橋下は市長を辞任せよ
「慰安婦」発言の居直りを許すな
橋下市長の暴言に対して400人以上が大阪市役所前で抗議の声をあげた(5月17日) |
先月13日の橋下徹大阪市長による「慰安婦制度は必要だった」「海兵隊の司令官に風俗業の活用をすすめた」という暴言に内外で激しい怒りの声がまき起こっている。
17日には、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークのよびかけで、大阪市役所で抗議闘争がおこなわれ400人以上が参加。市長辞任を求めて市役所を「人間の鎖」で包囲した。
また24日に橋下と面会する予定だった日本軍「慰安婦」被害者の金福童(キム・ボットン)さんと吉元玉(キル・ウォノク)さんは「橋下市長は面談の対象ではなく、『審判』の対象であるだけだ」と断罪し、面会を拒絶した。
大阪市内でおこなわれた証言集会で発言する金福童さん(真ん中)と吉元玉さん(左)(5月25日) |
25日、大阪市内でおこなわれた証言集会には515席の会場から参加者があふれた。翌26日の奈良集会にも300人が参加した。
集会で金福童さんは、満14歳のときに軍服工場で働くとだまされて、日本軍とともに東南アジアの地を転々とさせられ、戦後も「慰安婦」であったことを隠して生きなければならなかった苦しい半生を語った。
吉元玉さんは「私は数えで88になるが、90近くなって体調が悪くても日本にやってきたのは、日本が再び戦争をするかもしれないからだ」と、安倍政権の憲法改悪への動きに危機感を表明した。
中央大学の吉見義明教授は、「日本が批判されているのは『慰安婦』制度が性奴隷制度であったという事実だ。橋下らは『強制連行』の有無に問題を切り縮めているが、そんな理屈は国際社会では通用しない」と問題の核心を明らかにした。そして橋下発言は安倍政権による「村山談話・河野談話の見直し」「集団的自衛権の行使容認」と密接に関係があると指摘。「慰安婦」問題を中心とする歴史認識問題は、対韓・対中の強硬姿勢によって日本人のゆがんだ「誇りをとり戻す」ことで支持を拡大し、憲法改悪に向けての地ならしであると警鐘を鳴らした。
30日、大阪市議会の市長問責決議の動きに、橋下は出直し市長選をやると公明党を恫喝し、否決に追い込んだ。居直り続ける橋下・維新を民衆の力で打倒しよう。〔5面に関連記事〕
沖縄平和行進が成功
5月17〜19日 「基地撤去」を訴え3日間
名護市・辺野古浜から元気に出発する5・15平和行進・東コース(5月17日) |
沖縄が本土に「復帰」して41年。米軍基地の撤去を訴え県内を歩く「平和行進」最終日の5月19日、宜野湾市海浜公園で「復帰41年5・15平和とくらしを守る県民大会」が開かれた。
3コースで平和行進
72年5月15日、沖縄が「本土復帰」したあとも米軍基地が集中している。その現状を訴えようと県内外の市民団体や労働組合によって、毎年この時期に平和行進がおこなわれている。
今年は沖縄本島では5月17日から始まった。太平洋戦争末期の沖縄戦で激しい地上戦のあった南部(南コース)、普天間基地の移設先とされる本島北部の名護市(東コース)、そして嘉手納基地(西コース)などを通る3つのコースに分かれておこなわれた。
東コースは名護市辺野古浜に370人が参加して決起集会がおこなわれた。山城博治(ひろじ)・平和運動センター事務局長の大会宣言をはじめ、安次富(あしとみ)浩・ヘリ基地反対協共同代表、西川征夫・命を守る会会長、本土の労働者、沖縄の代表などが決意を表明。稲嶺進・名護市長もメッセージを寄せた。参加者は辺野古浜を一周して3日間の平和行進に出発した。
豪雨のなか3500人
最終日の19日はそれぞれのコースを歩き終えた参加者が普天間基地を抱える宜野湾市で合流。横なぐりの雨の中、県民大会には3500人が参加。
崎山嗣幸・実行委員長は「沖縄では米軍の爆音被害によって生活が破壊され、米軍による事件・事故が絶えない。はたして主権国家と言えるのか。安倍政権を糾弾し、平和への運動を高めていこう」とあいさつ。
金福童さんが発言
日本軍「慰安婦」被害者・韓国の金福童さんも登壇。金さんは「国家による性暴力に遭い、人権を踏みにじられた少女のことを知っていますか」と語りかけた。そして「慰安所」での生活を話し始めると、会場は静まりかえり金さんの話に聞き入った。
金さんは橋下が「慰安婦は必要だった」と発言したことに「政治家が暴言を吐くことができないよう、皆さん力を合わせてください」と訴えた。
また「日本の政治家が憲法を変え、戦争ができる国にしようとしている」と危機感をあらわにし、「皆さん、頑張って声を上げ、力をあわせ、戦争のない平和な世界をつくろう」と訴えると会場から大きな拍手がわき起こった。
米軍基地撤去へ
沖縄独特の横なぐりの大雨にもかかわらず、参加者は誰一人席を外すことなく集会に集中した。
3日間にわたり行進した代表が報告。本土の代表は「沖縄の現状を学んだ。帰ってからしっかりと伝えていきたい」と決意を語った。
最後に「オスプレイの追加配備や辺野古新基地建設に反対」「脱原発社会実現を」「自民党政権の改憲に反対」「日米地位協定の抜本的改正を要求する」という大会宣言を採択。ガンバローを三唱し集会を終えた。
市東さんの農地を守ろう
7・14全国集会へ
三里塚
三里塚芝山連合空港反対同盟は7月14日、「市東さんへの農地強奪判決阻止 7・14全国総決起集会」を呼びかけている。市東さんの農地法裁判は7月29日、千葉地裁で判決を迎える。
成田空港の事業認定はすでに失効し農地の強制収用はできない。そこで成田空港会社が持ち出してきたのが、農地法で農地を奪うという前代未聞の裁判である。
反対同盟は不当判決を阻止するために、緊急3万人署名を全国に呼びかけている。
街頭・職場・学園で署名を集め、7・14千葉市中央公園に総結集しよう。
(闘争案内)
市東さんへの農地強奪判決阻止
7・14全国総決起集会
とき:7月14日(日) 午後1時
ところ:千葉市中央公園
主催:三里塚芝山連合空港反対同盟
《三里塚反対同盟裁判》
市東さんの農地法裁判 判決公判
とき:7月29日(月) 午後1時半
ところ:千葉地方裁判所
2面
シリーズ 安倍政権批判(4)
安倍政権の原発・核政策を斬る(上)
安倍晋三政権は、民主党政権が掲げた〈2030年代に原発稼働ゼロ〉方針を「ゼロベースで見直す」と原発回帰を公言する。今年2月28日の施政方針演説では「安全が確認された原発は再稼働する」とも明言。総選挙公約で、「全ての原発について3年以内」に再稼働を判断し、10年以内に「電源構成のベストミックス」を確立するとする。選挙後には原発新増設も認めるとした。
8基の再稼働ねらう
国内の原発のうち、関西電力大飯原発3・4号機をのぞく48基は停止中だ。現在運転停止中の原発のうち、東京電力・柏崎刈羽原発、北海道電力・泊原発、関西電力・高浜原発、四国電力・伊方原発、九州電力・川内原発、合計8基の早期運転再開申請がもくろまれている(5月30日、朝日)。各原発は、規制委の安全審査を通過し、地元自治体の同意を得られれば、運転を再開するという。
再稼働には、今年7月にも施行される見通しの新規制基準をクリアすることが不可欠。新基準の骨子(案)はすでに2月に公表されている。電力各社が公表している安全対策の進み具合をみると、現時点でこれを満たす原発は皆無。だが「抜け道」も用意されている。一度再稼働をしてから必要な設備を設置することが認められている。
大飯原発は基準で求められている免震重要棟の設置は早くても2015年度だが、 原子力規制委員会が公表した「基本方針案」よると3・4号機は、7月の新基準施行後も稼働を認めるという。9月に定期検査入りするまで約2か月間、新基準に適合しない状態で稼働することになる。
事故を起こした福島第一原発や柏崎刈羽原発では沸騰水型炉(BWR)と改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を使用しているのに対して、西日本の原発の多くが加圧水型軽水炉(PWR)を採用している。 新基準では、PWRについてもフィルターベントの設置を求めているが、いったん再稼働した後で設置を認める「猶予期間」を設ける。 まず狙われているのが四国電力の伊方原発だ。すでに免震重要棟が完成している上、敷地は海抜10メートルにあり、防潮堤などの新たな津波対策の必要性がないとされている。九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)や川内原発(鹿児島県薩摩川内市)も免震重要棟は15年度に完成予定。伊方に次いで再稼働が近いとみられている。
原子力規制委が敦賀原発2号機直下の「活断層」を断定する報告書を取りまとめる裏には、老朽化した敦賀を生贄に「原発再稼動」を加速させるという思惑がある。
最長60年まで運転
12年6月に成立した改正原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則として40年間に制限している。しかし原子力規制委員会が13年2月27日に示した方針案では、新規制基準を満たし続けられると判断されれば、最長で、さらに20年間運転の延長を認めることになっている。
新規建設も
アメリカでは2012年8月に米原子力規制委員会(NRC)が、連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料政策の問題への対応ができるまで、原子力発電所の認可手続きを停止すると発表。
イギリスでは原発新設への出資を予定していたセントリカ社が、出資の取りやめを発表した。 原発新設からすべての英国企業が撤退することになる。福島の事故を受けた新しい安全対策などの結果、コストが合わなくなったのが理由だという。
昨年12月22日、安倍は山口県田布施町で原発の新規建設に関し「どう考えるかは新しい政府・与党で決めたい。民主党が決めた方針をもう一度見直していきたい」と発言した。そして上関原発について「地元の(建設)凍結という意思を尊重しつつ、国全体としてどう考えていくか検討していきたい」と工事再開をにおわせた。
前日の21日には、民主党政権が決めた「原発の新規建設を認めず、2030年代に原発の稼働をゼロにする」とする基本方針(「革新的エネルギー・環境戦略」)を見直し、新規の建設を認めることもあり得るという考えを明言していた。
原発輸出と核燃料サイクル
安倍は、国内の原発再稼働が見通せないなか、海外市場に活路を開いて原子力分野の人材や技術を守るとともに、原子力産業を経済成長の原動力のひとつにしようと原発輸出路線を再開した。
13年度予算では「途上」国の原発立地予定地の地質や周辺環境の調査費を国が補助することを盛った。東芝や日立製作所などが海外で原発を建設する際に、準備段階から計画に参画できるようにして輸出拡大につなげるという。
ベトナム
安倍は1月16日、東南アジア3カ国歴訪に出発し、最初の訪問国ベトナムのハノイでグエン・タン・ズン首相と会談。原発建設計画への協力で合意した。ベトナムは30年までに14基の原発建設を計画し、日本の受注も決まっている。
サウジアラビア
2月、サウジアラビアと原発輸出の協議に入った。サウジは2030年までに16基の原発をつくる計画。茂木経済産業相がサウジの原発当局にあたる研究機関「アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市」のファラジ副総裁と会談。原子力協力を進めることで合意した。将来の原発輸出に向けて日本は原子力分野の周辺技術や人材の育成、研究開発でサウジに協力する。技術や人材を提供し、将来の原発輸出に道筋をつける。原発1基の金額は5000億円程度にのぼり、16基で8兆円規模の市場になる。
原子力協定続々と
原発の輸出のためには核物質の軍事転用を禁止し、技術や部品を平和利用にのみ使うことなどを明記した原子力協定を2国間で結ぶ必要がある。今回、サウジと締結協議を始める2国間協力文書は、原子力協定の交渉に向けた地ならしの意味合いがある。
3カ所で複数の原発建設を計画しているトルコとも輸出に向けた交渉を加速させている。原子力協定もトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)と調印した。東芝は2月にフィンランドの原子炉建設で優先交渉権を得ている。ブラジルを訪問していた茂木敏充経済産業相は5月2日、ロバン鉱業・エネルギー相と会談。原子力協定の交渉を進めている。インドとも原子力協定交渉の2014年1月署名に向け協議を急ぐ。
核燃料サイクル
安倍政権は福島第一原子力発電所の事故が発生して以来中止していたプルトニウムの生産再開と、ウラン濃縮施設新設・増設方針を打ち出した。
青森県六ヶ所村にある使用済み核燃料の再処理工場を運営している日本原燃株式会社は、今後3年間にプルトニウムとウランを混ぜた酸化物(MOX)の粉末16・3トンを製造する計画を立てている。新たに生産する16・3トンのMOXには、核兵器への転用が可能な核分裂性プルトニウム5トンが含まれている。日本原燃はまた、六ヶ所村のウラン濃縮施設にある遠心分離器を新型のものに交換する、と発表した。新型の遠心分離器は、これまでのものに比べ処理能力が4〜5倍ほど優れているという。遠心分離器は濃度の低いウランから高濃縮ウランを分離する機器だ。
六ヶ所村の再処理工場は、日本全国の原発から出た使用済み核燃料を集め、再処理する施設だ。日本はこれまで、同工場に少なくとも3兆円をつぎ込んだ。さらに再処理にかかる費用は「19兆円」と発表されている。再処理費用が発生する期間の設定が、2005年から2369年までと、実に360年間にも渡っている。再処理工場の操業可能期間としている40年間で19兆円を完済するとなれば、「現役世代」の負担がとてつもなく増大する。本格稼働させれば費用はさらに膨らむ。
「アジア再処理構想」
核武装を追求する安倍政権は「全量再処理」の方針を何があっても捨てない。「核のゴミ」貯蔵プールとしても手放せない。青森県は、もし再処理が中止となれば使用済み核燃料を六ヶ所村から各原発に送り返すとしている。この点からも安易に退却できない。「放棄する選択肢はない」。茂木敏充経済産業相は就任直後の会見で、核燃サイクル政策について断言した。
どれだけ費用がかかるかわからない。事故続きで操業のめども立たない。福島事故で安全神話は根本から崩れた。ところが「東アジアの安全保障を名目にすれば、六ヶ所の存在意義が出てくる」(民主党の閣僚経験者)。韓国など東アジアの原発から出る使用済み核燃料を青森県六ヶ所村の再処理施設で再処理することで核燃サイクルの延命を図る構想が浮上している。
民主党政権時代の昨年5月、当時の細野豪志・原発事故担当相の私的諮問機関が「核燃料サイクルの検証と改革」と題する報告書をまとめ、「廃棄物処理の期待に応えることは、東アジアでのわが国の外交、安全保障、経済にまたがる国際戦略基盤の強化と核不拡散、原子力の平和利用の取り組みに貢献する」と提言している。報告書をまとめた元外務官僚の遠藤哲也も「核兵器の原料となるプルトニウムを持て余している日本が、サイクル政策を続けるには国際的な意義付けが必要。安倍政権も再処理施設の国際利用を検討すべきだ」と強調する。
16年に韓国満杯
23基の原発が稼働する韓国は、使用済み核燃料が3年後の2016年までに備蓄許容量の限界に達すると予測されている。このため韓国側は再処理施設やウラン濃縮工場の建設などを要求。しかし米国側は北朝鮮を刺激することや「国際的な核不拡散政策に影響を及ぼしかねない」として認めない。浮上してきたのが核保有国以外で唯一再処理施設を持つ日本への再処理委託。米が朝鮮半島の安全保障を理由に要求すれば安倍政権はすぐに引き受けるだろう。核心は「東アジアの安全保障」と「日米同盟の強化」だ。
核不使用声明に署名せず
スイスのジュネーブで開かれたNPT=核拡散防止条約の会議で4月24日、核兵器は非人道的なものだとして、いかなる状況でも使用すべきではないとする共同声明が提出されたが、日本はこの声明に署名しなかった。
声明では「核兵器の使用によって、直接に人が死ぬだけでなく、社会や経済の発展は停止し、環境は破壊され、将来の世代は健康や食糧や水を失うことになる」として、「いかなる状況でも核兵器を二度と使わないことこそが人類生存の利益につながる」と、核兵器の不使用を訴えている。
軍縮会議日本政府代表部の天野万利大使は、「いかなる状況でも使用しないとしている点が、日本の安全保障政策と相いれない」と述べている。核兵器の保持・使用に道を開いておくものだ。(つづく)〔堀口龍雄〕
3面
自民改憲草案を全面批判
丹羽雅雄弁護士が講演
5・24 大阪行動
「自民党改憲草案は一種のクーデター」と批判する丹羽雅雄さん(5月24日大阪市内) |
5月24日、大阪市立中央会館で「改憲と沖縄への基地固定化にNO!5・24大阪行動」がおこなわれた。集会では弁護士の丹羽雅雄さんが「日米新軍事同盟と自民党の『日本国憲法改正草案』」と題して講演。
丹羽さんは、「憲法9条を軸とした戦後の平和憲法秩序は、日米安保体制によって空洞化させられてきた。そして今日、従来の安保体制が新たな日米軍事同盟へと質的に再編されている。自民党の改正草案はこのことに関係している」と問題提起した。
立憲主義の否定
そして改正草案の特色として次の3点をあげた。一つめは憲法の3原則(国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義)を全て変更するものであること。二つめは、憲法を人民による国家・行政機関に対する命令規範とする立憲民主主義を否定し、天皇中心の国家像を前面に押し出していること。三つめは96条の発議要件の緩和を突破口に、全面的な改憲を推進しようとしていることである。
改憲クーデター
丹羽さんは、「差別・排外主義のまん延、沖縄の基地強化、労働基本権を含む生存権の侵害など、自民党がやろうとしているのは現憲法の改正ではなく、新たな憲法の制定であり、一種の政治的クーデターである」と断罪した。
これと闘うために、「日本の侵略戦争と植民地支配の歴史の改ざんやレイシズムの台頭と対峙する歴史認識のさらなる深化の必要性」と「東アジアの平和構築とも連なる広範な『人権・平和と共生』の最大限の連帯運動を国内外において展開すること」を訴えた。
守れ!経産省前テント
テント裁判はじまる
テント裁判第1回口頭弁論の日。傍聴できなかった人たちが経産省へ向けてデモ行進(5月23日 都内) |
東京地裁に500人
5月23日、経産省前テントひろばの撤去にむけて、国がおこした土地明け渡し訴訟の第1回口頭弁論が東京地裁で開かれ、11時開廷の前には、傍聴を求めて300名の長蛇の列が並んだ。10時から、提訴の撤回を求める地裁前集会がもたれ、その後、全員地裁内に入ったが、用意された法廷が小さく、傍聴できたのは28人。他は廊下に坐りこんで、より大きな法廷の使用を求めた。
法廷では、国が土地占有者と勝手に決めつけた正清太一、淵上太郎の2被告、そして河合弘之弁護団長ら数名の弁護士が陳述したが、与えられた時間はわずか1時間。傍聴できなかった人びとは、日比谷公園霞門から地裁、経産省に向けてデモ行進をした。遅れて駆けつけた人も含め、この日、集まったのは総計500人。
午後1時から、弁護士会館で「脱原発テントと命を守る裁判報告集会」が開かれた。定員120名程度の会場は倍以上の参加者の熱気であふれた。
正清被告は「原発震災後、8回福島に行ったときの思いを人びとに伝えるためにテントを立てた。自分の責任も取らない国の立退き請求は職権乱用」と厳しく批判した。淵上被告は「テントは何ゆえ存在するのか、存在しうるのか。福島原発事故がなければ、テントは存在しなかったし、存在する理由もなかった。国民の支持があるからテントは2年近くも続いた」と核心をついた。
テントは匕首(あいくち)
河合弁護団長は講演で、「経産省こそ原子力ムラの中心」と断じ、彼らは「自己完結型永久エネルギーとしての原発にしがみついているが、こんな地震大国に原発を乱立させて、『第2の福島』が起きたら日本はどうなる。経産省は亡国の役所だ。その喉元に突きつけられたあいくち(匕首)がテントだ」と発言、大きな拍手を集めた。
テント裁判は、勝利的に一歩を踏み出した。この日までに当事者参加(自分もテント占有者だと名乗り上げた人)が300名近く、弁護団は90名、またテント応援団も鎌田慧氏などを中心に動き出した。次回裁判は7月22日だ。(田中太郎)
原発事故の再発は防げるか
柏崎刈羽へ現地応援ツアー
原発再稼働阻止応援ツアー受け入れ集会には130人が参加(5月18日 新潟県柏崎市内) |
5月18日から19日にかけて再稼働阻止全国ネットワークは、東京電力・柏崎刈羽原子力発電所現地への応援ツアーをおこなった。
1974年から87年にかけて、東電の福島原発は計10基設営された。事故機は4基とも70年代のものである。原発経済のうまみは、なんといっても国策としての大きな庇護にある。この特権が電力会社の「開拓精神」を奮い立たせ、原発市場は、ついに県境を超えて新潟へと拡大した。そして85年から97年に、柏崎・刈羽に7基が建設されたのである。東電福島第一原発事故の根本的な原因は、原発事故に対する国民の不安を逆手にとって、最初から事故は想定しないという原発事故学の不在にある。そして電力会社の株主たちが株価の国家的保証にあぐらをかき、ひたすらの利潤追求のうまみに酔いしれてきたことにある。原発は、公共の福祉、消費者へのサービスや市場における競争原理さえも無視する国家独占資本主義の象徴であった。その尖兵が電気事業連合会の核開発推進派だったのだ。
国家無謬(むびゅう)神話
戦前の日本であれば1銭5厘の赤紙で、命は国のものとなった。国家のために国民が殉死するのは当たり前とされた。東電の経営体質の基底に国家無謬神話がある限り、事故の可能性は減らない。この「無謬神話」と裏腹の危険きわまりない核燃サイクルや新たな原発建設のために膨大な軍事予算が浪費されている。この予算が、原発の事故対策に向けられていれば、史上最悪のシヴィア・アクシデント(4基が同時に事故)などという事態は少しは軽度で済んだと思いたいが、まだまだ甘い認識ではある。
前回の志賀原発現地応援ツアーは80人の参加。今回は100人を超えた。再稼働阻止全国ネットの共同代表のひとり中嶌哲演さんは、「原発事故現地」という概念の中に、消費者地域も含むべきだと主張している。製造者責任を追及する論理は、消費者こそが磨くべきものではないか。消費者のものでなくて株主のものである民主主義という問題は、消費者の生命を優先する管理・責任能力の欠如に直結する。
消費者の不買運動は、現在の平和的な抗議行動である。「暗黒の国家」のもとで、真実の獲得に向けた衝動によってこの運動は拡大するのだ。
今後の予定などの問い合わせは再稼働阻止全国ネットへ。(Q)
関電前弾圧
ついにAさんを保釈・奪還
昨年、関電本店前での抗議行動の最中に、大阪府警により「公務執行妨害、傷害」をでっちあげられ逮捕、起訴・勾留されていたAさんを、保釈により5月24日奪還した。
●第4回公判(5月20日)
検察側証人として、残り2人の警察官が出廷。検事、弁護士の双方からそれぞれ尋問。 前回の2人(城戸、影山)につづく3人目の証人は、大阪府警警察官・瓜生幸恵。4人目の証人は同・今井秀幸。
●第5回公判(5月27日)
今回から弁護側の反証。Aさんは、保釈後はじめての公判。弁護側証人として、Wさん、Xさん、Yさんが証言した。
Wさんは、第1現場の目撃者。現場でAさんが城戸に「おまえ押したらあぶないやないか」と抗議したのを聞いている。「Aさんと城戸の横をタクシーが通過した際に、Aさんの背中がタクシーの後部にあたった」こと、「ころんだとき、城戸がAさんに覆いかぶさるように倒れた」と証言。
Xさんは、当日、第2現場にいた。警察官・影山がAさんを自販機コーナーの奥に追い込み、強い口調で問い詰めているのを目撃。「人の波に押され、自販機コーナーから外へ押し出されようとした時、足が追い付かず転倒。その直後、左足に衝撃を受け、警察官・影山が自分の左足につまずいたと思った」と証言。
Yさんは、第1現場の目撃者。第1現場でAさんと警察官(城戸)が一緒に倒れるのを目撃。「警察官(城戸)がAさんを押しているように見えた」、「2人が倒れた時、Aさんが下で、警察官(城戸)が上」、「警察官(城戸)がAさんを押し倒したように見えた」と証言。
次回公判は6月10日、午後2時から大阪地裁1004号法廷。
4面
改悪刑訴法下の反弾圧闘争
関西大弾圧救援運動の勝利のために
革共同再建協議会弾圧対策委員会
T 裁判所が治安弾圧の中心に
関西を中心とする反原発運動にたいする弾圧の特徴は、従来、警察・検察が中心であった治安弾圧の前面に裁判所・裁判官が出てきていることである。
たとえば警察・検察による長期勾留は、裁判所にひきつがれ、すでに半年を超える長期勾留が続いている。しかも「黙秘している」とか、「反省していない」といった理由を、公然・隠然と挙げてくる。「人質司法」そのものである。
密室裁判
加えて、公判前整理手続をはじめとする改悪刑訴法の下で、「密室裁判」の状態が続いている。
また日本の捜査当局の悪しき体質となっている自白偏重捜査につづき、裁判所自身による黙秘権の否定、破壊という新しい踏み込みが始まっている。公開の裁判が始まる前に、公判前整理手続によって、被告人側の主張と立証計画を提出させられることがそれである。
U 改悪刑訴法の矛盾と破綻
「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」第1条では、裁判員裁判制度の目的を「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資する」ことと謳っている。信頼が失われている司法への「理解の増進と信頼」の回復が目的であって、「国民」が裁判と裁判官を監視するためや、まして無罪が推定される刑事被告人の権利のためではないと自ら述べている。この制度は裁判所と裁判官の権威と権力のためのものであることが法文のうえでも分かる。
裁判員裁判のための手段として導入された改悪刑訴法が独自の弾圧法規になっている。現に、関西大弾圧では、すべて裁判員裁判でないにもかかわらず、多くのケースで公判前整理手続をおこなうという自己矛盾に陥っている。
裁判員制度の破綻
裁判員に負担を強制する裁判員裁判はその半分近くが破綻し、施行されてわずか3、4年で、制度としての存廃が問われている。そのとき、手段であったはずの改悪刑訴法を強硬に適用する最高裁判所の方針は矛盾と破綻を拡大する。
さらに裁判の迅速化を図るためにつくったはずの改悪刑訴法の諸手続きで、実際は公判がなかなか始められなくなっている。迅速化は被告人の権利と憲法では書いてあるのに、建前としては裁判員のため、実際は裁判官のための「迅速化」になっているのである。
また「分かりやすく、迅速にする」趣旨で導入された手続きによって、証拠の採否や審理そのものが粗雑で疎漏なものになる。すべてが裁判官にたいする批判を封じて、国民(裁判員)を冤罪の共犯にするこの制度がはらむ矛盾である。
憲法違反のデパート
そして何よりも最大の矛盾は改悪刑訴法の3点セット(後述)、とくに公判前整理手続が「憲法違反のデパート」になっていることである。
憲法第37条第1項「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」の全センテンスに反する。公開の裁判が始まる前に、検察・被告人の双方から争点に関する主張と証拠をすべて提出させることは、裁判官に予断(むしろほとんど結論)を持たせるから「公平」ではないし、「公開の裁判」を受ける権利を害するものである。これは同時に、憲法第38条が保障している黙秘権を破壊するものでもある。
V 裁判員裁判制度の問題点
司法改革
裁判員裁判制度は、小泉構造改革の一環としての新自由主義的「司法改革」のために導入された。この「改革」は、民事では資本と官僚機構のための「効率」の優先、刑事では治安強化に裁判所自身が乗り出すことの水路となっている。
刑事裁判では、冤罪の頻発と裁判官・裁判所の警察・検察への従属の露骨化によって、裁判所・裁判官への信頼が低下しているという現実があった。そこに日弁連が、「G8先進国」で陪審制度も参審制度もないのは日本だけであることを指摘し、国民の裁判への参加と裁判の監視のために陪審制度の導入を提起した。
裁判員裁判制度は、これを最高裁と法務省が歪曲的に取り込み、裁判官の権限強化のために悪用して成立した。結果的には、世界のどの陪審・参審制度とも似て非なるものになったのである。
義務と強制
なによりも、陪審・参審制は住民・市民(被告人を含む)の権利としてあるのにたいし、裁判員裁判制度は裁判員に多くの義務と強制を課す。
陪審・参審は、被告人とされた人はそれを受けるかどうかを選択する権利があるのにたいし、裁判員裁判では裁判官による一方的選択である。
陪審裁判では評議内容を漏らさない義務はないが、裁判員裁判は「罰則付きの守秘義務」が課せられている。
陪審裁判が出した無罪評決を裁判官は覆せず、検察も上訴できないのにたいし、裁判員裁判では上訴できる。
なによりも陪審員・参審員が大きい権限を持つのにたいし、日本の裁判員は裁判官にたいする補助的・従属的地位にある。
裁判官に従属
裁判員裁判制の決定的問題点は、裁判員は密室の中での裁判官の法解釈に従わざるをえないことにある。アメリカの陪審裁判では12人のうち1人でも反対したら有罪決定はできない。日本の裁判員制度(裁判官3人+裁判員6人)では裁判官に実質的拒否権がある。裁判員は証拠文書を事前には読まない(聞くだけ)から、拙速裁判の危険性が高くなる。そのうえ、罰則付き守秘義務や欠格条項など、裁判員にたいする多くの制約がある。
W 改悪刑訴法と闘うために
公判前整理手続
2005年施行の改悪刑訴法には3つの改悪点がある(「3点セット」)。
第1が、公判前整理手続の導入である。
第1回公判前にこの手続きを入れる「改革」が、「裁判員等に分かりやすく争点を整理する」ために導入された。その結果、防御権保障を欠落させた拙速・効率化のために、逆に公判前整理手続が肥大化し、公判先取り的な「予審的」準備手続きと化す。さらに「起訴状1本主義」〔※1〕や予断排除の原則が空洞化し、裁判官の独裁がいっそう強まる。
この手続きでは、被告人側が主張明示義務と証拠調べ請求義務が課せられ、手続き終了後は証拠調べ請求が制約される。その結果、黙秘権が事実上否定され、無罪の立証責任を被告人側に転嫁することとなり(被告人側が無罪を立証できなければ有罪)、「無罪推定の原則」〔※2〕に反する。実質的に「当事者対等の原則」〔※3〕にも反する。
争点・証拠と具体的に関連づけた主張が義務づけられ、背景事情や間接事実の主張・立証が認められなくなる。公訴棄却の主張や正当性に係わる歴史的背景事実の主張・立証が封じられる(政治的主張の禁止・排除)。
証拠開示の制限
第2点が証拠開示の手続きの法制化である。
証拠開示の法的根拠が不十分であるため、導入したとされるが、全面証拠開示ではなく、争点に関連するかどうか、開示が相当であるかどうかの判断は第1次的には検察官に、最終的には裁判所の裁量に委ねられる。そのうえ、警察保管全証拠の検察官への送致義務規定や検察官保管証拠票目一覧表の被告人側への開示規定が欠如しており、被告人側が開示してほしい証拠の特定が困難となっている。
結果として、裁判官が「迅速裁判」のために裁判官に必要と判断される証拠だけの開示に傾く。さらに公判前整理手続で取調べ請求しなかった証拠を、公判の段階に至ってから取調べ請求することは、やむをえない事由が存在した場合を除いてはできないことになっている。
開示された証拠について「目的外使用」にたいする罰則付きの禁止条項があり、基本的には被告人と弁護士以外は見ることができない。
連日開廷の原則
第3に「連日開廷の原則」なるものが導入されたことである。
裁判員は平均3日以上の拘束は無理という判断から、裁判員の参加する裁判を数回の連日開廷でおこなうという趣旨で決められた。刑事被告人の十分な反証や証拠の検討の時間を奪う拙速裁判になることは不可避だ。裁判員の参加しない裁判にもこれが準用されるから問題がさらに大きくなる。
以上のように、この制度は矛盾だらけ、違憲だらけであり、崩壊必至である。なによりも闘う者、権力に拘束された無辜の労働者・市民を守り抜くため、裁判員裁判と改悪刑訴法をのりこえて闘いぬこう。
X 不当な人身拘束との闘い
長期勾留、接見禁止、懲罰(保護房)、保釈条件の厳重化。
これらの長期・過酷な人身拘束は不当、不正義きわまりないものである。次元を画する不当性は、なんとしても反原発闘争を抑え込もうとする体制側の執念による。運動的に大反撃して即刻、取りやめさせなければならない。
しかも関西大弾圧では、「威力業務妨害」や「転び公妨」という、警察以外の者を盾にしたり、警察官を被害者にでっちあげるという卑劣さ、自信のなさが浮き彫りになっている。闘う人びとにとってチャンスでもある。
福島原発事故は「核と人類は共存できない」ことを突きつけた。生きるために原発のない社会、格差・貧困の廃絶を目ざす者にとって、関西大弾圧との闘いはすべての基礎をなす。全被告人・逮捕者の奪還と無罪確定まで、ともに闘おう。
〔※1〕裁判官が予断を持つことを排除するため第1回公判前には起訴状以外は一切見ないこと、公判前整理手続はこれをもろに破るものとなっている。
〔※2〕「疑わしきは被告人の利益に」の原則と同じ、犯罪事実については検察官に挙証責任があり、その存在が合理的な疑いを入れないまでに立証されない限り、被告人は無罪とされる。
〔※3〕起訴権限を独占している検察官(国家権力)と被告人との間では、攻撃・防御力に著しい格差が生じるため、被告人の防御力を増強して実質的対等を実現するために、弁護人の援助を受ける権利と被告人の黙秘権の保障を基本として、検察官の挙証責任論や証拠開示への配慮など総体的に被告人の地位を高める措置を取って保障してきた。改悪刑訴法は戦後刑訴法のこの趣旨を全部破棄するほどの破壊性をもつ。
5面
「慰安婦」制度は戦時性暴力の象徴
5月19日、「慰安婦」問題の真実を知る講演会(尼崎市)での
方清子(パン・チョンジャ)さん(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)の講演要旨
金学順(キム・ハクスン)さんをはじめとして、アジア各国で被害者が名乗り出られた90年代初め以降、国際社会でも「慰安婦」問題が注目され始めた。
とんでもない人権侵害
歴史的に女性に対する性暴力が戦争の中で続いてきたのは紛れもない事実だ。現在も世界の紛争地や戦場、あるいは基地があるところでは女性に対する暴力が続いている。だからこそ「慰安婦」制度の被害者が名乗り出たころから、女性たちに対する戦時性暴力がとんでもない人権侵害であるという認識と、女性に対する暴力の連鎖を断とうという動きが広がっていった。だからこの「慰安婦」問題が国際社会で注目を浴びた。「何で日本だけ責められなければならないのか」と橋下市長は言うが、それは戦時性暴力の最も象徴的な存在として「慰安婦」問題があり、国際社会からもそう位置づけられているからだ。
法的解決こそ必要
日本政府は国民基金で収束を図ろうとした。しかし多くの被害者は、「政府としての謝罪の意味を持たない」として、それを拒否している。
例え謝罪をしたとしても、その謝罪を裏付けるような法的な措置が必要だ。そのため01年、当時の野党3党(民主、社民、共産)が「戦時性的強制被害者問題解決促進法案」を参院に提出した。およそ10年間にわたって8回国会に提出したが毎回廃案にされた。09年の民主党政権誕生で、法的解決の実現かと期待されたが、解決することなく政権交代となった。
世界を揺るがした決議
被害者の方がどんどん年を取り、亡くなられていく中で、今回のように被害者を再び傷つける暴言がなされている。
しかし国際社会の流れはちがう。07年7月、米国の下院議会は日本政府に対して「慰安婦」問題に関する勧告を決議した。これは世界を揺るがすような決議だった。その年のうちにオランダ、カナダ、EUで勧告決議があがり、翌年11月、韓国と台湾で勧告決議があがった。国際機関でも「慰安婦」問題の解決を求める勧告があいついでいる。
国際社会の憂慮
橋下市長はこれらの勧告・決議を読んだことがあるのだろうか。彼が言うような「日本はレイプ国家だ」「女性たちを暴力・脅迫によって連れて行った」というようなことはどの勧告にも書かれていない。そこに書かれているのは、「かつて日本がやったことを認めて被害者に公式に謝罪し、賠償しなさい」ということだ。そして「そういった歴史を教科書に載せて歴史教育をして下さい」ということだ。
もう一つ各国の勧告のポイントは、「それに対して違うという意見にはきちんと反駁すること」と書かれていることだ。これは、認めたことを反故にしようという動きが日本でくり返されてきたことへの国際社会の憂慮の現れである。
市長をお辞めなさい
橋下市長は「事実と違うことを言われて侮辱されている」と言うが、これは事実なのだ。誰がなんと言おうと、「慰安婦」制度というものが存在し、その創設から管理・運営まで軍の関与の下にあったのだ。そこで女性たちが非人間的な扱いを受け、多くの女性たちが亡くなっていった。生存者は今も身体と心に傷を負って生きている。
これは紛れもない事実であり、否定のしようもないことだ。国際社会は、それを問題にしているのだ。彼にはわかってもらうよりも、「市長をお辞め下さい」というのが私たちの今の思いである。
抑えがたい怒り
(今回来日した)金福童(キム・ボットン)さんは1926年に生まれ。1941年、15歳の時に軍服工場で働くといって船に乗せられ、中国に連れて行かれた。逃げようがなかった。
吉元玉(キル・ウォノク)さんは1928年生まれ。1940年、 満11歳のときに連れて行かれ、そのままハルピンの慰安所で働かされた。とにかく殴られて殴られて、自分の顔なのか皮膚なのかわからなくなるぐらい殴られた。「慰安婦」とされたときはまだ生理もなく、後で生理になって、血を見た時には自分はもう死ぬと思ったと証言されている。
このような方たちの思いを考えもせず、暴言をくり返す者たちに抑えがたい怒りを感じる。〔文責・見出しは本紙〕
改憲の動きに強い危機感
来日した日本軍「慰安婦」被害者
5月19日、尼崎市内で、日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークの方清子(パン・チョンジャ)さんを招いて、〈『慰安婦』問題の真実を知る講演会〉が開かれた。「ききたい つなげたい8・6ヒロシマを」実行委員会の主催。60人が集まった。
方さんは91年に金学順さんが、日本軍「慰安婦」被害者として名乗り出たことに衝撃を受けて「慰安婦」問題に関わるようになったという。
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークは、09年、各地方自治体議会で日本政府に対し「慰安婦」問題の解決を求める意見書可決運動がはじまるなかで結成された。市民派議員が一人もいない大阪市議会でも可決を実現した。現在では40の議会が意見書を可決している(決議を含む)。
ハルモニたちの想い
方さんは講演の最後、来日中の日本軍「慰安婦」被害者の金福童さんと吉元玉さんのことにふれた。
二人のハルモニが、以前に比べて身体もやせ、体力もかなり衰え大変な状況でも何故来るのか。「そのことの重みを考えて欲しい。今回は私たちがお願いして来てもらうのではありません。このままだと日本が憲法も変えて戦争のできる国になって、そうしたら子どもたちがまた自分たちのようにつらい思いをするんじゃないかと、とても危惧されています。いつも水曜デモでマイクを持つとそのことを言います。『戦争はいけない。自分たちのような思いを次の世代の子どもたちにはさせたくない』だからそのために最後の力をふりしぼって来て下さるのだと思います。それに応えて、参院選で自民圧勝ということだけはさせず、憲法を変えさせず、戦争ができる国にはさせないことがハルモニたちの思いに応えることだと思う」
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大阪市斎場差別裁判で全面勝利
懲戒免職を取り消し
5月15日、大阪地裁でひらかれた「斎場差別裁判」で、@懲戒免職を取り消す、A退職金不支給処分を取り消す、B裁判費用は被告(大阪市)の負担とする、という全面勝利判決を勝ちとりました。
大阪市はこの地裁の取り消し処分にたいし5月29日、不当にも控訴しました。支援体制を強化し、控訴審で原告の処分取り消しの確定を勝ち取ろう。
「心付け」の受け取りを口実とする斎場労働者10名への懲戒免職処分は、大阪市の差別攻撃そのものです。原告団は港合同の力強い支援を受け、3年間のたたかいに勝利したのです。
この間大阪市は佃、小林の斎場を民営化し、瓜破(うりわり)、北、鶴見の3斎場も指定管理制度下に置く攻撃をかけています。
これは河川清掃職場、清掃局の合理化や地下鉄民営化などの橋下市政の攻撃の一環であり、現業労働者・現業労組一掃の大合理化攻撃です。
橋下は、黒字の地下鉄を資本家どもに売り渡し、市政の現業部門も資本家どもの餌食とさせ、現業労働者にはより激しく厳しい労働と低賃金を強制しようとしています。環境局には被差別の労働者が多く雇われていましたが、現業労働者は再び貧困化の奈落に突き落とされ、40〜50年前の生活状態にたたき込まれようとしています。
斎場裁判とは何か
2001年12月、毎日新聞は、大阪市の斎場の職員に「心付け」が行われていることを報道しました。大阪市は調査の結果、技能職員に文書訓告をおこないました。
その後、斎場幹部職員によって「心付け」が復活されましたが、09年の幹部職員の当局への通報によってこれが発覚し、今回の10名の懲戒免職に発展したのです。
「心付け」については、大阪市当局の情報提供にもかかわらず、大阪府警は収賄罪で立件することはできませんでした。すなわち、仮に職務命令違反であったとしても職員に職務権限はなく、「心付け」の受け取りは服務規律でも処分の対象になっていなかったのです。
デッチあげの処分
大阪市は、法的に懲戒免職にできないことの認識のうえにたって、斎場労働者を法のラチ外において、労働者にとって死刑に等しい、重い懲戒免職にしたのです。
行政は、処分規定も作らずに、「心付けの受け取りを絶対的に禁止したのに労働者は違反した」とウソをつきました。そして事件後に、心付けは「原則免職を基準とした処分」という「指針」を作ることによって、「極めて」悪質、公務内外に「多大な」影響を及ぼす「重大な」非違行為をやった悪者として斎場労働者を断罪したのです。
斎場労働者への差別
被告による処分の不当性を隠蔽するとともに、こうした非違行為をなした者に対して、つまり原告が、大阪市の本来の「懲戒処分に関する指針」の対象から外れていると認識しながら、行政は、斎場労働者に対して罪刑法定主義(刑罰不遡及の原則)を完全に無視し、法から排除しました。
事件の後に作った「指針」を、過去にさかのぼって適用して処分したのです。これは、「法の前の平等」の権利を剥奪する許しがたい暴挙であると同時に、原告の人権無視・蹂躙であり、人格の完全否定です。
斎場労働者に対する法からの排除であり、斎場労働者を法の前での平等である人間として認めない差別攻撃そのものです。この決定は、原告のみを対象とした「特別制裁法」です。故に裁判所は原告側の権利を守る判決を出さざるを得なかったのです。
逃亡した市従労組
この解雇撤回闘争から逃亡した大阪市従業員労働組合は、被告大阪市による差別犯罪への加担者です。労働組合は、クビ切り攻撃などは絶対に許さず闘ってはじめて組合です。単なる闘いからの逃亡ではなく、当局の差別攻撃への加担を意味しています。
労働組合は、自らの存在意義を、今一度反省的に明らかにし、市民の差別言動をきびしく解消するために真剣な取り組みを開始すべきです。
最後に判決では「差別は有っても心付けは受け取ってはいけない」という文言が入っており、差別は法の適用の範囲外として扱っています。これでは差別された斎場労働者は今後差別とどのように向き合うことができるのでしょうか。とても重い課題を置き去りにした許しがたい文言です。(南寛治)
6面
生活保護費引き下げのカラクリ
実態とかけ離れた数値が根拠に
最大10%の引き下げ
生活保護費が8月から大幅に引き下げられようとしている。生活扶助費が3年間で総額670億円削減される。削減幅は平均6・5%であり、世帯により最大10%。受給額が減る世帯は96%におよぶ。
単身者で約7千円、夫婦と子ども2人の世帯では約2万円もの大幅切り下げとなる。同時に、「就労支援の強化、医療費扶助の適正化、扶養義務の強化」など制度の見直しによって450億円、合計1120億円という大幅削減である。
このうち670億円は予算の中で決められる。1年半の経過措置が取られ段階的に削減される。13年度予算の成立で第一弾の削減が決まった。制度の見直しによる450億円の削減は、生活保護法の改悪などで決まるが、5月29日現在まだ審議中だ。
最賃引き下げに連動
生活保護費が引き下げられると、連動して最低賃金が下がり、住民税の非課税世帯の基準額、就学援助の基準額、介護保険料など、多くの低所得者は減免額が下げられて負担増となる。
最低賃金が下がれば、一般の賃金相場にも影響する。低所得者層の多くが負担増となる。214万人の生活保護を利用している人だけでなく、2000万人の相対的貧困層、3100万人の地方税非課税世帯に大きな影響を与える。
マスコミが流すうそ
マスコミを使った世論誘導では、「生活保護の不正な受給が多いから適正化する」ように言われているが、真っ赤なうそ。
生活保護の、いわゆる「不正受給」は2010年、件数で1・8%、金額にして0・5%にすぎない。それも、高校生のアルバイトが申告漏れだったというような、不注意や制度を知らなかったケースが多い。意図した不正もあるが、まれなケースだ。
密告条例
兵庫県小野市では「生活保護受給者がパチンコをしているのを見つけた市民は、通報しなければならない」という密告条例が制定された。市民に、「生活保護受給者はパチンコをして遊んでいる」などという一面的メッセージを発信。「パチンコをするのも不正受給」と、その幅を広げ市民を差別的に扇動している。市に寄せられたのは、反対意見より賛成意見の方が多く、キャンペーンの浸透度を表している。
「デフレ」は本当か
削減案の根拠に、08年と11年の物価を比較し「デフレだ」と言っている。08年は、原油高の影響で消費者物価指数が突出して高騰した年である。なぜその年を比較したのか。比較するなら、前回引き下げの2004年を基準にすべきだが、それだと物価はさほど下がっていない。
「デフレ」と強弁するために、恣意的に、物価の高かった08年と比較したのだ。厚労省官僚が自民党の10%削減の公約を実現するために「デフレの影響」を思いついたというのが真相ではないか。
扶助費切り下げの根拠となる数値は、きわめて恣意的に高く計算されたもの。政府は、切り下げの大きな理由を、「デフレで物価が4・8%も下がっている」としている。しかし、最近のデフレと言われている実態は、電気製品やパソコンなどが大きく値崩れしていることにある。
必需品は値上がり
生活必需品である食料費などは、むしろ値上がりしており、光熱費は高騰している。電気製品の値下がり幅はデフレ4・8%と言われるうちの4・1%を占める。食費や光熱費の値上がりにもかかわらず電気製品・パソコンなどの値下がり幅が極端に大きいため、消費者物価指数(CPI)全体を引き下げている。
生活扶助相当CPI
厚労省は一般のCPI(消費者物価指数)ではなく、「生活扶助相当CPI」というものを使って計算している。
計算にあたっては、一般のCPIから生活保護では生活扶助費に含まれない品目(家賃など)が除かれる。その結果、大きく値下がりしている電気製品やパソコンなどの影響が出やすい計算式になっている。つまり「生活扶助相当CPI」では、消費支出全体に占める電気製品の割合(ウェイト)が不当に高く出ているのだ。
具体的には、一般CPIでは2・7%のところ、「生活扶助CPI」では4・2%にもなってしまっている。そのため電気製品などの値下がりの影響が「生活扶助相当CPI」ではより大きく受ける。これはまったく実態に反する。年収100万円の人が毎年4万2千円も電気製品を買っている計算になるが、そんなはずがない。
アンケート調査
正確な数字を得るためにメーリングリストなどを通じて短期間でアンケート調査を行い175人に回答してもらった。
アンケートでは、「生活扶助相当CPI」に含まれている電気製品21品目について、「生活保護を利用し始めてから現在までの間に何をいくらで購入したか」を聞いた。多くの人が「購入したことがない」と答えている。
そのパーセンテージは、ビデオカメラ99・4%、洗濯乾燥機98・3%、カメラ96・69%、デスクトップ・パソコン97・7%、ノートパソコン94・3%。
これらはいずれも、下落率がきわめて高くCPIの低下に強く影響を与えている品目である。ほとんどの人が買ったことのない品目の値下がりを理由に、生活扶助費が下げられようとしているカラクリが明らかだ。
アンケートで、今年3月の生活扶助費を回答した138人の生活扶助費×受給月数を合計し、その中に占める電気製品21品目の購入費総額の割合を計算してみると、わずか0・56%だった。地デジ化でテレビを購入した人が多いにもかかわらず、この低さである。 厚労省が計算した「生活扶助相当CPI」における電気製品のウェイトの4・2%は、生活保護利用者の実態とかけ離れている。
所得下位20%でも
所得下位20%の階層の人が電気製品などを購入する割合を、食料費などの購入する品目ごとに細かく消費者物価指数(CPI)と対比させて計算すると「下位20%のCPI」を弾き出すことができる。
各年の「下位20%のCPI」の変化率は、2004〜2011年でマイナス1・86%。2008〜2011年(厚労省採用)でマイナス2・81%。
厚労省のいう4・8%下落などという数字にはならない。
引き下げに根拠なし
@下位20%に属する世帯の消費実態でさえ、厚労省が示した数値とは大きな乖離がある。
A現時点で厚労省が公表している4・8%の物価下落という数値を根拠に生活扶助基準を引き下げることはできない。
B仮に、それを強行するようなことがあれば、裁判でも指摘されている厚生労働大臣の裁量を著しく逸脱している典型的な実例となり、違憲・違法である。
C今回の生活扶助基準引き下げは、撤回されなければならない。
D保護世帯の数値を計算するのであれば、下位20%の数値にもとづくのでも不十分なのであって、厚労省が隠しもつ保護世帯の消費実態を調査した「社会保障生計調査」の結果を公表したうえで、厚生労働省の見解を出す責務がある。
繰り返すが、毎年4万2千円も電気製品を買っている低所得者などほとんどいない。それなのに、でたらめな計算で扶助費が下げられようとしている不条理を許すことはできない。(高見元博)