未来・第102号


            未来第102号目次(2012年4月3日発行)

 1面  再稼働阻止 原発全廃へ

     78年開港以来の決戦
     農地死守へ決意固く 3・25三里塚

 2面  TPP反対で集会
     市場原理社会阻もう

     Fさん保釈かちとる
     不当弾圧に広がる抗議

     大阪府 「教育条例」「職員条例」が成立
     現場に怒り渦巻く

     大阪府「君が代」処分 被処分者を激励

 3面  自信みなぎる農民魂
     3・25三里塚集会に参加して

     橋下は96億円を返せ
     WTC住民訴訟始まる

     さあ全原発の停止へ 経産省前テントひろば

 4面  米 ウィスコンシン州のたたかい ―団交権はく奪に抗して―

 5面  小さな一歩も確実に
     関西合同労組 12春闘へ始動

     書評 『富裕者課税論』

     原発収束作業の現場から ある運動家の報告 ―第3回―

 6面  被ばく地・フクシマで出会った人びと(5)
     福島との "絆" を強く 古河 潤一

     尼崎市議会が労働福祉会館廃止を可決

     第三期沖縄意見広告運動を成功させよう

       

再稼働阻止 原発全廃へ

福島第一原発では、いまも空に、海に、大地に、放射能がまき散らされている。この現実に知らぬふりを決め込み、原発再稼働をたくらむ政府と財界。関西電力〈大飯原発3・4号機(福井県)〉の再稼働を4月にも強行しようとする動きがすすむなかで、この動きに抗議し、全原発の停止・廃炉を求める大規模な集会とデモが24日東京、25日福井でおこなわれた。

1000万署名の達成を 3・24 東京

小雨降る中、日比谷野音に6000人以上が集まった(3月24日 東京)

日比谷野外音楽堂では「再稼働を許さない! さようなら原発1000万人アクション」がひらかれた。
オープニングは山本コウタローさんの歌とアピール。よびかけ人のあいさつを、鎌田慧さん、澤地久枝さんがおこなった。
賛同人あいさつにたった辛淑玉(シン・スゴ)さんは、福島第一原発事故を厳しく弾劾した上で、「原発の立地には明らかな差別の構造がある。過疎の地域に金を積んで押しつける。これは差別です。沖縄の基地問題といっしょです」と怒りを込めて訴えた。
福島から3・11県民集会実行委の大内良勝さん、新潟から平和運動センターの小島誠さん、実行委団体から原水禁の川野浩一さんが発言した。
全国、全世界から寄せられた反原発署名と共に届いた手紙を、女優の林洋子さんが朗読。
閉会あいさつを、よびかけ人の落合恵子さんがおこない、「私たちは忘れません。福島の子どもたちが『僕たちいくつまで生きられるの』と聞いたことを」と訴えた。
集会では、7月16日、代々木公園で10万人集会を開催する、「それまでになんとしても1千万署名を達成しよう」と呼びかけられた。
朝から降り続いていた小雨もパレード出発時にはあがり、長蛇の行進が続いた。コースは、東電本店前コースと、経産省前コースの2つにわけておこなわれた。

県庁で断食抗議 3・25 福井

福井を第2のフクシマにするな
福井県・大飯原発が再稼働の突破口にされようとしていることに対して、県庁前の公園に全国から人びとがかけつけた(3月25日 福井市中央公園)

3月25日、〈大飯原発3・4号機「再稼働」に慎重な判断を求める市民集会〜福井から未来をひらこう〜〉が福井市内でひらかれ、全国から700人が参加した。主催は、〈原子力発電に反対する福井県民会議〉。

断食宣言
主催者あいさつをした中嶌哲演(なかじま てつえん)さん(福井県小浜市・明通寺住職)は、広島型原爆120万発分の放射能を生み出した日本政府・電力会社による原発推進の歴史を糾弾し、現在すべてが停止している若狭の原発をこのまま止められれば、と訴えた。「大飯が突破されれば、各地の再稼働がはじまる」「今日から31日まで、県庁ロビーに座り込んで断食を続ける」と宣言。
原子力資料情報室の山口幸夫・共同代表が、ストレステストに関して「福井を第二のフクシマにしてはならない」と、その問題点を指摘した。ストレステストは安全判断のためのものではない/意見聴取会は審議ができない仕組み/評価書には地元の人々の意見が入っていない/耐震・安全設計・防災をいうなら改訂される基準でおこなえ/国会事故調の結論(7月予定)を反映させよ/再稼働は政治家が「政治判断」するのもではない。
〈さようなら原発1000万人アクション〉事務局の藤岡さんは、前日24日に東京で6000人がデモ行進したこと、1000万署名が現在550万筆を超えたことを報告した。
日弁連(福井弁護士会)からもんじゅ訴訟弁護団の島田広さんが発言。

各地から
〈サヨナラ原発福井ネットワーク〉の山崎隆敏さんは、県下初の「拙速な再稼働反対」意見書を全会一致で19日に可決した越前市議会の議長メッセージを読み上げた。
〈さいなら原発・びわこネットワーク(滋賀県)〉の野坂昭生事務局長は、「関西人の命の源である琵琶湖を守るためにも、何としても大飯3・4号機の再稼働を止めたい」とよびかけた。
京都、神戸からの発言に続き、大阪からは〈ストップ・ザ・もんじゅ〉の池島芙紀子さんが「福島第一原発の4号機では、使用済み核燃料が(プール内に)野ざらし。これで、次の最大余震におそわれたらどうなるのか戦慄すべき状態にある。こんな状態で、大飯の再稼働などと言っている政府に憤りを感じる」と怒りを表明した。
集会後半から雨が降り出し、時折あられも混じる。集会後、会場の福井市中央公園からJR福井駅前まで、あられが降る中を、宣伝カーを先頭に元気よくデモ行進した。

78年開港以来の決戦
農地死守へ決意固く 3・25 三里塚

市東さんの畑でおこなわれた全国総決起集会
(3月25日 成田市内)

3月25日、千葉県成田市で三里塚全国総決起集会がおこなわれ、1055人が参加した。
三里塚芝山連合空港反対同盟は、第三誘導路の突貫工事が始まったことを弾劾し、三里塚闘争が1978年の開港阻止闘争以来の決戦局面に突入したという認識を示した。そして今年中にも市東孝雄さんの農地の強奪をねらう国家権力に対して、体を張ってたたかう決意を明らかにした。〔3面に関連記事〕

2面

TPP反対で集会 市場原理社会阻もう

3月9日、「TPP反対! 3・9関西集会」が、大阪市内でおこなわれた。呼びかけたのは全港湾大阪地本と全日建連帯労組関西地区生コン支部。集会には、3月1日からオーストラリアのメルボルンで開催されていたTPP交渉参加国第11回会合で行動していたアメリカの反TPP活動家2人が参加した。会場の協同会館アソシエに150人が集まり、熱心な議論がおこなわれた。

毒素条項
集会はパネルディスカッション形式でおこなわれた。コーディネイターは同志社大商学部教授・田淵太一さん。パネリストはパブリック・シチズン〔注1〕のローリー・ワラックさん、ピーター・メイバードックさん、連帯労組関生支部委員長の武建一さんの3人。
田淵さんはまず、「農業が全滅される問題だけではない、労働・郵政・保険・金融の全面開放をアメリカは迫っている。特に毒素条項といわれるISD条項〔注2〕が問題だ」と注意を喚起した。これは他国企業が相手国の制度を訴えて変更させるというもの。リーマンショックで実質的に国有化されているAIGは日本の簡保や農協共済を問題視し、ISDにかけて、えじきにしようとしている。日本の財界もこのISD条項を使ってアジア諸国に打って出ようとしている。この問題は韓米FTAでも大問題となっている。「労働者、農民、中小企業を一握りの大企業の食いものにするものだ」と提起した。

トロイの木馬だ
ローリー・ワラックさんは、TPPの問題点を次のように指摘した。
TPP推進派は少数であり、アメリカでも反対が多い。交渉内容が秘密で、危険だ。「トロイの木馬」である。それは1%の連中の道具だ。
いったん協定を結ぶと「協定違反」を楯にとった企業の訴えで、参加国の政策や法律、地方自治制度や将来の法制さえも変えられる。独自の「TPP裁判所」の決定が参加国の最高裁判所の決定よりも優先される。従わないと巨額の罰金(90億ドルと言われている)や賠償が課せられる。国家の主権や民主主義が通用しないルール。原協定は06年にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で発効した経済連携協定である。08年に、アメリカが投資、金融・サービスにかんする交渉にのりこんで来たことによって、その性格が変わってきた。500万人の雇用が失われたNAFTA(北米自由貿易協定)がモデルだ。賃金が高いところや労働組合が強いところから企業が逃れられる条項が入っている。
日本では規制がある政府調達(公共事業)、病院・医療分野に利益優先のグローバル企業が参入。建設、港湾事業では、外国人労働者雇用の壁が取り払われ、TPPビザが発行されるようになる。

医療と命の危機
ピーター・メイバードックさんは、医療分野を中心に、日本のシステムをかえようとしていると警鐘を鳴らした。平均寿命が世界一の日本の国民健康保険制度、薬剤制度がねらわれている。
ジェネリック医薬品の存在によって病に苦しむ多くの人々に安い薬を提供できている。ところが、特許概念の幅が広く、その運用の不公正さが問題になっているアメリカの特許制度がもちこまれると、製薬会社の独占的権限が拡大し、世界の命を脅かされると訴えた。
武建一さんは近畿の生コン業界は327社―4千人が働く。ほとんどが中小。TPPの中で雇用と労働条件が切り下げられる。経団連の米倉会長がTPPを推進する背景には、出身の住友化学とモンサント社〔注3〕との2010年の提携がある。遺伝子組み換え作物の表示義務や安全性検査の撤廃が狙われているとTPPの危険性を訴えた。
会場から農業者、全農林から活発な質疑と討論が行なわれ、大衆行動を強めて行こうと確認。
2012年7月まで事前協議を進め、年内にはTPP加盟を決めようとしている野田政権に対する波状的な闘いが必要だ。「食とみどり、水を守る近畿労農市民会議」が呼びかける4月16日「TPP加盟反対! 大阪集会」が、広範な団体の結集のもと準備されている。関西における大衆的な反撃の第一弾として取り組もう。(労働者通信員 K)

〔注1〕 パブリック・シチズン
ラルフ・ネーダー氏によって1971年設立のNGO。ワシントンD.C.に拠点を置く。現在では15万人の会員を擁し政府や議会、産業界 などを調査・監視している。
〔注2〕 ISD条項
「投資家対国家間の紛争解決条項」(Investor State Dispute Settlement)の略語。ある国の政府が外国企業、外国資本に対してのみ不当な差別を行った場合、当該企業がその差別によって受けた損害について相手国政府に対し賠償を求める際の手続き方法について定めた条項。
〔注3〕 モンサント社
米国ミズーリ州に本社を持つ多国籍バイオ化学メーカー。遺伝子組み換え作物の種の世界シェアは90%。

Fさん 保釈かちとる
不当弾圧に広がる抗議

3月18日、大阪地検によって「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」で起訴され、勾留が続いていたFさんが、24日、保釈奪還された。
大阪府警は2月27日、「免状不実記載・同行使」をでっち上げてFさんを逮捕。さらに3月8日には「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」をでっち上げて再逮捕した。
Fさんは、昨年5月から福島県内の仮設住宅や避難所でコンサートを開いたり、三里塚の新鮮な野菜を被災地に届けるなどのボランティア活動をおこなってきた。この3月には仲間たちとともに、福島の子どもたちの一時避難(保養)の準備を進めていたところだった。
このFさんに対する不当な逮捕・起訴にたいして広範な人びとから抗議の声があがっている。
国家権力による福島支援に対する卑劣な弾圧を打ち砕こう。裁判闘争に勝利しよう。

大阪府 「教育条例」「職員条例」が成立
現場に怒り渦巻く

松井知事(維新の会)が提出していた「教育基本2条例(府教育行政基本条例、府立学校条例)案」、および「職員基本条例案」が、3月23日、大阪府議会本会議において維新の会、自民党、公明党の賛成で可決成立した。4月1日施行。
昨年秋、維新の会が提出した当時は反対していた府議会の自民党、公明党は、国政選挙をめぐる維新の会の恫喝に屈し、まともな審議もなく賛成した。昨秋の条例案に多少の変更を加えたものの、基本線は同じで、提案者が維新の会から府知事に変わっただけ。

公立小中教員も直撃
こんかい成立した府条例は、府立学校の教職員だけが対象ではない。府下の公立小中学校教員も対象となる。義務制(小中)教員は、市立学校であっても府費から賃金が出ているため。

府庁、市役所に抗議行動
「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪・全国集会実行委がよびかけ、採決前日の22日、府庁近くの大阪城公園に100人が集まり、抗議集会をおこなった。集会後、対府庁デモ行進。
さらに、市議会最終日の前日26日には、同実行委がよびかけた市役所前(中之島公園)集会がひらかれ、集会後、全員が市役所正面玄関に移動し、橋下に対して抗議のシュプレヒコールをとどろかせた。(上記条例の大阪市版は、継続審議となり、5月市議会での成立がたくらまれている。)

3回で免職
府条例は、同一の職務命令にたいして3回違反で分限免職にする、すなわち「君が代」不起立3回でクビだというのだ。この4月の入学式で不起立、来年春の卒業式と入学式で不起立すると3回になる。このような憲法違反、法律違反の条例など認められない。
教育現場や、保護者には怒りが渦巻いている。

府議会採決前夜の抗議デモ(3月22日 大阪市内)

大阪府「君が代」処分 被処分者を激励

3月卒業式で「君が代」不起立したことを理由に、3月27日、15人が処分された。いずれも「戒告」。府立学校12人、府下3市の小中学校教員3人の計15人。(2月の不起立者17人はすでに戒告処分されている。)
処分辞令伝達は、大阪府公館でおこなわれた。大阪府教育委員会が入る府庁別館の向かい側にある。
この日、「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪・全国集会実行委は、多くの仲間によびかけ、被処分者に対する激励と、府教委への抗議行動をおこなった。
午後1時半から府庁別館前に陣取り、抗議集会。大阪府下のみならず、東京(根津さん)、千葉からも仲間がかけつけた。処分発令がある3時近くになると、被処分者も次々やってきて合流、静かに、しかし怒りの炎をこめた決意を表明した。
被処分者が公館に入って、処分辞令伝達、強制研修、誓約書強制されている頃を見計らい、集まった100人近くが、シュプレヒコールをたたきつけた。
公館から出てきた仲間は報告集会で、「外から声が届いて、勇気づけられた」と語っていた。
最後に、「たたかいは、いよいよこれから」と確認し、午後4時に行動を終えた。

府公館にむけ激励と抗議のシュプレヒコール(3月27日)

3面

自信みなぎる農民魂
3・25三里塚集会に参加して

寒くなるという天気予報に、万全の厚着をもって会場へと向かう。現地周辺は4mほどの高さのフェンスが立ち並び、人の出入りを拒絶している。線路や高速道路のような防音を目的としたものではない。空港に反対し、闘う農民とそこに集まるわれわれを排除するためのものだ。パレスチナさながらの異様な光景と、離着陸による断続的な轟音が言いようのない圧迫感をもたらしている。
反対する農民を壁で囲い込んで分断し、生活もできないような状態にしておいて昨年の8・6にあの現闘本部を奪ったのだ。さらに市東さんの農地を取り上げようとしている。抵抗する者の手足を押さえつけ、力でねじふせて所有物を奪う。強奪でなくて何であろうか。改めて怒りがこみあげてくる。

開港阻止闘争のように
いよいよ集会開始。1055人の参加者を前に、95歳の森田恒一さんが、市東さんの農地強奪には実力阻止を、と力強く開会あいさつ。
主催者あいさつは北原鉱治事務局長。3月に本集会がもたれる意義について。34年前の3・30開港を阻止する勝利があった。このように正義の闘いが必ず勝利する。確信に満ちた北原さんのあいさつは集会参加者に力を与えてくれる。
次いで萩原進さんの基調報告。国策、国益がわれわれに何をもたらしたか。沖縄、原発、そして成田空港を見れば明らか。これからも市東さんの農地を守る闘いをさらに広めていく、とゆるぎない決意を述べた。

沖縄と連帯して
沖縄から知花盛康さん。沖縄人民の9割が反対するところに政府が基地を押しつけにやってくる。国策である成田軍事空港、原発、そして日米安保に断固反対する。同じく沖縄の金治明さんからは、辺野古に在特会や幸福実現党が現れ、罵詈雑言を浴びせている。沖縄で反対同盟とともに集会を開き、ともに闘うと宣言。
関西実行委員会・永井満さん。いざ鎌倉ではないが、市東さんの農地に手がつけられるようなことがあればいつでも駆けつける、と力強い連帯のあいさつ。
次に市東孝雄さん。これまで自然体と言っていたが、今はそれをとっぱらって裁判闘争、現地闘争を全力で闘うと宣言。
カンパアピールを鈴木加代子さん。娘さんとともに登壇し、「父ちゃんの背中を見て育った娘が、夫・謙太郎の遺志を受け継ぎ、ともに闘う」と決意を述べた。

福島と三里塚をつなぐ
福島からは〈子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク〉の椎名千恵子さん。北原さんに「大変だったね」と声をかけられ、痛みに立ってたたかってきた人は痛みを知っている。以前、三里塚で私も突っ込んでいった。福島と三里塚をつなげていきたい、と語った。
部落解放連盟全国連や住民団体、各党派の決意表明が続き、2・5キロのデモ出発へ。

力を受け取りに
集会に参加し、今回も三里塚から力をもらって帰ってきた。
「何億円積まれようと、この土地で1本百円の大根をつくりたいんだ。」正しく物を見つめるこの自信に満ちた生き方。これぞ三里塚魂。これにふれると、もうやめられない。
みなさんも三里塚へ力を受け取りに行きませんか?(K・A)

国策国益クソ食らえ 萩原進さん

3・11は福島、全国で10万人が決起し、全世界で反原発のたたかいが展開された。ドサクサに紛れてTPPを通そうという動きがある。また沖縄基地の強化や、「日の丸・君が代」強制、民間委託や減給・リストラといった労働者への攻撃など、闘わなければ生きていけない。
支配階級が「国策」「国益」と言って進めてきたことがどんなことになっているか。沖縄、原発、そして成田を見れば、国策、国益、くそ食らえだ。
先日の成田市農協の総代会で、「TPPでは、みなさんに損はさせません」とあいさつした民主党の議員に、農民たちが「帰れ!」と怒声を浴びせ追い返した。怒りのマグマが爆発寸前だ。
地震は決して想定外ではない。人災であり犯罪だ。放射能ガレキを産み出した犯人は国と東電である。国と東電に一切の責任を取らせるべきだ。
反戦の砦として成田空港の軍事空港化を粉砕しよう。5〜6月のスーダンへの本隊派兵に向けてたたかおう。市東さんの農地法裁判は重大局面に入った。国策裁判を打ち破るのは裁判所を包囲する民衆の力だ。力関係を逆転させ、現地攻防に反映させよう。

“自然体”を取っ払って 市東孝雄さん

3月11日の福島集会で、有機農業を取り組んできた農民が発言し、「農民が加害者のように報じられた」と悔しい思いが語られた。 私は同じ農民として、悔しさと怒りを覚えた。第3誘導路工事が遅れているために、この間、夜間もやられている。こんなものに2百億円もかけて工事をするのなら、その金を福島に向けるべきだ。
裁判は重大な局面に入っている。私は金とか権力にはびくともしない。国策ならどんなことをやってもいいというのは許せない。前は自然体でやると言ってきたが、それをとっぱらって闘い抜く。変えましょう、日本を。



橋下は96億円を返せ WTC住民訴訟始まる

3月15日、〈橋下さん、96億円かえして〉WTC住民訴訟の第1回口頭弁論が大阪地裁大法廷でひらかれた。耐震性に問題があり、庁舎としては使い物にならないWTCを、むりやり購入した橋下知事(当時)の責任を追及する裁判だ。
原告、サポーターら140人が集まり、法廷はあふれた。原告を代表して藤永のぶよさん(おおさか市民ネットワーク代表)、西谷文和さん(ジャーナリスト)が意見陳述をした。
裁判の後、弁護士会館に移り、報告集会をひらいた。藤永さん、西谷さんがあいさつ。5人の弁護団が自己紹介と決意表明(1人は欠席)をおこなった。
次回の弁論は、5月31日、午前11時から大阪地裁202号法廷で。被告(大阪府)側から出た答弁書に対して、原告側が反論する予定

〔解説〕
橋下が知事時代に、府庁舎を大阪港の埋め立て地に建つWTC(ワールドトレードセンター)ビルに移転させると称して、強引に購入した。その後、耐震性に問題ありと専門家会議で指摘され、「全面」移転は断念。しかし、すでに約5000人の職員のうち、2000人がWTC内庁舎(咲洲〔さきしま〕庁舎)に移転している。

移転条例案は否決
庁舎の位置は条例で定められているため、全面移転するには新たに移転条例が必要。しかし府議会は、09年3月と10月の2回にわたり移転条例案を否決。
ところが、購入予算案については、同年3月に否決されたものの、10月には記名投票で、誰が反対したか明らかになる形をとり、次の選挙で刺客を送られることを恐れた他会派議員が屈服し、購入予算案は可決。
つまり、移転条例は成立していないが、購入予算は成立した状態で、購入と部分移転が強行された状態にある。
昨年3・11東日本大震災の際、震源から770キロ離れたWTCビルは、地震発生から3分後に長周期地震動が到達。約10分間にわたり幅2・7メートルの横揺れが続いた。壁や天井があちこちで崩落し、350カ所以上が補修を要する。エレベーター全26基が緊急停止し、エレベーター内に職員が5時間近くも閉じ込められた。さらにエレベーターを支えるワイヤロープが絡まり、地震発生から丸一日が過ぎた時点でも8基が復旧しなかった。

長周期地震動
地震にはさまざまな種類の振動が含まれている。長周期地震動は、周期が2秒以上の揺れで、遠くまでエネルギーを失うことなく伝わる。高層建築物はこの振動と共振しやすく、特に高層階で大きく揺れる。階数に0・1をかけた数字が周期の目安。55階のWTCビルは、到達した長周期地震動(5〜6秒)の周期に共振し、大きく揺れた。

被告は大阪府
現行法では、ビルを購入した橋下知事(当時)を直接訴えることができないので、「大阪府(松井知事)は、橋下前知事にビル購入と移転費用あわせた96億円を返すよう請求せよ」と求める裁判。
原告は府民85人。橋下の責任を徹底追及する。



さあ全原発の停止へ 経産省前テントひろば

3月23日。肌寒い小雨の降るなか、午後5時から経産省正門前で20人で抗議行動。4日間にわたる行動を宣言。午後7時から別の怒れる女性が決起。
24日。この日も雨、午後から天気はよくなるといっていたのに。日比谷公園のさようなら原発の大集会で正午からテントひろばのビラを配布。集会に合流し東電コースのデモに参加。別グループはテントに戻り、経産省コースの労組隊列へビラまき。雨も上がり、ビラの受け取りは抜群。夕方、再度経産省へ。40人で抗議行動。
25日。午後から来訪者多数。夕方5時から抗議行動に40人参加。休日で経産省は寂しいが、やりきった。午後2時、柏崎刈羽原発6号機に制御棒注入開始。テント前はさまざまな人の交流がおこなわれた。
26日。同6号機が完全停止。ついに東電の稼動原発がゼロに。残るは北海道の泊原発3号機のみ。抗議行動の最終日。午後6時から経産省前に50人。その後東電前アクションが呼びかける行動に参加。2百人で東電前に陣取り、抗議を続けた。さまざまな団体が参加。
いよいよ稼動原発ゼロへ、最後の攻防の始まりだ。大飯3・4号機の再稼働を許さないたたかいに、持てる力のすべてをかけよう。

テントではさまざまな人びとの交流が(3月24日 経済産業省前)

4面

米ウィスコンシン州のたたかい
―団交権はく奪に抗して―

米国ウィスコンシン州から2人の現職教員が来日し、2月26日「囲む会」、27日「公教育と公務員労組の解体と闘うウィスコンシンからの報告(おおさか社会フォーラム主催)」が大阪市内でひらかれた。来日したのは、カスリン・バーンズさん(ウィスコンシン州、教員)と、ペギー・コインさん(州都マディソン市の教員組合委員長)。以下、ふたりの話と、ウィスコンシン州のたたかいを紹介する。〔文責・見出しは本紙編集委員会〕

「新しい革命」

2010年の中間選挙において、ウィスコンシン州では、不況と民主党への幻滅によって投票率が低下し、共和党の知事が当選。議会の両院も共和党が多数を占めた。
翌11年、ウォーカー知事が攻撃にでてきた時に、たたかいを開始したのは2つの小さなグループだった。ひとつは、ウィスコンシン大学の助手グループ(学生でもある)、もう一つは私たちの組合MTI(正規、非正規の教員、代替教員、補助教員、事務職、警備員で組織。マディソン市教員組合 Madison Teachers Inc. )だった。
2月11日、知事は「爆弾を落とした」と言明し、財政再建法案を議会に提出。それは、州財政を均衡させることを口実にしているが、狙いは公務員労働者から団体交渉権を取り上げるもので、組合攻撃だった。
大学の助手グループは「これでは大学で学ぶことができなくなる」と危機感を感じ、この日すぐに学内で集会を持った。小さな集会であったが、リーダーは「行動を起こすのに皆さんが必要だ。まわりの人に呼びかけてほしい」と提起。「14日はバレンタインデーなので、バレンタインカードを集会に持って行き、どれだけ大学が好きなのか、そして知事の行為がどれだけ学生の心を痛めつけているかを示そう」と州都マディソン市に行くことを決定した。
学生たちは、議会の様子から判断してあと3日しかないことが分かっており、法案成立を阻止できるとは思っていなかった。しかし、議会で証言することによって少なくとも議事進行を遅らせることはできると考えた。ウィスコンシン州の議事堂は市民に開かれた所であり、歴史の研究も、議員訪問もできる。
この日、MTIも協議を開始した。我々の弁護士からの電話で、「時には市民的不服従が必要になる」との話。ツイッターやフェイスブックで、高校生たちが、〈先生たちを守るために「スト」や抗議行動を計画している〉という。
「私たちはもう話をしている時ではない」、「今起ち上らずして、いつだ」ということから、翌日、私たちは全教職員に(ストライキ権が禁止されている中)「仕事に行くか、ストに入り自らの権利のために起ち上るのか、良く考え行動してください」と電話やメールで連絡した。
5〜6時間後には1500人ほどの教員から、病休届けを出したという返答がきた。その頃、ウィスコンシン大学の助手たちは州都での結集を始めていた。
数千の人たちが議会に集まり、議会証言の申請をして証言。その間、24時間議会内に留まることを決め、それを実行した。ここにオキュパイ(占拠)が生まれた。学生たちが議事を遅らせている間に組合は動員を組織した。民間、公務員の労働組合が州都マディソン市に集結してきた。

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3月9日、民主党の議員がいない中、共和党は鍵をかけた議会で、組合つぶし法案の採決を強行した。
法案の成立を止めることはできなかったが、8月には他の組合や活動家らと力を合わせて、共和党の上院議員2人をリコールすることに成功。
11月15日、ウォーカー知事リコール運動も開始。翌2012年の1月15日までに、必要数の50万の倍を超えて百万以上の署名が集まった。
知事のリコールについては、州の選管で審査が行われており、署名の有効性が確認されれば州政府はリコール選挙の日程を設定することになる。

              ・     ・     ・     ・     ・

ウオーカー知事のリコールを推進した United wisconsin(団結したウィスコンシン) の誕生は4〜5人の活動家から始まった。ネーション誌のニコラス氏は自著の『蜂起(Uprising)』で、新しい革命と呼んでいる。ウエブサイトを開設し、リコールの呼びかけをおこない、運動の情報センターとなった。

情熱と正義の運動を ペギー・コインさん

38年の教育歴の中で積極的に運動に関わったのは32年。職場におけるトラブルメーカーと呼ばれることを誇りとしています。組合のモットーは子どもたちを教育することで、組合のスローガンは「私たちは皆で決定し COLLECTIVELY WE DECIDE 団結して行動する UNITED WE ACT」というものです。熱情と正義と真実が運動を進めることを共有するためにここに来ました。
マディソン市は、まあ進歩的なところで、ウイスコンシン州はアメリカで最初に公務員労働組合が出来たところ。団体交渉権剥奪の攻撃は他の労働組合からも注目を浴びたのです。その後、このたたかいはどんどん広がりましたが、私は教員としてもそこから多くの教訓を得ました。小さなグループでも大きな事ができる。億万長者は金は持っているが、数では私たちの方が多い。私たち公務員は国を動かしているのです。私たちは開かれている組合であり、ピケを張り、人々を投票所に向かわせ、デモをする―これがデモクラシーです。
ウィスコンシン州教育組合協議会(WEAC)の調査によれば、保護者、子どもたちの教員に対する信頼度は圧倒的に高いことがわかった。しかし先生の組合は嫌いだということです。これに対して私たちは「私はMTIの組合員であり、その運動をし、あなたが愛する教員なのです」と知らせてきました。私たちの役割は、子どもの教育のことばかりでなく、親や一般の人々に、教師が重要な事柄(教育改革や労働条件)に意見を述べることの重要さを知らせていくことが大切と思っています。

「教育改革」に警戒を カスリン・バーンズさん

どうしてこうしたことがやれたのかについては、「一人の痛みは万人の痛み」(An injury to one is an injury to all.―アメリカ労働運動でよく使われる標語) だということに気がついたからです。
ここにおられる人々に言いたいです。今、教員にかけられている攻撃もそうです。大阪市の市長は私たちのところの知事と同じです。
(組合員の)家族の中や友人、近所に公務員がいるので、攻撃がかけられたときにその顔が浮かび自分たちにかけられた攻撃なのだと受けとめるのです。これは大阪の市長がやっていることがみなさんへの攻撃だと思うのと同じです。
政治家が教育に口出しをする時、その動機には警戒しなければならない違った政治的目的があります。教員の勇気あるたたかいによって、地域の人たちが、今何が起こっているか、共和党が今何をしようとしているのかを、3日間の短い間に理解することになったのです。
たたかいが始まったとき、私はMTIの組合員でしたが、この中で他の多くのほかの組合の人たちと兄弟姉妹の関係になりました。
日本に来て、組合がずいぶんたくさんあることに驚きましたが、これは強みでもありますが、皆さんにとっては苦闘でもあります。というのは行動するためには他組合にも門戸を開き、働きかけなければなりません。皆さんにとって市長は共通の敵ですが、これに対して組合同士がともに歩んで手段を見つけなければなりません。市長に対する失望はあるのですから。その過程を通して民間・公務員の壁を取り払い、開いた組織にならなければなりません。
今後、知事リコールとともに、共和党議員4人のリコールを予定しています。一人のリコール成立でも州上院は民主党が多数派になります。
教育に関しては民主、共和ともに良いことはやっていません。だから、自らが組合のリーダーになる運動を学び、リーダーとなることを助け、奨励しています。労働者のリーダーはこうした運動の中から生まれてくるでしょう。

落ちこぼれゼロ法
01年、ブッシュ政権時に「落ちこぼれゼロ法」ができた時は、教育を良くしていくものと捉えられたが、そうはならなかった。法の下で、各公立学校は州全体の標準テストにおいて、「毎年適切な向上」を見せなければならないとされた(今年の5年生の成績は昨年の5年生よりも上―といった具合)。資金は法が要求することに較べれば決定的に少ない。学校区の平均的成績の向上ではなく、障害児教育、英語学級、少数者(マイノリティ)学級などすべての分野での達成を求められ、そのうち一つでも達成できないとその学校は「改善必要校」のレッテルを貼られる。
ゴールを達成しても、次の年はさらに上の目標に到達しなければならない。こうして目標は毎年高くなり、アメリカの公立学校の生徒たちは、全員2014年までに100%「熟達」(proficient)まで到達しなければならない。こんなことは世界中どこにもありません。
私たちはインクルーシブな学校を求めています。私のクラスは18人ですが、そのうち2人は自閉症で2単語の文章しかしゃべれません。私は、きっともっとしゃべれて、良い生活を送れるよう助けることは出来ると思いますが、100%「熟達」と言うのは不可能です。こうやって、すべての学校に「失敗校」のラベルを貼るのです。
アメリカでは公立学校には組合がありますが、私学にはないのです。「すべての公立学校は失敗している。だから公立学校はいらない。私学だけでいい」と人びとにそう信じ込まそうとしているのです。
教員組合がターゲットなのです。なぜ、教員組合をターゲットにしているかといえば、アメリカにおいては政治運動での献金で企業に対抗できるのは教員組合のような大きな組合しかないからです。政治家が「教育改革」を語るとき、他に狙いがあることを警戒しなければなりません。

予算修正法案強行に抗議するマディソンの市民(昨年3月19日)〔撮影・提供 木村修=マブイ・シネコープ〕

5面

小さな一歩も確実に
関西合同労組 12春闘へ始動

3月20日、関西合同労組の春闘集会が尼崎市内でひらかれた。
連帯ユニオン・トラック支部の元書記長、横川俊和さんが「規制緩和の矛盾が集中するトラック労働者」というテーマで講演。個別会社の闘いだけではだめで、〈政策運動〉が大切なこと、全港湾などと共同闘争を組み、〈車の適正保有台数を5輌から20輌へ〉〈認可運賃の復活〉などの政策要求闘争についての提起があった。運輸労働者などからの質疑応答が活発におこなわれた。

石田委員長の報告
M運送分会が2年来追及してきた、〈歩合給の中から時間外・深夜・休日の3手当を外に出す賃金改定〉を含む和解を、3月12日に勝ち取った。
U運輸では、分会長が、労災休業後の配転先から3月16日、元の職場の南港営業所に1年半ぶりに職場復帰した。
3月12日にH運輸で6人の仲間が〈超過密労働の改善〉を求めて組合通告をおこなった。
2月29日、JRがSさんに対して「雇い止め」解雇通告をおこなってきた。
N商運の仲間が、1年半を超える激しい争議で会社を追いつめている。
小さな一歩も粘り強く闘いぬいて確実に実現しよう。

全力で12春闘を
行動方針提起の後、交流会をおこない、最後に、まとめ・団結ガンバローで締めた。

共同闘争・政策要求めぐり活発に討論(3月20日 尼崎市内)

書評 『富裕者課税論』

いま「税と社会保障の一体改革」の名のもとに、社会保障を継続させるためには消費税のアップしかないと宣伝されているが、本当にそれしかないのか。

「消費税」以外の方法
本書では、消費税増税以外の道があることを示している。戦後税制の基本だったシャウプ税制に戻し、大衆課税を止めて富裕者課税に戻せば、財源はあるということだ。今の税制は富裕者減税を推し進め大衆課税を強化した結果、税収不足に陥っている。富裕層減税を中心とする所得税・法人税減税は91年度と02年度の比較だけで、年間19兆円近い。
日本でも人口の1・4%が富の40%を所有している。富裕層には負担能力があり、それを吐き出させれば、消費税という弱い者いじめなどしないですむ。
本書では、戦後のシャウプ税制の検討からはじめている。シャウプ税制の公平性は所得税、富裕税を中心とし「所得や資産の格差および家族負担の差異を適正に考慮に入れる」ことができることにある。反対に、間接税ではそれらが考慮されない。シャウプ勧告は累進税制には所得の再配分機能とともに「経済の支配権を少数の富裕な個人の手に集中させる恐れのある膨大な財産の蓄積を有効に阻止する準備」があるとしている。戦後米国が日本占領政策で、財閥の解体を進めようとしていた時期に、シャウプは占領政策の一つとして税政を考えていた。だから占領政策が中国革命と朝鮮戦争を画期として転換するのと同時に修正が進められ、解体されていった。今日では、もはや原形をとどめない。

富裕者減税
所得税の減税は累進税率のフラット化に中心が据えられてきた。最高税率は70%(87年度)→60%(88年)→50%(89年)→37%(99年)と減税が進められた。法人税基本税率は87年度42%→99年30%に大幅に減税。
国税収入は59・8兆円(91年度)→47・2兆円(99年)→43・8兆円(02年)と減少。
その内訳は所得税26・7兆(91年度)→15・4兆(99年)→14・8兆(02年)。法人税16・5兆(91年度)→10・7兆(99年)→9・5兆(02年)。消費税4・9兆(91年度)→10・4兆(99年)→9・8兆(02年)。91年度と02年度の比で年間4・9兆円(100%)の増税
一般会計予算の税収比は、91年度87・8%→01年61・4%→02年57・6%→03年51%と国債依存を深めた。
景気の影響もあるが、それだけではない。
相続税は03年に10%〜70%(20億超)の9段階から、10%〜50%(3億超)の6段階に。4億円超で60%→50%へ。20億円超で70%→50%へ。02年と03年の比較で1586億円の減少。
証券優遇税制で株式の取引は20%課税と元々優遇されていたものを、さらに10%に減税。富裕層ほど株式取引を主な収入としており、超富裕層では所得に対する納めている税負担率は低い。2005年で5千万円超の収入で21・8%、3千万〜5千万で22・7%。超富裕層では10%台になる。

貧乏は自己責任?
ところが、2000年中期答申で、富裕層を優遇したままで、増税の大衆収奪路線を示した。課税最低限の引き下げ、消費税増税だ。課税最低限の引き下げは、各種控除を廃止などするもの。課税最低限を引き下げるというのは諸外国にはない異常なものだ。
第二臨調で、国民に「自立・自己責任」を求め、社会福祉の「行政の縮減・効率化」の名の元に社会福祉関係費の自然増加分のカットと受益者負担を強化してきた。「広く」負担することがあたりまえであるかのような世論誘導がおこなわれ、価値観の転換が図られた。金を儲けるのは人間が優れているからで、貧乏は自己責任という価値観がマスコミを使って流布された。
富裕層には年間19兆円の減税を行い、それが為に税収不足になっているのに、大衆増税を進める。それが「税と社会保障の一体改革」の正体だ。
企業の内部留保は消費税導入前の(1987年)176兆円から、2008年度には429兆円と253兆円も増加している。
富裕者課税という道があり、その道を行けば、社会保障の拡充が進み、消費税を上げなくてすむ。(T)

安藤実(静岡大学名誉教授)著 桜井書店 09年 2600円+税

原発収束作業の現場から
ある運動家の報告 ―第3回―

U.中抜きとピンハネ

――大西さんの会社は何次下請けですか


3次です。
一番上の発注者が東電。その次が元請け。元請け会社は、東電工業とか、東芝、日立とか、鹿島建設、清水建設などの大手。その次が1次下請け。さらに2次下請・3次下請けは、ほぼ地元の企業。大熊工業とか、双葉企画みたいな名前で、原発周辺でだいたい組をつくっています。組というのは、いわゆる人夫出しですね。
「原発ジプシー」という言い方もありますが、原発労働者は、大部分が、定期点検で全国各地の原発を渡り歩くんですけど、日雇い労働者だけではなくて、それぞれの地元の住民です。
福島、新潟、福井など原発周辺の住民が、原発労働で全国を巡り歩いているのです。そうやって巡り歩く労働者を受け入れる先が、1次・2次の下請け企業です。さらに1次・2次の下請けが抱え切れないというか、すぐに雇用できて、すぐに使い捨てできるような形の3次・4次の下請け会社がたくさんあります。
一番の末端では、親方が2〜3人を連れて、現場を移動していく形になっています。福島の中でも移動していくし、定期点検で人が足りなくなったら全国の原発に人を出していくということをやっていますね。

――大西さんの会社の規模は


うちの組は10人ぐらいですね。社長も含めて親方が3人です。親方が寄り集まって会社をつくっているんで。

――組とは


親方がいるところを組といいます。
班というのもあります。小さな会社が、別の3次・4次の下に入ったとき、会社自体が、「なんとか班」と呼ばれたりします。
結構、複雑です。東電の現地採用の人、元請けの現地採用の人、さらに下請けの会社の人。みんな学校の同級生なのです。地元の人で、顔見知りなのです。
そういう関係で、仕事を回し合うのです。上になったり下になったり、仕事がなかったら回してという具合に。だから、複雑になるわけです。

――下請けが3次4次5次と行くと、抜かれ方も酷いのでは


建設労働はみんなそうなんですけど、原発労働はそれ以上。
例えば、東電が「1人、1日、10万」で出したら、末端では1万5千円になるっていうぐらいの計算ですね。

――親方というのは待遇が違う


それは「抜ける」ということです。親方になったら。
だから僕は親方になるのがいやなのです。
私の友人は、僕よりつらい仕事をやっても、日給8千円。正式には3次かも知れないけど、実質的には5次みたいな会社だったようです。

――大西さんはいくら


9千円〜1万円ですね。正規に3次でそうなります。
1次・2次がボコッと抜いているし、自分の親方もとっていますから。

――そのことをめぐるいざこざは


ありますよ。あっちこっちで。刺したり、刺されたり。「危険なことだけやらせやがって」と。

――労働基準法に照らしてどうですか


一番最初の段階からダメですね。労働契約書は交わさないですから。
だから、賃金を払う段になって、何とかを引いて、何とかを引いてと。そうなると、「おい、それは聞いてないよ」ということが起こります。
例えば東電は、泊まる人には食費を支給しています。だけどその食費をなぜか引かれてしまっています。
東電は、メシと風呂と寝ることに関しては「なし」(=会社持ち)としています。さらに、早出で朝飯が食えないとか、夜遅く帰ってくるから晩飯が食えないというときは、「その飯代も支給しますよ」となっています。
だから東電から元請けに食費としてお金が入って、それが1次下請け・2次下請けにいくんですけど、その段階で何故か消えてるんですよね。
それから交通費も。湯本から往復で100キロです。ガソリン代で千円から2千円が一日で飛んでしまいます。 だけどその交通費が込みになっていたりします。
ひどい話ですけど、それは、そもそも労働契約書を交わしてない時点に問題があるわけです。(つづく)

6面

被ばく地・フクシマで出会った人びと(5)
福島との“絆”を強く 古河 潤一

2月27日朝6時すぎ。私はALS(筋萎縮性側索硬化症)を生きぬくNさんの介護を終えて、外に出たところで逮捕された。「免状不実記載・同行使」なるデッチあげである。
その後、別件で再逮捕・起訴され、3月24日、仲間の支援を受けて保釈となった。28日よりヘルパーの仕事にもどった。裁判闘争を全力でたたかう。ともに生き、ともに闘いましょう。

私はヘルパー。「障害者」「病者」「難病を生きる人々」を支援し、支えられて、いっしょに生きている。
この社会は「息もつけない」閉鎖社会である。巨大資本は生き残りのために世界をかけめぐり、資本同士が喰らいあい、国は自国資本の救済に汲汲としている。人が働き生きることは年々困難になっている。私は、ヘルパーになって「障害者」の方々にたいする人の差別、国の差別と抑圧の強さを感じた。私自身の中に彼らに対する「無知」「偏見」「差別」を感じた。恥じた。そして、彼らといっしょに居る場として一軒の「家」を借りた。「居ごこちのいい場所にして下さい」と「うつ」の方。
いらい3年半、その「家」に「障害者」、ヘルパー、「病者」、「難病」の方々が集まり、わじゃわじゃと語らいあった。他県のヘルパー、在日朝鮮人の方々、日雇い労働者、失業青年もやって来た。皆で、まるく座り話す。「私は精神病院閉鎖病棟から3回脱出、死ぬのが目的だった」と女性。「俺は、電気ショック連続8発うけた」と男性。女性「あの介護現場はつらい、気持ちがうつうつ。ヘルパーやめたい」、「一旦、逃げてもいいんだ」と「筋ジストロフィ」の男性。母子家庭の母親が大学に合格、皆が拍手。同僚ヘルパーの結婚を皆が祝福、「快挙だ」。一緒に食べ飲み笑う。
その「家」が、「免状不実記載」の口実となったのだ。

福島 うたの旅
2月20日から23日までの〈福島 うたの旅〉は大成功。趙博さん、ハルマ・ゲンさん、青年、私。全行程2600q。
20日、9時定刻、三里塚着。「せっかくだから」と市東孝雄さん宅をお訪ねしたが、お留守。開拓道路、畑、作業場をまわり、封鎖された団結道路へ。わきの監視やぐらに登る。眼下に、第三誘導路の工事が進み、トンネル本体コンクリート打設中。誘導路ができれば、市東さんの家と生活、営農は空港の中に封じこめられる。「あまりにむごい」とゲンさん、青年がうめく。「また三里塚に来よう」。
萩原さん宅で野菜を受けとる。野菜の端境期。だが、反対同盟渾身の野菜は1月を倍する量。なんとか車におしこみ、ゲンさんが体をねじこむ。「道中、食べなさい」静江さんからお菓子、飲物。車は常磐道を福島へ。山に残雪。晴。

混声合唱団
21日、昨日夕刻合流した趙博さんをまじえ、田村市3カ所の仮設住宅に野菜を届けてライブ。2カ所目、集会場に60人余の被災者。趙博さんが歌い、ゲンさんがピアノ、アコーディオン。歌は過激で、おかしくうれしく「生きよう」。聞いて高笑いの婦人たち。涙をぬぐう男性。次に、3・11以来はじめて歌う地元混声合唱団。10人だがみごとなコーラス。かけつけた音楽教師がピアノ伴奏。『ずいずいずっころばし』目を丸くしてゲンさん「こんなハーモニー、あるんだ」。最後に、観客、合唱団、歌手、楽士が声を合わせて、『北国の春』『ふるさと』『母さんの歌』を熱唱。皆が笑顔。皆が皆に拍手。昨年9月の約束は実現された。
三カ所目の小規模仮設は二度目の訪問。野菜の分配。大阪から持ちこんだ道具、材料でたこ焼。教える趙博さん。群らがる子どもたち。少年はゲンさんからアコーディオンを習う。里いも、おしたし。あの「カボチャケーキ」、そしてライブ。
22日、南相馬市の仮設で、野菜つきライブ。皆が大笑い、拍手、かっさい。皆で声を合わせて歌う。浜通りパワー全開。いじられて趙さん「次回は『相馬盆唄』歌います」。終わって発進する車に婦人たちがかけより「ありがとう、これ、持って行きな」。助手席は、お菓子、ジュース、「カボチャケーキ」、おこわ、つけものでうまる。「ありがとう。また来ます」。

飯舘村の牛舎
23日、青年とふたりで飯舘村にTさん夫妻を訪ねた。みやげは野菜と「カボチャケーキ」、きのこおこわ。大きな作業場でブリキストーブにあたりながら、お話をうかがう。
Tさん「25歳のころ、国の食糧増産政策で、小山ひとつ切り拓いて、1町歩の水田をつくった。まもなく国から、「減反しろ」。福島で、飯舘で減反量が決められた。畜産・酪農に転換した家も多い。オレは人手がたりなくて、機械をいれた。また機械。古い機械は下取りに。毎年、機械に200万円つぎこんだ」。「機械が好きなんです」と笑う連れ合い。Tさん「牛舎、作業場、機械がそろった。その時、原発がふっとんだんだ」
牛舎で連れ合いが、「子牛、可愛かったよ。甘えん坊で。わらで体をこすってやって。このバケツに乳をいれて飲ませるの」。大きなゴムの乳首。「ください」と言うと「持って帰りなさい。みやげ。もう使うこともないから」。わらの上にすわる。気持ちがおちつく。牛のにおい。

再逮捕
3月7日、勾留理由開示公判。8日午後、釈放。留置場を出たところで再逮捕。「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」容疑。私が福島支援などで使っている「車」について虚偽の登録申請をしたというデッチあげである。18日、起訴。24日、保釈。
私はこの「車」で、昨年5月9日から1カ月、福島、宮城でボランティア活動に奔走していた。その車で、昨年9月上旬、5日間。今年1月、2日間。昨年は他の車で10月末、1日、12月下旬、2日間。そのすべての福島訪問で仲間と私は、三里塚の新鮮安全な野菜とたのしい歌、「ともに生きよう」というメッセージを届けてきた。
そして、「毎月、福島に行こう」「福島の子どもたちを春休み、大阪に呼ぼう」と仲間とともに計画していた矢先の逮捕・再逮捕・勾留である。

強い絆
いま、3・11から1年。全国で反原発・福島支援の大きな運動がまき起こっている。福島の女性の「子ども・生命・未来」のためのたたかいは、その核心である。現地と関西に強い「絆」が民衆自身の手によって結ばれている。結合は双方の力で日々強くなっている。

尼崎市議会が労働福祉会館廃止を可決

3月23日の尼崎市議会は、13年3月末で労働福祉会館を廃止する条例案を27対12で可決した。増加する非正規雇用労働者や尼崎在住の離島出身者などの交流・懇親の場として労働福祉会館の必要性は高まっている。ところが尼崎市議会は、存続を求める市民の声を踏みにじって、廃止を決めた。「市民派」を標榜する稲村・尼崎市長は、「情報公開」「市民との対話」をかかげながら、一度も説明会に出てこなかった。(尼崎 K)

第三期沖縄意見広告運動を成功させよう

「復帰」40周年の今年、3回目となる「沖縄意見広告」が呼びかけられている。3月19日の関西よびかけ人会議には発起人の参院議員・山内徳信さん、武建一さん、安次富浩さんなど30人が参加。
発起人から、9割以上が反基地で固まっている沖縄を切り崩して、6月県議選で基地容認派を増やすため、関係閣僚が『沖縄詣で』をくり返していることが報告された。これを受けて参加者から、それぞれの持ち場で意見広告運動を広げていこうとの発言があった。
4月13日、沖縄から元宜野湾市長・伊波洋一さんを招いて集会がおこなわれる(下記参照)。
個人賛同1万口、団体賛同1千口を達成し、5月13日の意見広告掲載を実現しよう。本土における大衆的な沖縄闘争陣形を作りだしていこう。