「生涯被ばく100_」基準を追及
第3回 対政府交渉 「子ども福島」など6団体が主催
8月25日、参院議員会館(東京都千代田区)で、放射能汚染問題をめぐる対政府交渉がおこなわれた。主催は、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、福島老朽原発を考える会(フクロウの会)など6団体。
7月19日に福島市内で開催された交渉に続いて、今回で3回目。
交渉は10時から午後1時過ぎまでおこなわれ、120人が参加した。
第3回対政府交渉(8月25日 参院議員会館) |
「生涯100_」は重大な基準変更
前半は、厚労省と食品安全委員会を相手に、食品の放射能汚染にたいする規制値改定をめぐる交渉。
食品の放射能汚染にたいする現行の暫定規制値は、年間で最大17_シーベルトの被ばくを許容するもの。きわめて高い数値で、その見直しが求められている。
7月26日、食品安全委員会は、「食品中に含まれる放射性物質の食品健康影響評価(案)」を策定し、その見直しの方向を示した。
ところで、この「評価(案)」では、自然放射線や医療被ばく以外の被ばくについて、外部被ばくと内部被ばくを合わせて、「生涯で100_ミリシーベルト」という新たな基準を導入した。
従来、食品の暫定規制値でも、また公衆がうける被ばく限度=1_シーベルトでも、年を単位として規制する数値を出していた。ところが今回、「生涯」という単位を持ち出した。この問題について問いただした。
「年1_」の撤廃ねらう
「評価(案)の言う生涯とは何年か?」。まずこの問いから始まった。
食品安全委員会の答えは、「何年とは決まっていない」。
だとすれば、「生涯」などという曖昧な単位で、リスクを評価することなどできるはずがない。
さらに、「生涯100_シーベルト」という基準について、次のような重大な問題があるという指摘がなされた。
例えば、最初の1〜2年で50_シーベルトを浴びてしまい、その後に、「生涯」で累積線量が100_シーベルトに収まったという場合だ。1〜2年で50_シーベルトの被ばくというのは、深刻な健康被害が懸念される数値だ。しかし、「生涯100ミリ」基準では、基準以下で問題なしとなってしまう。
この指摘にたいして、食品安全委員会の答えは、「生涯100_シーベルトであれば問題はない」という見解。
つまり、「生涯100_」という基準は、原発事故直後に多くの住民が高い被ばくを受け、現在も汚染地域に住まわされているという現状を追認するために、年1_シーベルトという現在の公衆の被ばく限度を取り払ってしまうということなのだ。そして、高い被ばくという現状に合わせた新基準で「安全・安心」を宣伝する狙いがある。
さらに、「評価(案)」は、「100_シーベルト未満については、現在の知見では健康影響の言及は困難」であるという言い方で、100_シーベルト以下では健康被害への影響がでないかのような扱いをしている。
ところで、ICRP(国際放射線防護委員会)および日本政府が採用している放射線防護にかんする基本概念においても、「直線しきい値なし」モデルを採用している。「直線しきい値なし」モデルとは、「しきい値以下の被ばくでは健康に影響はない」とする
食品安全委 「100_ で問題なし」 |
ところが、食品安全委員会は、「直線しきい値なし」モデルは「採用していない」と明言した。
「生涯100_」とは、放射線防護にかんする基本概念まで変更し、事実上、100_シーベルトを「しきい値」にしようというものだ。
地域・家族の破壊
後半は、原子力災害対策本部、原子力安全委員会、文科省との交渉。
特定避難勧奨地点に指定されている伊達市霊山町から交渉に参加した男性が訴えた。世帯ごとの指定が、コミュニティーを破壊し、家族を破壊していると弾劾。区域ごとの指定にするよう求めた。
特定避難勧奨地点とは、計画的避難区域や警戒区域の外で、原発事故後1年間の積算放射線量が20_シーベルトを超えると推定された地点。地域ではなく個別世帯
伊達市霊山町から 参加した男性 |
さらに、福島市の大波地区、渡利地区の問題。大波、渡利は、福島市の住宅地。6月下旬の市当局による計測で、3マイクロシーベルト/時を超える線量が出たが、いまだに特定避難勧奨地点に指定されないまま放置されている。住民から強い弾劾の声があがった。
被ばくの実態を隠ぺい
福島県が県民の健康管理調査を行っている。ところが、ホールボディーカウンターおよび尿検査の検出限界値が、13ベクレル、0・2_シーベルトと非常に高い。検出限界とは、物質の分析で、その物質を検出できる最小の量のこと。
「チェルノブイリでは、尿中のセシウムが6ベクレル/g程度で、膀胱がんの前段の膀胱炎が過剰に生じている」と東大アイソトープ総合センター児玉教授が研究結果を発表している。これを見れば、13ベクレルという検出限界が高すぎることは明らか。
これにたいする対策本部の答弁は、「ホールボディーカウンターおよび尿検査は、内部被ばくで1_シーベルト以上かどうかを見るもの。個人が何_シーベルトの被ばくを受けたのかを調査するものではない。検出限界以下であれば、『県民の安心のため』という調査の目的は果たせる」と述べた。
つまり、県民健康管理調査の目的が、被ばくの実態を明らかにして、影響を最小限に抑えるというところにあるのではなく、被ばくの実態を隠蔽した上で、県民を「安心しなさい」と慰撫するところにあるということを、明け透けに語っているのだ。
住民を放射能汚染地域に放置しながら、「安心しなさい」と強弁する政府のやり方は許せない。追及を強めよう。
約5万筆の署名提出
対政府交渉に先立ち、「福島の子どもたちを守るための緊急署名」4万9775筆が提出された。この署名は、放射線量が高い地域からの避難、県民の内部被ばく検査の実施、法令1ミリの遵守とそのための食品規制値の見直しを求めて、原子力災害対策本部長、福島県知事、文部科学大臣、厚生労働大臣宛てに出されたもの。
2面
橋下の独裁政治ゆるすな
職員基本条例案・教育基本条例案の恐るべき正体
大阪維新の会は8月22日、大阪府・市の9月議会に「教育基本条例案」と「職員基本条例案」を提出すると発表した。11月には堺市議会にも提出するとしている。橋下は11月の大阪市長選挙を府知事選とのダブル選挙にする方針で、両条例案を選挙の争点にしようともくろんでいる。
公教育破壊の集大成
「教育基本条例案」は「日の丸・君が代」強制のための処分条例と考えられてきたが、それをはるかに上回る公教育破壊と新自由主義的な教育改革の満展開である。
前文で言う「民意」とは、住民の意見・意思ではない。「橋下は選挙で選ばれたから民意を代表している。だから橋下の政策に反対するものは民意にそむくものだ」、「教育行政も橋下の政策がストレートに実現されなければならない」というのが条例案の基本精神だ。教育においても橋下独裁を貫くという宣言だ。
教育の理念は「資本の国際競争力に役立つ人材の育成・供給」にすり替えられる。公教育が目的としていたこどもたちが「この社会の中で共に生きていく力を育む」ことは考慮もされない。
条例案で目立つのは目標、評価、マネジメント(管理)ということである。3年連続で定員割れしたら統廃合、学校評価の結果公表とりわけ学力テストの結果発表や、校長の目標・評価・管理システムは、教育の目標が学校や教員の生き残りに変わるという結果を招く。
「選択の自由」の名の下で差別、社会的排除も進む。競争力人材を育成するエリート校には人と金が集中する。学校間競争の下で、学校は「優等生」を集めたがる。「困難」を抱える児童生徒は敬遠されかねない。
橋下は、教育に従事する人の専門的判断や行為の価値を否定する。教育の専門性自立性を認めない。教育の専門的力量をないがしろにし、保護者との信頼関係を破壊し、校長中心の学校管理体制をつくる。校長中心の管理運営に反対する意思決定は、いかなる会議・場所でもしてはならないというのだから、教師の目は児童生徒の方を向きようもない。公教育の根本的破壊である。
「大阪内閣」と職員免職
「職員基本条例」は「大阪維新の会大阪府議会議員団」のホームページに狙いがあからさまだ。
「地方自治体組織の幹部は、全て任期付職員とし、大阪府の内外から広く公募を行います。これにより、首長の政策に賛同する有能な人材からなる『大阪内閣』を実現し、政策の迅速な展開を実現します」
「人事評価で2年連続して最低評価となった職員に『特別研修』を受講させることを義務づけ、これでも改善しない場合は免職の手続きにはいります」
「(給与や勤務条件について)10人程度の事業所も含めた全民間企業の実態を反映」
「組織改編によって余剰となった職員の免職のあり方を明文化します」
「分限処分や懲戒処分、職員の再就職について審査や調査を行う強力な機関として、人事監査委員会を創設します。この委員会は首長が任命する委員長及び2名の委員、公募委員2名の5名から構成されます」
これを読めば、橋下の「大阪都構想」とは「日本国の中に『大阪都』という国家をつくる」ものであることがわかる。橋下は大阪市長になって大阪市を大阪府に解体・吸収し、大阪都という小国家の独裁者になることを狙っているのだ。
知事のいうことに従わない職員には人事評価で最低ランクをつけ(最低ランク5%を義務づける)それが2年続けば免職の手続きに入るという。給与は民間の最低ラインを参考にする、整理解雇はどんどんおこなう。上司ににらまれないことだけに汲汲とする公務員だけが残る。
「地域主権改革」
大阪維新の会は、この二つの条例案を橋下流改革の集大成としている。橋下は、大阪を突破口に構造改革路線を推進しようとしている。その意味では、大きくは民主党政権の「地域主権改革」と大差はない。
これまで地域分権改革や三位一体改革で地方交付税の削減や市町村合併、国からの交付金の削減が強行され、地域経済は疲弊してきた。そのうえに出されてきたのが民主党の「地域主権改革」。「分権」ではなく「主権」としたのは、今までの分権が行政・財政上の分権を中心としたものであったことにくわえて、立法権の分権化、つまり条例制定権の拡大を強調するためだ。橋下は先取りして推進するという役割を自覚的に演じている。
新自由主義な教育改革は、すでに各地で行き詰まっている。これを橋下的な強引さで突破しようというのだ。
ワンフレーズ政治
橋下の特質はひとつには、デマやすり替えをも駆使して「敵」を作り出し、ワンフレーズ政治で大衆を扇動、動員するところにある。また、うそが露見したり、明白に失敗しても責任を取らない厚顔無恥さが、逆に強みになっている。さらに、際立った独裁志向ということだ。「今の政治には独裁が必要」と公言してはばからず、政敵を徹底的に叩く。
こうした橋下の特質が巨大独占資本や官僚にかわれている。橋下は府の機関として「地域主権課」まで設置し、地域主権型社会のモデルになると、突っ走っている。
財政再建はデマ
「財政再建」が橋下府政の最大のうたい文句だった。そして橋下は今年度予算にあたって「財政規律を厳格に守り、知事就任時の財政破綻状況から抜け出し、教育と治安へ思い切った投資もできました」、「就任時の財政破綻状況を考えると隔世の感です」とうそぶいていた。しかし現実を素直に見れば、橋下時代に府の借金は増えている。
地方自治体の財政状況は実質公債費比率にあらわれる。大阪府のウェブサイトで橋下は、大阪府の09年度の実質公債費比率が17・2%で、08年度の16・6%より悪化したことを認めている。そして「このまま何も対策を講じなければ・・・17年度には、25%を超えて財政健全化団体に転落してしまいます」と開き直っているのだ。
無責任な独裁者
橋下はこれまで労働者・市民に犠牲を強要してきたにもかかわらず、最大の売り物であった財政再建をはじめとして失敗を重ねている。
85億円で買い取ったWTC(ワールドトレードセンタービル)への府庁移転は破産した。防災拠点としても使えない。改修費は買い取り価格以上と試算されている。
4億円ほどの経費削減になるとして廃館を強行した児童文学館に関して、70万冊を府立中央図書館に移さざるをえず、増改築費が10億円かかるという。子どもたちの貧困はますます深刻化し、府立高校の「中退」問題も出口が見えない。
「大阪都構想」も先が見えない。竹山修身堺市長に対する「絶縁宣言」は象徴的だ。竹山は橋下の下で府の政策企画部長だったが、09年9月の堺市長選挙で橋下の全面的な支援を受けて当選した。しかし「堺市と府に二重行政はない。政令都市になったばかりの堺市を分割する必要はない」と「大阪都構想」に否定的な発言をくりかえした。「身内からの抵抗」に橋下は今年6月に「国交断絶状態、絶縁だ。戦闘モードに入る」と恫喝した。
一つ一つ検証していけば、その傲慢な態度とはうらはらに、橋下がいかに失政をくりかえしてきたかは一目瞭然だ。
この男が大阪府民に対する責任を放り投げて大阪市長選挙に出るというのだ。「このまま何も対策を講じなければ…財政健全化団体に転落」と言いながら。大阪市長になってこれまでの市政を引き継ぎ「市の財政を改善したのは橋下」と大宣伝するのだろうか。大阪市民はそのようなことは決して許さないだろう。
二つの反動条例案を葬り去ろう。橋下の独裁政治を打倒する共同戦線を構築しよう。
「大阪府教育基本条例(素案)」
(大阪維新の会 8/22 発表)から抜粋
(前文)
教育委員会の独自性という名目のもと、教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分に反映されてこなかったという不均衡な役割を改善…民の力が確実に教育行政に及ばなくてはならない。
とりわけ加速する昨今のグローバル社会に十分に対応できる人材育成を実現する
(教育理念)
一 規範意識を重んじる人材を育てること
二 義務を重んじる人材
三 お互いに競り合い自己の判断と責任で道を切り開く人材
四 社会から受けた恩恵を社会に還元できる人材
五 愛国心および郷土を愛する心に溢れる
六 世界水準で競争力の高い人材を育てること
(教育関係者の役割分担)
知事は、教育環境を整備する一般的権限を有する。高等学校が実現すべき目標を設定する。
府教育委員会は、学力調査テストの結果について、市町村別及び学校別の結果をホームページ等で公開するとともに、府独自の学力テストを実施し公開しなければならない。
校長は、…学校の具体的・定量的な目標を設定した上、当該目標の実現に向けて、幅広い裁量性をもって学校運営を行う。校長及び副校長は、学校運営を行うにあたり、教員及び職員に対して職務権限を発する権限を有し、教員及び職員はこれに従う義務を負う。
教員は、組織の一員として、教育委員会の決定、校長の職務命令に従うとともに、校長の運営方針にも服し、学校運営の一翼を担わなければならない。
保護者は、…社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない。
周辺地域住民は、…学校運営に主体的に関わるよう努めなければならない。
学校運営協議会 校長は…学校運営協議会を設置しなければならない。
(教育行政に対する政治の関与)
府教育委員会の委員が…目標を実現する責務を果たさない場合、又は…懲戒若しくは分限処分及びその手続きをすべきであるにも関わらずこれを怠った場合、…罷免事由に該当するものとする。
(校長及び副校長の人事)
府教育委員会は、府立高等学校の校長を任用するときは…任期又は在職期間を定めて行う。任用にあたりマネジメント能力(組織を通じて経営方針を有効に実施させる運営能力)の高さを基準として登用しなければならない。
府教育委員会は、設定された目標に照らして、校長及び副校長の業績に基づき人事評価を行い、その結果を、給与及び任免に反映しなければならない。
(教員の人事)
校長は、授業・生活指導・学校経営等への貢献を基準に、教員及び職員の人事評価を行う.教員の評価にあたっては、学校運営協議会による教員評価の結果も参照しなければならない。校長は、人事評価の結果を府教育委員会に意見具申し、府教育委員会はその評価を直近の給与及び任免に反映しなければならない。
(懲戒・分限処分)
5回目の職務命令違反又は同一の職務に対する3回目の違反を行った教員等は、直ちに分限処分とする。
職制もしくは定数の改廃または予算の減少により廃職又は過員を生じたときは、教職員の免職を行う。
(学校制度)
大阪府立高等学校条例第10条に定められた大阪府立高等学校通学区域に関する規則を廃止し、通学区域は府内全域とする。
3年連続で入学定員を入学者数が下回るとともに、今後も改善の見込みがないと判断する場合には、府教育委員会は当該高等学校を他の学校と統廃合しなければならない。
(学校の運営)
校長は、学校運営に関する全ての責任を負い、教員及び職員は…いかなる会議・場所においても、これに反する意思決定をしてはならない。
(最高規範性)
この条例は、府の教育に関する最高規範であって、この条例に反する一切の府における条例、規則、要項、指針等は無効である。
3面
「日の丸・君が代」裁判 学習・交流集会
全国ネットワークをつくろう
全国から集う!全国で闘う! 「日の丸・君が代」裁判全国学習・交流集会が、8月13日、都内でひらかれた。この集会は昨年から始まり、今年は2回目。全国から120人が集まった。
午前中は、「前日たたかわれた最高裁要請行動、文部科学省交渉」の報告、全国からの報告、関東からの報告がおこなわれた。
全国からつぎつぎと報告(8月13日 都内) |
全国から報告
北海道、宮城、新潟、三重、大阪、兵庫、香川、福岡から10本の報告がおこなわれ、静岡、大分、北九州、山梨、石川からメッセージがよせられた。
東京の全体状況報告のあと、@予防訴訟、A被処分者、B河原井・根津裁判、C神奈川・予防訴訟と不起立個人情報保護裁判、D藤田裁判の報告がおこなわれた。
質疑のあと、東京・被処分者の会が「東京の教育を変えよう! 学校に自由と人権を!10・22集会」への参加をよびかけた。
3つのテーマ
午後からは3つのテーマで討論。T.「日の丸・君が代」を中心とする裁判闘争の分析と課題。U.大阪・橋下の攻撃の分析と課題。V.今後の全国的な闘いの課題。
大内裕和さん(中京大教員)は、06年教育基本法改悪反対闘争のときとの違いをとらえ、橋下の手口を分析して以下のように問題提起した。
橋下の「新しさ」
06年に教基法が改悪された。橋下の攻撃は、改悪教基法のもとでおこっている。政権も自民党ではなく、民主党に変わった。橋下は、既存の政権の人間ではない。ここは、石原都知事(自民党)とは違う。今おこっていることは、単純な「戦前回帰」ではない。財政赤字解決の手段として、道州制・自治体リストラを狙っている。単なる保守反動ではない橋下のやり方を、しっかり見据えていくことが重要。
9・24全国集会へ
最後に、@来年も開催を、A全国ネットワークをつくろう、B若い世代に訴えよう、C9・24全国集会で再会しよう、とまとめが提起された。
大阪府条例案撤回もとめる
2日、労働組合交流センター関西協議会と関西合同労働組合のよびかけで、大阪維新の会が準備している「職員基本条例案」と「教育基本条例案」の撤回を求める申し入れが、大阪府庁でおこなわれた。
まず大阪府議会議長にたいして二つの基本条例案が提出されたら廃案にするよう申し入れ。 つづいて橋下知事にたいして「憲法・教育基本法を無視した、教育を破壊するものを認めることはできない」として、基本条例案を提出しないよう申し入れた。
申し入れ行動の後、参加者全員で天満橋駅前に移動し、基本条例案への反対を呼びかける街頭宣伝をおこなった。
大阪府庁に申し入れ(2日 府庁前) |
9・18三里塚関西集会
萩原進さん(三里塚芝山連合
空港反対同盟・事務局次長)の話を聞こう
萩原進さん(7月18日) |
8月6日、政府と成田空港会社は、三里塚芝山連合空港反対同盟が所有する天神峰現地闘争本部の破壊・撤去を強行した。
政府は成田治安法によって90年から実に21年間にわたって現闘本部を不当にも封鎖してきた。
今度は機動隊の暴力を前面に押し立てて、現闘本部を破壊したのである。
決戦に突入した三里塚
今回の現闘本部破壊の強行は、政府にとって成田空港の完全空港化が第一級の国策となっていることをしめした。政府・国土交通省は2014年までに成田空港の年間離発着30万回を達成することに日本の航空政策の成否をかけているのだ。
しかし成田空港の敷地内では、現在も反対派農民が営農している。たたかう農民を空港敷地内にかかえたままで、完全空港化などはありえない。
現闘本部破壊や、市東さんの農地強奪をねらう裁判の動きをみれば、政府・国交省、空港会社が、「反対同盟・市東孝雄さんの存在とたたかいが反対派農民の要をなしている」と認識して、攻撃を集中していることは明らかである。
現闘本部破壊の次は、市東孝雄さんの農地の強奪をねらっている。三里塚闘争は重大な決戦局面に突入した。
来る18日おこなわれる三里塚関西集会では、反対同盟事務局次長の萩原進さんから、三里塚闘争の勝利の核心について提起を受ける。9・18集会へ参加し、10・9三里塚全国闘争にかけつけよう。
構造改革に回帰した民主党
野田新政権登場の意味するもの
8月29日に投開票がおこなわれた民主党の代表選挙で野田佳彦が決選投票で海江田万里を破って民主党の代表に選出され、翌30日、首相に指名された。
今回の代表選の焦点は、民主党内で最大勢力を持つ小沢一郎の政治的復権の成否であった。
小沢は26日、自らのグループの会合で「『国民生活が第一』という政権交代の原点にかえるために鳩山さんと相談し、海江田氏が一番だと判断した」と海江田支持を表明した。これに海江田は「マニフェストが弊履のごとく捨てられており、許せないという思いで立候補した」と応えた。
「生活が第一」を否定
28日には、海江田はさらにふみこんで、8月9日の3党合意について「白紙にしようとなるのか、継続しようとするのか、その時決めればいい」と発言し
た。3党合意とは、特例公債法の成立と引き換えに民主党が自民・公明にたいして子ども手当、高速道路無料化、農家への戸別補償など民主党のマニフェストの大幅な見直しの約束をしたことである。これを海江田は反故にすることもあると発言したのだ。さらにそれまで推進の立場であったTPP(環太平洋連携協定)についても、「慎重に対応する」と態度を変更した。
これに対して大連立を呼号し、消費税増税の強行、TPP推進、原発再開をかかげる野田が反小沢勢力を糾合して海江田を破り、小沢復活の道を阻んだのだ。
小泉を超える反動
野田は組閣前の1日に、経団連の米倉をはじめ経済団体を訪問した。何よりも財界との関係修復を優先させ、「国民生活が第一」という政権交代のスローガンを投げ捨てた。また野田は日米同盟重視、中国敵視、集団的自衛権の行使の容認、そして「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」と公言するなど、その安保・外交政策や歴史観はかつての小泉政権以上に反動的である。
野田新政権の登場によって、民主党の構造改革路線への回帰は確定した。野田が大連立へと進むならば、「ねじれ国会」の解消とはうらはらに、国内矛盾はいっそう深まっていく。
また対米追随路線は、東アジアにおける孤立を深めるとともに、沖縄闘争を再度前面化させるだろう。(T)
誤配を責められ労働者が自死
日本郵便N支店事件
5月31日、日本郵便会社(N支店)で働く集配労働者のMさんが自ら命を絶った。これについて、同じ職場に働くSさんから話をうかがうことができた。
激しい叱責
Mさんは、5年ほど前に「人事交流(強制配転)」でN支店に転勤してきた。慣れない職場環境のなかで誤配が発生。これに対して、支店幹部から激しい叱責を受け、自己責任を押しつけられ、「うつ病」においやられた。
病気休暇で仕事を休んでいたが、その3年の病休期限がせまり、職場に復帰した。ところが、支店側はこのMさんを配慮するどころか、仕事のきびしい所にまわした。さらに、「完治してから復帰せよ」と迫り、「自己退職」させようとした。
支店が殺したも同然
当局がMさんを殺したのだ。支店側は認めないだろうが、職場の労働者は、みんなわかっている。Mさんと同じように自己責任を押しつけられて、支店側から土下座させられた仲間もいる。こういう事が、職場の中では常態化している。
Mさんは、支店、組合支部や分会に「このままでは死んでしまう」との告発文を匿名で送っていた。しかし、匿名のためもあり、だれもMさんに気が付かないままに、5月31日の事態をむかえた。
結果論だが、誰もほんとうになるとは思っていなかった。つまり、Mさんの事を真剣に考えていなかったという事だ。
労働組合は、Mさんの告発を受けながら、これを防ぐことができなかった。組合支部は「(Mさんは)自殺ではなく、病死」といい、支店側と同じ対応をしている。これは、労災認定をさせないために、支店側の立場に立つということだ。労働組合のあり方が問われている。こういう支店と労働組合(支部)の対応にたいして、家族も激しく怒っている。
分会で追悼集会
分会では、7月9日にMさんを追悼する分会集会をおこない、分会として声明を出すことを決定した。分会内にもいろいろ意見の違いはあるが、ここから出発したいと思っている。
チュニジアの「ジャスミン革命」は、一人の青年労働者の焼身自殺が発端となって始まった。一人の労働者の死は、けっして小さいものではない。
何もしなければ、Mさんの存在は歴史から消し去られてしまう。彼の死をかけた告発を、同じ労働者が受け継いでいかなければならない。(労働通信員 T)
4面
原発事故と放射線障害
海老澤 徹さん(元京大原子炉実験所助教授)
7月17日、神戸市内で元京大原子炉実験所助教授・海老澤徹さんの講演会がおこなわれた(本紙前号既報)。この講演の要旨を主催者の了解を得て掲載する。〔文責・見出しとも本紙編集委員会〕
海老澤徹さん(7月17日 神戸) |
今日は福島第一原発事故の原因、経過・現状、将来の事故収束はどうなるか、放射線の性質と危険性、線量限度と放射能汚染などの問題を話していきたいと思います。
事故原因はご存知のように地震と津波による全交流電源の喪失です。外部電源は地震で高圧鉄塔が倒壊し、停止してしまいました。第一原発の13台の非常用発電機のうちの12台が津波のために一斉に停止しました。残りの1台によって5号機と6号機がかろうじて崩壊を免れたのです。
交流電源以外にも、配電盤・制御室・ポンプ・バルブ・熱交換器、全部が機能しなくなりました。完全にやられてしまったわけです。
また、この原子炉建屋の4つの使用済み燃料プールの冷却システムも失われました。燃料は使用済み燃料プールのほうが原子炉よりも多いのです。この使用済み燃料プールの冷却システムがすぐ喪失しまして、非常にその安全性が懸念される状況にあります。
世界に大きな衝撃
このように多数の安全装置が破壊され、多数の原子炉・核燃料が同時に危機に陥った事態というのは40年以上にわたる軽水炉の歴史の中でも初めてです。これは世界中に大きな衝撃を与えました。軽水炉の事故は32年前のスリーマイル島の事故が最初ですが、あの事故ではシステムは全く破損していません。冷却システムもすべて健全であったために、炉心溶融を起こした後は炉心が正常に冷却されました。そのため圧力容器も格納容器も健全でした。炉心溶融は起こしたが、それほど深刻ではなかった。
チェルノブイリで事故を起こしたのは黒鉛炉です。これは核兵器用のプルトニウム生産炉を発展させて造られた原子炉です。いま世界には黒鉛炉はありません。全て軽水炉になりました。その意味で、軽水炉でこれだけの大事故を起こしたというのは、非常に衝撃的なことなのです。
日本の原発は一カ所に多数基が置かれています。これは世界的にはそんなに多くありません(2基がペアになってるのは多い)。東電福島第一では6基、柏崎にいたっては7基もあります。これは1基がカタストロフィーを起こすと全部の原発が大事故になってしまうという恐怖を世界的に与えたのです。
東電と国の責任
この事故の責任はまず世界有数の地震津波地帯に備えもなく原発を設置した東京電力にあります。同時にその設置を許可し、日常的に運転を認めてきた国にも同様の責任があります。
福島第一原発のサイトは、もともとは丘陵地帯でした。この丘陵地帯を削り込んで低地にしておいて原発システムを造ったのです。どうしてこんなことをしたのかよく分かりませんけれども、津波にまったく弱い施設を造ってしまったのです。
増大する汚染水
これからどんな状況になっていくかですが、1号機・2号機・3号機では、3つの炉心が溶融して下のほうに移動しています。その一部は圧力容器の下部が破損していると言われていて、格納容器の底面に落下しています。しかしそれはあくまで推定で、状況は不明です。
原子炉容器・格納容器は、3つの原子炉すべてで破損しています。炉心に入れた冷却水は全部原子炉建屋の地下やタービン建屋の地下に流れ込んでいます。破損箇所がどこかはわかりません。
炉心冷却のために注入された冷却水は燃料と接触して冷却しています。そのため放射能で強度に汚染されています。この放射能汚染水は格納容器のウェットウェルの破損部から、原子炉建屋とタービン建屋の地下室に流出して充満しています。非常に汚染が強くて、2号機ではタービン建屋の冷却水に近づくことすらできません。人間なら数時間で死んでしまうという強烈な放射能です。
この増大する汚染水が地下室からオーバーフローして海にあふれ出すというのが、いま一番懸念されることです。そのため、6月段階からやってきたのが循環型原子炉冷却系です。汚染水を集中廃棄物処理施設に移動します。そこからポンプアップして放射能を除染し、その後淡水化をして水貯留水槽に入れて、それを3つに分けて、高台に設置された原子炉注水ポンプで炉心に送り込んでいます。いまはこれができあがって、汚染水の増加をぎりぎりのところで防いでいるのです。
これからの課題は、この水量を減らしていくことです。新たな除染装置系統を増設して汚染水の量を減らし、人間が少しでもここに近づけるようにしなければなりません。
燃料を管理下に
次に福島第一原発の事故収束ですが、事故収束の目標は、いま破損してる1号機・2号機・3号機の燃料を再び人間の管理下におくことです。燃料を全部回収して冷却密封容器に入れて保管できるようにするのです。チェルノブイリのような石棺方式はだめです。あれをやったら、この先十万年以上ずっと管理を続けなければなりません。
燃料を回収するためには、現場の放射線量を下げることが重要です。少なくとも1_シーベルト以下、できれば0・1_シーベルト以下にしないと本当の作業はできません。第一にやらなければならないのは、格納容器の密封をもう一度回復させた上で循環冷却をすることです。そうすると放射能レベルを下げることができ、調査や工事ができるようになります。事故収束期間中の最悪の事態は、事故現場に滞在できないような事態が発生することです。これが起こったらおしまいです。
再開のための儀式
ストレステストというのが、原発運転再開のための条件になっています。これは、地震や津波などのいろんな非常事態に原子炉が耐えられるかどうかをチェックするものです。地震や津波に耐えられるようにしようとすれば施設全体を大幅に造り直さなければなりません。それは技術的に不可能です。
結局、いまやれるストレステストというのは、再開のための儀式に過ぎません。それでは安全は保障されません。
ベクレルとシーベルト
放射線というのはエネルギーが強くて、分子構造を構成している電子を弾き飛ばしてしまいます。それによって分子を破壊することができる、そういう粒子線です。
放射能の単位ですけれども、1ベクレルというのは、ある放射性物質から放射線が1秒当たり1個放出される放射性線源の強度のことです。食物の汚染で100ベクレル/gというのは、その食物がグラム当たり毎秒100個の放射線を出してますよということです。
被ばく線量の単位にはグレイとシーベルトがあります。グレイは物理的な単位で、1`グラムの生体に放射線があたって1J(ジュール)のエネルギーが吸収される時の放射線量が1グレイです。1グレイで生体の温度は0・00025℃上昇します。被曝によって半分の人が死亡する線量は4グレイぐらいですから、被曝で生体の温度が1000分の1度上がったら人間は死んでしまいます。放射線というのは非常にエネルギー効率のよい殺人光線なのです。
通常はグレイのオーダーを浴びるようなことはありません。放射線被曝による発がんリスクなどを調べるためには、シーベルトという単位を使っています。シーベルトはグレイに放射線荷重係数と組織荷重係数をかけると出てきます。
放射線荷重係数というのは放射線の種類による影響の違いを表すもので、β線、γ線は1、α線は20です。同じエネルギーの被曝をしてもα線は20倍です。
つぎに組織荷重係数ですが、甲状腺だけを被曝した時は組織荷重係数は20分の1になります。福島事故の最初の1カ月ぐらいは、ほとんどがヨウ素の被曝です。ヨウ素は取り込まれると甲状腺だけに集中します。だからヨウ素の場合は甲状腺の組織荷重係数20分の1をかけるわけです。
DNAを損傷
放射線の危険性というのは、細胞の中のいろんな分子の電子が電離を受けて破壊されることです。DNAが損傷を受けると、放射線障害が出現するという特徴があります。DNAの損傷は自然放射線でたくさん起こっていますが、ほとんどは修復されます。ただ、中には修復されずに長い時間かかってがん細胞になることがあるのです。
放射線の身体への影響は急性障害と晩発性障害があります。
一度に大量の放射線を浴びると、急性障害が生じます。これは被曝線量が増えるほど症状が悪化します。DNAが損傷を受けていますので、治療の方法がありません。
いま問題となっているのは晩発性障害です。被曝線量に比例して確率的に発がんがあらわれます。晩発性障害は医療被曝などでも起こりうるのですが、具体的な危険性はよく分かっていません。医療被曝では被曝線量がよく分からないからです。また発がんまでに長時間かかるので、追跡調査が困難なのです。
そのために、いまでも放射線の危険性の評価は、広島・長崎の被爆者の発がんデータから主として推定されています。原爆で生き残った約9万2千人と、その広島・長崎に同じような生活条件下で生活している人で被爆のなかった人約2万8千人、合わせて約12万人を対象に追跡調査をずっとやっています。死亡者が出たら死因を調査し、発がんでどのくらいの人が死んだかを調べて影響を見るのです。
そこで分かったことは、年齢が若いほど放射線による影響を受けやすいということです。
驚くべきことですが、100_シーベルト以下の被曝では晩発性障害は発生しないと断言する専門家が日本にもいるんです。有名になった長崎大学の山下俊一教授などです。なぜ専門家がそういうことを言うのか、よく分かりません。現在いろんな国際機関を含めて、低線量であっても直線関係で被曝の影響を受けるというのが常識です。
不当に高い避難基準
一般人の被曝線量限度というのが、ICRP(国際放射線防護委員会)によって決められています。その1990年勧告に基づいて日本の法律がつくられています。一般人の線量限度は1_シーベルト/年、約0・1マイクロシーベルト/時です。
ところが福島原発事故における一般人の避難基準が20_シーベルト/年です。これは不当に高い数字です。チェルノブイリ原発事故における避難基準は5_シーベルト/年でした。それに比べると、実に4倍も高い。
職業人に対する線量限度は、実効線量が5年間積算で100_シーベルト、年平均20_シーベルトです。1回当たり最大が50_シーベルトです。50_シーベルトを2回浴びると、あとは放射線作業ができません。
いま福島原発の事故収束作業における線量限度は、250_シーベルトに引き上げられています。これを超えた人が7人ほど出ています。600〜700_シーベルトも浴びた人が5人ほど出ています。
最後になりますが、20_シーベルトの避難基準の問題です。福島県の汚染の地図を見ると、20_シーベルトという基準は、人口密集地帯を避難地域にしないという政治的な意図があらかじめあって決められたのではないかと推定されます。
5面
政府は謝罪と賠償をおこなえ
8・10 世界同時水曜デモに参加して
8月10日夕刻、大阪市役所前の中之島公園で、日本軍「慰安婦」問題解決のための「世界同時水曜デモinおおさか」(主催:日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)がひらかれた。ゼッケンやプラカードを手に150人が参加。
この日、韓国をはじめ、世界と日本の各地から同時に、日本政府にたいして「謝罪と賠償を行え!」と突きつけたのだ。
人間の尊厳の回復を
集会は司会の悔しさと決意をこめた言葉ではじまった。「故金学順ハルモニの告発から20年を経過しながら未だ解決できず、彼女らの傷はいえてない。私たちは解決のために闘っていかなければならない」。
主催者あいさつは方清子さん。「本日、韓国では夏休みの子どもたちを含めて300人近い人々が日本大使館前に集まり、982回目を数える定例水曜デモと併せて集会が開催された。多くの国会議員も参加した。戦後66年、植民地支配の解放から66年を経て日本が民主主義と人権の守られる社会になっているのか、暗澹たる気持ちになる。他方、先日の金学順ハルモニ告発から20年目の集会では、口汚くののしる者が存在する一方で、大勢の方が結集してくれた。きょうも日本の良心、次の世代に平和と人間を大事にする社会をバトンタッチしたいと願う人々が結集した。日本社会でも差別と同時に、大震災、原発事故で命が軽んじられ、放射能被害が拡大する将来への不安な気持ちで一杯だが、それを吹き飛ばして今こそいろいろな分野でたたかっている仲間たちが手をつなぐとき。被害者の方々が本当に解放され、人間の尊厳が回復されること、生存しておられる間にその日がやってくるように頑張っていきたい」と強い決意を述べた。
「慰安婦」の記述消える
「子どもたちに渡すな!危ない教科書 大阪の会」は、2001年から教科書運動を始め、「つくる会」系の教科書使用を昨年までは全国で1・7%に押さえてきたが、「慰安婦」問題の記述はすでにどの教科書からも消されてしまっていると批判した。そして「とんでもないことが起こっている」と、東大阪市で育鵬社版公民教科書が採択された事を報告。憲法を否定し原発を推進する教科書の内容を具体的に批判し、このままでは来年4月には4000人の中学生に渡る、絶対に許さない、子どもたちに渡さないために闘おうと訴えた。
歴史を忘れるな
朝鮮総連の方は「66年たってもまだこのような闘いを続けなければならないことに忸怩たる思い」「高校無償化からの排除も、『慰安婦』問題、教科書問題も根底は同じ問題」と述べた。そして「無償化から1年4ヶ月、全国の朝鮮高校9校は文科省が自ら出した適用基準に基づいて申請を終えているのに8ヶ月間たった今も審査すら開始していない」と、怒りをこめて報告。「ピョンヤンでハルモニの話を聞いた。歴史を忘れるな、日本で朝鮮学校を守り、この歴史を子どもたちに伝えて欲しいと訴えられた。当事者として闘っていく」と決意を述べ、「無償化除外に対して訴訟も辞さない」と支援を訴えた。
韓国、台湾からも
韓国から平和通信使として来日された市民の方も10数人が涼やかな横断幕を掲げて参加。「韓国併合100年に対抗して平和の巡礼をしている。『慰安婦』問題は非人間的、反生命的、国家による暴力。記憶したくもない痛い過去であるが、日本政府は素直に認め、謝罪し和解しなければならない」と述べた。台湾からも来日中のドキュメンタリー映画監督が参加、「台湾にも多くの『慰安婦』がいる、歴史を繰り返してはならない、アジアの人々がひとつになって闘える目印を作っていきたい」とアピールした。
最後にニューヨークのサックス奏者Masaさんが登場。彼女の演奏とともに大阪駅近く、西梅田公園までのデモに出発した。退勤時の労働者など、多くの市民の注目を集めた。
ハルモニが生きておられる間に解決を。猶予はない。(大阪 N)
大阪市内をデモ行進(8月10日) |
8・6ヒロシマ 〜平和の夕べ〜 参加者の感想より
ウソ見抜く力つけよう
今年のヒロシマは特別でした。中沢さん、小林さん、ねねさん。どの人も「ヒロシマ、ナガサキの重みが変わった」「66年が過ぎ、被爆の重さが伝わっていたのか」と話しました。被爆者の声を本当に聞いてきたのか。無視し、反省せず、その重みを正しく伝えてこなかったことに怒りがわきます。
反原発の世論をまき起こし、再びウソをつかせない、ウソを見抜く力をつけていきます。原発を進めようとする力は、とてつもなく大きいですが、負けないパワーをつくっていきたい。フクシマで苦闘する人たち、被曝している町や村を再生させたい。
一所懸命やっている人たちは、ほんとうにやさしい。安全神話をつくってきた者は早々と逃げたり、反省もしない。このギャップに絶望しそうになってしまうけど。放射能とのたたかいが、どんなに大変か覚悟がいると知り、丁寧に慎重にやっていこう。
(とよこ)
中沢さんの話に涙
小学校5年のとき、学校で『はだしのゲン』を読み、その映像とメッセージの恐ろしさにショックを受けました。今回、直接に中沢啓治さんの体験と憤りを聞き、生々しい、家族の命が目の前で奪われていったことを聞き、自分に置き換えながら聞いていると、涙というか怒りというか。
私たちは世界ではじめて原水爆の被害を受け、その痛みも知っていたはずなのに原子力に頼ってきていた。原発は一刻も早くなくすべき。もう騙されず、市民が立ち上がるとき。草薙さん、小林さんも言っていましたが、国、裁判所は一体。戦前同様のこの国、社会を変えていかなければ。(エム)
投稿 「障害者自立支援法」撤廃
人間らしく生きられる新制度をもとめる集い
毎年秋、関西の地で「障害者自立支援法」に反対する集会を、実行委員会の主催で開催してきました。今年も9月23日に行います。
「障害者自立支援法」は、一昨年秋、当時の長妻厚労相が廃止を表明。昨年1月には、今後の「障害者」政策を決める機関として、「障がい者制度改革推進会議」(以下「推進会議」)が発足。過半が「障害者」とその家族で、国際的な「障害者」団体の求めによって国連で採択された「障害者権利条約」を国内批准するための法整備の議論を進めてきました。
それをふまえて、前国会で「障害者基本法」が改定され、来年の通常国会では「障害者総合福祉法」(「障害者自立支援法」にかわる新法)、再来年の通常国会で「障害者差別禁止法」の制定が予定されています。
しかし昨年以降、政府・厚労省・国会は、この「障害者」を軸とした、新制度にむけた動きに敵対する動きをしています。〔本紙85号〕
自立支援法撤廃の約束と、「障害者」が参加する新たな制度構築のための体制が、否定されてしまうのか否かがかかった瀬戸際にきています。
総合福祉法にむけて
「推進会議」のもとにおかれた総合福祉部会が、8月30日に総括的報告(総合福祉法の骨格)を出しました。それを法案化するのは厚労省です。大衆運動の力がなければ、来年審議される総合福祉法案も、厚労省によって、今回の報告の核心を反映しないものにされてしまいます。
攻撃のわかりにくさ
「障害者自立支援法」が「介助に金をとる」というわかりやすい攻撃だったのに比して、今の攻撃は極めてわかりにくい構図となっています。
例えば、「障害者基本法」の改定では、推進会議の報告の核心部分を解体するのに、政府は「可能な限り」という5文字を6ヵ所挿入しました。注意深く読まないと、核心部分が骨抜きになっていることはわかりません。
また、「障害者基本法」というものも理念法であるため、「障害者」の生活実感からはわかりにくいものです。推進会議が実現しようとしている制度の背景にある「障害者権利条約」もまたわかりにくいものです。
このような中で、“推進会議まかせ”では、政府・厚労省・国会の反動を押し返すことはできません。今一度、「障害者」を先頭とした闘いのうねりをまきおこしていかなければなりません。今、分かりやすく「真実を知らせる」ことが必要です。
反動を押し返す、大きなうねりを作りだすために、今年の10・28全国集会に向けて、9・23の集いをひろく真実を知らせていく場としましょう。この集いにご参加ください。また、ご賛同および賛同金カンパのご協力をお願いします。〔要項は6面〕
(TM)
沖縄・高江ヘリパッド工事 県警が新たな動き
8月22日、沖縄県警が高江の闘争現場に来て「ゲート前の車をどけなさい」と通告をした。この日、県警本部15人とともに、名護署5人、沖縄防衛局3人も同行してきた。
3月から6月までは、国の特別天然記念物ノグチゲラの繁殖期のため、重機を使った工事は停止していた。7月以降は、いつ工事が再開されてもおかしくない状況にある。
県内の運動団体・労働組合などが、地元住民に連帯し、抗議のため高江にかけつけ、多くの車両がゲート前に駐車し、沖縄防衛局による重機搬入を阻止するかたちになっている。
与那国島に自衛隊配備 2015年度末までに
北沢防衛相は、8月23日の記者会見で「沖縄県与那国島に自衛隊配備」を明言した。昨年12月に決定した新「防衛計画の大綱」で、自衛隊の南西諸島配備は明記されたが、防衛相が明言したのは初めて。
北沢防衛相は「2011年度で約3千万円の調査費を計上し、その予算を執行している。中期防衛力整備計画(11年度〜15年度)の15年度末までには沿岸監視部隊は配置したい」と述べた。
ちなみに民主党は、一昨年の政権発足直後、前政権が検討していた与那国島への陸上自衛隊配備について、「先島諸島の防衛体制を整えることは大事だが、果たしてそこを早急に整備する必要があるのか。いたずらに近隣諸国に懸念を抱かせるようなことはせず、丁寧にやりたい」(09年9月29日、北沢防衛相)と、実施しない考えを示していた。
「朝鮮高校無償化」手続きを再開
8月29日、菅首相は朝鮮高校の無償化手続きの再開を指示。文部科学省は適用に向けた手続きに入った。
昨年4月から高校無償化は始まったが、朝鮮高校のみが適用除外されていた。批判が高まるなかで、適用にむけた手続きが進行中の昨年11月、朝鮮半島での砲撃事件を口実に菅首相は手続きを停止していた。
自民党などが撤回を要求し、まだ予断を許さない。また、東京、大阪、埼玉、千葉、宮城が、朝鮮高校適用除外を根拠に、都府県レベルでの補助金を凍結・カットした問題も、復活に向け、たたかいを強化しよう。
6面
寄稿 自衛隊の「国軍化」許すな
災害出動で「戦場体験」 元自衛官 小多基実夫
3・11東日本大地震と津波から、まもなく6カ月になる。この国内外を貫く大事件を舞台に、自衛官の奮闘ぶりがテレビや雑誌で大きく報道され称賛されるという、自衛隊の歴史始まって以来の事態が生み出され、自衛隊に対する社会的評価も激変している。それに影響されたかのように、反戦反基地運動の側においても「自衛隊のあり方」をめぐっての模索と議論が一斉に開始され、「国家の武装」「民衆(国民)にとっての軍隊の意味」「軍隊と兵士」という根本的な問題が浮上してきている。
自衛隊を災害救助隊に?
世論調査での自衛隊支持の理由や、また多くの自衛官の入隊の動機も、「国防」ではなく「災害救助」である。そのような自衛隊内外の人民の意識を踏まえて提起されているのが「自衛隊を災害救助隊に」というスローガンである。
結論的に言って、私はこの意見に反対である。その理由は、自衛隊は歴然とした軍隊であり、戦争のための組織であり、災害救助隊に「横滑り」させることなど不可能だからである。
自衛隊法は、第3条(自衛隊の任務)1項で「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。」と規定し、2項でその他の任務として「自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において…次に掲げる活動… 一、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応… 二、国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進…」と定めている。
「災害派遣」は、自衛隊法3条1項の主たる任務でないばかりか、「主たる任務に支障を生じない限度において行う」とされる2項にすら該当せず、83条という低位にようやく登場する任務である。「訓練でも装備面でも災害救助の位置づけがまだまだ不十分だ」と嘆く向きもあるが、当然のことである。
すなわち法律において「自衛隊は戦争と革命鎮圧のためにこそ存在する」と公式に宣言しているのであり、個々の隊員の思いや民衆の希望の延長線上で、この本質的位置づけが変わるものではない。
今回のように現に生じた大災害においては、自衛隊を含めその時存在する全ての社会的機能を投入すべきことは当然であるが、災害救助体制の「予めの準備」は、戦争を基軸任務とする自衛隊(軍隊)に頼るのではなく、災害救助のための専門的体制を確立する方向で考えなくてはならない。
戦争を「本務」とする自衛隊
現実に自衛隊の進んでいる方向は、中期防衛力整備計画(2011〜2015年度)に明らかである。
その最大の特長は、沖縄方面(=対中国軍事態勢)の強化である。
与那国島に陸自沿岸監視部隊の配備。空自那覇基地の戦闘機部隊を1飛行隊から2飛行隊に倍増。シーレーンの防衛(海航路の制圧)体制強化。
北沢防衛相「辺野古V字滑走路」案を沖縄に通告。オスプレイMV22を来年10月から米軍普天間基地に配備すると発表。民間港の那覇新港へ海自イージス艦・潜水艦の入港を強行。
下地島飛行場の日米両軍共同基地化策動。馬毛島(鹿児島県)の米軍艦載機訓練基地化策動。即ち「自衛隊法3条1項」の方向での大増強だ。
さらにPKO(自衛隊法3条2項)関連では、南スーダンへの派兵策動やジブチの自衛隊基地の開所と隊員の派兵増強など目白押しである。
戦時体制としての自衛隊10万人出動
次に今回の災害における自衛隊にかかわる特徴について。
補給・兵站、自治体等との連携、これら全部が「1〜2日で終わる演習」ではなく、数カ月にわたる長期の実戦として日々積み上げられている。これが自衛隊の戦争体制構築にとっては大きい。
第1に、高速道路をはじめとした幹線道路や滑走路の応急的な復旧、燃料類のドラム缶での緊急輸送等、これらは歴史的に米軍が得意とし日本軍が弱点としてきた前線への輸送活動(兵站)に結びつくものである。
今回の自衛隊10万人動員というのは、食糧でも1日30万食×4カ月=1200万食、衣食住すべての配付・回収等を自己完結させ、その上で捜索、救援、復旧作業などをおこなったのである。自己完結とは「あらゆる支援が無い、いわば外国での活動のためのもの」である。
第2に、市民と被災者を結ぶ「支援物資」という自治体行政の守備範囲においても、自衛隊が最前線に出て全国50カ所の陸自駐屯地に救援物資を集中させ、各駐屯地を中継ポイントとしながら、その輸送を軍事的に統制しきった。「有事法(国民保護法)体制」として準備されてきた戦争動員体制の今日的到達地平である。
また兵站の「出口」ともいうべき東北各県の支援物資集積所では、4月上旬にはどこも物資が満杯になり、また人員不足も重なって在庫管理ができなくなり、配付も受け入れも滞った。ここでも自衛隊が何百人という人員を投入して物資の分類とデータベース化をおこない、「物資カタログ」を作成して、この管理・配付業務を取り仕切った。まさに兵站の入り口から出口まで全てを取り仕切ったのである。しかもこれらを予定調和的な演習としてではなく、民衆・自治体・労働者と混然一体となった実戦として実施したのである。
「疑似戦争」として兵士に体験強制
第3に、日米共同の戦争体制の全面発動・実地検証である。
米軍との統一指揮、および港・空港、軍事基地や艦艇の共同運用、物品役務の融通という課題を総検証した。また、国家的総動員体制と、長期にわたる陸海空3自衛隊の根こそぎ10万人動員、予備役の招集。さらに警察・海保・消防・自治体との連携、調整をおこなった。
今回の日米共同作戦と自衛隊の大動員に対し、自衛隊機関紙『朝雲』は、「この経験は将来、わが国有事や周辺事態などの『本番』にも大いに参考になる」と書いている。
第4に、今回の出動での自衛隊の活動への支持・称賛を煽り、これを機会に悲願である自衛隊への国民的規模での「認知・合意」を取り付け、名実ともに「国軍化」を成し遂げんとしている。
同『朝雲』では、「かつて吉田茂総理が、自衛隊が国民の支持を得て『国軍』となるためには災害救援をしっかりやる必要がある旨を強調していた」とあけすけに論じている。
第5に、しかもこの「国民的合意形成」の策動と表裏一体の同時進行で「戦争をできる兵士への自衛官の変質」がすすめられている。
何万人という自衛官が初めて遺体に触れ、それと「格闘」し、生と死の瀬戸際で活動する疑似「戦場体験」を重ねている。どれほど米海兵隊と共同演習を重ねてもこれまでは会得できなかった戦争をする軍隊としての核心が、一挙に10万人規模で兵士に注入されているのである。
「自衛官がテントで寝起きし、温かい食事は被災者に提供し、自らは毎食缶詰飯を食べて活動している」「遺体を背負って運んでくれた」と美談として宣伝されているが、こういう形で疑似「野戦」体験を兵士に強制し、同時に数々の実戦的な戦時データをも集積している自衛隊当局を警戒しなくてはならない。
苦悩する兵士に連帯を
8月31日、防衛省は自衛隊の大規模派遣を終了した。しかし、原発事故対応(除染担当)の150人など計200人が引き続き活動を継続する。原発事故の収束のめどが立たない以上、動員された労働者や自衛官に被曝が強制される。
福島第一原発に派遣された自衛官が、その翌日に脱走し逮捕されて免職。同じく福島第一原発に派遣された横須賀の陸上自衛官がビデオ店で逮捕・免職。いずれも「原発での被曝が怖かった」「犯罪を犯して逮捕されれば派遣されずに済むと思った」という理由だそうだ。有無を言わせぬ雰囲気の中で「志願」を強要する自衛隊にあって、「犯罪者」になることでしか拒否の道を見出せない自衛官の状況に思いを寄せる必要がある。
自衛官が自己の意志を持ち、「生きる権利」を主張することが重要であるが、自衛隊という閉鎖され孤立した環境にいる彼らが「NO」というのは非常に困難である。世論と運動の後押しが不可欠である。