監視と抑圧、独裁政治の道ひらく
秘密保護法を廃案へ
安倍政権は10月25日、「特定秘密保護法案」を閣議決定し衆院に提出した。衆院では「国家安全保障に関する特別委員会」が設置され、28日から、「国家安全保障会議設置法案」の審議がスタートした。
秘密保護法案について政府が実施したパブリックコメント(意見公募)では9万件を超える意見のうち、約8割が法案に反対していた。これを無視しての閣議決定だ。
秘密保護法案の最大の問題点は、「国家の安全保障」をかかげることによって政府による独裁政治を可能にし、「国民の基本的人権」が甚だしく侵害されることだ。法案によれば、閣僚や行政機関の長が「防衛・外交・(スパイ行為などの)特定有害活動・テロ活動防止など」にかんすることで「国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある」と判断すれば、特定秘密に指定することができることになる。政府が「都合が悪い」と判断した情報は何でも「特定秘密」に指定できる。自衛隊、原発そしてTPPにかんすることまですべて「秘密のベール」で覆い隠すことができる。
それだけではない。市民に対する「安全保障」を名目に情報収集・監視活動が制限なくおこなえるようになる。いま、メルケル独首相の携帯電話を盗聴していたとして世界を騒がせている米NSA(国家安全保障局)は1952年、秘密裏に設立され、ながく国家機密としてその存在が秘匿されてきた。現在NSAには3万人の職員がおり、世界中で盗聴活動をおこなっている。秘密保護法が成立すれば、日本でもこうした秘密の情報機関を設立することも可能になる。
自衛隊の独走も
奇しくも「国家安全保障会議」の事務局として内閣官房に設けられる「国家安全保障局」がNSAとまったく同じ名称なのは偶然ではあるまい。安倍政権が米国をモデルにしていることは明らかだ。いやむしろ米国が自国の情報収集システムの中に日本を組み込もうとしているといった方が正確であろう。
さらに重大なことは、これが「集団的自衛権の行使容認」と一体で進められていることである。秘密保護法が成立すれば、米軍と自衛隊が海外でおこなう共同作戦の内容は一切明らかにされなくなる。民衆が知らないうちに自衛隊が米軍と共に戦火を拡大していくという事態もありうるのだ。それを暴こうとすれば重罰が科せられる。こんな法案を断じて成立させてはならない。あらゆるところから反対の声を巻き起こそう。
原発ゼロへ、再稼働やめろ
東京・霞ヶ関に4万人が結集
10月13日
のべ4万人が参加した原発ゼロ☆統一行動 (10月13日 都内) |
10月13日、東京・日比谷公園と国会前で、原発ゼロ☆統一行動がおこなわれた。参加者は「のべ約4万人」(主催者発表)。主催は、首都圏反原発連合/さようなら原発1000万人アクション/原発をなくす全国連絡会。
午後1時から、日比谷公会堂で大江健三郎さんや肥田舜太郎さんなどの講演会。
2時からは、東電本店前や経産省前を通る抗議デモ。警察の規制により出発に2〜3時間もかかり、デモは予定時間を大幅にオーバーした。
5時からは、国会前大集会。正門前では約2時間の演説とコール。泊原発、柏崎刈羽原発、福井県、伊方原発、玄海原発、川内原発など全国原発現地からのアピールがあった。以下、主な発言を紹介する。
柳田真さん(再稼働阻止全国ネット)
「原発再稼働は日本を滅ぼす。 気象庁が『地震大国の日本は、これから震度8〜9の地震がある』と予言し、地震保険が15%値上がりした。震度7が阪神淡路だと考えると大変なこと。すべての原発が過酷事故で汚染水漏れを起こすが、汚染水対策はできない。北海道から九州まで全国の集会が2桁から3桁に増えている。原発現地の皆さんは『原発が止まり安心な暮らしができたが、後もう少しで(原発がまた)動いてしまう』と心配している。現地の人を応援し再稼働を止めよう」。
淵上太郎さん(経産省前テントひろば)
「規制委員は汚染水を国の基準よりも薄ければ海に流しても良いと言ったが、薄めても流れていく放射性物質の量は同じ。また、壁を作ると言うが壁の中が一杯になれば上からも下からも汚染水は流れ出る。テントを守り抜く」。
広瀬隆さん(作家)
「福島は500ガルの地震で壊れた。3年前の岩手・宮城の内陸地震は4千ガル。川内原発で避難訓練があったが、避難するときはそこはゴーストタウンだからもう終わりということだ。大熊町へ7月に行き放射線量を測ったら、住宅街のど真ん中で毎時320マイクロシーベルトあった。それは2年半で7シーベルトに達し致死量にあたるので、大熊町にいたら全員死んでいた。逃げたとしても、帰ってこられない。それが数十キロ続く。避難訓練をする国はもう終わり。さらに高レベル放射性廃棄物が出てくる。それを47都道府県のどこに捨てるのか」。
在韓被爆者の医療費裁判
大阪府に支給を命令
10月13日 大阪地裁
判決後の報告集会(10月24日 大阪市内) |
10月24日、在韓被爆者の医療費裁判の判決が大阪地裁であった。判決は、在韓被爆者である3名の原告に対して、大阪府が申請された医療費の支給をすることを命じる勝利判決であった。ただ、在韓被爆者が、被爆者援護法に基づく医療費支給を受けられずにきたことに国家賠償を求めたことは却下された。
40年超える法廷闘争
被爆者援護法の平等適用を求める在韓被爆者の闘いは、1970年代の孫振斗さんの闘いにより、在韓被爆者も日本に来れば被爆者健康手帳の交付申請ができるようになった。また、郭貴勲さんの闘いにより、2002年には、402号通達によって、日本を出国した人に健康管理手当に支給を打ち切ったのは違法であり、日本で得た被爆者援護法上の権利は日本以外の居住国に帰国後も継続することになった。
このように在外被爆者の権利は、個々の訴訟闘争によって少しずつ勝ち取られてきた。残る問題は、在外被爆者の医療費の支給に上限を定めていることだった。これを打ち破った意義は大きい。しかし日本政府は、この当たり前の権利を認めるのに、40年以上の訴訟の闘いを延々と強いてきた。今回の医療費裁判の原告3名のうち、2名は既に亡くなり、遺族が継承している。
「これは差別だ」
報告集会で、郭さんは、「勝利判決と言っても、自分の判決で勝利した時のように爽快ではない。これは差別です。日本政府による韓国人への差別です。違法な402号通達といい、医療費に上限を定めていることといい、差別そのものです。日本政府は在米被爆者に対して、在外被爆者に日本人同等の権利を認めたら、韓国から何万人も押し掛けて来る、などと言ったことはわかっている。許しがたい差別だ。」と怒りを露わにした。私たちは、この郭さんの言葉を受け止め、この在韓・在外被爆者の権利を勝ち取る闘いをさらに押し進めなければならない。
2面
憲法と人種差別を問う
京都で反戦・反差別共同行動
10月20日
「安倍政権の改憲攻撃に反対しよう」京都市の中心街をデモ行進(10月20日) |
「10・20 変えよう! 日本と世界 ―反戦・反貧困・反差別共同行動 in京都―」(主催:同実行委員会)が、京都市・円山野外音楽堂で開催された。雨の中、近畿各地から530人が集まった。
まず、さしせまった安倍政権との闘いに対して特別アピールがあった。服部良一さん(前・衆議院議員)は国家安全保障基本法を制定し、集団的自衛権の行使を可能とする安倍政権の動きに対して警鐘を乱打した。大湾宗則さん(京都沖縄県人会)は来年1月に名護市長選挙があること、沖縄の闘いが正念場を迎えていることを訴えた。
秘密保護法反対
山本太郎さん(参議院議員)が集会にかけつけ、特定秘密保護法の危険性をアピールした。山本さんは「安倍政権は今国会で通すと言っている。反対の声が強くなり、あせっている。あと一歩だ。市民の力で、秘密保護法を阻止しよう」と訴えた。
その後、2人の講演があった。「寄り添う、ということは」辛淑玉(シン・スゴ)さん(人材育成技術研究所・所長)、「改憲状況下の民衆闘争の課題」鵜飼哲さん(一橋大学教授)。
辛さんは、自分が受けた差別を語り、日本社会に生きる人々に自分が育てられた事を語った。そして、辛さんは次のように結んだ。「レイシズムをする側には、わたしの親戚がおり、わたしとおなじ在日朝鮮人がいる。」「私はその人たちに言いたい。あなたはまだ出会っていない。日本社会にはもっと豊かで、良心があふれている。その人々にあなたは出会っていない。信じていい、この(日本)社会には信じるにたりる豊かな人たちがいて、こういう人たちといっしょに差別はいやだという社会を作っていこう。」
天皇制とレイシズム
鵜飼さんの講演では、改憲阻止を闘うにあたって、いくつかの重要な指摘がなされた。鵜飼さんは「9条を守るという時、これまで日本は平和であったと思いがちだ。しかし、アジア太平洋戦争と朝鮮戦争をひとつながりと捉えた時、はたして東アジアは平和であったのか」と指摘。
その上で、「9条の前と後の問題が非常に重要だ」と述べ、「1条から8条は天皇の問題。天皇が戦争犯罪を逃れ、天皇制を生き延びさせるため、9条との交換が必要だった。天皇制こそ、この国がいつまでもよくならない元凶だ。」「10条の問題。旧植民地出身者、朝鮮人と台湾人を排除して、この憲法体制がつくられた。日本国憲法とレイシズムは無関係ではなかった。日本の戦後はここから出発した。だから、在特会が出てきた。」「憲法制定過程の暗い歴史を学び、直視し、その負の遺産を克服すること。すべての外国人がみんな尊厳をもって、この社会で平和に暮らせる、そのような社会を作ること。これが、平和憲法を残すことができる唯一の道だ。」
集会の最後に、米軍Xバンドレーダー建設(京丹後市)に反対する闘いのアピールがあった。地元で闘っている大槻正則さんと永井友昭さんが闘いの意義と現状を報告した。2人は「12月15日に、京丹後市内で米軍基地に反対する大きなイベントをおこなう。闘いはこれからだ。ともに闘おう」と訴えた。
集会後、四条通から河原町の繁華街をデモ。通り行く人々に安倍政権との闘いを訴えた。
原発のない社会めざそう
落合恵子さんが講演
滋賀
「福島を忘れない」落合恵子さんが訴えた (10月14日 大津市) |
10月14日、さいなら原発びわこネットワーク主催で、「落合恵子講演&ウォーク」がおこなわれた。落合さんの講演は「原発のない社会をめざして! 福島を忘れない!」と題し、大津市民会館で450人が参加。
90分にわたった落合さんの話は、参加者に元気を与えた。
「原発等の闘いのテーマは大変重い。だけど可能な限りカッコいい活動として訴えよう、若者が参加しやすいように。」「大事なものをアンダーコントロールできていないのに、出来ているとウソを言い放った首相。一方被災地では、自らの心をアンダーコントロールさせられている被災者・市民がいる。」「『年寄りは足手まといになるだけです。私はお墓に避難します』と自死した人がいる。」
人間をポイ捨て
「たばこのポイ捨てはやめようと言いながら、人間をポイ捨てする国。原発労働者は被ばく線量を超えたらポイ捨てされている。」「自国の民をおもてなしできない国に、どうして海外の人におもてなしができるのか。おもてなしとは、まず安全、そして人権だろう。」「絶望はいつだってできる。だから今は絶望するわけにはいかない。屈服しないために生きよう」と、闘いを継続することの大切さを訴えた。
「教育再生」に抗して
都内でふたつの教育集会
東京都教育委員会が「日の丸・君が代」を強制する「10・23通達」を出してから10年。これまでに450名が処分され、再雇用拒否等も70名に及んでいる。そのような中、10月、都内でふたつの教育集会が開かれた。
一つは、通達関連の裁判を闘う13団体主催の「憲法改悪を許さない! 学校に自由と人権を! 10・19集会」。漫画家の石坂啓さんと名古屋大学大学院教授の中嶋哲彦さんからの講演があった。
講演では、教育と権力をしばる憲法や教育基本法の本来的関係とそれを逆転させようとする動きや丸木美術館が「平和を連想させる」という理由で行事に採用されない学校現場、国連勧告を求めて活動してもあまりの異様さに外国からの理解を得るのが困難な状況であることなどが報告された。
教育現場の惨状
もう一つは、都教委包囲・首都圏ネット主催の「〜安倍「教育再生」と改憲に抗して〜もう黙ってはいられない!10・26集会」。中京大学教授の大内裕和さんの講演や教育現場からの報告がおこなわれた。
講演では安倍政権の「保守」とも呼べないほどの「極右」性や、自民党が目指す改憲草案の危険性が語られた。
報告では、処分としての「研修」の悪質さや無内容さ、都教委による「実教出版」教科書採用禁止攻撃、さらには生徒指導が管理抑圧に大きく舵を切ったことや防災訓練に名を借りた高校生の自衛隊への実質的仮入隊がおこなわれていることが明らかにされた。
口元チェックやめろ
大阪府に中止求め緊急集会
10月23日
「口元チェックやめろ」大阪府庁のまわりを抗議デモ (10月23日) |
大阪府の中原教育長は、9月4日、入学式や卒業式で教職員が実際に「君が代」を起立斉唱しているか、管理職に目視で確認し、結果を報告するよう求める通知を府立学校に出していた。
いわゆる「口元チェック」の中止を求める緊急集会が、10月23日、大阪城公園内で開かれた。
集会では、「日の丸・君が代」強制反対・不起立処分を撤回させる大阪ネットワーク代表の黒田伊彦さんが、「ナチス的強権支配に対して風穴を開けていこう」とあいさつ。以下のように問題を指摘した。
密告監視社会に
@「口元チェック」によって、生徒・保護者の視線が先生たちの口元にそそがれることになり、精神的苦痛を与える。最高裁判決も、「これはあってはならないこと」と言っている。
A事務長等が准校長・校長とともに目視するとなっているが、教育内容に関して事務方にはチェックや是正をおこなう権限はない。
B総合的現認というが、そこには密告も入る。教師間、教師―生徒間に不信感が生まれ、密告監視社会になる。
過去の裁判でも、「歌うという行為は一つの情感を伴う極めて積極的身体的行為であり、これを強制されることは内心の自由の侵害と考えられるため、『君が代』を斉唱しないという自由も尊重されるべき」という判決を勝ち取っている。
口元チェックは戦争政策を貫徹するために、反対する人をあぶり出す踏み絵だ。未来の子供に希望を渡していくために、不条理と闘っていこう。
維新の矛盾を突こう
次に、大阪ネット事務局から、「今日提出した2355筆の署名は、集会や街頭で集めたもの。もっと多くの人に持ち込もう。ほころび始めた維新政治の矛盾を突き、市民に訴えよう。11・15集会から全国へとつなげよう」と提起した。
さらにフリージャーナリストの西谷文和さんや「不起立」をたたかっている「座座(「君が代」不起立処分大阪府人事委員会不服申立当該11名)」のメンバーからそれぞれの思いが語られた。集会後、府庁周辺をデモ行進した。
3面
オスプレイ合同演習の全国化ゆるすな
国内初のオスプレイ合同演習
大雨の中、抗議闘争
滋賀県 あいば野
滋賀県高島市にある饗庭野演習場は、1886年、陸軍演習場として開設された。敗戦後一時期、アメリカ軍が接収したが、1966年に拡大されて陸上自衛隊の演習場となり、今津駐屯地が設置された。東西約9q、南北約4q、2475ヘクタールの広大な演習場だ。
2005年に市街地戦闘訓練施設を建設。隣接する航空自衛隊饗庭野分屯基地に、2009年、迎撃ミサイルPAC3が配備された。無人偵察機隊の設置も検討されている。
1986年に1回目の日米合同軍事演習が実施された。2011年以降は毎年実施され、今回で13回目である。
全国化・恒常化ねらう
自衛隊はその存在そのものが憲法違反である。歴代の自民党政権が「権利としてはあるが憲法解釈上認められない」としてきた「集団的自衛権の行使」を前提とする日米合同軍事演習は断じて認めることはできない。「専守防衛」という建前さえかなぐり捨てて、安倍政権が推し進める日米軍事一体化、憲法改悪を阻止するために声を上げ続けなければならない。
合同演習は10月8日から18日までおこなわれた。日米両軍の参加人数は少なかったが、欠陥機・オスプレイを使用した日本初の日米合同演習となった。これは「沖縄の負担軽減」を口実にして、恒常的・全国的にオスプレイを登場させることを目的にした演習である。
演習3日目の10月10日、9時20分、JR近江今津駅近くの公園で抗議集会が開かれた。大阪からマイクロバスで結集した仲間など50人が参加。9時40分にデモ行進開始。満身の怒りを込めた「日米軍事演習反対」「オスプレイ来るな」のシュプレヒコールが、朝の静かな今津町内に響きわたる。陸自今津駐屯地司令部に通じる道路近くまでデモ。駐屯地建屋のゲートで代表7名による防衛大臣あての抗議と演習中止の申し入れを読み上げ、副隊長に渡した。
台風をついて抗議デモ
オスプレイが来ると発表された10月16日、大型台風の影響による強風と大雨で電車は運行停止。オスプレイが駐機している岩国の仲間から、早朝より逐次状況が携帯電話に入る。8時40分過ぎ2機が飛び立ったとの連絡。その間も「抗議行動に参加したいが、電車が止まっている」という電話が何本も入る。
車で駆けつけた仲間30人が今津コミュニティセンターで抗議集会、前夜から泊まり込んでいた兵庫からの参加者の決意表明。地元今津町民の男性から発言。短時間の集会を終え、9時40分、報道各社の記者が取材する中、台風に負けじとデモ行進。解散地点では全員びしょ濡れ。代表6名も濡れながら副隊長に抗議文を読み上げ手渡す。
遅れてきた仲間とコミュニティホールで、Xバンドレーダー基地新設などの今後のたたかいについて交流し、12時に散会した。
(2013あいば野に平和を! 近畿ネットワーク 春野 秋)
台風で訓練中止に
地元住民は抗議つらぬく
高知県 土佐清水
10月25日、米軍岩国基地からオスプレイが飛び立ち、高知県の土佐清水市・香南市において、さらに土佐湾上のヘリ空母「いせ」を使い、駐屯地だけでなく、洋上のヘリ空母への着艦訓練も含む本格的な日米軍事演習がおこなわれようとしていた。しかし折からの台風襲来。「防災訓練」を名目としながら、自治体職員が台風の襲来に備えて警戒活動を始める中、最後まで中止を決めなかった。しかし、土佐湾に浮かぶヘリ空母「いせ」へのオスプレイの着艦訓練は、激しい高波によって不可能と考え、24日にやっと中止が発表された。
「防災対策」はウソ
今回の演習は「南海トラフの防災対策」と言っているが、その内容は米軍と自衛隊による本格的な軍事演習であった。香南市と土佐清水市に自衛隊の小規模な基地があるにすぎない高知県にオスプレイを飛来させ、波浪の激しい洋上のヘリ空母に着艦させるという実戦さながらの演習であった。この演習には四国各地の陸上自衛隊、呉の海上自衛隊所属「いせ」、航空自衛隊の土佐清水分屯基地と、陸・海・空の三軍が参加する訓練だった。
高知県議会は10月15日、「オスプレイの参加中止を求める意見書」を自民・公明の反対で否決。
オスプレイの訓練が予定されていた25日当日には、地元の自治体・経済団体などを動員し、過疎地に自衛隊が来ることが防災的にも経済的にも利益があるように描き出そうとした。また反対運動への規制も強めた。
これに対して、米軍機の早明浦(さめうら)ダム周辺での墜落事故などの被害を経験してきた県民は、香南市と土佐清水市で抗議行動を計画。滋賀県饗庭野では台風でも演習を強行(10月16日)したため、雨天決行で自動車パレードなど創意工夫をこらした抗議行動を計画。最後まで闘争態勢を崩さなかった。さらに、「防災」そっちのけで日米共同演習を強行する自衛隊当局にも抗議をおこなった。
合同演習の拡大許すな
オスプレイを使った演習は、神奈川など全国各地に拡大しようとしている。さらに京都府京丹後市には米軍のXバンドレーダー基地が建設されようとしている。小規模な自衛隊基地でも、最新鋭の兵器を使った日米合同軍事演習や米軍の新基地建設がおこなわれようとしている。
沖縄の闘いと連帯し、今こそ日米共同軍事演習反対・戦争国家化阻止、オスプレイはアメリカへ持って帰れ!の闘いを展開していこう。(高知 M)
米軍基地建設予定地
経ヶ岬(京都府・京丹後市)を訪ねて
地図 |
9月7日から8日にかけて、米軍のXバンドレーダー基地が建設されようとしている経ヶ岬の現地調査と交流会に参加した。主催は「緊急京都府民の会・南部連絡会」である。
異様な光景
まず衝撃的だったのは、二隻の遊漁船に分乗してうねる海から眺めた自衛隊の「 J /FPS3Aレーダー基地」とパラボラアンテナの様子だ。このレーダーは、09年に BMD(弾道弾対処)ができる型に改修されている。米軍の Xバンドレーダーと連結されるのだろう。
数千万年かかってできた美しい山陰海岸の景勝地にそびえる巨大な軍事施設は異様である。それと対照的に経ヶ岬灯台の優美な姿は、平和のシンボルのようだった。
また近くの500メートル弱の山頂には、白い巨大なレーダードームが2基設置されている。 これは 「J /FPS3Aレーダー」 の本体だ。海沿いの基地がそのバックアップシステムの機能を果たしているのだろう。
Xバンドレーダーは車載で移動できるので、米軍は別の山頂への設置を考えているかも知れない。 紹介された自衛隊基地内の敷地ではあまりにも狭すぎる。これではレーダーの立地条件を満たしていない気がした。
また今回示されたレーダーアンテナの設置場所は、自衛隊基地の真ん中である。自衛隊員や米軍関係者、そしてなによりも市民の安全を考慮していない。無謀な計画としか思えない。
基地建設予定地に隣接する九品寺(穴文殊)。 境内のすぐウラにXバンドレーダーが設置される |
米軍Xバンドレーダー基地の建設予定地 (写真は上下とも9月7日撮影) |
世界有数のBMD
空自経ヶ岬分屯基地へXバンドレーダーが設置されると、米軍の東アジアにおける核戦略体制の重要な一角にガッチリと位置付けられる。万が一戦争が勃発したら第一撃目の攻撃対象になる。
現代の戦争は、敵の情報・ 通信システムへの先制攻撃から始まる。現在自衛隊は、全国でBMDのレーダー基地を11カ所持つが、これと連動した米軍Xバンドレーダーが青森県の車力分屯基地に続いて、経ヶ岬分屯基地に配備され、さらに九州と沖縄へ配備の計画がある。これらが完成すれば海上の艦船搭載Xバンドレーダーと組み合わせて、世界でも有数のBMD体制が構築される。
これは明らかに対朝鮮民主主義人民共和国・対中国のBMD体制の完成を意味する。いま安倍政権が「集団的自衛権の行使」容認に向けて動いていることを考え合わせれば、戦争の危機は数十倍も増す。攻撃の照準が経ヶ岬分屯基地に当てられるということだ。Xバンドレーダーの配備には絶対に反対しなくてはならない。
レーダーの設置場所、米軍施設の建設場所(約5ヘクタール)、米軍及び軍属約160名の居住場所、米軍犯罪をどうするのか、大量の冷却水の確保、松林の伐採、隣接する穴文殊(地元の信仰の対象だ)、レーダー電波による漁獲量への影響など、問題は山積している。
京丹後市現地の反対運動を支えるためにも京都市など都市部での反対運動の役割は大きい。(大伴 一人)
4面
「裏切られた、撤回して」(2)
福島で支援法基本方針の説明会
請戸 耕一
基本方針案の説明会で発言する住民 (9月11日 福島市内) |
昨年6月に成立以降、長らく店晒しにされてきた「子ども・被災者支援法」について、その基本方針案が8月30日にようやく公表され、復興庁の主催する説明会が9月11日に福島市内で開かれた。平日の午後という日程の中で、福島県内の住民、福島から県外への避難者、さらに宮城、群馬、栃木などの住民ら約170人が参加。口々に「多くの人が支援法に期待していた。でも裏切られた。この基本方針は撤回して、作り直して下さい」という声があがった。
【V】支援法の理念を否定する基本方針案
国・復興庁の示した基本方針案の問題は、以下の点に要約される。
(一)線量基準を示さず
子ども・被災者支援法は、上でも触れたが、被災者を支援する際に、支援対象地域を指定するとしている。そして、その支援対象地域とは、「その地域における放射線量が政府による避難に係る指示が行われるべき基準を下回っているが一定の基準以上である地域」と規定している(法第8条)。したがって、放射線量についての「一定の基準」を別途定めることが求められている。
被災した住民は、放射線防護の法令が前提とする追加被ばく線量年間1ミリシーベルトを基準にした支援を求めている。ところが、国・復興庁の示した基本方針案は、同法の条文に反して、放射線量に基づく基準を示さなかった。
そして、支援対象地域を福島県の中通り・浜通りの33市町村に限定した。このために、福島県の会津や宮城県、栃木県、茨城県、千葉県などで放射線量の高い市町村があり、それらの自治体からも子ども・被災者支援法の適用を求める声があがっているにもかかわらず指定から外された。
(二)避難者の帰還促進
子ども・被災者支援法は、その基本理念で、放射線が健康に及ぼす危険を鑑み、被災地域に住み続ける選択も避難する選択も帰還する選択も等しく支援するとしている。
ところが、基本方針案で示された支援の中身は、その基本理念を事実上否定している。
まず、施策のほとんどが既存の施策を並べたものに過ぎない。例えば医療の確保や子どもの就学支援といったことが並んでいるが、これらの施策は、原発事故の被災地域でなくても必要な施策であり、子ども・被災者支援法の基本方針にあえて書き込むものではない。
避難者に対策なし
何より、居住・避難・帰還のいずれをも支援するという基本理念に反して、避難者に対する新規の施策は全くない。高速道路の無料化はすでに実施されている。しかも二重生活を強いられている母子避難者に限定されている。また、借り上げ住宅の供与期間を2015年3月まで延長する点も新規の施策ではない。しかも原発事故による避難の長期性からすれば、小刻みの延長は現実に即していない。
その一方で、避難者の帰還を促進する施策に重心が置かれている。たとえば、住宅支援では、福島県外への避難者にとって住宅支援は借り上げ住宅の供与期間の小刻みな延長だが、福島県内に帰還する場合、子育て定住支援賃貸住宅の整備の支援や公営住宅への入居の支援などと充実している。また、就業支援では、福島県外への避難者が福島県内に帰還を希望する場合、その就業支援がおこなわれるが、その逆の福島県外への避難者には、同等の支援がおこなわれるわけではない。
被ばく低減策なし
さらに、子どもに対する施策では、何よりも被ばく低減を柱にするべきだが、その点が全く曖昧になっている。運動機会の確保、自然体験活動、プレイリーダーの養成、大型遊具の設置などが並ぶ。もちろんこれらの施策も有用であろう。しかし、被ばく低減のためには、被災地域からの避難がベストであり、それが叶わないにしても一定の期間の定期的に被災地域外に移動・保養する必要があるという事柄が中心に貫かれていないために、被ばく低減のための施策になっていない。
幅広い疾病対策なし
健康にかんする施策では、福島県の県民健康管理調査を継続することが中心になっている。福島県の県民健康管理調査は、その目的ややり方について、被災者から強く批判されているものだ。施策のほとんどが、甲状腺ガン以外の健康被害はないという立場に貫かれており、被災者が求めている幅広い疾病の可能性に対する施策は全くない。また、福島県外での健康調査については、有識者会議を開催して検討というのが唯一の施策になっている。
放射能は安心?
加えて、その他の支援として、IAEA(国際原子力機関)と福島県の間で昨年末に締結された協力プロジェクトを実施するとある。核開発と原子力推進の国際機関であるIAEAは、原発事故に起因する生活破壊や健康被害を極力小さく見せることに努め、放射能と共存するような住民意識を育てる目的で福島県に常駐している。
また、その他の支援で、放射線影響に関するコールセンターを設置し、学校の副読本などの統一的資料を作成し、国民の理解促進をおこなうという。2011年10月に文科省が『放射線等に関する副読本』を作成しているが、それは、放射線の効用については詳細に記述しているが、その危険性や健康被害についてはほとんど触れていない。被ばくの影響は、ICRP(国際放射線防護委員会)の判断だけが正しいように取り扱っている。ほとんど根拠もなく放射能安心神話を刷り込むような内容だ。
IAEAとの連携といい、国民の理解促進といい、これらを被災者支援の施策として並べること自体がおかしい。
(三)被災者を無視
子ども・被災者支援法は、被災者の声を反映させるように定めており、住民らが意見を述べる場の設定を求めている。ところが国・復興庁は、公聴会を開催せず、福島と東京で2回の説明会と2週間のパブリック・コメント(その後10日間延長)だけで意見を聴取したとして、10月15日召集の臨時国会に間に合わせるために閣議決定を急いでいる(注:10月11日、閣議決定された)。
以上のように、被災地域の住民の訴え、全国の住民の声が子ども・被災者支援法を成立させたわけだが、国・復興庁の示した基本方針案は、それを否定し全く反対のものにしようとしている。
「がれき説明会」弾圧裁判が結審
“裁かれるべきは大阪市”
10月9日、「がれき説明会」弾圧裁判の第4回公判が開かれた。 この日裁判は結審となったが、前回とちがい大法廷で開かれた。支援者が大法廷に入りきれないほど集まり、満員の熱気で検察と裁判官を圧倒した。
検察が論告求刑
検察官は、およそ犯罪とはいえない行為や発言をあげつらい、ぱぉんさんとUさんに、それぞれ「懲役1年2カ月」を求刑した。
もうひとりの被告である韓さんへの求刑はなし。彼は、別の件「JR大阪駅前街宣弾圧」の裁判もあり、この「がれき説明会弾圧」裁判と併合されている。「JR大阪駅前街宣弾圧」裁判はまだ始まっていないが、韓(ハン)さんへの判決は、2つの裁判を合わせての判決となる。
弁護人が最終弁論(抜粋)
安全なものは安全だなどと言って、住民の声を聞くどころか、住民を暴力的に排除し、形だけの説明会を開催して、強引に試験焼却・本焼却を推し進めたのは行政の方。震災がれき処理に疑問を呈する住民を暴力的に排除し続け、試験焼却・本焼却を強引に実施し、今後、影響が出た場合に何の責任も取らない行政こそが非難されるべきではないでしょうか。
3名は、震災がれき処理に直結する試験焼却を止めようとする正当な行為をしただけです。裁かれるべきは行政で、3人ではありません。したがって、3人は当然に無罪である。
韓基大さん 最終意見陳述(抜粋)
大阪市の行った住民説明会の全ては、市民が震災がれきの安全性を考える場では無く、がれき焼却の為の手続きでしかなかった。私がこのような住民説明会を止めようとするのは正当行為である。
外形的事実が威力業務妨害になるのだとしても、住民の健康被害が予測されるがれき焼却であるのにも関わらず、安全性の有無を一切検討しないまま住民の不安・反対意見を黙殺して行われる説明会の開催が不正であることは疑いがない。
私たちは、ドア前でもみ合ったとか、パーティションを動かしただけのことで、既に不当な長期勾留を受けている。この事は、むしろ司法制度、勾留決定を出し続けた裁判所にこそ問題があり、私たちが裁かれる理由は無い。裁判所は私たちが無罪であることを認め、既に刑罰に等しい長期勾留をさせてしまった事実に対して深く反省しなければならない。
ぱぉんさん 最終意見陳述(抜粋)
声を発することも行動を起こすこともなく、ただただ国や行政のやることに従い、異を唱えたりなどせず、一方的に被ばくさせられても黙っている「ロボット人間」であることが「正しい市民の在り方だ」と認定されるのなら、私は生きている価値がないとすら思います。
そもそもの原発事故を引き起こした関係者らが不問にされている、信じられないこの世の中で、なぜ原発や、放射能汚染の拡散に反対した人だけが、逮捕・起訴されなくてはならないのでしょうか。私は、被害者を踏みにじる判断を下した裁判官も、裁かれなければならない立場だと思います。
Uさん 最終意見陳述
裁判所がどんな判決をくだそうとも、私たちの行為は正当です。
次回、判決
判決公判は11月28日、午後1時半、大阪地裁・大法廷(201号)にて。
5面
生活保護への弾圧許すな
切り下げ反対つぶしが狙い
大阪府庁へ一斉審査請求にむかう人たち |
10月28日、大阪府警による不当・違法な家宅捜索に抗議する記者会見が大阪府庁でおこなわれた。会見には尾藤廣喜(弁護士・生活保護基準引き下げにNO! 全国争訟ネット代表)、 小久保哲郎(弁護士・生活保護問題対策全国会議事務局長)、大口耕吉郎(大生連:全大阪生活と健康を守る会連合会会長) 喜田崇之(大生連顧問弁護士)、生活困窮者を支援する団体関係者として関西合同労組も参加した。会見には主だった新聞社のほか、カメラもNHK、毎日放送、読売テレビが入り、質疑応答の中で「会見に参加いただいた記者の方々は『これはおかしい』という感覚は共有していただけていたのではないか」(小久保弁護士)という会見だった。
弾圧の背景
今回の弾圧の背景には保護費切り下げ(平均6・5%、最大10%)の強行に対する「1万人審査請求(不服申立)運動」がある。審査請求は約2カ月の短期間で目標を上回る1万191件にのぼった。うち全国生活と健康を守る会(全生連)は約9割の8997件、その中でも全大阪生活と健康を守る会(大生連)は全国最多の1608件を占めた。
9月17日が全国一斉の審査請求行動日とされていたが、この1週間前の9月12日、大阪府警は生活保護の「不正受給」があったとし、その申請に同行したことを理由として淀川生活と健康を守る会、大生連に不当な家宅捜索を行い、被疑事実と関係のない審査請求に関する集約表や大会決定集などを押収した。
さらに別件の「不正受給」があったといいなし、生活保護の申請に同行したことを理由として10月10日、上記2団体に加えて全国生活と健康を守る会(東京)にも家宅捜索をおこなった。
大阪府警を許すな
生活保護申請に対し「水際作戦」で追い返す行政の違法行為が横行している。このため、さまざまな支援団体が申請に同行し、かろうじて受給権が実現されているのが実態である。今回の弾圧は「不正受給」を理由として申請に同行すること自体を違法とし、弾圧するものである。これに対し全国のさまざまな団体から激しい抗議の声があがり、短期間のうちに、呼びかけ3団体以外に106団体が抗議に賛同した。
申請同行は生活困窮者の命を守る正当な行為である。この当然の権利に手をかけようとする大阪府警を絶対許してはならない。さらに立場の違いを超えて保護費切り下げを押し戻していく大きな運動を作りそう。
アベノミクスに立ち向かう
“奪いあい”から“分かちあい”へ
アベノミクスの目的は「大日本帝国の復活」 と話す浜矩子さん(10月4日 大阪市内) |
10月4日、集会「どう変える日本経済と働き方」が大阪市内でひらかれ200人を超える人が集まった。主催は、NPO働き方ASU―NET。浜矩子さんが、「アベノミクスにどう立ち向かうか」と題して記念講演をした。
アベノミクスは大嫌いという彼女は今年6月に『アベノミクスの真相』(中経出版)を出し、アベノミクスと闘うときには”武者震い”すると闘志を燃やしている。
アベノミクスは経済再生が目的ではない。彼女はいう。アベノミクスはまともな経済政策ではない、しぼんだ日本経済をもう一度ふくらませることなど目的にしていないと歯切れよくその本質を指摘する。
アベノミクスの本質
アベノミクスの本当の目的は富国強兵、大日本帝国の復活である、しかも破滅にむかうそれであると喝破する。アベノミクスによる「富国」、改憲による「強兵」である。彼女が強調するのは、アベノミクスをデフレからの脱却を真剣に模索しているものなどと理解しているようでは到底これと立ち向かえないということである。
アベノミクスの本質をしっかりとらえ、これと根本的に闘わなければならないという主張だ。
日銀の変質
アベノミクスによって今何が行われているのか。「従来と全く違うものすごいスケールで日本経済の中心にむかって現金が流し込」まれ、そのカネを使って日銀が「危険度の高い市場に〔日本を〕引っ張り込んでいこうとしている」と弾劾する。「この異次元緩和に踏み切ったことで日本銀行は今や中央銀行でなくな」り、「バブル製造装置」=「日本政府のための金貸し業者になり下がった」と弾劾する。
今起こっていることは、日銀が国債をものすごい勢いで買いまくっているということである。政府は物価上昇率2%達成のために実施していると説明しているが、真っ赤なウソ。「では2%上昇が達成されたら国債買いをやめるのか、やめられるはずがない、本当の目的は国債の大暴落を買い支えることが目的である」と喝破する。
アベノミクスとの闘い
紙幅が足りず結論だけ述べるが、彼女は「奪いあい」ではなく、「わかちあい」を対置する。有り余るほどの富がある中でなぜ格差や貧困があるのか。分配に問題がある。金持に増税を。労働組合は怒りが足りない。特区などナンセンス。TPPはブロック化。国境を超えたわかちあいを、何も持たない人も喜びや悲しみをわかちあえる、と歯切れよく指摘した。
私は、「わかちあい」という主張を聞いたとき、09年の派遣村を思い出した。まさしく「わかちあい」という考え方は利潤こそ全てという資本主義的考え方の対極にあるものである。今、現代資本主義批判がもっとも求められているが、「わかちあい」という考え方は派遣村がそうであったように資本主義批判のキーワードのひとつかもしれないと強く感じたところである。(よ)
沖縄の基地問題と朝鮮侵略
尹奉吉(ユン・ボンギル) 暗葬之跡(金沢市)を訪ねる
田端 登美雄
滋賀県あいば野演習場でおこなわれている日米共同演習にオスプレイが参加する可能性がとりざたされていた10月10日は、結局オスプレイは飛来せずとなった。10日の抗議行動は予定通りおこなわれた。沖縄県名護市でリサイクルショップ「ジュゴンの海」を営みながら、辺野古新基地建設反対運動を担っている金治明さんが抗議行動に参加したついでに金沢に立ち寄ってくれた。尹奉吉義士暗葬之跡を訪ねるためだ。
緊迫する沖縄
夜、私と金さんの二人で酒を酌み交わしながら歓談している最中にも、次々と金さんの携帯電話に連絡が入る。沖縄の緊迫した情勢が受話器の向こう側から伝わってきた。在特会が「クリーン作戦」と称して、普天間基地のフェンスに括り付けてあるメッセージバナーを奪い去ったという。辺野古の海岸に押しかけてきて座り込みを妨害しようとしたが、すでにテントは台風対策で片付けられていたので、「襲撃」は空振りに終わったそうだ。
金さんの懐具合を心配して、「うちの畑の草刈りをしてくれないか」という電話も入る。
金さんは家族を郷里に残し、沖縄に居を移して既に10年になる。私は「なぜ沖縄で戦い続けるのか」を尋ねた。すると金さんは次のように答えた。
「自分は在日朝鮮人であり、日本の朝鮮侵略と朝鮮人への差別は絶対に許さない。侵略と分断の張本人は日本とアメリカであり、在日朝鮮人に対する差別もここに根源がある。特に沖縄は朝鮮の分断と侵略の軍事拠点であり、辺野古基地建設やオスプレイ配備などは直接朝鮮に向けられた攻撃だ。沖縄闘争は在日朝鮮人が全力を挙げて取り組まねばならない最重要課題だが、そのようになっていないのが悔しい。」
「最近、在特会(在日特権を許さない市民の会)や幸福実現党などの排外主義者が警察の援護を受けながら、沖縄のたたかいをつぶそうとしているのは、彼らの方が沖縄の現実をよく認識しているからだ。」
「日本人の中に、排外主義と差別に反対する人々がたくさんいるが、その根源である南北分断と朝鮮侵略を阻止するために、『沖縄をたたかう』ことに注目する人はあまりいない。沖縄闘争が日本人はもちろん、朝鮮人(在日)にとっていかに大切かを認識して欲しい。」
尹奉吉から学ぶこと
また、「なぜ、尹奉吉暗葬之跡を訪問したかったのか」と尋ねると、金さんはそのわけをこう語った。
「朝鮮を植民地にし、中国を侵略する日帝にたいして、尹奉吉が家族と別れ、上海に渡り、単身祝賀会場に乗り込んで爆弾を投げた姿に心を動かされない朝鮮人はいない。暗葬之跡の前に立って、目をつむると、怒りと闘志がふつふつと湧いてきた。」
「もっと、尹奉吉のたたかいを知らせる必要がある。尹奉吉ほどのたたかいを敢行して、歴史は動くということを知るべきだ。春から秋にかけて花を結び、散っても散っても、次から次へと花を結ぶムグンファ(ムクゲ)こそが朝鮮人の生き方だ。前人が成し遂げられず、死んでいっても、その次を継ぐ人が必ず生まれ、決してあきらめずに戦い続ける朝鮮人の生き方を現している。」
「昼食をごちそうになった尹奉吉義士暗葬の地保存会の方々のなかに、これぞ朝鮮人だという精神を見た。そばに尹奉吉が眠っているからではないだろうか。」
金沢駅に消えていった笑顔の金さんを見送りながら、朝鮮侵略の拠点沖縄や小松の基地闘争をたたかうことこそが、上海でたたかい、処刑された尹奉吉から学ぶことだと思った。
注:尹奉吉は1932年4月29日、上海事変戦勝祝賀会に爆弾を投げ、上海派遣軍司令官白川義則など軍幹部多数を打倒し、12月金沢で処刑された。
6面
「慰安婦」問題
世界は解決を求めている
韓国挺対協共同代表 尹美香(ユン・ミヒャン)さんが
報告
第一回日本軍「慰安婦」メモリアルデーのデモのようす |
今年9月のスイス、ジュネーブでの国連人権理事会に出席した韓国挺身隊問題対策協議会共同代表の尹美香さんが、10月25日、大阪で講演した。台風来襲で大雨が予想されたが、100余人が参加。
尹美香さんはスライドを映しながらの話。
今回は金福童ハルモニと共にジュネーブとフランスへ行った。以下はその要約。
なぜ再び国連へ?
93年6月オーストリアのウィーンで金福童(キム・ポットン)ハルモニが証言して、衝撃を与えた経験を持つ。その後、黄錦周(ファン・クムジュ)ハルモニも証言し各国代表や人権活動家がショックを受けた。
日本政府は度重なる国連関係機関の「慰安婦」問題への勧告を、遵守義務はないと無視して来た。吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニは、02年から活動をはじめ、07年からはヨーロッパまで出かけた。その結果、オランダ国会、EU議会で日本に解決を迫る決議を上げた。この12月11日はEU決議6周年になる。EU決議は戦時性暴力を含んでいる意義深いものだ。
証言に涙
少し前、ソウルの日本大使館前の水曜デモで、高齢者の男性が「あなた達はなぜニコニコ笑いながらデモをしているのか」と聞かれた。「私達の笑いには怒りと悲しみが込められているのです」と答えた。
理事会の翌日、サイドイベントを開催、金福童ハルモニは今までにない苦しい証言をした。「『慰安所』は、平日は12時から5時まで、日曜日は9時から5時まで、次々に入ってくる日本軍人を受け入れさせられ自分で歩くことが出来なかった。この事実を想像して下さい」と語った。このとき、聞いていた人たちは泣いていた。
国連の特別報告者は、日本政府が公式謝罪と公式賠償をしていないことで不信感が広がっている。また日本の教科書からの削除を憂慮すると述べ、日系カナダ人が、日本では何も教えられなかった。大人になって真実を知って恥ずかしい思いをしたと語った。
来年6月の国連人権理事会に女性の特別報告者が報告を出すことになる。
次に訪れたフランスではアムネスティ代表と会い、ハルモニのナビ基金(世界の性暴力被害者の支援基金)の活動に感動していた。フランスでも来年8月のメモリアルデーをおこなう事を確認した。
フランス左派政党の女性局代表は、フランス議会での決議を約束した。女性省に電話して日本政府に直接働きかけるよう求めた。日本に国家人権委員会がないということに皆、驚いていた。多くの市民達と会って、パリでもナビ基金ができた。エッフェル塔の前で初めて水曜デモをやった。
20日あまり外国にいて本当に疲れた。帰って来て金福童ハルモニは2週間も身体を壊した。しかし、大きな希望が持てた。ナビ基金活動を一からはじめようと動きが出てきている。
10月23日の1097回水曜デモは、子ども達が遠足で参加、元気が出たと帰って行った。だれにでも癒しは必要だ。
1つはハルモニ被害者同士の出会い、2つは、被害者と支援者の出会いで、ハルモニが私達に癒しをくれて、私達がハルモニに癒しを与える、そういう出会いを重ねて、戦争で描かれた世界地図をナビで描かれる地図に変える。
日本は世界で孤立する
尹美香さん講演の後、アムネスティの山下明子さんが発言。
「今年8月、私たちは挺対協と連名で、安倍首相に対し『性奴隷被害者への義務を果たすべき』という要請を送りました。9月26日の、国連総会での安倍首相の『性暴力被害者支援に3億円出す』という発言に、会場はしらけて拍手がほとんどなかった。
日本には、国家人権局がなく、かろうじて、外務省に人権局があるだけ。アムネスティは、G8にたいして、司法の壁の排除、加害者の処罰を目指して共同書簡を提出したが、何の回答もない。この問題を解決しないと日本は世界で孤立する。橋下発言で、『慰安婦』問題が世界に注目され、批判が集中した。脱軍事化を目指して、私達の市民の力が多数派なのだから、今こそ運動を広げて行きたい。」
最後に、関西ネットワークの方清子(パン・チョンジャ)さんが、「『世界が解決を求める流れ』に応えて運動を強めよう」と訴えて集会を終えた。
シネマ案内
日常描写から無実を訴え
「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」
(2013年/105分) 監督:金聖雄 撮影:池田俊巳 音楽:谷川賢作 小室等 プロデューサー:陣内直行 製作:「SAYAMA」製作委員会
試写を二度も見てしまった。それほど引きこまれる映画だった。ドキュメント映画の「概念」を、ものの見事にひっくりかえされた。
金聖雄監督は、石川一雄さんの無実ということを声高には、けっして叫ばない。しかし、石川さんの日常生活や連れあいの早智子さんとのやりとりのなかから、石川さんが殺人事件の犯人ではないことを、何も知らない人々に訴えようとしているのだ。
主役は二人
この映画は、石川一雄さんが主役であると同時に石川早智子さんも主役である。お二人の性格や癖をとことん映しだす。日常生活の場面に監督は入りこめるほど信頼関係を築いているのだ。
「活動家」としてではなく、人間石川一雄・早智子の物語である。二人が出会った徳島の海岸など、夫婦の微笑ましい場面が続く。しかし二人の話題はどうしても狭山事件のことになってしまう。
徳島の実家で早智子さんから語られる部落差別の厳しい現実。それをはね返して生きてきた早智子さんと石川一雄さんは強い絆で結ばれている。
一場面が強く印象に残った。三者協議のあとの弁護団会議。石川さんが会場を後にして、廊下を歩いている。前のめりに歩くその後姿はさびしい。そして一瞬振りかえって無言で早智子さんを手をあげて呼んでいる。スローモーションだったのか、そうではなかったのか覚えてはいないが、そのとき石川さんの心情を思って涙が出た。
狭山闘争は、かつて日比谷公園に10万人が集まった。無実が明白な石川さんは獄につながれたまま、「無罪」は勝ちとれなかった。それは何故なのか。その答えを出すヒントが、この映画に隠されているのではないか。(H・K)
完成上映会(関西)
2013年11月12日(火) 2014年1月 13日(月・休)
各日 第1回 開場14時 上映14時40分〜、第2回 開場17時30分 上映18時10分〜
兵庫県民会館 けんみんホール
2013年11月13日(水) 2014年1月 11日(土)
各日 第1回 開場14時 上映14時40分〜、第2回 開場17時30分 上映18時10分〜
大阪市・阿倍野区民ホール
健康ひろば(3)
深酒の怖さ
深酒は禁物です。翌日に二日酔いが残っているなら、肝臓がアルコールを最後まで分解できていないということ。あきらかに飲み過ぎです。
肝臓は他にもさまざまな働きをおこなっていますから、過重な負担がかかっています。これが続くと肝臓を傷つけてしまうのです。
日本人は元々アルコール分解酵素の量が少なめです。特に女性は少なめで、深酒による肝臓への影響は女性の方が出やすいと言われています。また年をとると、肝臓の働きが弱くなります。
食事の心がけ
まず脂肪肝を予防するために、糖質と脂肪の食べすぎに注意しましょう。同時に肝臓を保護するためには、タンパク質はしっかりとった方がよいですから、味噌や豆腐、納豆などの発酵食品、醸造酢が大切です。また野菜もたくさん食べた方が良いですね。
適度な運動も身体の血流を活発にし、肝臓の働きを良くします。肝臓は再生能力の強い臓器です。「もうさんざん飲んできたから、いまさら遅いよ」と、あきらめずに努力しましょう。