未来・第138号


            未来第138号目次(2013年10月15日発行)

 1面  原子力空母は出て行け
     1600人が母港化40年に抗議
     9月25日 横須賀
     

     オスプレイ配備の撤回を
     普天間基地封鎖1周年で集会

     10・20三里塚現地へ

 2面  動き出す「治安と戦争システム」

     秘密保護法の成立を阻もう

     危険なもんじゅは廃炉に
     吉岡斉さん、小出裕章さんが講演
     大阪

 3面  「秘密保護法に反対」
     参院議員 山本太郎さんに聞く      

     もう原発は動かすな
     伊丹市の集会に1200人参加

     オスプレイ訓練やめろ
     日米合同演習の中止求める
     滋賀県 あいば野

 4面  生活保護費引下げを許さない
     怒りネットが厚労省と交渉

     堺市長選 〜市民からのレポートB
     竹山圧勝 胸すく勝利

 5面  74年10・31寺尾判決をのりこえ
     石川さんの再審無罪を

     “払えないようにしたのは誰や”
     芦原住宅裁判控訴審で不当判決

 6面  外国人差別にNO!
     許すな差別・排外主義 9・23ACTION      

     朝鮮学校襲撃事件裁判で
     在特会に賠償命令
     京都地裁

     読者のこえ

       

原子力空母は出て行け
1600人が母港化40年に抗議
9月25日 横須賀

「原子力空母ジョージ・ワシントンは横須賀から出ていけ!」1600人が参加して抗議の声をあげた(9月25日 横須賀・ヴェルニー公園)

横須賀のグルメ」と言えば、「よこすか海軍カレーとネイビーバーガー」と私鉄の車内広告が誘う。「基地とアメリカがこの街の観光資源」と言っている人々がいる。そんな中で、9月25日、「米軍基地の強化と日米軍事一体化反対!集団的自衛権の行使・容認を許すな! オスプレイ配備を直ちに撤回せよ!」として、〈空母母港化40年抗議! 原子力空母ジョージ・ワシントン横須賀基地母港化5周年抗議! 原子力空母配備撤回を求める神奈川集会〉が、横須賀ヴェルニー公園で開かれ、約1600人が参加した。

原子力空母は出ていけ

集会では、全国基地問題ネットワーク事務局長の山城博治さん、原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会から呉東正彦代表、平和フォーラムの代表らが発言。「原子力空母ジョージ・ワシントンの母港撤回と脱原発社会の実現を一体的にすすめよう。オスプレイの配備撤回を求め、沖縄への基地負担の押し付けをやめさせよう。米国の世界戦略・戦争政策への加担を拒否し、集団的自衛権の行使反対、『特定秘密保護法』 など民主主義破壊を許さず、憲法改悪を阻止しよう」などと決議、デモに出発した。
「原子力空母は横須賀から出ていけ! 米軍基地は出ていけ! 安倍政権の軍事大国化路線、改憲路線を許さないぞ!」途中、横須賀基地正門前では大きく声があがった。

「3年だけ」が40年に

「3年間だけの配備」として1973年10月に入港した空母ミッドウェイ。「3年」の約束は、いつしか今年で40年になってしまった。そして、5年前、それまでの通常型空母は、原子力空母ジョージ・ワシントンに取って替わられた。
「日本はアメリカ海軍の空母打撃群を受け入れている世界唯一の国」。米第7艦隊トーマス司令官は強調している。実際、イラク戦争に参戦した米空母は5隻。そのうち横須賀を母港とするキティホークはイラクの最前線に陣を張り、その艦載機は5375回と最も多い出撃を繰り返した。横須賀を母港とするイージス艦が発射した巡航ミサイル・トマホークによってイラク戦争は始まっている。
トマホークと空母艦載機による先制攻撃。湾岸戦争・イラク戦争、横須賀は戦争を仕掛ける時のアメリカの最重要の軍事拠点だ。
そして、5年前に原子力空母ジョージ・ワシントンを強行配備。

原発と同規模

福島第一原発1号機と同規模の原子炉を積んだ危険な空母が、1日平均777隻もの船舶が往来する全国有数と言われる超過密な東京湾浦賀水道を通って出入港する。ここ横須賀で、原子炉に重大な事故があれば、東京まで50q。首都圏は壊滅状態となる。
首都圏地震の発生の可能性等が取り沙汰されているにもかかわらず、安全、防災対策はほとんどないという状況で、マスコミもほとんど取り上げない。国内の原発は、一応「安全審査」をすることになっているが、米原子力空母となるとそれもできない。
そして、空母が来れば厚木基地の上空周辺がその艦載機の訓練として使用が増加、もの凄い騒音に悩まされることになる。厚木基地周辺の大和、綾瀬、相模原、座間、海老名、藤沢、茅ケ崎、町田(東京都)の8市の住民約7千人が原告となって「第4次厚木爆音訴訟」に取り組んでいる。

沖縄・山城博治さんが訴え

「安倍内閣の激しい右傾化と軍事化。アメリカと一緒になって戦争する。こんなことを許しておいていいんですか。どうか一緒にがんばっていこう。今、沖縄に来ているオスプレイが、昨日、同時いっせいに飛び立ったという。何をやっているんだ。怒りがいっぱいです。あいつらに殺されるわけにはいかない。この国が戦争に行かないよう、手を取り合って進んでいこう」。(神奈川 深津利樹)

オスプレイ配備の撤回を
普天間基地封鎖1周年で集会

「なんとしても基地を撤去させる」(9月28日宜野湾市)

オスプレイの配備阻止闘争から1年。「普天間基地ゲート前行動1周年集会」が9月28日午後1時より、宜野湾市中央公民館で開かれた。普天間爆音訴訟団、平和市民連絡会、命どぅ宝・さらばんじぬ会が共催。会場は立ち見が出る250人の参加者であふれた。
会場ロビーには普天間基地封鎖の闘いの写真が展示された。その前では、ともに闘った仲間たちが一年前を思いおこして話に花を咲かせた。

基地機能止める闘いを

集会は、野嵩(のだけ)ゲート前行動から赤嶺さん、大山ゲート前行動から宮平さんが、それぞれスライド写真を使いながら闘いを報告。
赤嶺さんが1年間のゲート前行動を振り返りながら「何としても基地を撤去させ、基地の前を通学する子どもたちが20歳になったら基地の真ん中で成人式を盛大に祝おう」と力をこめて語ると、大きな拍手がわき起った。
宮平さんは、「昨年は普天間基地を実力で封鎖したことで大きな共感の輪が広がった。基地機能を止めるようないろいろな方法を考えて闘おう」と訴えた。
連帯のあいさつでは、平和運動センターの新議長に就任した山城博治さん、県民会議の大城悟さん、ヘリ基地反対協の安次富(あしとみ)浩さん、高江住民の会の伊佐育子さんらが発言。一年前ともに闘った思いを胸に、それぞれの現場のたたかいが報告された。 最後にオスプレイ配備撤回や普天間基地閉鎖・撤去と辺野古移設の断念、高江ヘリパッド建設中止を求める決議を満場の拍手で採択した。

10・20三里塚現地へ

今月20日、三里塚芝山連合空港反対同盟は成田市東峰(とうほう)で全国総決起集会を開催する。 千葉地方裁判所・多見谷寿郎裁判長は、7月29日、反対同盟の市東孝雄さんの農地を取り上げる反動判決を下した。これは耕す権利を保障した農地法を否定し、市東さんをはじめとする日本農民の命を奪う断じて許すことのできない暴挙だ。
反対同盟は、多見谷反動判決をもって三里塚闘争の新段階への突入を宣言した。10・20全国総決起集会は、新たな闘いの第一歩である。
政府は成田空港を24時間空港化し、来年には発着回数を30万回にしようとしている。しかしそれは、空港周辺を恐るべき騒音地獄の中にたたきこむことになる。
一昨年、暫定滑走路の北延伸(2500メートル化)を強行し、これを着陸専用にしたために便数が激増し、すさまじい騒音が周辺地域を襲った。これに対して、空港北側の成田市民、南側の芝山町民から怒りの声がわき起った。すると国交省・成田空港会社はわずか1カ月で着陸専用を中止し、便数を減らさざるを得なかった。反対同盟との闘いの合流を恐れてのことだ。
反対同盟を中心とする三里塚闘争が存在する限り、「成田空港の完全空港化」は必ず破綻する。市東さんは7・29不当判決の直後、「私は不当判決に絶対に屈しません。農地の取り上げに身体を張って闘う覚悟です」と不屈の意志を表明している。市東さんと市東さんの農地を守り抜こう。10・20三里塚全国総決起集会に結集しよう。

多見谷判決徹底弾劾! 市東さんの農地を守ろう! TPP絶対反対! 福島・沖縄の怒りとともに闘おう! 軍事空港粉砕・改憲阻止!
10・20全国総決起集会

■日時 10月20日(日)正午
  ■場所 成田市東峰 反対同盟員所有畑 
 ■主催 三里塚芝山連合空港反対同盟
※JR成田駅から大型チャーターバスあり。11:20発→11:40会場着 片道5百円、往復8百円
※JR成田、京成成田駅から東峰十字路(会場近く)まで、タクシー約2500円

2面

動き出す「治安と戦争システム」

永嶋靖久弁護士が「改憲と戦争・治安管理システムの進行」について講演(9月24日 大阪市内)

9月24日「ストップ! 改憲と治安立法―新自由主義時代の立憲主義?―」(主催:共謀罪に反対する市民連絡会・関西)が大阪市内でひらかれ、関西圏の闘う労組関係、反弾圧関係など100人近くが集まった。

戦後の刑法体系を破壊

集会では、永嶋靖久弁護士から、@自民党はどのように憲法を変えようとしているのか、A現在の日本で、戦争と治安管理システムはどのように進行しているのか、B戦争・治安システムの進行はどのように改憲につながっているか、C改憲は戦争・治安管理システムの進行に対してどのような意味を持つか、D改憲と戦争・治安管理システムの進行はどこからやってくるのか、という5点にわたって講演がおこなわれた。
当日、産経新聞が「共謀罪」国会上程の動きを報じた。「特定秘密保護法案」(政府・警察が秘密を特定し、懲役10年の罪となる)、国家安全保障会議(日本版NSC)が臨時国会(10月15日召集)に上程を策動される、という情勢の只中で行なわれた。講演は豊富な資料を活用し、問題点を暴露。鋭い問題提起であった。講演内容は多岐にわたるため、以下、その一部を紹介するが、全内容を学習されることを訴える。

国防軍規定

自民党改憲草案が国防軍規定をもりこんでいることは重大である。国防軍とは自衛隊が軍隊になるということ。これまで自衛隊は、イコール軍隊ではないということが、たてまえとしては前提だった。軍隊は、「行政府の外部集団」となり(自衛隊はあくまで行政機関)、活動は「原則として地域的制限はなくなる」「敵国が対象となり」「国際法上も無制限の実力行使が可能」「敵国の戦闘員への人権尊重原理はなくなる」。国防軍規定が生み出す、恐るべき変貌の姿が明らかにされた。

現代の戦争

9・11以降の対テロ戦争(非対称)においては、以前は警察が担っていた分野を軍隊が担うということが常態化し、宣戦「布告」なき戦争が普通となっている(1945年以後、宣戦布告によって開戦された戦争は皆無)。こうした事態に対応し、草案には軍規定があるにも関わらず、開戦規定がない。このことの戦慄すべき内容が明らかにされた。また非常事態規定については、安倍が全権を掌握して「内閣の定めるところにより」、かってに法律をつくることを可能としているのである。

戦争システム

安倍政権はこうした改憲草案の内容にそって、戦争システムを動かそうとしている。その進行を、@集団的自衛権の容認(内閣法制局人事と安保法制懇談会でおこなう)、A国家安全保障会議設置法(司令塔)、B秘密保護法(特定秘密〔=防衛・外交・安全脅威活動防止・テロ活動防止〕の漏洩・取得の処罰)、C国家安全保障基本法(集団的自衛権や恒久海外派遣、緊急非常事態を定める法)として準備している。改憲までのつなぎとして、この秋から来年に、国会に登場してくる。

(※筆者コメント これらが成立すると、日本、米国に照準をあわせたミサイルが設置された敵ミサイル基地への攻撃や、ジブチにある自衛隊基地に隣接する米軍や仏軍基地からの対テロ攻撃に自衛隊が参加することが可能となる。それに伴う報道の国家統制や反戦運動に対する弾圧・取り締まりがおこなわれ、排外主義キャンペーンが繰りひろげられるだろう。)

治安警察国家の登場

新たな法律として、@共謀罪(会合や集団そのものを罪とする)が秘密保護法も取り入れて登場、A盗聴法改悪(ほとんどの犯罪に適用、立会人の廃止、室内盗聴も可能―警察が市民を簡単に盗聴できる)、B新たな捜査手法(司法取引や自白の迅速処理、被告の虚偽供述への制裁、違憲の公判前整理手続き、司法機能妨害への対処などアメリカ型の警察捜査の導入)が予定されている。これは戦後の刑法概念を破壊する、文字通りの治安警察国家の登場である。

戦争と軍事の独り歩き

これらが解釈改憲を伴いながら進行している。それは近代市民革命が確立した立憲主義(憲法は、個人の権利と自由を確保するために国家権力を制限することを目的とする)を打ち砕くものである。改憲は、こうした戦争と治安管理システムのとめどない進行を可能にする。憲法を根拠とした批判が成立しなくなり、〈戦争と軍事〉の独り歩きが登場するのである。永嶋さんは、「どうすれば〈改憲と、進行する戦争と治安管理のシステム〉を押しとどめることができるか」と問題を参加者に投げかけた。
改憲阻止という一点共闘を創造し、「戦争と治安管理システム」への国家再編とのリアルタイムの攻防こそが改憲攻撃との攻防であるという認識で闘うことが必要である。共謀罪については、03年、05年、09年の三度にわたって廃案に追い込んできたが、今日の攻撃はその延長線上ではね返すことはできない。共謀罪反対運動をさらに発展させた戦線をつくりあげる必要があるのではないだろうか。

民主主義の再構築へ

いまひとつ必要なのは、近代立憲主義と自由民主主義が前提としていた国民国家という政治システムが、いまや擬制にすぎないということを明らかにする作業である。 代議制民主主義の基本原理はいま双方向から崩壊している。その代議制を根本から問い直し、〈民主主義〉の再構築を成し遂げる必要があるのではないだろうか。それは民衆の行動と一体である。
グローバル資本の野放図な展開と非対称戦争の常態化という時代の中で、「平時と戦時の区別は消滅し融合状態」(岡本篤尚)にある。この世界の新秩序に対抗していく変革主体はこの中から生み出されていくだろう。(黒山一鉄)

秘密保護法の成立を阻もう

安倍政権は9日、「特定秘密保護法案」(「秘密保護法案」)の修正案を自民、公明両党に示し、今臨時国会において早期成立をめざしている。この法案の最大の問題点は、なにを「特定秘密」にするのかは、行政機関などが自分で決め、第三者によるチェックがないことだ。政府が知られたくない情報はことごとく「秘密」に指定されてしまう危険性が高い。しかも「特定秘密」の範囲があいまいで、いつ、何が「特定秘密」に指定されるかわからない。日常会話で「秘密」に指定されていることを知らずにふれただけでも処罰の対象となる。しかも懲役10年などの重刑が科される。自衛隊や原発への取材や反対運動が処罰される可能性がある。また「秘密保護」の名目で日常的に、一般市民が捜査機関の監視下に置かれる。こんな悪法の成立を断じて許してはならない。

危険なもんじゅは廃炉に
吉岡斉さん、小出裕章さんが講演
大阪

「もんじゅを廃炉に! 再稼働反対!」デモ行進で市民に訴えかけた(9月23日 大阪市内)

「もんじゅを廃炉に!―もはや廃炉しかない―」関西集会(主催:とめよう「もんじゅ」関西連絡会、脱原発政策実現全国ネットワーク関西・福井ブロック)が、9月23日に天王寺区民センターで開催された。福島第一原発の汚染水漏出と「汚染水は完全にブロックされている」という安倍首相の発言が注目されているなかで、470人が参加した。

核暴走の危険

「主催あいさつ」で池島芙紀子さん(ストップ・ザ・もんじゅ代表)は、本集会の獲得目標を2点提起した。@もんじゅを廃炉にしない理由には、アメリカの思惑がある。この点を明確にすること。A汚染水問題に対しどう闘えばよいのか。
@については、吉岡斉さん(九州大学副学長)の講演があった。Aについては、小出裕章さん(京都大学原子炉実験所助教)のインタビュー映像が上映された。
集会冒頭に、高速増殖炉「もんじゅ」の問題点を解説したDVDを上映。廃炉しかない4つの理由として、@もんじゅは核暴走をおこしやすい原子炉で、冷却剤にナトリウムを使っていることの危険性、Aプルトニウムは猛毒かつ核兵器に転用可能、Bもんじゅは地震にきわめて弱い、Cすでに1兆円以上の金を使い、無意味な財政出動。高速増殖炉という言葉は、あたかも高速でプルトニウムが増殖するかの様な印象を与えるが、高速の中性子を使うという意味であり、言葉をごまかしている。ここにも核政策のうさん臭さが見てとれる。
吉岡さんは「脱原子力の鍵・核燃料サイクル」というテーマで講演した。吉岡さんは「原子炉を生き残らせているのは、エネルギー政策ではなく、安全保障政策のために核技術が必要だから。日本の核政策は、核武装の潜在力を持つことが目的」「脱原子力は、エネルギー問題だけでなく、軍事面も含めてやっていく必要がある。日米同盟がもっとも大きな抵抗勢力だ」と語った。

安倍首相は犯罪者

小出さんは、安倍首相の「汚染水は完全にコントロールされている」発言に怒りをたぎらせ、次のように述べた。「この2年半でどれだけの汚染水が海に流れ出しているのか、このことは何も言わない」「安倍さんは犯罪者だ。何十万の人々の生活を破壊し、ふるさとをうばった」。
また、「もんじゅの継続に何の意味があるのか」というテーマで国会議員によるパネルトークがあった。参加者は福島瑞穂(社民党)、山本太郎(無所属)、福山哲郎(民主党)の3議員。福島さんは、もんじゅを廃炉にするために、超党派で議員連盟をつくる決意を述べた。また、山本さんは特定秘密保護法、グローバリズムとの闘いの必要性を訴えた。
最後は、朴保(パク・ポウ)さんのライブで盛り上がり、日本橋から難波までの繁華街をデモ行進。「もんじゅを廃炉に」、「原発の再稼働とめよう」と、市民に呼びかけた。

3面

「秘密保護法に反対」
参院議員 山本太郎さんに聞く

10月6日、兵庫県伊丹市で開かれた集会で発言する山本太郎さん

秘密保護法に反対し、緊急全国キャラバンをおこなっている山本太郎・参議院議員に聞いた。キャラバン中のアピール要旨を山本さんの了承を得て掲載する。〔見出し・文責=編集部〕

世の中、ますます酷くなりますね。

今度の国会では「これをやられるととんでもないな」という法案が成立させられようとしています。それは秘密保全法です。いま、名前が変わって「特定秘密保護法」という名前になりました。悪い印象を薄めるためですが、じつは名前を変えただけです。

何が秘密かは「秘密」

この法案は、一部の権力者にとって不都合、不利益ということを秘密にしてしまうものです。しかも、何が秘密に指定されるか、私たちにはまったく分からない。何が秘密なのか、「それは秘密です」という仕組みになっています。いま、みなさん十分に情報を知ることができていますか。原発事故、安保・米軍問題を見てください。秘密保護法がすでにまかり通っているような世の中じゃないですか。何のために、こんな法律をつくろうとするのか。彼らは「国を守るためには、秘密を守ることが必要」などとうそぶいています。
その「秘密」を知った者は罰せられます。「秘密」を調べてみようというジャーナリストがいれば、それも罰せられます。調べたけどちょっと公表は控えようと、持っていただけでも「未遂」罪。わが社でスクープにしたい・・・「教唆」です。検討、相談すれば・・・「共謀」です。「おかしいじゃないか。秘密にするな」と声をあげると「煽動」となります。

懲役10年

外交・安保・防衛問題などはすべて「特定秘密」ということにされてしまいます。さらに幅広く、どんなことでも秘密扱いにこじつけられます。特定秘密とされた情報を漏らした人は、懲役10年。民主的な社会のために「この情報は明らかにした方がいい」と思っても、懲役10年にされるならちょっと迷います。たくさんの人の命にかかわる大事な情報であっても、刑務所に10年入る覚悟が要るとなると、その勇気は持てませんよ。 一方、ときの権力者は、憲法の解釈も自分のつごうのいいようにやってきた。自衛隊の海外派兵もやってきた。明らかに憲法9条に反しています。私たちは、どんどん首を絞められている。

国民を監視・統制

最近も米軍がシリア攻撃をしようとしました。仮に日本が自衛隊を派兵し戦闘行為に加わったとしても、それが特定秘密とされれば私たちは知ることができません。取材した人、知ろうとした人は逮捕され、罰せられる。それを国会で追及しようとする国会議員も、許されない。
私たちは知る権利があります。一部の人たちの国じゃない。私たちの、あなたたちの国ですよ。
どうしてこんなものが出てくるのか。国民を監視しコントロールするためでしょ。情報を知らせなければ、騒ぎも起こらないだろうと。「情報を開示しろ」といった人も罪に問われる。「原発反対」とか言っている者は、すぐに逮捕すればいい、ということ。声をあげるだけで逮捕されるような世の中になる。
その問題について何かツィッター、フェイスブックなどで発信すると、「共謀」のおそれがあります。どんなことも「犯罪」とされてしまう。一方で、特定秘密とは何なのか、それも秘密にされ何が特定秘密かも分からない。どこに落とし穴があるか分からない。安易に自分の気持ち、意見を言えなくなる。たまたま「つぶやいた」ことが特定秘密にされていたら、逮捕されかねない。
あわせて、来年の国会には「共謀罪法案」というのが、提出されそうです。現在の法律では、実行されて「犯罪」となります。共謀罪は、その前に「相談」した段階で犯罪とされます。「山本太郎は気に入らん。殴ったろうか」「そうだ、そうだ」。この時点で逮捕0Kです。こんなこと、どうやって捜査するの。すでに監視や盗聴はおこなわれていますが、日常化するでしょう。

議員に働きかける

どうやって止めるのか。いまの政治では難しいんです。国会は、政権与党が圧倒的多数。でも、何とかしたい。街頭アピールや直接行動がいちばんです。
地元選出の衆参国会議員に「秘密保護法に反対してください」と、電話よりもファックス、メールを入れてください。ファックスは紙で届きます。メールは秘書がプリントして議員に渡します。みなさんの声が可視化、視覚化されて届きます。いきなり攻撃的な文面は感心しません。「日ごろからご支援しております」の前文くらいあった方がいいでしょう。「けれども、このような悪法には反対してください・・・」と。かたくなな賛成派は難しい。でも、何となく賛成の議員もいる。それは変わってもらいましょう。
めんどうくさいですよね。しかし、その面倒なことを避けていては秘密保護法という悪法が通ってしまいます。衆議院、参議院のホームページを開けば、国会議員の控室のメール、ファックスはすぐに分かります。
かつては、私も社会に無関心でした。でも、その無関心が、こんな世の中にしてしまったのかと思うと、私はいま、ほんとうに一生懸命です。国会で何ができるか、訳分からないですよ。一人ですから。みなさんに直接訴えるしかないんです。何とかしましょうよ。
でも、私のいっていることを鵜呑みにしないで。ご自身で秘密保護法について調べ賛成、反対を考えてください。

もう原発は動かすな
伊丹市の集会に1200人参加

講談師の神田香織さんが登壇

「福島事故は終わっていない 原発はもう動かすな! 第3回さようなら原発1000人集会」は、いたみホール1200の座席が満杯になり、小出裕章さんの講演を中心に、原発再稼働阻止を誓う集会として大成功した。
最初は特別ゲストとして、昨年都合で来られなかった参議院議員の山本太郎さん。山本さんは秋の国会の焦点=特定秘密保護法の廃案を求める全国キャラバンを展開中。「廃案あるのみ、そのために議員になった」と訴え、拍手がわいた。
小出裕章さん(京大原子炉実験所助教)が、大型スクリーンを使いわかりやすく講演。

これでも法治国家か

2011年3月時点でセシウム137がどのように飛散し、 どこまで汚染されたかを解説。福島県だけでなく、関東平野西側の山地・山脈に放射性プルームがぶつかり、山地南東側(群馬、栃木、長野)が汚染され、そのため1年間1ミリシーベルトという法定基準値が政府の手で反故にされた、「これでも法治国家か」と弾劾した。
休憩をはさんで後半は、福島県いわき市出身の講談師・神田香織さん。 神田さんは核の恐ろしさを自身の講談『はだしのゲン』を随所に引用しながら展開。はだしのゲンのようにたくましく、生き抜こうとユーモアをまじえて語った。
最後は6人の市民のアピール。 閉会あいさつでは、地域での「日常的な取り組みの中から原発ゼロを実現しよう」と訴えがあった。

オスプレイ訓練やめろ
日米合同演習の中止求める
滋賀県 あいば野

「オスプレイ訓練反対!」あいば野演習場がある高島市内で抗議のデモ(9月29日)

「1年前の今日、普天間のゲートを封鎖した。沖縄はオスプレイと新基地建設を止める命がけのたたかいをやる」(山城博治さん)、「京都では米軍Xバンドレーダー設置反対に起ちあがっている」(大湾宗則さん)―滋賀県あいば野演習場でおこなわれる日米合同演習に反対する集会が9月29日、地元の高島市で開かれた。「オスプレイは来るな! 日米合同軍事演習反対! 9・29あいば野集会」には800人が集まった。

オスプレイ訓練

今回の日米合同演習は10月8日から始まり、陸上自衛隊と米海兵隊が実戦装備で訓練。オスプレイを使用する日米合同演習は「本土」初。上空で停止しているオスプレイから兵員がロープで降下、陸上に展開して「敵」を征圧する「ヘリボーン、陣地攻撃」という訓練を実施する。演習中、オスプレイは岩国を拠点に展開するもよう。
主催者を代表し野坂昭生さん(2013あいば野に平和を! 近畿ネットワーク)が「安倍政権は集団的自衛権の見直し、『戦争のできる国』と憲法改悪に一挙に突き進もうとしている。今回の合同演習は、沖縄の負担軽減を口実にしたオスプレイ使用の全国化・既成事実化をねらうものだ。強い怒りを覚える。断固反対、即刻中止を求める」とあいさつ。

命がけで闘う

沖縄から駆けつけた山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)は、オスプレイ断固阻止、沖縄から撤去を求め、次のように話した。「あいば野演習場で(日米共同演習としては)初めてオスプレイが使用される。沖縄では昨日、普天間で訓練から帰るオスプレイが着陸できず1時間半も上空を旋回し、救急車、消防車が待機する事態があった。アメリカでは事故続き、沖縄は怒りでいっぱいだ。昨年9月、普天間ゲートを封鎖してから1年たった。いよいよ2年目に入る。やるならやってみろ。日米合同訓練に対し、沖縄は命がけで闘う。『沖縄の負担軽減だ』という分かったかのような言い方が一番腹が立つ。それならオスプレイを撤去すべきだ。詭弁を使いながら全土にオスプレイを展開しようとするものだ」と怒りをあらわにした。
大湾宗則さん(「とめよう経ヶ岬の米軍レーダー・危険な戦争準備を許さない」緊急京都府民の会・南部連絡会=代表)は、「京都、経ヶ岬に米軍Xバンドレーダーを配備することを、今年2月に日米首脳が確認した。私たちは辺野古新基地も高江もダメだと言ってきた。京都もダメだ」と訴えた。集会後、高島市内をデモ行進した。(ま)

4面

生活保護費引下げを許さない
怒りネットが厚労省と交渉

9月17日、大阪でおこなわれた不服審査一斉申立ての記者会見のようす(大阪・日赤会館)

9月25日午後、衆院第1議院会館にて、怒りネットの厚生労働省交渉がおこなわれた。5月8日に続き2回目の交渉だ。怒りネットは約20人。「知的障害者」団体の方も参加した。
厚労省側は保護課基準係2人と、保護課調査係の合わせて3人。2時間の交渉だった。

学問的裏付けは無し

あらかじめ怒りネット側が提出していた質問書に、厚労省が答えるところから質疑が始まった。焦点になっている生活扶助相当CPI(消費者物価指数)について、その根拠、正当性を問いただしたが、厚労省は「総務省がこう言った」という逃げの答弁を繰り返した。しかし、思わず核心点を言ってしまう。総務省の正統な統計では、2008年から2011年の物価下落は2・35%なのに、保護費引き下げの根拠となった厚労省独自の特異的計算では、4・78%になってしまっている点についての言い訳が妙だ。
厚労省曰く。「算出した理由としましては、できる限り最新の消費実態を反映させるため。どこかの大学の何かの学問的裏付けというものがあるわけではない。基準部会(保護費の額を検討する審議会)でも議論していない。総務省としても物価の見方はいろいろある、様々な考え方がある(と言っている)。
作る時に総務省に相談したとかでなく、総務省から聞いたところによると、物価というものはいろいろなやり方がある。それぞれの政策判断に基づいて、それぞれの省庁で判断されるべきものと考えていますという話を聞いている。」 これでは政府統計にはいろいろな数字があるから、総務省のものも厚労省のものも、どれ一つとっても信頼性はないと言っているに等しい。さすがに、厚労省が正しく総務省が間違っているとは言えないものだから、全部いい加減な数字だという話にしてしまった。 また、政策判断=政治判断で数字は操作していいと言っており、自民党が10%下げろと言ったことに従うという政治判断に合わせて、都合のいい数字を選択したことを自己暴露した。
ふつう統計では過去の基準年でそれ以降の年を見るのに、厚労省が未来を基準年としたから、実際とはかけ離れた結果が出てしまったのだ。こんなやり方はどこの大学でも教えないから、「学問的裏付けは無い」と答えざるを得なかった。

憲法違反・法律違反

「基準部会」の報告から計算すると90億円の削減幅なのに対し、その7・4倍の開きがある670億円を削減するのは恣意的であり、厚労省が勝手にこれだけ下げるという風にできるのかと問うのに対して。
厚労省「最高裁判例でも厚生労働大臣の裁量だという判例がある。」しかし、どの判例かは「思い出せない」と実にいい加減なことを言う。90億円という報告に対して、80億や100億円という幅ならば裁量の範囲だろうが、7・4倍というのは、最高裁判例が想定したものではありえない。
基準部会の考え方である、所得の下位10%の階層(第1十分位という)の消費と生活保護世帯を比較した上に、さらに物価の下落分580億円を加えるというのは、おかしいだろうと問うと厚労省は何も言えなかった。

捕捉率32%

その基準部会報告もおかしなところがある。第1十分位には、本来生活保護を受けるべき収入の人が多く、生活保護以下の収入の人で、実際に生活保護を受けている人の割合はわずかに2割とも言われている。これを捕捉率という。
厚労省は、「ナショナルミニマム研究会というところの資料として、生活保護未満の世帯数の推計についてという資料があった。04年全国消費実態調査で87%、07年、国民生活基礎調査で32%。正確な捕捉率は出せないというのが政府の統一見解である。」と言う。 政府が少なめに見積もったところでも、生活保護以下の収入の人が13%〜68%いるのだ。一般世帯の方が保護世帯より10%以上消費が少ない場合があると言うが、それならば、本来保護を受けるべき人たちが受けられていないと見るべきではないか? ところがそれを、保護費を引き下げる根拠としてしまう感性がおかしいのだ。

実態を見よ

生活保護の実態を見てもらいたい。100万円の収入の人が5千円減るのではない。8万円の人が5千円削られるのだ。食うや食わずの人から引くのだ。厚労省の生活扶助相当CPIの計算では、生活保護の人は電化製品を毎年4・2%も購入していることになる。ウエイト(全購入品目に対する個別品目の割合)の設定がおかしいからだ。しかし厚労省は「適切にやっている」と言う。厚労省は二言目には専門家がやっているから正しいという。「当事者のヒアリングはおこなっていない」というのだ。一体どこを向いて仕事をしているのか。
「税金で賄われている制度なので、国民全般の信頼を得る制度であるように基準を確保し、不正受給対策をして適切におこなっていきたい。」と、わずか0・5%に過ぎない不正受給のために全体の引き下げを正当化するのだ。
厚労省自身が生活保護世帯の細かな支出を調べた「社会保障生計調査」というものがある。これを生かせば実態が分かるはずだ。どう生かすつもりか問うと、厚労省は「生計調査の取り方として、まんべんなく調査世帯を選定しているので、生活保護世帯特有の、例えば、高齢者が多いとか都市部に多いとかを反映できている状況ではないから、基準見直しには使っていない」と言う。それでは、調査のための多額の税金は無駄に使っているだけではないか。
また、「何も意図的に基準額を何%下げましょうというものがあって、それに見合う数字を出すというわけではない」「10%下げるということで10%下げているわけではない」と繰り返した。逆のことを独白する形で、思わず本音を自己暴露してしまった。本当は自民党に言われて意図的に基準額を10%近く下げたのだ。政策目標に合わせて数字を作ったのだ。

1万世帯超える

この日の話で、厚労省の口から政府統計が信用できない物だと語られた。厚労省は生活保護世帯の実態をなんら踏まえず、把握もしていない。今後、生計調査や生活実態を含めて、改めて厚労省に迫っていきたい。政府の骨太方針で、母子加算、障害加算が減額、見直しされるということも出ている。秋からの国会では生活保護法が改悪され、扶養義務の強化がいよいよ現実化しようとしている。再々度の交渉で迫って行こう。
不服審査請求をおこなった世帯は1万世帯を超えた。この受給者とともに、違憲訴訟を準備し支援していこう。〔6面に関連記事〕

堺市長選 〜市民からのレポートB
竹山圧勝 胸すく勝利

竹山 修身(無現) 19万8431票
西林 克敏(維新) 14万0569票
9月29日、「橋下いらん、大阪都構想必要ない」堺市民の意思は鮮明に示された。大阪維新の会発足以来、地元大阪府下の選挙で連勝を続けてきた橋下の「常勝神話」を、ついにその足元で打ち破った。「堺市民と維新との戦いだった。市民の勝利だ」竹山市長は当選あいさつで語った。
これまで市長選に対する市民の関心は低かった。この20数年来、堺市長選挙は過去6回のうち5回までが30%台という惨状。40%を超えたのはたった1回、竹山氏が橋下知事(当時)の応援を受けて立候補した前回(09年)市長選の43・9%だけである。今回は50・69%。大阪都構想に対する市民の怒りが投票率を押し上げた。ちなみに、50%を超えたのは42年ぶり。

熱く燃えた街頭

これまで大阪府内でたたかわれた選挙とくらべ、街頭の様子がまったく違った。市民グループがまくビラに「どっちのビラ」と聞いて竹山側だとわかるとほとんどの人が受け取っていく。「期日前投票してきたわ。もちろん竹山さんに」どの街頭でもこのような声がかかる。「竹山派」市民が生き生きとしている。若者が駆け寄ってきた。「維新には絶対勝たせたくない。橋下が出てきてから僕らの仕事はなくなる、給料は安くなる、いいことなんかひとつもない。竹山さんに勝ってほしい」と握手をしていく。
創意あふれるアクションが繰り広げられた。フランシスコ・ザビエルを模した「不思議な南蛮人・ザビ子」はすっかり人気者に。パンダの着ぐるみでビラまきしていた人は親子連れの記念撮影に引っ張りだこ。バックではバイオリン、アコーデオン、三線などが「明日があるさ」の替え歌とともに演奏されている。シール投票は「都構想反対」で埋まっていく。
9月23日には市内の大仙公園で2千人を超える人が集まり「堺はひとつ市民パレード」がおこなわれた。28日選挙運動最終日、午後7時から8時まで堺東駅頭での竹山候補最後の演説に2千人を超える人々は「堺はひとつ」のコールでこたえた。

維新乱調化

維新はまったく意気が上がらない。橋下が来ても人が集まらない。告示日、堺東駅での橋下の演説には200〜300人ほど。候補者の西林はほとんどしゃべらない。
運動員の質が悪い。「堺はひとつ」のロゴ入りTシャツを着た人が手を出してもわざとそっぽを向いてビラを渡さない。市民グループのビラまきに対して維新グループが「ここはうちの陣地だからこの線から中に入るな」とチンピラのようななんくせをつけてくる。
さらに、別の維新の堺市議が、街頭演説をしている竹山市長に前後見境なく食ってかかるということまで起きている。橋下その人からして、竹山陣営の街宣車を「嘘八百号」と罵倒したり、最終日の演説でも「こらあ、自民、共産、辻元(清美)出てこい」とやくざまがいの振る舞いを見せる始末だった。
文字通り審判は下された。都構想もろとも橋下を打倒しよう。〔6面に関連記事〕

5面

74年10・31寺尾判決をのりこえ
石川さんの再審無罪を

「本当にもう少しです。あと数刻後に寺尾裁判長の『原審破棄』の声と同時に皆さん方と一緒に何でも自由にお話ができ、そして自在に活動ができる我が身の自由を思えば胸がわくわく、大地に足がつかぬような浮ついた心を禁じ得ませんが、しかし完全無罪判決が出されたからといって闘いはこれで終結するわけではなく、権力側も面子にかけてもこのまま引き下がらぬと思われるだけに、今後の闘いはさらに厳しいものになるものと予想されます。どうかもうしばらくお待ちください。では元気に闘ってまいります。」
冒頭にかかげたのは1974年10月31日の東京高裁・寺尾判決を前にした石川一雄さんの手紙である。

警鐘を乱打

それから38年後の2012年の10・31アピールで石川さんは次のように訴えた。
「寺尾判決の日は誰しも無罪を確信していた筈なのに、どんでん返し的な『有罪』判決に私や弁護団の憤りは今も言葉に表すことができません。・・・いよいよ再審闘争も最終段階に突入したものと捉え、支援者皆さん方に警鐘を乱打せずにはおられません。何よりも寺尾判決の二の舞を踏んではならないと私は自分自身に言い聞かせ、現在の担当裁判官が『再審開始決定』を出すまでは、『寺尾判決』を肝に銘じて、えん罪が晴れるまでとことん闘い抜く決意でおります。従って此の様に狭山再審闘争が深まりゆき、検察当局との対峙を回避して、狭山闘争の歴史的勝利はありえませんので、皆さん方に最後のお願いとして、断固勝利に向かって追撃し抜く態勢を戦闘的に打ち固めるご支援を賜りたいのであります。」

新たな狭山再審運動

あの日から三九年。石川一雄さんは今なお東京高裁の前にたち、無実を訴え続けている。第三次再審闘争の最終段階で、石川さんの人格に触れた人々の手で、新たな狭山再審運動のうねりがはじまっている。
一つには、インターネット上のソーシャルネットワークを活用した多様な取り組みである。例えば、「facebook狭山事件の再審を実現しよう・交流掲示板」というページがある。管理人は、昨年、東京高裁前でビラを受け取ったことから再審運動に取り組むことになったとある。
そこでは、「石川さんが高裁前で何を訴えたか」に始まり、全国津々浦々での集会やビラまきに至るまで、「大小」の取り組みがリアルタイムで報告されている。これまで組織に属さない人にはまったく届くことのなかった各地域での集会や行動のお知らせも、きめ細かく掲載されている。狭山闘争をすべての人々に開かれた運動にしようとするこのような諸個人の努力が開始されたことは、狭山闘争の歴史の上でも画期的なことだ。
また、石川一雄さんその人を主人公に据えた初のドキュメンタリー映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」が完成し、上映運動が開始された。この映画は、3年前、金聖雄(キム・ソンウン)監督と石川さんとの出会いからはじまり、800名を超える人々のカンパで制作されたという。

狭山闘争への再結集

そのような若い世代の行動に励まされながら、70年代の狭山闘争を経験した人々、その後運動から距離をおかざるをえなかった人々が、もう一度、今度こそ狭山再審をかちとろうと、たちあがりはじめている。
新たな狭山再審運動を共に担い、闘おうとする時、我々の主体的総括が問われる。それは決して小さくない問題である。ある活動家は「革共同が分裂しなければ決して席を同じくすることはなかった」と語ったという。狭山闘争の全人民的発展を願う人々の中に、中核派のセクト主義あるいは政治利用主義に対する厳しい批判があることをわれわれは真摯に受け止めなければならない。
より積極的に言えば、寺尾判決を今日的に乗り越えるために、69年浦和地裁占拠闘争から74年寺尾判決に至る過程で、狭山差別裁判糾弾闘争をよびかけ、楽観論に警鐘乱打し、狭山闘争の戦闘的発展を牽引したといえる我々の総括が問われているのである。

石川さん50年の闘い

かつて、われわれは、石川さんの無実の叫びに接し、狭山闘争の勝利のためにこそ我々の運動の存在意義があるとさえ感じていた。いや、同志の中には、狭山に勝利するために革共同に結集した同志も少なくない。
しかしながら我々は、この39年の間に、ともすれば石川一雄さんの闘いを見失い、我々自身の狭山差別裁判に対する怒りと行動を後退させてきた。この痛苦に満ちた現実を率直に認め、石川さんをはじめとする全ての人々にお詫びしたい。
われわれは、すでに、80年代の党による代行主義的な武装闘争(先制的内戦戦略)の誤りを明確にしてきた。寺尾判決の背後にあって、今なお再審を阻み続けている国家の政治的暴力に対して、われわれは、石川さんの無実の叫びを全社会に告げ知らせ、全人民の力を結集してこれと対峙し、闘わなければならない。

共産主義者の原点

また、1991年のいわゆる5月テーゼ以降、党内に急速に深まった労働運動と部落解放闘争との分業主義的分断、部落解放闘争に対する党の随伴者的態度を乗り越え、狭山差別裁判に対するコミュニストとしての原点を取り戻して闘おう。それはどのようなものだったか。1974年5月、寺尾判決を前に故本多書記長は以下のように述べている。
「・・・狭山闘争そのものの歴史的な勝利のためのたたかいこそ、部落解放闘争の革命的、戦闘的な前進の当面するもっとも主要な土台であり、まさに死力をかたむけてそれをたたかいぬくことによって、はじめて部落解放闘争の革命的、戦闘的前進もなしとげうることができるのだ、ということである。 狭山差別裁判は、無実の石川一雄氏を部落民であるというただそれだけの理由で犯人にしたてあげた、という点において、まったく許すことのできない部落差別の攻撃である。われわれは、石川一雄氏の一二年間にわたるたたかい、そのくやしさと怒り、その確信と希望をしっかりとうけとめるとともに、それを実践的なバネとしてこの部落差別の権力犯罪を徹底的に糾弾し、それをうちくだくために、血債をかけてたたかいぬかなくてはならない」
この論文は、今日「狭山闘争の勝利は賃労働の廃絶と一体である」などと述べている安田派の諸君の狭山再審の彼岸化のまさに対局にある。だが、現実の狭山闘争と無縁な安田派が問題なのではない。本多論文が提起した課題が今なお、我々の目の前にあること、我々が39年前の原点に立ち戻って、もう一度その課題を引き受けて闘うことが問われているのだ。

全証拠の開示、再審へ

2009年の三者協議開始と証拠開示勧告以来、4年。150点もの新証拠が開示されたが、事実審理は開始に至らず、決定は来年に持ち越しになると言われている。開示勧告で指示された八項目のうち三項目が未だ開示されていないことをはじめ、検察が隠し持っている証拠を開示させることが再審開始の最大の鍵である。
検察の証拠隠しを糾弾し、証拠開示と事実調べを迫る大衆闘争が全てを決する。寺尾判決39カ年を糾弾する闘いに全力で起ち上がろう。石川一雄さんの無実の叫びに連帯しよう。かつて狭山闘争を共にたたかった仲間に、そして、狭山を知らない世代に、石川さんの不撓不屈の闘いを伝え、寺尾判決を乗り越える闘いを共に作りだそう。(風間憲一)

〈闘争案内〉

寺尾判決39カ年糾弾! 再審実現!10 ・27狭山中央集会

とき:10月27日(日) 12時半開場 午後1時開会
ところ:東京・銀座キレイが丘〔地下鉄丸の内線「銀座駅」下車〕
主催:部落解放同盟全国連合会
※集会後、デモ

狭山事件の再審を求める市民集会

とき:10月31日(木) 午後1時〜2時半
ところ:東京・日比谷野外音楽堂
主催:狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会
※集会後、デモ。
※午後5時25分より、日本教育会館にて映画「SAYAMA みえない手錠をはずすまで」完成上映会

“払えないようにしたのは誰や”
芦原住宅裁判控訴審で不当判決

1997年の家賃値上げ以来、値上げ前の家賃を供託してきた兵庫県西宮市芦原地区の市営住宅住民20世帯に対して、8月28日、大阪高裁は住宅明け渡しを命じる不当判決を下した。住民と弁護団は最高裁に上告した。
判決後の集会では、「家賃を払えないようにしたのはいったい誰や」「裁判所は私らにどこに住めというのか」という怒りの声が渦巻まいた。

一審は完全勝利

1996年の公営住宅法改正による応能応益制家賃の導入以来、全国各地の同和・改良住宅住民により従前家賃を供託する抵抗闘争が展開され、法廷闘争に発展。西宮市では、第一審で住民側が完全勝訴(値上げは違法の判決)した。恐れをなした国は、二審に訟務検事(弁護士資格を持つ法務省の官僚で、裁判では主に国の代理人を務める)を行政側代理人に送り込み、住民側が逆転敗訴。住民らは、不足家賃の分割払いを求めて調停を申し立てたが、西宮市はこれに応じず、一方的に「住宅明け渡し」の二次裁判を提訴してきた。

公営住宅廃止ねらう

有無を言わせず家賃を値上げし、抵抗するものあればこれを暴力的に追い出す。地方自治体の行政としてあまりに異様だ。事実、全国各地の同様の裁判では、神戸市、尼崎市、広島市など、自治体側の建物明け渡し請求を棄却する判決が確定しており、また、値上げ分の長期分納を認めて解決を図る行政も多い。
西宮市の強硬な態度や、今回の判決の裏には国の方針がある。
国にとって、応能応益制家賃の導入は、民営化の一環としての公営住宅(住宅の公的保障)全面廃止への一里塚に他ならない。芦原地区住民に対する暴力的な住宅追い出し攻撃は、居住権侵害に対する抵抗を一掃するために国の側から仕掛けられた「戦争」だ。
すべての人々の居住権と生存権を守るために、芦原住民にかけられた攻撃は決して見過ごすことはできない。時間はまだある。芦原住民と連帯して、追い出し反対の署名に取り組もう。西宮市を「追い出しやめろ」の声で包囲しよう。

6面

外国人差別にNO!
許すな差別・排外主義 9・23ACTION

「私たちの仲間に手を出すな!」排外主義と闘う市民が都内をデモ(9月23日)

「差別・排外主義に反対する連絡会」が主催するこの行動は、今回で3回目となる。安倍政権の登場と、それに呼応して広がる排外主義。他方、この排外主義者に対する市民の怒りも高まっている。前日には3千人を超える「差別撤廃 東京大行進」がおこなわれた。こうした情勢の下、この日午後2時に新宿・花園西公園には、さまざまな闘いを担う200人を超える仲間が集まり、デモをおこなった。
連帯のあいさつとして、前日の東京大行進の主催者である金展克さんが発言。また、新大久保での排外主義者のデモに対する取り組みをおこなっている「民族差別への行動お知らせ隊」からの連帯メッセージが読み上げられた。集会の主な発言は以下の通り。

〈高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会〉

「安倍政権が発足してまず最初におこなったのは、朝鮮学校を高校無償化の対象から外す省令改悪でした。5月17日に国連の社会権規約委員会から日本政府に対して多くの勧告が出され、朝鮮学校について『無償化から排除するのは差別。直ちに適用すべし』との勧告が出されました。しかし政府は、『国連勧告に従う義務なし』との閣議決定をおこないました。他方、韓国では7月末にソウルで『平和のためのシンポジウム』がひらかれ、私たちはその中の『日韓過去清算市民報告会』に招かれました。韓国の市民運動では、『この朝鮮学校の問題は過去清算の問題である』と位置づけ運動していただいています。ここでの決議文を持って、韓国からも参加していただき、文科省申し入れをおこないます」

〈関西大弾圧救援会・東京の会〉 鵜飼哲さん

「大飯原発再稼動阻止闘争の後、関西では、立て続けに大きな弾圧事件がありましたが、この逮捕者の中の韓基大(ハン・キデ)さんは、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの集会防衛で在特会とぶつかったことについて嫌疑をかけられるということがありました。そこで、反弾圧運動と反レイシズムの運動はつながっていく。『私たちの仲間に手を出すな』というスローガンは、30年ほど前にフランスの反人種差別運動で掲げられていたものです。この運動に私も関わっていましたが、その頃フランスではレイシストの暴力で年間約10人の北アフリカ系の青年が殺されるという事態にまでなっていました。今年になって、排外主義者が新大久保などに『朝鮮人を殺せ』など、とんでもないプラカードを持って登場してきましたが、こうした中で報道こそされていないけれど、実際には殺されている人がいると私たちは考えるべきではないでしょうか」

〈ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク〉
 辛淑玉(シン・スゴ)さん

「憎悪殺人はすでにこの社会の中で起こってきたのです。1997年に日系ブラジル人少年のエルクラノ君14歳が日本人少年たちによって殺されました。ナイフで刺され、木刀などで叩きのめされ、病院に運ばれましたが『親を悲しませることはしていない』と言い残して亡くなりました。さらにその前には関東大震災の際の朝鮮人をはじめとする大虐殺がありました。私は、日本で生まれ、日本で育ち、東京がふるさとで、三代続いた江戸っ子です。だけど、朝鮮人として生まれたこと、韓国籍であること、そして女であること、それはすべて私の一部であり誇りです。それらが一つでも否定されることは私の否定になってしまいます。在特会などの排外主義運動の中には、私と同じような出自の者がいます。でも、加害者が出てほしくないと思います。ひどいことをして加害者になることはやはりつらいと思うのです。私は、ヘイトスピーチをしている人たちと、不愉快でもご飯を食べる関係を築きたいと思います。嫌いな人ともいっしょに生きてゆきたい。」

このほか、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク、大阪鶴橋でカウンター行動をしている人、反天皇制運動連絡会、日韓民衆連帯全国ネットワークが発言した。
自民党が議席の多数を占め、排外主義者の攻撃が強まっても、民衆による運動は幅としても深さとしても強化されていることを実感した行動だった。(東京 K)

朝鮮学校襲撃事件裁判で
在特会に賠償命令
京都地裁

2009年12月から翌年2月にかけ3回にわたって、在特会らが、京都朝鮮第一初級学校(当時、京都市伏見区)を襲撃し、施設を破壊したり、校門前や周辺で差別街宣を繰り広げた。この暴挙に対し、学校法人・京都朝鮮学園が、在特会(代表:桜井誠)および、そのメンバーら9人に対し「学校周辺での街宣の禁止、損害賠償」を求め2010年9月に民事訴訟を起こした。
以来、3年間にわたり裁判が続けられ、10月7日、京都地裁で判決が下された。判決は、在特会らによってくりかえされたヘイトスピーチを差別と認定、「著しく侮辱的、差別的で人種差別に該当し、名誉を毀損する」とし、合計1226万円の賠償を命じ、同学校(山科区に移転)の校門を起点に半径200メートル以内での街宣を禁じた。
裁判には180人が集まり判決を注視した。出廷した在特会の八木康洋副会長は控訴については明言しなかった。事件から4年、学校関係者や支援の運動がひとつになって切り開いた勝利だ。

読者のこえ 

生活保護のカット許せない

糖尿病やその他の病気のため長期に療養したり働いたりしながら、生活保護を獲得して6年になります。体調が悪く病院にいくのもしんどくて救急車を呼ぼうとしたことも何度か・・・。そういう状態なので『未来』を読むと本当に元気が出るのですが、一方で何もできていない自分への大きなプレッシャーにもなります。
今回の生活保護改悪に対する最近の記事や資料は、少し難しいところもありましたが一人で孤立した生活のなかで大きな励みになりました。「不服申し立て」のことは、知っていましたが、いまの身体ではいっしょに行動する自信がありません。できる範囲のことをしたいと思っています。

生存権否定に怒り心頭

私は単身者ですから、今回の改悪で5千円ほどカットされます〔注1〕。8万円からの約5千円削減ですから、まさに憲法25条の生存権の否定です。もっとも弱い立場の人間への憲法改悪が進行しているのだと、怒り心頭に発しています。
ケースワーカーは来るたびに「身体の具合はどうですか。仕事をしてください」といいます。病気を抱えて働けないから生活保護で生きているのです。阪神大震災のあとの「仕事開発事業」のような、短時間の軽作業の仕事を行政がつくり、そうしてから「仕事がありますよ」というのがスジでしょう。
私は、震災後の「借り上げ復興住宅」〔注2〕に住んでいますが、いま震災20年を期に追い出されようとしています。ここに住み続けることが、私の大きなたたかいであると思っています。今後とも、いい記事、報告を送ってください。失礼します。(S・K)

〔注1〕今年8月に1回目、続いて14年4月、15年4月とカットされる。
〔注2〕阪神淡路大震災のあと復興住宅建設が追いつかず、URや民間住宅を市や県が借り上げ「復興住宅」として運用しているもの。震災から20年を前に「追い出し」がおこなわれている。
〔注〕=編集部

民衆のたたかいの成果

『未来』のウェブサイトをいつも見ております。
貴サイト上にて、堺市長選についての記事を見ましたので、選挙の動向に注目していましたが、竹山氏の勝利を私も喜ぶ一人です。
堺市民がマスメディアの世論誘導、維新の会のデマを打ち破る選択をしたことは、全国の民衆のたたかいの大きな成果だと思いますし、教訓として引き出せることも多いのではないでしょうか。
136号の記事を読んで、「住民に依拠していない」ゆえの維新の会の決定的な脆弱さも見えたと思いました。
メールを送るのをずっと躊躇していましたが、今回の堺市長選の結果が嬉しいことだったのと、「いつもサイトを見ていますよ!」ということもお知らせしたく、メールをお送りいたします。(Y・M)