政府に反対したらスパイ扱い
秘密保護法の制定許すな
安倍政権が、10月15日開会の臨時国会に「特定秘密保護法」案(以下では「秘密保護法」とする)を提出し、自公、維新などの右翼反動勢力の多数を頼みに成立させようとしている。これは、憲法改悪と一体で、日本を戦争国家へ転換する大攻撃である。
秘密保護法とは、@「防衛」、A「外交」、B「外国に利益を図る目的の安全脅威活動」、C「テロ活動の防止」に関する行政機関の持つすべて情報を行政機関の長が、誰のチェックも受けずに「特定秘密」に指定できるようにするもの。その「特定秘密」を取得するためになした、@偽計、暴行、脅迫、A窃取、B施設への侵入、C不正アクセスが処罰の対象となる。取得行為の未遂、共謀、教唆なども処罰の対象になる。国会議員を含めた公務員および民間人が対象となる。その罰則は、最高懲役10年である。
全政府情報が秘密に
「防衛」に関しては、防衛省の持つすべての情報(軍事情報)のみならず、兵器生産の契約などの情報を「特定秘密」に指定することができる。
「外交」は、外務省のみならず全省庁が外国との交渉を行う場合の情報も「特定秘密」に指定することができる。
「外国に利益を図る目的」の認定は、政府や警察がおこなうもので、基準の規定はない。外国旅行をしただけで「外国に利益を図った」という認定が可能になる。
秘密警察
「テロ活動の防止」とは、政府に反対するあらゆる行動に対する監視・弾圧を意味している。警察は「テロリズム」を「広く恐怖または不安を抱かせることによりその目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」と規定している。
ここで重要なことは、「暴力主義的破壊活動」とは何かということだ。「暴力主義的」とは暴力そのものではない。政府にとって不都合なことは何でも「暴力主義的」活動ということになる。「破壊活動」についても、施設などを物理的に破壊することだけをさしているわけではない。例えば、辺野古の新基地建設に反対する座り込みでも、政府の政策を「破壊」しているとみなされる。そしてあらゆる政治活動にたいする政府の監視行動が民衆の目から隠される。安倍政権は「秘密警察」を日本社会に登場させようとしているのだ。
独裁国家への道
この「特定秘密」指定は何度でも更新でき、公文書管理法が適用されない。「特定秘密」指定のまま文書を廃棄することも可能なのである。これでは、「特定秘密」指定が正しかったのかどうかの検証すらできない。日本には、公文書を永久保存することを決めた法律がないため、秘密指定解除の方式もない。
1945年の敗戦時に、軍部と法務省を中心に戦勝国に掌握されると戦犯として訴追される証拠文書を大量に焼却・廃棄したのと同じことをこの法律でおこなおうとしているのだ。まさに、行政府独裁を保障するための法案である。
主権在民の否定
石破茂・自民党幹事長は、「あらゆる基本的人権、個人の権利を侵害から守れるのは、最終的に日本国しかない。国そのものが揺らいだら、『知る権利』などと言っておられなくなるのだ。そういう意味で、『知らせない義務』は『知る権利』に優先するというのが、私の考えだ」(『中央公論』2012年8月号)と言っている。
政府には「知らせない義務」があるとする国家主義思想が、安倍政権の主流となっている。自民党の改憲案と一体のものである。秘密保護法の制定を許すな。
不服審査一斉請求が7671件に
生活保護費引き下げ反対で
記者会見後、府庁にむかう申請者と支援の人たち(9月17日 大阪市内) |
9月17日、「生活保護基準引き下げにNO! 全国訴訟ネット」(訴訟ネット)と「全国生活と健康を守る会連合会」(全生連)などが呼びかけてきた、生活保護費引き下げへの行政不服審査の一斉請求が山場を迎えた。
この日、東京では厚労省で、大阪では日赤会館で記者会見がおこなわれ、全国各地で一斉に都道府県の長に対して提出行動があった。この日までに提出または提出が決まったのは、訴訟ネット関係が1130件、全生連関係が6541件、合わせて7671件となった。これは世帯数なので人数になおすともっと多い。1万人に達しているのではないかと発表された。また、提出期限は9月下旬までなのでそれまでにまだ提出が見込まれる。
過去の審査請求は、老齢加算の減額に反対して出された2009年の1086件が最高だ。いかに今回の引き下げがひどいものであり反対する人が多いかということだ。
生活保護費のうち、家賃、医療扶助などを除いた生活扶助費が平均6・5%、最高10%、総額670億円も引き下げられるという、生活保護始まって以来最大の改悪だ。今年8月1日、来年4月、再来年4月の3回に分けて約1年半の間に引き下げがおこなわれる。
年齢などによって率は違うが平均額だと、一人世帯で生活扶助費を8万円もらっている場合、7万5千円以下に下げられる。母子世帯など世帯の人数が多いほど下げ幅が大きく、夫婦と子ども二人の世帯では最大の月2万円も引き下げられる。死ねということか。
削減後の生活実態
引き下げによって食費や電気代を削らないといけなくなったという声が多い。「生活保護になって痩せたがもっと厳しくなる」「クーラーを使えなくなって熱射病になった」という声。新聞代などの教養・娯楽費は真っ先に削られていくが、もう削りようがないという声も多い。母子世帯で、「子どもには我慢をさせてきたが、塾や食事を我慢させないといけなくなった」という声もある。
「障害者」世帯では、車椅子で動ける家の家賃が高いこと、24時間介助などの長時間介助の必要な人だと、介助者が休むスペースが必要なため、家賃扶助額(大阪などで4万2千円)を超えた高い家賃の家を借りざるを得ない。その分は生活扶助費に食い込んでいるのに、それをさらに下げられたらどう生活すればいいのか。
「精神障害者」の場合、生活苦が新たなストレス・抑圧要因となって症状を悪化させるおそれがある。ひどい場合は自殺念慮が生じるおそれもある。生活苦を悲観した自殺は多い。実際に、生活保護を受けられるようになって、生活苦からの自殺を思い留まり、生きる希望が生まれてきたという人が、それを再び奪うのかと今回の審査請求を決意したと言っている。
憲法を守らせる
生活保護を受けている人は、病気、「障害」、高齢などで働けなかったり、働く場がない人や、働いても賃金が生活保護費に達しないワーキングプアなど、他のどんな方法でも生きていけなくなった人たちだ。
行政用語で他法他施策というが、貯金も保険もすべて取り崩して丸裸にならないと生活保護は受けられない。高額なものだと持家も認められない。生活保護世帯の多くには、憲法が保障する最低限の健康で文化的生活など既に存在しないが、それでも生きていくには憲法のこの条文に頼らざるを得ない。食費を削る以外に削るところがないという生活のどこが健康で文化的生活だ。
老齢加算の減額などで、友人、親戚付き合いも出来なくなっており、すでに最低限生活を下回っている。そればかりか、母子加算、障害加算の減額、廃止が俎上に載せられている。飢え死にする人を出してはいけないというのは人類の共通の理念だろう。しかし、この日本では餓死する人が後を絶たない。憲法など存在しないかのような状況が既に存在する。
ただ単に生物として生きていればよいという金額では人間は生きられない。人は社会の中で生きている。人間として生きている意味を見いだせるのが保障されるべき最低限の生活だ。生活保護引下げでじわじわと殺される人が出るようなことは、人間として許してはならない。
今回の引き下げは、最低限の「健康で文化的生活」を最後的に奪うものだ。憲法を守らせ、労働者民衆の力で、健康で文化的な生活を国家に保障させなければならない。
7671件・1万人の決起は、弱い者いじめで票を稼いできた安倍政権の弱点を痛撃している。
今回の審査請求は行政への不服審査請求。棄却されたら違憲・違法を問う行政訴訟に訴えることが準備されている。
生活保護の人もそうでない人も、審査請求を推し進め、違憲訴訟を支援しよう。(高見元博)
2面
安倍政権の「雇用改革」と労働運動の課題(2)
グローバル資本の欲望―「国家戦略特区」
安倍政権のもとで、「経済再生」「強い経済をとり戻す」と銘打った新自由主義構造改革が本格的に動き出している。昨年12月に発足した日本経済再生本部(本部長・安倍晋三)がそれであり、その指針が「日本再興戦略―JAPAN is BACK―」(6月14日閣議決定)である。本稿では、そこで打ち出された「国家戦略特区」が何をめざしているのかを、産業競争力会議で論議されている内容を中心に明らかにしていきたい。
1.国家戦略特区
「再興戦略」の目玉に雇用制度改革―国家戦略特区がすえられることが明確になってきた。
「投資家、海外市場、海外メディアの反応」もそこに向いている(9月18日、産業競争力会議資料「雇用人材分科会の今後の検討について」)。
国家戦略特区ワーキンググループ(以下、WG)は、産業競争力会議の会合のなかで「立地競争力の強化」のために、「内閣総理大臣の主導の下、強力な実行体制」で「これまでとは次元の違う特区制度の創設」をめざして、5月9日、官邸に設置された。八田達夫(大阪大学社会経済研究所招聘教授)を座長に5人の財界人と学者で構成されている。目的を「世界中の企業と人材が集まる国際スーパー都市」「新たなモデルの地方経済」を作るとし、「岩盤規制」を打ち砕く「規制改革の実験場」として「特区」を位置付けている。
産業・雇用分野では「グローバル競争対応の雇用制度」を掲げ「特区内で、特にスタートアップ後間もない企業や外国人比率の高い企業などを対象に」「解雇・有期雇用・労働時間ルール」の規制を外すという(9月20日、産業競争力会議課題別会合資料)。
「労政審は必要ない」
WGでは法を無視した論議がつづけられている。
雇用問題で厚生労働省側は「雇用は特区になじまない」、「労働者の公平、企業の公正競争に関わるので、全国一律でなければならない」、「雇用ルールは労使間協議が原則で、労政審で審議が必須」という見解を示した。これに対して「そんなこといったらおよそ特区は成立しない」、「制度の差異は否定されない」、労使間協議が「労政審である必要はない」という暴論が横行している。
また特区内での「不当労働行為」や「契約強要・不履行」の危険性の指摘や「有期雇用の無期転換請求権放棄は不可」という厚生労働省の見解に対して、「監視機能」で足りるとし、資本の無法に対するチェックを放棄することを平然と述べている(同前)。
TPPと一体の実質改憲
安倍は9月20日の産業競争力会議課題別会合で「国家戦略特区は、規制改革の突破口だ」と号令を発した。改革の名の下、戦後の労働法制と慣行をことごとく破壊するものだ。これらが10月のTPP受入れと一体ですすめられようとしている。
労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の労働三法は憲法27条、28条に根拠づけられた「普遍立法」である。これを破壊するということは実質的な改憲攻撃そのものだ。
これまでの動きを整理してみよう。8月から規制改革会議の雇用WGや国家戦略特区WGの各会合が労働者派遣制度の見直しなどの雇用改革で動き出した。厚生労働省も「労働時間法制」「多様な働き方の導入促進」「労働者派遣制度の検討」「雇用保険制度」などの諸項目をあげ、各部会、有識者懇談会などが次々と開始されている。こうした一連の動きのなかで、司令塔の位置を占めているのが産業競争力会議である。
その産業競争力会議は、今年前半に12回の会議を重ね、9月2日に雇用・人材、農業、医療介護、フォローアップの各分科会を設置した。雇用破壊は、ここが本格的に手を染めていくことになる。その第一回会合が9月18日、20日と立て続けに開催された。
「世界トップレベル」
産業競争力会議の目的は「世界でトップレベルの雇用環境」の構築である。その内容は「世界標準の労働移動型ルールの構築」、「イノベーションを実現する多様で柔軟な働き方・人事制度改革」というものだ。まさに「成長戦略としての雇用制度改革」なのである。
安倍が今年2月の施政方針演説で述べた「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」とは実は、「失業なき労働移動」という名の雇用改革だったのだ。
それは、人件費カットや労働強化、そして解雇にかんする一切の規制を取り払おうとするものである。労働者に対する極限的な搾取・収奪を解禁し、24時間365日休まず働くことを強制できるのが、「世界トップレベルの雇用環境」の正体だ。それは月80時間〜100時間という過労死ライン(厚生労働省)の長時間労働と、重大な社会問題化している若年労働者の過労自殺を合法化するものである。
それを国家戦略特区という東京・大阪・愛知などの特定の地域や産業で実施しようというのである。安倍政権は「日本をグローバル資本の餌食として提供する」ことを公約して、世界の多国籍企業の呼び込みをはかっているのである。
2.特区で3つの無法
「国家戦略特区」構想のなかで、次の3つに絞って規制撤廃にむけた突破口を開こうとしている。
ひとつめは「解雇ルールの明確化」である。これによって解雇権濫用禁止、整理解雇4要件などの解雇規制を突破する。ふたつめは「非正規雇用の継続」で、5年継続雇用の無期契約請求権や改正労働契約法による非正規規制を突破する。三つめは「労働時間規制の適用除外」によって週40時間、一労働日8時間という労働時間規制を突破する。
いずれも現行法のもとでは違反あるいは問題ありとされるものばかりだが、特区の中ではすべて合法化される。
解雇自由へ
「解雇ルールの明確化」とは入社の際の労働契約書に解雇条件を明記するというものだ。「(遅刻や会社に損害を与えたら)解雇を受け入れます」と書かせる。限定社員(地域、業務、プロジェクト等)では、その地域での工場、支店、店舗が撤退したり、プロジェクトが終了したら自動的に労働者が解雇される。金銭解決よりも、さらに酷い。こういうことを契約書に書かせるのである。いままでは、そうした契約書の有効性が裁判で争われてきたが、今後はそうした争いを許さないための法案をつくろうというのである。
非正規雇用の永続化
非正規雇用労働者の無期契約請求権を放棄させ、5年をこえて低賃金の非正規雇用継続を資本に保障しようというのである。これは昨年改正された労働契約法で非正規雇用の改善の目玉であった無期契約転換を1年も経たないで反古にするもの。この間の資本の側の意見を全面的にとりいれたのである。
「労働時間規制の適用除外」=2007年に第一次安倍内閣が導入を狙いながら、労働者の怒りと闘いの中で葬り去られたホワイトカラーエグゼンプション(「残業代ゼロ法案」)を復活させようとしている。時間外労働という考え方をなくして、「労働した時間」ではなく「労働の成果」で支払い賃金をきめる。成果主義賃金を究極まですすめるものであり、最低賃金という考え方さえ無くしてしまおうというものである。いまでも、未払い賃金が横行しているのが労働現場の実態であるが、これを合法化するというのだ。
「憲法番外地」
こうした治外法権を認める「国家戦略特区」について今月にも地域を特定し、関連法案を臨時国会に出そうとしている。これを突破口にして全国・全産業に拡大し、社会のあり方を転換させることを目指して、来年の通常国会へ向けた突進がはじまった。
資本の利潤追求の欲望に限りない自由を与える「憲法番外地」(内橋克人)の出現を許してはならない。
橋下が労働特区提案
この国家戦略特区に大阪府と大阪市がいち早く手を挙げている。9月11日に27項目にわたる企画を政府に提案した。その内容は政府の雇用特区をうわまわる。
労働時間や解雇規制を緩和する「チャレンジ特区」や保険診療と自由診療の組み合せを認める「混合診療特区」が柱だ。「チャレンジ特区」には大阪・御堂筋のビジネス街を想定している。そこでは「一定の収入がある労働者を労基法の労働時間規制の対象外」とし、「能力主義で自由な労働条件をもとめる人材や競争重視の企業を集める」というのである。
特区では「法人税は免除も含む減税」や「外国人スタッフの就労要件緩和」も入っている。当日の記者会見で橋下徹市長は「労働法で守られなくてもいいという労働者もいるはずだ」と労働法破壊を公言したのである。かつて橋下は「最低賃金制度の廃止」も打ち出したことがある。ブラック企業のやりたい放題に大阪市が真っ先にお墨付きを与えようとしている。
アメリカの雇用と格差
産業競争力会議がいう「世界トップレベルの雇用環境」のモデルであるアメリカの雇用状況はいまどうなっているのか。それは「成長」などとはほど遠く、雇用状況は改善せず消費は低迷し続けている。8月末発表の今年第2四半期GDPは2・5%増といわれているが、これは雇用の改善とはかけ離れている。まさに「ジョブレス―量的緩和景気」が続いているのである。
今年8月、9月雇用統計では16万9000人雇用となったが、リーマンショックで失われた830万人の雇用を回復するのには「21年かかる」(9月6日付ニューヨーク・タイムス)といわれている。格差も拡大し続けている。米国内上位500社CEOの平均報酬と労働者の平均賃金格差は、09年の263倍から10年には325倍と拡大している(ワシントン政策研究所調査)。13年版米資産家上位400人の資産合計は2兆200億ドル(約200兆円、前年比20%増)。アメリカの国家予算約3兆800億ドルと比べてもその巨大さがわかる。半年以上職についていない長期失業者は失業者全体3分の1(以前は20%程度)となって、失業者の国となっているのである。この道を安倍政権は突き進もうというのである。
3.闘いの課題
闘う労働運動は、「雇用特区」という労働法制の全面転覆の攻撃がもたらす社会と経済の壊滅的影響を暴露し、これとの闘いを早急に構築しなければならない。戦後最大級の「労資決戦」である。それは、2007年に「ホワイトカラーエグゼンプション」を粉砕した闘いの再現というイメージではまったく不十分だ。このかんの反原発、反TPP、反貧困運動などあらゆる運動団体を網羅した壮大な闘いの構想が求められている。「反原発の闘いをこの1年やってきたが、その奥に雇用の問題があると気づいた」(山本太郎さんの当選後の発言)―この感性をもって運動をつくりなおそう。(森川数馬)
3面
郵政版「限定正社員」の正体
人員削減と賃下げで職場の荒廃進む
JP労組は8月、第6回定期全国大会を開催し、「頑張ったものが報われる新たな人事・給与制度」(以下、新人事制度と略す)などの運動方針を妥結承認した。大会議案には、新人事制度について、JP労組が結成当初から「郵政グループが将来にわたって、市場競争社会の中で成長・発展するためには、生産性向上によって企業価値を高め続けていくことが重要であり、そのためには社員がやる気を持ちつつ頑張って生産性を上げようと思える人事・給与制度が必要である」として「能動的に求めて」きたものであることが臆面もなく書かれている。
「頑張ったものが報われる」というスローガンは、ブラック企業が掲げているもの。労働組合がそれを掲げること自体許されない。今大会の報告を見ると、そのような原則的な意見はもはや見当たらず、反対意見でも、具体的にせめてこうして欲しいなど、現実に新人事制度が適用されるときにある程度改善されるかのような幻想を持った意見しか見られなかったように思う。それでも運動方針案に対する一票投票の結果は、賛成336票に対して反対124票という数字を示し、少なくはない反対票が出た。
今後、すでに大変な状況になっている職場が、新人事制度によってますます厳しくなるのは必至であり、様々な怒りの声が必ず噴出してくる。そうした怒りを日々掘り起こしていくためにも、新人事制度の批判をしていかなければならない。
「(新)一般職」
「日本郵政が限定正社員」「日本郵政が成果給」などと、JP労組大会を待たず大手メディアが報道したように、新人事制度の核心は、一つは成果主義賃金制度であり、もう一つは「(新)一般職」といういわゆる「限定正社員」の導入である。今回は(新)一般職について見てみる。
JP労組新聞7月1日(第130号)に新人事制度の概要が記されている。その中で、(新)一般職のポイントが「・・・働き方の多様性やワークライフバランスの推進に応じた、業務範囲と転勤範囲が限定的なコースを創設」「給与水準は期待役割等をふまえ、現行の月給制契約社員と正社員(担当者クラス)との中位程度(定年時)で設計」と表されている。安倍政権の「雇用改革」、解雇の自由化を狙う攻撃と完全に軌を一にしたものであることがこうした文言からもうかがえる。
政府の産業競争力会議などが打ち出した限定正社員とは、勤務地や職種等を限定することでこれまでの正社員と区別はするが、「非正規雇用よりもましな待遇」とふれ回っているものである。しかし、本紙133号で暴露しているように「正社員を期間限定、研究限定・・・という形で選別して『再雇用』し、労働者全体をいつでも転職=解雇に追いやることが可能な状態に置こう」とするところに狙いがある。
郵政の(新)一般職が打ち出された当初は、期間雇用社員にとっては満点にはほど遠いにしても、正社員登用へのハードルが下がるのではないかなど、待遇の改善を期待させる面があった。
しかし会社側が示した「労働力構成推移」は、やはりそんな甘いものではないことを示していた。郵便事業部門で働く労働者は今年度初めで全体で約177200人。うち期間雇用社員は約半数の8万人ぐらい。会社側が描くあるべき姿(何年後かは明示されていない)としては全体でほぼ1割、17700人を削減し159500人とした上で、正社員比率はほんの少ししか上がっていない。結局、期間雇用社員はほとんどがそのまま据え置かれる。幻想すら持ちようがない。
さらに現在の正社員=主任・一般の労働者が、あるべき姿では3万人以上も減って、(新)一般職は39500人となっている。新人事制度の下で現在の主任・一般は地域基幹職という管理職に進むことができる区分になり、(新)一般職に降格されることはないと言われているが、このあるべき姿は、退職などによる自然減を超えて明らかに(新)一般職への降格も目論まれているように見える。
配転をちらつかせたり様々な恫喝により降格を迫られていくことになるのではないか。そもそもあるべき姿として全体で1割も人員削減を果たそうとしていることこそが、(新)一般職導入の本質を表している。
さらなる差別と競争へ
一般職と名前を付け、「業務範囲と転勤範囲が限定的なコース」と、従来の働き方と違うかのような装いを凝らしても、実態は現在の正社員の業務内容とほとんど変わりない。転居をともなう配転がないと言っても、かつて活動家を大量に他局へ飛ばした「人事交流」という名の強制配転のレベルのような配転は(新)一般職でも想定されているのである。
これで定年まで働いたとしても年収ベースで最高500万円そこそこ。勤続20年の正社員の平均が650万円となっているのに比べて大幅に引き下げられるのである。そして、(新)一般職の導入は、もともと正社員とおなじ業務をこなしている期間雇用社員をいっそう差別と競争の中にたたき込むことになる。
慢性的な要員不足
9月に入って、早くも会社側が用意した新人事制度の冊子が一人一人に配られ、説明がはじまっている。現場の状況は新人事制度に対してはまだまだ鈍い。
しかし全国大会などでも多くの意見としてあげられたのは慢性的な要員不足である。2カ月で50時間を超える超勤をする労働者が続出し、悲鳴にも近い声があがっている局もある。期間雇用社員を新たに雇っても、即戦力のように使おうとした結果、放置することになり、長続きしない。
また、今は期間雇用社員も一定の訓練・研修を事前に受けてくるのだが、その研修所がまたひどい。再雇用された元幹部たちがパワハラまがいの指導をおこない、訓練の段階でやめていくという事態がおこっている。
現場は確実に荒廃しつつある。誤配、不着などのクレームも後を絶たず、交通事故も頻発しているが、管理者はミスを犯した労働者を追及するばかりである。新人事制度と一体で、データを示して評価などを補完する役割を持つDOSS(デリバリー・オペレイション・サポート・システム)というものも導入(現在試行中)され、労働者は自分で自分の管理を強制させられている。携帯端末を使って、作業ごとの物数やバイクのメーターなどあらゆる事項を入力しなければならない。このDOSSの操作が実に煩雑で、特に年配の労働者は相当苦労している。そうでなくとも労働密度がまた一段と増している。
このような状況の上に、新人事制度で1割の労働者を減らそうとしているのである。「こんなことが許せるのか」と仲間たちに訴えを強めていかなければならない。(労働者通信員 N)
がれき説明会弾圧第3回公判
“裁かれるべきは政府だ”
●第3回公判
9月17日(10:00〜12:30)
前回までと違い、大法廷ではなかったため、45の傍聴席は満席で、法廷前の狭い廊下に、入りきれない支援者がひしめく状態になった。
警官が突入してきた 韓基大(ハン・キデ)さん
前回、途中で終わった被告人質問を弁護人がおこなった。韓さんは「11・13説明会」の2日前に開かれた「関電本店1万人包囲」の集会での発言の趣旨について、「11・13は、がれき焼却を止める最後のチャンス。説明会を止めなければと考えた。」
逮捕時の様子として、2階にいたときに、警察部隊が玄関ホールに突入してきたので、階段を降りていくと、階段を降り切ったところで、両手両足をつかまれ、地面すれすれに引っ張っていかれ逮捕された、ことなどを語った。
続いて、検察官による反対質問に移ったが、韓さんは、「検察官に答えるつもりはありません」と拒否。裁判長から、韓さんへの質問がいくつかあり、終了。
人として当然のこと Uさん
まず、主質問を弁護人がおこなった。
Uさんは、「この日の説明会が、市にとって、放射能がれき焼却にむけてのひとつのプロセスであり、開催を阻止しようと考えた。自分のイメージとしては演壇占拠すること。他の参加者と事前の話合いはしていない。自分の頭のなかで描いたこと。当日は、太鼓や笛は自分は使用していない。トラメガで『焼却反対』などを訴えた。」
「この日の説明会を阻止することは、人として当たり前のこと、当然のことをしたまで。」
「大きな流れの中でみると、裁かれるべきは僕らじゃなくて、東電、原発を国策として推進してきた日本政府、3・11以前から原発に反対していた人たちを弾圧してきた警察・検察、そして何より最も裁かれるべきは、すべてを追認し、正当性を与えてきた裁判所である」などと語った。
続いて、検察官による反対質問に移ったが、Uさんは黙して語らず。裁判長からの質問にも、黙して語らず。弁護人が「検察、裁判官からの質問には、答えるつもりはありますか?」と問いかけ、Uさんは「ない」と回答。被告人質問を終了した。
次回、第4回公判は、10月9日、午前10時から12時、大阪地裁201号(大法廷)。論告求刑と最終弁論がおこなわれる。
11・13説明会弾圧から10カ月超
Uさんの釈放かちとる
昨年11月13日、「がれき説明会」弾圧で逮捕・起訴されていたUさんが、裁判所による勾留取消決定で、9月19日、釈放された。逮捕以来、実に10カ月と1週間。
保釈金を積まないと出られず、さまざまな条件・制限がつく保釈制度の問題点を、Uさんは訴え続け、保釈金を用意できない人でも釈放される道を切り開く目的をもって、保釈請求をせず、一貫して「勾留取消」を、拘置所内から訴え続けてきた。取消請求が却下されると、準抗告をおこない、それが棄却されると、最高裁に特別抗告をするという闘いを繰り広げてきた。
外の仲間も「裁判所はUさんの勾留取消を認めよ」と、申入れ、抗議、宣伝活動を繰り広げてきた。
そして、ついに9月17日、大阪地裁は「勾留取消」を認めざるをえなくなった。ところが、検察が抗告。しかし、大阪高裁は、9月19日、検察の抗告を棄却。Uさんの釈放が確定した。
Uさんは、同日夕刻、大阪拘置所から元気に出てきて仲間と合流した。
めったにない勾留取消
刑事訴訟法には、「勾留取消」という方法で釈放されることも規定されてはいる。しかし、いわゆる公安事件で勾留された人が、保釈以外で、つまり「勾留取消」で釈放された例は、ここ数十年では聞いたことがない。実際には、保釈以外の方法は認めないという運用がされてきた。ゆえに、今回の「勾留取消」は画期的勝利である。Uさんの、自分を犠牲にした不屈のたたかいが切り開いた新しい地平だ。
4面
「裏切られた、撤回して」(1)
福島で支援法基本方針の説明会
請戸 耕一
「多くの人が支援法に期待していた。でも裏切られた。この基本方針は撤回して、作り直して下さい」。2012年6月に成立以降、長らく店晒しにされてきた「子ども・被災者支援法」について、その基本方針案が8月30日にようやく公表され、復興庁の主催する説明会が9月11日に福島市内で開かれた。平日の午後という日程の中で、福島県内の住民、福島から県外への避難者、さらに宮城、群馬、栃木などの住民ら約170人が参加。国側からは、浜田復興庁副大臣、復興庁の担当者、文科省、経産省などの担当者が出席した。
【T】「被災者抜きに決めるな」
説明会では、住民が次々と意見表明をおこない、論議は予定を大幅にこえて3時間近くに及んだ。しかし国・復興庁の基本方針案の説明は、子ども・被災者支援法の当初の基本理念からも、被災者の求めるものからも、全くかけ離れたものだった。参加した住民らは全く納得できず、会場は、「撤回しろ」「公聴会を開け」という厳しい批判と怒号であふれた。
福島から北海道や静岡に避難・移住した住民、福島県内に留まっている住民、強制避難区域から避難を余儀なくされている住民、そして、宮城、栃木など高線量の地域がありながら支援対象から外された地域の住民など、様々な立場から切実な訴えがなされた。
以下にその一部を紹介する。
●「地域指定については、年間追加被ばく線量1ミリシーベルト以上のところについてはすべて指定すべき。今回の基本方針案では地域指定が33市町村で限定されている。根本大臣が会見で『分断をしないために33市町村にした』と言っていたが、これでは復興庁自ら分断をするようなものだ」(いわき市・男性)
●「事故前の公衆被ばく限度の1ミリシーベルトというのが、国民が合意できる数値だ。根本大臣が、100ミリシーベルト以下の被ばくでは健康被害は認められていないと発言したのを聞いて、私はぼう然とした」(郡山市から静岡県に避難・男性)
●「対象区域の基準を検討するとき、財政ということを考慮して、1ミリシーベルトだったらこのぐらい、5ミリシーベルトだったらと予算のシミュレーションをしたのではないか。1ミリシーベルトのとき、どのくらいの予算規模という風にシミュレーションしているのか」(郡山市・女性)
●「飯舘村では、住民の間で、『帰りたい、帰りたくない』と別れて、議論が前に進まない状況。その根底には、今回の事故で人の数だけ安全基準ができてしまった問題がある。そのために対立や葛藤が生まれている。震災前の法律とチェルノブイリの経験則に基づいた合理的判断があれば、その軋轢は緩和され、被災者同士の理解も進むのではないか」(飯舘村から避難・男性)
●「丸森町は支援対象地域から外された。『丸森にも線量の高いところがあるが、ほとんどが山』というけど、そこにも人が住んでいる。自主避難者の数もかなりの数になる。避難したくても支援制度がないから避難できない。自主避難者の数は支援制度があるかないかで全然違う。復興庁は自主避難者の数を把握しているというがどういう調査をしたのか」(宮城県丸森町・男性)
●「県境を越えて近隣県に放射性物質は降下している。栃木県では、同じ被災地であるにもかかわらず、同じ支援を受けられない。とくに子どもをもった保護者が追い詰められている。保護者の希望が多いのは健康調査。それに関して、国の説明では、近隣県でもこれから個人線量計で測ると。2年半も待たされて今から調査とは。多くの人が心配しているのは、3月11日、情報がなかったから子どもを外で遊ばせていたといったこと。有識者に意見を聞くのではなく、被災者にどういう不安があるかを丁寧に聞いてほしい」(栃木県宇都宮市・女性)
●「この説明会を一回やっただけで基本方針を閣議決定してはいけないというのが今日の大多数の声だ。われわれ被災者を『田舎もんの知性のないクソども』と愚弄するような人間(ツイッターで暴言をつぶやいた復興庁官僚を指す)が作ったから、こんな基本方針しかできなかった。もう一回仕切り直すべき。被災者支援法は、被災者のための法律でしょ。留まる、避難する、どんな選択も応援しようと作った法律でしょ。その私たち被災者を抜きにして私たちのことを決めないでほしい。」(福島市から北海道に避難・男性)
●「基本方針を決めるに当たって、復興庁はいろんな会議をやったと思うが、議事録が一切残っていない。何を資料にして検討したかも出ていない。いわんや有識者と言われる人たちがどういう人か全然分からない。要するに、闇の中で勝手に決めている。そして施策は、従来各省庁が本来やるべき施策の寄せ集め。こんなものを基本方針というのは、全く驚きだ」(福島市内・男性)
●「多くの人が支援法に期待していた。やっとできたので見たところ、こんなに裏切られたものはない。この基本方針は撤回をして、作り直して下さい」(浜通りの避難区域・男性)
基本方針案に対する住民の意見の中には、様々な問題が提起されている。以下では、議論の中ではある程度前提になっている事柄に立ち戻りながら、【U】で、子ども・被災者支援法の趣旨と成立後の動きを概観し、【V】で、基本方針案の問題点を批判・整理し、【W】で、説明会を通して突き出された子ども・被災者支援法と基本方針案をめぐる今後の論点をつかむ、という順序で考えてみたい。
【U】1年以上の店晒し
ここでは、子ども・被災者支援法の趣旨と、成立後の動きを簡単に概観することを通して、子ども・被災者支援法の当初の基本理念とも、被災者の求めるものとも、全くかけ離れた基本方針案が出てきた経緯を見てみたい。
居住と避難と帰還
子ども・被災者支援法とは、正式には「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」。2012年6月、当時の与党(民主党)と野党(自民、公明、みんな、共産、社民など)の全会一致で成立。
この法律の基本理念は、原発事故によって放射性物質が拡散し、被ばくが健康に及ぼす危険が続く中で、被災地域に住み続ける選択も、被災地域から避難する選択も、避難先から帰還する選択も、いずれの選択をも被災者自身の自己決定として尊重し、支援するというもの。とくに子どもや妊婦への特別の配慮が行われるべきとするものであった。(子ども・被災者支援法第2条)
その理念は被災者の切実な要望に応えるものとして期待された。ただ、成立した同法は、あくまでも理念法であり、具体的な支援策は明記されていない。その具体化は、政府の検討に委ねられた。
「白黒つけず曖昧に」
しかし、政府から具体策は示されず、予算もつかないという店晒しの状態が続いた。
そうした中、復興庁で子ども・被災者支援法に基づきその具体的な支援策の取りまとめに当たっていた水野参事官(当時)が、ツイッターで暴言を繰り返していた問題が報道された。〔毎日新聞 2013年6月13日付〕
水野参事官は、今年3月7日、衆院議員会館で市民団体が開いた集会で、復興庁の担当者としてとりまとめ状況を説明していたが、同日、「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席」とツイート。また、翌8日には「今日は懸案が一つ解決。正確に言うと、白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」と。
水野参事官には残念ながら「ひたすら罵声」としか受けとめられなかったが、その声とは、子ども・被災者支援法の理念に則って支援策を具体化してほしいと訴える被災者の切実な声のことだった。また、後者のツイートにある「懸案」とは、子ども・被災者支援法がその条文で、「一定の基準以上の放射線量が計測される地域」を支援対象地域と指定するように求めており、放射線量に基づく基準を別途に定める必要があり、その基準を具体的にどう設定するかという問題だ。ところが、それについては同法の条文に反して、「放射線量の一定の基準」は具体的に決めないで「白黒つけずに曖昧なままにしておく」ことで「解決」したという。そういう合意を関係省庁の幹部の間で秘密裏に行っていたというのだ。
つまり、国・復興庁としては、自主避難者も含めて支援をおこなうとした子ども・被災者支援法の成立を歓迎しておらず、その具体化を先延ばしし、あるいは中身を骨抜きにしたいという意図が見てとれる。水野参事官のツイートは、その個人の心情にとどまらず、国・復興庁の意志を正直に吐露したものだった。成立から1年2カ月も店晒しにされた理由もここにあった。
そうした経過を経て出てきたのが、8月30日に公表された基本方針案。それは、子ども・被災者支援法の当初の基本理念とも、被災者の求めるものとも、まったくかけ離れたものであった。(つづく)
9月15 稼働原発ゼロに
大阪・京都でデモ
オリンピックなんかやってる場合か。汚染水を止めろ。(9月15日 大阪市内) |
9月15日、大飯原発4号炉が停止し、1年2カ月ぶりに日本の全原発が停止した。大阪では、「原発ゼロ!記念日パレード」〔=写真〕がひらかれ、難波から心斎橋一帯をデモ行進した。京都では「原発とまった! このまま廃炉!」京都デモがおこなわれ、500人が参加した。
「10・5関電前弾圧」
無罪判決に検察が控訴
「10・5関電前弾圧」裁判での無罪判決に対して、9月6日、検察庁は不当にも控訴をおこなった。8月26日、大阪地裁は、天満署警備課の影山警部らによる「転び公妨」証言を退け、犯罪の事実がないとしてAさん(前田さん)に無罪判決を下した。昨年の一連の大阪での弾圧に対する初めての判決で、警察・検察は完敗を喫した。
この敗北が、続く「11・13がれき説明会」弾圧裁判、「関電前弾圧11・16事後逮捕」裁判に連動することを恐れた検察庁は、何の勝算も無いまま控訴した。この暴挙を弾劾するとともに、被告・弁護団・救援運動のさらなる粘り強い闘いの展開で控訴審闘争に勝利しよう。そして関西大弾圧の全裁判の無罪をかちとろう。
5面
守れ!経産省前テント シリーズG
テントひろば 3年目へ
「汚染水対策に全力を集中せよ」規制庁前で抗議(9月11日 都内) |
〈経産省前テントひろば〉は、この9月11日で満2周年を迎えた。六本木の規制庁前には福島の女性たちや、泊、福井、川内、玄海、伊方など原発立地から参加した人たち、たんぽぽ舎、テントなど総勢50人を超える人びとが集まっていた。各団体の代表の抗議要請文が読み上げられ、規制委員会の代理人に手渡された。
「再稼働反対」というメインテーマが、この時は、福島第一原発における放射能汚染対策に全精力を集中せよというテーマに変わっていた。
すべての原発立地地域での未来予測は、福島原発事故を基準とせよという主張に一本化された。
「福島原発事故を経験した規制委員会は世界で最先端の課題に取り組んでいる」と吹聴する安倍政権の「先進性」とはいったいなんだろうか。経済至上主義の下で、本来やってはいけない原子力発電を全国に拡大し、原発事故が発生したにもかかわらず、それを諦めることができずに、内外に被ばく者を増大させている。そしてその犯罪性すら自覚できない。
「太陽と死は、長く見つめることはできない」という諺がある。7年後のオリンピックが東電・福島原発と中部電力・浜岡原発にはさまれた東京で開催されるという異様さ。そして「オリンピックの経済効果」なるものへの絶対的な信仰。かつてナチスがその効果を徹底的に利用した1936年のベルリンオリンピックを彷彿させると思うのは私だけではないはずだ。
テント前の3年目突入の大集会は、黒い法被をまとった「カンショ踊り」に始まり、経産省正門に向けて放たれる数々のスピーチへと続いた。テントの淵上代表をはじめ、20人近くのアピールは凄まじい迫力に満ちていた。
経産省完全包囲のヒューマン・チェーンは夜8時頃に完成。包囲に参加した人は約900人。
テント裁判に3百人弱
翌12日、「脱原発テントといのちを守る裁判」第3回口頭弁論は、東京地裁103号法廷で開かれた。傍聴希望者は300人弱。開廷の1時間前から裁判所前で集会。そこでも福島からの発言は、政府を鋭く告発する。「放射能のコントロールができていれば、仮設住宅に22万人などという悲惨なことはありえないでしょう」と。近くのアピールは凄まじい迫力に満ちていた。
核開発とオリンピックは東京に致命的な破壊作用しかもたらさない。それは砂漠のなかで空しく繁栄しているカジノ資本主義という未来像しか浮かばせない。
法廷の中では、国側が被告人の同定ミスをカバーするために、再同定の証拠書類がどっさりと裁判長に渡された。その整理だけで貴重な時間がロスされた。弁護側は証拠書類の全面開示を求め、あらゆる次元で求釈明をおこなった。国の代理人は「これ以上無駄な時間を費やさず、弁論を打ち切って早く結審するように」というような調子で答弁。弁護団代表の河合弁護士は、これを「聞き捨てならない」と激怒。裁判長が国に対して「書面をもって求釈明に応ずるように」と言い渡して、閉廷となった。
参議院議員会館で催された報告集会には、傍聴できなかった希望者も駆けつけほぼ同数が参加。テントからは江田さん、原発立地の各地の人びとが発言。福島の渡辺ミヨ子さんは「翼をください」を切々と歌い上げ、スピーチに華を添えた。
司会をバトンタッチされた講談師の神田香織さんは、「『講談師、見てきたような嘘をつき』とヤユされがちだが、オリンピック誘致のための安倍首相の嘘だけはどのようにも承服しがたい。もしも私の講談を、神田あかねの『春日局』と案内されたら、私はどうしたらいいの?」と安倍を痛烈に批判。満場の喝采を浴びた。テント代表の淵上さんは、故に、「テントをたたむことは絶対にない!」と意見陳述していた。次回の口頭弁論は11月29日(金)午後2時、東京地裁103号法廷にて。(Q)
米軍基地反対で緊急集会
府知事の受け入れ表明を弾劾
京都
地元、京丹後市・宇川地区の永井さんが発言(9月20日 京都市内) |
9月19日、京都府の山田知事は、府議会で、自民党議員の代表質問に答える形で、京都府としてXバンドレーダー受け入れを表明した。
翌20日、「京都に米軍基地はいらない! 9・20緊急集会」が、京都市内で開かれた。主催は、〈「止めよう経ヶ岬の米軍レーダー・危険な戦争準備を許さない」緊急京都府民の会・南部連絡会〉。150人が参加し、山田知事の受け入れ表明を弾劾した。
集会では、京都に米軍基地=Xバンドレーダーを入れさせない闘いがあらたな段階に入ったことを確認し、あくまで建設阻止で闘い抜く決意を固めた。
地元に賛成はいない
集会には、京丹後市の地元から、基地の直近になる宇川地区(650世帯、約1700人在住)から、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」事務局長の永井友昭さんが参加。「地元で米軍基地に賛成する者は一人もいない」と表明し、「全国の闘う仲間と連帯して闘いたい、ぜひ支援をお願いしたい」と訴えた。
また京都府北部の綾部市から、緊急京都府民の会の代表である大槻正則さんがあいさつ。主催者(緊急京都府民の会・南部連絡会)を代表して大湾宗則さんが基調報告。Xバンドレーダーについて詳しく説明した。
経過報告では南部連絡会の事務局長の山本純さんが、これまでの闘いの経過と、今後の闘いの方針を提起。知事あての第2次署名を24日に提出。政府を相手にした第3次署名を始めること、地元住民の闘いを支援し連帯して闘いを関西、全国へと広めること等を提起した。新たな段階に入った基地建設反対運動を発展させるために、南部連絡会の運動をさらに強化することや、同じく京都で米軍基地に反対している「待ちなはれ! 京都に米軍基地はいりまへんの会」や、スワロウカフェの仲間たちと連帯して闘うことなどを確認した。
パンフレット『明治政府と部落の形成』を読む
一向一揆起源論に注目<
このパンフレットは、五章からなるレジュメであるが、じっくり読めば平易で内容がわかりやすく、迫ってくるものがある。以下、学んだ核心的内容を三点に絞って見ていきたい。
一向一揆
まず核心の第1は、、部落の起源は豊臣時代にあることを明示していることである。筆者は、本願寺合戦では火薬の原料である硝煙を石山本願寺に送り、加賀の一向一揆の拠点地域を故郷にもった関係もあり、早くから一向一揆起源論に執念をもって注目してきたという。その執念が本パンフで遺憾なく発揮され、最後の一向一揆から南紀湯浅の福蔵寺文書にいたるまで分析を追体験し、勅命講和後の一向一揆起源を完全に実証している。一向一揆起源論には史料がないという俗論を論破し、部落の起源は、勅命講和後も不屈に戦った一向一揆の戦士が、戦争犯罪人として蓮乗寺とともにカワタ身分に貶下されたこと、すなわち、カワタ身分とカワタ寺の成立こそ、部落の起源であることを示したことである。
穢れ=反逆
第2の核心は、家光の寛永頃からこのカワタ身分が「穢多」と呼称変更(幕府の法制上の呼称)されて、江戸時代の身分制度が確立されていく。穢多とは人格に穢れがまとわりついているということである。だが、穢多の8割は農民であり死牛馬の処理はしていない。また町奉行の治安担当の与力、同心は「不浄役人」とはいわれるが武士であり、「首切り浅右衛門」は浪人である。すなわち、「穢れた役」が身分を決めるのでもない。筆者は、穢れとは「鬼神の憎む所」であり、最大の穢れは反逆罪であるという。
家康は、農民一揆の指導者を穢多身分とし、転び切支丹を非人あるいは穢多の身分刑にしたり、相対死(あいたいじに)を忠孝への反逆として非人、穢多に身分を貶し、秀吉のやり方を継承している。江戸時代の宗教政策は国法仏法兼帯論で、国法の僕として仏法を支配、利用した。寺壇制度の確立であり、江戸時代の戸籍制度でもある宗門改め帳で民衆への管理、統制を強化し、江戸時代の身分制度が確立されていった。そして、体制的危機の時代には、その危機突破のために穢多非人への差別が強化されることを「江戸三大改革」の分析を通して明らかにしている。
政治起源説
第3の核心点は、現代の部落問題とは、国家権力による「元穢多身分」にたいする支配の問題であることを明らかにしたことである。さらに、特殊部落呼称の登場と特殊部落改善運動の分析を通して「江戸時代には穢多問題があるが、部落問題はない」こと、近現代には「特殊部落問題があるが穢多問題」はなく、(特殊)部落問題は、日本帝国主義の確立過程で明治政府がつくりだしたことを明確に明らかにしている。ある意味では、この点が本パンフの最大の核心点である。明治の「解放令」をめぐる分析も重要である。
このパンフの提起に、政治起源説見直し論者が目くじらをたてて反対するのは目に見えている。作今の部落問題の出版物は、「見直し論者」の見解であふれている。研究は元資料に当たることが重要であり、慎重な配慮が必要である。注意を喚起しておきたい。(内田一郎)
推薦文献
吉田徳夫『部落問題の歴史的展開』 2009年 プレアデス出版
『明治政府と部落の形成―日本帝国主義と部落問題』(2013年9月刊 200円)
◆著者プロフィール 村上周成(むらかみ・しゅうせい) 元部落解放同盟全国連合会荒本支部支部長
学習会など講師の依頼は 左記メールアドレスまで
shusei2013@yahoo.co.jp
※このパンフレットをご希望の方は本紙編集部までご連絡ください。
6面
君が代」不起立での減給処分を取り消せ
府立学校教員が提訴
提訴に向かう奥野さん(前列中央)と支援者(9月24日 大阪地裁前) |
大阪府立支援学校教員の奥野さんが、処分撤回などを求め、9月24日、大阪地裁に提訴した。
奥野さんは、昨年3月27日付けで「戒告処分」、今年3月27日付けで「減給処分」を受けたが、今回の提訴は、今年の減給処分に関して。
減給処分の理由は、@教育長および校長による「君が代」の起立斉唱を命ずる職務命令に違反、A当日、准校長による式場外での受付業務命令を中途で放棄して式場内に入り、退出命令に従わなかった、B昨年卒業式も不起立で戒告処分をうけたにもかかわらず、今年も命令違反を繰り返した、これらが非行、信用失墜行為にあたるというもの。
減給処分を取り消せ
奥野さんの提訴は、@減給処分を取り消せ、A昨年卒業式、今年の卒業式および入学式、並びに処分通達後の研修における学校管理職、府教委幹部らによる一連のいやがらせ、違法なパワハラ行為によりこうむった精神的損害について慰謝料200万円を支払え、という内容。
違憲・違法の職務命令
そもそも、府教育長による職務命令は、個々の教員に対する関係では権限ある職務上の上司にあたらないから、この職務命令は無効である。
また、教育長および校長による「君が代」の起立斉唱を命ずる職務命令は、違憲・違法であり、従う義務はない。
さらに、減給処分は、一連の「日の丸・君が代」訴訟における最高裁判例の判断枠組みに照らしても、行政庁の裁量を逸脱したものとして違法である。
橋下の盟友が教育長
大阪府下では、昨年春の卒入学式での「君が代」不起立で、36名が戒告、再任用取消2名。今年春には、戒告9名、減給3名の処分、4名が再任用拒否されている。
上記のうち、11人が人事委員会ないし公平委員会に異議を申し立て、処分撤回を求めているが、遅々として、進んでいない。今回の奥野さんの提訴は、上記11件のなかで最初の裁判であり、人事委員会闘争と並行したたたかいとなる。
大阪府教委は「府職員基本条例(12年4月施行)」により、同一職務命令3回違反で、免職処分にするなどという憲法違反をゴリ押ししようとしており、さらに橋下の盟友=中原教育長により、「君が代」斉唱時の口元チェックの通知(13年9月4日付)が出された。これとの真っ向からのたたかいとなる。
ウルトラショブンはイケン
安倍・橋下の教育改革に反撃
豪雨で交通網寸断なるも、熱気あふれる集まりとなった(9月16日 大阪市内) |
今春卒業式での「君が代」不起立にたいする大阪府教委の減給処分取消を求める裁判を準備するとともに、その闘争支援のための集会が、9月16日、大阪市内でひらかれ、110人が集まった。主催は、奥野さんを支える叫ぶ石の会、支援学校の君が代不起立応援団、協賛は教育基本条例下の辻谷処分を撤回させるネットワーク、グループZAZA、『日の丸・君が代』強制反対ホットライン大阪 。
集会冒頭、減給処分取消を求める府立支援学校教員・奥野泰孝さんから、この間の経緯と決意が明らかにされた。支援者、弁護団、一人芝居の演劇をはさんで不起立処分を受けたグループZAZAの8人が登壇し、代表して2人がアピール。
安倍政権や橋下・維新の会による「教育改革」の狙いは、政治が教育を思いのままにできる制度をつくろうとするもの。大阪では「国旗・国歌強制条例」や「君が代」不起立3回で免職とする「教育基本条例」「職員基本条例」が強行され、昨年の卒・入学式で37名が処分(戒告36、訓告1)をうけた。今年は12名が不起立とされ、2回目の処分となる2名に減給、他の9名に戒告処分が出された。豊中市では卒業式での抗議行動を理由に1名が減給処分。
しかし反撃は開始されている。処分にたいする不服申立や裁判提訴。また運動ではねかえしていくために、8月25日東京で「8・25全国学習交流会」が開かれ、安倍政権による「教育再生」と「改憲」に反対するための「全国ネットワーク」をつくり出していこうと呼びかけられた。大阪では8月21日に〈「日の丸・君が代」強制反対、不起立処分撤回を求める大阪ネットワーク〉が結成された。
門真三中「君が代」処分取り消し裁判
最高裁が上告棄却
大阪高裁での控訴審判決(2012年10月18日)から約11カ月、2013年9月10日、最高裁は「過去の最高裁判例からして、本件指導は憲法19条に違反しない、その他の点も問題ない」という中身のない判決で上告を棄却した。
この判断は間違い
原告の川口さんは、「この判断は間違っています。ということは、これからも反対の声を上げ続けなければならないということ。『君が代』の教育現場への強制は、とても危険な内容をはらんでいる。そしてそれは、憲法の改悪にも関連している。4年間の裁判は、とても有意義で豊かな内容をもっていた。本当にたくさんの人たちに支援していただいた。弁護士の準備書面や黒田先生に書いていただいた控訴審意見書『「君が代」強制と心の自由』は、私の財産です。ここには『君が代』の強制に反対する理由や、反対することの大切さが明確に主張され、論じられている。負けたのはあなたではない、負けたのは裁判官のほうだと声をかけてくださった支援者の方の言葉は真実だと思います。
思想・信条はみんなのものです。これからも皆さんとともに声を上げ続けていきたいと思っています。あたたかいご支援本当にありがとうございました。これからも引き続きがんばっていきますので、今後ともよろしくお願いします」とさらなる継続したたたかいの決意を固めている。
9月5日と6日、東京「君が代」不起立処分にたいする最高裁判決が出された。いずれの判決も、2011年、2012年と続いた「君が代」最高裁判決の判断基準〈起立・斉唱を求める職務命令は合憲、戒告を超えてより重い処分には慎重な考慮が必要〉との判断は変わらず、戒告処分の撤回は認められず、上告棄却という判決だ。
「式を乱さず、戒告処分までは合憲」この司法の判断をくつがえしていく現場のたたかいが重要だ。これまで以上の処分攻撃に対して職場・地域まきこんで広範な反撃のたたかいをつくりだしていこう。
健康ひろば(2)
お酒と肴の関係
肝臓がアルコールを分解するのには酵素が必要ですが、酵素をつくるにはタンパク質が必要です。晩酌をする時にお酒だけ飲んで、つまみや肴を食べない方がいますが、そういう飲み方をしているとタンパク質が体に供給されずに、仕方なく肝臓は自分自身を材料にして酵素を作り始めます。この状態が進行すると、アルコール性肝硬変に発展してしまいます。
栄養過多はダメ
しかし現在では、アルコール性肝硬変よりもアルコール性脂肪肝の人が増えています。これもアルコールの大量摂取が理由ですが、障害が生じた肝臓に運ばれてきた脂肪が、代謝されずにそのまま肝臓に蓄積された状態をいいます。つまり脂質の多い食事をするようになり、栄養をとり過ぎている状態なのです。
脂肪肝というと肝臓のまわりに脂肪がおおっているように思われますが、実際には肝臓の細胞と細胞のあいだにたまっているのです。そのため、正常な細胞を圧迫して痛め、肝臓の働きを阻害してしまうのです。(Y)