未来・第90号


            未来第90号目次(2011年10月4日発行)

 1面  橋下(大阪府知事)の暴走ゆるすな
     教育に強制はいらない
     君が代条例反対 全国集会 9/24大阪

     「教育基本条例」「職員基本条例」を通すな
     府議会に怒りの包囲デモ

 2面  シリーズ 原発労働者は訴える 第1回
     俺たちは使い捨てにされる

 3面  三里塚・沖縄・福島の怒りをひとつに
     9・18 三里塚関西集会

     大阪湾の軍港化反対
     自衛隊の海上展示訓練を弾劾しデモ

     投稿 経産省敷地内に 昼夜の座り込み

 4面  私たちの仲間に手を出すな
     差別・排外主義にNo! 9・23行動

     5・27国労臨大闘争 弾圧裁判 控訴審
     控訴棄却の反動判決 東京高裁

     暴処法弾圧裁判で控訴棄却
     警察の組合弾圧を追認 大阪高裁

     投稿 「障害者自立支援法」撤廃
     人間らしく生きられる新制度をもとめる集い

     陸自を南スーダンに派兵 調査団が出発

     在特会らの排外主義扇動は認めない
     門真市(大阪府)当局が答弁

 5面  非正規雇用が社会を崩壊させる
     2011年版 労働経済白書を読む 森川数馬

 6面  「さようなら原発」6万人が参加
     9・19 東京・明治公園

     3・11後の闘いの武器に
     『展望』9号発刊にあたって

       

橋下(大阪府知事)の暴走ゆるすな
教育に強制はいらない 君が代条例反対 全国集会
9/24 大阪

9月24日、大阪府大東市のサーティホールで、〈「君が代」強制大阪府条例はいらん! 全国集会〉が開催され762人が参加した。主催は、「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪・全国集会実行委員会。
橋下大阪府知事と大阪維新の会は、6月3日に府議会で「君が代」起立強制条例案を強行可決したあと今度は、「大阪府教育基本条例」「大阪府職員基本条例」という、2つの反動条例を成立させようとしている。
この集会は、2つの条例案、とりわけ「大阪府教育基本条例案」の違憲性・違法性・危険性を明らかにし、橋下知事への怒りを全体で共有し、これからのたたかいへの決意と、ともに連帯を深めていくことを誓う集会となった。

橋下の教育破壊をゆるさない(9月24日)

在特会や右翼が妨害
この日、最寄り駅には60人の在特会がたむろし、別の旧来の右翼が街宣車12台で会場周辺を走りまわり妨害したが、会場は集会関係者が固く防衛し、集会は成功した。

軍隊的官僚統制
開会あいさつと基調報告を、ホットライン大阪・事務局代表の黒田伊彦さんがおこなった。2条例案は憲法違反。橋下が言うマネジメントの徹底とは、上意下達の軍隊的統制。絶対服従、抗命は認めないというもの。教育に市場原理を導入し、人間を手段や資源とみなし、企業利益に奉仕させようとするものだと批判した。

教育破壊の極み
高橋哲哉さん(東京大学教授)が「『日の丸・君が代』強制条例と『教育基本条例』の思想」と題して講演した。
この教育基本条例案は、「教員は、いかなる会議においても、いかなる場所においても、いかなる意思決定もしてはいけない」という。教員だけではない。保護者には、学校教育への貢献が義務づけられ、学校に対して不当な態様で要求してはならないとしている。橋下知事は、「教育とは、2万パーセント強制である」と言っているが、教育とは、教員と生徒との人格の交流だ。ここまで自由を奪って、教育が成り立つのか。橋下知事は、「自分は民意をうけた知事。民主主儀とは独裁であり強制である」と言っているが、ヒットラーも民意を背に歓呼・喝采のなかで登場した。この条例案は、東京、北海道を上回る教育破壊の極みだ。

政治権力の介入
つづいて、大阪労働者弁護団事務局長・近藤厚志さんが発言。
この教育基本条例案は、憲法第19条(思想・良心の自由)に違反している。橋下知事は、政治の教育への介入をねらっている。しかし、(改悪された)現行の教育基本法でさえ、教育への介入は禁止している。かつて権力者は、自己の権力の保持のため天皇を利用してきた。「君が代」の本当の歴史を知らないでいる身近な人にも、歴史の真実を語っていこう。

国家体制とのたたかい
全国各地からの被処分者など7人が発言。「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会共同代表の永井英俊さんは「私たちは、『日の丸・君が代』強制に反対する全国的な集会をつくり上げてきた。大阪は、大変なことになっている。東京都知事の石原でさえやれなかったことを橋下知事はやっている。これは、国家体制とのたたかいであるということ。たたかうナショナルセンターをつくろう。」と訴えた。

「君が代」不起立と結合して
音楽&アピールをジョニーHこと疋田哲也さんがおこない、その後、野田正彰さん(関西学院大学教授)が「『ハシズム(橋下)』を批判する」と題する講演をおこなった。
保護者、大学生、労働組合、学校現場からの発言が続いた。
門真三中「君が代」処分・原告の川口精吾さんは「2008年卒業式での不起立に対して処分された。この不当処分撤回をもとめて、裁判闘争をやっている。ところが今、橋下・大阪維新の会は、教育委員会よりもはるかに右側から、教育支配を行おうとしてきている。私の裁判闘争も、ファシスト橋下とのたたかいとしてたたかっていきたい」と決意を表明した。

採決させるな
その後、会場から8人が発言し、最後にホットライン大阪・事務局より、次の行動提起がなされた。@「法案提出するな」の声をあげよう、A委員会審議の傍聴、B採決阻止、C地元の議員と対話を、D緊急署名の提出と議会請願、E法案可決阻止にむけて本集会実行委を継続する、Fリーフ、チラシを作り広げよう。
橋下は10月中に知事を辞任して、11月下旬におこなわれる大阪市長選への出馬をめざしている。ここが橋下・維新の会との決戦である。「橋下の暴走をゆるすな」といううねりを巻き起こそう。

「教育基本条例」「職員基本条例」を通すな
府議会に怒りの包囲デモ

9月20日、大阪府議会開会日の夕方に、〈「君が代」条例撤廃!「教育基本条例」「職員基本条例」を許すな! 府庁包囲行動〉がおこなわれた。主催は「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪・全国集会実行委員会。会場となった大阪城公園・教育塔前ひろばには200人が集まった。

「橋下の独裁政治をゆるさないぞ」 府庁を包囲するデモ(9月20日 大阪市内)

府議会初日の闘争
集会の基調報告を「日の丸・君が代」強制反対ホットライン大阪・事務局が提起した。
府議会開会日の本日に集会とデモを企画したこと、さらに集会前に府議会各会派をまわって「教育基本条例案、職員基本条例案」への提案に反対する行動をおこなったことを報告、さらに「日の丸」の常時掲揚や6月の起立強制条例、今回提案予定の2条例案に対する批判をおこなった。
続いて「日の丸・君が代強制処分条例に反対する弁護士の会」から児玉憲夫弁護士(元大阪弁護士会会長)が「教育が大きな危険にさらされている」と危機感を表明、この間の最高裁判決を批判しつつ、その判決にそくしても今回提案予定の2条例案には多くの問題があると訴えた。
さらに、集会前におこなわれた府議会各会派回りの報告を、ホットライン大阪・事務局代表の黒田伊彦さんがおこなった。

緊急署名と請願行動
「大阪維新の会」の議員は、事前に連絡していないという理由で出てこず、かわりに議会事務局職員に対応させた。民主・公明・共産各会派に申し入れをおこなったこと、大阪維新の会は2条例案を10月の採決では強行しないと言っているが、来年4月実施は公言している。9月24日の全国集会は闘争の始まり、「緊急署名と請願行動」の組織化を、と報告した。
続く発言は、大阪全労協、関西共同行動、大阪教育合同、なかまユニオン、阪学労、大阪高教組有志、東京からかけつけた根津公子さん、門真三中への「君が代」処分をただす会・原告当該の川口精吾さん。
府庁にむけシュプレヒコールをたたきつけ、府庁を包囲するデモに出発した。

2面

シリーズ 原発労働者は訴える 第1回
俺たちは使い捨てにされる

本紙編集部は9月上旬、南相馬市在住の元原発労働者・遠藤俊一さん(仮名、41歳)にインタビューをおこなった。遠藤さんは福島第一原発事故の1年前まで、約15年間にわたって福島を中心に全国の原子力発電所の作業に従事してきた。
遠藤さんは、原発内の過酷な作業と被ばく労働の実態、下請けいじめと労災隠しが常態化する現状、そして今回の事故原因にもかかわる欠陥隠蔽と報告書改竄という事実を、赤裸々に語ってくれた。その話からは、「俺たちは使い捨てにされている」という深い憤りと、同じ働く仲間を思う気持ちが伝わってくる。
インタビューの後半には、津波と放射能の被害で苦しむ南相馬市の復興への思いにも話は及んだ。被ばく労働の生々しい実態と、そこで働く労働者の思いを4回にわたって連載する。



「線量部隊」

――原発ではどういう仕事を


被爆労働の実態を語る遠藤さん(9月上旬 南相馬市内)

仕事は、検査業務、機械のメンテナンス、あとは計装配管(原子炉内の温度や圧力の測定や制御にかんする配管)。
検査業務は、非破壊検査というヤツ。レントゲンや超音波で、配管の溶接部の亀裂を見つける検査。定期検査のときの仕事で、放射線量の高い場所ばっかりだった。
原子炉から直接出ている配管がある。その配管と原子炉の付け根は線量が高い。配管の根元は、一応、遮蔽体があって、ある程度線量は落ちるけど、検査するときは遮蔽体を開けなければならない。開けると、原子炉の鉄板が直接見える状態で、結構線量が高い。
それと、復水器系。これも原子炉系の蒸気が通っているので、すごい線量の高いところ。
俺たち作業員の間では、高線量地域に行く人間のことを、「線量部隊」といっていた。
シュラウド〔左上図参照〕とか、本当の中枢の原子炉メーカーはIHI(石川島播磨重工)。IHIの仕事をする人間は、結構線量の高いところに行く。
検査業務も、そう。一日の線量当量が0・8_シーベルト。一番高いレベルのアラームメーターを持って作業に行くけど、15秒で終わったことがある。

――15秒で何ができる?


PT検査(染色浸透探傷検査)というのがある。溶接してある場所に、浸透液という赤い液体を塗る。傷があったら、10分ぐらいで傷の中に液が浸透していく。現像液という白い粉のスプレーを吹きかけると、傷の中に染み込んだ浸透液が粉に染み出してきて、傷があると赤く見える。
線量の低い場所に待機していて、そこから線量の高い現場にサッと行って、サッと帰る。
突起物があっちこっちに出ているし、配管も走っているし、潜り込んで行くという感じ。だから、行き帰りの時間も計算すると、現場に行ってできる作業は、ウェスでスーッと拭いて終わりみたいな。本当に3、4秒かな。
遠くからストップウォッチを持っていて、「時間だよ」と叫ぶ。そうすると、仕事が途中だろうが何であろうが出てきて、「ここまでしかできなかった」と。そしてまた違う人が行く。で1回行った人はそれで終わり。

原子炉の雑巾がけ

シュラウドの交換という作業がある。古いシュラウドは、相当の線量がある。いくら水を抜いて除染をしたといっても。
その除染をやるのは、初めて見る人ばっかり。ヤクザに連れてこられたとか、そういう人たち。金がいいからというのもいるだろうし。それである程度、線量を下げて、それでもまだ高いんだけど、それから技術者が入っていく。

――遠藤さんは、技術者の方になる?


そう。俺らの前の人たちがいるわけ。要は掃除機だ。ウェスを持って、洗浄液を持って。
まずは放射線管理員というのが測りに行くけど。「そこら辺、放射線高いから、あの辺を重点的に拭いて」とか。
要は雑巾がけ。非常に原始的な作業。手作業に頼らないとできない。
シュラウドに限って言えば、ものすごい線量を浴びてしまうんで、そんなに長い時間はいられない。
年間線量当量というのも決まっていて、年間50_まで、5年間の積算で100_まで〔〕。たぶんあまり長くない時間で50_近くはいくと思う。

3・11直後の3月15日、厚労省は省令を改悪し、今回の福島第一原発事故に対応する作業に限り250_シーベルトまで浴びてよいとした。期間は問わない。しかも、250_シーベルトを浴びて、福島第一原発から離れた人が、他の原発で作業に従事する際は、福島第一原発で浴びた線量は無視され、年間50_、5年間で100_を適用して、ゼロから計算する〕

――作業の環境は


作業はすごくしづらい。フル装備なんで。冬場でも、例えば一番暑かったのはケーブル処理室というのがあって、そこに電気が通っていると、発熱するわけ。真冬、外がマイナスという気温でも、中が40何度ある。これは体調を崩す。
逆に寒いぐらいのときもある。運転が止まっているときは、電気がほとんど通っていないので、すごく寒い。

――外国人がいるという話が…


いるね。ダイバーもいた。原子炉には、水が張ってある。あの中に潜っていく。その人がその後どうなったかまでは知らないけど、俺的には自殺行為だね。日本人は法律上やれない。だから、どこの原発でも、定期的にそういう外国人が入っているはず。

「気をつけなさい」と言われても

――被ばく量はどのように計算しているのか


基本的にガラスバッジ(特殊なガラス素材を使用した線量計。個人が受けた積算の放射線量を計る)で、1カ月つけて。
あとはアラームメーター。1日の線量当量を設定しておいて、超えるとアラームが鳴る。あと9時間半を超えるとアラームが鳴る。自分でも液晶で見られるので、たまに見ながら。
1年でどれくらいとかは、あんまりに気にしていない。今日1日でどれくらい浴びたかという線量が頭に入っていれば、なんとなく分かる。

――放射線防護は、厳しくやっていた?


厳しい。C区域に立ち入った場合、境界線を超えて、B区域に手を出すこともできない。境界線上で物を受け取るときに、ハイってわたすことはできても、境界線の外にいる人に触ることはできない。それくらい厳格にやっていた。
基本的に、全部、着替えて入る。自分の持ち物はパンツだけ。長袖と長ズボンの肌着みたいなのがあって、その上に管理区域用のツナギを着る。
管理区域には、B区域、C区域、D区域というのがある。
作業が終わったら、チェンジングプレイスという着替え場所に入る。ここまでがC区域で、ここからがB区域というところ。C区域の中で着ていたものは全部脱ぐ。
脱ぎ方もある。ゴム手袋も2枚していて、まず1枚目を取りなさい。次に汚染していないゴム手袋で服を脱ぎなさい。普通なら、袖がめくれないように脱ぐけど、そうじゃなくて、必ず裏返しにしながら、内側に汚染を巻き込んでいくように脱ぎなさいと。
内部被ばくもあるが、身体汚染を避けるためということがある。汚染物質は、ものすごく粒子が細かいので、服を着ていても、こすりつけたりしたら、そこに汚染物質がつく。水に流せば落ちると思うかも知れないけど、そうではない。
ひどいのになると、洗剤をつけてタワシで、ガサガサ、ガサガサと擦って、また測ってもらって、まだ落ちてないと、またやって。本当に真っ赤っかに腫れ上がるぐらい擦らないと落ちない場合もある。

――汚染水を浴びることは


水というのは、埃よりも、もっと厳しく管理していて、水に触るのは本当にタブー。
現場の中で水に触る作業というのは、きれいな水を使う配管の耐圧試験。その水は水道水だから触っても大丈夫。
だけど、その水がこぼれたとか、下で作業している人にかぶってしまったとか、これはもう大騒ぎ。「それは耐圧用の水だから大丈夫だよ」といっても、必ず放射線管理員が何人も来て、「どこの水か、本当にこの水か」って測っていた。

――健康診断は


電離検診〔〕と一般検診。あまり気にしてなかったからどうだったか。検査の内容は、採血して血液検査、あと胸部レントゲン、心電図、あと尿検査ぐらい。
これとは別に、ホールボディーカウンターは3カ月に1回。電離則(電離放射線障害防止規則)で決まっている。

電離放射線健康診断:管理区域に入る労働者に、6カ月ごとに実施を定められた健康診断。被ばく歴の有無の検査、白血球数及び白血球百分率の検査、赤血球数及び血色素量又はヘマトクリット値の検査、白内障に関する目の検査、皮膚(爪を含む)の検査〕

――産業医は


たとえば、「君、どういう仕事してんだ?」って聞かれて、「ドライウエル(格納容器本体)の中に入って、線量が高いところ」みたいな話をすると、「じゃ、なるべく線量の低いところにね。そっちにいって働くように会社に言っとくから」。一応、産業医から報告書みたいのが提出される。
また、血圧があんまり高い人の場合、C区域で倒れると、着替えとか、汚染を検査しないと外に出せないから、そうやっている間に、あんまり重症だと、死んじゃう。だから、体の調子が悪い人はC区域には入れないで、サポートに回ることがある。
一旦、C区域の中に入ってしまうと、ドライバー1本取りに行くだけでも、いちいち着替えないとならない。だから外に一人置いておく。調子の悪い人には、「そっち回れ」って、みんなで工夫してやっていた。

〔次号につづく〕

3面

三里塚・沖縄・福島の怒りをひとつに
9・18 三里塚関西集会

9月18日、三里塚関西集会が大阪市立中央会館でおこなわれた。主催は三里塚芝山連合空港反対同盟と三里塚決戦勝利関西実行委員会(関実)。130人が参加して、10・9三里塚全国集会の成功に向けて奮起することを確認した。
開会にさきだって、5月20日の東京高裁で50人を不当逮捕した大弾圧、8月6日の天神峰現闘本部に対する破壊攻撃にかんするTVニュースや反対同盟が作成した映像や写真などが上映された。
集会ではまず、関実代表世話人の永井満さんが主催者を代表してあいさつ。永井さんは、東北の震災と原発事故、原発反対の闘いを取り組むことを述べ、市東さんの農地を全力で守りぬくことと、三里塚のたたかいを全国の人々に知らせていくことの重要性を訴えた。
つづいて部落解放同盟全国連合会から中央執行委員の木邨秀幸さんが連帯のあいさつをおこなった。木邨さんは、市東さんはじめとする三里塚農民の生活と権利を守る決意をあきらかにした。そして狭山第3次再審闘争をめぐる状況を報告し、10・31狭山闘争への決起を訴えた。

沖縄、福島から報告
沖縄から参加した「市東さんの農地を守る沖縄の会」の金治明さんは、反対同盟が昨年の4・25県民大会に参加したことをきっかけにして、今年は6月22日に那覇市内で反対同盟とともに三里塚沖縄集会を開催し、翌23日の国際反戦沖縄集会では三里塚反対同盟が登壇して発言をおこない、ついに沖縄で「三里塚のように闘おう」という動きがはじまったことが報告された。そして福島、沖縄、三里塚の怒りを一つに結んで闘おうと訴えた。
6月沖縄闘争の報告、東日本大震災被災地支援活動の報告に続き、反対同盟事務局次長の萩原進さんが登壇。三里塚現地からの報告と決意を語った〔要旨別掲〕。

意識を変えよう
萩原さんは「3・11で全てが変わった、われわれも意識を変えよう」「点が線につながっていくようなたたかいをつくろう、いまがそのチャンスだ」と訴えた。そして市東さんの農地にたいする強奪攻撃にたいして「くるなら来いというわれわれ自身の態勢をつくろう」と提起した。
萩原さんの熱烈な提起をうけ、高槻医療福祉労働組合、風を起こす女の会、関西合同労働組合から決意表明がおこなわれた。
最後に関実世話人の山本善偉さんが、「91歳になるが、命あるかぎり、後顧の憂いなくたたかいいをやりぬきたい」と決意を明らかして、集会をしめくくった。関実事務局次長の安藤眞一さんの音頭で「団結頑張ろう」をおこない、大阪市内デモに出発した。

世論を喚起するたたかいを
萩原進さん 講演要旨

人類は自然に対して調和していくのではなく、これに挑戦し破壊してきた結果が、自然から反逆されているのではないか。それが「3・11」という東北における大災害という形で、はっきりとわれわれに突きつけられたと思う。これによって政治や経済、あるいは社会や人間の生き様そのものが一変したのではないか。生きるということをもう一度、とらえ返す本当に重要な時期ではないか。
空港だとか基地だとか、あるいは原発だとか、「国家のため」「国民のため」であり、「国策だ」と言われてきたものが、本当は何であったのかをとらえ返す必要がある。

たたかいの「架け橋」
国家が三里塚でやっていることは、沖縄でやっていることとその姿は同じである。だからこそたたかう側が、絆を固めていきたい。
そのために三里塚は沖縄に行ってたたかう。その間に関西のたたかいがある。関西のたたかいが沖縄と三里塚のたたかいの「架け橋」となった。これは非常に必要なものである。これを全国に広げて、四国、九州を結び、点が線となる緊密な関係をこれから本当に作っていこう。
現闘本部の破壊と同じように農地法裁判では地裁の判決において仮執行宣言をつけろというのが空港会社の言い分だ。地裁の判決がでたとたんに畑を更地にするというものである。
そのために強行に結審しようとして、反対同盟が出した20数人の証人申請に対して、市東さんと私だけしか認めなかった。先日の裁判で、それについてやりあって、あと2回実質審理をおこなわせ、それから証人調べに入るというところまで押し返した。
公判闘争とともに世論を喚起するたたかいが必要だ。「来るなら来てみろ」という
講演する萩原進さん
(9月18日 大阪市内)
われわれの態勢をつくる必要がある。
反対同盟のイベントや集会で、福島の人たちに三里塚の現地に来てもらい、子どもたちに裸足で、土をかきわけて芋を掘ってもらう。そういうことも追求していきたい。
広範な人たちを巻き込んで闘いぬいていきたい。10月9日は、現地でお待ちしています。


大阪湾の軍港化反対
自衛隊の海上展示訓練を弾劾しデモ

大阪港の軍事利用をゆるすな(9月22日 大阪市内)

9月24〜25日、海上自衛隊呉地方隊が大阪湾全域を使い、海上展示訓練をおこなった。大阪港(天保山)では23日から護衛艦「せとゆき」、「とね」、掃海艇「つきしま」が一般公開された。
展示訓練とは、一般公募した市民に艦艇を公開、体験航海等を通じて自衛隊の活動を身近に体感させるというもの。午前11時に出航し午後6時に帰港。その間観閲式、編隊飛行、掃海展示、飛行艇着水、護衛艦空砲射撃、艦隊航行、機動飛行等を実施した。
4年ぶりにおこなわれた大阪湾での展示訓練は、大阪(天保山)、神戸(新港及び阪神基地)、淡路島(津名)、和歌山の5カ所から乗艦し、湾内全域に及ぶ大規模なもの。参加した艦艇も護衛艦、掃海艇、潜水艦など13隻に警戒艦数隻。そのなかでも1万3500d型の大型護衛艦「いせ」は、ヘリ11機を搭載できる軽空母である。
東日本大震災と災害出動のため中止も検討された訓練だが、災害派遣への支持・共感をてこに、自衛隊への「国民的合意」を取り付けようと実施された。中期防衛力整備計画で明示された対中国軍事態勢強化、その柱としてのシーレーン防衛体制強化の狙いを示している。
この海上展示訓練に抗議する集会・デモが22日午後6時半からおこなわれた。南大阪平和人権連帯会議主催の闘争には、大阪市従業員労働組合港湾支部青年部など約300人が集まり、南大阪の労働運動が守り抜いてきた「大阪港の軍事利用反対」の声をあげた。

投稿 経産省敷地内に 昼夜の座り込み

私達「9条改憲阻止の会」は、9月11日、「再稼働反対・脱原発!全国アクション 経産省を人間の鎖で囲もう!」共催団体の一角として、東電本社への抗議を含めたデモを実行し、経産省を1800人の仲間が「人間の鎖」で取り囲み、休止中の原発運転再開阻止の意志を伝えた。
「人間の鎖」が終わりに近づいた時に「9条改憲阻止の会」が、経産省の正門近く、北の敷地に座り込み用のテントを張った。あっという間の7分でテントは完成し、横断幕とのぼり旗でテントが飾られ、反原発の主張が鮮明になった。
公安警察のコンビが現れ、「テントを撤去するように」と語尾が鮮明でない言葉で話しかけてきた。私達は「テントは公道(歩道も含む)ではなく、柵の外ではあるが経産省の敷地の一部であるので、警察の権限外の場所である」事を伝え、「経産省からの依頼でもあるのなら委任状の類を見せて欲しい」と言った。コンビは「命令とかではなく、お願いです。テントを撤去してください」と言う。
翌12日公安警察、警備警察が大挙してテントに迫った。テントで夜を明かした5人を中心にした「9条改憲阻止の会」のメンバーはテントの前にパイプ椅子を並べて座っていた。早朝に駆けつけたメンバーや「人間の鎖」行動をした若い活動家もいた。白い指揮棒を手にした警備警察の責任者らしき人物が夜明かし組の年長者に「テントを撤去するように」要求している。当然、その年長者が承諾するわけはない。若い活動家が何かを口走った。その若い活動家の近くにいた比較的若い公安警察が飛んできて掴みかからんばかり勢いで顔を寄せ若者が座っているパイプ椅子を蹴った。「9条改憲阻止の会」のメンバーは総立ちになり、その行為に抗議した。椅子を蹴られた若者は寸毫の動揺も見せない。公安の恫喝は何の役にもたっていない。むしろ周囲の怒りを増幅しただけに終わった。
警備○○長が夜明かし組の年長者に話しかけた。「私達はいつでも行動することが出来る。あなたが承知してくれないなら、そうなった場合、あなたに責任を取ってもらうことになるでしょう。あなたとは長い付き合いになりそうですね」。言葉は柔らかいが『私はいつでもテントを実力撤収出来るし、あなたを拘束出来る。貴方を長期間に渡り、留置所に拘束すること』になりそうだという。こういう事態は望まぬが、支援体制には万全を期す必要がある。座り込みテントは当面継続される。(東京 T)

経産省前でつづけられる座り込み(9月25日)

4面

私たちの仲間に手を出すな
差別・排外主義にNo! 9・23行動

ビラを見た市民のとび入り参加も(9月23日)

23日、東京・新宿で「生きる権利に国境はない! 私たちの仲間に手を出すな! 差別・排外主義にNO!9・23行動」が実行委員会の主催で開かれた。個人107人・団体28の賛同が寄せられ、現場には150人が参加した。
実行委から「排外主義に対して声をあげ始めてから1年半、差別の対象となる人々の立場を尊重しつつ連帯を模索しながら様々な活動を行ってきた。排外主義勢力との物理的対決だけでなく、排外主義が発生するような土壌を変えていく流れを本日を土台にしてつくっていこう」と挨拶があった。
参加団体からの発言では、それぞれのこの間の活動報告とともに、攻撃対象が在日外国人だけでなく野宿者や反天皇制勢力・反原発勢力などにまで広がっていることなどが語られ、直接的な暴力のみならず、目立ってきた警察権力と意を通じた動きに警戒が促された。
集会後のデモは韓国料理店が多く集まる通りをゴールにするコースだった。数日前に商店を回って挨拶をしておいたせいか、共感を寄せる沿道の人々の動きが幾つも見られた。
また、デモの途中で警察が挑発をくり返し、一名が不当にも逮捕された。不当逮捕された仲間をとりもどそう。

5・27国労臨大闘争 弾圧裁判 控訴審
控訴棄却の反動判決 東京高裁

9月6日、東京高裁・村瀬裁判長は、5・27国労臨時大会闘争弾圧裁判・被告松アさんの控訴を棄却する不当判決を下した。今回の高裁判決は、松アさんらの行為が正当な組合活動であるとする控訴理由になんら具体的に答えることなく、一審判決をなぞって控訴を棄却した、政治的な反動判決である。
一審では、「中核派による組織的犯行・共謀」ではないことを認めさせ、暴処法(暴力行為等処罰に関する法律)の適用を粉砕した。しかし、ホテル前で国労本部派組合員に対してのビラまき・説得活動をおこなった被告らの行為を暴行罪として有罪(罰金刑)とした。
控訴審では、労働運動に国家権力が介入することは憲法28条「勤労者の団結権・団体交渉権その他団体行動権」の侵害であること、また、ホテル前でのビラまき、説得活動に対して、本部派組合員が3列縦隊でぶつかってくるなかで起きた「もみ合い」であり一方の側だけを問題にすることは間違いであり、「暴行」とよべる行為はおこなっていない、これらのことを4回に及ぶ公判のなかで具体的にあきらかにした。
松アさんは、判決に対して「はらわたが煮えかえる。国家的不当労働行為を不問にするものだ。あらためて国鉄闘争とはなんであったのか、その意義をあきらかにして大衆の中に入っていく。また、国労本部が国鉄闘争を終結するなかで、私はJRへの雇用をめざして闘っていく」と決意を述べた。
佐藤弁護団長は、「結論ありきの判決だ。労働運動への無理解、労働組合活動を否定している。今の日本労働運動の弱さが判決にあらわれている。現実の労働運動を発展させていく必要がある。その下で裁判長の意識を変えていく。」と述べた。
裁判終了後に開かれた「許さない会」の報告集会では、「我々は、このような判決を決して許さず、上告審での逆転無罪をめざすとともに、真に労働者や多くの民衆の生活と権利を守る労働運動の再生のために闘い続けること」を全体で確認した。
引き続き、「5・27国労臨大闘争」弾圧裁判への支援をお願いする。
(国労組合員 T)

暴処法弾圧裁判で控訴棄却
警察の組合弾圧を追認 大阪高裁

組合の労働相談の電話の会話を「脅迫」として、昨年5月に大阪府警がでっち上げた暴処法(暴力行為等処罰に関する法律)弾圧の裁判で、9月20日、大阪高裁第3刑事部は控訴棄却の不当判決を下した。一審の大阪地裁は、公安警察の言いなりの有罪判決を出していた。
この日、大阪高裁1002号法廷には関西合同労組の組合員や支援者たちが詰めかけた。弁護側は控訴趣意書で一審判決について公訴権濫用の治安弾圧を追認するものであり、事実誤認、手続き違反、直接証拠なし、法令適用の誤りなど全面的に批判し、無罪を主張していた。
大阪高裁の松尾裁判長の棄却判決は、一審の不当判決をそのまま踏襲したものであり、傍聴席から弾劾の声があがった。弁護団は「(控訴審としての判断を放棄した)なさけない判決」(新井主任弁護人)ときびしく批判した。
判決文では、違法収集証拠であることが100パーセント明らかな「ヘルメットのアップ写真」について、その撮影について「疑問の余地がある」と述べながら、「全体としての撮影が違法性担保のための撮影と認められる」という論理ならぬ論理で居直った。
また弁護側は「同じ組合の組合員どうしの問題に暴処法を適用することは違法である」と主張してきた。これに対して判決は「暴処法第1条の解釈では、労働組合の構成員に対する関係で適用が制限されるものではない」というとんでもない解釈をおこない、控訴棄却を強行したのである。
この不当判決にたいして、被告のNさんと関西合同労組、弁護団は、労働組合にたいする不当な弾圧をはね返すために、上告してたたかうことを確認した。

投稿 「障害者自立支援法」撤廃
人間らしく生きられる新制度をもとめる集い

9月23日、兵庫県西宮市勤労会館で、標記の集会が行われ、85人が参加した。自立支援法ができた翌年から、毎年10月末の日比谷での大集会にむけて、関西の地で取り組まれてきた集会で、今年で6回目。
一昨年秋に自立支援法の撤廃の約束をかちとって以降、「障害者」自身を含む「障がい者制度改革推進会議」(以下、「推進会議」)で、自立支援法にかわる新たな「障害」福祉の制度について議論され、画期的とも言える内容の意見が提起されてきた。しかし、この間政府・厚労省は、「障害者」自身の声を反映したそれら意見や提言を骨抜きにしようとする動きを強めている。
今回の集会は、この「わかりにくい」構図を丁寧に説明して、政府・厚労省の“巻き返し”を跳ね返すために、改めて「障害者」を先頭とした大きな運動をつくりだしていこう、というものとしてもたれた。

総合福祉法が焦点
お話をされた〈怒っているぞ! 障害者きりすて 全国ネットワーク〉世話人の古賀さんは、この間の障害者制度改革の流れをていねいに追いながら、「総合福祉法」が現段階での焦点になっていることを説明した。
総合福祉法とは、自立支援法にかわってつくられる新法で、来年の通常国会での成立をめざしている。推進会議の下におかれた「総合福祉部会」で議論を進めてきたが、今年の2月と6月に厚労省から「コメント」が発表されている。そこでは、「障害者」が地域で生きるための介助について、「一人ひとりにヘルパーが常時付き添うとなれば、非常に多額の財源及び人材が必要となるため・・・」とか「(政府の進める)『地域主権改革』の流れに逆行する」といった理由で、否定的な見解が述べられている。
8月末に総合福祉法の骨格について、総合福祉部会から提言が出されているが、その内容は非常にいいもの。「障害」福祉予算の総額をOECD加盟国の平均以上をめざすとし、具体的な「障害」福祉の理念から施策まで詳細に述べている。しかし、この提言を受けて、実際の法案を作成するのは、前記「厚労省コメント」を書いたような厚労省の官僚である。運動の力がなければ、厚労省に押し返されてしまう。
そして結論として、今年の10月28日に呼びかけられている、日比谷での大フォーラムに1万5千をこえる結集をつくりだしていこう、怒りネットでは厚労省を追及する交渉を10月に設定しているので、ここにも参加をと呼びかけた。

ともに生きる社会を
古賀さんのお話を受けて、会場から多くの意見が出された。自立支援法のもとで、市でちゃんと話を聞いてもらえなかったという「身体障害」の女性。ヘルパーの中にも「精神障害」について理解のない人もいる、という「精神障害」の女性。なんで自分たちだけ、出歩く時間を制限されなければならないのか、という「視覚障害」の男性。ヘルパーが「障害者」と一緒になって要求していこうという男性ヘルパー。介護保険の問題も根は同じ、一緒に反対していこうという男性。
さまざまな現場の声を出し合い、「『障害者』が人間らしく生きられる」ために、ともにたたかっていくことを確認した集会だった。10月28日、日比谷野外音楽堂に集まろう。(YH)

陸自を南スーダンに派兵 調査団が出発

南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊参加をねらう野田政権は、派兵のための調査団を9月24日に出発させた。防衛省、外務省などの30人。10月初旬に帰国予定。その後、第2陣も派遣するとしている。
この動きは、民主党の前原政調会長が9月7日、米ワシントンで講演し、PKO5原則を見直すと明言したのと連動している。見直しとは、海外に派兵された自衛隊が、PKOで一緒に軍事行動する他国の軍隊が攻撃を受けた場合、自衛隊もそれに参戦できるようにするというもの。
自衛隊の海外派兵自体が憲法違反であるのに、海外で無制限の軍事行動に道をひらくものだ。

在特会らの排外主義扇動は認めない
門真市(大阪府)当局が答弁

ここ数年、在特会が民族差別を煽る街頭宣伝を各地でくり返し、市民団体の催しへの妨害行動も頻発している。この問題について9月27日、大阪府門真市議会の本会議で戸田ひさよし市議が市の対応をただした。
市民部長、総務部長は、以下のように答弁。
@外国籍住民への在特会らの行為は差別を助長し人権侵害しかねない行為と危惧する。成長過程にある青少年にも多大な影響を与える。
A人種、民族、門地、国籍などをとらえての差別行為は許されない。
B門真市で差別事件があれば、人権を守る立場から見解表明し、毅然たる対応をとる。
C在特会らが役所に押しかけ、業務妨害や不当要求行為があれば、厳しく対処する。
在特会の差別扇動にたいする地方自治体の見解表明は、全国で初めて。

5面

非正規雇用が社会を崩壊させる
2011年版 労働経済白書を読む 森川数馬

7月8日、厚生労働省は2011年版の労働経済白書(以下白書)を発表した。その論調は昨年の同白書(『未来』73号、に論評掲載)を基本的に継承している。構造改革路線に批判的な白書としては、これが最後になるであろう。

日本社会の基盤が崩壊
「戦後日本経済を振り返り、特にバルブ崩壊以降の労働問題」に切り込み、「世代ごとの雇用」状態を新たに分析することで、日本の新自由主義―構造改革路線が日本社会を基盤的に崩壊させている現実を浮き彫りにした。60年代前半生まれから80年代後半生まれまで、世代を5年ごとに輪切りにして分析し、そのことを明らかにしている。
まえがきで細川労働大臣は、「不安定就業の増加や人材育成機能の低下に対する反省」「賃金格差の拡大や平均賃金の低下」と述べ、その深刻さを正直に表白している。
この白書は、われわれにとって、労働組合運動の再生を練り直し、労働運動の課題を明確にするうえで重要な資料である。結論的にいえば、労働運動(組合)は自らの階級形成、階級的ヘゲモニーをもって、賃金収入によるほか生きられないすべての仲間たちの多様な団結形成に資する闘い方が課題として突きつけられている。そして雇用政策の抜本的改革(失業対策事業、最低賃金の大幅アップ、非正規雇用労働者の処遇改善・・・)を早急につくりだすことが求められている。そういう社会的ヘゲモニー(社会形成力)を、闘う労働運動が具体的にもつことが要請されているのではないか。
白書は例年のように三部構成。第一章「労働経済の推移と特徴」、第二章「経済社会の推移と世代ごとにみた働き方」、第三章「雇用管理の動向と勤労者生活」となっている。第一章では東日本大震災が雇用情勢に与える影響も分析し、雇用政策が急務であると訴えている。また、賃金、雇用情勢の推移、失業率の分析も重要である。今回は白書の中核をなす二章、三章の重要部分について以下解析する。

非正規率が史上最高
8月29日の厚労省発表によると、10年の非正規雇用労働者は、全労働者の38・7%となり、87年調査以来最高となった。11年春卒業した大学生の就職率は91・1%となり、前年に比べ0・7ポイント悪化。中学卒や高校卒は前年に比べ改善したが、大卒者の就職は依然として厳しい状況にある。「景気は持ち直しの途上」といいながら、「実際は就職率の伸びにつながっていない」と白書は指摘する。

賃金と生活が激変
消費者物価指数の上昇率は、90年代前半は年率で1・4%、90年代後半は0・3%となったのに対し、現金給与総額の上昇率は、それぞれ1・9%、0・1%となり、90年代後半に実質賃金の低下がみられるようになった。また賃金・物価上昇率の推移をみると、いずれも95年をさかいにマイナスに転じている。これが労働者の生活に急激な変化をもたらした。
「国民生活に関する世論調査」(内閣府)でも「生活全体への満足感は1990年代半ばから2000年代前半にかけて低下し、所得・収入や資産・貯蓄など生活の支えとなる資金面での満足感が低下している」(白書88ページ)。
これらの趨勢はそれ以後の「景気拡張」過程でも変化することなく、今日までつづいている。国税庁2010年民間給与実態統計調査(9月発表)によれば、10年には年収200万円以下の人が1045万人で、全体の22・9%(特に女性は42・7%)をしめている。03年以降、この比率はずっと20%を超えている。

出生数が減少
戦後第二次のベビーブーム(71〜74年)を経た後、出生数は減少し、特に70年代から80年代にかけて大きく減少し、その後少子化という事態に突入した。合計特殊出生率(年次の15〜49才までの女性年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生に産む子供の数に相当)は47年に4・54だったが、75年には1・91となり、それ以後は2を上回ることなく05年には1・26まで低下した。09年でも前年と同じ1・37だった。女性労働者の環境悪化(85年、男女雇用機会均等法の導入以後)と労働者の生活の激変がある。「晩婚化だけでなく非婚化も生じている可能性がある」(同98ページ)。

70年代以降生まれに非正規雇用率が激増
今回の白書は、60年代後半生まれ、70年代前半生まれというふうに世代を輪切りにして、雇用と生活を分析している。
年令別非正規雇用割合の推移を見ると、その割合は長期的に上昇している。特に15〜24歳層では90年代半ばから00年代半ばにかけて大きな上昇がつづいている。〔図1〕
同時出生集団ごとに非正規雇用割合を分析すると、男性では20歳台前半が継続的に上昇している。78年〜82年生まれの人は、20歳台前半の非正規雇用割合は、38%。20歳台後半になっても、20%が正規雇用に転換できていない。〔図2〕

若い世代の失業率が90年代以降急上昇
採用抑制でバブル崩壊に対応した企業動向により、それ以降就職期を迎えた20歳台の失業率は90年代で成人を迎えた世代、さらに00年代で成人を迎えた世代で急上昇した〔図3―1および図3―2〕。特に70年代後半生まれの世代で8%超と、大きく上昇している。この世代は年齢があがっても、5%近い高失業率にとどまっている〔図4〕

非正規雇用の常態化
70年代生まれ(いわゆる「ポスト団塊ジュニア」)の人たちは、高い失業率と非正規雇用比率のもとで職業生活をはじめた(就職氷河期)。その後失業率は改善したが、非正規雇用比率の低下は小さく、彼ら、彼女らは非正規雇用にとどまり、正規雇用への転化をはかれないでいる。20〜24歳時の非正規雇用比率は16・9%と高く、その後も不況や企業の新卒志向の根強さで、30〜34歳(09年時点)になっても13・3%とあまり下がっていない〔図4〕
そのなかで賃金も上昇カーブが低く、「ポスト団塊ジュニア」は他の世代に比べ賃金の伸びがおさえられている〔図5〕。年収200万円以下の状態のままなのである。
「大学を卒業して就職も進学もしない人」の割合は10年は24・2%になった。00年に32・4%と過去最高になった後は景気回復で就職する人が増え、就職・進学ともにしない人は減っていたが、09年以降は増加に転じ、10年は大きく増えている。

結婚できない―有配偶率24%(男性)
こういうなかで若者たちの非婚化がすすんでいる。前述した少子化の進行と非婚という社会の崩壊現象が引き起こされているのである。
25〜29歳の有配偶率は、05年に男性28・5%、女性35・8%だった。10年では、男性24・1%、女性31・2%である。4ポイントも落ちている。これは総務省の国勢調査結果。国勢調査の数字であることを考慮すると、本当の実態はさらに厳しい事態になっていることは間違いない。非正規雇用労働者では、その数字の半分以下と見るのが妥当。
家族をつくることができない、そのことによって次の世代を形成できない。そのような状態におちいりつつあるのだ。その中で、若者たちの生きるための「人間らしい労働」を求める必死の苦闘が続いている。
労働運動再生の課題は大きく、早急に求められている。

6面

「さようなら原発」 6万人が参加
9・19 東京・明治公園

人の波に埋め尽くされた明治公園(9月19日)

避難者にも賠償を、子どもたちを守れ(9月19日)

9月19日、東京で「さようなら原発」集会がひらかれた。大江健三郎さんなど9人の著名人がよびかけ、全国から6万人が参加した。
開会1時間前には、すでに会場の東京明治公園に入りきれない状態となり、公園周辺や、最寄駅「千駄ヶ谷」にも人があふれた。ある参加者は、「駅を降りてから、1メートル進むだけで5分かかった」と語った。
「福島の子どもたちを放射能から守ろう」「自主避難者にも賠償を」という横断幕が見える。福島からきた人たち約500人。自治労や各県教組、労働組合の旗も多いが、市民グループや個人も自分の意志と想いで結集したということが伝わってくる。
集会では、よびかけ人の鎌田慧さん、大江健三郎さん、落合恵子さん、内橋克人さん、澤地久枝さん、フーベルト・ヴァイガーさん(環境団体Friends of the Earth=FoEドイツ代表)、俳優の山本太郎さん、武藤類子さん(ハイロアクション福島原発40年実行委員会)が発言した。

鎌田慧さん
署名は現在約100万筆。あと900万を集め、突きつけよう。8割以上の人がもう嫌だと思っている。(原発継続は)住民への敵対だ。どれだけの人が被曝したか。共存はできないとヒロシマ、ナガサキ、フクシマが証明した。原発にさようなら、「もう絶対に会わない」が私たちのメッセージ。3月24日、日比谷野外音楽堂で1000万署名集約集会をやります。

大江健三郎さん
原子力エネルギーは荒廃と犠牲をつくり出す。イタリアは国民投票でノーを選んだが、自民党幹事長は「集団ヒステリーだ」と言った。生活をどうするか、汚染をどうするか、子どもをどう守るか、簡単なはずがない。想像力を持たない政党幹部、経団連実力者にどう思い知らせるか。集会、デモをしっかりやりましょう。

落合恵子さん
みなさんに会えて嬉しいが、会えたきっかけは腹立たしい。ビートルズの「イマジン」を思う。死の灰とともに生きろというのは、国家の犯罪。子どもたちが『放射能来ないで』と叫ぶような社会を続けさせてはならない。慣れない、忘れないように。

内橋克人さん
科学技術が発展すれば安全な原発が可能であるという新しい神話が台頭しつつある。原発を持ち続けたいという意図の後ろに、核武装が可能な潜在力を持ち続けようという政治的意図がある。

澤地久枝さん
膝を骨折、入院していたが、きょうはどんなことがあっても来ようと。昭和には15年戦争、ヒロシマ・ナガサキ。その日本が54基もの原発。日本は原発など持ってはいけなかった。テレビのひどさ、東電の傲慢さ。こういう人たちに私たちの命を握られてきた。とりわけ女性たちは力を尽くそう。

フーベルト・ヴァイガーさん
脱原発は、もはや「できるのか」「できないのか」の話ではない。政治的に「やるのか」「やらないのか」の話だ。電力会社の解体や、再生可能エネルギーの拡大によってそれは可能だ。

山本太郎さん
すごい人波、会場になかなかたどり着けなかった。命を守りたい、命がかかっている。テレビ、新聞がほんとうのことを報道しない。お金ですよ。いまも被曝している人がいるのに。政治家に社会は変えられない。一刻も早く原発を停止させよう。デモ、署名、行動を。

武藤類子さん
3・11からの大変な日々。福島から、全国から集まった一人ひとりに感謝する。福島への支援にお礼を言いたい。子どもたち、被曝者に謝りたい。
私たちは何気なく差し込むコンセントの向こう側を想像しなければならない。原発は差別と犠牲の上に成り立っていることに思いをはせなければならない。

出発までに2時間
集会は1時間ほどで終わり、参加者は渋谷、原宿、新宿の3つのコースにわかれてデモ行進に出たが、出発するだけで2時間以上かかった。
デモ時にある親子が持っていたボード。「安全な…米が食べたい、野菜が食べたい、魚が食べたい、…牛乳飲みたい、…何が何でもお酒は呑むぞ」。

3・11後の闘いの武器に
『展望』9号発刊にあたって

東日本大震災・福島原発事故から半年の9・11を前に『展望』9号が発行された。
今号は、巻頭アピール、青野芳洋論文、米澤鐵志さんの寄稿を通じて、福島原発の事故原因の隠ぺいと放射能たれ流しを弾劾。核と原発の廃絶に向けて闘いのアピール・道すじの一端を提起した。
特に青野論文は、小出裕章さんをはじめとする研究者たちの仕事に学びながら、福島原発事故の原因を解明するとともに、政府・経産省や東電やマスコミの隠ぺいする福島原発事故の破滅的現状、放射能の拡散状況・危険性を明らかにした。さらに、日本帝国主義の核・原発政策(電源三法)を暴露するとともに、反核勢力の中にも色濃くあった「原子力の平和利用」容認・推進に対する批判もおこなっている。この問題は、われわれにとっても他人事ではない。全国の過疎地(農村・漁村)へ原発が次々と建設されていくことに、有効な反撃を取り組めなかったことへの自己批判的総括の開始でもある。
米澤さんの寄稿は、戦後原水禁運動が大衆的・国民的な規模で核廃絶に立ちあがりながらも、日本共産党などの政治党派の引き回し・利用主義による大衆運動破壊に苦闘しながら進まざるをえなかった現実を、運動内部から総括している。米澤さん自身、広島の被爆者であり、日本共産党の運動に身を置き、またそれから決別し今なお核廃絶にむけ闘い抜いている立場からの貴重な証言である。われわれも改めて自己をとらえ返し、自らの課題として立ち向かう必要がある。
松野さんはメキシコに身を運び、困難をこえて、中南米の反米闘争の発展の検証と「68年総括」を深めている。貴重な論考を寄せていただいたことを感謝するとともに、積極的に学んでいきたい。
松原さんは三里塚闘争をわが闘いとして40年近く闘い、今夏8・6現地闘争本部破壊の現場にも駆けつけ闘いぬかれた。この寄稿では、なぜ今、三里塚闘争破壊攻撃が急速に激化しているのかを解き明かし、闘いの方向を導き出している。
大伴一人論文は、新防衛大綱に対する反軍戦線からの論考であり、江渡績論文は、加古川郵便局労働委員会闘争の生々しい報告である。
本号を多くの人に読んでいただき、議論をおこし、人民の闘いの武器として発展することを願いたい。(『展望』編集委員会・小野)