原発の再稼働ゆるすな
11〜12日 全国で「さよなら原発集会」開かれる
「原発いらない、子どもを守れ」 代々木公園を埋めた人びと(11日) |
11日から12日にかけて、全原発の停止と廃炉を求める集会が、全国各地でおこなわれた。
高浜3号が20日に定期検査に入ったため、現在稼働中の原発は、柏崎刈羽6号、泊3号の2機のみだ。
13日、原子力安全・保安院は大飯3・4号機の再稼動に向けて、ストレステスト一次評価を「妥当」とする審査書を原子力安全委員会に提出した。原子力安全委員会はあの斑目がいまだに委員長にいすわっている。このようなデタラメな審査による「再稼動」を絶対に許してはならない。
代々木公園に1万2千人
東京の2・11集会では、代々木公園イベント広場に1万2千人が参加した。大江健三郎さん、澤地久枝さんの発言に続いて福島現地からの訴えがおこなわれ、落合恵子さんが集会のまとめをおこなった。
集会後のデモは、参加者が新宿中央公園コースと明治公園コースに分かれてにぎやかにおこなわれた。いろとりどりのデコレーションで反原発・脱原発が表現され、3月11日の「原発いらない福島県民集会」にむけて大きなうねりをつくりだした。
老朽化・活断層 危険な島根原発
2・12 松江市で集会とパレード
「危険な島根原発を動かすな」 中国電力に向けパレード(12日 松江市内) |
12日、島根県松江市総合体育館で「さよなら島根原発大集会」がおこなわれた。中国地方各地から1300人が集まり、「水・大地・海・空・食・こどもを守ろう」と声を上げた。
集会は京都大学原子炉実験所助教の今中哲二さんの講演をはじめ、急遽特別参加した1000万人アクション呼びかけ人・鎌田慧さんの連帯のあいさつや、ハイロアクション福島の大賀あや子さんの福島の現状報告を受け、「さよなら島根原発」の思いを強めるものとなった。
集会後1000人を超える参加者が中国電力に対するパレードをおこなった。
老朽原発
島根原発は1号機が1974年に運転開始した老朽原発。福島第一原発1号機と同じ沸騰水型マークTで、設計に関与した人たちが「設計には重大な欠陥があり、運転を取りやめるべきだ」と説いていた、いわくつきの原子炉だ。2号機は1989年から運転を開始したが、2010年3月、島根県知事と松江市長が事前同意し、プルサーマル運転をはじめる予定だった。また、電気出力137万kWの3号機がほぼ完成し、運転開始直前だった。
中国電力は1号機、2号機建設時には、考慮すべき活断層はないといっていた。1998年には3号機建設のための調査で、原発のすぐ南に宍道断層があることを確認したが、長さ8qで耐震設計に影響なしとした。
中国電力は04年には10q、08年には22qと訂正したが、原発は安全だと強弁しつづけている。
総合評価は最低の「1」
2010年6月、重大な点検漏れが公表された。06年9月、1号機の緊急炉心冷却系統のモーター誤発注でサイズが合わず、交換時期が過ぎても交換しないまま点検済みとして運転を続けていた。09年3月にはメーカーからの連絡もあり、中電は知っていたが放置し運転を続けた。10年3月ようやく社内調査を開始、結局点検を終えていないのに点検済みと記帳するなど、合計511件の点検漏れがあると公表された。その他、点検の方法等に問題があるケースが1160件公表された。
中国電力は、8年前にも同様の点検漏れがあったと暴露されている。原子力安全・保安院ですら唯一島根原発だけ、安全重要度総合評価を最低の1とした。
ネットワーク
福島で「警戒区域」(強制避難)とされた20q圏内を島根原発にあてはめてみると、県庁所在地松江市の全域、宍道湖全部、中海の半分、出雲空港も米子空港(鳥取県)も入る。
再稼動を阻止し廃炉にすることは、住民の切実な要求だ。これまでも運転差し止め訴訟など、粘り強くたたかいが続けられてきた。昨年7月には山陰地方の原発に反対する人たちが大きく手をつなぎ「さよなら島根原発ネットワーク」を結成した。12日の集会はこの人たちが中心になって実行委員会をつくり計画された。
大飯(おおい)3・4号機の運転再開阻止
関西電力滋賀支店を“人間の鎖”で包囲
ウシやクマの着ぐるみも登場、「再稼動反対」を訴え(4日 大津市内) |
「大飯原発3・4号の運転再開を止めよう!2・4関西びわこ集会」が、滋賀県大津市でひらかれ、琵琶湖畔にある会場・ピアザ淡海は、500をこえる人びとであふれかえった。
関西と福井はもとより、東京、愛知、岐阜、三重、愛媛、佐賀、福島からの避難者等、全国から参加があり、メッセージも山本太郎さんをはじめ、北海道、四国、九州等、全国から寄せられた。集会の賛同団体は172団体、大飯原発の運転再開反対署名は約1カ月半の4日の時点で、4万3229筆になった。
この日の集会にむけて、「さいなら原発・びわこネットワーク」「バイバイ原発・京都ネットワーク」を構成する人たちが、滋賀県と一部京都の駅頭で連日のビラまき街宣をし、大きく結集を呼びかけてきた。
関電の全原発が止まる
集会では、アイリーンスミスさんが主催者あいさつ、服部良一衆院議員が政府・国会の情勢報告、小山英之さんが大飯原発をめぐる動きの報告、原発地元・福井県小浜市の中嶌哲演さんが40年にわたる闘いの報告、「避難者の訴え」として福島県南相馬市から京都に避難している女性が発言。そのあとのリレートークでは、滋賀「あすのわ」をはじめ、京都・奈良・大阪・和歌山・兵庫・岐阜・福井・東京・愛媛・佐賀・愛知から発言があった。
行動提起では、大飯原発再開に反対する署名を20日に最終集約し、福井県議会が始まる24日の直前に提出する。各地で原子力安全・保安院を呼び「説明会」を開かせる。2月20日に高浜3号機が止まり、これで関電のすべての原発が止まる。この日に関電に行き、大飯原発再開をやめるよう申し入れをおこなう。これらが確認された。
デモは、反原発の風船を持つ人や、ゴレンジャー、牛、熊のぬいぐるみも登場し、にぎやかにおこなわれた。関電滋賀支店前では、関電を含む街区一帯(約800m)をヒューマンチェーンで包囲し、何度もウェーブをおこなった。
2面
福島の子どもたちを一人残らず守る
2・11〜12 放射能からいのちを守る全国サミット
11日〜12日、福島市内で「放射能からいのちを守る全国サミット」が開催され、避難や保養などの受け入れ50団体、400人が全国から集まった。
さまざまな受け入れ、医療相談、食品の放射線測定などをおこなっている団体が貴重な体験の活動報告をおこない交流した。
ひとり残らず守る
11日は、避難受け入れや健康相談の事例紹介、その後、A・避難者支援、B・保険・医療・食品・測定、C・保養プログラム、D・子どもの権利、E・女子の視点で分かち合う、の5つに分かれて分科会。その後、各分科会からの報告を含めてのパネルディスカッションがおこなわれた。
主催者を代表して佐藤幸子さんが、福島の子どもたち全員を一人残らず守ってあげたいと〈子ども福島〉を立ち上げたが、福島県の「安全宣伝」など色々な理由で残らざるを得ない子どもたちがいる、私たちは絶対にあきらめません、全国の皆さんと前へ進んでいきたいと、あいさつ。
事例紹介では、福島県伊達市から札幌の団地に避難している女性が、行政や支援団体の助けを受けながら、お茶会から150世帯500人超の自治会に発展させ、支援者におんぶにだっこではなく避難者みずからが動いて横のつながりをつくっていると報告。
福島避難母子の会in関東の女性は、夫を福島に残して自主避難した母親たちがツイッターなどでつながり、31家族で交流会をおこなっていると報告。
NPOまちづくり支援協会(大阪)から、奈良県にカントリーファームをつくることが実現して、避難者を募集している、等々。
パネルディスカッションで、振津かつみさんは、チェルノブイリの例を出しながら保養の重要性を指摘し、違う土地の人たちとの交流のなかで連帯感を育む大事さを強調した。受け入れ活動をやるうえで特に重要だと思ったのは、集まったお金がどのように使われたのか、次につなげるためにも活動団体の説明責任が大事ということだった。
悩み相談会
12日の4時間にわたる相談会では、福島県内から200人が相談に訪れた。
今回参加して、全国の受け入れ団体の人びとと交流し、激励される中で、春休みから保養の受け入れをやろうと思った。色々な困難をのりこえて、まず受け入れて、そこから長期の闘いにいどむ腹を固めようと決意した。(通信員・M)
相談会には福島県内から200人が訪れた(12日 福島市内) |
震災原発事故を警告した 『山のかなた』 を連続上映
DVD『山のかなた』は、「もんじゅ」のある敦賀半島から飛ばした風船を拾った青年との交流から、六ヶ所村や全国各地をたずね、もんじゅや原発の危険性を学んでいく物語である。小林圭二さんの判りやすい話や、原子力を拒否し地域ぐるみで自然を守る話などへと続く。圧巻は石橋克彦神戸大名誉教授が、中越地震での東電・柏崎刈羽原発の事故に対し、「これは人類に対するポツダム宣言だ。これを生かさないと更なる巨大事故を招く」と、震災原発事故を警告をするところである。3・11以前のこの警告に対し、政府・東電は何の対策もとらず福島原発事故を招いた。
まもなく3・11福島原発事故から1年になる。政府・経産省・東電はこの事故の重大さを薄めようと、「収束宣言」や「安全な復興」を語る。しかしそれはその場しのぎにもなっていない。
『山のかなた』は、自然の美しさと坂本龍一の音楽で淡々と描かれ、また吉永小百合の推薦文にもある平易なDVDである。3・11以前に作られたこのDVDは、3・11後に見る私たちに、学び論議し行動することをよびかけている。
上映会の各会場では福島の農民や放射能ガレキの拡散と闘う青年の訴えなどもある。3・11プレ企画として活用し、3月11日には多くの仲間とともに大阪・中之島公園に集まろう。
『山のかなた』連続上映会
2月26日(日)午後1時半〜 尼崎労働福祉会館 中ホール
〔阪神「尼崎」駅から北へ徒歩7分〕
3月3日(土)午後2時〜 とよなか男女共同参画推進センターすてっぷ セミナー室
〔阪急「豊中」駅前 エトレ豊中5階〕
3月3日(土)午後2時〜 宝塚東公民館 セミナー室
〔阪急「山本」駅から南へ徒歩5分〕
3月10日(土)午後2時〜 川西市総合センター 視聴覚室
〔阪急「川西能勢口」駅から北へ徒歩7分〕
3月10日(土)午後6時半〜 尼崎女性センター・トレピエ 視聴覚室
〔阪急「武庫之荘」駅から南へ徒歩3分〕
“一時避難”で子どもを助ける(上)
吉野裕之さん(子どもたちを放射能
から守る福島ネットワーク 避難・疎開・保養班)
1月22日、神戸市内で開かれた“みみをすますinひょうご”(本紙前号既報)で、「子ども福島」避難・疎開・保養班世話人・吉野裕之さんが基調報告をおこなった。その要旨を2回に分けて掲載する。〔文責・見出しは編集委員会〕
私たち「子ども福島(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク)」は5月1日に立ち上げた、保護者を中心とした団体です。子どもたちを守りたいという一点だけで集まれるのであれば、主義主張を越えて集まって動いていこうということで、活動を始めました。
@測定をして除染をする班、A避難・疎開・保養を促す班、B講演会をする知識普及班、そしてC残っているのであれば気をつけないといけないことを考えていく防護の班。4つの班に分かれて活動を始めました。
保養プログラム
夏休みに、関西でもたくさんの子ども達を保養プログラムで受け入れていただきましたが、その取り組みが非常に助かっているんです。
子ども達が外で葉っぱに触ったりどろんこ遊びしたりできない、プールにも入れなかったというような姿。ぜひ県外で普通の夏休みを過ごさせてあげたいということで、2万人以上の子ども達が、夏休みに県外のプログラムに参加させていただきました。
それが体験になって、やっぱりそうやって外に出ると「当たり前の環境がいかに大切か」ということを分かっていただいて、その後の具体的な避難につながっていっているというのがあります。
顔馴染みになって心と心がつながるような関係ができると、いざ避難となった時にも顔が見える、あの人がいるからあの人にちょっとお世話になって、最初きっかけ作ってもらったから行ってみようというような、最初のスタートに、やっぱり保養というプログラムが非常に有効だなっていうのが分かります。
野菜カフェ「はもる」
福島市内は県内の農産物が普通に売られている状況ですし、田舎なので野菜って届くんですよね、隣近所から。うちも福島市内の実家で過ごしているんですけど、近所の人が白菜持ってきてくれたりとかするわけです。隣近所との付き合いもあり、いただいたものはやっぱり食べてしまう。
西日本を中心とした野菜、完全無農薬の野菜を原価プラス送料でお譲りするという野菜カフェ「はもる」を、11月11日11時にオープンさせました。ここには若いお母さん方が買い物に来て、「もう助かるんです」って涙流しながら買い物をするお母さんもいるというような状況です。本当に安心できる食材をそこでお渡ししながら、いろいろな保養のプログラムありますよとか、今こういうのが最新状況ですよっていったことを情報としてお伝えしていく。そうすると、買い物に来るだけじゃなくて、もうそこで人生相談のような形で滞在時間が30分とか1時間とかいう方もいらして、それがすごくいいかなって思うんですよ。
バリエーション
私たちとしましては、うてる手ってなかなか限られていて、「避難できますよ、移転先ありますよ」という情報だけ流すのでは、残らざるを得ない人達の負担を増やしてしまう。気持ちの負担を。
「避難しないといけませんよ」とばかり言ってしまうと、その選択肢がとれない私って一体どういう親なんだろう、親失格だわみたいなふうに、特にお母さんが思ってしまう。子どもは子どもで本当は怖いと思っているんだけど、うちの中の状況を見ると、とても「本当は怖いから避難したい」と言えない。そう言うことによって親を悲しませてしまうというような気配りをする子ども達も、おそらく多いんじゃないかなと思います。なので友達同士でもなかなか話をしないようになってしまう。
避難という選択ができない以上、「危ないですよ」という情報でも耳を閉ざしてしまう。かたくなになって、なかったことにする。実際、高校生は「どうせ国民のすごいパーセンテージがガンで死ぬんだから、もうしょうがないよ」と。なったらなったでしょうがないみたいな、あきらめが実際あります。
学校の先生からの話ですが、女子高生がすーっと寄ってきて「先生、私もう福島県内の男の人としか結婚できないよね」みたいな話も、実際女の子達はしているようです。もうあきらめてしまったほうが楽だというような、まだ1年経ってないんですけど、そういうような状況があります。
いろんなバリエーションがありえるんだよということを、これからお知らせしていけたらいいかなというふうに思います。それが何かというと、保養プログラムなんです。
避難というと、なかなか行政の方々も不安です。人口がいなくなってしまうと、もう本当に自分達の県がなくなってしまうという不安は確かにあります。ですから、あくまでもまずは保養。その保養も、中期的な保養もあっていいわけだし、長期的な保養があってもいいわけです。避難って言うと、もう帰ってこないというおそれがあるんですけど、まずは保養に出る。
その時に大事なのが、子ども達は成長が速いですから、生物学的半減期という、体内除染を自ら進めるというような事をうまく生かしていこうというふうに思っています。(つづく)
発言する吉野さん(1月22日 神戸市内) |
3面
沖縄訪米団がワシントンで訴え
沖縄の海兵隊は不要
1月21日〜28日、米軍普天間基地の名護市辺野古への移設計画撤回などを訴えるため「アメリカへ米軍基地に苦しむ沖縄の声を届ける会」(団長・山内徳信参院議員)が訪米した。訪米団は、沖縄選出の国会議員や沖縄県議、住民運動のメンバーら24人で構成。23日から4日間、ワシントンDCなどで、国務・国防両省や米連邦議会議員、シンクタンク関係者ら61ヵ所で要請行動を展開した。
要請行動の期間中、沖縄意見広告運動では「普天間基地の即時閉鎖、海兵隊の撤退」を訴える意見広告をワシントンポスト・ウェブ版に掲載した。
訪米団は4班に分かれて要請行動を展開。@普天間基地の即時閉鎖・返還、A辺野古への新基地建設計画の撤回、B嘉手納統合案の撤回、C沖縄北部自然林へのヘリパッド建設の中止、D日米地位協定の改定―の5項目を要請した。
海兵隊は沖縄には駐留すべきでない
期間中、連邦議会議員12人と面談。この中で、民主党重鎮のバーニー・フランク下院議員は「第二次世界大戦は67年前に終わったのに、なぜいまだに海兵隊が沖縄に駐留しているのか。これ以上駐留すべきではない」と明言。沖縄への海兵隊駐留は「時代遅れ」との認識を示した。さらに、防衛省が強調する在沖海兵隊の抑止力についても「中国への懸念はあるが、それに対応するのは空軍や海軍」とはっきり否定。その他にも、継続的な情報交換を望む議員が出るなど、短い日程の中でも大きな成果を収めた。
また、シンクタンク・米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は「(米国政府は)2月の宜野湾市長選や6月の県議選の結果を注目している」と指摘。
辺野古も嘉手納統合も受け入れられない
山内団長は今回の訪米について、「主権者の沖縄県民を最初から無視してきたことは間違っていることを指摘できた」と成果を強調。「(日米両政府に対しては)辺野古も嘉手納統合も受け入れられないと言い続ける。また、今後は米国で培った人脈を活かして問題解決に取り組みたい」と決意を表明した。
糸数慶子参院議員は「海外に基地を置くことで逆に緊張を高めていることを、直接出向いて説明した価値はある」と振り返った。
思いやり予算カット日米合意撤回迫ろう
現在、米連邦議会では軍事費削減が大きなテーマになっている。昨年末、同議会は在沖海兵隊のグアム移転費を2012年度の予算から全額削除する国防権限法を可決。米国財政の深刻さを露呈した。
これは今回の行動でもはっきりと感じることができた。そう考えたとき、在日米軍の撤退を阻害する大きな要因は「思いやり予算」であることが改めて見えてくる。
日本は昨年、今後5年間で約1兆円の「思いやり予算」の拠出を決定。大震災下、その偏重ぶりが一層浮き彫りとなった。この予算をカットし、今こそ在日米軍を撤退させよう。「思いやり予算」を復興支援に回そう。
そのためにも必要なのは日本で大衆運動を起こして世論を喚起し、日本政府に圧力をかけることだ。その一環として第3期沖縄意見広告運動に全力をあげよう。
「基地をなくすのは、今」―沖縄の人々は鬼気迫る悲痛な思いを米国で訴えた。基地問題は沖縄県民だけの課題ではない。日本と米国に住む全ての人々の課題だ。互いに手を取り、しっかりと取り組もう。(沖縄意見広告・関西 スタッフ)
解説 8日発表の「米軍再編計画見直し」
“パッケージ”解消した日米政府
8日、日米両政府は「米軍再編計画の見直し」にかんする共同発表をおこなった。その主な内容は、「在沖海兵隊のグアム移転と嘉手納以南の米軍用地の返還の双方を普天間飛行場(宜野湾市)代替施設の建設から切り離す」というものである。
日本政府はこれまで主張してきた「辺野古への新基地建設を受け入れなければ、海兵隊のグアム移転も嘉手納以南の返還もない」といういわゆる“パッケージ”論をいともあっさりとひるがえしたのである。
それだけではない。防衛省は「海兵隊の一体的運用」の重要性を強調し、沖縄県側の疑問を封殺してきた。しかし、今回の日米協議で米側が提案したのは、8千人のグアム移転はとりやめ、4700人をグアムに、1500人を米軍岩国基地(山口県)に、残りはハワイやオーストラリアなどに「ローテーション」で駐留させるというものだ。海兵隊をバラバラに配置するこの提案のどこに「一体的運用の重要性」があるのか。米軍が沖縄に駐留を続けるのは、日本政府が無償で基地を提供しているからだ。
普天間基地をかかえる宜野湾市では、12日に市長選の投開票がおこなわれた。結果は、「即時無条件撤去・返還」をかかげる元市長・伊波洋一氏が900票差で惜敗した。当選した佐喜真淳氏(自民党・前県議)は県議時代は「県内移設容認」の立場だったが、今回の選挙では「辺野古移設は事実上不可能」として「県外移設を求める」と表明せざるをえなかった。選挙はきびしい結果となったが、沖縄県民の「即時返還」「新基地建設絶対反対」の意志は固い。
「沖縄の負担軽減」を決めた96年日米合意の最大の眼目は、〈世界一危険な普天間基地の撤去〉だったのだ。この問題を先送りにし、「辺野古崎沖とその隣接する水域に普天間飛行場代替施設を建設することに引き続き専念する」(「共同発表」)として、破綻が明らかな辺野古新基地建設にしがみつく野田政権を許すな。
投稿 原発を拡散する破廉恥さ
ストレステスト意見聴取会に思う
主催者側の主導権によってなされるモニタリング(意見聴取会)、それは、プロジェクト・チームの政策決定の必要条件を満たすための一種の権力者側の儀礼だった。設定される期日その他、いわゆる法制度上の規制と民主主義的必要条件を整えるための階梯をしつらえ、抵抗・反対の根拠を消し去るためにあり、ひたすら遂行されるのは、政治的日程だった。沖縄の辺野古に関する環境アセスメントの調査結果のレポート提出日程は、アメリカ議会の政治日程に都合よくされるためにあったことは記憶に新しい。
根底に軍事侵略思想
この原発再稼働問題は、3・11以降、慣例や儀礼ではすまない高度なテンションの次元に達している。たとえば、福島第一原発1号機は、米国のGE社の設計ミス商品を購入していた。GEの設計陣は、日本の風土性などなんにも考えていないことは、ある意味で想定できるにしても、米国議会で設計ミス問題が告発されていたことを政府も国民も知らなかったかのごときであれば、いまさら言うまでもないが、原発即ち核開発業界の権力関係は、「植民地」日本政府を突き抜けて、「宗主国」米国の主導権下にある。故に、福島県は、経済的、純エネルギー的効率など試算した結果を発表。あるいは、それぞれの市町村自治体は、みずからの独立的調査を制作しなければならない。県は、他のエネルギー、火力、水力、ガス、風力、太陽光、太陽熱などの発電経費や製造効率を原子力と比較して、原子力の発電効率の悪さを試算し、発表している。津波に関しても、東大地震研と組んで、東電の想定の甘さを告発している。
それでは、このストレステストなるもののオリジナリティはどこにあるか? ストレスもテストも欧米語であるかぎりは、欧米産ということだ。原発それ自体、その稼働条件を見積もる秤も欧米紀要であるかのように思わせたいのだろう。やたらカタカナに変換して、恣意的に解釈応用し国民を煙に巻くやりかたも、米国の市場調査開発戦略理論とコンピュータ用語の無抵抗な拡散によるものといえる。根底には、軍事侵略思想がある。米国と日本の権力関係は、同位相で、東京と福島の格差として、福島県と各地方自治体・市町村へと反復強制される。下種の勘繰りにしても、福島第一が大事故を起こす必要十分条件はととのっていた。粗悪な原発システムを半ば強制的に輸出した米国に抵抗できない罪を日本はまた、ヴェトナムへ、ヨルダンへ、トルコへと拡散してゆこうとする。なんという破廉恥さ。
地震多発時代
福島第一原発事故の報道によって、ヨーロッパ・アメリカは、ストレステストの再適用を迫られた。ポストモダンにあっては、同一モデルのシステム上の問題は、国境を超える。これが科学技術の世界性だった。みずからの産みの親の責任として、福島原発事故によって、明らかになった限界性をチェックすることが急務となった。
しかし、地震多発時代に達した日本列島で、どのように、このできてしまった原発工場を、新しい地震多発時代に向けて「改善」できるのか。原子力安全・保安院は前向きになれない。いまある原発を再稼働することが、コスト的に最も安上がりだからだ。そのメンテナンス上の無謀なコスト削減が破滅を招いた。指揮系列のトップにあるものが、その責任を問われず、賠償問題を政府に預け、再稼働を画策するような姿勢は、道義的にあり得ない。ただ財政上のコスト・カットしか彼らの頭にない。福島原発事故の真因は、メンテナンス上の経費削減によってである。リスクの多い精密機械を常時安全管理することは経済的にも無理だった。賠償問題で経営的障碍を云々する以前に、危険な原発の設営・メンテナンスで経費削減していたことが、事故の真因であって、津波だから地震だからという問題ではなかった。
ここまでくれば、庶民だって言わざるを得ない。経済効率の悪いものに税金を投下することは、これ以上ご免だということだ。命を侵害すれば、刑事事件ではないか。我々は、東電の兵隊赤子なんかではない。憲法下の主権者なのだ。
琵琶湖が放射能汚染
大飯原発にいたっては、琵琶湖が放射能汚染されれば、関西圏の水道事業は破産する。水も輸入商品を買わなければならない。2月8日経産省内、大飯原発ストレステスト再稼働意見聴取会への正当な傍聴要請は深夜11時まで続いた。辛うじて、中に入れた傍聴者は、現実には、なにがなんだかわからぬ委員会側の議事進行にあきれはてていた。内部撮影したテントひろば関係者は、帰ってすぐ、〈経産省前テントひろば〉ホームページに公表した。まるで傍聴の条件はみたされていないといってよい。
琵琶湖は,飛鳥・奈良・平安と続く古代王朝の原郷だった。関西の水源が被ばくすれば、関西は恐慌に陥る。
市民の身体の安全を最優先しない政府・東電は、最悪の権力・資本であることはいうをまたない。経産省別館前の歩道は、抗議行動の人々で一杯になってはいたが、正直、全然、まだ足りない状況であろう。政府も東電も、何も変わっていないのだから。(QUEMA記)
意見聴取会に抗議する人たち(1月18日 経産省別館前) |
4面
橋下が大阪市職員を思想調査
市労連はただちに労働委員会に救済申立て
9日、大阪市長・橋下徹は、一部を除く大阪市の全職員に対して、「労使関係に関する職員アンケート調査」に回答するよう業務命令を出した。
橋下は、職員の氏名、職員番号等を明記させた上で、政治活動や組合活動にかんする質問について、「正確な回答がなされない場合は処分の対象となりえる」として、職員に対して回答を強要しているのである。
アンケートの内容は「特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住所を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動を含む)に参加したことがありますか」とか「市役所の組合がおこなう労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか」など、職員の正当な政治活動や組合活動の自由を侵害し、その団結権を侵害する許しがたいものである。しかも匿名で政治活動や組合活動を勧誘した人の氏名を密告させるための「通報窓口」まで設けているのだ。
13日、市労働組合連合会(市労連)は、アンケートを不当労働行為として、大阪府労働委員会に救済申立てをおこなった。また弁護士会や労働組合から「アンケートを中止せよ」とする抗議声明があがる中、市特別顧問・野村修也弁護士が17日、アンケートの集計作業を一時凍結すると発表。しかし撤回したわけではない。
3月6日には大阪市内で労組バッシングを糾弾する官民連帯集会が開催される。橋下・維新の会への怒りを結集しよう。
「橋下やめろ!」大阪市役所を650人が包囲(12日) |
門真三中「君が代」処分取消裁判
府・市教委の主張を丸のみした不当判決を弾劾する
6日、大阪地裁において、門真三中「君が代」処分取消し訴訟の判決があった。法廷に入りきれない50人をこえる支援者がかけつけ、マスコミ各社も注目する中でおこなわれた。裁判長は判決主文を7秒読み上げただけで法廷から逃げ去った。「1、訓告の取消しをもとめる部分を却下する。2、被告(大阪府、門真市)に対する金員請求をいずれも棄却する。3、訴訟費用は、原告の負担とする。」という府教委・市教委の主張のみを認める不当判決だ。
判決にのぞむ原告・川口さん〔前列右から2人め〕と 支援者(6日 大阪地検前) |
判決の問題点
第1の点は、職務命令なしの不起立処分に対して、職務命令と「指導」が同等のもののようにみなして、処分を正当化した。
ここでは「指導」違反とする法的根拠は明らかにされていないし、そもそも不起立した教員たちは「指導」違反などおかしていない。判決では、法的拘束力など問題ではなく、「指導」に違反したのだから処分は当然とひらきなおっている。
しかし、「本件指導」についての認定のデタラメさがここにはある。これまでの双方の弁論の中でどこを見ても、校長が「起立して国歌を斉唱しなければならない」と言ったことは確認されていない。校長は一貫して「学習指導要領に則って、適切に対処してください」と述べているだけである。
また「本件指導」のもとになった市教委通知には「起立して斉唱」とする部分はあるもののこの通知は校長宛であって教員への通知ではない。
第2の点は、「事情聴取を拒否したのだから訓告は当然」としていることである。
この処分の不当性は、卒業生のほぼ全員が着席したのは、担任団の指導内容が偏向教育だったためだと決めつけて、半年以上にわたって市教委が「事情聴取」という攻撃を続けてきたことにあるのだ。
裁判所はこの事情聴取の内容そのものに「お墨付き」を与えることで、不起立した教員のみならず卒業生たちの意思と名誉を踏みにじったことを追認したのである。また判決文では何の説明もなく「不起立は改善されなければならないもの」という市教委の主張を認めている。
そもそも事情聴取に応じることは教員の「職務」ではない。同様の職務命令拒否について大泉ブラウス訴訟(赤丸に斜線を引いたマーク入りブラウスを着て入学式に出席した教員への戒告処分をめぐる裁判)では、処分無効の判決が下され確定している。
第3の点は、起立強要は「思想及び良心の自由」を侵さないと判断した点。
このかんの最高裁判決の流れにそって、国旗掲揚・国歌斉唱は「式典における慣例上の儀礼的な所作」であり、強制にあたらないとし、思想及び良心の自由の間接的な制約は「その目的及び内容並びに上記の制限を介して生ずる制約の態様等を総合的に較量すれば、上記の制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められる」として憲法19条に違反しないとした。
橋下打倒と一体で
判決後、大阪弁護士会館に移り、報告集会をおこなった。
まず、〈門真三中「君が代」処分をただす会〉共同代表の戸田ひさよし門真市議が不当判決弾劾の怒りを表明。原告・川口さんは、控訴審をたたかう決意を明らかにした。最後に、共同代表の三浦たけお守口市議が、控訴審へ向けて川口さんを支えてたたかおうと力強く宣言した。
2〜3月、「橋下・教育改悪条例案」廃案へ、「君が代」起立強制の「職務命令」攻撃との攻防に立ち上がり、たたかい抜こう。
※門真三中「君が代」処分
08年3月13日の門真市立第三中学校の卒業式において、「君が代」斉唱時に卒業生のほぼ全員と担任など教員が起立しなかった。翌年2月20日に、校長が訓告処分、川口さんも訓告処分、他の担任団7人が厳重注意とされた。
今春卒業式でも不起立を
都教委包囲ネットワークが決起集会
5日、都教委包囲首都圏ネットワーク主催の〈10・23通達撤回!「君が代」処分撤回!2012年総決起集会〉が東京、赤羽会館に130人をこえる参加者を集めておこなわれた。
主催者挨拶に続いて、〈がくろう神奈川〉、〈高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会〉、〈子供たちを放射能から守る福島ネットワーク〉佐藤幸子さんから報告がおこなわれた。
佐藤さんは「福島の子供たちは今どうなっているか。校庭の除染が済んだと言うことで外遊びが解禁されました。でも、空間線量はほとんど変わっていません。子どもたちをまず避難させてほしい。甲状腺検査が始まっています。3000人の子供たちのうち1000人に5ミリの腫瘍が出ています。『良性だから問題ない』という結論になっています。お金と命とどっちが大事か。比べるまでもありません。どうぞ、福島をよろしくお願いします」と深刻な状況を訴えた。
最高裁判決うけ闘いを呼びかけ(5日 都内) |
「秩序を害する」という基準
つづいて、〈河原井・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会〉、東京「君が代」裁判一次訴訟原告、アイム'89処分取り消し訴訟原告、から1月16日の最高裁判決に対する批判と決意が述べられた。
〈解雇をさせない会〉の根津さんは、「今回の(最高裁)判決が『一定の歯止め』になるとは思っていません。判決は、戒告を超えてより重い処分をすることは違法だと言っています。救われた人も確かにいます。しかし、5年10年経ったら『確信犯』にされるに決まっています。今回、もう一つ判断基準を作りました。停職処分はきわめて大きな不利益があるとしながら、これまでの処分歴や言動が『秩序を害する』ほどに重いときには不利益があっても致しかたないという基準を出しました。大阪での動きを見ても『秩序を害する』というどのようにも使うことができる判断で分限免職もありうると思います。そして、今回の判決は、不起立問題を使った教育内容への介入です。もうすぐ3月です。今回の判決を一定評価できるとするならば、その段階に押しとどめるためにも今回の卒業式で実際に不起立をしていくことだと思います」とさらなる闘いを呼びかけた。
橋下・教育改悪
橋下・維新の会の教育改悪との闘いについて〈「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪〉から報告がおこなわれ、「とにかく、やれることはなんでもやって橋下・維新の会を追い詰めていきたい」と決意が表明された。
続いて、業績評価裁判で勝利した大嶽さん、東京都学校事務労働組合、都立高校教員から報告があり、卒業式にむけた決意を2人の教育労働者が表明した。最後に、行動提起があり、シュプレヒコールをあげて集会を終えた。
最高裁が予防訴訟の上告棄却
「予防訴訟」の適法性は確認
9日、最高裁は「予防訴訟」の上告棄却判決(原告敗訴)をだした。
この裁判は、都立学校の教職員ら403人(最高裁段階では375人)が、東京都と都教委を相手に、〈卒業式等において、国家の斉唱義務およびピアノ伴奏義務がないこと〉の確認等と損害賠償を求めた訴訟。
判決では、予防訴訟は適法と確認、また裁判官5人のうち、2人が都教委の加重処分に批判的意見を、裁判長が棄却判決に「反対意見」を書いた。
5面
有期労働契約に規制を
幅広い連帯めざし「有期ネット」を結成
労働者間の分断を乗り越えて連帯を(8日 都内) |
8日、有期労働契約規制法を目指すネットワーク(略称「有期ネット」)の結成集会が都内で開催された。100席の会場に140人あまりが参加し、熱気ある集会になった。
有期ネットは「有期労働契約法の審議状況が予断を許さぬ中、骨抜き法案にさせないため、連帯して労働者にとって実効性ある法案成立を目指す運動体をつくる」ことを目的とし、「有期雇用問題に取り組む各労組横並びで、出入り自由、行動参加も各労組の判断に委ねる、緩やかな懇談会形式」として、けんり春闘全国実行委員会など25団体(2月現在)が参加して開始された。
労働契約法の改悪
昨年12月、労働政策審議会は「有期労働契約の適正な利用のためのルールを明確化」するとして建議を政府に提出し、政府はこれをもとに今の通常国会で「労働契約法」を改悪し、有期労働契約のあり方を変えようとしている。
この建議は、有期契約の反復上限を5年とし、5年を超えたら労働者の申出によって無期契約に転換できることを明記するとしているが、他方では、6カ月以上のクーリング期間を置けば同じ労働者をいつまでも使い続けることができるようにするというものである。
しかし、使用者にとっては、このような無期契約への転換は少しも怖くないのである。なぜなら、有期契約を無期契約に転換するかどうかは、使用者にフリーハンドが与えられているからである。
使用者は、契約を反復し上限の5年に近づいたら、無期契約にしたくない労働者には5年に至る前に雇い止めをすればよく、有期契約のまま使い続けたいと思えばクーリング制度を使えばほとんど無制限に使い続けることができる。使用者が一部の労働者を無期契約に転換してもよいと思うなら、5年を経過しても使い続け、労働者に無期契約への転換を認めればよいのである。
しかし、無期契約への転換は、こんなややこしいことをしなくても、今でも可能なのである。こんな法律が通れば、さらに資本のやりたい放題になっていく。
有期ネット結成の意義
今、有期労働契約で働いている労働者は1千万人をはるかに超える。今回の有期労働契約の改悪は、派遣法以上に大きな影響を与えることは不可避である。このような資本の動きに対して、労働者の側が立場の違いを超えて連帯を強め、強く規制をかけていかなければならない。
今回の有期ネットの結成は、その意味できわめて重要な取り組みである。
熱気ある発言が続く
冒頭、主催者あいさつをした全国一般東京東部労組の菅野委員長は、有期労働契約とは人件費をギリギリまで削減し、もうけを拡大しようとする大企業等資本家のための雇用形態であるだけでなく、労働者間の分断を図るための重要な装置になっているとし、労政審の建議に反対し、有期雇用労働者自身のたたかいを背景に幅広い結集をかちとっていこうと提起した。
続いて『労政審報告を斬る!』と題して日本労働弁護団常任幹事の小川英郎弁護士から建議に対する詳細な分析と批判の講演があり、特別発言として全労働省労働組合、神奈川県高等学校教職員組合の金沢さんから報告があった。
就職難にあえぐ高卒者
高校の現状を報告した金沢さんの報告は、現状を鋭く告発するものだった。
今、金沢さんの高校では、求人が激減しているという。かつては250人くらいの卒業生に1500枚くらい求人票が来ていたが、今は200枚程度。今年は2百数十人が卒業したが、就職できたのが25人ほど。仕事がないため、苦肉の策として、卒業してすぐに失業者という扱いで半年間訓練に入り、その間ハローワークに行って仕事を探し、それでダメならもう半年間とつないでいこうとしている。
また、進学にも困難がある。生活保護世帯が多いため、進学する生徒は学生支援機構の奨学金を使うが、4年制の私学に入ると入学金・授業料で500万円くらいになり、3%の利息を入れると、卒業時には700万円の借金を背負う。しかし、大学を卒業しても正規雇用になれず、700万円も借金を抱えて、200万円ほどの年収ではとうていやっていけない。
労働契約法の改悪は、労働者とりわけ若者を貧困のどん底に突き落とす。今国会に上程される労働契約法改悪案は、なんとしても押し返していかなければならない。
「障害者自立支援法」一部手直しで存続方針
政府・厚労省が廃止の約束やぶる
「障害者」の生きる権利を踏みにじってきた「障害者自立支援法」。全国で起こされた違憲訴訟はじめ、広範な「障害者」の闘いで、09年秋に廃止の約束をかちとり、10年1月には同訴訟団・弁護団と国との間で、「2013年8月までに障害者自立支援法を廃止」と銘記した合意文書(長妻厚労相〔当時〕が署名・捺印)を交わして、違憲訴訟は和解した。
自立支援法に代わる新法(総合福祉法)の内容を検討してきた「障害者制度改革推進会議」(構成員の過半は「障害者」およびその家族)の総合福祉部会は、昨年8月末に、画期的な内容の「(総合福祉法の)骨格提言」をまとめ、昨秋来、厚労省でその法案化の作業が進められてきた。
「骨格提言」を無視
しかし2月7日に示された「厚労省案」は、わずか4頁のペーパーで、法律の名称および法律の中の「理念・目的」を変える等というものであった。
総合福祉部会が「骨格提言」で詳細に提起した60項目のうち、取り上げられたのは3つだけ。48項目については、触れられてすらいない。ほとんど無視だ。
「厚労省案」が取り上げたものも、「制度の谷間の解消」について、難病の人を新たに法の対象とするとしながらも、「政令で定めるもの」としており、あくまで限定することをねらっている。
また、最大の問題である「障害程度区分」(コンピューター判定や「専門家」の協議のみで、本人ぬきで「障害」の程度をランクづけし、本人の望む介助を制限する)の在り方については「5年後をめどに」「検討」とされている。「就労支援の在り方」も「検討」だけである。
改革推進会議も総合福祉部会も、そもそも「障害者自立支援法」の姿勢が間違っているのであり、「障害者」が人間らしく生きるための権利法として、新法を検討し、その具体的内容を提言してきたのだ。今回出された厚労省案は、どれだけ名称や「目的」を変更しようとも、「自立支援法」の手直しでしかない。
「自立支援法の廃止」は、政府がただ約束しただけではない。裁判で合意文書を交わして和解した内容なのだ。今回の事態に、国を相手に裁判を闘う様々な訴訟団(9日時点で13団体)が危機感を募らせ、自立支援法違憲訴訟団とともに、記者会見や共同声明を発表して怒りを表明している。
絶対に認められない
8日に開かれた第19回総合福祉部会では、怒りの追及がおこなわれた。
厚労省の中島企画課長は〈廃止にすると、事業所指定や支給決定が消えてしまうので、継続性の問題がある〉と説明。しかし支援費制度から自立支援法に変わった時も、移行経過措置や「みなし規定」等でやってきた実績がある。「継続性」などというのは、ためにする言い訳にすぎない。
また、同部会で津田政務官は〈法の理念・目的規定を改め、法律名称を変えれば、附則に「自立支援法の廃止」を銘記しなくても、事実上の廃止だ〉などと発言した。
こうした発言に対し、「詐欺だ」「国が裁判でした約束を破るとは」「総合福祉部会で膨大な時間を費やして検討してきたのは、何だったのか」等々、委員から激しい追及の声があがった。
「5年後」ねらう厚労省
厚労省が、総合福祉部会の「骨格提言」を骨抜きにしようと画策していることは、予想されたことではあった。しかし、「基本合意事項」の根本を否定(廃止ではなく修正)までしてきたのだ。
厚労省のねらいは何か。昨秋来、さまざまなところで厚労省は「障害程度区分」について、その見直しをしないことをほのめかしてきた。また、今回の「厚労省案」では、「5年後をめどに見直し」という記述がいくつかある。2016年、介護保険法の大改定が予定されている(5年ごとに見直されており、昨年の改定では、「要支援」と認定された人の家事援助を自治体の裁量で介護保険の対象からはずすなどした)。
厚労省は、あくまで「障害者」福祉を介護保険に統合することをねらっていると見て間違いない。自民党時代からの厚労省の方針であり、自立支援法廃止の約束以降の制度改革とは正反対のものだ。厚労省は、昨年8月末に出された「骨格提言」=当事者の声など、完全に無視する腹なのだ。
新たな運動の高揚を
13日には、「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実施をめざす会」の主催で、参院議員会館内で緊急の集会がもたれ、全国から650人が集まった。会場の講堂があふれ、急きょ第2会場が用意された。
「いったい誰を信用すればいいのか」といった悲痛な叫び。「絶対に認められない」という強い怒りの発言。そして、「まだ決まったわけではない。最後まで頑張ろう」という熱い呼びかけ。怒りと同時に、新たな運動を展開しようという、強い意志が確認された。
政府は、3月12日に「障害者制度改革推進会議」を開き、翌13日に閣議決定して国会上程をねらっている(今回出された「厚労省案」ペーパーとは別に、すでに法案が準備されているということ!)。
自立支援法廃止の約束無視は、絶対にすんなり通りはしない。〈社会保障・税一体改革〉で、戦後の社会保障体制が解体され尽くそうとしている今、「障害者」福祉にとどまらず、高齢者福祉、保育といったすべての分野で、福祉を取り戻していく闘いの糸口が、ここにある。
「障害者」もすべての福祉の課題に連帯して取り組むと同時に、すべての労働者人民が、この自立支援法廃止を実現していく闘いにたとう。29日には、関西で大きな集会が準備されている(要項6面参照)。当面2〜3月、そしてさらに闘いを高揚させていこう。
6面
第14弾
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萩原進さん |
――原発事故で福島の農民が大きなダメージを受けています
これはある産直運動をやっているところのはなしだけれど、そこが原発事故のあとに、福島・東北農民を助けようというセットを作ったんだ。そしてそれとは別に子どもを持つ母親たちの安全な野菜が欲しいという要求に応える形で、関西から西のほうの人の野菜をとっていわゆる「安全セット」をつくって、それぞれやりだした。これはおかしいと思う。東北の野菜のセットと「安全セット」を並べて、どちらか選べと言われれば、消費者は「安全セット」を選ぶでしょう。子どもが大切だからそういうふうにするっていうのは確かなんだよ。だからそれはそれでいい。しかし福島の農民に連帯する立場からいえば、こうしたやり方には賛成できない。
福島や東北の原発の被害を受けた農家がわざわざ汚染したものを消費者に食べさせようと思ってるわけじゃない。食の安全を保障しなきゃいけないのは東電の責任であり政府の責任だよ。行政に線量検査をきちっとやらせて、補償もちゃんとやらせるという形にしないと。
そうしないで、「安全セット」をつくったり、農作物の自主検査をするという方向だけでいくと、一番の責任が東電であり国にあるということに目を向けさせないような状況になっちゃうんだよね。そして東北の農民の作ったものは全部排除するというふうになるよね。そうすると原子力や原発は悪いんだというところが薄まっちゃうわけ。
だからまず、国や自治体は安全な食料を子どもに与えろと、あるいはちゃんとした食べ物を確保しろという闘いを大きな柱にしないとね。金さえ出せば自分らで検査できるんだよ。だけどそれやっちゃうと、自治体でも国や東電は自分らがやった検査じゃないんだから、責任は負えませんっていうだろう。
新聞なんかでは「安全宣言」なんて言ってるけど、「とりあえず結果的に出ませんでしたから流通していいですよ」というだけのこと。出たら出荷制限して、農家が作ったものをそこで握りつぶしてしまう。農家そのものの存在を認めないことになる。
「これくらいの数値だったら今食べても大丈夫ですよ」っていうような言い方しかしない。そうじゃなくて、「この数値で食べても絶対的に安心です」と、「しかし将来何らかの障害が出たら国や自治体が責任持ちますよ」というのが本当の「安全宣言」でしょう。そこまで言わせなきゃダメです。
それを言わないんですよ。やっぱり一番の風評を作ってんのが自治体であり国であり東電なわけだ。
――反対同盟は沖縄や福島へと闘いのつながりをひろげてきました
たとえばTPPの問題。政権の内部でもこの問題ではいろいろもめているけど、結局やらざるをえないという形で、推進している。しかしこれは大変なことだよ、世論を二分するような形になるわけだから。これはものすごく大きな意味を持ってくるよ。農民にしてみれば、これはもう許せないという話になんだけど、この問題でも関係が逆転してこちらが有利になるという可能性だってある。そういう問題がこれからどんどん出てくると思うんだよ。消費税にしたって、東電の問題にしたってね。
労働者の今の生活にしても、どうしようもないところまで来てるわけだから。だからこそ、ここ数年、沖縄との接点を持ってきたわけだ。まだまだ細々としたものだけど、そこに火を灯したということが大事だと思う。沖縄と福島と三里塚、こうした結びつきが強固になったときに初めて、いろんなところの人たちとの闘いの連携ができてくるだろう。そこではもう個別の闘いの枠が取っ払われた、大きな意味をもった戦線が構築されるんじゃないのかな。またそういう形でやっていかないとだめだろうと思うわけだよね。
福島の問題でもこれからのほうが大変なわけで、沖縄だって、辺野古の新基地建設をごり押ししているわけだから、とんでもない話になる。実際に沖縄県議会が新基地建設に反対せざるをえないような、大衆のうねりが存在している。自民党やなんかはわが身かわいさで一時的にそうやってるのかもわからないけども、それにしたって反対だと言わざるを得ない。これは民衆の力なわけでしょ。だからこれは大切にしなくちゃならないし、そういう闘い方はあってしかるべきだと思う。
大阪では、昨年のダブル選挙ではそれが逆の形であらわれたわけでしょ。橋下みたいな超反動的な、ヒトラーみたいなやつが登場してきて、ここでも既成政党が吹っ飛ばされた。これなんかは反面教師なんだけど、やっぱり民衆が規定した、あるいは作ったものとしてあるわけでしょ。
だけどもあんなものは必ず化けの皮はがれるわけですよ。またそういう闘いをわれわれはやらなくちゃならないわけだ。
昨年5月の東京高裁での50人逮捕なんていうのは一般的に言えば想定外みたいなことだよね。だけど権力の側にしたって、霞ヶ関の、しかも裁判所の中で50人一斉逮捕なんてのは、常識じゃありえないわけだよ。だけども、三里塚の闘いが福島をはじめさまざまなところへと広がっていくのを、やっぱり抑えなくちゃしょうがないっていうね。そこには国家権力の危機感、そして焦り、そういうものがはっきりとあらわれてきてるんじゃないのかな。
だから今年はそういう意味ではもっともっと今まで灯してきた炎を広げていこうと思う。だから反対同盟にとってみれば農民階層へもどんどん入っていって、福島や沖縄とのつながりも広げていく闘いやっていこうと思う。忙しい時代になってきたな。
――最後に市東さんの農地を守る闘いの展望をお聞かせください
市東さんの農地を死守する闘いというものを「守りの闘い」という形に固定してしまうと、それは戦略的にもまずいんだ。やっぱり市東さんの土地をめぐる闘いというのはあらゆる意味で多様化した問題性を含んでるわけだ。たとえばそこには軍事空港作らせないということがあるわけだし、実際にそれを市東さんは阻止しているわけだ。
だからこの闘いは、沖縄のように米軍によってあらゆる土地を取られている、そういうところの攻防戦とつながっているわけなんだ。いかにして政治的にも社会的にも民衆のたたかいの輪を広げ、それを浸透させていくかが重要だと思うんだよ。だから三里塚闘争を「個別の農地の攻防」というように固定化してしまわないで、むしろ3・11の東日本大震災と原発事故によって引き起こされた大変な情勢の中にうって出ていくという、そういう姿勢がやっぱり一番大切じゃないのかな。そういう意味では、「市東さんの農地取り上げに反対する会」というのは、これからもっと光り輝く存在になってくるだろうと思うよ。
裁判による農地強奪を許さない 第3誘導路建設阻止
三里塚・沖縄・福島を結んで3・25三里塚現地へ 3・18三里塚関西集会
とき:3月18日(日)午後1時開場 2時開会
ところ:大阪市立中央会館ホール(地下鉄「長堀橋」下車 徒歩8分)
報告:市東孝雄さん 大口昭彦弁護士
主 催:三里塚決戦勝利関西実行委員会 三里塚芝山連合空港反対同盟
3・25三里塚全国総決起集会
天神峰現闘本部裁判 最高裁が上告を棄却
成田空港建設に反対する三里塚反対同盟の「天神峰現地闘争本部」裁判において、最高裁は1月25日、不当にも上告を棄却した。実質審理を一切おこなわず、2審判決そのままの、国策をごり押しする決定だ。
この決定は、裁判終結を待たず、2審での「仮執行」宣言をもって昨年8月6日に、天神峰現地闘争本部建物を破壊・撤去したことを居直るものだ。
天神峰で営農する市東孝雄さんの農地強奪・叩きだしを狙う政府・成田空港会社の策動をうちやぶろう。