米国こそゆすり・たかりだ
メア 差別暴言を糾弾する
昨年12月3日、米国務省の日本部長メアが、沖縄へ研修予定の米大学生を相手に、国務省内で講演をおこない、沖縄県民を侮辱する発言をくりかえしたことが明らかになった。
更迭で幕引き許すな
メアの発言は断じて許せない。更迭は当然だ。しかし、更迭で済む話ではない。
メアは、06〜09年在沖米国総領事で、その後、国務省日本部長として、辺野古新基地建設と対日政策の実務に深く関与してきた人物。総領事時代にも、同種の沖縄差別暴言を繰り返してきた確信犯だ。
メア発言は、米政府の対日政策・対沖縄政策の基本認識を、アメリカの学生に向けて講義したもの。つまり日米同盟とは何かと問えば、メア発言にあるということだ。
枝野官房長官が「日米は日頃から相互理解を深めている」と言うとおり、民主党か自民党かを問わず、日本政府はメア発言で露見した認識を承認し、一貫して共有してきたのだ。
沖縄差別に貫かれたメア発言の一言一句をあいまいできない。沖縄県民は激しく怒っている。11日現在、沖縄県内41市町村のうち、過半数の23議会で抗議決議があがっている。
問われているのは本土人民の怒りと認識だ。
日米同盟の本質露呈
基地被害をわい小化
メアは、米軍基地が沖縄に集中し、基地被害が過酷である現実を、統計の詐術や歴史の偽造という姑息な手段で、わい小化する努力をしている。
在日米軍基地の75%が沖縄に集中している事実を、メアは、たとえば陸自・矢臼別演習場(年間10日、米軍が演習)も米軍基地として計算するという詐術で、「沖縄の基地の割合はもっと小さい」と言っている。
住宅密集地の真ん中にある普天間基地について、住民の家屋や農地を米軍が占領し略奪したという事実をおし隠し、《住民が勝手に基地の周りに集まってきたのが問題》と逆転させて居直っている。
普天間基地が日本の法律に制限されず、住宅密集地の上を1分30秒間隔で米軍ヘリが旋回し、好き放題をやっている現実を、「(住宅地に近いのは)福岡空港や伊丹空港だって同じ」とすり替える。《たいしたことない。我慢しろ》と言っているのだ。
《なぜ沖縄か》の本音
他方、メアは、アメリカが沖縄に基地を置く理由を明け透けに語っている。「既にそこに基地がある」から。そして「本土には受け入れる場所がない」からと。
「地理的に重要な位置」とも言い、東京・三沢・岩国についてはその「根拠」なるものを具体的に述べているが、沖縄については具体性がまったくない。
要するに、アメリカにとって沖縄は戦争でとった占領地なのだ。しかも、沖縄に矛盾を押しつける日本政府の差別政策があり、それに本土人民が動員されている。この現実を根拠に、沖縄に基地を置いていると言うのだ。
ヤクザの論理
「日本は米国を守る責務はないが、米国は日本を守る」と、日米同盟の非対称性を言っているが、まるで米国は、「善意」で沖縄に基地を置き、日本に「恩恵」を施しているつもりになっている。そして、《だから土地を提供するのも、金を出すのも当然だ》と言うのだ。
これは、ヤクザが勝手に居座って、用心棒をやるからと、みかじめ料をせびる論理と同じだ。米軍の存在がむしろアジアに軍事的緊張をもたらしているのに、その緊張を理由に居座っている。
しかも、本音は「アメリカの国益」のために基地を置いていると言っている。
「話し合うのは不可能」
メアは、「沖縄はゆすりの名人」「沖縄は怠惰」「沖縄戦もゆすりの材料」など、思いつく限りの差別言辞を連発し、沖縄県民をおとしめている。沖縄県民を、同じ人間として見ることができないといっているのだ。断じて許せない。
だが、メアの心中はむしろ恐怖と憎悪で一杯だろう。辺野古新基地建設が、16年かかっても一歩も前に進まない。それどころか島ぐるみの抵抗になっている。「(沖縄と)話し合うのは不可能」と、メアは、沖縄県民の意志の前にお手上げだと言っている。
押さえつけても押さえつけても立ち上がってくる人民の不屈さ、帝国主義の支配の論理を超えて決起してくる存在を、帝国主義権力者は理解できない。帝国主義権力者は、力と金で脅せば人間は屈服するもの、金で人の心は買えるものと思っている。
だからメアの理解を超えて決起する沖縄県民を、差別言辞で憎悪し罵倒するしかないのだ。
「非常に得な取引」
メアは、米軍の駐留が、「米国の国益増進のため」であるとはっきりと言い、思いやり予算などの米軍駐留経費(日本の税金で負担)は「米国に利益」「非常に得な取引」と明け透けに言う。
「米国の国益」とは、米多国籍企業の利益であり、グローバリズムの崩壊を力づくで食い止めるということに他ならない。
しかも、もし日本が憲法を変えて、一人歩きを始めたら、うまみがなくなるから困ると、本音を吐露している。
アメリカこそ、ゆすり・たかりではないのか。「日本防衛」「抑止力」「公共財」ともっともらしく言うが、それは、ゆすり・たかりの本質を覆い隠す「方便」でしかないのだ。
しかも、このことを日本政府は完全に承認してきたのだ。
ここまで言いたい放題を言われて、日本人民はまだ黙っているのか。
5・28日米合意を撤回せよ
96年の日米合意で、「普天間飛行場は危険」「沖縄の基地負担を軽減」と謳って、「普天間返還」を言い、それを「移設」にすり替え、辺野古への新基地建設を強行しようとしてきた。
ところが、メアは、「普天間飛行場の危険」も、「沖縄の基地負担の軽減」も端から否定している。それは、新基地を飲ませるペテンに過ぎなかったということを、米当局者が認めたのだ。
これは重大だ。沖縄県民の不屈の闘いに追い詰められ、その本音がむきだしになった。
「米国の国益」のために、土地も金もむしり取る。これが日米同盟だというのだ。《沖縄は日米安保の犠牲になれ》と言っているのだ。
こんなことを認めることはできない。ただちに抗議の声を。米政府と日本政府を追及しよう。
辺野古への新基地建設計画を撤回せよ。高江ヘリパッド建設を中止せよ。思いやり予算など米軍駐留経費予算を廃止せよ。昨年の5・28日米合意を撤回せよ。
国防省メア発言 抜粋
基地問題をわい小化
*在日米軍基地の半分が沖縄にあるといわれているが、この統計は米軍専用基地だけ勘定している。もし、米軍基地と、米軍・自衛隊が共用している基地のすべてを考慮に入れれば、沖縄の基地の割合はもっと小さくなる。
*沖縄で問題になっている基地はもともと水田地帯にあったが、米施設を囲むように都市化と人口増を沖縄が許したため、今は市街地の中にある。
*沖縄の人はいつも普天間飛行場は世界で最も危険な基地だと言うが、彼らは、それが本当でないと知っている。(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港だって同じように危険だ。
沖縄に基地を置く理由
*米国が沖縄に基地を必要とする理由は二つある。既にそこに基地があることと、沖縄は地理的に重要な位置にあることだ。
*ほかに海兵隊を持っていく場所はない。日本本土には米軍のための場所はない。
ヤクザの論理
*沖縄の米軍基地は地域の安全保障のために存在する。基地のために土地を提供するのが日米安保条約に基づく日本の責務だ。日米安保条約に基づく日米関係は非対称で、日本は米国の犠牲によって利益を得る。米国が攻撃されても日本は米国を守る責務はないが、米国は日本を守らなければならず、日本の人びとと財産を保護する。
*(米軍再編の)ロードマップのもとで日本は移転費を払う。これは日本による実体的な努力のしるしだ。
沖縄への恐怖と差別
*3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。
*日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。
*(彼らの)言う「合意」とは「ゆすり」のこと。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。
*沖縄(県民)は、沖縄戦を、日本政府から金をゆるために使っているようだ。
*沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。沖縄は離婚率、出生率、特に婚外子の出生率、飲酒運転率が最も高い。飲酒運転はアルコール度の高い酒を飲む文化に由来する。
アメリカの国益
*日本の憲法が変わると、日本は米軍を必要としなくなってしまうので、米国にとってはよくない。もし日本の憲法が変わると、米国は国益を増進するために日本の土地を使うことができなくなってしまう。日本政府が現在負担している高額の米軍駐留経費(おもいやり予算など)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で、非常に得な取り引きをしている。
2面
朝鮮学校「無償化」 即時適用せよ
怒りのデモ 2千人 東京・渋谷
この1年間、ビラ配り、署名活動、文科省への要請など、声を上げ続けてきた朝鮮高校生が大隊列でデモ(写真は第2梯団の先頭 2月26日 東京・渋谷) |
2月26日、朝鮮高校への「無償化」即時適用を求める怒りの大集会が、東京・代々木公園野外ステージでひらかれ、2千人をこえる人びとが集まった。「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」が主催し、平和フォーラムが共催。賛同団体は、この日までで324団体にのぼった。
日本社会の問題
冒頭、主催者あいさつに立った長谷川さんは「この問題くらい、差別と偏見と排外主義に満ちた日本の社会の問題を典型的にあらわしている問題はない」「最後まで粘り強く、絶対にひかない決意でたたかいぬこう」と訴えた。
あからさまな差別
朝鮮高校生を代表して、東京朝鮮高校3年生の男子生徒が発言した。「たくさんの外国人学校では高校無償化制度が実施されている。しかし、なぜ朝鮮学校にだけは適用されないのか」「(結論が出るのは)8月までと言われ、つぎには11月といわれ、あげくのはてには政治問題とからめられ、停止したままになっている。日本政府のこうした不誠実な態度が、朝鮮学校にたいする、差別を生んでいる」。
日本政府の答え
東京朝鮮中高級学校校長からの発言(要旨別掲)につづき、オモニ会・アボジ会を代表して東京朝鮮中高級学校オモニ会副会長が発言した。「原宿の駅に降り立つと、(日本人の)学生たちは楽しげに嬉しそうに竹下通りに向かっていく。大きなプラカードをかかえた朝鮮学校の学生たちは、公園のほうへ向かっていく。この1年間、わたくしたちがたたかってきた無償化にたいする日本政府の答えがこれなんだと憤りを感じざるを得ない」「自らを粉にして闘わなければ学ぶ権利さえ獲得できない子どもたちがいるということを、日本の政府は恥ずかしいと思ってほしい」。
全国各地から
「外国人学校・民族学校の制度的保障を実現させるネットワーク」、東京朝鮮学校出身の弁護士につづき、朝鮮学校生徒3人が登壇し、詩を朗読した。
全国各地からのあいさつでは、愛知、三重、福岡から発言。さらに司会から、「今、この時間に、兵庫県の宝塚ではハンストがおこなわれている」と報告された。
平和フォーラム、北教組、広教組につづき、最後に、神奈川朝鮮高校3年生の女子生徒が発言した。
行動提起
集会決議文採択のあと、主催者から具体的行動提起がなされ、▽たたかいを継続する、▽地方自治体による朝鮮学校への補助金カットの動きにたいしてたたかう、▽国会をとりまくたたかい、訴訟を含む新たなたたかいを準備することが確認された。
集会後、渋谷に向け、デモ行進をした。
東京朝鮮中高級学校 校長の発言要旨
(文責・見出しは編集委員会)
あたりまえの教育
生徒たちは、奪われた民族の言葉と文字をとりもどし、民族的アイデンティティを培いながら、日本の人たちとの善隣友好の懸け橋となるべく朝鮮学校で学んでいる。日本人が日本語をつかい、本名で生きるのが当然なように、朝鮮人が朝鮮語を学び、本名で生きるのもあたりまえのこと。このあたりまえの教育を、在日朝鮮人3世・4世におこなっているのは、日本では唯一朝鮮学校だけ。
奪われた言葉と文字
過去、日本がおこなった朝鮮にたいする植民地支配のもっとも残酷な罪悪のひとつが、朝鮮の言葉と文字を抹殺し、子どもたちを徹底的に日本人化したこと。
大阪、東京など一部地方自治体が、無償化問題の混乱に乗じて、今まで問題なく支給してきた助成金をストップするという事態にいたっている。朝鮮学校の生徒の心をもてあそび、踏みにじることは断じて許せない。
偏見と差別
往復210キロを3年間通学した2人の生徒。また朝5時前に家を出て、クラブ活動をして、自宅に帰るのが夜9時を過ぎる千葉県木更津から通う女生徒。遠い道のりを通う生徒の胸の奥底にあるのは何か。経済的負担が多くとも、遠くから朝鮮高校に通わせる父母たちが、民族教育にたくす願いは何か。それは、ルーツを知り民族的プライドを持ち、同胞社会と日本の地域社会に貢献できる力をつちかうことへの期待であり願いだ。
このような生徒たちと父母たちの願いをあざ笑うかのように、民族教育を日本の政治権力闘争での取引の道具に使う。在日朝鮮人への偏見と差別意識を政治的に利用している結果だ。
朝鮮学校つぶし
今回の高校無償化で300万人以上の生徒が恩恵をうけるなかで、わずか2000人にも満たない朝鮮高校生、しかも(親が)納税義務をはたしているにもかかわらず、朝鮮高校生だけが除外されることは、不条理であり、保護者の学費負担は相対的に増える。これらは、朝鮮学校への進学・入学の道を閉ざす新しい形の民族差別であり、朝鮮学校つぶしへの序曲だ。
たたかいのなかで育まれた日本人との友好のきずなは、民族教育の大きな財産。私たちと広範な日本のみなさんの力で、朝鮮学校への無償化を実現したい。
突き出された在日の無権利 ―前原辞任問題―
前原辞任問題で傷ついたのは、前原や民主党ではない。在日朝鮮人民が一番の被害者だ。
長い人で、この日本列島に4世代にもわたってくらしてきた在日とよばれる人びとに、市民的権利が全くないという事実がつきだされた。
前原が中学2年のときから、近所の人間としてかわいがってきたという在日の女性が、その延長で、前原が政治家になってからも応援したいと思ったことはふしぎなことではない。5万円を4回、前原事務所を通じてカンパしたという。この女性が在日で、国籍が日本でないといって、大事件・大問題であると自民党や共産党が騒いでいる。
在日の方々はカンパもできない。カンパすれば受け取ったほうが罪に問われる。こんな法律(政治資金規正法)がまちがっている。
日本社会にこそ問題
「外国人」「ガイジン」という言い方は嫌いだが、そもそも在日朝鮮人は、外国人としてくくられる人たちなのか。
1910年に日本帝国主義が韓国を強制併合、植民地化し、朝鮮人民を強制的に日本国籍に組み込んだ(45年まで)。言葉を奪い、名前を奪い、文化を奪い、日本人への同化を強制した。今、日本に住んでいる在日と呼ばれる人びとは、この植民地時代に日本に連れてこられたり、日本に来ざるを得ない状況におかれた人びととその子孫だ。
彼らが日本社会で、1人の人間として生きる権利は当然ある。いまさら、日本政府が、「日本国籍でなければ、市民的権利は与えない」などという資格はない。
在日の方々は、税金は日本人と同様に徴収されながら、あらゆる市民的権利から排除されている。高校無償化から朝鮮学校が排除されているのもその1例。選挙権、被選挙権もなく、応援している政治家にカンパもできない。これこそが大問題だ。
極右の仕業
この問題を国会でとりあげた自民党参院議員の西田昌司は、京都市で在日人民が多く住む東九条に事務所を構え、在日の人びとがいかに無権利状態におかれてきたかをよく知る人物。安倍晋三と関係が深い極右だ。
「在日とかかわると、ややこしいことになる」という排外主義的空気を、今回の事件が醸成したことはまちがいない。こんな社会はもう変えよう。(元京都市民 N)
3面
農地を守れ 3・27三里塚へ
農に生き 大地に根を張る 市東さんの生き様に感動
3・9三里塚と沖縄を結ぶ集い
知花盛康さん(左)と市東孝雄さん(9日 大阪市内) |
三里塚・沖縄を結ぶ集いが9日夜、大阪市内で開かれ、110人が参加した。主催は、三里塚決戦勝利関西実行委員会と三里塚芝山連合空港反対同盟。
はじめに、「市東さんの農地取り上げに反対する会」が昨年末に制作したビデオ(25分)を上映。
つづいて、永井満・関西実行委員会代表が主催者あいさつ。「ビデオを見て、市東さんが手間をかけ、あんなにも丁寧に土をつくり野菜づくりをされていることがよくわかった。市東さんといえば身体を張ってたたかう闘士のようなイメージがあるが、農に精進される姿をあらためて見た。また、現闘本部裁判の結審は、許しがたい。三里塚と沖縄が勝利すれば、日本は変えられる」と訴えた。
沖縄からかけつけた知花盛康さんは、「三里塚の市東さんと同じ農民という目線で話したい」と語りかけた。
市東さんは、「沖縄の基地をなくす。成田空港は閉鎖する」と語った。
会場から発言・質疑
部落解放同盟全国連合会の中田潔書記長が発言し「三里塚と沖縄が、それぞれのスタンスを大切にして大地に根を張るたたかいをつくってきたと感じた。全国連は、重大な局面をむかえた狭山闘争、4月全国連大会をたたかいながら、三里塚・沖縄闘争の一翼を解放運動の立場から担っていく。3・27三里塚に全力でとりくむ」と決意を述べた。
ほかにも、関西で三里塚野菜市にとりくんでいる話、野菜をとおして、あらためて三里塚闘争を自分のたたかいに位置づけた、などの意見が出された。
知花盛康さんは前日の琉球新報をかざしながら、米国務省のメア日本部長の発言を「まぎれもなく植民地支配の立場でものを言っている」「人間の尊厳を踏みにじるもの」「もうこれ以上がまんできない」とのべた。
市東さんも「根本は、お金じゃない。金で人間の生き方が左右されてはいけない」ときっぱりと語り、「3・27はぜひ現地へ」と重ねて訴えた。
集会の最後は、山本善偉・関実世話人が「かつて沖縄に行ったとき、ヤマトンチュがここに何しに来てるのか。ヤマトでたたかえ、言われた。やれてきたのか。市東さん、知花さん、きょうはありがとう。3・27三里塚へかけつけよう」と結び、司会の安藤眞一・事務局次長の音頭で団結がんばろうをおこなった。
耕す者に権利 農こそ公共
市東孝雄さん(三里塚・敷地内農民)
去年の夏は、雨が2か月半くらい降らず、非常にきびしかった。しかも成田・三里塚は、自然を相手にしているだけでなく、国・空港会社とたたかいながらの農業だ。
昨年は私を逮捕したり、団結街道封鎖、迂回道路工事を始めたり、畑を囲い込んできた。そういうことをコソコソやる。「空港は国策だ、公共だ」というなら、堂々と説明したらどうか。
空港会社が私にたいして「不法耕作している」と訴えた土地の一部を、2月22日の裁判で取り下げた。取り下げるなら、裁判そのものを取り下げるべきだ。
本来は第3誘導路なんか必要ない。空港反対運動をしている者を追い出すためにだけやっている。しかし反対同盟は負けない。「耕す者に権利あり、農こそ公共」です。
戦争になれば、まず最初に沖縄と成田が使われる。沖縄の人たちと心を一つに、沖縄の基地をなくす。成田空港は閉鎖する。関西、沖縄、地元のみんなと力を合わせてやっていく。〔発言の一部を紹介〕
基地拒否し 豊かな沖縄を
知花盛康さん(沖縄・市東さんの農地を守る会)
「抑止力は方便だった」という鳩山発言、メア米国務省日本部長の暴言など沖縄をめぐる昨今の動きに怒り心頭だ。
沖縄の農業は、72年本土復帰のときに、農業基盤整備はヤマトに比べ20年遅れているといわれた。復帰後も格差は残った。基地を解放しないかぎり、ゆたかな農業はできない。肥沃で平坦な土地は、ほとんど基地にされているから。
基地収入でなく、ちゃんと農業をおこない、ゆたかな沖縄をつくっていきたい。「自立」、ほとんどの人が、そう言い始めている。保守も革新も、すべてが基地をなくす方向にいっている。みんなの力で米軍基地をなくそう。ヤマトからもなくしていこう。
農民が土地を取られたら生きていけない。死ねというのと同じだ。沖縄で強制的に土地を取り上げられた人びとは、そう言っている。沖縄の反基地運動と、三里塚の農地を守るたたかいを、一緒のものとして頑張る。3・27三里塚には、辺野古と読谷からも参加する。〔発言の一部を紹介〕
天神峰現地闘争本部裁判が緊迫
建物の強奪ゆるすな
2月4日、現闘本部裁判(控訴審)第3回口頭弁論において、東京高裁・井上裁判長は何ら釈明をおこなうこともなく、弁論を一方的に打ち切り、結審を強行。さらに弁護団による「裁判官忌避」申し立てを無視し、次回期日を指定することもなく、裁判長が法廷から逃走するという前代未聞の事態が起こった(本紙75号に掲載)。
さらに東京高裁が「裁判記録」から裁判官忌避の申し立てを抹消したうえ、「判決期日を5月20日午後2時とする」と記録していたことが、3月1日の団結街道廃止処分取消訴訟(第2回口頭弁論)後の記者会見と報告集会の席上、反対同盟と弁護団から報告された。
およそ裁判の体もなさぬほどの強権的訴訟指揮をくりかえしたあげく、何と裁判記録の改ざんまでおこなっていたのである。かの大阪地検特捜部による「証拠改ざん」事件に匹敵することが、裁判所・東京高裁によって行われたのである。
東京高裁は、政府・成田空港会社(NAA)と一体となって、天神峰現闘本部の強奪・破壊へと大きく舵を切った。千葉地裁・仲戸川裁判長は反動判決を下しながらも「仮執行宣言」を付けることはできなかった。しかし「今回は違う」ということである。
闘いの象徴
天神峰現闘本部は、45年に及ぶ三里塚闘争において常に闘争司令部、共闘と結集の砦となり、また天神峰地区の公民館的役割をも果たしてきた。それゆえ1990年成田治安法という希代の悪法によって「封鎖処分」とされた後も、「三里塚闘争健在なり!」の象徴として三里塚勢力を鼓舞激励してきたし、政府・NAAにとってはまさに「目の上のたんこぶ」であった。
また直接にも市東さんの農地とともに「への字」誘導路を強制し、空港建設を阻んでいる。現闘本部強奪・破壊攻撃は、団結街道封鎖や第3誘導路建設とあわせて、天神峰地区を空港用地で完全に囲い込もうとするものだ。市東さん宅や畑を「丸裸」状態にして、生活と環境を破壊し、生活意欲と闘争意志を砕き、空港用地から叩きだそうということだ。
3・27三里塚全国総決起集会は重要な闘いとなった。三里塚を守る人民の分厚い陣形をつくり、天神峰現闘本部の強奪・破壊を許さず、市東さんの農地を守り抜こう。東京高裁・井上裁判長に弾劾の嵐を叩きつけよう。一人でも多く3・27三里塚現地へ。
4〜5面
グローバル化と対決する労働運動を 高森 謙
日本帝国主義は、労資関係を含めて日本全体を、グローバル競争に勝ち抜くあり方に転換・再編しようとしている。このグローバル化の攻撃と対決する、新たな労働運動をつくり出すために、2010年版『通商白書』(以下、『白書』)と、2011年版『経営労働政策委員会報告』(以下、『報告』)を遡上にのせて、批判・検討する。
世界規模の合併・再編
グローバル化で回復
リーマン・ショックで危機に陥ったトヨタ、ホンダ、日産等の大企業は、円高にも関わらず、軒並み純益を拡大している。
トヨタは、2010年4〜12月期の連結純利益を3827億円と前年同期比3・9倍に急増させ、ホンダは、今期の予想純益を従来の5000億円から5300億円に上方修正し、08年3月期に計上した過去最高益(6000億円)の88%まで回復し、日産は、2011年3月期の連結純利益が前期比7・4倍の3150億円になっている。
自動車業界だけでなく、他の業界でも軒並み増収増益が続いている。日経新聞によれば、上場企業の53%が今期経常益を増加させている。業種別の増益率では機械78%、化学38%、電機15%など、全32業種中25業種が増益か黒字に転換し、日立の営業益は1000億円を超え、コマツの10〜12月期の税引き前利益は3・6倍、東芝は3・1倍に拡大している。
全産業で業界再編
新日鉄・住金の合併協議開始が、2月3日発表された。これは、独占禁止法の壁を「正面突破する」(日経新聞)攻撃だ。
マスコミは「新日鉄・住金の合併は世界競争時代の再編ルール作りの試金石」、「新日鉄・住金の合併は攻めの再編への号砲」、「合併こそ国益」(同)と独禁法否定のキャンペーンを張っている。
グローバル競争に勝ちぬくために、日本の巨大独占資本は、新日鉄・住金の合併を公正取引委員会に力づくで認めさせ、これを突破口に全産業の合併を含む大規模な再編成を行おうとしている。
世界規模の合併・買収
「世界の経済成長を前に体制を整える動き」(同)として、巨大合併・買収が動き始めている。
2月9日、ニューヨーク証券取引所などを運営する世界最大の証券取引会社NYSEユーロネクストと、欧州大手のドイツ取引所とが合併にむけた協議に入ったと発表された。
この合併の動きは証券取引所だけではない。さまざまな生産部門でも急速に動き始めている。この急増はITバブルのときと違って「エネルギーや素材関連が全体の36%を占め」、「石油や資源の世界的な需要増や価格上昇を見据えた権益拡大や再編が中心」で、例えば「鉱山界では生き残りをかけた再編が動き出して」おり、「カナダの銅鉱山では大手のルンディン・マイニングとインメット・マイニングが合併で合意」(同)している。グローバル競争に勝つために、世界的規模で新たな合併・再編が始まっている。
グローバル化と中国
2000年代を通じ「『世界の工場』としての地位を確立した」(『白書』)中国・アジア地域は「世界の市場」としての地位も持ち始めている(同)。中でも中国の伸びは著しく、09年には輸出額は1兆2017億ドルとなり世界第1位、輸入もドイツを抜いて1兆56億ドルとなり世界第2位になった。自動車販売台数では同年1362万台となり、米国、ユーロ圏を越えて世界一になった。また、各国の最大輸入相手国も中国に入れ替わってきている。〔図1〕
日本と中国の逆転
「世界の工場である東アジアから輸出される最終財の輸出国・地域をみると、東アジア最大の最終財供給センターが日本から中国にシフト」(同)し、日本と中国が逆転するに至っている。〔図2〕
電気機械関係の「東アジアから世界への最終財輸出の状況をみると、1990年には5割以上あった我が国のシェアは、急激に減少し2007年には約1割となっている。我が国に代わり存在感を増してきたのは中国であり、1990年には1・5割だったシェアは、2007年には、東アジアからの最終財輸出の5割以上を担うまでに成長している」(同)。
一般機械についても「東アジアにおける最終財輸出については、1990年には6 割以上を占めていた日本は2008年には約14%に低下するなか、中国が5割以上を占めている」(同)。
シェア低下の原因
『白書』は、日本企業の「アジアへの進出」が原因としている。07年度の日本企業の
アジア現地法人数は約1万社に上り、その内訳は中国が38%、ASEANが28%となっている。〔図3〕
日本企業の中国・アジアへの「進出」が急増した結果、たとえば国内企業の08年の電子機器生産額が89兆円なのにたいし、日系企業の海外生産は161兆円、世界全体の生産額の15%を占めるまでに至っている。
強まる現地調達
日本のアジア現地法人(製造業)の仕入高内訳をみると、96年度の日本からの輸入は40%、現地での調達は40%と同程度であったが、06年度には日本からの輸入30%、現地での調達56%となっており、現地法人の仕入が日本から現地での調達にシフトしている。なかでも自動車などの輸送機械の現地調達比率は07年度には73・8%と最も高くなっている。
「世界の工場」の実態
『白書』は中国・アジアが「世界の工場」になったと述べているが、中国には膨大な外資が流れ込んでおり、その結果として「世界の工場」となっているにすぎない。日本のシェア急落も裏返せば、海外生産比率の拡大ということである。
しかし他方で、東アジアが、日本を超える消費センターとして急拡大しているのも事実だ。
日本は「2000年には中国の3倍に相当する732億ドルの最終財を域内から輸入するなど、東アジアにおける消費センターとして大き」な位置を持ってきた。「しかし、近年では、経済成長による所得の増加等により、ASEAN、中国の東アジアからの最終財輸入が拡大しており、2008年には、日本の最終財輸入額が1075億ドルであるなか、ASEANが1093億ドルと日本を抜き、中国は1027億ドルと日本の輸入額に近づいてきている」(同)。
新たなアジア侵略
『白書』は、ドイツにおける中・東欧をイメージしている。EUとりわけドイツの生産拠点と販売拠点になっているのが中欧・東欧だ。『白書』は、「我が国にとっても中国やASEANが、生産拠点のみならず消費市場としても発展し、EUにおけるドイツと中・東欧のような、部品、消費財ともに活発な貿易が行われることが期待される」(同)としてい
る。
こうした観点から日本企業は、現地における市場開拓のための研究開発拠点設置の動きを急速に進めている。〔図4〕
『白書』によれば「これまでのグローバル化は、大企業中心、自動車等の製造業中心に行われてい」たため、中小企業や非製造業は「グローバル化の恩恵」を受けることが少なかった。しかし、グローバル化を進め、そのすそ野を拡大すれば「世界経済危機への耐性度向上」とともに、「今まで海外展開が進んでいなかった産業の活性化・生産性向上・構造転換にも貢献し、グローバル化の恩恵が広く我が国に行き渡る」とし、その結果、「所得向上、ひいては内需拡大に寄与することが見込まれる」としている。
しかし、グローバル化とは、中国・アジアにたいする侵略そのものだ。しかも、グローバル化が所得向上や内需拡大をもたらすことはない。実際は海外での生産比率が拡大し、国内の空洞化がますます進行する。国内の生産設備の大量の廃棄・縮小・整理、大量の失業者の発生、これらを背景にして日本の労働者に「植民地賃金」が強要されていく。
それだけでなく日本の労働者はグローバル企業の利益のために動員され、《グローバル化という名の侵略》の先兵にされていくのだ。
グローバル化と労資関係
新日鉄・住金の合併は、日本の全産業がグローバル競争に入っていくための突破口だ。
日本帝国主義は、労資関係を含めて日本全体を、グローバル競争に勝ち抜くあり方に転換・再編しようとしている。
この考え方の下で出されたのが、日本経団連による2011年版『経労委報告』だ。『報告』のサブタイトルが「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」となっていることはこれを象徴している。以下に、『報告』の特徴を六点で指摘する。
1 アジア侵略の野望
中国・アジア太平洋地域への侵略の野望をあけすけに語っていることだ。
「アジア太平洋地域を中心とする新興国市場の急速な成長を踏まえればこれを最大の経営チャンスと捉え、ビジネスを拡大していく姿勢」(『報告』序文)が必要と強調している。
2 空洞化を放置
国内の空洞化を放置するということだ。
従来、『報告』は、03年版までは国内の空洞化を「深刻な問題」としていたが、04年ころからこれを転換させ、2011年版『報告』で公然と空洞化を放置し、つぶれるものはつぶし、グローバル競争に勝つための国内体制に再編する方針に至ったということである。これが「攻めの経営」の実態だ。
3 侵略を担う人材
侵略イデオロギー、差別主義にまみれた人材をつくることに全力をあげるということだ。
グローバル化が進めば海外で大量の現地労働者を雇い入れることになるため、「植民地支配」を貫いていける管理職としての人材が大量に必要になる。そのため、『報告』では「グローバル競争に対応しうる人材の確保・育成」にひとつの章をまるごとあてている。こういう人材が「安定的に供給できなければ、グローバル展開のボトルネックになりかねない」とし、そのためには「企業に入ってからの教育だけでは遅い面があり、教育界(教員、学校、教育委員会、国など)、家庭、産業界など、関係者の一層の連携が不可欠である」として、教育にも介入しグローバル競争の先兵にしようとしている。
4 生産縮小と大量解雇
「海外進出」に伴って、不要となる国内の生産設備の閉鎖・縮小・整理を強行することだ。
このとき、最大の障壁になるのが「整理解雇4要件」である。これを正面から破壊することを目的にかけられているのが日航の大量不当解雇だ。
5 「植民地賃金」の強要
1%の賃上げさえも拒否し、「植民地賃金」を強要することだ。
人民には飢餓賃金を強制し、中国・アジアに新たな製鉄所や大規模工場を建設するために大規模な資金投入をおこなおうという構えだ。
国内の産業空洞化は大量の失業者をつくりだし、低賃金=「植民地賃金」が強要されていく。また、空洞化を口実に、日本国内に「経済特区」を設置することも狙っている。
6 非正規雇用の拡大
非正規雇用の拡大を路線化したことだ。
リーマン・ショック直後の大量の派遣切りでは「動揺」していた日本経団連は、2011年版『報告』では「非正規職の差別取扱いは当然」と居直り、非正規職の労働条件を上げるべきではなく労働市場にゆだねるべきという姿勢に転じた。
労働運動の現状転覆を
まず、グローバル競争に屈服・賛成している連合を弾劾する。
連合は1月18日、『報告』にたいする連合の「見解と反論」を発表したが、「『グローバル競争に対応しうる人材の確保・育成』に関する記述については、一致する見解も多く、今後の協議において、協力すべき点については積極的に力合わせをしていくこととする」とグローバル競争に賛成を表明した。
2月中旬、連合大手労組が一斉に春闘要求書を出したが、自動車大手各労組、電機連合、郵政労組、NTT労組等すべてベアを放棄し、わずかな定昇維持と一時金要
求に切り替えている。「労使一体でグローバル競争に打ち勝つ」という経団連方針への完全な屈服だ。許しがたい裏切りだ。
〔図5〕を見てほしい。日本だけ、賃金が下がり続けている。これが日本の労働運動の現状だ。
これをなんとしてもくつがえしていく決意がまずもって必要だ。戦闘性の回復、階級意識の育成、団結の強化、ストライキなどのたたかいをやりぬいていくことだ。これが根本になければならない。
アジア人民との連帯
日本の労働者が、中国やアジアの労働者にたいする強搾取を見て見ぬふりをし、植民地的支配の先兵となっていくならば、自国の資本とは到底たたかえない。われわれ自身、一国主義を乗り越えていかない限り、今日の資本の全体重をかけた攻撃には打ち勝てない。
昨年、中国のホンダの工場で大規模なストライキが起こったとき、日本でどのようなたたかいができたのか。日本国内のホンダの労組や他の労組から連帯の声があがることがやはり必要なのだ。
われわれ自身がたたかいに立ち上がり、劣悪な労働条件と強搾取のもとにある中国・アジアの労働者と連帯していくあり方を、日本の労働運動の中にしっかりとつくり出し、彼らとともに闘っていくことだ。
今、日本には中国、ブラジル、ペルー、バングラデシュ、ビルマ(ミャンマー)などから多数の労働者が日本にきて働いている。その多くが劣悪な労働条件で働かされている。これまでの在日韓国・朝鮮、中国人労働者に加えて、これらニューカマー労働者の生活と権利を守っていく闘いは労働組合の新たな分野である。この点で地道な取組を始めている労働組合が生まれてきている。これらのたたかいを学ぼう。
大独占との闘い
グローバル競争に勝つためといって、巨大独占資本は、中小零細企業から搾りとっている。その矛盾はドンドン下に向けられ、結局、労働者にしわよせされている。これが今の搾取構造だ。
われわれは、中小零細企業とたたかうだけでなく、その親会社、さらにその親会社へと要求の矛先をむけていかなくてはならない。
さらに横のつながりをつくり、さまざまな業界全体の労働条件の向上をかちとっていく地道な努力を重ねていくことも必要だ。
◇整理解雇4要件
日航労働者への大量不当解雇にみられる「整理解雇4要件」をめぐるたたかいは重要だ。4要件の破壊を許さないという一点で、ナショナルセンターや労組の垣根を超えてたちあがり、不当解雇撤回をかちとろう。
◇雇用形態による分断
『報告』は、正規雇用と非正規雇用との差別は当然と、差別・分断を強行しようとしている。これにたいして、雇用形態による差別・分断を自ら乗り越えてたたかっていくことが求められている。
ドイツの労働運動は、正規職と非正規職が団結し、非正規職の賃金を正規職の80%にまで押し戻させ、さらに差別をなくするために前進している。こういうたたかいに学んでいくことも必要だ。
社会の変革を
グローバル化と格差・貧困の激化の中で、日本だけでなく中国・アジアには、変革を求める莫大なエネルギーが蓄積されている。われわれ自身がたちあがり、中国・アジアの労働者人民と連帯してたたかっていくとき、グローバル化という名の帝国主義の侵略にたいし、これを世界的規模で転覆していくことができる。
生きにくくなっているこの社会を、中国・アジアの労働者人民と連帯して大胆に変えていこう。
6〜7面
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京都沖縄県人会会長の大湾宗則さんに、本土におけるウチナンチュの想い、ヤマトンチュとの連帯のための課題などについてうかがった。今号に前半、次号に後半を掲載する。 〔インタビューは1月下旬、京都市内。聞き手・本紙記者。文責・本紙編集委員会〕
大湾宗則さん。1941年4月、大阪市西区生まれ。87年の京都沖縄県人会の結成に携わり、06年から京都沖縄県人会会長 |
県人会運動と基地問題
――昨年8月1日、大阪・大正区で、「普天間飛行場の辺野古移設に反対する 関西沖縄県人会・郷友会の集い」が催されました。参加した私たちヤマトンチュも、大変感動しました
主催した私たちウチナンチュも感激でした。
この集いを主催したのは、大阪沖縄県人会連合会、沖縄県人会兵庫県本部、奈良沖縄県人会、それに京都沖縄県人会、さらに近畿八重山郷友会、関西宮古郷友会、関西今帰仁村人会、関西地区読谷郷友会でした。参加者は、ウチナンチュ中心に、市民も含めて550人。
全関西の沖縄県人会がこのようなとり組みをしたのは、戦後初めてではないかと喜んでいます。
――沖縄県人会は、これまで基地問題は取り組まなかったのでは
戦後かつて、大阪と兵庫の県人会・郷友会は、それぞれの立場で「祖国復帰」をもとめて連日、集会や街頭デモをおこないました。そうやって本土の人びとに連帯を訴え続けました。
しかし、本土の人びとの冷淡な無関心のため、結局、沖縄は、72年5月15日、米軍政支配からは外れたものの、核基地付きで日米安保体制に組み込まれました。同時に、本土の基地の多くが沖縄に移設され、在日米軍基地の75%が沖縄に集中する今日の状態になりました。
本土政府の沖縄差別と、それを容認する本土の人びとの現実は、なにも改善しませんでした。
こうした中で、72年の「祖国復帰」後、全国の県人会と郷友会は、一部の誇り高い人びとを除いて、県人会を「親睦団体」に閉じ込めてしまいました。
それにはいろいろな理由があります。
戦争直後、本土のウチナンチュはみな同じように貧乏で、モアイ(頼母子講)やユンタクで団結していました。そして、「憲法の下への復帰」を夢見て、「本土並みの生活」を求めてたたかいました。このような「祖国復帰」闘争を「政治的だからやらない方がよい」と言う者は誰もいませんでした。
しかし、実際に「祖国復帰」したときはすでに戦後27年が経過しており、本土在住のウチナンチュの間にも、経済的格差と政治的利害の拡散が厳然とありました。
戦後直後はリヤカーで廃品を回収し、小さな居酒屋や鋳物工場で重労働をし、ダイハツやクロガネという三輪自動車で運び屋をしていた県人会員の中から「成功者」が現れ、「名刺を持つ名士」として商工会議所会員になり、革新政党との付き合いだけでなく、政権与党の議員や代議士との交遊も生まれました。
こうした変化の下で、県人会は、「ふるさとの基地」を問題にすることが、「まとまりを乱す」という理由で避けられようになり、「親睦団体」へと変えられてきました。
――京都沖縄県人会は、どのような経過で立ちあがったのでしょうか
先にひとこと言うと、「不可能なことはない。あきらめずに古い組織を改造しながら人びとと共に歩む」。これが県人会の教訓です。
京都沖縄県人会は、87年5月に結成されました。私もこの結成の準備段階からかかわりました。今年で24年です。
京都沖縄県人会の結成には、二つの制約がありました。一つは、県人会と言えば「親睦団体」として理解される固定観念がありました。二つ目は、京都には、戦後初期の県人会活動を経験した人がほとんどいなかったということです。京都沖縄県人会は、「祖国復帰」をたたかった大阪や兵庫の沖縄県人会、宮古や八重山などの郷友会と大きく違った出発をしました。
私は、21歳まで大阪で暮らし、父が西成区の沖縄県人会会長でもありましたから、戦後直後の沖縄県人会活動を身体で覚えています。私は京都沖縄県人会に参加した当時から、「先輩が歩んだ県人会を復活させる」と決意して県人会活動にかかわり続けてきました。
◇転機は95年の事件
95年9月、沖縄北部でアメリカ海兵隊3人に、当時12歳の少女が暴行されるという事件が起き、全世界のウチナンチュに衝撃が走りました。「またねぇ」「やりやがったな」「基地があるからだ」と、誰もが思いました。ウチナンチュが持つこの感情を大切にしました。
私は、この少女暴行事件が北部で起こったと聞いたとき、「もしや親戚の・・・」と思いました。これまで沖縄で事件があっても、こんな思いは初めてでした。私個人の「当事者」としての精力的なとり組みが始まりました。
京都沖縄県人会でも、さすがにこの事件は無視できませんでした。私は、県人会として、友人の沖縄反戦地主会・照屋秀伝会長を招き、「沖縄を想う 歴史と文化の夕べ」第一回を開催し、沖縄で起こっている基地被害とそれにたいするウチナンチュの怒りを共有する活動を開始しました。
97年4月20日には、県人会の有志で、沖縄反戦地主会20人を迎えて、「米軍用地特措法改悪反対の京都の集い」を開催し、四条河原町をデモしました。
また04年8月、沖縄国際大学に普天間基地所属の大型ヘリが墜落炎上したときは、関西沖縄県人会の共同抗議文を発しました。
しかし、とり組みは単発的なものでした。
◇県人会会長になって
京都沖縄県人会が本格的に沖縄問題を取り上げるようになったのは、06年に私が会長になってからです。
06年6月に「県人会創立20周年 元気だよ! 沖縄フェスティバル」を開催し、そのあいさつの中で私は、「沖縄同胞の喜怒哀楽を共にするとの立場から、基地による加害も被害もない平和で豊かなふるさとづくりに寄与したい」と提起しました。
07年に再び沖縄で米兵による少女暴行事件が起こったときは、京都沖縄県人会主催で、京都市民の協力も得て、「抗議集会とデモ」をおこないました。
つづいて07年、沖縄戦での「集団自決」に関して、文部科学省が、高校歴史教科書から軍の関与を削除した問題にたいして、異議申し立ての署名活動を県人会としてとり組みました。これも京都市民に支えられて、2千筆以上の署名を沖縄に送りました。
昨年4月25日には、三条河原で「沖縄県民大会に連帯する京都集会」、5月15日には、大阪・奈良・八重山・読谷の各県人会・郷友会や九州の県人会の代表を招いて、「普天間基地包囲に連帯する」京都の集いとデモをおこないました。6月12日には、県人会も入った実行委員会で、伊波洋一宜野湾市長を迎え、「危険な普天間基地の即時閉鎖・返還を! 沖縄に連帯する京都集会」を1200人の集まりで成功させました。
こうした経過を受けて、昨年8月1日の「普天間飛行場の辺野古移設に反対する 関西沖縄県人会・郷友会の集い」を、成功させることができたのです。
少し具体的な日時と集会名を並べましたが、一朝一夕に8月1日の集いが取り組まれたのではないということを伝えたかったのです。
◇問われる本土
私たちは、この間、京都でのとり組みに集中してきました。それは、「沖縄現地はすでにまとまっている。あとは本土の闘い。本土の闘いが遅れている」と考えたからです。
そしてもっとも大切なことは、現にある古い組織を時間がかかっても少しずつ変革することの大切さを伝えたいということです。
沖縄では、門中(*)や地域・自治体の保守的なつながりを改造しながら、ここまでたどり着きました。私たち県人会も、「親睦団体」的な県人会を改造することに専念してきました。
ただ、このことは突飛なことではなく、私たちの先輩が戦後直後から実行してきた「ふるさとへの想いを行動に」ということに、ようやくたどりついたに過ぎません。
〔*沖縄における同族の結合体〕
米日のねらいと辺野古
――沖縄の基地闘争の今の地平は、どの辺でしょうか
沖縄闘争は、大きく前進しているように見えますが、まだ五合目を少しこえたところではないでしょうか。
沖縄における基地撤去闘争は、沖縄だけで解決することはできません。日本列島の人びとが連帯し、ひとつになったとき、展望が開けると考えています。
昨年11月の沖縄知事選の結果を見れば、沖縄闘争の現段階が分かると思います。
仲井真さんが52%、伊波さんが46%、金城さんが2%。仲井真さんと伊波さんの得票率を合計すれば、98%の沖縄県民は、「普天間基地は県外」「辺野古の海に新基地はいらない」ということでまとまりました。
とくに沖縄財界の方々が、「普天間基地は県外」でまとまっていることは大きいです。彼らは誇りをとりもどしたのですから。
この結果は、昨年の5月28日に鳩山首相とオバマ大統領が合意して発表した「日米共同声明」にたいする公式な拒否宣言であり、沖縄の総意です。
◇アメを拒否する名護
沖縄のたたかいの中身で言えば、知事選よりも、名護市長選と名護市会議員選挙結果が沖縄闘争の質的な地平を示しています。
昨年1月の名護市長選では、稲嶺進氏が「海にも陸にも基地はつくらせない」と公約して当選し、昨年9月の名護市会議員選挙では、稲嶺市長を支える市会議員が多数を占めました。宜野湾市長選では、伊波氏の後継として安里氏が勝ちました。これは、「日米共同声明」を破綻させる切り札の役割を果たしました。
しかも、今年1月の年頭あいさつで、稲嶺進市長は、「政府は、再編交付金がなければ市は何もできないと思っているだろうが、そんなことはない。再編交付金は労せず得た金。自ら汗して稼いだ金でまちづくりを」と述べました。
復帰38年、沖縄では、「基地迷惑料」に相当するばらまき金、とくに米軍再編交付金が、基地をかかえる自治体を中心に、「アメ」として注がれてきました。住民は、いやだけれども、貧しいので仕方なく受け入れてきました。稲嶺市長の誕生は、そんな基地依存から抜け出したいという思いの結果と考えます。
これは、沖縄現代史の大きな転換を象徴していると理解しています。
しかし、知事選結果と合わせて沖縄県民の総意はまとまりましたが、日本人口のわずか1%。国政を動かすまでには至りません。結局、本土の人びとのたたかいと連帯しなければ沖縄問題の解決はありません。
――アメリカは、なぜ辺野古にこだわっているのでしょうか
アメリカが沖縄にこだわっているのは「見せかけ」です。
アメリカはすでに、西太平洋における軍事戦略拠点は、グアムに移すことを決定しています。「日米同盟:未来のための変革と再編」(05年10月29日 日米安全保障協議委員会の共同発表文書)を見てください。共同発表文書だから、日本政府も了承済みです。
結論から言えば、アメリカが辺野古にこだわる理由は三点です。
◇米日の共同使用へ
第一は、沖縄の基地は、沖縄県民の圧倒的な反対によって、もはや自由使用できる基地ではなくなりました。アメリカにとって自由使用できない基地は使用価値を失います。
近い将来、沖縄の米軍基地は、日本の自衛隊に返還されます。
しかし、アメリカが、基地を返還すると言っても、完全撤退ではありません。自衛隊基地を共同使用することが大前提です。これなら、必要なときにいつでも使用でき、費用は日本の「思いやり予算」で賄われ、米兵にとってこれまで通り「パラダイス」(鳩山前首相発言)です。アメリカの国益に合致します。
◇対中国で再編
第二は、中国の軍事能力が進んだことです。
ステルス機の開発成功や射程2千キロの対艦弾道ミサイル(MSBM)、あるいは原子力潜水艦をはじめとする海洋戦力の向上です。
このため、これまで米第七艦隊が自由航行していた西太平洋、とりわけ極東海域の自由航行が制約を受けることになりました。こうした状況に対応して、沖縄に軍事基地を持ち、司令部を駐屯させることは、戦略的に不適切と米国防省は考えています。
◇財政危機と戦略転換
第三は、アメリカの財政危機と軍事戦略の転換です。
アメリカの財政状況は破綻状態にあります。イラク・アフガニスタン戦争の戦費や、リーマンショック後の財政出動です。このために軍事予算の削減は不可避です。すでに韓国やドイツなどでは駐留米軍の大幅な削減が始まっています。
この悪条件下で軍事支配をなお維持するためには、アメリカは戦略を転換しなければなりません。
アメリカは、これまで、アジアの同盟諸国との間で、個別ないし複数でおこなってきた軍事演習を、指揮・命令系統と共に統合して実施し、その費用負担を同盟諸国に押しつけるという計画を進めています。
この方法によって、実際の戦闘時には米兵の死者を減らし、米国内の反戦闘争を押さえることができます。同時に同盟諸国の兵器・弾薬・装備をアメリカ製で統一すれば、米軍需産業が儲かります。
その上で共同軍事演習場を必要とします。沖縄にそのキャパシティはありません。アメリカはその場所をグァム・テニアンと決めています。これが、アメリカの新たな戦略です。
――日本政府の狙いは
外見は「アメリカの言いなり」のように見えますが、日本の支配階級もしたたかです。日本の国益、企業の権益を無視した行動はとりません。
日本政府が「普天間基地移設の辺野古回帰」に同調しているのは、次の理由からです。
日本の多国籍企業は、世界とりわけアジアに進出しています。日本政府は、日本の多国籍企業を自力でも防衛する意思を内外に示すため、南西諸島から極東における戦略的な軍事基地として、最新鋭の辺野古基地建設を不可欠と考えており、辺野古新基地を米軍撤退後の自衛隊基地として狙っています。新・防衛大綱(昨年12月策定)はその現れです。
アメリカは、辺野古につくる基地を共同使用できれば十分と考えています。日本政府は、アメリカの要求を受けて、「普天間基地の辺野古への移設」を掲げていますが、実は日本の権益防衛であり、国益のため行動しています。
これは、日本政府が描く「日米同盟の深化」であり、憲法の条文は変えずに、実質上の改憲を進めているのです。
普天間基地を即時撤去へ
――昨年5月28日の日米合意以降、沖縄の人びとが本土に求めていることは何でしょうか
先ほども申しましたが、沖縄県知事選の結果で分かるように、すでに98%が「県外」でまとまっています。あとは本土のたたかいと民意を引き上げることです。基地の自由使用をさせないことです。
そのためには、日米両政府が最も困ることを、持続的に大衆的に進めることと思っています。
名護市は、しっかりまとまっています。日米両政府は、名護がダメなら普天間基地の固定化ということで脅しています。
まずは、普天間基地が居座ることを阻止しなければなりません。
そのためには、《普天間基地は世界一危険》ということを、もっと多くの人に知らせることであり、《米海兵隊が沖縄にいることが抑止力》という理屈のウソをもっと暴くことです。
――普天間基地の危険性は、どのように訴えているのですか
普天間基地の危険性は、次の点にあります。
◇危険区域に住宅
アメリカには、海軍および海兵隊航空基地にかんする軍事基地設置基準があります。
軍用機は爆発物を積んでおり、しかも離着陸のとき墜落の危険がもっとも高いなどの理由から、滑走路両端の延長線上4千5百m内には、住宅や公共施設があってはならないと決まっています。とりわけ滑走路両端から9百mは、クリアゾーンと呼ばれ、無人で無施設とされています。
ところが、普天間基地では、クリアゾーンに公共施設の普天間第二小学校、保育園・病院・集会場があり、住宅約8百戸、約3千6百人が住んでいます。4千5百m内には、さらに多くの人が暮らしています。
◇昼夜の騒音
そのため、昼夜とぎれることなく軍事演習を繰り返すヘリコプターの騒音被害は、最高裁でも認定され、住民への賠償が国に命じられています。
◇耐用年数こえたヘリ
07年6月に公表された「海兵隊航空計画」によれば、「普天間にもっとも多く配備されているCH―46Eの平均使用年数が39年(現在43年)、住宅地上空でタッチアンドゴー(離着陸)を繰り返して訓練を行うKC130Fは46年(現在50年)と老朽化している」。普天間基地のヘリコプターは、耐用年数を超えて劣化しているということです。
さらに、ヘリコプターの特殊な事情として、「海兵隊所属機は、イラク・アフガニスタンで展開し、設計上の飛行時間率の2倍から3倍のペースで使用されている」ということを、海兵隊司令官コンウェイ大将が証言しています。(07年3月、米上院軍事委員会)
04年8月、沖国大に普天間基地所属のヘリが墜落しましたが、それは《たまたま落ちた》のではありません。むしろ現実は、いま住宅地の上を飛んでいるヘリが《たまたま落ちていない》ということに過ぎないのです。こういう恐怖に沖縄の人びとは苦しめられています。
◇さらに危険な代替機
米海兵隊自身も、危険で劣化したヘリの撤去を国防省に要求しています。
しかし、その代替機種は、何度も墜落事故を起こしているMV―22オスプレイです。
以上のように、普天間基地の危険性を具体的事実に即して知らせ、仲間になってもらう必要があります。
――「海兵隊は抑止力」論の欺瞞をどのように批判されていますか
アメリカは、すでに沖縄を「太平洋の要石」とは考えていません。
アメリカは、2010年QDRにおいて、アジアに最も近く、しかもアメリカ領で、自由使用可能なグァム・テニアンを、ハブ軍事基地として位置づけています。
現在、在沖米海兵隊の帳簿上定員は1万8千人。しかし実数は約1万2千人。しかもこの海兵隊は、同盟国との共同軍事演習に出かけ、沖縄に常時駐屯している部隊はその3分の1から4分の1。その上、イラク・アフガニスタンへの派兵にかり出されているから、沖縄にいる海兵隊はいつも少数。この数で「日本・沖縄防衛の抑止力」でないことは明らかです。
今ひとつは、海兵隊の移動手段です。
海兵隊が沖縄にいる必要があるという理由に、《極東にたいする沖縄の地政学上の位置》ということが強調されます。しかし、これはウソです。
なぜなら、有事の際の海兵隊の移動は、ヘリコプターではなく、長崎県佐世保に係留しているエセックスという強襲揚陸艦に乗り換えておこなわれます。
この時間的なロスは、彼らの主張を否定しています。
海兵隊の正式な任務は、殴り込み部隊であり、在外アメリカ人の救出作戦であって、日本防衛とは関係ありません。
アメリカが沖縄に海兵隊はじめ米軍を駐留させているのは、アメリカの国益のためであって、海兵隊が沖縄にいる「抑止力」上の根拠はありません。撤退させるべきです。
以上の真相を人びとに広め、普天間基地の撤去と辺野古への移設不要を広めるべきです。(以下、次号に続く)
昨年8月1日、関西の県人会が集い、「普天間基地の辺野古移設に反対」の声をあげた。参加者が一体になってカチャーシーを踊る(大阪市内) |
8面
被災者救援を 東日本大震災
11日、三陸沖を震源とするマグニチュード9・0(13日気象庁発表)の巨大地震が発生した。地震と津波によって、東北各県と関東地方に甚大な被害がもたらされ、膨大な人びとが犠牲になり、被災している。
政府・行政機関にたいして、一刻も早い救出と被災者の救援を強く要求する。
全国のみなさん。被災者を救援する活動をおこなおう。膨大な人びとが、家屋を失い、がれきの中で孤立し、電気も、水も、食糧も、毛布もない状態で、救援を待っている。
現地の運動団体や労働組合から発せられる呼びかけに応え、支援活動を開始しよう。〔具体的な方針は確定次第、本紙ウェブサイトにアップ〕
排外主義扇動ゆるすな
震災で人民が苦しんでいる最中に、デマと流言をメールなどで意図的に流し、排外主義襲撃を組織しようとたくらむ輩が存在する。関東大震災で、日本人民が犯した誤りと敗北をくり返すな。
全域住民を避難させよ
福島第一原発で炉心溶融
東京電力の福島第一原発(福島県)1号機で、炉心溶融が発生した。そのため、原子炉内が高温になり、12日午後、建屋内で水素爆発がおこった。原子炉建屋は吹き飛び、放射性物質が大気中に放出されている。多数の作業員や周辺住民が被ばくする深刻な事故になっている。
14日午前、3号機が爆発した。3号機はMOX燃料を使用している。ウラン燃料使用(福島第一原発1号機)でもじゅうぶん危険だが、MOX燃料の危険性は桁違い。それは、MOX燃料がプルトニウムを使っているからだ。
もし3号機の原子炉格納容器が吹き飛んでいれば、想像もつかない規模でプルトニウム被ばくがおこる。ウランにくらべ、プルトニウムは放射能が強く、放射線を出し続ける期間も長い。体内に入ると、骨では50年、肝臓では20年もとどまる。
今回、地震の激しい揺れで自動停止した原発は11基あるが、「冷温停止」という比較的安定した状態にあるのは3基だけ。ほかの8基は、いったん原子炉が止まっているものの、炉心が高温のままであり、再臨界や炉心溶融の危険性はなくなっていない。
最悪の原発事故
炉心溶融(メルトダウン)とは、核燃料棒が溶けだすこと。通常、原子炉は水で満たされ、炉心にある核燃料棒が一定温度以上に過熱するのを防いでいる。が、原子炉の水位が何らかの原因によって下がり、核燃料棒が露出すると、空だき状態になって炉内の温度が上昇、核燃料棒が溶け出す。こうなると、原子炉の運転を止めても炉心の温度は上昇し続け、最悪の場合、原子炉圧力容器や原子炉格納容器、原子炉そのものが破損、放射性物質が周囲にまき散らされる。最悪の原発事故だ。
79年の米国北東部のスリーマイル島原発の事故で、炉心溶融が発生している。この事故では、核燃料の約45%が溶け落ちて爆発寸前に至り、周辺に放射性物質が拡散、汚染された水が原子炉の建物の地下に大量に漏れ出し、大きな被害をもらした。
原発は、発電する過程で、高レベルの放射性物質を大量に生成する。原発事故によって、放射性物質が微粒子となって大気中に流れ出る。これを吸いこんだり、汚染された水や食物をとおして体内に取りこまれると、体内から放射線を浴びせつづける。放射線は、人体の細胞に傷をつけ、急性死、白血病などのがんや遺伝障害を引き起こす。
「原発は安全」のウソ
今回、福島原発では、地震発生の直後に原子炉冷却用電源が破損し、炉心の冷却能力は失われた。深刻な事態が発生したことは明らかだった。
ところが、政府も東電も、報道管制を敷き、事態を住民に知らせず、作業員や住民を放射線の中にさらしている。
そもそも、政府と電力会社は、「原発は、いくつもの安全装置で多重防護しているから、絶対に安全」「日本では炉心溶融は起こらない」と言ってきた。そして、「原発は地球温暖化対策の切り札」と宣伝、原発増設計画を加速し、インフラ輸出の目玉として推進していた。
しかし、いま人民が、その原発の犠牲にされている。
事故情報を全てリアルタイムで明らかにせよ。全域住民を避難させよ。国内のすべての原発をただちに停止せよ。(14日)
元・京大原子炉実験所 講師 小林圭二さんのコメント
東京電力福島第一原発、第二原発の非常用電源のすべてが、地震と津波によって故障したことにより、原子炉の冷却ができなくなっている。第一原発1号機、3号機で核燃料棒が水面上に露出し、燃料の溶融が発生したことを認めざるを得ない事態に至っている。溢れた水蒸気の圧力で格納容器が破裂する危険が高まり、それを避けるために放射性物質を含む気体を逃す弁を開放するに到った。2号機も同じ経過をたどりつつあり、弁を開けて放射性物質を逃がすことが時間の問題となっている。
原発設置思想の破たん
そもそも福島第一原発は、原子力安全・保安院と原子力安全委員会が「最新の耐震設計指針に照らしても安全だ」と09年に評価したばかりである。今回の事故は、新指針とそれに基づく評価が欺瞞であり、どんな危険な場所でも耐震設計によって建設できるとした原発設置思想の破綻を、事実でもって明らかにした。万全といわれてきた安全対策もことごとく裏切られた。
これらのことから、近い将来の発生が確実な東南海地震の震源域真上に位置する浜岡原発は、ただちに停止して廃炉にすべきである。また、世界に冠たる大地震国の日本は、原発と共存できない。現在稼働中の全原発も、巨大地震と津波との同時襲来にたいする検証を行い、それに耐えられない原発から順に廃炉にしていき、全原発の廃止へ向かうべきである。(13日)