「原発やめろ」 全国で
人間の鎖で経産省を包囲
経済産業省の敷地を人間の鎖で包囲(11日) |
9月11日午後、経済産業省の敷地を1300人の人間の鎖が包囲した。この行動には、包囲の前におこなわれた東電本店前を通るデモも含め、2000人が参加した。
デモに先立つ簡単な集会と、経産省前でのリレーアピールでは、全国各地からの参加者が次々とマイクを握った。
市議選にトップで初当選した郡山市議の滝田さんは、「僕たちは福島県民というだけで、これからずっと差別され続けていくんですね」という子どもの言葉を紹介。
東京在住の「つながろう!放射能から避難したママネット@東京」の増子さんは、子どもが学校にミネラルウォーターを持参したら先生から「水道水は安全だ」と、持参した水を飲ませてもらえなかったことから避難を決意。大人の考えが子どもに負担を強いている。自主避難者は避難者として受け入れてもらえない、と現実を訴えた。
国際環境NGO・FoE Japanの満田さんは、国や県は福島市を避難区域に指定しないため、年間20_シーベルトという基準に固執し、除染という名で住民を福島市から逃がさないようにしている、と弾劾した。
福島老朽原発を考える会の阪上さんは、福島県がおこなおうとしている健康調査は「放射能の影響はほとんどない」という結論を出そうというもので、先行調査では低線量被曝の実態を把握できないような検査になっていると指摘。
若者がハンスト
ハンストへの思いを語る若者 (11日 経産省前) |
山口県上関町の若者は「福島事故後も、上関では原発建設のための調査工事を続けている。若い世代は原発いらないということを、世間に伝えたい」と決意を語った。
別の若者は、「将来子どもに『なんでこんなことになったの』って言われて、それは政治家や電力会社の人がやったんだよって無責任なことは言いたくない。みんなで考えるきっかけになってくれたら」と思いを語った。
警察の妨害はねのけ 原発やめろデモ&広場 新宿
若者を中心にした「9・11新宿・原発やめろデモ!!!!!」&「原発やめろ広場」。
警視庁はデモコースを二日前に変更。出発点をアルタ前から新宿中央公園に変えるという妨害をしたうえ、デモ中に12人を不当逮捕した。
デモ終了後は、予定通り新宿アルタ前で「原発やめろ広場」がおこなわれ、6・11に続き、アルタ前は人で埋め尽くされた。
盛り上がる新宿アルタ前(11日 午後7時頃) |
日米軍事同盟を強化
野田新政権がめざすもの
13日、国会で野田首相が所信表明演説をおこなった。この演説に対する野党の党首たちの反応は、「美辞麗句を官僚の短冊でつないだという印象」(渡辺喜美・みんなの党代表)や「具体的な取り組みの説明があまりなく物足りない」(山口那津男・公明党代表)、「大学の答案だったら、不合格じゃないか」(福島瑞穂・社民党党首)などさんざんである。
確かに民主党の「党内融和」と官僚に対する「配慮」によって、この演説からは野田の真意がつかみにくい。しかし野田はこの中で、「定期検査中の原発の再稼働」、「復興増税」、「社会保障・税の一体改革」すなわち消費税率の10%への引き上げ、「日米合意にふまえた普天間問題の取り組み」すなわち辺野古への新基地建設、さらにはTPP(環太平洋経済連携協定)への参加などについてしっかり言及している。
野田の本音をもっとあけすけに語っているのが、PHP研究所発行の『Voice』10月号に掲載された「わが政治哲学」と題する本人の文章である。
そこで野田は、二十世紀初頭に日本が「日英同盟」を結んだことで、「世界秩序のなかにおいても安定した地位」を築いたが、この同盟の解消が第二次大戦に向かう要因になったという。そして今日の日本の外交の軸は「間違いなく日米関係である」と断言し、東アジア共同体は「必要ない」と切って捨てている。
また「ここで生まれたことにプライドをもてる国」をめざすのだと主張して、「日本は国土が狭く、資源に乏しい国」という見方は誤りだと決めつけている。そして「日本には海がある。排他的経済水域は面積でいうと世界で6番目。この広い海域には、鉱物資源も相当埋蔵されている」と力説する。さらに別のところでは、「決してわれわれから事を荒立てるものではないが」とわざわざ前置きしたうえで、「わが国の固有の領土を守り抜くために、主張することは主張し、行動することは行動しなければならない」とその決意を語っているのである。
中国との対決を呼号
ここでいう「固有の領土」とは釣魚台(尖閣諸島)であり、「事を荒立てる」相手とは中国である。日米同盟を背景に大陸棚の埋蔵資源の権益をめぐって中国と覇を競う軍事大国。それが野田流「プライドのもてる国」なのだ。その発想はかつて日英同盟をてこにして、「満蒙(中国東北部とモンゴル)は我国の権益」と主張し、中国侵略戦争を泥沼的に拡大していった日本帝国主義とまったく同じだ。この負の歴史を何ひとつ反省せず、60年以上前に破産した「国家像」しか描けない貧困な想像力と、デタラメな歴史観しか持ち合わせない人物や政党に、私たちの将来を託すことはできない。(T)
2面
各地で脱原発デモ 9・11
関電前でもハンスト 大阪
原発ハヨトメロ!再稼動するな(11日 大阪市内) |
11日、「原発ハヨトメロ!!デモin大阪」が、700人を集めて、難波・元町中公園でひらかれた。原発ハヨトメロ!! 9・11大阪実行委員会が主催し、29団体が賛同。 炎天下、午後2時からライブ、3時からリレートークがおこなわれた。
発言のなかで東京から避難してきた女性は、「放射能の被害は体だけでなく、家族や知人との間をひきさく。福島では、移住をめぐり意見が対立し家族が崩壊したという話もある。子どもたちの未来を守るためにも、原発は絶対にやめるべき。」と涙ながらに訴えた。
1分間アピールでは、経産省前で、この日から始まるハンストに連帯して、「関電前でも16日にハンストをおこなう」と1人の若者が宣言。
最後に、風人ブドゥリ太鼓が演じられ、難波一帯を練り歩くデモへ。子どもサウンドデモや、サウンドカーを先頭にしたデモありで、「原発ハヨトメロ」と訴えた。(大阪 N)
原発はやめられる 神戸
メリケンパークからパレードに出発(11日 神戸市内) |
11日、神戸市内では20数団体の賛同・参加で「さよなら原発神戸アクション」共同行動がおこなわれた。のべ参加者は約2千人。4時からのパレードには600人が繰り出した。
ハイロアクション福島原発40年実行委員会の宇野朗子さんが、「いま福島の人たちは、低線量被曝だから大丈夫、除染するから大丈夫などという見通しのない状況に、怒りと混乱を深めている。生活をどうするか、避難したくてもできない。」と訴えた。
原発反対福井県民会議の松下照幸さんは、「福井県には福島県以上の数の原発が並び、さらに危険な『もんじゅ』もある。地元では声を上げられない人が多いが、福島の事故にみんな慄然とした。電力消費地域から原発立地地域へ『原発はやめることができる』という提案をどんどんしてほしい」と話した。
「とめよう戦争―兵庫・阪神連絡会」は、脱原発1000万人署名兵庫県実行委員会のブースを担当。この日の署名は352筆。
関西合同労組兵庫支部は、いわき市訪問の報告文を配布し、被災地支援カンパをおこなった。(神戸 T)
二日間でのべ4千人超 京都
歌や踊りでにぎやかにサウンドデモ (11日 京都・円山公園) |
「バイバイ原発9・11ウオーク&パレード(京都)」は、約1600人が集まり、牛のぬいぐるみの隊列、コスプレ風の若者、歌や踊りのサウンドデモ、思い思いのプラカードやのぼりを持ったさまざまな市民団体が、京都市内の繁華街を市役所前までにぎやかに行進した。
行進前の集会は、祇園・円山公園のしだれ桜前(ラジオ塔前)で開かれた。午後2時からリレートーク、2時46分(3・11東日本大地震発生時刻)に全員で黙祷をした後、パレードに出発した。
京都では前日も、「9・10原発NO! 京都府民大集会」が、安斎育郎立命館大学名誉教授ら4人の学者の呼びかけで、円山野外音楽堂であり、約2600人が参加、その後市役所前までデモ行進をした。
この集会で、バイバイ原発9・11実行委員会は、9・11への参加を訴えるアピールをした。また9・11集会では、9・10集会実行委が9・10集会の報告をおこない、互いに連携して、京都では連日の大きな反原発の行動となった。(M)
市民の運動もっと大きく 奈良
奈良市内では、「9・11 今だから考えたい 未来のこと〜さよなら原発1000万人アクション」(主催:nara―action実行委員会)がおこなわれた。午後1時にJR奈良駅前に集合。奈良公園までのパレードに出発し200人が参加した。
奈良公園ではライブ、シンポジウム、自由発言など、参加型の集会がおこなわれた。
宮城県から奈良県に、出産のため避難してきた女性は「たとえ故郷に帰れたとしても、もう今までの様な生活はできない。私の人生をどうしてくれるのですか。」と涙ながらに憤りを語った。
また、奈良県内でも「福島のいたみを分かち合う」という美名のもとに、行政が「汚染がれきの処理」を受け入れようとしており、汚染の拡散が問題になっている事が述べられた。
最後に、nara―action代表の堀田美恵子さんは「チェルノブイリ原発事故から25年間、反原発運動をやってきた。しかし、今回の事故を止めることはできなかった。もっと市民が参加できる大きな運動を作っていかないと、原発は止められない。」と述べ、この日の集会をまとめた。(T)
9・10 宝塚と尼崎で さよなら原発集会 兵庫
福島原発事故から半年、「さよなら原発! 9・10阪神集会」が、(午後)宝塚会場・(夜間)尼崎会場でそれぞれ125人、100人で開かれた。集会では、小林圭二さんの講演をうけ、1000万人署名運動と再稼働阻止の行動に立ちあがることが確認された。
宝塚会場での集会では、主催者あいさつにたった中川慶子さん(原発の危険性を考える宝塚の会)は、30年近い運動の経験をふり返りながら、原発を止めるには今をおいてないことを強調した。
京都大学原子炉実験所元講師の小林圭二さんは、放射能は人の手ではなくせず、原発は廃炉しかないと話した。そして今後の問題として、汚染した土壌は捨て場がなく、また大量の汚染水の問題も解決できないこと。さらに収束を急ぐ政府・東電の圧力が現場で働く労働者にのしかかり、高濃度の被曝労働者が大量に生みだされることへの懸念を表明した。また放射能に対して感受性の高い子どもへの基準値が上げられたことに母親たちが立ちあがっていることに共感を示すとともに、再稼働を止めるために人々が行動にたち上がり街頭に出ることの必要性を訴えた。
尼崎地区労の酒井浩二議長は、福島の子どもたちを救うためには、1000万人署名や10月2日、伊丹市内でおこなわれる「さようなら原発1000人集会」を成功させ、「がんばろう日本」ではなくて、原発を必要とする社会を変えようと提起した。
(労働通信員 M)
「君が代」処分 根津さん・河原井さん裁判
最高裁で弁論へ
卒業式などで「君が代」斉唱時に起立しなかったとして、根津さんが3カ月の停職処分、河原井さんが1カ月の停職処分をうけた06年処分をめぐり、2人が都に対して処分の取り消しなどを求めた裁判。
1、2審は、いずれも「停職処分は適法」とする判決を出したが、2人は「不当判決撤回・処分取り消し」を求めて上告していた。最高裁(第一小法廷)は16日までに、「弁論期日は11月28日」と指定してきた。
最高裁は2審判決を見直す場合に弁論を開くので、2審判決が見直される可能性がある。
七生(ななお)養護学校「ここから裁判」
東京高裁でも勝利
都立七生養護学校での性教育に対して、土屋、古賀、田代都議などが学校に乗り込んで妨害・侮辱した事件(03年)に対して、「教育に対する不当な介入」を糾弾して教員と保護者ら31人が、都教委と3都議(当時)を提訴した裁判。「こころとからだの学習」裁判を略して「ここから裁判」とよばれてきた。
16日の東京高裁判決は、〈都教委と3都議による教育への不当な介入を違法と認め、計210万円の賠償を命じた1審判決〉を支持した。
米国 貧困人口の増加 4年連続
米国勢調査局は13日、統計を発表した。それによると、米国の貧困人口は4618万人となり、4年連続増加(2010年)。 統計の公表を始めた1959年以来、最多となった。
全人口に占める貧困者の割合(貧困率)は15・1%で、これも3年連続上昇となった。黒人に限ると27・4%。
経済協力開発機構(OECD)によれば、米国の貧困率は「先進7カ国(G7)」の中で最も高い。
貧困層の定義は、4人家族(子供2人、親2人)の場合、年収が2万2314ドル(約172万円)以下の世帯。
3面
寄稿 農民殺しの無法裁判
― 国・県・市・空港会社はグル
三里塚・農地法裁判の驚くべき実態
松原康彦(三里塚決戦勝利関西実行委員会 事務局次長)
ひとまず押し返す
千葉地裁多見谷裁判長は、市東さんの農地をめぐる行政訴訟、農地法裁判を、4年にわたる口頭弁論で明らかにされた事実を一切無視して、年内に結審させようと目論んでいることが、7月4日の進行協議で明らかになっていた。
反対同盟は8月30日、裁判前の緊急集会とデモを呼びかけた。直前の2回の裁判所前での街宣をやり抜いて、この日150人が結集し、集会とデモで多見谷裁判長の目論見を弾劾し、弁護団が重要な事実を法廷で明らかにして裁判長を追い詰めた。
多見谷裁判長は、2つの裁判の併合と、年内にあと2度の弁論を行うことを認めざるをえなかった。国策裁判として一気に結審、判決、そして市東さんの農地強奪へと自分で道筋を付けようとした裁判長の目論見を、はね返し、押し返すという大きな勝利が勝ち取られた。
取り上げ対象とされている南台の畑。「41-8」の畑は、空港敷地の内と外に分かれる。これを一緒くたにして、空港への「転用相当」とすることなど、あってはならないことだ。 |
地番「41-9」問題
空港会社(NAA)は、2003年、突然、市東さんの南台の農地と自宅前の作業場と離れ、農地がある天神峰の土地を地主から買収したことを明らかにし、耕作をやめ明け渡すよう求めてきた。親子3代、90年にわたって耕作してきた農地だから、憲法、そして「耕す者に権利あり」とする農地法に保障された耕作権が存在し、市東さんは当然にもこの要求を無視した。ところがNAAは2006年7月、成田市農業委員会に対し、市東さんの耕作権を解除するよう申し立てをおこない、成田市農業委員会は、十分な審査も現場を見ることもなく、申し立てを認め千葉県農業会議に申し送った。千葉県農業会議もまたほとんど審査もないまま「了」とし、千葉県知事堂本(当時)が、その年の9月に耕作権解除決定を承認した。
しかし、南台の農地について申し立てされた畑の特定が、法務局の管理する公図とも全く違い、おまけにでたらめであることを成田市農業委員会の段階から反対同盟は明らかにし、農業委員会に、そして裁判所に現場を見ることを求めてきた。
左上図の「41-9」と「41-8」を市東さんが借りているとしてその明け渡しをNAAは求めてきた。そしてその余の「41-1」と彼らが称する部分の一部の市東さんによる耕作は、「不法耕作」だと断じて、明け渡しを求めて「耕作権裁判」を提訴している。
農地はもともと周囲の状況などで、耕作者の熱意によって自然と広がってくるものだ。法律でも耕作者と地主との間に10年間にわたって何も問題が発生しなければ、そこに耕作権が発生することを認めている。親子3代にわたる耕作と、とりわけ成田闘争の開始以来周辺が徐々に耕作をやめていく中で、孝雄さんのお父さん東市さんは、「農地死守」の固い決意のもと耕作を広げ、それに見合った地代を地主に納め続けてきた。だから、NAAが主張するような分離された農地など、そもそも存在しないのだ。
その上で、地番「41-9」とNAAが主張する部分は木立の北側のため影になり農地にはもともと適さなかった。裁判でも石橋政次氏の妹さんが、「41-9」では石橋家で植木の苗などを育てていたと証言している。つまり、市東家では90年にわたって「41-9」を耕したことも、農地として借りたこともない。
NAAは、当初、反対同盟弁護団からの指摘を無視し続けた。しかし、ついに1年前、「41-9」は「使用されていない」ことを認めた。しかし「借地」であると強弁してきたが、ついにそれも維持できず、今年に入って「41-9」を訴訟から外すと言い出した。「41-9」を外すことは、畑の特定が間違っていたことを認めることになる。つまり、裁判が維持できないのではないかという問題なのだ。
「境界確認書」問題
NAAが、市東さんの農地の耕作権解除を申請する唯一の根拠にしているのが、地主藤ア政吉氏と市東東市さんとが1988年に交わしたとされる東市さんの署名の入った「同意書」と「賃借地境界確認書」。この2つの書類には、畑の特定の前提となる「地籍測量図」が添付されている。この「地籍測量図」が、先に述べた法務局の公図と異なるNAAの作成図のもとになったもの。そしてこれも先に述べた地番「41-9」を前提として作られている。
この「地籍測量図」は、地主藤ア氏自身が空港公団との交渉のために作ったと思われる1984年の地籍測量図と大きく異なり、またその当時たまたま市東東市さんが元永さんに話したメモが残されていて「元永」メモとしてこの法廷で証言されているものとも大きく違う。
そして、今年に入って、弁護団と藤ア政吉氏本人との面談で、なんと藤ア氏が「署名は自分の字ではない」「測量に立ち会ったことがない」「自分がこの測量図を作ったことはない」と明言したのだ。事実「地籍測量図」左下の署名の名字が「藤ア」であるべきところが「藤崎」と間違えている。本人が書いていれば絶対に間違えるはずがないものだ。
地番「41-9」問題と言い、この「地籍測量図」が偽造されたものであるなら、NAAによる提訴そのものが直ちに却下されるべきではないか。
さらに、NAAが市東さんの賃借地として「特定」したもう一つの地番「41-8」の4分の1ほどが、空港敷地の外なのだ。NAAは空港の事業計画にもない農地を、空港を理由に取得し、農業委員会に隠していた。これは農地転用を定めた農地法5条に明確に違反している。
「1988年」問題
市東孝雄さん (3月27日 成田市内) |
さて、その1988年は、行き詰る空港「二期工事」を強行するために、農家のすぐそばで生活破壊、人権侵害の騒音と振動で工事が進められていた。いわゆる「軒先工事」だ。1989年3月には、松井空港公団総裁が「反対派の軒先まで工事を進め、ご理解いただく」と発言。追い出しの脅迫であることを隠そうともしていない時期だった。
他方で、天神峰現闘本部の増築・強化が9月に完成し、10月には千葉県収用委員会の委員全員が辞任するという事態も生まれた。まさに二期工事をめぐる攻防が熾烈を極めていた時だ。その中で、市東東市さんは母屋を新築し(84年)、作業場を新築(89年)して、「農地死守」「二期工事阻止」の自らの農にかけた強固な意思を内外に明らかにしていた。
こうした状況の中で、1988年春、空港公団(当時)は、南台の土地(地主・藤ア政吉氏)と天神峰の自宅前の土地(農地と作業場、地主・岩澤和行氏)を買収していた。当然にも市東さんは、「地主」でもない藤ア氏と岩澤氏に地代を払い続けることになり、息子の孝雄さんがそれを引き継いだ。実際には、空港公団が、藤ア、岩澤両氏に改めて農地として貸して、地代を市東さんから受け取らせていたのだが、これもまた農地法の重大な違反である。
農地法は、耕作者の権利と農地を守るために農地の転用を厳しく制限している。耕作者の立会と同意、そして農業委員会への届出を大前提としている。そして農地から空港へ転用するには、毎年、転用の工事の進捗を農業委員会に報告することを義務付け、10年も放置される(土地の値上がりなどの投機的目的を排除するため)ことを禁止している。そして個人や法人などを問わず新たな所有者が、同じ県内に所在することが求められている。ところが、空港公団(現NAA)は1988年当時東京に所在し、しかも15年間も農業委員会に申請すらしていなかった。
農業委員会の犯罪
最後に、こうしたNAAの意識的な犯罪の数々を承知の上で、農地法の精神を守るべき成田市農業委員会、千葉県農業会議が、NAAと国の言うままに、「耕作権解除」の認可をおろしたことの犯罪性は断じて許すことができない。
農業委員会の経験者の多くが、この問題に「入口のところではね返すべき」「受理したことが間違いだ」と指摘している。
成田市も千葉県も、成田空港による税収と地元対策に依存し、成田空港完成をその方針としている。だからと言って、農地法の精神を否定するようなこのあり方は断じて許されない。そもそも農業委員会の委員の多くが農業従事者で占められていることこそ、戦後の農地解放の精神である「耕すものに権利あり」を実態的、制度的に保障するためのものであったはずだ。
今回の成田市農業委員会、千葉県農業会議の対応は、明らかに「土地バブル」以降の彼らの犯罪的姿勢によるものだと言わざるを得ない。農業委員会は、土地収用法が使えなくなったために、こんどは農地法を使って農地強奪をはかろうとする国の手先に成り下がったのだ。
10・9三里塚現地へ
早期結審・判決策動をはね返し、市東さんの農地を守り抜こう。「反戦の砦」三里塚を守り抜き、フクシマ、オキナワと一つになって、この国を変えていこう。全国から10・9三里塚現地へ大きなうねりを生み出そう。
4面
児玉教授の講演と
南相馬市(福島県)の除染をめぐって
原発事故以来、放射能汚染に苦しめられている南相馬市。ちょうど30キロ圏にまたがり、市内が5つの区域(警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、特定避難勧奨地点、区域指定なし)に分断されている。そういう困難な状況下で、市や住民がさまざまなとり組みを行っている。
その南相馬市で、3日、市の主催するシンポジウムが開かれた。題目は、「市民生活の安全安心を取り戻す 〜今、私たちにできること〜」。約700人が参加した。
講師は、東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦、日本原子力研究開発機構の天野治、東大医科学研究所の坪倉正治の三氏。冒頭、桜井勝延市長があいさつに立ち、児玉氏が基調講演、各講師が報告を行った後、三氏による討論が行われた。
住民の自主性がカギ
シンポジウムの様子を伝える前に、若干の感想を述べておきたい。先回りするようだが、伝え方にもかかわるため。
まず、除染を本格的に行うことが想像以上に難しい作業であることを感じた。
また、除染が大きな課題としてとり組まれている一方で、避難という選択が検討から外されていると感じた。
さらに、南相馬市の外では、桜井市長や児玉氏のとり組みを評価する声が多く聞かれるけれども、住民の中に入ってみると、そのとり組みだけでは限界があるという感を否めなかった。
結局、鍵を握るのは、住民が大きな方向性や計画を自主的に検討し決定し、それをもって市長や学者たちを住民の側が引っ張るような形になることだろう。
このような視点で、以下、シンポジウムの概要を報告するとともに、南相馬市のとり組みを住民がどう見ているかについて伝えたい。
「世界最高レベルの除染を」
児玉龍彦教授(3日 南相馬市) |
児玉氏の基調報告は、主に「除染モデル事業」の提案だった。
まず、児玉氏は、学校や保育園の測定と除染のとり組みの概要を報告。
その上で、これまでのとり組みはあくまでも「緊急除染」であり、これからおこなう「恒久除染」とは違うと強調した。緊急除染は、子どもの周りの放射性物質の量を緊急に減らすとり組み。これにたいして、恒久除染は、住民が主導して計画を立案し、市と業者が中心となって土壌の入れ替えなどを大規模に行うとり組み。「世界最高レベルの除染をやる。安かろう、悪かろうではダメ」と意気込みを語った。〔紙面の都合で、モデル事業の内容は割愛〕
さらに、除染モデル事業を実施する上での大きな困難として2点を指摘した。
コンテナで埋設
ひとつは、汚染土壌の処分先の問題。
除染作業によってはぎ取られた汚染土壌をどうするか。これは非常に困難な問題だと述べた。
住民の同意が絶対的条件と強調した上で、当該地域で処理することを基本とすると提起。
具体的には、「人工バリア型保管場」を建設し、「小規模コンテナ」に詰めて埋設する方式を提案した。例として、六ヶ所村の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」をあげた。
ただし、南相馬市から出る汚染土壌だけで、六ヶ所村の施設の5倍は必要という。
汚染地の7割占める森林を伐採
今ひとつは、汚染地の7割を占める森林の問題。森林は粘土が少なく、セシウムは循環してなかなか減らない。そこで、森林を伐採し燃料にして除染する。将来的には、バイオ燃料、バイオ素材森林に作り替えるという提案を行った。
児玉氏の報告の後、天野氏の報告があり―これについては後述―、さらに児玉氏の報告を引き継ぐ形で、坪倉氏が報告。一般家庭と保育園でとり組んだ除染の方法と効果、その教訓をわかりやすく報告した。
「南相馬の農産物は安全」に異論
天野氏は、南相馬市出身で、日本原子力研究開発機構、日本原子力学会フェロー、工学博士。
天野氏の報告は、飯舘村、南相馬市鹿島区、原町区などで実際に行ってきた家屋や農地の除染のとり組みとそれを定式化したもの。ただ、「農地は鋤き込んでも問題はない」「南相馬市の農作物は安全」という見解。これには、質疑で疑問が出され、児玉氏も、「私の見解とは違う」と異論。
天野氏の所属する日本原子力研究開発機構とは、核燃料サイクルを推進するなど、強力な原子力推進機関。その日本原子力研究開発機構は5月に「福島支援本部」を新設、「原発事故の中長期的な技術的課題の解決に貢献する」としている。その意味は、世界で類例を見ない長期高濃度の汚染状況が、原子力推進の立場からも、格好の研究対象だということだ。
天野氏の報告からは、事故にたいする反省の姿勢は感じられなかった。
児玉提案を住民はどう聞いたか
シポジウムの後、参加した複数の住民と意見を交換した。そこで出された意見を紹介する。
・ ・ ・ ・ ・
@まず、児玉氏の提案は、研究者として、良心的で誠実なもの。これまでの政府の対応に比べれば、はるかに現場の状況に即している。これが住民の共通した評価だ。
Aただ、児玉氏が、除染の目標を「空間線量を半分にすること」としている点について、質疑でも指摘されたが、「半分にする」とは、科学的な安全基準ではない。
これは、児玉氏の提案の問題に留まらず、南相馬市のとり組みの基本姿勢に関わる問題が背景にあると見た方がいい。この点は後述する。
B汚染土壌の処分先の問題については、果たして「当該地処理を基本」にしてよいのかという問題である。
住民の多くは、「現実にはそうするしかないだろう」という受け止めだった。が、より突っ込んで本音を聞けば、「福島をゴミ捨て場にするのか」「国会とか東電本社とか民主党本部にトラックで持っていってやりたい」ということだ。
全体の議論や運動が、加害責任を追及しきれていないために、「当該地処理を基本」が方向づけられようとしている。
C広範囲に及ぶ汚染された森林の問題についても疑問が残る。
住宅地や農地を除染できたとしても、森林に蓄積した放射性物質が風などで飛ばされて、再び汚染されることに、多くの住民は気づいている。
これについて、より本格的な対策が打ち出されるかどうかだ。
Dところで、コーディネーターとなる民間企業について。
大手企業まかせでいいか
児玉氏は、コーディネーターとなる民間企業について、千代田テクノル、大成建設、竹中工務店と、具体的に社名をあげた。その理由としては、「最高水準の除染技術を持っているから」。
「最高水準の除染技術」を持っているのは当然だろう。いずれの企業も、大手の原子力関連企業だからだ。
また、公的機関については、児玉氏は具体的な名前はあげていなかったが、上述の日本原子力研究開発機構などは当然その筆頭に入るだろう。
児玉氏は、提案の中で、「住民主導による計画立案」ということを強調。まさに「住民主導」が鍵であり、それがどうやって担保されるかだ。
ところが、原子力関連企業がこの事業に参入するのは、事故の責任を取って無償で除染を行うという話ではない。むしろ、原子力の一層の推進の立場から、実験と利権
質問に立つ住民(3日 南相馬市) |
児玉氏の提案はこのような思惑にたいして無防備ではないか。住民主導が確保できる保証はないのではないか。こういう危惧が住民から出ている。
賛否われる桜井市政への評価
さらに、このシンポジウムの後、桜井市長の原発事故にたいするとり組みについて、住民からその評価を聞いた。
7人の住民に話を聞いて、7人中、桜井市長のとり組みを支持する人は2人、支持しないという人が5人。
外から見ると驚かれるかも知れないが、住民の間では、桜井市長のとり組みにたいする厳しい見方の方が多数を占めているのが実状だ。一体、これはどうしてなのか。
保守勢力のまき返し
@先に紹介したように、南相馬市は、原発事故とその後の国の指示によって、市内が5つの区域に分断されている。いずれも困難を強いられているが、それぞれの状況が違うのも事実。そこに補償問題も絡んで、住民の間に、しこりや対立感情が生み出されている。これが、市長にたいする批判の土台にある。
A桜井市長は、もともと、市議時代から産業廃棄物処分場問題などで市民運動を展開、自民党系の現職市長を破って当選した。
しかし、副市長の選任で議会と対立、議会が推す総務省出身の中央官僚を副市長にすえざるをえなかった。ここに見られるように、旧来の保守勢力や中央官僚の影響、行政組織の保守主義などによって、桜井市長が、様々な掣肘を受けているという見方もある。
経済復興重視に疑問
Bしかし、こういう条件だけではなく、桜井市長自身の政治姿勢に疑問が出ている。
桜井市長の復興の構想では、経済的な復興ということに重きが置かれており、放射能汚染から住民をどう守るかという観点がお座なりになっているという指摘だ。
Cまた、桜井市長は、政府や東電にたいして、もっと正面から要求して当然のものを、要求していない、押しが不十分なまま、住民を呼び戻すことで何とかしようという方向になってしまっているという意見がある。
D原発事故直後の対応にたいしても不信の声がある。
桜井市長が住民に避難を呼びかけたのは、原発事故によって放射能が危険と判断したからではなかった。市長が避難を呼びかけたのは、原発事故の影響で、南相馬市に食糧など生活必需品が届かなくなり、生活できなくなってしまってからだった。彼を一躍有名にしたユーチューブの訴えでも、同じ趣旨のことを言っている。
(なお、補償金や義援金を受け取ったら生活保護が打ち切られたという問題が、被災自治体の中でも南相馬市が突出している問題もある。が、住民との話では議論にならなかったので、ここでは触れていない。)
南相馬市の行方は、住民自身の自主的な運動が力強く登場していけるかどうかにかかっている。必要なのは、住民自身の運動を支援していくことだ。(大久 修三)
5面
労組交流センター関西協議会 夏季セミナー
JAL大量不当解雇撤回を
恒例の労組交流センター夏季セミナーが、8月28日、大阪市内で開催された。
交流センター参加労組(関西合同労組、T労組など)からのみならず、初参加も含め民間、医療、JR、JP、教育労働者などの労組活動家たち約30人が集い、講演・質疑と闘う方針論議がおこなわれた。
今回のセミナーは、JAL大量不当解雇と闘う当該をむかえ、その闘いに学び、支援を確認することと、各職場報告と今秋の闘う労働運動の課題をしっかり討論するものであった。さらに労組活動家の闘争機関、交流、学習の場としての〈交流センターの今後の方向性〉も論議された。
JAL原告団長が講演
JAL原告団長の山口さん(8月28日) |
昨年の大晦日に解雇された165人のうち、約90%(パイロット76人、客室乗務員72人)が原告として立ち上がったことが敵を驚かせた。その中で元自衛官パイロット(40才で入社)は低賃金で使い捨てにされ、国と会社に翻弄されたことに怒っている。原告団の中心でがんばっている。日航会長の稲盛は裁判の証人から逃げ回り、「9月は海外出張」とウソまでついた。しかし、9月30日には証人として法廷にひっぱりだされることになった。労働法が無力と化している。行政処分である労働委員会命令の履行が資本にサボタージュされている。マスコミも昨年12月まではJAL問題を大きく報道していたが、今はまったく無視している。
日頃聞けない闘いの生々しい様子も報告された。活発な質問が参加者から寄せられた。
講演では、@大量不当解雇は、たたかう組合つぶし。整理解雇4要件を転覆し、労働法を無きものにしようとする大攻撃である(年令差別を公然とおこなっている。あのアメリカでさえ74才の客室乗務員が働いている)、Aそのために航空の安全を危険におとしいれている(出来高払い賃金導入の危険性。訓練は金食い虫だ、無駄だとされ、いまはまともにやられていない)、Bいわゆる日航の破綻が日本戦後政治の構造問題であり、その責任を労働者の大量解雇で隠蔽しようとしている、Cこの闘いは空の安全・公共交通のあり方にかかわる大問題である、D法廷外の闘いの重要性。9・13全国一斉行動にたちあがろう、などを訴えた。
「教育」「職員」基本条例案をつぶせ
休憩をはさんで、第二部では、@職場報告、A今後の闘いとして、JR西日本性的暴行事件と闘うSさんの取組み、9月反原発闘争、9・18三里塚関西集会、9・23「障害者自立支援法」撤廃集会、9・24「君が代」条例はいらん!全国集会を確認、B労組交流センター関西協議会として当面の重要な取組みとして、橋下大阪府知事と大阪維新の会が9月府議会への提出を画策する「教育基本条例案」「職員基本条例案」を大衆的闘いで包囲・粉砕する取組みについて討論し、9・2大阪府庁行動(府知事と府議会への抗議申し入れ、街宣)方針を確認した。この闘いは「交流センターとしての今後のあり方」もかけて闘おうと討論された。(労働通信員 M)
原発建設中止へ 全国から1250人
8月28日 山口県上関町
のぼり旗を林立させて参加した祝島の人びと(8月28日) |
上関原発建設反対キャラバン隊が、8月16日長崎爆心地公園を出発した。26日には、広島平和公園からもキャラバン隊が出発。佐賀、福岡、山口、広島でデモをおこない、28日上関町室津の埋立地に到着した。
このキャラバンと「さようなら上関原発8・28全国集会」は、原発に反対する上関町民の会、上関原発を建てさせない祝島島民の会、原水爆禁止山口県民会議、長島の自然を守る会の四団体が主催した。
集会には、計1100回を越える毎週月曜島内デモを続ける祝島島民をはじめ、全国から1250人が集まった。地元山口の自治労など多数の参加とともに、原発をかかえる新潟、福井、島根、佐賀、鹿児島・川内(せんだい)などのノボリがあちこちに。また、山口県外で唯一、「上関原発建設中止を求める意見書」を市議会で可決(8月5日)した大分県国東市からの参加も。
上関を巡って、事態は大きく転換してきている。県議会では「凍結」意見書が全会一致で可決。県内19市町議会のうち13議会で「中止」または「凍結」意見書が可決されている。二井知事は埋め立て免許の更新を認めないと表明した。推進派町長も原発のない町づくりに言及せざるをえなくなった。
8月1日に経産省へ提出した署名は、累計100万9527筆となり、その後も寄せられている。しかしいまだに中国電力は建設を断念していない。集会後「ノーモア・ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ! そして、さようなら上関原発」の思いを込めて町内デモを行った。
貧困率、過去最悪の16・0%
7月12日、厚労省は相対的貧困率(所得が、所得中央値の半分に満たない人の比率)を発表した。前回の2009年発表(調査は2006年)と比較すると全体では0・3ポイント上昇し16・0%に、17歳以下の子どもの場合は1・5ポイント上昇し15・7%になり過去最悪となった。
子どもの貧困率が悪化
反貧困ネットワーク(宇都宮健児代表)は7月20日、貧困率の悪化、とりわけ子どもの貧困率の悪化に対して警鐘を乱打している。
子どもの貧困率の悪化は「高校生以下の子どもを持つ『働き盛り』の親たちの雇用の不安定化・低所得化」が背景にある(同声明)。この間進められてきた新自由主義的政策は親たちを苦しめているだけでなく、貧困な環境で生きる子どもたちを、より過酷な状況に追いやっているのである。
給食を食べられない
文科省によれば、小中学校の学校給食費未納者は全国で1%、約9万9千人にのぼる(2005年度)。
大阪府下の中学校には給食がないため各自弁当持参となっているが、経済的に苦しい家庭では弁当が用意できず、昼食時間にすっと教室からいなくなる子どもが見られるようになっている。長野県のある中学校では、給食を食べない子がいて調べてみると、母子家庭で給食費を滞納していた。その子は給食費の督促通知を直接担任から渡されて読んでしまい、せつなくて給食を食べられなくなったのだ。東京・足立区では、夏休みになると体重が減る子どもがおり、給食が一日で唯一食事らしい食事の子どもも珍しくなくなっている(子どもの貧困白書2010年)。
就学援助が2倍に
就学援助の対象者は1997年度で6・6%、約78万人だったが、11年後の2008年度には14・0%、約144万人と約2倍になっている。増加原因は「企業の倒産やリストラ等経済状況の変化によるもの」76%、「離婚等による母子・父子家庭の増加、児童扶養手当受給者の増加」60%(複数回答 2006年 文科省調査)がもっとも多い。
虐待相談が急増
貧困率の悪化がなげかける問題
日本社会は、かつての高度経済成長社会とはまったく様相が違ってきている。格差社会はますます拡大し、高卒も大卒も就職氷河期というおそるべき時代が到来しているのである。貧困率の悪化がもたらしている実態は、単にデータだけでは理解できない。
貧困率の悪化が日本社会にもたらしている歪み、その中であえいでいる子どもたちの思いと呼吸しあうことが必要である。
本当に人間らしく生きる権利、働く権利、これを目に見える形で作り出していく責任が今の私たちにはある。未来をになう子どもたちとともにこの社会を変えていくことをあらためて決意していきたい。(労働通信員 Y)
投稿 軍隊は「トモダチ」か?!
米軍・自衛隊の「災害救援」を検証
8・30日、《軍隊は「トモダチ」か?! 米軍・自衛隊による「災害救援」を検証する! 8・30集会》(主催 米軍・自衛隊参加の東京都総合防災訓練に反対する実行委員会2011)が開催され、50人が集まった。
この日の集会は、「2011年度東京都・小平市・西東京市・小金井市合同総合防災訓練(10・29予定)」の主会場として予定されている都立小金井公園ちかくの会場で、同訓練に反対する前段集会としてかちとられた。
主催者からの基調提起に続いて、講師の半田滋さん(東京新聞)から「トモダチ作戦とは何だったのか?―米国に自衛隊とカネを差し出す日本!」と題する講演が1時間にわたっておこなわれ、米国の狙いなどを鮮明に暴露した。
その後、会場からの意見や活発な質疑応答もおこなわれ、10月の訓練反対闘争に向け内容の充実した意気上がる集会であった。(東京 O)
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皇国史観、侵略賛美の「つくる会」系教科書
来春から4年間使用される中学教科書の採択が7〜8月過程でおこなわれた。
沖縄・八重山の攻防
八重山採択地区協議会(石垣、竹富、与那国の3市町)が公民教科書で、沖縄では初となる「つくる会」系育鵬社版教科書を採択したが、その後、竹富町教育委員会では、これをくつがえし不採択とした。
義務教育の教科書無償措置に関する法律では「同一地区内で同一の教科書を採択すること」が定められている。石垣市、与那国町が「つくる会」系教科書、竹富町が別の教科書というなかで、9月8日、3市町の全教育委員でつくる地区教育委員協会がひらかれ、多数決で「つくる会」系育鵬社版教科書を不採択とし、東京書籍を版を採択した。
これにたいし、文科省が「8日の採択は無効」と言いだした。しかし、3市町教委の教育委員長は15日、文科省と県教委に対し、8日の採択について「有効で統一した採択結果と認めるべきだ」という文書を送付。県教育長も16日に記者会見をおこない、「教育委員協会での8日の採択は有効」と文科省に反論した。
杉並区で逆転勝利
東京・杉並区では、極右の山田区長(当時)が、教育長の首をすげ替えて、2005年に「つくる会」系扶桑社版歴史教科書を採択した。一昨年も同教科書が採択された。
05年以来6年間にわたり、これをくつがえす運動が粘り強くたたかわれ、8月10日の採択では、ついに「つくる会」系教科書を撤回させた。採択をした教育委員会には20席の傍聴席に200人を超える区民が集まった。
栃木県下野(しもつけ)市
下野市では、7月15日に市教科書選定委員会が「つくる会」系育鵬社版歴史教科書を選定。しかし、同21日の教育委員会でそれを否決、「つくる会」系教科書を葬り去った。
滋賀県でも不採択
6年前の採択時、県下に3校ある中高一貫校のうち1校で「つくる会」系歴史教科書を採択したが、2年前の採択でこれを覆した。
今年の採択にむけ、6月県議会で、「つくる会」系自由社などの採択をねらった請願が自公などの賛成多数で採択され攻防がつづいていたが、8月30日にひらかれた臨時教育委員会で、「つくる会」系以外の教科書が採択された。
横浜市で大量採択
2年前に、市内18の採択区のうち、8区で「つくる会」系自由社版教科書を採択した。同時に、市教委は市内全域を1地区化することを決定。
今回、8月4日の市教委で、市内および来春開校の私立中高一貫校での歴史・公民の教科書として、「つくる会」系育鵬社版を採択。
一挙に、全市の中学生が使用することに。1学年25000人、4年間で10万人の生徒が使用する。
東大阪市で公民
7月26日、東大阪市で、「つくる会」系育鵬社版公民教科書が採択された。大阪府下では初めて。
これが教科書か
皇国史観と侵略賛美
「つくる会」系育鵬社版では、@「万世一系」デマを真実であるかのように扱い、天皇のコラム、写真を多用。天皇が歴史をつくってきたかのような構成、A教育勅語の抜粋を口語訳で掲載し、国や社会に危急のことがおこれば命を投げ出せと主張、B日本帝国主義のアジア侵略を正当化、C韓国併合を居直り、D沖縄戦での住民集団自決が軍による強制であったことを否定。
徴兵制と原発推進
同社の公民教科書では、@明治憲法=「大日本帝国憲法」を礼賛、A戦後憲法の9条にかみつき、憲法の正確な説明もせず、改憲を主張、B他国の例をあげ、あたかも徴兵制は国民の義務であるかのように記述、C原発安全神話を吹聴し、原発がなければエネルギー枯渇で日本社会はやっていけないかのような記述。
議会で不当な圧力
日本会議などが策動
日本会議や、日本教育再生機構=「教科書改善の会」(育鵬社)、「新しい歴史教科書をつくる会」(自由社)などは、国会議員、地方議員を動員して教科書攻撃や「つくる会」系教科書の宣伝を強めてきた。
自民党は、昨年の12月、「教育基本法と学習指導要領に最も適合した教科書が採択されるためには地方議会での取り組みが『死活的に重要』だ」という通達を発した。今年の5月には「教育基本法および学習指導要領改正の趣旨を反映した採択への取り組みをすすめることは、教育基本法を制定したわが党の使命」であると開き直り、議会での一般質問と議会決議の文案を発表。地方議会での活動を具体的に指示した。
その結果、各地の議会では一般質問に名を借りた、「つくる会」系以外の教科書への不当な攻撃や、「つくる会」系教科書の自画自賛、請願・陳情の決議や採択がねらわれてきた。判明しているだけでも、14府県、16市町村で、請願や決議が採択されている。
「つくる会」系教科書の撤回を
今年の採択では、8月31日時点で、全国10都府県で公立388校(沖縄八重山採択区を除く)が、「つくる会」系教科書を使用すると決まった。撤回をもとめ、ねばり強く闘おう。
地下鉄新設 なにわ筋線に4千億円
大阪維新の会マニフェスト
大阪維新の会が、11月27日におこなわれる大阪市長選挙のマニフェスト素案を公表した。それによると、梅田北ヤードからJR難波(もしくは南海汐見橋か南海難波駅)まで、なにわ筋の地下に鉄道を通すという。橋下は相変わらず「大阪中心部と関空を30分台でつなぐ」と吹いているが、ちょっと待て。
南海の「ラピートα」は大阪市のど真ん中、難波から関空まで34分で走っている。JRの「はるか」は、新大阪〜関空間の所要時間は47分だ。なにわ筋線を造っても、距離にして3`ほど短縮するだけ。それで10分も短縮するなど、とても無理。中間駅に停車すれば1分しか短縮できない。
なにわ筋に地下鉄を通しても市民の交通手段としては、ほとんど役に立たない。現在大阪市中心部には、南北に千日前線、四つ橋線、御堂筋線、堺筋線、谷町線が走っている。わずか3`ほどの間に5本もある。その中になにわ筋線を建設する。四つ橋線から3〜400bだ。中間駅を造れば費用がかさむし、スピードアップのためというのだから途中駅にはあまり止まらないと思われる。
費用は2千億円から4千億円と計算されている。黒字化する見込みは絶望的だ。近畿運輸局の試算で、汐見橋案では黒字化は無理、南海難波案の最速で開業後24年後に黒字化としている。
橋下は「将来世代に負担を先送りしないため」と言って府民に犠牲を強要してきた。教育破壊の橋下が将来世代のことなどまったく考えていないのは明らかだが、新線建設だけでも、今の子どもたちが大人になってもまだ借金を返すことができない。橋下は「大阪は倒産企業」と言いながら、「倒産企業」に4千億円の事業をやらせるのか。市民の利便は犠牲にして財界のための事業を創出する橋下の本質がここに示されている。(H)