秘密保護法 断固阻止
安倍反動政権を倒そう!
秘密保護法を通すな!1万人が東京・日比谷公園に結集(11月21日) |
1月26日夜、安倍政権は特定秘密保護法案の修正案を衆院本会議で強行採決した。自民党、公明党、みんなの党、日本の維新の会の4党が提出した修正案は、秘密指定の期間を2倍に延長させるなど原案以上の悪法となっている。にもかかわらずその審議はわずか2時間。前日、福島市でおこなった地方公聴会では発言者全員が反対を表明した。裁決時には数千人の民衆が国会前で抗議闘争を展開した。最後まであきらめず、秘密保護法を阻止しよう。〔2面に関連記事〕
特定秘密保護法の最大の問題点は、最長懲役10年という厳罰を設けることによって、公務員による情報提供や報道機関による取材行為を萎縮させることである。これによって「国民の知る権利」が著しく侵害されることは明白だ。
この法律の恐ろしさは「何が秘密に指定されているのかは秘密」となっていることだ。どのような情報に接触することが「罪」に問われるのかがわからない仕組みになっているのだ。裁判の場でもその秘密が何であるのかを具体的に明らかにされることはない。
つまり、自分がなぜ逮捕されたのか、なぜ裁判にかけられ有罪とされたのか、その理由が「秘密」というとんでもない法律なのである。
秘密警察
問題はそれだけにとどまらない。「情報漏えいの防止」という名目で、警察や検察による市民に対する日常的な監視活動が強化されるのは間違いない。とくに米軍基地問題や原発問題、さらにはTPPに反対する運動に取り組んでいる市民や団体がそのターゲットににされる。
元東京地検検事の落合洋司氏は「秘密保護法案に盛り込まれた『報道又は取材の自由に十分配慮しなければならない』という文言は、全くないよりましだが、捜査官の心理的抑制にはつながらない」(朝日新聞)と断言している。一般市民に対する「脅し」という意味では、警察による家宅捜索や逮捕は十分すぎる効果を発揮するだろう。
しかも警察自身が特定秘密を指定できる。盗聴や監視など違法な捜査を秘密裏におこなうことができるようになる。そして違法捜査を暴いた者が逆に弾圧される。恐るべき秘密警察の登場を可能にするのが秘密保護法なのだ。
秘密の範囲あいまい
この法律では特定秘密に指定する事項を別表で列挙しているが、秘密の範囲が極めてあいまいである。とくに「その他」の多用が目立ち、恣意的に秘密の範囲を拡げることが可能になっている。修正によって「その他」の一部を削除し、「国民の生命及び身体の保護に関する重要な情報」という文言に代えた。しかしこれもまた一般的な定義である。また修正後も「その他の安全保障に関する重要なもの」という抽象的な項目がそのまま残っている。
修正前も修正後も、秘密の範囲のあいまいさにはほとんど変化がないのである。これによって、政府にとって都合の悪い情報や、国民に知らせたくないと判断した情報はことごとく秘密にすることができる。
住民を危険にさらす
衆院採決の前日に福島市で開かれた地方公聴会では、浪江町の馬場有町長が、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の情報が公開されなかったために、町民が放射線量の高い地域に避難した事実を取り上げて、法案に反対した。
特別委員会の審議の中では、福島第一原発の事故直後、現場の情況を撮影した情報収集衛星の画像を、政府が秘密保全を理由に東京電力に提供していなかったことが暴露された。こうした例から明らかなように、秘密保護法はけっして「国民の生命及び身体」を保護するものではなく、かえって重大な危険にさらすものである。
それは原発周辺だけなく、米軍基地周辺の住民にとっても深刻である。基地にどのような兵器が持ちこまれているのか。どのような演習がおこなわれているのか。それによって住民にどのような被害がもたらされるのか。こうしたことが今まで以上に秘密のベールに閉ざされる。それを知ろうとすること自体が処罰の対象となるのである。
大阪弁護士会館で開かれた STOP!秘密保護法大集会(11月21日) |
改憲ブロックの粉砕を
法案の修正協議の過程で、みんなの党と日本維新の会が自民党・安倍政権の補完勢力であることが明確になった。しかも修正によって以前よりも悪くするという許しがたい役割を果たしている。例えば、秘密指定の期間を修正前の「原則30年」から「60年を超えることができない」と大幅に後退させた。
また、内閣総理大臣に特定秘密の指定、解除、適正評価にかんして、行政各部に対して指揮監督する権限を与えた。これをもって安倍首相は「首相が第三者機関の役割を果たす」などと答弁したが、噴飯物である。首相自身が内閣府という行政機関の長であり自己矛盾している。これは秘密指定にかんする首相の権限を強化するものであり、危険極まりない。
こうして、みんなと維新は自民党の強行採決の道を開く先兵となった。安倍政権は、こうした政治構図を利用して、今後、国家安全保障基本法、集団的自衛権の行使容認へ歩を進めようとしている。また教科書検定の締め付け強化や教育行政の最終責任者を教育委員会から自治体の首長へ移すという中央教育審議会の答申案など、国家主義的な教育に向けて統制を強めていることを見過ごすことはできない。
改憲の実質的な先取りをすすめる自民・みんな・維新ブロックを粉砕しよう。民衆の怒りを結集し、安倍超反動政権を打倒しよう。
秘密保護法案の問題点
●秘密の範囲があいまい
具体的に何が秘密にあたるのかが条文からはわからない。「安全保障に関する情報」という漠然とした表現で、いくらでも範囲も拡大できる。
●「知る権利」の侵害
最長懲役10年の厳罰で、公務員が萎縮して情報提供をしなくなり、報道の自由も制約される
●市民に対する監視の強化
「情報漏出防止」の名目で、警察による市民運動・住民運動に対する家宅捜索・逮捕、市民への日常的監視が強化される
●秘密指定の期間が60年
「原則30年」から修正法案で2倍の60年まで期間が延長された
大阪市がれき説明会弾圧
2名に不当判決
11月28日、「(2012年)11・13大阪市がれき説明会」における不当弾圧の裁判で、大阪地裁第9刑事部・長井秀典裁判長は、ぱぉんさんとUさんに「懲役8カ月、執行猶予2年」の不当な有罪判決を出した。未決算入は、ぱぉんさん50日、Uさん140日。ぱぉんさんは、即日控訴した。〔4面に関連記事〕
2面
朝鮮半島を包囲するレーダー網
経ヶ岬 Xバンドレーダー設置のねらい
Xバンドレーダーの探知範囲 |
突然の基地建設決定
京都府京丹後市の航空自衛隊経ケ岬分屯基地に米軍のXバンドレーダーAN/TPY―2〔注1〕が配備されることが報道されたのは今年2月の下旬のことであった。
この唐突な報道発表の直後、3月12日に京丹後市で住民説明会が開かれ、先行配備された車力分屯基地(青森県)より多い約160人が駐在する正式な米軍基地となり、米軍の特権的な地位を保障する日米地位協定の対象となることが判明したのである。
米軍兵士や民間軍事会社の傭兵が基地の外にも住むことになることにたいする住民の不安を、3月18日付の京都新聞は次のように伝えていた。
「自衛隊基地の西3キロの集落に住み、3人の小学生の父親(37)は『沖縄の事例もあり、米軍が来るのは心配だ』と表情を曇らせ、基地近くの男性会社員(55)も『この田舎に160人も家族連れで来たら、静かな町が変わってしまう。配備ありきで話が進むのはおかしい』と憤っている。(3/18『京都新聞』)
安全・安心を無視
こうした住民の不安の声にまともに応えることなく、9月19日に中山・京丹後市長と山田・京都府知事は防衛省に対して「協力表明(受け入れ表明)」をおこなった。「受け入れ」の理由としてあげられたのが、「9月10日に防衛省が『住民の安全安心の確保』を約束した」ということであった。しかし、その後、建設予定地の宇川(うかわ)地区に対して市側から何の説明もおこなわれていない。その一方で予定地の地権者に対して破格の賃貸料を提示して土地取得を進めている。
このような住民の不安を無視し、その安全をないがしろにして建設を進めようとしている防衛省や市のやり方に地元の人びとから怒りの声があがっている。
怒りの声あがる
〈米軍基地建設を憂う宇川有志の会〉は、11月に京丹後市全戸2万2千世帯に配布したビラの中で次のように訴えている。
「皆さん、米軍基地建設は『もう決まってしまった!』ということでは決してありません。宇川現地でその話自体がいま始まったばかりなのです。繰り返しますが、土地がどうとかいう前に、現地住民の安全安心をどう確保するのかということがはっきりさせなければなりません。そして、述べたような基地そのものへの疑問も解決されなければなりません。それが国や府や市の約束なのです」
海上から見た空自経ヶ岬分屯基地(今年9月撮影) |
先制攻撃の準備
経ヶ岬分屯基地には、すでに自衛隊のJ/FPS―3Aレーダー〔注2〕が設置されているが、さらに米軍のAN/TPY―2レーダーが配備されることの意味を考える必要がある。
アメリカは在沖縄海兵隊の基地群を整理し、ハワイ、グアム、ダーウィン(豪州)、フィリピンでのローテーション配備に切り替え、対中国・朝鮮民主主義人民共和国包囲網を再構成している。
「経ケ岬分屯基地は、北朝鮮がグアム方面に弾道ミサイルを発射した場合の探知・追尾に適している」(『産経新聞』)と報じているように、車力分屯基地や経ヶ岬のXバンドレーダー、自衛隊のレーダー網(全国28カ所)でキャッチした情報に基づいて、グアムなどの米軍基地へ向かうミサイルを日本周辺海域に配備されている米軍艦船や自衛隊が迎撃するシステムである。
これは日本の防衛が目的ではなく、朝鮮半島に対して先制的な攻撃を準備している日米軍事同盟下の情報戦の強化のためである。
建設予定地の宇川地区住民の訴えに応え、米軍Xバンドレーダー基地建設を阻止する闘いに立ち上がろう。12月15日、京丹後市役所包囲闘争を成功させよう。
〔詳細は6面闘争案内〕
〔注1〕Xバンドレーダー 波長2・5〜3・75pの電波を用いるレーダーの総称であるが、ここでは、米軍のミサイル防衛用早期警戒レーダーを指す。車載移動式(AN/TPY―2レーダー)の探知距離は1000qで、海上移動式(SBXレーダー)の探知距離は4000kmである。複数の弾頭やおとりを識別することができる。波長が短いために大気による減衰が大きく、遠方に到達させるには大出力が必要となり、周辺環境への影響を懸念する声もある。
日本では、2006年6月に青森県の航空自衛隊車力分屯基地に、地上配備型の移動式Xバンドレーダー(AN/TPY―2レーダー)が配備された。
〔注2〕J/FPS―3Aレーダー
1998年の北朝鮮人工衛星問題を口実にして、防衛省はJ/FPS―3レーダーに超遠距離目標探知能力機能を加えた。さらに2009年に輪島、経ヶ岬など7カ所のJ/FPS―3レーダーを弾道ミサイルを追尾できるようにJ/FPS―3Aレーダーに改修した。
さらに、J/FPS―5レーダー(防空用の固定式警戒管制レーダー装置)を開発し、航空自衛隊のレーダーサイトで運用されている(下甑島分屯基地、佐渡分屯基地、大湊分屯基地、与座岳分屯基地)。これは航空機や巡航ミサイルのみならず、弾道ミサイルの探知と追跡を目的としたレーダーである。高さ約34mの六角柱の建物の3つの側壁にそれぞれ巨大なレーダー面がある。
3面ある内の中央面には、直径約18mの覆いの下にL・Sバンドのレーダーが設置されており、これが航空機と弾道ミサイルに対処する主警戒面である。残りの2面には、直径約12mの覆いの下にLバンドのレーダーがあり、航空機に対処する警戒面となっている。建物全体が回転できるため、必要に応じて高脅威方向へ指向できる。
2011年度までに4基が配備されたが、1基当たり約180億円、大型であることから、取得費用のみならず設置に向けての土木工事にも費用がかかるため、4基で調達を終了した。(田端登美雄)
京都に米軍基地はいらない
三条河原で集会・デモ
11月23日、「緊急京都府民の会・南部連絡会」の呼びかけで、「沖縄にも京都にも米軍基地はいらない! ]バンドレーダー基地建設反対! 街頭署名&デモ」をおこなった。午後3時から、三条河原町で、街頭署名をおこない、30人近くが参加〔写真〕。署名は高校生から年配の人まで、また北海道から沖縄の人まで幅広く集まった。
その後、三条河川敷で集会。南部連絡会共同代表の瀧川さんと白井さんが発言。この間、京都府や防衛局に申し入れをおこなっても、何も説明しないこと等が報告された。また、「待ちなはれ 京都にも米軍基地はいりまへん!」の小笠原さんが発言。集会後、デモに出発。50人が四条河原町から仏光寺公園まで、土曜の夜の河原町通りをシュプレヒコールを上げながら行進し、多くの市民の注目を集めた。(T)
秘密保護法の成立許すな
広がる関西の反対運動
11月12日におこなわれた大阪弁護士会よびかけの昼休みデモをはじめ、関西各地で「秘密保護法を廃案へ!」の行動が取り組まれている。
地方議員172人が反対
兵庫県阪神地域では、6市1町で20人の地方議員が党派を超え反対を表明し(11月16日)、24日の兵庫県川西市での緊急学習会をよびかけた。この声明は、大阪はじめ各地の議員に広がり、19日には172名の地方議員(議員・元議員)の声明となり拡大している。
また地方議会で「秘密保護法反対」の決議、意見書が取り組まれている。この党派を超えて広がった自治体議員の動きと連携し、廃案への行動を強めていこう。
21日は全国で一斉の行動が行われたが、大阪では弁護士会館に450人が参加し、反対集会が開かれた。弁護士会のアピールとともに、マスコミや市民団体もアピールをおこない、反対運動を強めることを誓った。
座り込み、シール投票
神戸では三ノ宮駅前で19日から連日廃案を求める座り込み・アピール行動が、「ひょうご憲法集会実行委員会」のよびかけでおこなわれた。
秘密保護法の賛否を巡ってのシール投票も、関西各地でおこなわれている。当初は「よくわからない」が多数で関心が低かったが(11月3日 大阪梅田歩道橋など)、日を追うにつれて関心が高まり、19日の「西宮ピースネット」の集計発表では、反対66%、わからない26%となり、反対と拙速審議反対が多数に。
23日は、大阪市内で「秘密保護法を廃案へ」のデモ行進。服部良一前衆議院議員などを先頭に、450人が参加。
危機感を行動へ
阪神6市1町の20名の地方議員(民主・社民・新社・無所属)の呼びかけで、24日、川西市で市民集会が開かれた。議員・市民120人が参加。
講師は太田健義弁護士(日弁連秘密保護法制対策本部事務局次長)。太田さんは、秘密保護法案の不備をあらゆる角度から解説し、残された日々を全力を尽くして闘おうとアピール。
参加の市民からは次々と質問・意見が発せられ、「危機感を行動へ移そう」と確認した。呼びかけの議員や呼びかけ外や元議員もふくめ20名近くの議員・元議員も参加。この日の集会決議に自分の名前や団体名を記入して特別委員会の国会議員に電話・FAXで抗議することを確認。衆議院で採決されても参議院・会期末まで全力で闘おうと誓いあった。(O)
3面
金稔万(キム・インマン)さん本名損害賠償 控訴棄却
通名強制認める不当判決
判決後、取材に応じる金稔万さん(左) |
11月26日、〈金稔万さん本名(民族名)損害賠償裁判〉で大阪高裁は、「控訴棄却」の不当判決をくだした。
「害意がなければ不法ではない」?
この裁判は、在日朝鮮人である金稔万さんが、職場で通名(日本名)を強制されたことに対して、2010年5月24日、日本政府と大林組とその下請けの三者を被告として、損害賠償を求めたもので、「イルム(名前)裁判」とも呼ばれ、「通名」使用問題の本質を問うたたかいである。
大阪地裁での一審判決(今年1月30日)は、金稔万さんにたいして「証言はたやすく信用できない」などと金稔万さんを嘘つきよばわりし、「通名の強制はなかった」と請求を棄却した。
この日の控訴審判決では、一審と異なり、事実認定において、金稔万さんが通名を強制されたことを認めた。しかし通名を「害意を持って使用しない限り、特別の不法性はない」、「すみやかな就業を意図してやったことだから問題ない」、「配慮に欠けた行為であるが、害意をもった行為ではない」と、控訴棄却した。在日人民が、本名を名乗ることが、どれほどの困難を強いられているのかという実態を無視し、通名強制があっても、「害意」がなければ不法ではないから、受忍せよというのだ。
創氏改名
この判決は、日本帝国主義による朝鮮人民に対する「創氏改名」以来の歴史を開き直った反動判決で認めがたい。(注:創氏改名は、アイヌ、沖縄人民にたいしてもおこなわれた。)「創氏改名」は日本の敗戦で終わったのではなく、戦後も「創氏改名」は実態として残った。それは、日本社会の根強い民族差別が、在日朝鮮人民に「通名」を使用せざるをえない状況を強いたうえに、さらに、日本政府が外国人登録の氏名欄に、本名と「通名」を併記することを認め、公的書類にも「通名」使用を承認し、誘導したからである。
「在日は名前で支配されている」
判決後の記者会見で金稔万さんは「在日韓国人が、この社会で本名を名乗ることが、どれほどむずかしいことか痛感した」と語り、無念さをにじませつつ、日本社会の病巣を告発した。
場所を移しておこなわれた報告集会で、在日の方々から、「日本社会が(在日人民に)通名を名乗れ、隠れて生きろと言うのと同じ」、「判決は、稔万さんの気持ちを何も反映していない」、「在日は名前(通名強制など)で支配されている。この国には、植民地主義の犠牲者が100万から200万人住んでいる。自分はとことん闘う」と、怒りの声が次々とあがった。
《HPの紹介》
「イルムから―当たり前に本名が名乗れる社会を求めて」
http://irum-kara.jimdo.com/
今度こそ再審実現を
10・27狭山全国集会に参加して
石川さんの再審実現を誓う(10月27日 都内) |
寺尾判決(74年10月31日、東京高裁)39カ年を期して10月27日、部落解放同盟全国連合会主催による狭山全国集会が東京・銀座で開かれた〔写真〕。
新証拠の手ぬぐい
井橋中央執行委員から、第三次再審請求の現況が報告された。このかん証拠開示され、弁護団により新証拠として提出された証拠の中でも特に重要なものは2点。
1点目は、「手ぬぐいについての捜査書類」。被害者の死体と共に発見された手ぬぐいは、狭山市内の米穀店が得意先に配布した165本のうちの1本であることがわかっている。そのうち、158本が警察によって押収または確認されている。警察は事件発生から5日後の5月6日に石川さん宅で手ぬぐいを確認し、5月11日に押収している。つまり、石川さんの家に配布された手ぬぐいは、事件に使われたものではない。つまり、石川さんは犯人ではない。
ところが、検察は「5月6日のTBSニュースで、警察が手ぬぐいの線を追っていると報道されたため、偽装工作のため、あわてて親類の石川仙吉さん宅または隣家から手ぬぐいを入手し、警察に示した」と主張。確定判決は、「そのように推測される」として有罪の根拠とした。このたび明らかにされた捜査書類では、石川仙吉さんの家に配られた手ぬぐいは2本とされ、1本が押収されたことになっている。しかし、弁護団はこの書類を鑑定し、「1本」が「2本」に改竄されていることを明らかにした。
また、隣家は警察に対して「手ぬぐいはもらっていない」と回答したことも明らかになった。さらに、5月6日のTBSが開示した記録から、ニュースの放映時間は、警察による石川さん宅での手ぬぐい確認のわずか17分前であることも明らかとなった。「偽装工作」など、どこからどう見ても不可能なのだ。
事実調べが一切
開示されたもう一点は、被害者、被害者の友人、被害者が立ち寄ったとされる郵便局の3つのインク壺である。
石川さん宅から3度目の家宅捜索で発見された万年筆と、被害者の万年筆とでは、インクの色が違っている。これを確定判決は、「被害者が友人または郵便局でインクを入れ替えた可能性も否定できない」と、これまた推測で退けている。しかし、このたび開示されたインク壺のインクと、石川さん宅から発見された万年筆のインク、さらには「石川さんが被害者から奪って脅迫状を訂正した」とされるインクを精査鑑定すれば、そのような推測の是非が明らかになる。一切は、裁判官が事実調べに踏み切るかどうかにかかっている。
井橋中執は「今度こそ勝てる」と確信を持って闘うことをよびかけた。
再審開始へ全力を
集会では、同和・改良住宅の家賃値上げに反対する供託者に対する住宅明け渡し強制執行に直面して闘う奈良市と兵庫県西宮市の人々からの報告があった。「芦原(西宮市芦原地区)に灯った解放運動の火を守り抜きたい」等の発言に万雷の拍手。会場から、目前に迫る奈良市西之阪地区での強制執行に対して、「全国結集で闘う決議を」との発言があり、決議があげられた。
集会翌日の10月28日におこなわれたという第15回三者協議では、裁判長は言葉少なく、事実調べの開始の決定も、新たな証拠開示勧告もおこなわなかったという。天秤は未だ国家権力の側に傾いていると言わざるをえない。決定までのあと数カ月、裁判所に対して、すべての人々の声と力を結集することが求められている。石川さんと連帯し、全力で闘おう。(J)
「君が代」処分撤回へ提訴
“不起立”で減給は人権侵害
今年3月の卒業式において「君が代」不起立したことを理由に、減給処分(10分の1、1カ月)を受けた、府立支援学校の奥野泰孝さんが処分撤回をもとめ提訴。その裁判が始まった。
11月6日、大阪地裁で第1回口頭弁論がひらかれた。平日の午前にもかかわらず、傍聴者が60人も集まり、法廷に入れない人が廊下にあふれ出た。
意見陳述で奥野さんは、キリスト者として不起立せざるを得なかった想い、卒業式に至る状況を詳しく述べた。そして、処分の根拠とされている大阪府の国旗国歌強制条例、それに基づく教育長の通達、管理職の職務命令は憲法違反であると指弾した。最後に、奥野さんへの処分は、府教委が人権を侵害し、「思想・良心の自由」を侵害し、「信教の自由」を侵害し、憲法26条の「学習権」をも侵害することになると訴えた。
次回口頭弁論は12月16日、午後4時から。
「公妨・器物損壊」の事実なし
関電前弾圧 松田さん裁判
昨年10月5日、関電本店前でのAさんの不当逮捕に関連して、同年11月16日、令状逮捕された松田さんの裁判の第3回公判と第4回公判が開かれた。この弾圧は、「10・5関電前弾圧」でAさんが理由もなく逮捕されたことに松田さんが抗議したことを「公務執行妨害」、抗議の最中にAさんを連行しようとしたワゴン車の着脱式のアンダーミラーがはずれたことを「器物損壊」とした、まったくのデッチあげである。
すでにAさんには一審で無罪判決が出ており、松田さんの抗議が正当な行為であったことは証明されている。
●第3回公判(11月11日)
検察側証人である2人の警察官(城戸利雄、影山正樹)に対する証人尋問。両警官は、昨年の関電前10・5弾圧で、Aさんを逮捕した当事者。
検察はこの証人尋問を通して、再び「Aさん有罪」の論陣を張った。
●第4回公判(11月25日)
この日は検察側証人である影山警部に対する弁護側からの反対尋問が2時間近くおこなわれた。 尋問のポイントは、弾圧があった当日の関電前での警備体制、「第1現場」「第2現場」で影山証人が見たこと・聞いたこと、誰がAさんを逮捕したのか、松田さんの行動について、影山証人の、いわゆる「負傷」についてなど。
最後に永嶋弁護士から「あなたは、捜査段階での供述、Aさん裁判での証言、本裁判での証言、この全証言で同じことを述べていますか?」と問いかけ、影山証人は、「はい、同じことを述べています」と断言した。
●次回公判
第5回公判は12月9日、午後2時。第6回公判は12月16日、午後3時。大阪地裁1004号法廷。
4面
沖縄独立論の系譜
〜作家・与那原恵を読み解く〜
琉球王朝の「幻想」
『美麗島まで ─ 沖縄、台湾 家族をめぐる物語』(2010年発行)の中で、著者・与那原恵は沖縄人(琉球人)が琉球王朝を美化する傾向に対して釘を刺している。
「離島の民謡には、琉球王国時代の王府の税の取り立ての厳しさや、首里からやってきた士族の横暴ぶりがうたわれているものが少なくない。琉球王国時代、離島の島民は15歳から50歳まで人頭税という税を払わなければならず、その税負担は『八公二民』といわれ、収入の8割を税として徴収されたというほど過酷だった。女性たちも貢納のための機織りに、1日の大半を費やしたという」「私の友人に白保(石垣島)出身の若き民謡の歌い手がいる。彼の現在の活動拠点は那覇だが、どんなに頼まれても、島民を苦しめた権力機構の象徴である首里城で歌うイベントには参加しないと決めている」と、冷静に見ている。
そして、沖縄と台湾の関係も、著者は割り引かずに見据えている。日本の沖縄差別政策の過程で、沖縄の人々が台湾に渡り、台湾統治の片棒を担がされていたことについても、著者は苦々しく書いている。
さらに、「なぜ台湾の人々が石垣にやってきたのでしょう」と自問し、台湾総督府(日本政府)が台湾の砂糖産業やパイナップル栽培を育成するために、大手資本が台湾の農民から農地を買い占め、土地を奪われた台湾農民が行き場を失って、沖縄・八重山地方に渡ってきたと答えている。
分離・独立のたたかい
赤嶺新助はスパイ容疑で台湾刑務所に収監され、その後「中国帰化」、「琉球独立」を掲げて「琉球青年同志会」を結成したこと、敗戦直後の与那国島では台湾帰属論が盛り上がっていて、「終戦後の社会混乱や生活の低迷により、島は無政府状態に陥っており、見通しがつかない状態だ。与那国としては、これを立て直すには、戦前から経済、漁業活動が同一圏内にあった台湾に早急に帰属し、民心を安定させ、経済を復活させたい。よって、台湾への帰属を陳情する」という請願書を台湾に出そうとしたが、米軍に阻止されたことについて書いている。
沖縄本島でも、沖縄独立を真摯に語り合っていた「沖縄民主同盟」が活動していた。このように、戦後の沖縄は米軍支配のもとであえぎながら、日本からの離脱を模索する人々が数多くいたのだ。
沖縄に犠牲と矛盾を差別的に集中させる日本(アメリカ)に対して、沖縄には分離独立の自由はあるし、私たち(本土)がその要求に立ちはだかることは許されない。本土に住む日本人(私)は沖縄と日本の関係をあまりにも知らなさすぎ、沖縄の歴史(沖縄独立論)について、過去に遡って学ぶ必要があると感じた。
失われた沖縄
『首里城への坂道』(2013年発行)の副題は「鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像」である。近代沖縄を生きた人々を通して、近現代の沖縄の姿が描かれる。鎌倉芳太郎以外に末吉麦門冬、伊波普猷、伊東忠太など沖縄に関係する数十人が登場する。
鎌倉芳太郎は1898年に香川県で生まれ、東京美術学校図画師範科を卒業した後、沖縄で教職に就きながら、沖縄の美術工芸を調査・研究した。1944年東京美術学校を退職し、60代から染織家として活動を始め、首里城再建などに尽力した。著書に『沖縄文化の遺宝』『古琉球型紙』『鎌倉芳太郎 型絵染』『琉球の織物』『東洋の彫刻 復刻版』などがある。
『首里城への坂道』を読む前に、鎌倉芳太郎の『沖縄文化の遺宝・写真』を開くのがよいだろう。最初のページが1920年代のわら屋根の家々の写真で、御後絵(おごえ)(琉球国王の肖像画)ではないというところが鎌倉芳太郎の感性なのだろう。ページをめくるごとに、今では実物を目にすることができなくなったさまざまな「遺宝」の姿がこれでもかこれでもかと、目に飛び込んでくる。
鎌倉芳太郎は81冊のフィールドノート、多数の古文書の筆写や複写、1236枚のガラス乾板、1269枚の紙焼き写真、紅型(びんがた)の型紙1114点、裂地627点を遺している。それらは「琉球処分」と沖縄戦によって失われた芸能、工芸文化を、かろうじて蛛の糸のように今日に伝えている。
著者与那原恵が鎌倉芳太郎を通して伝えたいことは近現代の沖縄のすべてである。日米戦争によって沖縄の文化や生活がことごとく破壊されても、その破壊された世界から復活を果たそうとしている沖縄の強固な意志を感じる。その反面、沖縄を踏みにじってきた戦前戦後の日本帝国主義の醜い姿が透けて見えてくるのである。
柳宗悦批判
著者は白樺派の柳宗悦を例にとって、日本人の沖縄への関わりを批判している。「柳は、染織品や古典舞踊、墳墓、また琉球言葉、琉球文学などに驚嘆するけれども、なかには柳が否定する『貴族的芸術』に属するものも少なくない。彼らは尚順にも会っているのだから、そのことはよくわかったはずだ。柳は独立国であった琉球王国の歴史にはほとんどふれておらず、島津氏侵攻以降、幕藩体制に組み入れられたことも、暴力的であった『琉球処分』も語られることがない。工芸、芸能のみごとさを語るならば、王国の交易史、王府の工芸専門部署『貝摺奉行所』『踊奉行』についても記述すべきだが、書かれておらず、琉球王国の階級社会にふれることもなかった」と書いて、自らのスタンスを明らかにしている。
本書がおもしろいのは、このように階級的視点が定まっているからだ。もしも、この点を曖昧にして、沖縄の美術工芸のすばらしさとその復活に尽力した日本人を語るとすれば、台湾嘉南大シュウ[土へんに川](かなんたいしゅう)建設に関わった八田与一の評伝と似たような日帝賛美の作品になったことであろう。
著者は「琉球処分」後の日本の統治と戦争政策こそが沖縄の美術工芸を灰燼に帰し、9万4千人もの住民の犠牲(1950年沖縄県援護課調査)をもたらしたことを心底から怒る。52年サンフランシスコ講和条約後も沖縄の軍政が続き、72年に本土に復帰しても、米軍は「復帰後も米軍基地機能は不変」とし、米軍基地は撤去されず、核持ち込みも解決されなかった。
その結果、95年には少女暴行事件が起きた。著者の気持ちは被害少女と8万5千人の怒りと同じところに立っている。本土の労働者市民の関わり方が問われている。(石川俊二)
11・13大阪市がれき説明会弾圧
正当な抗議 有罪に
判決後の報告会(右上建物が大阪地裁) |
今回の判決は、今年2月から9月まで、大阪市(その背後に環境省、大阪府)が強行した放射能汚染がれきの焼却(これ自身が殺人未遂・傷害に匹敵)を不問に付し、抗議した市民を一方的に犯罪者扱いするという国策裁判=判決である。
大阪地裁は、この日、傍聴券の抽選をめぐって、当選したにもかかわらず特定の人物に傍聴券を交付しないといういやがらせをおこなった。さらに、法廷内では、判決に抗議した傍聴者1人に対し、裁判長が退廷命令。廷吏が傍聴人の両手両足をかかえて、法廷外に連れ出すという暴挙をはたらいた。
裁判は20分で終わったが、閉廷後も抗議の声はやまず、法廷内で裁判長への抗議行動が続いた。その後、本館玄関前でも抗議のシュプレヒコールがおこなわれた。
残るひとりの「被告」である、韓基大さんは「大阪駅前街宣」弾圧の裁判と併合されているため、その裁判終了時に、併せて判決が出る。
再稼動やめろ1万人
さよなら原発! 九州沖縄集会
11月10日、九州電力玄海・川内両原発の再稼働に反対する「さよなら原発! 九州沖縄集会」が福岡市舞鶴公園(福岡城址)で開催された。韓国の反原発をたたかう代表も参加。
集会では、福島の原発事故で住民の平和な生活と安全が破壊され、汚染と生活破壊が進んでいることが明らかにされた。
またこの事故に対する責任を明確化せず、被災者に対する謝罪、賠償や原状回復を放置したままでの再稼働は許せないという激しい怒りが表明された。
原発ゼロ(全基停止)の今こそ原発のない新しい生き方と新しい社会をめざして一歩を踏み出す絶好のチャンスである。集会の発言の中では原発(核)や放射能のない未来を子どもや孫に残そうという積極的な提言がおこなわれた。(福岡 K)
福島原発告訴団
検察審査会に申立て
委任状 5千通超える
11月22日、福島原発告訴団は東京地検の不起訴処分を不服として、東京の検察審査会に第2次の申立てをおこなった。
当日の昼過ぎ、東京地裁前で集会を開催し約200人が参加した〔写真〕。その後、5737通の委任状を添えた申立を受理させた。
日比谷コンベンションホールでの報告集会には250人が参加。
集会では海渡弁護士が「情と論理で委員の心を動かそう」とアピール。また河合弘之弁護士は、話題になっている小泉元首相の「脱原発発言」にふれて「内容は甘いが、あれで自民党支持者の中から反原発に移行する人も出る」と指摘。
保田行雄弁護士は、「水俣は有罪になった。今回がダメでも再告訴などさまざまな手段がある。今後は集団的放射線障害も出る。汚染水問題と両輪で進めていく」と話した。
5面
年金を襲うアベノミクス
政府・有識者会議が運用を提言
11月20日、政府の有識者会議(座長・伊藤隆敏東大大学院教授)はアベノミクスに使う公的資金として年金積立金を使うことを提言した。具体的には世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が所有する100兆円を超える年金積立金の運用の仕方を変更するというのである。
提言内容は以下のとおり。
@これまで国債中心に安全第一でやってきた国民年金、厚生年金の公的年金積立金などの運用を利益率が大きい不動産、未公開株、外資、さらには商品先物等にもシフトする
Aリスクの大きい投資にも踏み込めるように現行GPIFの組織改革をおこなう
というものである。
この提言を受けて甘利経済再生相は「提言に基づいて関係各省庁、政府一体で実現に向けて取り組む」と述べた。
年金をバクチに
アベノミクスに使おうとしているのは国民年金、厚生年金の積立金だけではない。表@にあるように国家公務員、地方公務員、私学教職員の年金もその対象になっている。さらに多数の独立行政法人、大学法人の資産も合わせると200兆円を超える資産となる。アベノミクスはこれを使うというのである。
資産運用の変更はGPIF始まって以来である。利益率が大きいということは当然リスクも大きい。安全第一を無視して不動産、外資、商品先物にも投資するというのは国がバクチに手を出すということである。こんなバクチにわれわれの大切な年金財政を使われてたまるか。
アベノミクスの危機
今、日銀は「2%の物価(上昇率)目標」を達成するためと称して巨額の資金を投入して国債を買い続けている。その規模と速度は異常である。白川日銀総裁時代の2012年には概ね60%台だった日銀資産における国債の比率はアベノミクスの「異次元緩和」によって直近11月20日時点で82・1%、さらに長期国債の比率は50%台前半から62・5%に大幅に上昇している。
エコノミストの浜矩子氏等が指摘するように、今、日銀が国債購入をやめると、日銀の大規模な国債購入で抑制されている長期金利に上昇圧力がかかり、国債は下落する。年金積立金等の資産の約6割は国債である。1%の下落でも1兆円を超える大穴があいてしまう。ましてや国債暴落となれば年金財政は吹っ飛んでしまう。
11月20日の日経新聞によれば、厚労省幹部は「国民の年金資産で大損したら誰が責任をとるのか」と反対しているとのことであるが、裏でうごめく国際金融資本(後述)はより悪質であり、アベノミクスによる国債下落の危機を逆手にとり、年金積立金を管理するGPIFがバクチに手を出さざるをえないように追い込み、巨額の運用資金を手に入れようとしているのである。
物価連動国債の発行
時事通信は10月18日、財務省が”物価連動国債”の発行を5年ぶりに再開することを決定したと報道した。物価連動国債はリーマン・ショックのときに臨時の措置として発行されたことは殆ど知られていない。
リーマン・ショック時、元本割れを警戒して投資家の国債購入が激減したため、国債への投資促進を目的として臨時に発行したのが物価連動国債である。これは国債価値が下落し元本割れしても、国が元本を増額して、受け取る利益を投資家に保障するものである。
これは、国債下落の危機がヒタヒタと押し寄せてきている今、機関投資家=国際金融資本に対して、万一、元本割れしても受け取る利益は日本政府の責任で元本を増額してでも保障することを表明したということだ。国際金融資本にとってこれほど“おいしい話”は他にはない。
GPIFの組織改編
提言のもう一つの柱はGPIFの組織改編である。独立行政法人であるGPIFは、形式は民間だが、実質は行政組織である。11月20日の日経新聞によれば、公的性格を持つ今のGPIFではリスクの大きい投資に踏み込めないため、理事長と別に業務執行に責任を持つ者を置き、組織運営と資金運用の責任を分けるということである。
もう一つは給与規定を変更するということである。有識者会議は、GPIFには金融取引の専門家がいないため”優秀な金融取引の専門家”を雇い入れることになるが、そのためには破格の高額給与が必要になる。しかし、独立行政法人の給与は公務員に準ずるため、通常ではありえない高額の給与も出せるように給与規定を改定するというのである。
実は、GPIFの組織改編はリーマン・ショックのときに今回と似た改革案が出されたが反対が多く棚上げになっていた。アベノミクスが危機的になっている今、安倍政権によって強行されることになったものである。
有識者会議
表Aにあるとおり、有識者会議のメンバーには大和総研チーフエコノミスト、野村総合研究所上席研究員、経団連経済法規委員会企画部会長などが入っているが、アメリカ最大の金融資本であるJPモルガン証券のチーフエコノミストまでがメンバーとして入っている。日本の年金積立金の運用を検討する場に何を目的にしてアメリカ最大の金融資本が入ってくるのか。GPIFの資産運用方針の変更は1%の変更でも1〜2兆円のカネが動き「国際金融市場に大きな影響を与えるため」(時事通信10月18日)、JPモルガン証券も正式メンバーに入れたということである。有識者会議の実態は経団連と日米の巨大金融資本によって構成されているといって過言ではない。
アベノミクスに怒りを
年金は今年から2年半かけて2・5%減額される。さらに来年中に実現させるという“2%の物価上昇”の中で賃金が上がらず、年金は下がる一方なら、働く者の生活は根底から破壊される。そのうえさらに、働く者の血と汗の結晶である年金積立金を食い物にされては老後の生活は破綻する。年金積立金までバクチに投入するアベノミクスの実態を知らせていかなければならない。責任を持つ者を置き、組織運営と資金運用の責任を分けるということである。
中曽根政権以来の26年に及ぶ累進課税の緩和によって億単位の資産を持つ富裕者が急増している。これらの富裕者は、年金積立金に大穴があいても少しも困らない。あいた大穴は結局税金で穴埋めされるが、それは消費税の増税となって貧しい者にはねかえってくる。生きるための闘いを創意工夫を凝らしてたちあがろう。(島本光一)
自然との共存めざし
バイオマス・小水力発電へ
原発なくても電気は足りている。原子力は人類と共存できない。自然エネルギー導入を阻んでいるのは何か。電気の浪費をやめ、子どもたちに明るい未来を残そうというコンセプトで、集会「自然と共存するエネルギーの町へ」が11月23日、大阪市内で開かれた。主催は、とめよう「もんじゅ」関西連絡会と脱原発政策実現ネットワーク関西・福井ブロック。
ストップ・ザ・もんじゅから「自然エネルギーの町ゆすはら報告」、関西広域小水力推進協議会から「もっと関西に小水力発電を」、NPO法人碧いびわ湖から「雨水や太陽熱発電利用のくらしを」、自然環境センターから「節電は大きな発電です」、森と暮らすどんぐりくらぶ代表の松下照幸さん(美浜町)から「バイオマスを中心とする原発立地での取り組み」、などが語られた。
世界、ドイツ、日本
休憩をはさんで、ラウパッハ・スミヤ・ヨークさん(立命館大学教授)が「脱原発ドイツの選択」と題して提起。
最後に「再生可能エネルギー 世界と日本」と題して飯田哲也さん(NPO法人環境エネルギー政策研究所所長)が発言した。原発がいらない9つの理由として、@仮に「次のフクシマ級事故」を起こしたら日本は終わり、A電気は足りている、B核のゴミ捨て場がない、C原発は他の電源よりも高い、D燃料費増に対し、節電・自然エネ・発送電分離が有効、Eエネルギー自給率には(ほとんど)貢献しない、F原発への追加投資は無駄、G新しい分散型エネルギー社会を加速、H新しい分散型エネルギーへの投資を拡大と語り、「去年の暮、全世界の風力・太陽光発電が、原発の発電量を追い抜いた」「原発のピークは世界規模では06年、日本国内では02年だった」「自然エネルギーの急速な拡大は人類史第4の革命。第1は農耕、第2は産業革命、第3は情報通信革命」「エネルギーの集中から、地域分散へ」と提起した。
6面
研究レポート
アフリカ社会の豊かさに学ぶ
堀内伸介・片岡貞治 著『アフリカの姿 過去・現在・未来』(エコハ出版2012年12月刊)
1.ヨーロッパによる差別
アフリカは面積が日本の80倍もある大陸である。アフリカは地中海沿岸の北アフリカ5カ国とサハラ砂漠以南のサブサハラアフリカに分けられる。前者はかつてのローマ帝国の一部で、地中海沿岸諸国圏に属しており、本書が対象とするアフリカはサブサハラアフリカをさす。
アフリカは人類発祥の地でありながら、多くの世界史年表では、アフリカにかんする記述はもっぱら地中海沿岸に限られており、サブサハラアフリカについては18世紀に至るまで記載がない。私自身、事実に何の疑問も抱いていたことはなかった。
日本では「部族」という呼称が無前提に使われているが、本来、アフリカにはこの用語はなかった。ヨーロッパ社会が「Tribe=部族=未開の人々」という意味で、差別的に呼称してきたという。このように「部族」という用語がヨーロッパによる人種的な偏見に基づくものであるため、本書ではこれに代えて、「民族」もしくは「民族グループ」が適当だとしている。
2.植民地以前のアフリカ
今回、私が最も注目したのは、植民地支配以前のアフリカである。その姿は文字で残されていないことから、詳細にはわかっていない。著者によれば、アフリカの前植民地時代における政治形態は、王制と無頭制(民族連合)の形を取っていたという。アフリカの人口の半分程度が王制の下で暮らしていたと推測されている。
絶対権力を持たない
植民地支配以前のアフリカの王制は、世襲の王と世襲の貴族・家臣による中央集権の制度であり、行政官を含めた会議が行政・司法・立法機能を習慣法、前例に従って実施していた。ガーナの森林地帯で17世紀から400年以上も継続していたアサンテ王国や、ルワンダ、ブルンジ王国などで長期にわたる非常に発達した階層化された王国が維持されていた。
王は権力を独占していたとはいえ、王族あるいは、貴族・家臣の家族の中から多くの支持を取りつけた者が王位、あるいは貴族・家臣の地位を継承し、また、その行政があまりにも横暴である時には、王位が奪われることもあった。王が絶対的な権力をもって民衆全員を統治していたわけではない。土地は民族、氏(クラン)等に属しており、王の介入は限られていた。一定のチェック・アンド・バランスが働いていたようである。
無頭制社会
植民地支配前のアフリカには現在の国境のような概念はなかった。王国の勢力範囲は、たえず変化しており、そのまわりには王国の勢力の及ばない広大な空間が存在していた。王国の勢力範囲外では、コミュニティを基礎にした緩やかな連合の下に、無頭制の政治システムが数百年にわたって、平和裏に機能していたと思われる。こうした「コミュニティに基礎を置いた政治システム」がどのように機能していたかは不明だが、現在も受け継がれている「伝統」から推測することはできる。それはコミュニティの内部に長老、成人男性、年代別のグループが存在し、それぞれのグループが独自の責任を有する機能があったと考えられる。
土地の使用、紛争の解決、犯罪の処罰等についても、コミュニティごとに多様なシステムが存在する多様化した無頭制であったようである。ただ一つだけ共通していたのは、年長者に対する敬意である。同年代のグループ内における水平的な人間関係を除けば、コミュニティ内の人間関係は年齢による垂直な関係であった。その影響は現在でも見ることができる。
植民地支配前のアフリカと現代のアフリカとでは、その社会生活は大きく様変わりしている。しかし、独立した個人の概念が薄く、垂直な人間関係が保たれていたかつてのアフリカのコミュニティとその中で生きていた人々の基本的な性向は、現代のアフリカ社会においても概ね変化していないようである。
無頭制社会においては、中央集権の行政組織も司法組織もなく、統治、徴税、権威による抑圧もなかった。無政府国家、秩序ある無政府、国家なき社会、統治者のいない民族というような表現が適切かもしれない。しかし、無頭制の下での連合の場合でも、伝統的な権利と義務、異なるグループ、性別による社会の中の役割、伝統的な倫理と価値、信仰、経済活動などが社会的均衡と秩序を保っていたといえるだろう。
3.新しい社会を照らす
アフリカの無頭制社会を破壊したのはヨーロッパによるアフリカ侵略であった。1884年のベルリン会議では資源、輸出市場の奪い合いによる国際紛争を防止するために、アフリカ諸国が参加しないまま、直線や河川によって国境を設定した。「国境」を越えたインフォーマルな経済活動・社会活動をおこなっていたアフリカ人の日常的生活を破壊し、アフリカの伝統的な統治システムを破壊し、アフリカの文化・尊厳・自尊心をも破壊した。
中央集権政体しか知らない現代の私たちにとって、強権を持たなかった無頭制のアフリカのシステムを理解するのは困難なことである。しかし資本主義社会が最も優れた社会だという「神話」が崩れ始めている。資本主義が原子爆弾や原子力発電所で人間ばかりではなく、地球上の生命体そのものの存在基盤を掘り崩しているからだ。
資本主義社会のシステムそのものを再考し、新しい社会を作り出さなければ、私たちに未来を語る資格はないであろう。だからこそ前植民地期のアフリカ社会の持っていた本質的な豊かさから学ぶ必要があるのではないだろうか。(富山雅夫)
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すべての『未来』読者のみなさん。支持者のみなさん。
私たちは今、安倍改憲政権の「戦争をできる国家づくり」との激しい攻防の真っ只中にあります。特定秘密保護法のあまりの性急さに、多くの人々が「現代の治安維持法」の再来を見てとり、安倍政権に対する危機感を強めています。
また原発が一基も稼働していない中で、フクシマを切り捨て、四国電力の伊方原発など、再稼働をねらう動きを絶対に阻止しなければなりません。この闘いはまさに正念場です。
さらに沖縄の米軍基地強化をめぐって、安倍政権は自民党沖縄県連を恫喝して普天間基地の「辺野古移設」同意を強制しています。辺野古新基地建設を阻止するために来年1月の名護市長選挙に稲嶺市長の当選を勝ちとらなければなりません。この選挙は安倍政権との決戦です。
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