消費税10%と社会保障きりすて
低所得者層の負担が増加
社会保障・税一体改革素案
野田政権は6日、政府・与党社会保障改革本部を開き、「社会保障・税一体改革素案」を決定した。消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることを柱とするもので、3月末までに関連法案の提出をめざすとしている。
野田は首相就任時から消費増税をめざし、今年の年頭会見でも「ネバー、ネバー、ネバー、ネバー・ギブアップ」と、その執念を語っていた。しかし、そもそも民主党は09年の総選挙で、「4年間は消費税を上げない」と公約して、自民党を敗り政権交代を果たしたのだ。これほどあからさまな公約違反はない。
消費税10%超も
「社会保障・税一体改革」は、民主党政権が考え出したものではない。小泉政権時代の04年から検討が始まり、財界もこぞって推進を言い続けてきたものだ。財政再建の名のもとに、消費増税と福祉切りすてを同時に進めるという目論見は、リーマンショック以前から、自民党・官僚・財界が一体となってねらってきたのだ。
しかし09年総選挙で自民党が一敗地にまみれたことにより、とん挫していた。それを民主党・野田政権が「決意」をもって進めるというのだ。こんなふざけた話はない。
しかも消費税率が「15年に10%」にとどまる保障などない。財界は10%台後半の税率を提唱している。
財界・米国べったり
財政再建を謳っているが、その中身は労働者人民への一方的な犠牲の押しつけだ。野田政権は、大企業やアメリカへの優遇政策は何ら変えようとはしていない。
昨年12月には、国交省が整備新幹線の未着工3区間の認可方針を打ち出し、防衛省は空自の次期戦闘機(FX)に1機100億円近い米ロッキード・マーチン社のF35を選定。年間1800億円にのぼる在日米軍への思いやり予算も手つかず。原発関連予算も、復興関係以外(つまり従来の推進のための予算)に4000億円以上で増額している。
さらに、消費増税とは逆に、法人税については、11年度税制改正で打ち出した税率引き下げを実行するとしている。
消費税は、低所得者ほどその負担率は大きい。食料品などの軽減税率の導入は見送られた。個人所得税の高額所得者の税率の若干アップも盛り込まれているが、財界と米国べったりで弱者にしわ寄せするのが消費増税だ。
子育て・医療きりすて
「社会保障制度の持続可能性の確保」を謳うが、社会保障の切りすてはすさまじい。
「待機児童解消」を口実に導入する「子ども・子育て新システム」は、高齢者にたいする介護保険、「障害者」にたいする「障害者自立支援法」と同じく、これまで公によるサービス(現物)の給付であったものを、保護者と施設の個人契約にたいする費用給付として、国や地方自治体の福祉の実施義務をなくすと同時に、民間業者の参入を促すものだ。
年金の支給額の引き下げや、70〜74歳の医療費負担の増額(現行の1割を2割へ)も検討するとしている。年金の支給開始年齢引き上げも検討するとしている(今年の通常国会への法案提出は見送り)。
医療に関しても、昨年末に来年度の診療報酬・介護報酬の改定の方針が示されたが、ほぼ据え置き(一部薬品の値段引き下げがあり実質的にマイナス改定)で、医療崩壊を一層進めようとしているが、「一体改革」でも、「医療サービス提供体制の制度改革」を打ち出し、救急医療や先進医療を厚遇し、一般病院の経営をさらに厳しいものにしようとしている。
また、税・社会保障共通番号制度の導入を打ち出しているが、これは個人ごとの社会保障の負担と給付が一元管理され、「負担にみあった給付」への制限に道を開くものだ。
公的な社会保障を解体
今回の「素案」には出てこないが、このもととなった昨年6月30日の「社会保障・税一体改革成案」では、「自立・自助を国民相互の共助・連帯の仕組みを通じて支援していくことを基本に」「給付と負担のバランス」「負担と給付の関係が明確な社会保険(=共助・連帯)の枠組みの強化」といった言葉が並んでいた。
要するに、公的な社会保障を解体し、「共助・自助」にしていく、ということだ。
この間、野田政権はTPP推進、沖縄の米軍新基地建設はじめ、米国や財界の意向を体現する政策をゴリ推ししている。自民党ですらできなかったような反動政策を進めようとしている。野田・民主党政権の「社会保障・税一体改革」をゆるすな。
沖縄・高江ヘリパッド 工事再開をはばむ
ゲート前に座り込んで重機の搬入を阻止 (17日 沖縄県東村高江) |
17日午前10時40分、ヘリパッド建設予定地のN4地区ゲートに防衛局がやってきた。
昨年の11月29日以来1月半ぶりだ。この日ショベルカー1台はじめ8台で防衛局員と作業員が20人で押し寄せてきた。
私たちは、これをむかえうち、40人で座り込み。作業をさせず、防衛局を撃退した。警察権力は10人ほどが遠まきに監視していたが手出しはできなかった。防衛局は午後4時前にこの日の作業をあきらめ、帰った。
19日、20日も重機を搬入しようとしたが阻止した。また田中防衛相来県の阻止行動が取り組まれる。沖縄からの訪米団が21日から28日まで行くので、辺野古(名護市)と高江(東村)の攻防は、いっそう激しくなるだろう。(20日 M)
尼崎事故裁判 前社長に無罪
司法がJRを免罪
107人が死亡し、562人が負傷した2005年4月25日のJR尼崎事故で、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本前社長の山崎被告に対する判決が11日、神戸地裁であった。岡田裁判長は「現場カーブで事故が起こる危険性を認識していたとは認められない」と判断し、無罪判決をいいわたした。
この判決に対して、遺族、被害者は、「JRの都合の悪いことに触れず、真実を無視した判決と感じた。無罪にするにはあまりにも犠牲が大きい事故だ」「無罪のまま終わると、あんな大きな事故を起こしたJR西が間違っていなかった、ということになる」「これで無罪ならば、今後どんな事故がおきても無罪になる。今の裁判のあり方や法律ではだめだ」と怒りの声をあげている。
前社長・山崎と幹部社員たちは、「乗務員が制限スピードをこえて運転するとは思っていなかった」「想定外だった」と言い張って、都合の悪いことは「隠す」「過小評価する」「嘘をつく」などの虚偽の証言をくりかえした。公判の中で彼らは、「曲線は危険でない」「ATSの設置は乗客の転倒防止が目的」「脱線限界転覆速度を知らない」と証言して責任逃れに終始した。しかし、107人が死亡する大事故を引き起こした鉄道会社が、その危険性を「気づかなかった」「わからなかった」ではすまされるはずがないのだ。
ところが神戸地裁は、鉄道事故が起きれば、すべて労働者に責任を押し付けるJR西日本の姿勢を擁護するという許しがたい判決を下したのだ。
JR尼崎事故の原因は国鉄分割・民営化にある。分割・民営化は、規制緩和政策のもとで国鉄資産を大企業がくいものにすることと、国鉄労働運動をつぶし、総評をつぶすことを目的としておこなわれた。国鉄労働者20万人の合理化、7600名の不当解雇、200名の自殺者を生み出しながら、政府・マスコミをあげた国家的不当労働行為が強行された。
分割・民営化に反対した国鉄労働者は、利潤第一主義の民営化は、安全確保がおろそかになり、必ず重大事故を発生させると訴えてきた。まさにJR尼崎事故は起こるべくして起こったのだ。その責任がJR資本と政府にあることは明白だ。
JR資本と政府の責任を追及する闘いは、福島原発事故の責任追及と連なる闘いだ。福島原発事故は、地震・津波災害を無視して利潤第一主義にはしった電力資本と政府に責任がある。
今回の判決は、労働者と市民が一体となって闘うことの重要性を示した。
2面
東日本大震災が問うもの
生きる権利を求めて― 阪神淡路大震災17周年集会
福島の人たちといっしょに声をあげようと訴える 長谷川さん(15日 神戸市内) |
15日、神戸市長田区内で阪神淡路大震災17周年集会がひらかれ、150人が参加した。東日本大震災への支援連帯を阪神淡路大震災の被災地が、どう担うのかが集会のテーマ。
〈被災地雇用と生活要求者組合〉の長谷川代表が主催者あいさつ。
連帯のあいさつは、粟原・神戸市会議員、全国金属機械港合同の中村副委員長、部落解放同盟全国連合会の寺下執行委員、全日建連帯労組関西地区生コン支部の常澤執行委員、和田・高槻市議から。
福島からの報告
つづいて、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク代表・中手聖一さんが福島からの報告をおこなった。〔要旨別掲〕
その後、阪神淡路大震災の借り上げ住宅追出し問題で「兵庫県被災者連絡会」河村代表が闘争方針を提起。「同和住宅家賃値上げ反対全国連絡協議会」東口代表は、改良住宅から追い出そうとする西宮市を弾劾する発言をおこなった。
福島の子どもたちを避難させる活動や支援をできることから始めよう、そして今すぐに原発をすべて廃炉にしなければならないと誓い合った。(通信員・A)
日本政府の棄民政策に抗して(上)
福島からの報告 中手聖一さん
(子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク 代表)
中手聖一さん |
私は福島市の渡利(わたり)地区というところに住んでおります。第一原発のあるところからは60qから70qくらい離れた所です。
3つの災害
今回の震災では私達は3つの災害にあいました。
ひとつは地震と津波という天災であります。ふたつめは、原発事故による放射能の被害です。これは天災ではありません。お金儲けのためにこんな危険なものを動かし続け、ついに事故を起こしてしまった。取り返しのつかない事故を起こし、たくさんの人々がその放射能の被害にあい、影響で苦しんでいるということ。まさに人災であります。
みっつめは、これもまた人災ではあるのですが、主に日本政府による棄民政策であります。これは3月の段階からひしひしと私達は感じ、捨てられてたまるかと、こんな思いからずっと10カ月活動を続けてまいりました。
当時の官房長官である枝野さんがテレビに出てくるたびに「直ちに影響はない、直ちに影響はない」と。既に20q圏内の人達には避難指示を出したと。その区域以外の人達はこれまで通りの生活を送っていいのだと。福島の県知事も、不要不急の外出を控えるだけでいいんだと。
そういう状態の中で福島市にも3月の15日、放射能の雲がやってまいりました。この日はとても冷たい雨が降っていました。夜には雪になりましたがこの雨(雪)や雲で大量の放射能が福島市など「中通り」地区というんですけれども、この一帯が大変な汚染をされてしまったんです。そのことさえ私達はよく知らされないまま、また翌日には断水もありましたんで、給水の列に子どもを連れて並び、屋外でようやくストックしてある在庫品だけは売り始めたスーパーに並び、ガソリンが無い中、ガソリンスタンドの行列に何時間も何時間も並んだ。子どもも一緒に並んだわけなんです。それがかえすがえすも今、後悔されるというところです。
自分たちで
こういった情報が無い中で、まず始めたのは自分達で事実を明らかにしよう、汚染を明らかにしようという活動でした。東京の市民団体が急ぎ福島に19台送ってくれたガイガーカウンタ1台に運良くめぐりあって、測定を始めました。どうしても仕事の関係、家庭の関係、様々な事情で今すぐ福島から離れられないというわずかな仲間、3人ほどの仲間でこの測定をスタートしたんです。
これは学校の校庭をサンプリング調査、7校だけピックアップして測ってみたというもので、グランドや芝生やいろんなところを測りました。軒並み20何マイクロシーベルトとか30マイクロシーベルトいうような数字が出てまいりました。 このレポートを作りまして私達は県に、県内全ての学校の調査をお願いしました。
それともう一つ、このような状態の中で3月の末というのは始業式が迫っていたんです。どれだけ汚染されているかも分からない中で学校を始めないで欲しい。子どもを連れて福島を離れて、大丈夫なんだという確認ができるまでは離れていようということで県外に一時退避をされていた方がたくさんいたんです。万が一にも始業式が始まるということになれば彼らは戻ってこざるを得ない。残念ながら始業式は予定通り4月6日に始まってしまいました。
集計も評価もせず
福島県は県内の全ての小学校・中学校・保育園・保育所・幼稚園を1600カ所、3日間で調査をやりました。これが実は福島全県を対象にした汚染調査の、初めてのものでありました。ところがこれはホームページに今も載っているんですが、調査をやっても集計も評価もしないんです。
私たちが、集計・評価をしてみたら、福島全県で実に76%、4分の3の学校が放射線管理区域状態。汚染管理区域状態。つまり原発の中で働いている人達と同じ被曝をしてしまうようなところに福島県民(200万人)のうち、実に150万人が放置されているということが分かったんです。150万人のうち、子どもだけでも30万人おります。30万人の子ども達が原発の中に取り残されたのと同じような被曝状態にあるということが分かったんです。
20_シーベルト通知
文科省の20_シーベルト通知(4・19付)が出たあとは、このままでは自分の子どもが殺されてしまう、国はもう何もしてくれないんだと。そのことがこの20_シーベルト通知によって分かったということから行動を起こし始めました。
自分で文科省に抗議の電話をかける者、FAXを入れる者、東京に掛け合いに行く者、教育委員会に抗議をしに行く者、また具体的なこととして体育だけは外でやるなとお願いする者、学校給食、お弁当を持たせるようにしてくれ、牛乳だけはやめてくれというような具体的に子どもを守る活動に動き出したのがこの日でもありました。〔文責・見出しは本紙編集委員会〕(次号につづく)
番組紹介 『原発解体』 〜世界の現場は警告する〜
NHKスペシャル 09年放送
福島第一原発の事故。政府は「冷温停止状態」と発表した。「通常に」運転を停止した場合に使う「冷温停止」とはまったく異なる。政府や東電の工程表によれば順調に推移しても、溶融した核燃料を取り出すのに10年以上、解体までは約40年。放射線は数10年、100年、種類によっては2万年たっても半減しない。人類未曾有の事態である。
この番組は3年前、09年に放送された。当時は、「大変な問題」という程度に見過ごした。3・11のあと録画を探し出して、あらためて見た。大事故前の取材、放送であり、割り合い淡々と原発解体の困難をリポートしている。あらためて見ると、「人間がつくってはいけなかった核、原発」ということがひしひしと迫ってくる。
世界には539基の原発があり、そのうち約100基が閉鎖され、解体の時期をむかえている。ドイツはこれまで15基を解体した。カメラは、まずドイツの解体現場に入る。運転を停止し14年がすぎた原子炉。放射線計はいきなり1900マイクロシーベルト/時を指す。一般の年間「許容量」に30分で達する線量である。停止してからも数百年も放射線を出し続ける原発の解体は、最先端の技術を使っても容易ではない。
日本では「ふげん」が08年から解体に入っている。原発を「安全に解体できるかどうか」の実験作業だという。原子炉はもとより配管、タービンなどに放射能汚染が残り続ける。核燃料を取り出した後も、圧力容器自体が放射線を発する「放射化」という現象が起こる。メカニズムは違うが、鉄が磁石に接していると磁力を帯びるようなもの。
それなりに頑丈、複雑な構造物。狭い配管の隙間に電動カッターが入らない。バーナーによる溶断は、金属から放射性物質を含む気体を放出し、さらに危険な作業となる。分厚い鉄、強い放射線を出す原子炉本体の解体は、とくに難しい。金属粉を混ぜた高圧水を噴射する切断ロボットなどを使用するが、設計図と詳細に照合しなければならない。保管義務のない図面は処分されている。見つかっても、昔の青写真コピーからPDF化したため黒く汚れて読めない。そもそも建設当時は、「解体を想定した設計思想がなかった」と設計者自らが言う。
解体した金属、瓦礫、残留物は特別なコンテナに入れ、いったん敷地内に保管する。各国とも放射性廃棄物の最終処理はまったく見通しがない。解体が想定されていなかったように、廃棄物の処理も考えられていなかった。イギリスは旧ソ連と並びもっとも早くから原発を導入し、半世紀あまりの間に45基をつくった。その半数以上の25基がすでに閉鎖され、解体・廃棄物処理を待つ。処分場の候補地では「誰が安全を保障するのか」「地域経済に役立つ、雇用が生まれる」と住民の間にも賛否が分かれる。イギリスの場合の試算によれば、今後の解体、廃棄物処理に必要とされる費用は約11兆円。多額の税金が投入されることになる。
「正常に」停止しても、この状態である。近接した4基の原発が水素爆発やメルトダウンしている福島第一原発は、まさに人類史上初の事態。事態は推測ばかりであり、誰も分からない。大事故から1周年を前にNHKは、ぜひ再放送してほしい。もう一度、原子力を冷静に考える格好の映像である。〔NHKスペシャル『原発解体』、2009年10月11日放送。文中の数字は放送時〕(三木)
3面
最高裁が「君が代」処分取消裁判で分断判決
都教委の処分基準は違法
根津さんの上告棄却
「日の丸・君が代」処分取消しを求めた裁判3つの最高裁判決が、16日に出た。
以下が、3つの裁判。
@06年「君が代」不起立処分(根津さん、停職3月。河原井さん、停職1月)。A都立学校168名「04年処分」(減給1月の渡辺厚子さん、他は戒告)。Bアイム'89の2名「04年処分」(戒告)。
@の判決 根津さんの上告を棄却=停職3月。河原井さんの処分は取り消し、河原井さんの「損害賠償請求部分」は東京高裁に差し戻すというもの。
Aの判決 2審原告逆転勝利をくつがえし、2審判決を取り消し、戒告処分を認めた。しかし、減給処分は取り消すとした。
Bの判決 2審判決を維持し、戒告処分を認めた。
重処分に「歯止め」
今回の判決は、憲法判断ではなく、「裁量権の濫用」があったかどうかについての判断。
判決では、
イ、「不起立行為に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては、慎重な考慮が必要となる」
ロ、「停職の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、停職処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合。」すなわち、「過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものである場合。」
――という2つの基準を示し、その観点から判断して、
ハ、河原井さんについては、「過去の懲戒処分の対象は、いずれも不起立行為であって積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず、停職処分を選択した都教委の判断は、停職期間の長短にかかわらず、処分の選択が重きに失するものとして社会通念上著しく妥当を欠き、・・・違法。」
ニ、根津さんについては、「卒業式における国旗の掲揚の妨害と引き降ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン着用をめぐる抗議による進行妨害といった積極的に式典や研修の進行を妨害する行為に係るものであるうえ、更に国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書の生徒への配布等により2回の文書訓告を受けており、このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等に鑑みると、・・・停職期間(3月)の点を含めて停職処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情があったと認められるから違法であるとはいえない」とした。
分断とみせしめ
この判決は、積極的な妨害とはいえない不起立については、戒告までとし、減給以上の処分は違法としながら、根津さんのように積極的に抗議・批判する者は許さない=停職処分は違法ではない、というもので、不起立被処分者の中に分断をもちこもうとする狙いがある。
根津さんへの処分をもって見せしめとし、これからのたたかいを予防しようとするもの。
このようにして、不起立のたたかいをおさえこもうとたくらんでいる。
減給以上は原則違法
他方で判決が、「君が代」不起立での戒告を超える処分、すなわち「減給」以上は原則違法とした点は、このかんの不屈のたたかいが切り開いた地平だ。
都教委は「03年10・23通達」をふりかざし、1回目の不起立は戒告、2、3回目は減給、4回目以上は停職とする処分を乱発してきた。この処分基準は違法であると最高裁が認めた意味を持つ。
しかし、上限が戒告までとはいえ、「君が代」不起立への処分自体は合憲・適法であると強弁しているわけである。
この「一定の歯止め」を有効に使いながら、いかなる処分も許さず、不起立を含めた様々なたたかいをさらに発展させていこう。
判決後、思いを語る河原井さん(中央手前)と 根津さん(左)(16日 最高裁前) |
海外派兵20年目の内戦介入
自衛隊 南スーダンPKO(UNMISS)
13日夜、ウクライナの大型輸送機「アントノフ124」が車両・食料など自衛隊の軍事物資を満載して成田空港から離陸した。同機はウガンダのエンテベ基地で物資を中型機に積み替え、車両は南スーダンの首都ジュバまでの800q(約1週間)を陸路移動するというが、この輸送作戦が40回繰り返されるという。
コンテナ船などでの海路輸送では、ケニアのモンバサ港で陸揚げし陸路1900qを1カ月以上かけての輸送となる。
南スーダンは、6カ国(スーダン、エチオピア、ケニア、ウガンダ、コンゴ、中央アフリカ)に囲まれた内陸国であり、そのうち首都ジュバから道路がつながっているのはウガンダだけである。
陸自の派兵は、1月11日から中央即応連隊(宇都宮)を先遣隊として派兵、部隊受け入れ体制を作る。2月までに数回に分けて約210人の第1次施設本隊を派兵して宿営地を設営する。
5月には2次隊330人を北部方面隊施設部隊(旭川・岩見沢・真駒内・東千歳・南恵庭・幌別の各駐屯地)から派兵し、「港湾・道路―インフラ整備」「ナイル川沿いのジュバ港の整備および首都ジュバまでの道路舗装」「ナイル川の架橋」等の工事を行うという。
目的は石油資源確保
スーダンの内戦は、1983年〜2005年の南北紛争で200万人の死者を、03年からのダルフール紛争で30万人の死者を生みだしている。そして、昨年7月の独立後も南スーダン東部のジョングレイ州では、8月に600人死亡、年末年始の過程でも3000人以上の死者が確認されるなど、内戦が激化している。
南部が独立する前のスーダンは、アフリカ6位の産油国であり、その80%は南部(南スーダン地域)で生産されているが、輸出ルートはパイプラインを使っての北部から以外にないという。そしてこの境界に近い南スーダン北部で激しい内戦が続いているのである。
輸出原油の67%を輸入している中国がPKO部隊を北部のワウに展開し、韓国PKOも中部のボアに展開する理由も、この石油確保が目的であるのは明らかだ。
そういう利害が激突する南スーダンへの自衛隊派兵は、日本政府調査団(内閣府、外務省、防衛省)が「将来的には製油所等のある北部をめざし、ジュバ北方150qにあり韓国軍が展開するボアにまで活動範囲を広げる」〔注1〕とあけすけに語るように、石油権益の確保を目的とした内戦への介入である。
「当面5カ年」の計画との発表であるが、終了の見通しが全く立たない「泥沼派兵」への突入である。
海外派兵20年の歴史
これは日本国家の戦争国家への根本的転換であるが、自衛隊自身にとっては、そういう資源を奪い合う侵略戦争を担える軍隊への「脱皮」をかけた派兵である。
「専守防衛」(ソ連封じ込め)を掲げた「昭和の自衛隊」から、「動的防衛力」を掲げ海外派兵を本来任務とする「国軍」への文字通りの転換である〔注2〕。
以下、いくつかのポイントを示す。
湾岸戦争「後」の91年3月、掃海艇ペルシャ湾派兵で始まった自衛隊の海外派兵は、昨年末段階で600人超の部隊を派兵中(ハイチ、ゴラン高原、ソマリア沖・ジブチ、東チモール)である。したがって今年春以降は、約1000人の自衛官が常時海外派兵の任務に就くことになる。
しかもその配置は、ハイチPKOの施設部隊330人以外は、ほとんどが北アフリカ周辺になる。
ゴラン高原 陸自輸送部隊約50人。空自空輸隊C130、U4多用途支援機。
ソマリア沖・ジブチ 550人以上。海自護衛艦2隻、哨戒ヘリ、P3C。陸自警備部隊。空自ジブチ基地 空輸隊C130、U4多用途支援機。
南スーダン 陸自施設部隊330人、調整所要員40人と機関銃ライフル等数百丁の銃器。海自輸送艦1隻。空自C130輸送機4機、KC767空中給油・輸送機1機、B747政府専用機1機。
つまり「動的防衛力」の照準は、この地域と沖縄軍事拠点化を軸とする対中国の2正面に向けられているのである。
日本のPKO部隊はいずれも施設部隊でのインフラ整備が主であるが、イラク派兵が始まった03年以降は事実上「戦地」派兵が基本となっており、さらに今回の派兵は、(内戦への介入を意味する)「積極的PKO」(川端・国連本部政務官)であり、武器使用の制限を撤廃するなど全面的な軍事的エスカレートがたくらまれている。
1〜2万qも離れた諸外国への軍事展開(長距離派兵)と恒常的な軍事補給能力の形成と、そこにおける米軍を軸とする外国軍との共同作戦能力の獲得。
東日本大震災への災害派遣をもテコにして、この変質する自衛隊に対する「国民的合意(認知)」を取り付けようとしているのである。今こそ全国での渾身のたたかいが必要である。
(寄稿 小多基実夫 反戦自衛官)
〔注1〕 2011年10月15日付 朝日新聞
〔注2〕 07年自衛隊法改定 「8章 雑則」から第3条の「本来任務(主たる任務=わが国の防衛。従たる任務=公共の秩序の維持、周辺事態への対応、国際平和協力活動)」に格上げ。
4面
復興計画とグローバル企業 〜南相馬市の場合〜
地震・津波の被害とともに、放射能汚染に苦しめられている福島県南相馬市。市当局は、昨年7月頃から諸会議を設置し、「南相馬市復興計画」策定の協議をしてきたが、12月21日、同計画を決定した。
この計画の本当の狙いについて言及しているペーパーは、かなり早い段階に出ている。「新たな発想による事業事例の研究 〜経済復興計画の策定に向けて〜」〔市ウェブサイトに掲載〕と題するものだ。
以下、このペーパーの中身と、それをめぐる動きを検討する。
異様なペーパー
津波と放射能
前提的に、南相馬市の被害の概況について。
津波による死者・行方不明者が700人近く。被害家屋1600世帯以上。原発事故による避難は、ピーク時、人口約7万人のうち、6万人以上。
その後、市内が警戒区域、緊急時避難準備区域、計画的避難区域、特定避難勧奨地点に指定。放射能による汚染状況は、比較的低い海側から、汚染の高い浪江町や飯舘村に近い山側に向かって、年間の推定追加被ばく線量で1_シーベルトから20_シーベルト超の範囲。
「ピンチをチャンスに」
市民が被災と避難の打撃に苦しんでいるまっただなか、南相馬市の市役所の中では、ひとつのペーパーが検討されていた。
表題は「新たな発想による事業事例の研究 〜経済復興計画の策定に向けて〜」(以下、「事業事例の研究」)。作成者は南相馬市経済復興研究チーム。
「本年(11年)5月中旬より約1カ月間にわたり、本市における経済分野にかかる復興計画の基礎資料作成のため」研究をしてきたという。
研究の目的は、「ピンチをチャンスと捉え」「これまでの経済振興策にとらわれない、新たな発想に基づく事業を創造する」ことだと言う。
その後、復旧・復興にかかわるペーパーがいつか出されているが、最初に出されたものがこれだ。
恐るべき「新たな発想」
中身を見てみよう。「新たな発想に基づく事業」として9件あげている。中でも目を引くのは次の3件。@津波被害地における総合産業経営体の設立、A放射線利用研究施設群の形成、Bロボット工学産業など新分野への進出。要約すると、以下のようなものだ。
@企業型農業
グローバル企業は、かねてから、TPP参加の流れの中で、企業型農業への参入のチャンスを狙っていた。しかし農地法などの制度と農民の抵抗によって簡単には進まなかった。グローバル企業は、津波被害を、従来の小規模経営による農業を整理・再編する好機と見ている。その意図を具体化したのが、「津波被害地における総合産業経営体の設立」だ。
A「学術的価値が高いフィールド」
一読して驚かされるのは、「放射能による人体あるいは環境に及ぼす影響」の研究が、「学術的価値が高いフィールド」という文言だ。「徹底した健康診断とデータの蓄積」を行うとも言っている。住民がモルモットにされるとしか読めない。
さらに、「放射能という言葉の負のイメージに果敢に挑戦し、これを払拭する放射能の有効活用を図る」という文言にも驚かされる。「放射能の有効活用」などできるのか、《放射能にプラスのイメージ》などあり得るのか。
市民を放射能に馴らし、形を変えて原子力を推進しようとしていると言う外ない。
B廃炉ビジネス〈略〉
グローバル企業が参入
このような施策が、仮に実現するとして、一体、誰のためになるのか。
市は、この「事業事例」への参画する企業を昨年8月に募集し、39の企業等がすでにエントリーしている。そのうち、福島県外の企業等が29社、県内は10社。
県外で目を引くのは、日立、双日、NEC、大成建設、IHI、竹中工務店、日揮、千代田コンサルタントなど。電機、建設、プラント、商社などのグローバル企業で、原子力産業にも深く係わってきた企業ばかり。
当然だろう。とくに上述の3件は、圧倒的な資本力と技術力を必要とする。とても地場の企業が太刀打ちできるようなものではない。
市民はどこに
一体、この「事業事例」の中で、市民はどう位置づくのか。
「事業事例の研究」の中に、「市民の協力・行動」という項目がある。たとえば企業型農業では、「土地、労働力の提供」、放射線利用研究では、「健康診断の受診」。
これしか書いていない。つまり市民は、この事業の主体ではない。グローバル企業の求めに応じて、土地や労働力を提供し、放射線研究の研究対象となる。市民を、そういう存在としてしか扱っていない。
ショック・ドクトリン
宮城県の村井知事が「東日本復興特区」構想を推進している。津波震災を奇貨として、グローバル企業にたいする規制緩和と税制優遇などを促進しようというものだ。この構想を法的に支える復興特区法案も成立した。(12月7日)
新自由主義批判の論客ナオミ・クラインは、このようなやり方を「ショック・ドクトリン」という言葉で批判している。「ショック・ドクトリン」とは、戦乱や災害による経済危機につけ込み、そのショックを奇貨として、政府・行政とグローバル企業が一体となって、平時にはできないような激しい市場原理主義的な改革を強行すること。要するに火事場泥棒だ。クーデター後のチリからハリケーン・カトリーナ後のアメリカまで、その例は枚挙に暇がない。
「事業事例の研究」で打ち出されている考え方は、「ショック・ドクトリン」南相馬版に他ならない。
誰が進めているのか
中央官僚がのりこむ
南相馬市には震災後、内閣府、経産省、保安院から中央官僚が派遣されている。市役所の事務方を束ねる村田崇副市長は、震災直後の4月、内閣府から異例の人事で着任。前職は内閣府沖縄振興局総務課課長補佐の36歳。沖縄振興局といえば、アメとムチを担当する部署。
大規模農場経営を旗揚げした渡辺前市長
昨年7月、「複合型大規模農場経営研究会」という組織が発足した。津波被害を受けた沿岸部で、食料・食品、燃料、発電の総合エネルギー企業を目指すという。農地の集約化には特区制度でとしている。上述の「事業事例の研究」と軌を一にしているのは偶然ではない。「研究会」の会長には、南相馬・鹿島町土地改良区の渡辺理事長(前市長)が選ばれた。
市民不在の混沌の中で
市民は、「事業事例の研究」の中身も、存在すら知らされていない。市民が、問題に気づいて反対の声をあげたときには、「もう遅い」「すべては決まっている」という風に持っていこうとしている。
また、桜井市長が市民の不信を買って官僚に頼るしかなく、外には渡辺前市長という援軍がいる構図は、中央官僚にとって、都合がいいものになっている。
市民が求めているのは、普通の生活の再建だ。それが遅々として進まないことに苛立っている。しかしそれは、単に行政がサボっているからではない。市の中枢部分が、市民不在のところで、市民の求める生活再建とは全く違う、復興ビジネスという方向に突き進んでいるからなのだ。
市民の力で復興の議論を
グローバリズムを不可抗力のように前提化する狭隘な世界観・歴史観。企業の競争力がないと日本がダメになり、地域の生活もダメになるという呪縛。求められているのは、こういう発想から脱却することだ。
地域の伝統文化・自然条件・地理条件にこそ、根ざすべきだ。そして、市民・住民自身による協同組合的で相互扶助的な生産システムによってこそ、危機と困難を乗り越えていける。
被災の中で蘇った市民同士の助け合いこそが、真の復興の基盤だ。放射能から子どもを守るために、国や行政とぶつかりながら、市民が自主的に始めている議論と行動の中にこそ、真の復興の道がある。
南相馬市原町区の海岸の堤防上から市内方向を望む。元は江戸末期から明治にかけてつくられた干拓 地で水田や集落が広がっていた(8月下旬撮影) |
海岸から2キロほどの内陸にある特別養護老人ホ ーム。入所者やスタッフ100人以上が犠牲になった |
評価書提出に抗議
沖縄県名護市議会が決議
沖縄防衛局が環境影響評価書を、12月28日未明に県庁に運び入れ、提出強行した暴挙にたいし、名護市議会は「主権者である県民の総意を、無視することは断じて許せるものではない」との抗議決議を13日、賛成17、反対9で可決した。
武器輸出と共同開発 全面解禁へ
12月27日、野田政権は「武器輸出三原則」緩和を官房長官談話として発表した。@これまで、例外措置を乱発しながらおこなってきた「米国とのミサイル関連装備品の共同開発・生産(04年に例外化)」などを開き直り、恒常的に可能とする。A防衛装備品(兵器)の譲渡、売却、輸出を可能にする。B兵器の多国間共同開発を一定の条件をつけて可能にする、というもの。日本経団連の米倉会長は「画期的であり、高く評価する」との談話を発表した。
5面
市東さんの農地を守ろう
萩原富夫さん迎え関実が新年旗開き
「2012年の三里塚は、市東さんの農地を守る決戦の年」と、反対同盟から新年の闘争宣言が発せられた。15日、恒例の三里塚決戦勝利関西実行委員会(関実)・団結旗開きがあり、70人が参加した。
司会進行は安藤眞一・事務局次長。正面に関実旗。加辺永吉・関実前事務局長と反対同盟・鈴木謙太郎さんの遺影がかかげられた。
加辺さん、鈴木さんへの黙祷のあと、三里塚反対同盟からかけつけた萩原富夫さんが「鈴木さんの農業を支える。代わりにならないが頑張っていきます」とあいさつ。永井満・関実代表世話人は、「加辺先生は闘病されながら、常に三里塚と関実に想いを馳せておられた。温和ななかに闘志あふれていた鈴木さんの訃報は、本当に残念。昨年末、裁判闘争の傍聴に行き鈴木さんと両手でしっかりと握手したのが忘れられない。しかし、私たちは後ろを振り返ってはおれない。前を向いてたたかおう」と、2012年を闘う決意をのべた。
山本善偉・関実世話人は、残念ながら風邪のため欠席。代わって新空港反対東灘区住民の会・白石裕さんが乾杯の音頭。
市東さんの農地を守る沖縄の会から「仲井真知事が環境評価書を受けた、許せない。闘いは個別分散化するのではなく相互に連帯を密に、関実に結集する仲間とともに〈三里塚・沖縄・福島〉の闘いを強めよう。3月、三里塚で会いましょう」とメッセージが届けられた。
部落解放同盟全国連合会、被災地雇用と生活要求者組合、三里塚の野菜を福島に届けている仲間、高槻医療福祉労組から発言が続く。「風をおこす女の会」の女性たちから「富夫さんは三谷幸喜に似てるね。演出に毎年きてもらおう」に、会場は爆笑。最後は「大地をうてば」「インターナショナル」の大合唱になった。3・18三里塚関西集会に集まろう。
<市東さんの農地>死守 決意を固めた旗開き (15日 神戸市内) |
追悼 鈴木謙太郎さん
(三里塚芝山連合空港反対同盟)
ありし日の鈴木謙太郎さん (09年3月29日) |
7日、午前10時すぎ、三里塚芝山連合空港反対同盟の鈴木謙太郎さんが、心原性脳梗塞により急逝されました。享年58歳でした。鈴木さんの突然のご逝去にご家族・ご親族はもとより、反対同盟のみなさんや多くの闘う仲間たちが悲嘆の涙にくれました。
9日にお通夜、10日に告別式が多数の参列の下、しめやかに行われました。告別式では、反対同盟の市東孝雄さんが参列者を代表して弔辞をのべました。
鈴木さんの穏やかな笑顔とゆるぎない闘志を私たちはいつまでも忘れません。謙太郎さん、成田空港を廃港にするまで、そして三里塚闘争の完全勝利の日まで私たちを見守ってください。
尼崎労働福祉会館の廃止許すな
労働者福祉つぶし進める稲村・尼崎市長
廃止反対の赤旗がたち並ぶ 尼崎労働福祉会館 |
一昨年、労働福祉会館の廃止を宣言した尼崎市は、もりあがる反対運動を前に「労館だけを取りだして廃止を決めることはない」としていた。しかし昨年12月1日、突然「老朽化した労館の役割は終わった」とし、市の広報とマスコミを通じて労館の廃止と跡地の売却を発表。ちょうどそれは稲村・尼崎市長が私淑する上山信一がブレーンをつとめる橋下徹が、大阪市長選に勝利した直後のことであった。
ただちに対市交渉が持たれたが、担当課長は「存続を求める会との話しあいで決める」というこれまでの確認を無視して、「廃止を2月議会に提案すると決めただけで、廃止の決定ではない」と人を食った回答をおこなった。これに参加者は怒り心頭に発し、こんな課長では話にならないとして、再度局長交渉をおこなうことが決まった。
1月11日におこなわれた局長交渉では、「労館は2012年度で廃止する」「2016年度に市役所南にホール機能を持った複合施設を作る」という、これまた寝耳に水の回答が飛び出してきた。「それでは空白期間はどうするのか」「初めから労館廃止ありきではないか」「最低でも、2016年まで労館を残せ」という追及に何一つ回答できなかった。労館廃止反対運動を「新ホール建設」で取り込むことで、計画中の公民館・地区会館などの廃止・統合をスムーズに進めたいという意図がミエミエだ。
おまけに担当課長は、「貸館としての役割は他の施設で。労働者福祉行政は別途受けつぐ」と発言。これに労館を拠点に労働運動や労働相談をすすめてきた関係者の怒りが爆発。「不安定雇用労働者が4割をこえ、いまこそ労働者福祉行政の充実が求められているのに、その拠点である労館を無くしてどうするのだ」「ニューヨークや世界各地で占拠運動が起こっている。これ以上労働者をないがしろすると、市役所占拠になる」と怒りの発言が続いた。
25日に、「はじめに労館廃止ありき」という姿勢の撤回と「労館なしの労働者福祉行政」の内容説明を求め、稲村市長出席のうえで再度の交渉がもたれる。また「労館廃止撤回」と、「2月議会での条例案否決」を求める署名運動が取り組まれている。現在、労館周辺は「廃止撤回」の赤旗が林立している。29日には労館存続を求める市民集会が開催される。2月尼崎市議会を労働者市民の怒りの声で包囲し、労館廃止を阻止しよう。(M)
組合敵視・教育破壊・弱者切りすて
橋下 大阪市政に反撃を
12月28日、大阪市議会での就任所信表明演説で橋下市長は「市役所職員が民意を語ることを許さない」と発言した。現場からあがってくる市民の要求を無視することを宣言したものだ。同時に「ギリシャを見てください。公務員と公務員の組合をのさばらせておくと国が破綻する」と声を荒げた。ギリシャの危機は金融詐欺ともいうべき巨大金融資本の投機によって生み出されたもの。公務員や労働組合への責任転嫁は許されない。
市職員に対する攻撃が矢継ぎ早に行われている。「抵抗勢力の根城をつぶさなければ妨害を食らう。まず敵の司令塔を叩く」。橋下が2012年の初仕事に据えたのは市労働組合連合会のつぶしだった。
橋下が示した方針は、職員の給料・退職手当を4月から減額、現業部門民営化などで職員数3割削減、現業職員の採用経緯調査、庁舎内労働組合事務所退去、勤務中の組合活動調査、警察出身者による監察部門設置、「内部告発」の投書受け付ける「目安箱」の設置など。
年収が一気に150万円も下がるケースも予測されている。労組の了解になしに組合事務所を撤去するのは明らかな不法行為である。市組織内部に独自の内部通報ルートを作りつつあることも公言しており、安心して働くことができない。疑心暗鬼にもなり、市民サービスに向ける力を望む方が無理というものだ。
こういう状況の中で退職者が相次いでいる。早期退職制度を使った退職は、昨年度より319人増えて650人になる。定年退職とあわせれば1346人の大量退職だ。中でも民営化間近とされる交通局では217人、バス運転手は1割以上が辞める。市民サービスへの影響も心配されているが橋下は「結構」とまったく意に介してない。
教員を思想改造
1月16日の最高裁判決は、根津さんに対する停職処分を認める反動判決だったが、「数回の不起立のみによる停職・減給は重すぎて違法」との判断を示した。維新の会の教育基本条例は1回の不起立で減給・戒告、2回で停職、3回で免職とするものであり、当然違法となる。
だがこれを受けて松井大阪府知事や橋下は「職務命令違反1回については最高裁判決に従い戒告とする。2回で減給、3回で停職または免職」だという。さらに君が代不起立教員にたいして「1回目の不起立から指導研修をおこない、違反状態が改善されるまでは現場に復帰させない」、「研修で本人から『もうやりません』という約束をもらった上で、現場復帰させる」という。教育現場から教員を切り離し研修という名の思想改造を迫る、国鉄分割・民営化の人材活用センターかJR日勤教育の再来だ。
教育基本条例に関しては「学校運営条例と二本立てにし処分規定ははずす。『職員基本条例に準拠する』とし、職員基本条例で処分規定を細かく定める」などの手直しを言い始めた。だが「教育目標は首長が決める。教育委員罷免は譲らない。高校の学区廃止は当然」とするなど、反動的本質は何ら変わらない。
君が代起立強制条例を大阪市でも2月議会に提案する。市内全域から通学可能な小中一貫校を開設する。統廃合する市立小学校の跡地に私立学校を誘致する。学校選択制を導入する。私立学校や学習塾に通うためのクーポン券(バウチャー)を発行する、などなど。1%のエリートのために99%を犠牲にする橋下の策動は矢継ぎ早だ。
また西成区については直轄し、特区を作るという。当初は地方自治法を無視して、市長みずから区長を兼務すると言っていたが、撤回せざるを得なくなった。それでも「特別顧問などになって区長以上のポストに就く」と執着している。その狙いは12万人の区民の内23・5%、2万8千人を超える生活保護受給者の保護打ち切りである。
反撃を弱めれば、かさにかかって攻撃してくるのが橋下だ。たたかわなければ命まで奪われる。
6面
第14弾
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三里塚芝山連合空港反対同盟・事務局次長の萩原進さんから、日本農業とTPP、福島原発事故、三里塚闘争の展望について、お話をうかがった。二回に分けて掲載する。〔文責・見出しは本紙編集委員会〕
萩原進さん |
――日本の農業にとってTPP問題が深刻なテーマになっています
TPPをやらなくても農民はもう自然淘汰されていくんですよ、今のまま行けば。平均年齢は65歳以上で、農家では食えないという形になってるわけ。跡継ぎがいないと言うけど、政府が跡継ぎを作らせない政策をずっと取ってきたわけだから。
であるならばわれわれが、農業というのは政府がこれまでやってきたようなもんじゃないんだっていう形で農業の形態、あり方そして闘い方を広めていかなければ、意欲を持って農業をやろうという若者は出てこないよ。
この問題は農民だけじゃなくて、TPPの影響をこうむる労働者やあらゆる階層の人びとが同じ戦線にたって闘っていくということだね。まだまだ国民全体がTPPの問題について、細目について分からないんだよね。だけどこれがどんどん実施されれば、厳しい現実の中で対応せざるを得なくなる。そうすると政府と激突する場面がどんどん出てくるわけだよね。
そうなると淘汰されるのは農民だけじゃなくて、労働者階層そのものがふるいにかけられ、生活を維持することができなくなる。そうなると「闘いか、しからずんば死か」という選択を迫られるわけだよね。TPPの加盟とか条約の批准とかは、出発点だからね。われわれはそれでもまだ闘えるんだ。われわれをつぶそうとしたってつぶれないわけだから。で、われわれと一緒に闘う消費者とか労働者とか、そういう人びとと手を組んで闘えばいいんだ。
――農業の後継者づくりが大変です
その辺は非常に難しさがあるんだよね。だけども問題はやっぱり、農家を守るというものについては徹底的に維持するというかたちが必要なわけですよ。政府が考えてる農家は、大型化されたものとか法人化されたものとかだけ。政府の意のままの農家に対してはそれなりのものを与えましょうということにすぎない。
農業そのものを真摯に、意欲的にやろうという人が一体どれだけいるのかってことは、各自治体はちゃんと分ってるんだよ。この成田市だって農家を継ごうという若者は年に1人か2人しかいないんだから、当然それが誰だか分かるわけですよ。問題はそういう者に対してしっかりサポートしていこうという姿勢が行政側にあるのかっていうことだね。
また地域による差も大きいんだよ。成田市農協なんて農民として組合員になっているものと、ニュータウンだとかで住宅のローンを組んだり車のローンを組んだりして、準組合員として組合員になってるものとが拮抗してるんだよね。
普通は準組合員は1割2割しかいない。だけど成田市のようにあと5年もしたら準組合員に抜かれちゃうんじゃないかというところまで来ると、成田市の農業委員会も、開発優先だというようになって、どんどん農地を転用してしまう。そこへ住宅建てようと何しようとおかまいなしだ。
農民が農業では食えないから、農地を売るために市街化区域だとか農業振興法だとかそういうものを全部とっぱらってくれっていう、農地を切り売りして生きつないでいくっていう生き方と、東北地方のように農業以外には出稼ぎとか兼業とかしかないところとは同じ農民でも生き様がちがうんだよね。
関東近辺で純粋農業地帯としてのこっているのは茨城の一部と千葉の一部だけだから。あとは全部都市化されていっている。そういう波の中で農業をやってくっていうのは非常に難しさがあるんだけども、だからこそ、そういう中で後継者がいるというところについては、上から政府の政策を要求するだけじゃなくて、下から農民どうしが連絡をとりあいながら、後継者も育てていくというのが必要になってくんじゃないかと。いわゆる昔の農民組合のようなものを、目的意識的に闘いの中で作ってくのが必要じゃないのかな。
東北の農民に対してあまりにも安すぎる米価に対して上乗せするとか、価格補償、これはこれでいいと思う。ただわれわれみたいなところでは、もうこれ以上農地転用とかそういうものをやるんじゃないよと。それはそれとして農地を残せと。そして、後継者がいる農家については徹底的に保護しろっていう政策は求めていって当然だと思う。
――市東さんの農地をめぐる裁判が重要な位置を持ってきました
これは労働者の人たちに理解してくれと言ってもなかなか難しいんだけど。千葉県の農業会議も成田市の農業委員会も、「書類さえそろっていれば転用しろ」ということなんだよね。だけどね、ちょっと田舎へ行くと、やっぱりそこに農家があって、農業をやってるところに、工場を建てるとかいうことになれば、農業委員会から必ず「それは疑問だ」というかたちでクレームつくわけだ。
ところが千葉県や成田市は全然そういうもんじゃない。そこの職員はそういう教育・指導を受けてきてるわけだ。だから市東さんに対して「1億8千万円の離作補償は、農業収入の150年分にあたる」なんてことを平気でいえるんだよ。普通、農家の心情とかそういう姿見て分かってる人だったらああいうことは言えない。だけどそういう指導を受けてそういう思想まで持たされてるっていうのが怖いんだ。
農業委員会というのは独立した行政機関であり、本来選挙で選ばれるものだからね。農業を保護し、育成し、そのために土地をどうするかを決める機関なわけ。これが国にとっては農地転用のネックになった。手続きに何カ月もかかるからね。だからそんなものはなくしちゃえっていうのが国の本音なんだ。そして株式会社だとか資本がどんどん農業に入りやすくしようというのがあるんだ。だけどその前に農業委員会を指導して、国に都合のいい機関につくりかえてしまおうとしているわけだ。その典型的な例として市東さんの農地に対する「耕作権解除」が出てきてるわけでね。そこにはまた飛行場があり、土地収用との関係があって、二重三重に悪さが出てきているんだ。(次々号につづく)
小松基地爆音訴訟 裁判傍聴記
12月26日、金沢地方裁判所で、第5・6次小松基地爆音訴訟の口頭弁論が開かれた。
危険なF15の訓練 ―原告Uさん
10月7日、4機のF15戦闘機が日本海G空域で訓練したあと、日本海から能美市山口町上空にさしかかった3番機の燃料タンクが爆発し、部品が山口町から安宅町周辺に落下した。原告団が毎年航空機の爆音を測定していた測定点の近くだ。
今回の通過コースは「中島コース」で、訓練機の20〜30%しか実行していない。大部分はもっと北回りで、「松井秀喜の館」上空から滑走路に入ってくる。もしも、このコースで爆発していたら、住宅地で大惨事が起きていただろう。背筋が寒くなる。
01年から09年までに58件もの緊急着陸がおこなわれている。滑走路にロープを張って強制的に停止させる着陸(BAK12)が10回もあったが、マスコミで発表されるのはわずかで、住民軽視だ。
戦闘機は飛ばさないで ―原告Kさん
今度のタンク落下場所から150mしか離れていない安宅町に家がある。日頃から不安だったが、現実になった。訓練中止の間は本当に静かな日が続いた。このままずっと静かな日が続いてほしい。もう戦闘機を飛ばさないでほしい。
第6準備書面を担当した弁護士が、騒音コンターを縮小すべきという防衛省の主張に反論した後、裁判長は、「数年毎に提訴しているのは正常な状態ではないから和解で解決するように」と提案した。40年間くりかえし裁判を行い、4回の判決で爆音の原因は小松基地にあり、被害補償の判決が出され、まさに地元で暮らす住民にとって、正常な状態ではない。その原因は防衛省と裁判所にある。特に裁判所の責任として、@憲法9条の判断を回避していること、A将来の補償を認めないこと、この2点は裁判所の責任だ。和解など言うまえに、裁判所こそ責任ある判決を出すべきだ。(竹内二郎)
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