未来・第76号


            未来第76号目次(2011年3月1日発行)

 1面  郵政大リストラ反対
     経営悪化は会社の責任
     JP労組は「労使パートナー宣言」破棄せよ

 2面  時短・雇い止め許すな いっしょに声をあげよう
     郵便局で働く仲間へ 投稿 郵便労働者 新井祐介(仮名)

     関西合同労働組合 春闘要求書提出
     11事業所・14ヶ所へ

 3面  新自由主義教育を現場から告発
     学校が破壊されていく 都教委包囲ネット

 4面  高江 連日100人で作業強行
     ねばり強く反撃 作業進まない日も

     150人で米大使館へ
     高江に連帯 妨害・逮捕はね返す

     上関 未明に工事強行 2/21

     辺野古 名護防衛事務所準備室の閉鎖と現況調査の不許可
     に対する名護市への不服申し立ての撤回を求める声明

     開示命令出せ 2月狭山要請行動

 5面  侵略訓練やめよ
     米海兵隊と陸自 合同演習 滋賀県あいば野

     沖縄と本土が手をつなぐ オキナワ―奈良集会

     神戸空港は撤去 沖縄米軍基地いらない

 6〜7面
     グローバリズムと中国
     中国敵視論との対決のために 中国問題研究会

 8面  3・27全国集会にお集まりください
     市東孝雄さん(三里塚芝山連合空港反対同盟)からの訴え

     空港会社 明け渡し請求 一部を取り下げ
     市東さん農地裁判

       

郵政大リストラ反対
経営悪化は会社の責任
JP労組は「労使パートナー宣言」破棄せよ

「債務超過の恐れ」。昨年末、郵便事業株式会社〔注1〕・鍋倉社長の発言が唐突に新聞報道された。さらに、年明け1月7日、日本郵政株式会社〔注2〕・齋藤社長が、「郵便会社の収益悪化の改善策の一つとして社員の給与・ボーナスの削減も検討する」と発言した。

〔注1〕〔注2〕郵政民営化により、2007年10月1日、日本郵政グループが発足した。日本郵政グループは、郵便局株式会社・郵便事業株式会社・株式会社ゆうちょ銀行・株式会社かんぽ生命保険などからなり、その持株会社が日本郵政株式会社。
郵便局株式会社は、郵便局を運営する会社で、手紙や小包などの窓口業務、印紙の販売、銀行代理業、金融商品仲介業、生命保険・損害保険の契約締結の代理、不動産業、通信販売、地方公共団体からの受託業務などをおこなっている。
郵便事業株式会社(日本郵便)は、配達などの郵便事業・物流業を営む会社。


人件費削減
これ以後、矢継ぎ早に合理化計画が進んでいる。
◎人件費削減の目標値を2010〜11年度で320億円と設定(1月14日、郵便事業会社の支社長会議)
◎年末繁忙期の短期アルバイトの雇い止め、時間短縮・超勤削減、宅配統合による期間雇用社員の雇い止め、委託業者の解消と自社配送をうちだした。
◎ゆうパックでは、一人の配達個数の指標を設定し、バイクで郵便とゆうパックをあわせて配達することを要求。
◎郵便事業会社は、総務省に提出した「収支改善計画」の中で、「経営悪化によって通期1千億の赤字が予想される」と報告。「損益改善のために、集配業務、人員配置や、集配委託業者の契約を見直し、正社員には成果主義賃金を導入し、給与、ボーナスのカットをする」と表明。(1月28日)
◎運送便新ダイヤが通知され、「余剰人員」作りのための配置・時間見直しが進められている。(2月23日から)

3月31日雇い止め
その後も、以下のことがもくろまれている。
◎JP労組各支部にたいして、「労使パートナー宣言」の再確認を要請(2月末)。合理化と大リストラの容認をJP労組に迫り、これで総務省から2011年度事業計画認可を受けようとしている。
◎3月31日、期間雇用社員の大量雇い止めと委託契約の一斉解除。
◎4月1日、本務者などの配置見直し(人員削減)。
◎6月1日、集配委託会社との契約を解消、ターミナル支店の統配合、輸送ダイヤの合理化。
◎期間雇用社員の雇用期間短縮化(再契約時)

強引な事業統合が失敗
郵便事業会社は、「経営悪化」を理由に大リストラを進めようとしている。しかし、経営悪化の最大の原因は、「ゆうパックとペリカン便の事業統合」失敗にある。
労働者には何の責任もない。会社の経営責任こそ問われるべきだ。
郵便事業会社は昨年7月、ペリカン便を丸ごと吸収して「新ゆうパック」をスタートさせた。日通の不採算部門を丸ごと抱え込んだ。経営が悪化するのは当たり前。
しかも、新ゆうパックはスタート直後から大混乱。最初の6日間の遅配は、34万4千個にのぼり、これがさらなる「客離れ」へ。
こうした遅配対策費用と無駄な統合費用で、損失増加が420億円と大幅に増えた。明らかに経営の失敗だ。

JP労組は追認
2月17日、JP労組〔注3〕第7回中央委員会は、「労使パートナー宣言を再確認」し、「経営の自由度を担保する郵政改革法の早期実現と、郵便事業の収支改善の取り組みが緊急の課題」として、日本郵政の大規模なリストラ計画を追認した。
これにたいし、各地本では、本部の屈服への怒りがわき起こっている。
「人件費削減は、宅配便事業統合による混乱収束のために懸命に取り組んだ組合員の期待と努力を踏みにじるもの」「新規採用中止を本部が容認したことは理解できない」。
そして、たたかいいを求める声があがっている。「年度末に非正規雇用社員の雇い止め等が予想される。雇い止めや労働条件の不利益変更阻止に全機関で取り組みを」。 JP労組中央委員会(東京)の会場前では、首都圏と関西のたたかう郵政労働者が、「リストラ攻撃とたたかう方針を確立せよ」と訴えた。
JP労組の生産性労働運動に反対し、労使パートナー宣言を破棄させよう。雇い止めと時短=賃下げを阻止するために、郵政労働運動と地域の労働組合が手をたずさえ、創意工夫をこらして、たたかおう。〔2面に関連記事〕

〔注3〕 日本郵政グループ労働組合。JPU(日本郵政公社労働組合=旧・全逓)と、全郵政(全日本郵政労働組合)が統合。組合員数は、約22万人(発足時点)で、単一組織労働組合としては国内最大。


「人事交流=強制配転に反対する近畿郵政労働者
の会」が大リストラに反対し近畿支社前で緊急行動
(2月8日 大阪市内)

2面

時短・雇い止め許すな いっしょに声をあげよう

郵便局で働く仲間へ 投稿 郵便労働者 新井祐介(仮名)

75%以上が不合格
一昨年秋の政権交代直後、亀井・郵政改革担当大臣(当時)が「非正規職10万人を正社員化」と発言し、マスコミで大きく取り上げられました。正社員登用の要件が緩和された日本郵政グループでは、昨年3万4千人が応募しました。
しかし、一次、二次の試験を通過して正社員になったのは、結局グループ全体で8438人、応募者のわずか4分の1でした。応募者の大半を占めた郵便事業会社の合格率は、グループの中で最も低いものです。
JP労組は、「前年を大幅に上まわる正社員登用を実現」とうたっています。たしかに、前回の2000人と比べたら、多いかもしれませんが、現実は希望者の75%以上が不合格とされているのです。自画自賛するJP労組本部と、不合格とされた非正規雇用労働者とは、感覚がまったくちがうのです。
非正規雇用労働者の多くは、亀井の思惑がどうあれ、正社員になりたいという気持ちだったと思います。しかし、物事はそう簡単には進まなかったのです。
自分たち自身の大きな行動とたたかいなしに、正規職化を勝ち取ることはできない。このことが、痛いほどわかった登用試験でした。

正社員というニンジン
今回の正社員登用試験の結果は、それぞれの労働者や現場に、大きな影響を与えています。
試験前、それぞれの支店で支店長が、応募者に「激励」することがありました。ある支店では、とにかく営業をがんばることが重要と説かれました。
「期間雇用社員は、『営業は義務ではなく協力できる範囲で』となっているが、それは営業しなくていいということではない。その数字で、やる気が判断されるのではないか」という感じで。
その言葉にそそのかされた人たちは、カタログゆうパック売り上げがトップクラスになるまで買い続けました。が、そんな売り上げ順位に関係なく一次試験をあっさり落とされた人が結構いたようです。まるで詐欺にあったようなものです。
しかし一方で、ある人は不合格通知を支店長から受け取るときに、「あれほど言ったのに、君はあれからも営業成績が全く伸びていない。そういうことだから、だめだったのではないか」と言われたりもしています。
いずれにしても、正社員というニンジンを鼻先にぶら下げられて、もてあそばれているような状況があります。まったく許せないことです。

分断と競争が狙い
試験の合否判定の基準は、問い合わせをいっさい受け付けていないため、まったくわかりません。一次試験では営業成績が上位の人や、支店長に受けがいいと思われる人も不合格となっています。そのため、試験の点数だけで合否判定が行われたものと、ほとんどの労働者が思っています。不合格者は、「学力の劣る者」とかげ口をたたかれています。
また、「何であいつが通って、あいつが落ちたのか」ということが、いたるところで話されています。そのためにやる気をなくして職場を去る人も実際にでています。
とにかく職場の雰囲気が、これまで以上にぎくしゃくしているのは確かです。
合格者は、自分の実力を認めてもらえたと思っている人が多く、やたらと当局の言うことを率先してやる役割を担わされつつあります。
こうして見ると、正社員登用試験が、労働者どうしの団結を破壊し、分断と競争をあおる攻撃だったと思い知らされました。
JP労組が、これを手柄のように取り上げることは許せません。

赤字で使い捨て
職場では、コスト削減と営業成績のかけ声のもと、成績目標の達成と個人責任の追及が横行しています。
ここへきて、わたしたちに大リストラがおそいかかってきています。早期退職勧奨や配置転換、時短の強要が大手をふってまかりとおり、3月31日には、期間雇用労働者の大量雇い止めが起きると予想されています。
16万非正規雇用労働者のみなさん。時短や雇い止めに、泣き寝入りしていてはだめです。今こそ、いっしょに声を上げましょう。

関西合同労働組合 春闘要求書提出
11事業所・14ヵ所へ

2月15日、関西合同労組の春闘要求書提出統一行動に、十数人がたちあがった。神戸西区・郵政関連の関西トランスポート、セクハラ差別のJR西日本へ。続いて労働条件の改善要求をコアズ、川崎コンテナに。労災・解雇のコープムービングなど5事業所7カ所をまわり、要求書・抗議書の提出行動を行なった。
さらに、争議仲間の親会社であるコープこうべにたいする抗議申し入れ、雇用保険の再受給(条件つき給付)を妨害した兵庫労働局、会社側弁護士事務所などへの抗議申し入れ行動もおこなった。
翌16日は、まず京都府久御山町にある争議中の事業所へ。当該の分会から5人、さらに京都の仲間が合流。他労組からの応援参加もあり、20数人で申入れ行動をおこなった。3人解雇にたいして、怒りのシュプレヒコールが会社に叩きつけられた。事業所が面している国道1号線を走る通勤・就労の労働者から、出入りの運輸労働者からもエールが送られた。
大阪市内に移動し、賃下げの賃金改定・未払い賃金と闘う陸送運輸のキャニオン分会へ。
その後、阪神地区と大阪地区に別れて行動。阪神地区では、昼休み注目の中、賃上げと安全靴改善要求の摂津分会へ。尼崎養護学校分会は、正規雇用を求めて尼崎市教委へ要求行動。ここに京都の仲間も合流した。
大阪地区では、大阪労働局へ抗議と交渉申入れをおこなった。未払い賃金・退職強要にかんする労働相談に、大阪労働局が介入した問題での追及だ。つづいて、未払い賃金の出版輸送分会へ。不当配転をついに撤回させ、労働条件改善で闘う梅田運輸への要求行動には阪神地区の仲間も合流して闘われた。この日は、6事業所・7カ所への行動をおこなった。

団結に力を感じ
春闘要求行動は、職場・産別・地域を越えた仲間の連帯・団結を確認するとともに、事業所への牽制であり、近隣の職場への激励でもあり、大切な行動だ。
今回は労働行政による組合差別行為への荷担ともいえる対応にたいし、労働局への抗議行動も取組まれた。今回は友好労組、生活相談などで知り合った仲間も行動に参加し、新たな息吹きを示した春闘行動となった。(労働者通信員 M)

「不当解雇を撤回せよ」20数人が門前で抗議
(2月16日 京都府内)

梅田運輸にたいし労働条件改善を要求
(2月16日 大阪市内)

3面

新自由主義教育を現場から告発
学校が破壊されていく 都教委包囲ネット

2月6日午後、《日の丸・君が代強制反対、新自由主義教育路線と対決しよう》を掲げ、都教委包囲ネットが都内で総決起集会をひらいた。
朝から、右翼の街宣車10台が会場におしかけてくるなかを、210人が参加し、立ち見が出る盛況だった。
冒頭、連帯のあいさつは、神奈川(教科書問題)、杉並(和田中、有料授業「夜スペシャル」)、「『高校無償化』からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」がおこない、続いて首都圏以外からは、大阪(門真三中への「君が代」処分をただす会)、兵庫(憲法改悪に反対する退職者ネットワーク、「日の丸・君が代」の強制に反対する阪神連絡会)が発言した。

右翼の妨害をはねのけ、会場を埋める参加者
(2月6日 都内)

学校現場から

学校現場から4人の報告があった。

◇校長の犯罪 ―義務制から
校長に権力が集中するとどうなるか。その事例として、校長の犯罪が起こっている。
「学力向上事業」で、対象教員の出勤簿を校長が偽造し、その教員に振り込まれたお金を、「間違って振り込まれた」と言って校長がとりあげ、自分の妻に渡していた。都教委はこの校長を、わずか停職3カ月ですませた。

◇タイムスが支配 ―高校から
タイムス(注)でなければ、パソコンは使っちゃいけないとなっている。他のパソコンは学校中から全部撤去された。
このパソコンは、USBメモリがつけられない。フロッピーやCDのドライブもない。できるのはネットだけ。教科用のソフトも入らない。打ち込んだデータを、家に持ち帰って仕事をしようにも、取り出せない。
生徒のテストの点数は、タイムスに全部入れる。都立高校全員の点数を、都教委は見ることができる。生徒の体力測定の結果も全部。このパソコンでやる教員の仕事は、すべて都教委につつぬけ。
朝、同僚に「おはよう」と声をかけるのではなく、まずパソコンを開く。そうなりつつある。

〔注 タイムス(TAIMS):東京都高度情報化推進システム(Tokyo Advanced Information Management System)の頭文字。都教委による教員直轄支配のツール〕


◇定時制からも溢れて ―定時制高校から
全日制からあふれ、定時制にも入れない生徒たちが出ている。
マスコミなどがいう経済状況が原因ではない。定時制統廃合により、計画的におこなわれた結果だ。都は、入学できない生徒がでてくることを前提にやってきた。

◇弾き出されて養護学校へ ―特別支援学校から
全日制からも定時制からも弾きだされた子が特別支援学校(養護学校)に来ている。いままでは、全日制、定時制とも定員割れがあった。だから入ることができた子が、今は定員きちきちで弾き出されている。
弾き出された生徒たちが、特別支援学校に来ている。特別支援学校は定員がない。希望者、希望させられた生徒はすべて受け入れる。いままでは1学年60人くらいだったが、今は多い学校で100人のところもある。

非正規の仲間と

業績評価裁判(大嶽さん)の報告につづき、基調報告が以下の内容でおこなわれた。
非正規雇用労働者の問題が、大きな課題としてあるが、その現状に対応できていない。
この問題がなぜ重要なのか。生活できない環境におかれているだけでなく、正規雇用労働者とのあいだに大きな溝を作っている。資本の側は、常に労働者を分断しようとしてきた。
「日の丸・君が代」で処分を受けてもたたかっている人たち、その処分撤回のためにも、より大きな団結をつくりだしていく。非正規雇用労働者と手をつなげる質をもった運動をつくりだそう。
一人ひとりが違うのはあたりまえ。だけど団結できる。そうした可能性をわたしたち労働者は持っている。

根津さん不起立の決意

ジョニーHさん(解雇撤回をたたかう疋田さん)の歌があり、つづいて佐々木賢さんの講演「教育と貧困」に移った。〔要旨別掲〕
裁判闘争・被処分者からの報告では、▽1月28日に逆転反動判決があった予防訴訟について、共同代表の永井さんから、▽義務制から、▽藤田裁判、▽被処分者の会、▽中島裁判、▽近藤順一さん、▽渡辺厚子さん、▽根津公子さんの8人が発言。
とくに根津さんは3月に定年を控え、免職処分の攻撃が迫るなか、不起立の決意を表明した。
集会宣言では「この経済社会システムのもとにおいては、どのような政権であろうとも、私たち自身の要求と批判精神に基づいた確固とした運動をつくりあげていかねばならない」、「『日の丸・君が代』強制反対、新勤評・主幹制等を含めたあらゆる『新自由主義教育』体制に抵抗する広範な運動を広げていこう」と確認した。

格差の実態をつかむ
国境こえた連帯が必要 佐々木賢さん講演要旨

〔2月6日、都内でおこなわれた集会での佐々木賢さんの講演「教育と貧困」の要旨を掲載します。文責・見出しは編集委員会〕

貧困と格差拡大
就学援助対象生徒数は、99年には78万4千人だったが、09年には142万1千人に倍増した。
高卒求人数は、92年に160万人あったが、09年には13万人に激減した。昨年、15歳から34歳までの非正規雇用者比率は、男子42%、女子51%だった。
義務教育の国庫負担額は、98年には約3兆3千億円だったが、09年には約1兆6千億円に半減した。
富裕層優遇策の問題。最高税率は74年に75%あったが、07年以降は40%に下がった。91年の相続税徴収総額は約4兆円だったが、06年には1兆円に減った。
年収上位20%と下位20%の格差は90年時点で10倍だったが、05年は170倍となった。
06年、不動産を除く金融資産1億円を越す人は、200万人を超えている。

民営化は私物化
95年のマラケシュ条約、略称WTO設立協定。これ以降、貿易の自由化、民営化が世界規模ですすんだ。
日本では「民営化」と呼んでいるが、英語ではprivatization。正しい訳は「私物化」だ。この協定以降、公的に運営されてきたものが、私物化=営利企業化されていった。

民意操作の手口
権力は、以下のような手口で、民衆意識を操作している。
a.感動と単純な物語。理性より感情を刺激。
b.超富裕層と超貧困層を見えなくする不可視化。
c.中産層上部の意識は支配層意識に近く、政府の番頭役をつとめている。
d.敵を提示する。たとえば、隣国、公務員汚職、テロリストなど。
e.家庭、学校、職場、地域からの孤立を促進し、国家への帰属をあおる。
f.「国益」「お国」「日本はどうなる?」などをあおり、支配を隠蔽する。国家はグローバル資本の手先だ。
g.事件を個人の責任にして、社会的背景(不安定労働、家族崩壊など)を捨象する。
h.平等主義は、「悪平等」でよくないとキャンペーン。差があって当然という世論づくり。

運動の世界的展開を
「アジア最低賃金運動」というのがある。
アジア各国の時給最低賃金(注 1ドル=83円で換算)を高い順に並べると―
 タイ   1・29ドル(107円)
 マレーシア   1・18ドル(98円)
 中国沿海部   1・08ドル(90円)
 中国内陸部   0・55ドル(46円)
 インド   0・55ドル(46円)
 スリランカ   0・43ドル(36円)
 ベトナム   0・38ドル(32円)
 カンボジア   0・33ドル(27円)
 バングラデシュ   0・22ドル(18円)
2010年の日本の最低時給(都道府県別)で一番低いのは、鳥取、島根、高知、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄の各県で642円。最高は東京821円。
グローバル資本は、賃金の安い国に工場を持って行き、そこから世界中に輸出している。たとえば、ユニクロはバングラデシュで生産している。こういう状況下で、世界中の労働者の賃金が下げられ、不安定雇用が進み、解雇などが発生している。
だから、国境を越えた連帯が必要だ。もし、時給最低のバングラデシュの賃金が上れば、それは大きな意味をもつ。
運動の世界的な展開なくして、貧困はなくならない。


4面

高江 連日100人で作業強行
ねばり強く反撃 作業進まない日も

昨年12月22日に開始された沖縄・高江ヘリパッド建設工事は、2月に入って激しさを増している。 作業を連日強行、人数も防衛局員と作業員合わせて100人規模。重機や砂利を搬入、樹木を伐採している。抗議する住民の頭越しに、ダンプから土嚢を投げ入れるという危険な行為も。16日には、支援者が作業員に押し倒されて負傷した。
住民と支援者は、1月17日から、24時間態勢で、ローテーションを組みながら、監視と抗議の行動をおこなっている。防衛局の動きがあれば、ただちにツイッターやブログで伝わり、住民や支援者がかけつける。
住民と支援者は、作業員にたいして、必死で抗議し作業を中止するように説得している。ダンプの前で腕をつないで、動けなくしている。
2月末の数日、住民と支援者の抗議と説得によって、作業員が引き返すなど、作業が進まない日も出ている。

150人で米大使館へ
高江に連帯 妨害・逮捕はね返す

高江と連帯し、アメリカ大使館に抗議する行動が、「緊急アクション実行委」などの呼びかけで続けられている。そういう中、2月20日予定のデモが、大使館前通過のコースを却下され、変更を強制された。
20日当日、新橋SL広場に集まった150人の仲間は、不当な申請却下に抗議するスピーチをおこなった後、変更されたデモコースをボイコットし、歩道を通って大使館に向かうことにした。途中、公安警察が執拗に妨害してくるが、それをはねのけて、大使館直近のJTビル前に到着。
今度は多数の機動隊が包囲。その中で集会をおこないながら、約2時間にわって、警察の妨害に抗議。その最中に2人の仲間が不当逮捕された。それをもはねのけて、ようやく6人の代表を大使館に送り出した。すると今度は、大使館が、抗議文の受け取りを拒否(これまでは受けとっていた)。
これを弾劾し、この日の抗議行動を貫徹した。
その後、不当逮捕された仲間の釈放を求め、赤坂署への抗議をおこなった。

23日、25日も集会
高江ヘリパッドに反対して、2月23日には院内集会が、25日には支援集会が都内でひらかれた。 (通信員・S)

申請したデモコースの却下と変更に抗議し
新橋駅前のSL広場でスピーチ(2月20日)

米大使館への申し入れ行動を妨害する機動隊に抗議(2月20日 米大使館直近)


上関 未明に工事強行 2/21

中電社員(柵のむこう側)に抗議する祝島の人びと
(2月24日 田ノ浦海岸)

2月21日、未明の午前1時半すぎ、中国電力は、作業員・ガードマン400人以上を動員し、上関原発の埋め立て工事を再開した。
これにたいし祝島島民の会を先頭に、120人が抗議行動をおこなった。

《抗議先》

中国電力本社
  Tel 082-241-0211
  Fax 082-504-7006
中国電力・上関原発準備事務所
  Tel 0820-62-1111
山口県知事への提言
  Tel 083-933-2570
  Fax 083-933-2599
経産省 経済産業大臣 海江田万里
  Tel 03-3508-7316
  Fax 03-3508-3316
  e-mail: office@kaiedabanri.jp

同日、裁判所は、中電側の言い分を受け入れ、「妨害行為禁止」の仮処分を決定した。「工事の妨害行為をおこなった者に対して1日につき五百万円の科料を課す」というもの。
司法権力と一体になった工事強行にたいし、祝島の住民たちは動ずることなく抗議活動を継続している。23日には、中電が動員したガードマンによって、祝島の女性と支援の男性が負傷、病院に搬送された。この事件後、中電は一時的に工事を中断しているが、緊迫した状況は続いている。抗議の声を集中しよう。

辺野古
名護防衛事務所準備室の閉鎖と
現況調査の不許可に対する名護市への
不服申し立ての撤回を求める声明

2011年2月7日 命を守る会 ヘリ基地反対協議会

2月7日、辺野古のテント村で、命を守る会とヘリ基地反対協が記者会見を行い、以下の声明文を発表した。〔小見出しは編集委員会〕


政府が不服審査
沖縄防衛局は2011年1月28日、名護市から不許可となっている辺野古の陸海域生物の現況調査を行政不服審査法に基づき異議申し立てを行った。行政不服審査法は国民が行政庁の違法または不当な処分に対する権利救済を求めて不服申し立てする法律である。国の最高権力である政府が法の趣旨を顧みず、普天間基地の辺野古移設に従わないことを理由に稲嶺市長及び名護市民へ牙をむけたのである。憲法や様々な法律を遵守すべき政府が行政不服審査法の理念を勝手に解釈して地方自治体を恫喝する行為は絶対に許さない。
菅首相や関係閣僚等は「地元沖縄県民の同意を得て辺野古移設を実施したい」と口で言うが、今回の不服申し立て行為は首相らの口から出まかせを証明した。

辺野古に防衛局44名
また、沖縄防衛局が名護市辺野古地区に開設予定の44名体制の「名護防衛事務所」準備室を閉鎖すべきである。名護防衛事務所の開設は昨年の名護市長選で敗北した島袋前市長の要請を政治的に悪用した代物なのである。
さらに、防衛省は稲嶺名護市政が前島袋市政の継続事業の実施に対する9年度、10年度の米軍再編交付金16億円を凍結するという嫌がらせを行った。私たち名護市民は理不尽な政府・防衛省による稲嶺名護市政への恫喝に毅然たる闘いをつくり上げていく。名護市は米軍再編交付金に頼らない健全な財政をつくり上げていく決意である。

県民の怒り充満
仲井真県知事は昨年の選挙で「県内移設やむなし」から「県外移設」へと公約を変更して当選した。沖縄の民意は普天間基地の早期返還と辺野古新基地建設反対一色である。日本政府による横暴な政治行為は名護市民、否、沖縄県民を侮辱する行為であり、多くの県民は怒りを充満させている。
いま、県内外の多くの人から菅政権による露骨な「基地との共存・共生」の押し付けである辺野古新基地建設に反対する稲嶺市政への支援の輪が広がっている。防衛省による名護市への米軍再編交付金凍結攻撃に対して、名護市への「ふるさと納税」の申請が増加しているのである。
名護市民は「海にも陸にも新しい基地はつくらせない」とする稲嶺市政をしっかり支えて行く。

名護市へ激励と支援を
名護市民は全国の仲間・友人に訴える。菅政権の悪辣な攻撃に毅然と対決する稲嶺名護市政への様々な激励と支援を訴える。そして菅政権への抗議の渦を巻き起こして欲しい。そのことが辺野古新基地建設反対闘争の勝利へと繋がる。

開示命令出せ
2月狭山要請行動

2月14日、部落解放同盟全国連合会の狭山要請行動に参加した。
午前中、高裁へ。「証拠隠しをつづける検察を、裁判長は認めるのか。検察に開示命令を出せ。できないなら狭山事件の担当をやめろ」と強く迫った。
午後から高検へ。高検から事前に「時間は30分以内。文書での要請を厳守」と電話連絡が入った。
玄関前は警備員が大量に配置され、入館を拒否するかのような構えだった。しかし要請行動をやりぬいた。

さらなる追及を
事前の打ち合わせでは、前任の門野裁判長が『人権新聞(2010年4月号』で、「再審事件に共通の問題として感じたのは、検察側の証拠開示が不十分」「(証拠が開示されないのは)アンフェア」と語っていると報告された。
狭山事件は、今年で48年目をむかえる。事件は、脅迫状、万年筆、被害者の自転車など証拠物が多数存在しながら、石川さんの指紋はまったく検出されていない。警察は、部落青年120人の筆跡収集や、養豚場関係者28人の血液検査など、部落差別にもとづく見込み捜査をおこない、石川さんを犯人にでっちあげた。
検察が隠し持つ全証拠を開示させ、石川さんの無実をはらそう。(通信員・I)

5面

侵略訓練やめよ
米海兵隊と陸自 合同演習 滋賀県あいば野

2月中旬から3月上旬にかけて、滋賀県あいば野で、日米合同軍事演習が強行される。これにたいして2月13日、「日米合同軍事演習反対! あいば野集会」がひらかれ、800人が集まった。「フォーラム平和関西ブロック」と「2011あいば野に平和を! 近畿ネット」の共催。
集会に先立ち、主催2団体の代表が、陸自・今津駐屯地にむかい、合同演習の中止を求める申し入れをおこなった。集会は、午後2時から高島市民会館でおこなわれた。

演習反対の声とどろく(2月13日 滋賀県高島市内)

米軍再編と対決
主催者あいさつは、「フォーラム平和関西ブロック」(山下さん)。「2011あいば野に平和を! 近畿ネット」(野坂さん)から。
野坂さんの訴え―
2月20日から3月6日までおこなわれる、11回目のあいば野での日米合同軍事演習を弾劾する。あいば野演習場は、戦前は陸軍、戦後は陸自の演習場。1986年の日米地位協定の改定にともなって、日米合同演習が始まった。当初は米陸軍との合同演習だったが、00年以降海兵隊との合同演習に。06年に都市型戦闘訓練施設が設置され、09年4月にはPAC3が配備された。
この演習は、昨年の韓米合同軍事演習、日米統合軍事演習に続き、新防衛計画の大綱の実践。米軍の世界再編と一体だ。沖縄・岩国・横須賀の仲間とともにたたかおう。

沖縄・岩国・横須賀・韓国の仲間とともに
続いて、東京から駆けつけた平和フォーラム事務局長・藤本さん、社民党衆院議員の服部良一さんが発言した。
岩国からの連帯あいさつとして、「愛宕山を守る会」の世話人代表である岡村寛さんがたたかいの報告をおこなった。
決意表明は、フォーラム平和関西ブロックから滋賀県平和人権運動センターと大阪平和人権センターが発言。2011あいば野に平和を!近畿ネットからは、京都と兵庫がそれぞれ発言した。
集会へのメッセージが、沖縄・ヘリ基地反対協の安次富さん、非核市民宣言運動・ヨコスカの新倉さん、韓国クンサンのユンチョルスさんから寄せられたことが紹介された。
最後に集会決議を採択し、デモに出発した。

沖縄と本土が手をつなぐ オキナワ―奈良集会

「本土の闘いをどうつくるか」と問題提起する大湾さん(2月11日 奈良市内)

2月11日、奈良ではめずらしく大雪がふった。この日、奈良市内の県解放センターで、大湾宗則さん(京都沖縄県人会会長)の講演集会がひらかれた。主催は実行委員会(代表・藤原好雄さん)。
悪天候をはねのけて、70人を超える人びとがあつまり、「沖縄闘争は我がたたかい」の決意を共有しあい、会場は熱い一体感につつまれた。部落解放運動をたたかう人びとも多く参加し、沖縄問題にたいする関心の深さを示していた。
集会のまとめでは、沖縄闘争を「自分自身の課題とし、行動する」ことを参加者共通の確認とし、ともに行動することを誓いあった。

大湾さんが講演
大湾さんは講演で、「沖縄は、すでにまとまっている。心配はいらない。この沖縄のたたかいにたいして、本土のたたかいをどのように作り出していくのか。ここが最大の課題だ。この集会で、共に考えていきたい」と、問題意識を切り出した。
大湾さんは、おおきく4点について述べた。@高校生まで生活した大阪・西成での自己形成史、A戦後の沖縄闘争の歴史をふまえながら、1997年の市民投票から昨年の市長選の勝利にいたる名護市民のたたかいの意義、B京都県人会を改革するたたかい、C沖縄闘争の今日的課題。
「子供の頃は、沖縄差別をよくうけた。高校を卒業する時、大学に進学するのは、学力ではなく親の経済力であることがよくわかった。自分はたまたま大学にいけた。何とか社会におかえししなければならないと思って、社会運動にかかわり始めた」
「2010年、名護市民は、振興策という形の金を拒否し、基地反対の稲嶺進市長を選択した。この12年間続いてきた政府との関係が、完全にひっくり返った。この意義は大きい。これにいたるには、04年からの辺野古でのたたかいがあったからだ」
「歴史的にみても、ヤマトにうらぎられてばかりだ。沖縄では、沖縄独立論が根強く存在する。しかし、ヤマトに絶望したところから出てくる独立論は、正しくない。沖縄とヤマトが手をつないで、ともに変革していく道をさぐるべきだ」
「いま、沖縄県人会の大部分は親睦団体になっている。ふるさとでおきている事は、けっして政治の問題ではなく、生活権の問題だ。これにたいして、ヤマトで生活するウチナンチューが熱くならないで、どうするのか。本土でのたたかいを作り出すためには、ヤマトのウチナンチューが先頭に立たないといけない」
「自分の生活する場で沖縄の基地問題を具体的に提起し、行動を作り上げていこう。労働運動や部落解放運動のなかに、沖縄の課題をしっかりといれて、沖縄闘争をとりくんでいこう」
「今後の闘争課題として、4点を提起する。@2012年に配備されようとしている垂直離着陸機オスプレイに反対するたたかい、A不平等な日米地位協定を改正させ、安保・日米協定違反の『思いやり予算』に反対する、B『ふるさと納税』運動にとりくむ、C『抑止論』を理論的に粉砕する」。

他人ごとではない
この講演を受けて、自由討論の場では、「沖縄の問題は他人ごとではない、自分自身のことなのだ」「自分のたたかいとして行動している」ことが、各自の具体的な実践をとおした言葉で語られた。
全日建連帯労組関西生コン支部からは、沖縄・意見広告運動(第二期)へのアピールがあった。
なお、服部良一衆議院議員からメッセージがよせられ、樹杉和彦さん(社民党奈良県連合・代表)が代読した。(通信員・T)

神戸空港は撤去
沖縄米軍基地いらない

神戸空港は、JAL撤退、路線廃止、航空機の小型化などで、2010年2月〜11年1月の搭乗者数は232万人に減少し、3年連続で最低記録を更新している。
開港5年目を迎え、地元、神戸市で2月13日「神戸空港反対・市民の集い」がひらかれ100人が参加した。

神戸市を批判
はるまきちまきさんの「歌と演奏」につづき、神戸空港の中止を求める市民の会代表・讃岐田さんが主催者あいさつ。
「空港財政の破たん、大阪湾汚染、軍事空港化反対と訴えてきたが、今それが現実の問題に。市税の投入をしないとしながら、来年度から新都市整備事業会計で補てんが行われる。市の環境影響評価審査会の審議では、私たちの海洋調査結果に触れた委員が1人だけいたが、結局無視された」と、神戸市の姿勢をきびしく批判した。
来賓のあいさつで神戸市議・粟原さんは、「来年度、新都市整備事業会計から空港会計の赤字に3億6千万円の補てんが。これまでは黒字だったというのも真っ赤なウソ。一方で震災被災者への(民間から借り上げ、復興住宅にしている)借り上げ住宅に毎年15億円は出せない、と高齢になった被災者を追い出そうとしている。市政を変えなければならない」と提起した。

沖縄から知花昌一さん
三里塚芝山連合空港反対同盟からのメッセージ紹介につづき、知花昌一さん(沖縄読谷村前村議・反戦地主)が講演をおこなった。
「民主党政権が沖縄にやっていることは《第4の琉球処分》。『尖閣は固有の領土』と一方的に主張し、与那国や八重山、石垣島へ、自衛隊を増強しようとしている。尖閣周辺に石油が出るといい、沖縄が豊かになるような幻想をあおっている。社民党、共産党も同じ。これは大変危険だ。沖縄に新しい基地は絶対に作らせない。辺野古にも高江にも。私たちは絶対やります。本土の多くの人たちも力を出してほしい」と訴えた。
講演後、「大阪の海と空を戦争に使わせない会」など6人の発言があり、まとめを「新空港反対東灘区住民の会」の山本善偉さんがおこなった。

6〜7面

グローバリズムと中国
中国敵視論との対決のために 中国問題研究会

「尖島諸島」をめぐる日中の衝突事件をひとつの契機に、中国にたいする敵視が強められている。
日本政府は、昨年末に策定した新防衛大綱において、中国敵視を安保・防衛政策の中心にすえ、米国の対中包囲政策への追随を明確にした。マスコミは、「中国の脅威」を洪水のように扇動している。街頭では、田母神など極右が反中国の行動をくり返している。
左翼の側においても、「中国の覇権反対」を声高に叫ぶ者が出るに及んでいる。
危険な状況だ。不屈にたたかう中国人民と連帯し、中国敵視と対決し、米日のグローバリズムと対中包囲の攻撃をうち破ろう。
このためには、現代中国の体制を、階級的立場から検討・分析することが必要だ。中国共産党の強権支配、改革・開放政策のもたらす矛盾と対決している中国人民と連帯する視点から、以下現代中国の政治・経済・社会体制の問題点を見ていく。

共産党支配と改革・開放政策

共産党の支配
中国の政治体制は、共産党の主導する国家であり、国家機構のすべてに共産党の指導が浸透している。
中国共産党は、今日も「社会主義」を掲げている。その共産党の下で、改革・開放政策が進められている。
改革・開放政策の中で、共産党官僚とそれと結びついた特権層が、支配階級として利益を独占している。党員数7799万人の20%近くを、経営者・資本家が占めている(09年末)。
「共産党」「社会主義」とは名ばかりだ。ただし、今日の中国が、体制として資本主義に転換したわけではない。資本家が支配しているわけでもない。スターリン主義国家として「社会主義」をペテン的に掲げ、共産党官僚の利害を中心に動いている。
深刻な矛盾を生み出す改革・開放政策を推進できるのは、共産党が、社会を隅々まで強権的に支配しているからでもある。党がすべての報道機関を統制、治安警察が人民を監視。共産党を批判する者を、裁判ぬきで、最長4年間、強制収容所に拘束できる。全国で350カ所、16万人が収容されている(08年末)。

改革・開放政策
中国共産党は、国内建設の行き詰まり、文化大革命による混乱拡大、毛沢東の死などを契機に、トウ小平の下で、70年代末に、改革・開放政策を選択した。改革・開放政策とは、グローバリズムに乗り、新自由主義政策を推進することだ。80年代以降に顕著となる帝国主義世界のグローバリズムに、中国が引き込まれたという意味であり、同時に、グローバリズムに飛び込むことで体制維持を図ろうという決断でもあった。
天安門事件(1989年)、ソ連崩壊(1991年)という事態を目の当たりにして、中国共産党は、強権支配をいっそう強めながら、改革・開放政策を、より徹底して推進した。
改革・開放政策によって、市場経済が導入され、国有企業の民営化が進められ、外国資本の導入が図られ、中国経済が世界市場に結びつけられた。それは、中国の労働者・農民・少数民族を、グローバリズムの餌食に差し出すということだった。

反動的な諸制度
スターリン主義的な諸制度が、改革・開放政策の下で、資本に搾取・収奪の自由を与えるものに転化している。
◇農村戸籍と農民工
「農村戸籍(農業戸籍)」「都市戸籍(非農業戸籍)」という戸籍制度がその典型だ。
もともと中国スターリン主義は、国内建設・工業化政策を、農民からの強収奪によって推し進めた。そのために農民を農村に縛りつける必要があり、それが「農村戸籍」だった。 
「都市戸籍」者には、仕事・住宅・生活必需品・社会保険などについて、制度的な配分や享受があった。ところが、「農村戸籍」者は、そのような措置から除外され、都市への移住や就学・就業が厳しく制限された。身分的な差別に等しい。
改革・開放政策の下で、都市への出稼ぎは容認しつつ、この「農村戸籍」を温存した。そのことによって、農民工を大量に生みだした。
農民工とは、農民でありながら工人(労働者)でもあるという意味で、農村戸籍のまま、都市に出稼ぎにくる人びと。農村戸籍のために、都市では、正規の就職ができず、長時間、低賃金、無権利、劣悪な住環境、社会保障・医療・教育なしという生活と就労を余儀なくされる。
現在、6億人の都市住民のうち、3億人が農民工という(政府見解)。
この農民工が、グローバル企業と中国資本の利潤の源泉なのだ。
◇土地制度と失地農民
中国は、「社会主義」の建前上、土地は私有制ではなく、国有ないし公有。各地方政府が管理し、土地の使用権だけが取引される。耕作する農民にも使用権しかない。
しかし実際上は、地方政府の役人が、住民・農民から使用権を強制的に安値で買い取り、商業施設やオフィスビルを強引に開発するということが横行している。
こうして土地を奪われた失地農民が、公式の報告でも4千万人にのぼるという。
◇工会の支配
中国では、「社会主義」の建前上、労働者は、「社会の主人公」とされ、全国総工会の下に組織されてきた。
しかし実際には、スターリン主義の下で、生産ノルマの動員組織でしかなかった。
今日、工会は、企業の党委員会によって統制を受け、企業の利潤追求のために労働者を動員する装置となっている。
しかも、「社会主義」の建前上、労資関係は存在しないとされているため、どんな悪徳な経営でも、「労働関係」としてのみ処理され、紛争にすることは許されない。
公認の工会以外は認められず、自主的な組織をつくろうとすれば、厳しく処罰される。
     ・    ・    ・ 
このように、共産党が、体制維持をかけてグローバリズムに乗り、制度的に低賃金労働力を生み出し、強権支配をもって不満を押さえ込むことで、労働者・農民・少数民族を、グローバリズムに差し出しているのだ。

格差社会と階級対立

改革・開放政策は、共産党の体制維持の政策であるが、同時に、社会矛盾を極限的なまでに推し進め、激しい格差とむき出しの階級対立を生み出している。

利権と腐敗
中国共産党は、中央から下部末端まで腐敗が進行し、利権にまみれた集団となっている。
毛沢東時代から、共産党の官僚主義と腐敗は進んでいたが、中国革命の権威と倫理が一定の制動をなし、また手にする利権も少なかった。
改革・開放政策の下では、党官僚・政府役人が、民営化された国有企業を買い取ったり、自ら起業したりして、次々と企業家になった。この企業家が、党・政府と結託し、安値で国有財産の払い下げを受け、住民・農民への補償金を低く押さえて土地使用権の譲渡を受ける。こういうやり方で、巨額の利権・賄賂が、官僚・役人のもとに入った。
かつての中国革命の権威・倫理は、もはや崩壊し、共産党の内部を拝金主義が支配するようになった。
中国の最高裁判所の報告によれば、昨年までの5年間、収賄など汚職事件で有罪判決を受けた処長(課長)クラス以上の公務員は4525人にのぼり、5年前に比べ77%も増えた。
この腐敗は、人民の激しい怒りをかっている。共産党中央は、「『第二の革命』を招く」(共産党機関誌『求是』)と危機感を表明してはいるが、その真因が、自ら推進する改革・開放政策にあることは認めない。

格差と貧困
改革・開放政策は、中国社会に深刻な格差を生み出した。
公式統計でも、地方・農村部の所得は都市部の3分の1以下。都市居住者の所得最上位10%の層は、最下位10%の層の約23倍の所得を得ている。実際の格差は100倍近くと言われる。
1千万元(約1億2千万円)の資産を持つ富裕層が32万人いる。この1年足らずで資産10億元(約120億円)の大富豪が250人も誕生している(昨年末)。
その反面、1日1ドル以下で生活する貧困層は、約1億人。近い将来2億人に倍増すると予想されている。
農村部では、衣服のない子どもが、下半身に墨を塗って「ズボン」といっている者がいるというほどだ。
しかし、地方政府は、そのような農民に、道路税や農業用水税などの名目で、何重にも税金をかけて、払えない場合は道路工事などの労働を科している。
また農民工として出稼ぎにでた者は、長時間の単純労働、狭くすし詰めの住居、病気や怪我でも保障なし、あげくに給料は未払いという状態だ。

10万件のスト・デモ
この現実に怒った農民や労働者が、やむにやまれずおこなうストやデモは、年間10万件以上にのぼるという。
賃上げや待遇改善をかかげた労働者のたたかいは、工会の敵対・妨害をはねのけた労働者の自主的決起だ。さらに、労組の改革や自主労組を要求してたたかわれはじめている。
昨年10月末、深セン市にある香港と米国の合弁企業で、工場移転に反対する労働者3千人以上がストに立ち上がった。ストは3日間におよび、警官隊と衝突し、周辺道路が封鎖されるなど緊迫した。
当局の弾圧にたいして、労働者は、携帯電話やソーシャルネットワークを駆使し、同じ地域、同じ職種、同じ出身地でつながり、新たな労働者階級の団結を作りはじめている。

開発問題や民族問題
農村の疲弊が進行し、投機目的の土地囲い込みが横行している。
これにたいして、土地収用に反対する住民・農民が、数千人・数万人規模で警官隊と衝突する事件が頻発している。
また、チベットやウイグルの少数民族の反発も強まっている。チベットでは、民族文化破壊(漢語の強制)にたいして、中高生などのデモがたたかわれている。
     ・    ・    ・ 
中国共産党の強権支配は、堅牢に見えるが、労働者・農民・少数民族のたたかいが、その支配を確実に脅かしている。

5中全会と習近平

このような危機にたいして、中国共産党は、どう対応しようとしているのか。改革・開放政策と強権支配を強める以外は何も打ち出されていない。

「5カ年計画」
共産党は、昨年10月、「第17期中央委員会第5回全体会議」(5中全会)を開催。ここで、むこう5年の経済政策を定める「第12次5カ年計画」の骨格を採択した。ところが、従来はGDP成長率など具体的な数値目標を示していたのに、今回の「5カ年計画」にはそれがない。
また、現行の「5カ年計画」にあった「経済建設を中心とする」との文言も削除した。
解決すべき喫緊の課題として、公共サービスや社会保障などの改善に力を入れ、格差を是正することが強調された。
改革・開放政策が生み出す矛盾の大きさと人民反乱の激しさにたいして、共産党中央が危機感を示している。

習近平が最高指導者へ
また5中全会で、習近平が軍事委員会副首席に選任された。2012年には、胡錦濤国家主席の後継として、最高指導者になるという。
若いころに農村部で苦労した経験や、汚職に厳しいクリーンな人物として語られているが、これは、周到に作り上げらたイメージに他ならない。
実際の習は、「太子党」の一人。太子党とは、縁故や人脈で甘い汁を吸う特権層として、人民から憎まれている高級幹部の子だ。
習は、改革・開放政策の実績でのし上がってきた。沿海部にある浙江省を担当した時代には、企業経営者の連携を図る組織を立ち上げ、民間企業主導で経済発展をめざす「浙江モデル」を推進し、高い経済成長を実現したという。そのために、グローバル企業の受けはいい。
習は、09年ウルムチ虐殺事件の責任者と言われている。この事件で、武装警察や漢族住民が少数民族であるウイグル人を襲撃、3千人を虐殺した。
     ・    ・    ・ 
以上の事柄は、共産党が、人民の反乱におびえながら、改革・開放政策と強権支配の一層の強化に突き進む以外にないことを示している。
改革・開放政策の推進は、共産党支配打倒の条件を確実に成熟させていくだろう。

グローバリズムの崩壊

アメリカを中心とする帝国主義グローバリズムが、政治・経済・軍事の全分野で、その限界を露呈している。そのことが中国の体制にもたらす影響は計り知れない。

危機の中国へ波及
グローバリズムの危機は、中国に波及する。
中国経済は、内需が乏しく、GDPの40数%が貿易に依存している。(貿易依存度の高いドイツが20数%、日本が15%程度)
このことは、リーマンショックから2年余りの世界経済の落ち込み、各国財政の危機、カネ余りによる投機という中で、中国への影響は避けられないということだ。
とりわけ、アメリカが、激しい通商戦争・為替戦争を展開し、TPPに日本を動員して、対中包囲を狙っていることは重大だ。

中国に依存する危機
他方、リーマンショック以降の世界経済の落ち込みの中で、グローバル企業がますます中国に殺到していることがもたらす危機がある。
昨年の中国への直接投資額は、前年比17・4%増の1057億4千万ドル(約8兆7千億円)と過去最高を記録した。
その特徴は、ひとつは、製造業を中心に、より低い賃金をもとめて、中国の沿海部から内陸部に投資先を拡大していること。いまひとつは、製造業への投資から情報産業へシフトし、また、中国市場での販売から中国を拠点としたグローバル展開にシフトしていることだ。
中国リスクがいわれているが、中国のように、グローバル企業にとって「理想的」な条件は他に見つからない。
このことは、中国経済がまだ発展するとか、中国経済の発展で世界経済も持ち直すということではない。まして中国の台頭が脅威であるとか、近い将来、米国にかわる覇権国になるという話ではない。
むしろ、恐慌にあえぐ資本主義世界経済が、極限的な矛盾を抱えた中国に依存するしかないという構造、これこそ、すさまじい危機だ。

台頭する人民のうねり
百万人が立ち上がった89年の天安門事件。ここに示された中国人民の怒りは、何も解決していない。軍を動員した流血の武力弾圧によって、かろうじて押さえ込んだだけだ。腐敗しきった共産党組織の利権ネットワークにたいする人民の怒り、社会権(生存権など)と政治的自由を求める人民のエネルギーは蓄積され、マグマの爆発口を捜している。怒りは、チュニジア、エジプトの比ではない規模で爆発するだろう。
台頭しているのは、国家としての中国ではなく、グローバリズムをその土台において打ち破ろうとしている人民のたたかいなのだ。

体制危機と軍事外交
中国の軍事的な脅威がいわれている。南中国海での領有権問題、アジアからアフリカ・南アメリカに及ぶ資源外交、軍事費の二桁の伸び、航空母艦の建造などだ。
◇中国の本当の軍事力
しかし、軍事の実力は、米国に太刀打ちできるような水準ではない。
たとえば、核兵器の多弾頭化は始まったばかり。米国は、地下サイロで常に移動しながら発射できる状態にあり、中国は全く勝負にならない。
潜水艦、航空機も旧式兵器が多い。報道された新型ステルス機も、実戦配備には程遠い。
◇国内矛盾を外に
中国では、軍部が権力構造において大きな要素となっている。軍事費は、軍部にとって、利権的な意味も持っている。
さらに言えば、「中華思想」と称される愛国主義・大国主義と一体に共産党の権威を押し出すことで、国内矛盾を対外的にそらそうとしている。
◇資源外交
さらに、資源の獲得が、改革・開放政策の継続にとって死活的。そのために、資源外交を展開している。
が、そこにある心理は、やはり、改革・開放政策を継続しなければ、(本当は続ければこそだが)、国内矛盾が噴出し、人民に倒されるという恐怖だ。
◇米中の引きおこす戦争
グローバリズム破綻が次々と露呈する中で、アメリカが、軍事を含めたあらゆる手段を行使していることこそ世界危機の動因だ。
その中で、米中が、一面で依存しあいながら、他面で激しく対立し、戦争危機を促進している。
しかし、本当の焦点は、別のところにある。世界の支配層がもっとも恐れているのは、グローバリズムを土台から突き崩している労働者人民のうねりだ。世界の支配層と労働者人民は、世界規模での階級間戦争の中にある。

中国人民と連帯した労働運動を

日本の労働者人民に問われているものは何か。
日本経団連が、資本の側の方針を示した「経営労働政策委員会報告」で、「グローバル競争」を盾に、《日本の賃金水準は高い》《雇用も賃金も我慢しろ》《派遣規制は雇用の縮小》などと、言いたい放題のことを書いている。
ところが、連合指導部は、「グローバル競争」の前に圧倒され、「多国籍企業のようだ」と泣くばかりで、全く太刀打ちできないありさまだ。
「グローバル競争」とは、賃金抑制のための口実ではないのだ。グローバリズムのもとで、資本は国境を自由に越える。資本は、いちばん利潤をあげやすいと判断した政治・経済・社会体制の国に殺到する。そして、改革・開放政策下の中国は、無権利・低賃金の労働力を大量に生み出している。
グローバル企業は、この中国の賃金・労働条件にむかって、日本国内の賃金・労働条件をどんどん引き下げていこうとしている。「デフレ脱却」というが、それも、一国的な現象ではなく、中国の物価水準にむかって、どんどん押し下げられているという問題だ。
改革・開放政策の下で、労働者・農民・少数民族にたいして、極限的な搾取・収奪が行なわれている。この構造を見ぬき、中国の労働者・農民・少数民族の苦しみを、同じ仲間の痛みとして受けとめることができるかどうかが問われている。中国敵視の煽

《中国の諸データ》

◎中国共産党
党員数 7799万人
党員の20%近くが経営者・資本家(09年末)

◎農民工
3億人(6億人の都市住民のうち)〔10年 政府見解〕

◎格差
・地方・農村部の所得は、都市部の3分の1以下
・都市居住者の所得最上位10%の層は、最下位10%の層の約23倍(公式統計)。実際の格差は100倍近くとも
・1千万元(約1億2千万円)の資産を持つ富裕層が32万人
・1日1ドル以下で生活する貧困層が約1億人

◎中国への直接投資
2010年は過去最高。前年比17.4%増の1057億4千万ドル(約8兆7千億円)

動は、この核心問題を曇らせるためのものだ。
だから、グローバリズムのもとで、資本が国境を自由に越えているとき、人民の側が、各国ばらばらのままでは勝てない。中国人民の低賃金・劣悪労働条件を放置しておいて、日本人民の賃金があがることはないし、労働条件の改善もない。中国人民と蹴落としあいをしていては、みずからの首を絞めるだけだ。
中国の労働者・農民・少数民族との連帯がはじまったとき、日本の労働運動は、日本経団連の倣岸な態度を力強くはね返して、前進するだろう。

8面

3・27全国集会にお集まりください
市東孝雄さん(三里塚芝山連合空港反対同盟)から
の訴え

みなさん。
日頃のご支援、ありがとうございます。

切り回し道路との闘い
空港会社は、新たな誘導路建設のための道路工事を去年の秋から始め、先日、道路の切り替えを強行しました。
道路を使うのは私だけではありません。1時間に何百台も走ります。
ところが工事するのに説明もなければ、看板も立てませんでした。新しく造った道は見通しの悪いS字カーブで、猛スピードで走れば曲がりきれず私の家に突っ込むようなコースです。ガードレールは造ろうとしません。こういうひどいやり方が、45年たっても完成しない空港となっているのです。
1〜2月は、この切り回し道路との闘いでした。また、私の畑の隣りにある現闘本部の建物をめぐっては、東京高裁の早期結審の動きと闘いました。

裁判で重大な成果
私の農地の裁判では、新しいことが起きています。空港会社が、一部の土地の明け渡し請求を取り下げたのです。
その土地は、先代を含めてうちは一度も耕したことがなく、今も空き地です。私に対してその土地を明け渡せというのはおかしなことで、取り下げて当然です。でも、これは契約畑の位置の特定に間違いがあったことを認めたわけではなく、一種の開き直りです。
しかし、取り下げたことは重大で、3つの裁判全体に大きく影響することでしょう。みなさんのご支援と弁護団のねばりづよい追求によるものであり、勇気づけられています。

農地を守るため
3月27日に、私の畑を会場にして全国集会を開きます。農地を守り、誘導路建設に反対する集会です。また、現闘本部裁判(控訴審)の不当判決を許さないための集会です。
駅から少し離れていますが、是非、お集まり下さい。

                                2011年2月22日  市東孝雄

空港会社 明け渡し請求 一部を取り下げ
市東さん農地裁判

市東さん農地裁判(農地法裁判と行政訴訟)が、2月22日に千葉地裁でひらかれた。農地法裁判は、市東さんが耕作している土地を「明け渡せ」といって、空港会社(NAA)が訴えたもの。行政訴訟は、市東さんが「耕作権解約決定」の取り消しを求め提訴したもの。両裁判は、同日に連続してひらかれている。

虫のいい話
この日の農地法裁判で、空港会社は「南台41―9」の土地を明け渡し請求から取り下げた。「41―9は取り下げるから、もう争点化しないでくれ。その他の土地について集中して裁判を」という虫のいい話だ。
弁護団は、この取り下げに「不同意」。「現実に占有していないというなら、いつ占有していたのか」「訴状には占有していると書いてあるが、撤回するのか」と追及。
「賃借している」ことと、「その土地を占有している」ことは切り離せない。占有の事実がなければ、賃借地とはいえない。すると、空港会社が根拠としてきた同意書、境界確認書の信用性も大きくゆらぐことになる。市東さんの土地をめぐる3つの裁判(農地法裁判、行政訴訟、耕作権裁判)すべてに大きな影響をおよぼす。

知事の解約許可は無効
その一例として、千葉県知事がおこなった賃貸借契約の解除許可決定は、《占有の事実がないことを申請者(空港会社)自身が認め、過去においても占有の事実がないことが濃厚な土地》にたいしておこなわれたことになる。

早期結審ねらう
市東さん、反対同盟、弁護団、支援の4年半にわたるたたかいが、空港会社をおいつめ、簡単には判決をくだせない状況をつくりだした。こうして請求の一部取り下げに追い込んだ。
だが、これは契約畑の位置特定に間違いがあったことを認めたわけではなく、一種の開き直りだ。
早期結審を許さず、農地法裁判・行政訴訟で空港会社、千葉県を徹底追及していこう。