民衆蜂起でムバラク打倒
エジプト革命 次は何か? @
11日夜、副大統領のスレイマンがテレビ演説をおこない、「ムバラク大統領の辞任」「権限を軍の最高評議会に委譲する」と発表した。
「われわれが倒した」
1月25日、ムバラク退陣を要求するデモが始まった。当初、米政府の支持を背景にムバラクは強気だった。しかし退陣要求のデモはどんどんふくれあがった。
ムバラクは、側近のスレイマンを後継にすることで切り抜けようとした。米国のシナリオでもあった。しかし、ごまかしは通用しなかった。ムバラクが「辞任拒否」を表明するたびに、人民の怒りは高まり、デモ参加者の数は増えていった。
2月10日夜、再びムバラクが辞任拒否を表明。これが、首都カイロのタハリール広場を埋めるデモ参加者に伝わった。人民の怒りは頂点に達した。翌11日、退陣要求のデモはカイロなど全国十数カ所で、のべ数百万人にふくれあがった。
「こうなったら国営テレビを制圧し、大統領府に押し入るしかない」(デモの組織委員会責任者)。人民の実力で、ムバラクが倒される―そういう事態に進もうとした。デモ隊が、大統領府に向かい、軍の戦車と対峙した。
11日夜、スレイマンが声明を発表、ついにムバラクが退陣に追い込まれた。デモ参加者たちは、「われわれが倒した」と歓呼の声。ムバラクを実力で倒す方向に進もうとしていたデモの力が、ムバラクを退陣に追い込んだ。
新たな局面へ
大統領の権限が、軍の最高評議会に移された。軍が情勢を簒奪し、軍主導の政権移行を推し進めようとしている。
事態は新しい局面に入った。
〔2〜3面に続く〕
ストップ「大阪維新の会」
4月統一地方選の勝利へ
4月の統一地方選で、橋下ひきいる「大阪維新の会」は、府議会と大阪市議会での議席過半数獲得を狙っている。これを絶対阻止しよう。
「維新の会」がかかげる「大阪都構想」は、戦後の地方自治のあり方を転覆するものだ。同時に、この動きは、菅民主党政権のさらなる反動化を促進する側面を持っている。
新自由主義に回帰
菅は、年頭の外交演説および施政方針演説において、消費税増税、TPPへの参加、日米同盟強化の3本柱を打ち出した。これは、「小泉構造改革路線」への回帰だ。民主党は、07年参院選挙で「『生活』重視」を掲げ、構造改革を後景化させたが、それまでは、小泉構造改革にたいして、より積極的な新自由主義政策で対抗し、自民党と競い合っていた。菅政権は、07年以前の民主党路線へ舞い戻ったのだ。
こうした民主党の再転換が今後の日本の社会にどのような影響を及ぼしていくかは容易に想像できるであろう。
01年に登場した小泉は「構造改革路線」をおしすすめ、政治・軍事・経済の全領域で日米同盟を最優先し、対米追随を決定的に深めていった。
外交では、米帝による01年アフガニスタン侵略戦争、03年イラク侵略戦争を全面支持し、アフガニスタン沖・インド洋への海自派兵、自衛隊のイラク派兵を強行した。
内政でも、米帝が主導する新自由主義グローバリゼーションにそって規制緩和と市場開放、福祉政策の切り捨てを推し進めていった。こうした「構造改革」によって、日本社会は、貧困と格差がかつてないほど拡がり、社会が分裂していくという事態が進行した。
この事態にたいする怒りが、07年参院選で民主の大勝、09年政権交代という形で噴出した。
この社会状況は、なにひとつ変わっていない。菅政権が新自由主義政策を進めれば進めるほど、格差と貧困はよりいっそう拡大し、社会は深刻な分裂を深め、怒りは蓄積していく。
富の一極集中を促進
とりわけTPP(環太平洋経済連携協定)への参加による市場開放・貿易自由化は、大都市圏と農村・地方との格差を劇的に拡大させるだろう。
大都市圏においても、日本経団連など財界団体は、「国際競争力」や「企業誘致」などの名目で、よりいっそうの賃金引き下げ、労働条件の劣悪化、整理解雇への制限撤廃を要求している。また企業減税が進められる一方で、社会保障が大幅に削られていくことは火を見るよりも明らか。まさに大都市圏に富が集中すればするほど、労働者人民の生活はますます貧困の中に追い込まれていく。
下からの新自由主義
このような状況の中で、大阪の橋下や名古屋市長の河村たかしなどが、その高い支持率を背景に、「下からの新自由主義改革」を進めようとしている。
彼らの手法は、「二重行政の解消」「ワン大阪」「減税」などを繰り返し呼号する、いわゆる「ワンフレーズ・ポリティクス」。かつての小泉純一郎とまったく同じ手法だ。その政策も、小泉構造改革の焼き直しでしかない。
大企業に無制限の自由
彼らは、あたかも《地域住民の利害を代表して旧体制の改革をめざしている》かのように描きあげて、民衆の不満や怒りを糾合しようとしている。
しかし実際に彼らがやろうとしていることは、「経済発展=企業活動の活性化」を至上命題として、資本にたいする規制をことごとく撤廃することだ。
大企業に無制限の自由を与えるということは、労働者人民を完全な無権利状態にたたき込むことと同義だ。橋下らが労働組合を徹底的に敵視し、その抵抗を力ずくでねじ伏せようとしている理由もここにある。
排外主義で国民統合
同時に、橋下は、朝鮮民主主義人民共和国や中国にたいする排外主義を公然と扇動している。これは断じて軽視できない。
新自由主義政策の推進によって深刻化する社会の分裂という事態に、支配階級が、民衆にたいする統治を維持していくためには、民族排外主義や社会的差別を扇動して、国家の求心力を回復していく以外に方法は残されていない。
田母神俊雄の率いる「頑張れ日本」や、「在特会」など新たな排外主義運動が登場しているが、橋下の主張は、こうした連中とほとんど変わりがない。
橋下府政が行っている朝鮮学校への補助金カットなど、民族差別や社会的マイノリティへの攻撃に住民を動員していくというやり方を許してはならない。
こうした攻撃と対決する労働組合や市民団体、地域住民との連帯したたたかいを構築するなかでこそ、これまで破壊され奪い取られてきた《人間としての共同性》《労働者としての階級性》を奪い返していくことができる。
人間らしく生きる
橋下らの政策理念の核心は、「市場原理主義」である。彼らにたいする最も有効な批判は、市場原理主義の対極に位置する、《人間らしく生きられる社会》をのぞむ、民衆のもっともシンプルかつ根源的な欲求である。
この根源的な欲求を拠点として、批判の武器を磨きあげよう。そうすれば必ず、橋下・維新の会のワンフレーズ・ポリティクスを打ち破ることができる。統一地方選の勝利に向けてたちあがろう。
2〜3面
〔1面からつづく〕
エジプト革命 次は何か? A
新たな軍事独裁との対決
軍が権力を掌握
「国と国民の治安と安全に抵触することには警告する」。11日夜、ムバラク退陣を求めるデモが大統領府に迫ったとき、軍の最高評議会が声明を出し、大統領府前に戦車を配備、デモ参加者に銃口を向けた。
軍は、ムバラクが人民の実力で倒される事態を恐れたのだ。
米政府は、当初、退陣要求のデモがわき起こる中、ムバラクを支えようとしていた。しかし、デモが収まらないため、ムバラクを退かせて側近のスレイマンにかえることで、乗り切ろうとした。しかしそれも破産。
もはや米国にとっては、頼みの綱は軍だけになった。ゲーツ国防長官やマレン統合参謀本部議長らは、この過程で頻繁にエジプト軍と連絡をとっていた。
パレスチナ問題
「次の政権はイスラエルとの平和条約を尊重すべき」(米政府報道官)
11日、ムバラク辞任後、即座に米政府が発した言葉がこれだ。米国にとって、イスラエルとともにパレスチナ圧殺政策を担う親米政権をエジプトに確保することは、至上命題なのだ。
権力を掌握した軍は12日、ただちに次の声明を発した。
「すべての条約・協定を順守する」。イスラエルと協力し、パレスチナ圧殺政策を継続するという意味だ。
しかし、事態は米国の思惑通りには進まない。
「今後の政権がどのよな性質になるか、現時点では予測できない」(イスラエル政府高官)
「われわれは敵対的な状況に直面することになった。ムバラク失脚で、イエメンからアルジェリアまで、変革を求める連鎖反応が起こるだろう」(イスラエル元駐エジプト大使)
イスラエルは、パレスチナ圧殺政策を共に担ってきた盟友のムバラク退陣に衝撃を受けている。それは、ムバラクを倒した人民の怒りが、パレスチナ圧殺政策に反対し、イスラエルとの平和条約破棄に向かうことは必至だと見ているからだ。
軍との衝突は必至
政権移行を主導するのは「暫定的」「一時的」と軍は言っている。しかしそうはなり得ない。新たな独裁は不可避だ。
それは、次の二つの理由から。
◇軍こそ元凶
ひとつは、〈エジプト軍は権力機構そのもの〉だからだ。
エジプト軍は、独裁、特権、不正、腐敗、弾圧の実体だ。米政府の事実上の傭兵でもある。第2第3のムバラクが控えている。
したがって、人民がその要求を主張すれば、軍の利害とぶつからざるを得ない。そのとき、軍の「人民寄り」の装いははぎ取られ、軍事独裁の姿がむき出しになる。
反米・反イスラエルへ
いまひとつは、パレスチナ圧殺政策だ。
軍は、米政府の要求に応えて、これまで通りイスラエルに協力し、パレスチナ圧殺政策を担うことを明確にした。
つまり、パレスチナ圧殺に反対する者を、これまで同様、過酷に弾圧するということだ。
パレスチナ圧殺政策の継続、そのための軍事独裁の継続だ。
人民の激しい反発は不可避だろう。
そもそも今回のエジプト情勢は、パレスチナ情勢のエジプトへの波及、アラブ情勢全体への転化でもあった。
エジプト人民のたたかいは、パレスチナ人民のたたかいと結びつき、反米・反イスラエル闘争として発展するだろう。
その中で、軍との対決が問題になる。軍と対決し、兵士を人民の側に獲得し、軍を解体に追い込むたたかいに向かうだろう。
エジプト革命 次は何か? B
米 中東支配が破綻へ
連日の100万人デモによって、ムバラクは退陣に追い込まれた。その情勢を軍が簒奪し、軍主導で政権移行が進められている。
これで事態は収束するのか?それは不可能。なぜなら、始まっている事態は、米帝国主義による中東支配の破綻とグローバリズムの崩壊という問題であり、それにたいする人間として民族としての尊厳の回復をかけた決起が、始まっているからだ。
闘いの始まり
昨年12月17日、チュニジア中部のシディブジドで、ムハンマド・ブアジジさん(26)が、焼身自殺を図った。
大学でコンピューターを学ぶのが夢だったというブアジジさんは、死別した父親に代わって一家9人の生活のため、野菜や果物を道端で売っていた。ところが、販売許可がないと、警察が商品を没収。その際、市職員に顔面を平手打ちされるなど、屈辱的な扱いを受けた。さらに、市役所に訴えようとしたが、それも聞き入れられず、市役所前で抗議の焼身自殺を図った。その後、1月4日に亡くなった。
闘いの拡大
この事件が引き金となって、ベンアリ政権にたいする反政府デモが、チュニジア全土に。さらに、抗議の自殺や反政府デモ・ストライキが、アルジェリア、ヨルダン、イエメン、サウジアラビア、エジプトなどに燃え広がった。1月14日、チュニジアのベンアリ大統領は国外へ亡命。2月1日、ヨルダンでも内閣総辞職。そして中東最大の国エジプトで、ムバラク大統領が、連日の100万人規模のデモに追いつめられ、11日、辞任に追い込まれた。
尊厳の回復
どうしてアラブ諸国で反政府デモが一気に燃え広がったのか。それは、ブアジジさんの焼身自殺による告発が、アラブ諸国の人びとの共通して抱いている深い憤りに、火を付けたからだ。
高い失業率、物価高騰、警察の監視と拷問、特権層への富の集中、外国資本の優遇など。それは、単に生活が苦しいだけではない。また単に民主化を求めているだけでもない。
米欧によって押しつけられる新自由主義政策。親米路線の下で、パレスチナ圧殺を担う軍事独裁。帝国主義の支配が、人間として民族としての尊厳を、どこまでも踏みにじり続けてきた。その踏みにじられてきた尊厳の回復をもとめて、アラブ人民は立ち上がっているのだ。
以下、エジプトについて、新自由主義の押しつけがもたらした現実と、パレスチナを圧殺する親米軍事独裁の実態を見る。
新自由主義の押しつけ
〔別掲1〕貧困データ |
・25歳以下の若年層(人口のほぼ半分を占める)の失業率は約40%(男性25%、女性60%) |
〔別掲2〕IMFプログラム |
帝国主義グローバリズムによる支配と収奪の手段。赤字になった国に借金をさせ、その条件として経済自主権を奪い、公的サービスの切りつめ、付加価値税などの増税、外国企業への公的部門の売却を要求。さらに、外国企業に有利なように、通貨の切り下げ、規制緩和、金融・投資・貿易の自由化を迫る。 |
〔別掲3〕 |
国営企業の民営化 |
〔別掲4〕 |
エジプトへの直接投資が急増 |
IMF(国際通貨基金)は、エジプトを「特記すべき成功事例」と評価してきた。
しかしその実態は、デモ参加者が異口同音に語るように、「大学を出ても仕事がない」「給料が安い」「仕事がないから結婚もできない」。高い失業率と食料価格の高騰が深刻だ。〔別掲1〕
問題は、これが極めて構造的な問題、経済のグローバル化の帰結だということだ。
IMFプログラム
91年の湾岸戦争(=イラク中東侵略戦争)の最中、エジプトは、対米債務を帳消しにしてもらう代わりに、湾岸戦争に参戦するとともに、IMFプログラム〔別掲2〕を受け入れた。
IMFプログラムの下で、国営企業の民営化、規制緩和、緊縮財政が進められてきた。とりわけ04年発足のナジブ内閣は投資省を設置、民営化を加速させた。税制などでも、外資と金持ち・大企業を優遇。〔別掲3〕
これらがIMFから賞賛され、有望な投資先とされ、海外投資が急増。また、低賃金を目当てに、米英企業が、IT関連産業やコールセンターのアウトソーシング先として高評価。〔別掲4〕
これらが何をもたらしたか。
失業・賃下げ・非正規化
国営企業の民営化で大量解雇。公共部門でも、低賃金化と非正規化が進む。非正規雇用労働者が増加、労働人口2200万人中、約700万人を占める。
多国籍企業は規制を受けないため、劣悪な労働条件が常態化。
政府は、緊縮財政で、教育・医療・社会福祉・低家賃住宅などを削減。手放した事業は外資などの食い物に。
役人は、欧米の外国人を優遇する一方で、自国の人民を虫けらのように扱う。
補助金削減と食料高騰
これに追い打ちをかけたのが、補助金削減と食料高騰。
◇補助金カット
エジプトでは長らく、貧困層への懐柔策として、基礎食料品・エネルギーなどに補助金を給付してきた。
しかし、IMFプログラムによって、補助金の大幅な削減を求められ、基礎食料品・エネルギーの管理価格を引き上げてきた。さらに民営化によって、交通機関の料金、水道代、電気代なども上昇。
◇食料高騰
08年、金融危機の爆発で、投機資金が原油と食糧の市場に殺到。そのため食糧価格が急騰した。
現在のインフレ率は、年率10%前後と高い。
これが、人民の生活を直撃している。
特権層に利益
「やつらは国の富を独り占めする盗賊だ」
ムバラクの周辺で、巨万の富を築いてきた実業家たちのことだ。
日々の生活に苦闘する人民からは、怨嗟の的となっている。
ムバラクの息子アラアは、大実業家として知られる。
鉄鋼王アハマド・エッズは、ムバラクの息子ガマルに近く、コネクションを駆使して国
〔別掲5〕富の集中と格差 |
・人口の0.2%が、国富の80%を独占 |
彼らは、その地位や門閥を使って、「国営企業民営化、金持ち・大企業優遇」の恩恵を受けた。
ムバラク政権下で、富の集中と貧困層の拡大が急速にすすんだ。〔別掲5〕
特権層の家族が、私有ジェット機で大挙出国したことが、1月29日報じられた。
パレスチナ圧殺と軍事独裁
非常事態宣言
30年前、サダト大統領が殺された後、非常事態が宣言され、副大統領だったムバラクが大統領に就任。以来今日まで、非常事態宣言は解除されずにきた。
ムバラクは、非常事態宣言の下で、都合のいいように法を作り変え、政敵を投獄・暗殺し、反政府派や社会運動を抑圧。不正と暴力で選挙を操作し、与党NDPがほとんどの議席を独占した。
軍が社会を支配
この強権的な長期政権は、強大な軍の存在ぬきにはあり得なかった。
エジプト軍は45万人、予備役や治安部隊も入れて約80万人。人口8千万人に比して異様に多い。
中東戦争で築きあげられ、イスラム武装勢力との「対テロ戦争」や治安弾圧を担う暴力装置だ。
ムバラク自身が軍人出身であり、地方自治体の首長は現役・退役の軍人が占め、軍がそのまま権力機構をなしている。
しかも、軍隊であるだけでなく、軍需産業、航空産業、警備会社、旅行会社、ミネラル・ウォーターなどの食料品、衣料品まで含む巨大な関連企業群を傘下に収めている。大規模な土地を所有し、開発で大きな利益を上げている。
エジプトは、軍が実権を握り、政治・経済・社会を支配する国家だ。
米国の傭兵
アメリカは、エジプトに年間15億ドルの援助をつぎ込んでいる。その3分の2が武器供与などの軍事援助。エジプト軍事予算の3分の1に当たる額だ。
まさにエジプト軍は米政府の傭兵だ。
パレスチナ圧殺の支柱
米政府は、イスラエルとエジプトだけで、年間の対外援助の50%近くをつぎ込んでいる。それは、米国が、イスラエルとともにエジプトを、中東支配・石油支配の要として位置づけているからだ。
エジプトは1979年、アラブ人民の猛反対のなかでイスラエルとの単独和平を強行。「アラブの統一とパレスチナの解放」というアラブの大義を投げ捨て、パレスチナ圧殺に加担してきた。イスラエルによるパレスチナ占領の恒久化は、エジプトの協力抜きには不可能だった。ムバラク政権は、イスラエルと連携してガザの境界封鎖を続けてきた。
それは、当然にも内外で厳しい批判にさらされ、激しい矛盾を内包してきた。
ゆえに、異様な軍事独裁体制を敷く以外になく、その矛盾を乗りきるために米国の膨大な援助をもって支える以外になかった。
後戻りできない危機
以上から、ムバラク退陣の背景には、米国による中東支配の破綻とグローバリズムの崩壊という問題が浮かびあがる。
グローバリズムの破綻
米国はエジプトに、典型的なIMFプログラムを押しつけ、グローバリズムによる支配と略奪を強行してきた。その結果、特権層へ富が手中する一方、人民には、失業・賃下げ・非正規雇用化、教育・医療・福祉・住宅の喪失、抜け出すことのできない貧困と生活苦をもたらした。
これは、日本も含め全世界で吹き荒れる新自由主義攻撃そのものだ。
極限まで人間と社会を破壊していくことにたいして、人民の怒りが忍耐の限界をこえて爆発した。
中東支配の破綻
米国は、その覇権の土台として、中東の石油を独占的に支配することを至上命題としてきた。シオニズムと結託し、パレスチナ人民の解放の要求を踏みにじり、中東地域において、大中小の侵略戦争を継続的に強行してきた。
米政府が、イスラエルとエジプトに、年間の対外援助の5割をつぎ込んでいることに示されるように、それが中東支配の要をなしている。
エジプトは米帝国主義による中東支配の要ゆえに、矛盾の集中を受け、力で抑え込んできた人民の反乱がついに爆発したのだ。
米国は、もはや後戻りできない危機にたたき込まれた。
新たな戦争と革命
米国とイスラエルは、パレスチナ人民・アラブ人民との正面対決を、いよいよ余儀なくされる。
とりわけ、イスラエルは危機を極限的に深め、自滅的な侵略戦争に駆り立てられるだろう。そこに米国も引き込まれざるを得ない。
それは、アラブ・中東全体を巻き込む革命と激動を生み出す。
近代・現代を超えて
大局的に見たとき、エジプトの事態は、米国の覇権がいよいよ終焉にむかっているということを示している。それは覇権の交代などという次元ではないだろう。国家と資本による搾取・収奪・略奪を続けてきた近代と現代のシステムそのものが、破綻のときを迎えている。
エジプト・中東の反乱は、米帝国主義の覇権を終わらせるとともに、近現代のシステムを乗り越える革命的なプロセスの始まりなのだ。
4月6日運動と呼ばれるネットで結びついた若者たちが、ムバラク退陣の起動力になった。
08年4月6日、エジプトの工業都市マハラの繊維工場で、食料高騰に抗議し大幅賃上げをもとめ、2万5千人の労働者がストライキに立ち上がった。ところが警察が工場を占拠してストを封殺。これが労働者の怒りに油を注ぎ、翌日、マハラをはじめエジプトの主要都市で激しい暴動に発展した。
この労働者のたたかいを支援し首都カイロでデモを組織しようとして、若者2人が、交流サイト・フェイスブック上に「4月6日運動」を立ち上げた。以来、人民の怒りを結集する場となっていった。このグループが、今年1月25日、「拷問・貧困・汚職・失業にたいする革命の日」として行動を呼びかけた。
フェイスブックを使ったことが注目されている。フェイスブックとはインターネット上に構築された社会的ネットワーク(Social Networking Service=SNS)のひとつで、全世界に5億人のユーザーがいる世界最大のSNS。日本のユーザーは180万人。ちなみに日本で最大のSNSはmixi(ミクシィ)で、ユーザー数2000万人超。
エジプトは既存の労働組合が官製組織で、役員はすべて政府が任命。事実上、団結権はない。また非正規雇用や失業中の労働者が非常に多い。治安警察によって強権支配と管理がおこなわれている。こうした中で、フェイスブックが有効なツールとして使われた。
ムスリム同胞団は、一時期を除き、一貫して非合法下におかれ、激しく弾圧されてきた。
05年の国民議会選挙で、本格的に参加。非合法下のため無所属で立候補。「イスラムこそ解決」を掲げた。当選者は全体の約20%を占めた。昨年11月の選挙は、激しい妨害に抗議してボイコット。今、公正な選挙をすればムスリム同胞団が過半数を握るだろうといわれている。
ムスリム同胞団の中心部分は、「新体制づくりのため、軍に協力する」(同幹部)という。にもかかわらず、米政府は、ムスリム同胞団を警戒している。
注目すべきは、ムスリム同胞団のもとで活動する人びとが、IMFプログラムの下で進行する医療・福祉・教育の破壊、失業や生活苦に抗して、生活相談・生活支援、福祉活動、慈善活動、教育・医療サービスなどの運動を展開していることだ。労働運動・政治運動・社会運動が一体で進められ、それが新自由主義政策をうち破る力になっている。
4面
宿毛(すくも)湾に日米艦が同時入港 高知
岸壁に迫る怒りの抗議
1月26日、高知県宿毛湾に、米海軍強襲揚陸艦トーテュガ(満載排水量1万6568トン、佐世保基地所属)と海上自衛隊の強襲揚陸艦しもきた(基準排水量8900トン、呉基地所属)が、同時に入港した。
「宿毛湾非軍事ネットワーク」がよびかけた抗議闘争には、地元や県内の労働組合、反戦団体、革新政党など100人が集まった。多くのマスコミも注目し取材した。
1999年4月の岸壁供用開始以来、日米の2軍艦が同時に入港するのは初めて。こうした事実上の共同作戦演習ともいうべき事態は全国的にも例を見ない。
着岸岸壁を目の前にした宿毛新港緑地公園において寒風吹きすさぶ中、午前8時前から抗議集会がおこなわれた。
集会では、今回の入港が宿毛港の恒常的利用をねらうエスカレーションであり、天然の良好な漁場をこわし、潜水艦の基地化へのステップであるなど自衛隊と米軍の狙いが報告された。
地元の各反戦団体から決意が語られた。
今回、大阪から初めて参加した「大阪港の軍事使用の中止を求める実行委員会」を代表して関西合同労組の発言もあった。
米オバマ大統領と尾崎高知県知事への二通の抗議文を採択、デモに出た。
100mに迫るデモ
午前8時、宿毛湾港・池島4号岸壁に「しもきた」が着岸。少し遅れて「トーテュガ」が入港しようとしている。
デモは、「しもきた」がすでに着岸している岸壁をめざしておこなわれ、「トーテュガ」着岸にあわせて警察などが固めるゲート前では、抗議のシュプレヒコールを上げた。「宿毛湾をアメリカ海軍の基地にするな!」と書いた横断幕が掲げられ、乗員の姿が見える100メートル近くまで迫るデモは、地元の怒りをたたきつけるものとなった。
本格的な阻止闘争に
デモの後、市内の宿毛文教センターに移り、今後の宿毛湾軍事利用を阻止する交流会が開かれ、50人が集まった。地元漁民も参加し、「今後、本格的な阻止闘争をつくろう」と話し合った。
米軍が来たら街が活性化するという話がいかにデタラメであるか、出撃基地になる危険、事故、漁場の破壊、米軍による地元犯罪の発生などが語られた。今後、県にたいして、水質検査も強く求めていくことなどが確認された。
日米安保の実戦化と対決する新たな闘いが、高知からも始まった。全国の反基地、軍港化阻止の闘いを、沖縄と結び、日米安保破棄のうねりにしよう。(通信員 K)
宿毛湾港に接岸した海自・強襲揚陸艦しもきた (1月26日 高知県・宿毛市内) |
解説 宿毛湾に入港の狙い
宿毛湾は、豊後(ぶんご)水道に面した豊かな漁場であり、多くの漁協がある。
敗戦まで、日本帝国海軍連合艦隊が外洋に出撃する際の連隊編成を行う場所であった。「(宿毛湾は)米軍の岩国基地に近い。日本から見て西側のオペレーション、つまり東シナ海や南シナ海にいつでも展開できる喫水の深い天然の良港」(森本敏『国防の論点』)。
海上自衛隊の艦船を呉基地から宿毛湾に移すという話は、以前からとりざたされている。石破茂・元防衛大臣は、「呉のような内海に潜水艦の基地があるということが、軍事的に、いかに非合理か。外洋に出るまでの間、浮上して航行しなければならない。潜水艦は浮上しているあいだは『どうぞ沈めてください』といっているようなもの」と述べている。
宿毛港への米軍艦の寄港は、このかん急激に増えている。ミサイル駆逐艦ラッセル(06年5月)、同オカーン(08年5月)、ミサイル巡洋艦レイク・エリー(昨年2月)―いずれもイージス艦―に次いで、今回が4度目(09年に打診が一回ある)。海自艦船の入港は23隻目。
トーテュガには水兵ら約300人と海兵隊約40人が乗り、LCAC(ホバークラフト型強襲揚陸艇)4艇を積載。しもきたは約120人が乗り、LCAC2艇を装備している。
両艦とも敵前上陸を狙いとする強襲揚陸艦であり、「災害時の緊急物資輸送の合同訓練を終えて寄港した」というのは大うそである。両艦は、ともに大分県佐伯港から出発し、LCACやヘリコプターを使った訓練を繰り返しながら、宿毛に入ってきたのである。
環境汚染問題もある。米艦は、船底塗料に猛毒の有機スズを使用。船底に貝や海草がつかないようにという理由からだ。有機スズは多くの国では使用禁止となっているが、米国は禁止条約に加入する条件として、艦船は枠外とした。東南アジアの未加盟国の造船所で今も米艦船に塗り続けているといわれる。有機スズは海水に溶け出るため、魚への汚染が問題となっている。
また、大量の武器、弾薬、水などを積み下ろしするために、バラスト水(※)で調整するが、米艦は佐世保や横須賀で入れたバラスト水を宿毛湾で出している。佐世保、横須賀の埠頭は、海水が高濃度ダイオキシンで汚染され問題となっているその水だ。住民が調査を要求しても、県は調査しようとしない。
※バラスト水 船底の重しの代わりにする水。出港地で港の海水などをバラストタンクに積み込む。
三里塚・現地闘争本部裁判(控訴審)で結審強行
裁判長が逃亡 東京高裁
公判を前に、集会で発言する北原事務局長(2月4日 東京都内) |
成田空港会社が第3誘導路建設を本格化させようとしている緊迫した情勢のなかで、4日、三里塚現地闘争と現地闘争本部裁判控訴審闘争(東京)が同時に開催された。
現闘本部裁判控訴審は今回で3回目の公判だが、「重要証人の採用」と「実地検証」をめぐって、井上裁判長とのギリギリとした攻防が続いている。
反対同盟と支援は、公判前に東京高裁へのデモを行おこなった。デモとほぼ同数の100人を越える私服警官が威圧を加えるなかでデモ隊は、証人採用と検証を求め、シュプレヒコールを高裁・霞が関一帯に鳴り響かせた。
裁判長を忌避
公判では、北原反対同盟事務局長、弁護団から、証人と検証の必要性が訴えられた。とりわけ1審において、反証の機会そのものを奪い強行された判決の不当性は明らかであり、石橋証人(旧地主関係)の採用を求めた。ところが同盟、弁護団の弁論が終わるや否や、井上裁判長は弁論を終結、すべてを「却下」。ただちに弁護団は「裁判官忌避」を申し立てたが、裁判官は脱兎のごとく法廷から逃げ去った。次回期日指定も閉廷宣言もないという、「これが裁判か」「裁判所のやることか」と思わせる暴挙である。
公判終了後の集会で北原事務局長は、「四十数年の三里塚闘争の中で、すべての裁判はこうだ(今日と同じだ)」と怒りを噛み殺しながら、「決着は、現地実力闘争でつける」と宣言。全参加者が、結審攻撃を粉砕し、現闘本部を実力で守りぬくことを誓い合った。
切り回し道路 阻止
同日、三里塚現地では、市東孝雄さん、萩原進さん、鈴木謙太郎さんはじめ反対同盟と支援、60人が集まり、第3誘導路建設のための切り回し道路への切替工事を完全にストップさせた。切り回し道路の1月開通策動は最終的に粉砕された。
第3誘導路建設を阻止し、市東さんの生活と農地を守り抜こう。
3・9三里塚・沖縄を結ぶ集い(大阪)に結集し、3・27三里塚全国集会に総決起しよう。
5面
東京都の「日の丸・君が代」強制
通達と処分「合憲・合法」
東京高裁 逆転反動判決
1月28日、「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟の控訴審判決があった。東京高裁は、原判決(原告側勝訴)を取り消し、1審原告らの請求をいずれも認めない判決をくだした。
判決は、国歌斉唱義務不存在確認等の請求および処分差止の請求については、訴えの利益がないとして請求を却下するとともに、10・23通達及び職務命令を合憲・合法とし、損害賠償請求についても棄却した。
裁判所前で怒りの集会
午後1時15分からの判決に先立って、東京高裁前には原告や支援者など数百人が集まった。傍聴席の抽選には209人が並んだが、法廷に入ることができたのはその4分の1程度。法廷に入りきれなかった大多数の人々は高裁前に陣取り、判決を待った。
1時25分、弁護士が飛び出してきた。手に持った幕には「不当判決」の4文字が。
怒りの声があがる。その場で、不当判決弾劾の集会をおこない、最後には「不当判決を許さない」「上告審でたたかうぞ」とシュプレヒコールがとどろいた。
学校の中はファシズム
その後、場所を社文ホールに移して、報告集会がおこなわれた。記者会見を終えた原告・弁護団も途中から合流した。
集会では、原告・弁護団から、不当判決を許さない怒りの発言が次々と続き、上告してたたかう決意が語られた。
予防訴訟をすすめる会・共同代表の永井さんは、「裁判官は現場の実態をどこまでふまえているのか。今、学校の中はファシズムの状態といっても過言ではない。このファシズムが、やがて学校の門を出て社会全体に拡がっていく、こういう状況を危惧する。こういう状況をゆるさないためにも私たちは最後まで訴え続けていく」と表明。
控訴審で証言に立った市川須美子さん(日本教育法学会会長、獨協大教授)は、「判決が、『通達そのものをめぐって争え』などと今頃になって言い出すのはおかしい。後出しジャンケンだ。訴訟の入り口にも入らせないやり方だ。最高裁で叩けるし、争える。ひっくりかえす」と発言した。
2時間半にわたった集会の最後に、原告・弁護団、予防訴訟をすすめる会の声明が読み上げられ「思想、良心の自由を護り、学校に自由の風を取り戻すため」上告してたたかうことが確認された。
10・23通達を撤回せよ
03年10・23通達以降、被処分者数は430人にのぼる。この数字は、都教委による教育破壊が恐るべき勢いですすんでいると同時に、処分を恐れず次々と不起立・不伴奏で意思表示する教育労働者が続いていることも示している。
石原都知事・都教委による「日の丸・君が代」強制を許さず、10・23通達粉砕へたたかいぬこう。
東京高裁に向かって怒りのシュプレヒコール(1月28日) |
解説 「日の丸・君が代」強制反対 予防訴訟とは
東京都教委は、卒業式、入学式等の学校行事において、教職員に対し「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」こと、「ピアノ伴奏をする」ことを命じ、それに従わない場合は処分する、という通達を03年10月23日付で出した。
この通達以降、都立学校の教職員らが原告となり、東京都と都教委を被告とし、《国歌斉唱義務がないこと、ピアノ伴奏義務のないこと等の確認と、損害賠償》を求めて提訴した。原告数は401人。
実際に処分されてからでは精神的・物質的な被害は取り戻せないため、予防的に「斉唱や伴奏の義務がない」ことの確認を求めるという裁判。そのため、予防訴訟と呼ぶ。
第1審判決(06年9月21日、東京地裁)
1審は原告の訴えを全面的に認めた。判決は、10・23通達を違法とし、@原告らには、卒業式等における国歌斉唱の際に起立・斉唱・ピアノ伴奏の義務はない、A起立・斉唱・ピアノ伴奏をしないことを理由にいかなる処分もしてはならない、B10・23通達によって原告らが被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる、という内容。
また、同通達が「日の丸・君が代」を教職員に対して一律に職務命令や懲戒処分等の手段をもって強制するものであり、憲法19条の保障する思想・良心の自由を侵害すると明確に判示した。
さらに、同通達とその後の校長らに対する指導名目の締め付けが、教育基本法10条1項で禁止される「不当な支配」にあたるとした。
都教委による「不当な支配」の下で、裁量の余地なく出された校長の職務命令は、教職員の思想・良心の自由を侵害する「重大かつ明白な瑕疵」があり、違法なものであると認めた。
敗訴した都と都教委が、控訴していた。
沖縄・高江に連帯 500人が熱唱
へんぱくライブ(11日 大阪)
大阪・新世界に轟く、「高江にヘリパッドはいらない」の声。沖縄高江、長野、東京そして地元大阪、関西からミュージュシャンの素晴らしい演奏がくりひろげられた。楽しく戦おう、高江に行こうの訴えが。感動させてくれた企画、実行された主催者に感謝(参加者Y)
関西合同労組 「暴処法」弾圧裁判
有罪判決を弾劾する
2日、大阪地裁刑事7部(杉田宗久裁判長)は、関西合同労組組合員の沼田さんに対して、デッチ上げ弾圧=「暴処法」等裁判で懲役1年4カ月、未決算入80日、執行猶予3年の不当判決を出した。
権力による誘導
大阪府警公安三課が、被害者とされるTを誘導し、供述調書をデッチ上げ、それをもとに起訴状が組み立てられ、Tの公判証言がおこなわれた。このことは、弁護側の反対尋問や弁護側証人による法廷証言で明らかに。
ところが判決で、杉田裁判長は、何ら説得力ある論拠を示せぬまま、一方的に「電話で沼田さんから脅された」なるT証言を信用できるとした。しかし、全面的に信用できるとは言い切れず、「核心部分は信用できる」と強弁した。
組織破壊ねらう
他方で、電話で会話はしたものの、Tを脅迫した事実など一切ないという沼田さんの主張は根拠もなく無視し、「暴処法」有罪判決を強行した。
これは、労働組合の団結権に権力が介入して、労働組合の活動を妨害し、組織破壊を狙う政治弾圧だ。こんにち強まる新自由主義攻撃でもある。沼田さんは、ただちに控訴してたたかうことを表明した。このデッチ上げ有罪判決を絶対に粉砕しよう。
6面
「私たちに大義がある 絶対に負けない」
《日航不当解雇撤回 大阪支援共闘》が発足
1月31日、大阪市内で「日本航空の不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議」の結成総会がひらかれ、300人をこえる人で会場は満杯となった。
昨年12月27日「日本航空の不当解雇撤回をめざす国民支援共闘会議(JAL解雇撤回国民共闘)」結成、31日165名(パイロット81名、客室乗務員84名)の大量不当解雇強行、1月19日東京地裁への146名提訴をうけて、支援共闘会議が、全国に先駆け大阪で結成された。旧来の労組共闘の枠をこえる労働組合、市民が参加した。
当該14人が登壇。発言は内田妙子CCU委員長 (1月31日 大阪市内) |
正義の旗
開会あいさつに続き、JAL解雇撤回国民共闘を代表して近村一也航空連議長が解雇経過、支援共闘結成の経過、今後の取り組みについて報告した。
航空連JGS大阪労組の緒方書記長(伊丹空港地上勤務者)は、JALグループ(地上勤務者など)への整理解雇攻撃の動きを報告。
続いて、大阪支援共闘会議結成にいたる経過の報告、代表・副代表の選出、事務局体制の確認がおこなわれ、大阪支援共闘会議代表に選ばれた萬井隆令(よろい たかよし)龍谷大学教授は、労働法学者として、整理解雇要件が破壊されることへの危機感を示し、「国家(の建前)は不法を為さずだ。正義の旗は私たちが握っている。これは、国鉄分割民営化に続く第二の国家的不当労働行為との闘い。支援の輪を広げよう」と呼びかけた。
6人の副代表からは3人が、それぞれ発言した。
原告団から訴え
メッセージ、支援あいさつに続き、原告団14人が壇上に並んだ。代表して、日本航空乗員組合(JFU)委員長、日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)委員長、原告団事務局長の3人が発言。
不当解雇として強調されたのは、@経営破たんの原因が不問に付されている、A人員削減の目標は達成している、B経営は改善して黒字、Cなぜこの事実をマスコミは報道しないのか、D人選基準の不当性(詳しくは後述)である。
とりわけ、CCU委員長の内田妙子さんは「希望退職で泣く泣く職場を去った仲間の思いも受けとめ、空の安心・安全のために一日も早く職場に戻ります」、「私たちには大義があります。絶対に負けません。なぜなら勝つまでやめないから」と力強く表明した。
原告団事務局長は、「上司から、あなたにはもう社内に活躍できる場所はない、社外に活躍の場を求めてくださいと言われた。ですからこうして今『社外で』活躍しております」とユーモアをまじえながらも不屈の意思表明があった。
支援共闘に入ろう
国鉄の分割民営化に続く、第2の国家的不当労働行為事件である日航大量不当解雇。支援の輪を「整理解雇反対の一点」でナショナルセンター、労組の枠をこえて「幅広く」つくりあげようと確認された。
この解雇撤回闘争は、恐慌下、すべての働くものの雇用、空の平和と安全をめぐる歴史的闘争となっていくだろう。たたかいは、全国にひろがっている。福岡でも支援共
《行動案内》 |
不当解雇撤回・本社前行動 不当解雇裁判・パイロット 第1回 不当解雇裁判・客室乗務員 第1回 |
支援共闘会議に参加し、闘いをひろげよう。国民支援共闘会議が呼びかける「日航の不当解雇撤回を求める要請」署名(菅首相とKK日本航空インターナショナルあて。航空連のサイトからダウンロードできる)を全国であつめよう。
解説 解雇の歯止めが失われる
「一産業の一会社の一部の労働者、労働組合の問題ではない・・・〈公的私的融資再建会社は憲法と労働法が適用されない聖域である〉という前例がつくられようとしているからである。すべての労働者の問題である」(『労働法律旬報』1734号、深谷信夫)
国家的不当労働行為
日航は経営破たんした更生会社として、企業再生支援機構(政府50%出費)という事実上の国家機関によって指導・管理・監督されている。
この指揮のもと、大量で違法な整理解雇が強行された。企業再生支援機構は、日航両労組がスト権の確立に動いたとき「ストライキを準備すれば、3千500億円の出資はない」(11月16日)と支配介入をおこなっている。
希望退職の募集過程における個別面談で「あなたに働く職場はない」と違法な退職強要をおこない、退職に応じない組合員などに「乗務はずし」(10月から)が行なわれ、1700人余りが職場を去った。また「希望退職者」目標数達成後も「稼動ベース」なるものを突如もちだして、1人の人間を恣意的に0・5人とか、0人と計算し、組合活動家排除にでてきている。 また整理解雇対象者に年齢制限(機長55才、副操縦士48才、客室乗務員53才以上)をしているが、これは組合つぶしが狙いである。
航空連では前議長、現議長が、CCUでは委員長、副委員長を含む6名の執行委員が解雇された。露骨な不当労働行為の山である。
整理解雇4要件の転覆
整理解雇4要件とは、@人員整理の必要性、A解雇回避努力義務の履行、B被解雇者選定の合理性、C手続の妥当性、のことで、4要件のうち、いずれが欠けても解雇権の濫用となり、無効である。
今回の日航大量不当解雇は、戦後、長らく企業解雇に歯止めをかけてきた〈整理解雇の要件〉をなきものにしようという一大攻撃である。
これは特に、95年「新時代の日本的経営」路線以降、財界・企業の念願となってきている。東京地裁労働部などが近年「4要件」ではない「4要素」と解釈して、1つでも「満たして」いれば解雇正当としようとしてきた。
今回の大量不当解雇は4要件のうち、どのひとつも備えていないのに「整理解雇」といいはるもので、4要件論を根底から覆そうといういうもの。断じて許してはならない。
具体的には、
@必要性・合理性は全くない
希望退職は1733名で、更生計画にいう人員削減目標1500名を233名も上回っている。さらに再建計画(250億円)を大幅に上回る1460億円(2010年4月〜11月)の営業利益を上げているのである。
稲盛日航会長は2月8日、日本記者クラブの会見で「業績は日を追うごとによくなっている。160人を残すことが経営上不可能かといえば、そうではない」と言い、整理解雇の必要性・合理性はないことを事実上認めている。
A回避努力をつくしていない
組合のワークシェア提案を、会社は拒否。
B人選公平性を欠く
経験が重視される職場で、年齢基準は安全性を無視した人選。
また休職者や病気欠勤者を解雇対象に入れている非人道的なものである。労災中の労働者を解雇するのは違法だ。
C誠実協議をおこなっていない
団交は行なわれたものの、組合側の提案を無視し、結論を一方的に押し付けている。 「希望退職者面談→勤務はずし」など違法な退職強要が大量に行なわれた。
・ ・ ・
両労組(JFU、CCU)は、今回の「整理解雇」基準について、会社が組合員にたいする説明を怠り、労働者の団体交渉権を保護するILO条約に違反したと指摘し、解雇撤回を求め、「日本政府への指導・勧告を求める申立書」を2月2日付で国際労働機関(ILO)に提出した。
自由法曹団、労働弁護団、民主法律協会から決議や抗議声明も出ている。
安全無視と腐敗問題
日航問題とは、歴代の政権によって進められた、(ア)需要を無視した空港建設とジャンボ113機など米航空機購入、(イ)ドル先物、リニア投資などの放漫経営、(ウ)規制緩和による新規参入航空会社との競合で不採算路線の維持困難、(エ)労働組合つぶしなどである。
過去の悲惨な事故、最悪の御巣鷹山事故を経験し、空の安全を守ってきたベテランパイロットと乗務員の大量解雇は、安全運航を放棄し「格安航空」に変貌する暴挙である。大量解雇により「安全運航の確保」ができないとの危惧が、現場からだされている。
日航本体だけでなく、日航グループへのリストラも始まっている。3月末ともいわれ、すでに退職勧奨が全国で始まっている。
グループ下請け会社として、もともと劣悪な労働条件を強いられている地上勤務者(飛行場内の整備、荷物・コンテナ扱いなど)にたいする、安全を無視した人員削減が、日航と同じような手法でおこなわれている。(労働者通信員 M)
7面
都市でも生活破壊が拡大
本の紹介 『TPP反対の大義』(農文協ブックレット)
本書はTPP反対のため緊急出版された。執筆陣は政治・経済学者、哲学者、農学者、農家、生協、漁協、自治体関係者など26人。「反対の大義」というタイトルは、「『人の道』というほどの意味」(まえがき)という。
農業問題を中心に、アメリカによる経済と軍事を含む対日・対アジア戦略、グローバリゼーション、菅内閣批判など総合的な視点からTPP問題を明らかにしている。
引用で紹介する。
小国のFTAから帝国のFTAに豹変
TPP(環太平洋経済連携協定)とは、FTA(自由貿易協定)の一種。FTAは2国間・多国間で関税を撤廃する協定であり、全貿易額の90%以上の関税を撤廃。原則は即時撤廃だが、実際は10年以上の経過期間の設定、協定除外品目の設定、再協議品目の設定などの例外措置がとられている。もともとWTO(世界貿易機関、1995年〜)があり、150カ国以上を結集しているが、世界中の国々が参加しているため交渉が難しい。そこでアメリカなどが、各個撃破的に追求しているのがFTAである。
TPPはシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が2006年に発効させた。4カ国合わせて人口約2千6百万人の小国連携。そこへ米国が2008年に関与を表明。「軒先を借りて母屋を乗っ取ろう」としている。2010年からは、当初の4カ国に米、豪、ペルー、ベトナムが加わり8カ国で交渉が始まり、同年10月にはマレーシアが交渉参加し9カ国になった。
日本は、昨秋の横浜APECで菅首相が、交渉参加に向け関係国との協議に着手することを正式に表明した。日本が加われば、参加10カ国GDP総額の9割を日米が占めることになる。TPPが「小国のFTAから、帝国のFTAに豹変」といわれる所以である。
弱肉強食、「自己責任」社会を促進
「国益vs.農業」の対立図式は的外れな議論である、と農業研究者はいう。関税撤廃によって日本農業は大きな打撃をうけることになるが、農業だけではない。繊維製品、皮革・皮革製品、履物、銅板など重要品目は工業分野にも多くあり、さらに金融、医療、労働力移動などに激甚な影響を与える。海外展開をする日本企業は2000社に1社程度であり、例外品目なしの自由化となれば、他の大多数(多くは中小零細)は輸入品とのむちゃくちゃな競争にさらされる。
労働者にとっては、自由貿易圏内の労賃が下位に平準化するため、経団連会長が歓迎しているように、国内賃金にも下方圧力が加わる。失業と生活破壊が農村、都市を問わず労働者・市民、農民に拡大する。「力の弱い者は、強い者の脅しに怯えながら、『自己責任』で生きろ」という米国のような社会が待っているだろう。
他の国々もそれぞれの国内事情で農業を含む重要品目の保護をおこなっている。とくにアメリカの勝手な振る舞いは際立つ。コメ、小麦、トウモロコシ、大豆、綿花などは〈生産費と市場価格の差を補てんする「不足払い」制度〉があり、価格保障をしている。また、対カナダ・メキシコには自国乳製品が強いのでNAFTA(北米自由貿易協定)では関税をゼロ化、豪にたいしては弱いので米豪FTAでは主要乳製品を「例外扱い」としている。
日本の農業所得に占める財政負担割合は15・6%、欧米諸国は90%を超える。農業産出額に対する農業予算割合も(05年度)米65%、独62%、仏44%、英42%に対し、日本はわずか27%。財政支援なしに先進国農業は成り立たないのが世界の現実である。TPP参加で日本の食料自給率は14%に下落すると試算されているが、欧米先進国の食料自給率、輸出力の高さは手厚い政府支援の証である。日本の低さは過保護だからではなく、保護水準の低さにある。「やるべきことをやり、やらなくていいことをしなければ、日本農業は立派に立ち直れる」という。
人は食べて生きている
沖縄のさとうきびについて、興味深い重要な報告がされている。農水省が、TPP参加による農業への打撃を数値発表しているが、さとうきび(以下、きび)は100%減=壊滅である。きびが壊滅すると、農業生産額が減少するだけではすまない。それ以外の作物の維持が困難になるという。
それは、きびが「地力維持作物」であることによる。やせた土壌にきびを植え、3年く
写真は、筆者の実家の田畑。都市空襲から逃れ、帰農した父が守ってきた田畑も、いまは荒れ放題。農業を守ることの大切さを、この機会に考えたい。 |
「笑止千万、農業輸出産業論と企業参入論」「イモを植えりゃ、国破れてもわが身あり」と、農民作家・山下惣一氏が、最後に喝破している。
〔農文協ブックレット/142ページ/800円+税〕(み)
TPPでは生きられない! 2・26 座談会
「TPPに反対する人々の運動」から、「TPPでは生きられない! 座談会」(2月26日 東京)の呼びかけと要項が発せられたので掲載します。
【呼びかけ】
TPP(環太平洋経済連携協定)というのをご存知ですか。
まだ正体のよくわからないこの妖怪がわたしたちに襲いかかろうとしています。
もともとは2006年に発効したニュージーランド、チリなど4カ国の小さなFTA(自由貿易協定)だったものが、新たにアメリカ、オーストラリアなど数カ国が参加を表明したため「バスに乗り遅れるな」とばかり菅首相が飛びつき、財界や大手マスコミが政府の尻を叩き、その賛否を巡っていまや大論争となっています。
それぞれの家庭にそれぞれの事情や都合があるように国や地域にとってもそれは同じです。相手の立場に配慮して協議をすすめるのが貿易交渉ですが、TPPは例外なき自由化を強引に進めようとするものです。
菅首相はこれに参加することを、明治維新、敗戦に次ぐ「第三の開国」と述べました。
これが実行されたら、コメをはじめとして畑作物、乳製品から沖縄のサトウキビまでほとんどが輸入物に置き換わり、食料自給率は14%まで低下すると農水省は試算しています。これは地域の崩壊を意味し、人が暮らし続けることができるバランスのとれた社会としての「日本」の終わりを意味します。
マスコミの一部は「牛丼が200円になる」とはしゃいでいますが、労働力も自由化され、際限のない賃金水準まで下がりつづけ、安い牛丼すら食えなくなることを覚悟しておくべきでしょう。ワーキングプア、非正規社員はふえつづけ、農村からの離村者なども含め、都市に失業者があふれることにもなりかねません。
いったい、誰のための自由化でしょうか。私たち農民はもとより、多くの人たちにとって、なんのメリットもありません。どうか、みなさん。この愚挙、この暴挙を阻止するために、私たちと共に立ち上がってください。
2月26日に全国の百姓が東京に集まり声を挙げます。多くのみなさんの参加を呼びかけます。
共同代表:山下惣一 菅野芳秀 天明伸浩
8面
「国が間違っていました
幸徳秋水さん あなたは無罪です」
大逆事件 刑死100周年
幸徳秋水 墓前祭
天皇暗殺を企てたとされる大逆事件(1910年)の首謀者として、幸徳秋水らが死刑を執行されてから100年目の1月24日、幸徳秋水の故郷・四万十市中村で墓前祭が開かれた。
裁判所・検察庁の裏にある秋水の墓に、北海道・東京・和歌山県新宮・大阪・九州など全国各地から250人が集まった。
墓前祭は「幸徳秋水を顕彰する会」北沢保会長の司会で始まり、今回の墓前祭と一連の行事が「幸徳秋水刑死100周年記念事業実行委員会」の主催で開かれていることが報告された。
まず、会を代表して田中全・四万十市長が追悼のことばを述べた。つづいて、実行委員会参加の各団体、遺族・近親者、和歌山県新宮からの参加者、四万十市出身で「大逆事件の真実を明らかにする会」事務局長の山泉進・明治大副学長、政党などの献花が行なわれた。
つづいて、フォーク歌手・笠木透さんが、秋水をしのぶ「ポスター」という曲を披露。曲は秋水の主張を歌にしたもので、「国が間違っていました。幸徳秋水さん、あなたは無罪です」「あなたは天皇制に反対した 国の主人公は 人民なんだからと 共和国を夢みていた」「無実なのに処刑 私たちは発言する あなたは無罪だったと」と歌い、途中からは手拍子がおこり、最後は会場が大きな拍手に包まれた。
墓前際終了後、四万十市役所で交流会が開かれた。講演は、秋水の兄駒太郎のひ孫である幸徳正夫さん(東京都葛飾区)。「幸徳という名を維持するのは大変だったのでは」という質問に対しては、「この町(の人びと)は暖かく、具体的な迫害はなかった」と語った。
前日には「前夜祭」も行われ、多数の市民が参加した。(高知 K・M)
秋水を偲んで、墓前で曲を披露 (1月24日 高知県四万十市内) |
解説 大逆事件とは
明治天皇の暗殺を企てたとして、幸徳秋水はじめ多数の社会主義者・無政府主義者が検挙・投獄され、12人が処刑された事件。日本資本主義が帝国主義段階に推転していく過程で、革命運動・社会運動を叩きつぶす目的でひきおこした一大政治弾圧。
大逆罪とは、大日本帝国憲法のもとでの旧刑法73条にあり、天皇や皇太子などに危害を加えた(未遂を含む)場合、死刑に処すというもの。初適用されたのが、この事件。
当時の支配階級は、「台湾の植民地化」「韓国併合=植民地化」に対してまきおこる、台湾人民・朝鮮人民の民族解放闘争へ徹底した武力弾圧を加え、「皇民化政策」をおしすすめていた。国内にあっては、反戦運動(1894年・日清戦争、1904年・日露戦争)、労働運動の高まりを押さえ込む弾圧を狙っていた。
1910年5月、長野県で社会主義者4人が「爆発物取締罰則」違反で逮捕された。政府は、この事件を利用して「天皇暗殺事件」なるものをねつ造し、全国で26人の社会主義者・無政府主義者を逮捕・起訴した。幸徳秋水は6月1日に逮捕された。
裁判は、いきなり大審院(現在の最高裁)でおこなわれ、しかも非公開。翌1911年1月18日に24人に死刑判決、2人に有期刑がくだされた。
死刑判決24人のうち12人は、翌日、無期懲役に特赦減刑となったが、ほかの12人は判決からわずか6日後の24日(幸徳秋水ら11人)と25日(管野スガ)に処刑された。
このときの弾圧で押収した住所録などから、さらに全国で数百人におよぶ社会主義者が逮捕・投獄された。
精神疾患休職と沖縄
昨年12月25日の朝日新聞に、「精神疾患の教員休職」という記事がのりました。文部科学省の調査結果を報道した記事です。
それによると、精神疾患で09年度中に休職した教員は全国で5458人にのぼり、過去最高を更新したとのこと。この数字は93年から増加に転じ、以降17年連続で増え続けている。
文部科学省は「長時間労働、複雑化する生徒指導など、様々な要因が重なっている」と分析しているらしいが、肉体的にも精神的にも過酷な教育労働を強いられている教員の現状が、そのまま数字に表れています。
都道府県別の精神疾患の教員休職率を見ると大阪府が2位、東京都が3位、広島県が4位であり、教育委員会による締め付けがひどいところが上位にあがっているのは、それを証明しているともいえるでしょう。
なぜ沖縄がトップ
ところが、沖縄県がトップなのはなぜかと私は疑問に思いました。というのは、全国的に教育委員会による締め付けが強まっているのは事実としても、沖縄が大阪・東京・広島よりひどいとは思えないからです。
なにか別の要因があるのではないか。沖縄の失業率の高さ、低賃金、学力テストの低さだけでは説明がつかないように思います。
沖縄には米軍基地があり、日常的に戦争と隣り合わせにおかれているにもかかわらず、平和が最大に希求され、そこで教育が役割を果たさなければなりません。このプレッシャーが大きいのではないでしょうか。
教科書問題がおこったときも、語りたくなかったのを断腸の思いで語りだした体験者がおられました。
本来、教育こそが平和な社会の子どもたちを育てることなのに、そうならない状況が厳しくあり、そのなかにおかれていることにたいするプレシャーは想像にあまりあります。
本土の人間には理解しがたいところがあるのではないでしょうか。在日米軍基地の75パーセントがある沖縄、アメリカのベトナム戦争からイラク・アフガニスタン戦争まで、米軍の出撃基地になっていることなどが、誇り高い沖縄の教師には圧力になっているということではないでしょうか。
本土の私たちのたたかいの立ち遅れが、こういう状況を沖縄の人びとに強制していると深く考え気づくのです。(投稿 元教員K)