出発
新基地とオスプレイに反対

第5期意見広告運動を呼びかけるビラ

沖縄意見広告運動は、6月の新聞掲載にむけ昨年11月から「第5期」の運動を開始した。全国紙1紙・沖縄2紙などに、辺野古新基地断念を求める意見広告を載せ、改めて全国の力で沖縄米軍基地を撤去し、基地のない平和な沖縄と日本を求める運動だ。このため、アメリカ紙への掲載や、アメリカ議会工作などもおこなってきたが、昨年からはオスプレイの全国配備反対の全国キャラバン運動も開始した。この出発集会が、3月8日に大阪市内で開かれた。

オール沖縄対日本政府

主催者あいさつのあと、沖縄平和運動センター議長で全国キャラバン隊隊長の山城博治さんが、昨年末の仲井真知事の辺野古埋め立て承認以降の激しい攻防を報告した。特に安倍政権・官邸と一体で自民党国会議員らが権力にものをいわせ、沖縄の闘いを潰す動きを弾劾した。右翼の襲撃、辺野古の運動家たちへの警察権力の恫喝、石垣市長選への介入など、これまでと一線を画す攻撃が続いている。しかし、1月の名護市長選挙に典型のように、いかなる恫喝も最後は破綻する。この間のオール沖縄対日本政府という対決構図は崩れておらず、那覇市長の翁長氏や市長を支える自民党市議団などや、有力な財界人も「県外移設」の公約を守っている。本土でも大阪行動のような運動が続いており、暴走する安倍政権との闘いという点で、戦争に反対する国民共同戦線を構築しようと、熱烈に訴えた。

沖縄から山城博治さんが訴え(8日 大阪市内)

第5期意見広告へ

これを受けて、3月四国、4月中国・九州、さらには東海・東日本へのキャラバンの先頭に立つ西山直洋さんらから、キャラバンの意義と決意が語られた。3月24日からは徳島・高知・和歌山とオスプレイのオレンジルートを直撃するコースだ。労組や市民運動からも参加を求め、地元の運動団体とも交流し、沖縄にも日本にもオスプレイはいらないの運動を強めよう。
つづいて秘密保護法反対ロックアクションの先頭に立つ服部良一さん、京都での米軍Xバンドレーダー基地反対闘争、辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動などから連帯の発言があった。とくに大阪行動はこの日で500回を迎え、沖縄現地紙にも紹介され共感が広がっている。使っている横断幕やジュゴンの人形をキャラバンでも使い、定点と線ルートをつなげ運動を広げよう。まとめは、全港湾・山元一英さん。安倍政権の反動攻撃を弾劾するアピールをおこなった。 辺野古新基地建設中止を求めて、ノーム・チョムスキー、オリバー・ストーン、ジョン・ダワーなど海外の識者29名が1月に声明を出した。オスプレイ配備反対全国キャラバンと一体で、第5期沖縄意見広告運動を成功させよう。

橋下は96億円を返せ
WTC住民訴訟 2周年

WTC住民訴訟の会(WTCビル購入と庁舎移転に費やされた巨額の税金を橋下前知事から取り戻す会)は、3月5日、大阪市内で提訴2周年記念講演会をひらいた。
藤永のぶよ原告団長あいさつ、西川弁護士から裁判の現局面についての報告の後、塩崎賢明さん(立命館大学教授。都市計画、住宅問題・住宅政策の専門家)が「WTC庁舎は防災拠点に成り得たのか」と題して講演した。講演後、西谷文和さん(フリージャーナリスト)、梅田弁護士の発言があった。

96億円は違法な支出

08年、橋下徹が府知事になると、府庁舎を大阪南港の咲洲にあるWTCビルに移転すると打ち出し、ビル購入と一部移転を強行した。地方自治体の庁舎は、知事の一存で移転できるものではなく、移転条例が必要。09年3月の府議会では、移転条例もビル購入予算も否決された。同年10月の府議会でも移転条例は再び否決されたが、購入予算は可決となった。
移転条例否決のままで全面移転は不可能となったのに、橋下知事(当時)は10年にビル購入、庁舎の一部移転を強行した。現時点で、職員5000人のうち、2000人がWTCビル(咲洲庁舎)に移っている。
11年、「3・11」大地震が発生。大阪は震度3であったが、長周期地震動の到達により、超高層ビルであるWTCビルは大きな被害を受けた。ビルは10〜15分も揺れ続け、壁・天井が350カ所以上も崩落、エレベーター4基で職員5人が閉じ込められ、4基でワイヤロープが絡まった。
WTCビルが、防災拠点機能を持つ本庁舎として使用するには無理があることを多くの専門家が指摘していたが、11年8月、橋下知事と専門家の意見交換会がひらかれ、橋下は庁舎全面移転の断念に追い込まれた。移転条例否決のまま、職員の移転を強行し、既成事実をつみかさねて府庁移転を進めようとした手法は失敗に終わった。
同年10月、多数の大阪府民はこの購入・移転にともなう支出が違法であるとして住民監査請求をおこなったが、同年12月に請求は棄却された。そのため、翌12年1月に府下の住民82人が原告となってWTC住民訴訟がおこされ、今に至っている。ビル購入費用85億円、移転費用11億円の合計96億円を大阪府は橋下徹からとり返せ、という民事訴訟。

橋下前知事を法廷に

さる3月13日に第11回口頭弁論がおこなわれた。今年中には橋下徹を「補助参考人」として法廷に引きずり出すかどうかの局面を迎える。橋下は形式上の被告ではないが、「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」(民事訴訟法42条)として出廷できるため、原告側は橋下の出廷を求めることができる。
次回、第12回口頭弁論は5月23日。

投稿
辺野古新基地反対で10年
500回目を迎えた大阪行動

通算500回目となる大阪行動
(8日 JR大阪駅前広場)

3月8日「辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動(略称、大阪行動)」が500回目の定例街宣をおこなった。大阪行動は、「日米両政府による基地押し付けに屈しない沖縄の民衆と共にありたい」という思いで、2004年夏から毎週土曜日に休みなく続けられている。10年近く大きなトラブルもなく、大阪駅前のいわゆる人民広場で新基地建設反対を粘り強く訴えてきた。
ところが昨年12月21日、マイクスピーチをおこなっていた女性に対し、在特会系の差別・排外主義グループが執拗に妨害してきた。28日には13人で罵声・妨害を繰り返した。それを呼び水に、JR大阪駅が駅長を先頭に助役や警備会社2社のガードマンを引き連れ、大阪行動の活動を禁じてきた。さらに大阪府警が参加者の排除を繰り返した。

新基地建設の断念まで

多くの市民が反撃に立ち上がった。行動の防衛や、JR・府警への抗議に駆けつける人は普段の4、5倍の80人にも膨れ上がった。1月31日には「JR大阪駅前広場・歩道における表現活動に対する妨害行為の中止を求める憲法研究者声明」が発表された。呼びかけ人・賛同者は54名にのぼる。JR西日本に対する質問状も送りつけた。
500回目を迎えた現在、差別主義者の直接的な妨害行動はできないほどに押し返した。JRによる規制は続いているが、参加者は、横断幕を広げ、マイクアピール、ビラ配布を行い、署名集めを再開している。
今回の事態は、日本政府による辺野古新基地建設のなりふり構わない推進と有無通じて引き起こされている。自民党沖縄県選出国会議員が本部の恫喝に屈して公約を覆す。12月27日、仲井眞沖縄県知事が辺野古埋め立てを承認。1月19日の名護市長選挙で新基地建設は許さないとの公約を掲げた稲嶺氏が大勝した。沖縄防衛局はその民意を踏みにじり、2015年春をめどに埋め立て工事に着手するという。これからが正念場だ。政府が普天間基地を撤去し、新基地建設を断念するまで、私たちは毎週土曜日大阪駅前で行動を続ける。(H・Y)