未来・第73号


            未来第73号目次(2011年1月18日発行)

 1面  勝利の道しめす三里塚 東西で旗開き

     団結街道閉鎖取り消し仮処分 審尋うち切り弾劾
     天神峰現闘本部裁判 2・4結審ゆるすな

     ヘリパッド工事 再び強行 高江

 2面  ここがおかしい 橋下独裁 読者討論

 3面  19年におよぶ組合つぶしとの闘い
     佐藤新理事長宅を100人で包囲 南労会闘争元旦デモ

     アメリカの教育は今
     勤務評価がインターネットに

 4〜5面
     新自由主義がもたらした生活破壊と貧困
     『労働経済白書』2010年版と労働運動の課題

 6面  三里塚の真価を発揮する
     萩原進さん(三里塚芝山連合空
     港反対同盟事務局次長)の発言要旨

     体張って闘うのは圧倒的な正義 2011年闘争宣言
     三里塚芝山連合空港反対同盟

     冬期カンパをお願いします

       

勝利の道しめす三里塚 東西で旗開き

9日 三里塚反対同盟 団結旗開き(成田市内)

10日 関西実行委 2011年旗開き(大阪市内)

9日成田市内で、三里塚芝山連合空港反対同盟の団結旗開きが開催され、「2011年闘争宣言」が発せられた。
「反対同盟は、現闘本部撤去仮執行を粉砕し、団結街道封鎖と闘う市東孝雄さんの実力決起で、この攻撃をあざやかに打ち破った。・・・絶対反対でたたかうことはたやすいことではないが、この道の正しさを反対同盟は確信する」。〔6面に、同盟事務局次長・萩原進さんの発言要旨と、2011年闘争宣言を掲載〕
翌10日には、三里塚決戦勝利関西実行委員会の旗開き。会場の大阪・田中機械ホールに60余人が集い、三里塚現地からは反対同盟の鈴木謙太郎さんが駆けつけた。

大きな広がりを

永井満・関実代表世話人があいさつ。
「昨日、反対同盟の旗開きに参加した。きびしいたたかいの最中にも、反対同盟は余裕すらもっていた。
団結街道封鎖攻撃にたいし、市東さんは断固抗議し、不当逮捕されたが、23日間を完全黙秘・非転向でがんばった。同じテーブルで歓談できた。
関実結成から34年目。反対同盟、三里塚と一体にたたかってきた。三里塚のたたかいが、不屈に続けられている。本当に、それに応えていかねばと、毎年思いを新たにしている。昨年は、沖縄と三里塚のたたかいの結合が始まった。4・25沖縄県民大会に合流することができ、うれしかった。大きな広がりを期待している。今年もがんばりましょう」。

三里塚から鈴木さん

つづいて反対同盟・鈴木謙太郎さん。
「昨年は、現地闘争本部撤去の仮執行攻撃を粉砕した。団結街道封鎖にも、市東さんが実力で本気を見せた。今年は、まず2月4日、現闘本部裁判の早期結審攻撃をうち破る。迂回道路を着工しようとしている。これにも、実力でたたかっていく。よろしくお願いします」とあいさつ。会場から大きな拍手をうけた。
司会の安藤眞一・事務局次長が、反対同盟の「2011年闘争宣言」を紹介。乾杯の音頭は、恒例の山本善偉・世話人。「去年はたたかいの連続だったが、われわれは負けていない。関西も一所懸命。年末を団結野菜市で締めくくった。昨年10月19日に90歳になった。その直後に頭を打ち、硬膜下血腫になったが、手術することもなく自分の体力で乗り切ることができ、医師も驚いていた。90歳になり、新たな気持ちでがんばる。今年も、理不尽な攻撃がかけられようとしている。団結してがんばろう」と、元気いっぱいに「乾杯!」を発声した。

関空反対し橋下と対決

部落解放同盟全国連合会は「4月寝屋川市議選と9月東大阪市議選に勝利する。狭山再審闘争は、緊迫した情勢をむかえている。全国連は2月にも要請行動に立つ」と決意を表明した。
阪神大震災から16周年をむかえる被災地から、「農地と農民を守り、改憲と戦争に反対する反対同盟。私たち被災地も同じ。全国のみなさんとともに生きる権利、働く権利を回復する。戦争に反対する」。
「大阪の海と空を戦争に使わせない会」は、「関西空港に反対し、国土交通省や橋下府知事の動きを批判し、核艦船の大阪入港に反対する人たちとも、ともにたたかっていく」とアピールが続いた。
この後、参加した仲間が歌や踊りを披露。
最後に、「大地を打てば地底より・・・」と反対同盟歌を大合唱。インターナショナルと「団結がんばろう」で締めくくった。

団結街道閉鎖取り消し仮処分 審尋うち切り弾劾
天神峰現闘本部裁判 2・4結審ゆるすな

反対同盟が申し立てた「団結街道閉鎖取り消し仮処分」について、千葉地裁は、1月13日に予定されていた審尋(※)を一方的に取り消し、1月31日に終了させると、昨年末に通告してきた。
また、2月4日の天神峰現闘本部裁判・控訴審での結審、仮執行(現闘本部建物の破壊)の策動が強まっている。全力でたたかおう。

※審尋は、民事手続において、当事者あるいは利害関係人が、意見や主張を裁判所に提出すること。

ヘリパッド工事 再び強行 高江

11日、沖縄・高江で、年末に続いて、米軍ヘリパッド建設工事が強行された。作業員6人が、測量や土のう設置をおこなった。
米軍ヘリによる座り込みテント破壊事件(12月23日)の真相究明が何ひとつ進んでいない。この件で、沖縄防衛局長が13日に現場視察をおこなうのを前にして、その沖縄防衛局が作業を強行した。
問答無用のやり方だ。絶対に許せない。

防衛局長の現場視察

13日、沖縄防衛局長の現場視察がおこなわれた。防衛局側は8人。たいする住民と支援は約200人。
米軍ヘリによるテント破壊事件で、現場にいた山城さん(沖縄平和運動センター事務局長)が、状況を説明。
これを受けて、局長は、@「米軍の回答と食い違いがある」としながら、自身の実感についてはこたえず。A沖縄防衛局の設置したフェンスが県道上にあり通行を妨害している問題について、「調査中」と逃げた。B裁判を取り下げる意志はないかの問いには、「北部演習場の返還のためやむを得ない」と開き直った。

米大使館に100人

10日、アメリカ大使館への抗議と申し入れが、《沖縄を踏みにじるな!緊急アクション実行委員会》の呼びかけでおこなわれた。100人の参加者と130通の申し入れ書。ハワイや韓国、イギリスなどからも申し入れ書が届いた。
集合場所で集会を開催、高江現地とも電話でつながり、報告がおこなわれた。
警察が大使館への申し入れを制限していることに、参加者が1時間半にわたって抗議した。
16日にも、アメリカ大使館への抗議行動がおこなわれた。

写真上:機動隊の包囲はねのけ、高江の現状を訴える女性
写真下:米大使館への申し入れを制限する警察に抗議
(いずれも10日 東京都内)

2面

ここがおかしい橋下独裁 読者討論

大阪府知事・橋下の一挙手一投足をマスコミがこぞってとりあげる。その効果は軽視できない。労働者・市民は、このような動きをどう考えているのか。ある地域の『未来』読者との討論をまとめた。(K)

首長が選挙主導 独裁ねらう ―橋下、河村―

Mさん 橋下や名古屋市長の河村らは、自分の方針をごり押し。議会が意にそわなければ、首長が選挙を主導し、議会掌握をねらう。「首長が選挙で選ばれたのだから、二重に議員を選び議会で議論するのは無駄」と独裁をねらっている。
代議制、議会制を根本からどう考えるかということと、では議会はいらないのか、という問題がある。あらためて考えなければ。

Fさん 自治体の大小、財政状況により一概には言えないが、やはり議員の歳費は「労働者の平均賃金を上回らない」「さまざまな議員特権」をなくすこと。よく言われた言葉では「なりたい人より、なってほしい人に」ということではないか。
それを、河村や阿久根市長のような人物に、首長独断の方便として言わせていてはだめだ。大阪や名古屋だけでなく、鹿児島・阿久根市、兵庫・加西市など地方でも同様の市長が出てきているのは軽視できない。

企業に奉仕する ―大阪都構想―

Fさん 大阪都構想というのは、どういうものか。もともと府県と政令都市は、どこもあまり仲は良くない。

Yさん 大阪の「おいしい」都市部だけを統合し、府に財政、権限を集中したいということだろう。いちばん財源をもっている大阪市や堺市を「ワン大阪」という言い方で乗っとり、「大阪都」に一括してしまう。そこに「地方分権」というような耳ざわりのいい言葉を散りばめる。

Kさん そうなったら、おそらく周辺部は自治も予算配分も抑制され、「平成の大合併」以上に公共サービスなどの大幅低下を招くのでは。
「二重行政がけしからん」と、たとえば「大阪市と大阪府が二つ大学を持つのは無駄」のように宣伝されるが、教育の機会はできるだけ多様に保障されるべきだし、とくに大都市に病院や公共施設が複数、多くあるのは住民サービスの基本であり無駄ではない。

Yさん 橋下に「反対」している大阪市・平松市長は?

Kさん 平松市長は庶民派の地方自治を、というのではない。「橋下のやり方に反対」と言っても、その中味は「行政改革」と称し福祉・医療や教育を切り捨てる。大して違いはない。

Mさん 関西の経営者団体新年会をテレビニュースで見たが、ダイキンや関空の社長らは「知事と市長はケンカしながらお互いに言いたいことを言い合い、関西の企業をもっと優遇する行政にまい進してほしい」と、あけすけに本音を語っていた。

Kさん 「大阪都で関西と大阪の活性化」というのはペテン。
彼のいう活性化というのは、財政も税収も土地利用も規制緩和も、すべて企業活動へ奉仕しようというもの。

Mさん 橋下がやろうとしている大阪都構想。その見本のようにしている東京都は、戦時体制のために、1943年(昭和18年)7月、東京府・東京市を統合してつくられた。内務省直轄の東京都長官に、政治・治安の権限が集中。戦時首都の支配権を握ったという歴史を忘れてはならないね。

教員の管理・統制ねらう ―評価システム―

Fさん 橋下は、教育問題でも見当はずれの持論を展開している。

Kさん 一つは、新勤評と言われる教職員評価システム。もともと「勤務評定」を学校、教職員に適用するのは、ちょっと考えても難事中の難事。「教育の成果」をどう判断するか、誰が判断するのか。給与に反映させるというのは、さらに無謀な話。
12月に大阪でおこなわれた新勤評反対全国集会に参加して、あらためて痛感した。校長・市町村教委の全員、教職員はわずか5%の抽出という府教委自身がおこなったアンケートの結果では、校長の約74%、教職員の約82%が「評価を給与に反映させることが、意欲や資質向上につながらない」と答えている。
校長自身が、教職員をS、A、B、C、Dに評価することにとまどい、大半がA、B評価にせざるを得ないという。「システムそのものが機能不全に陥っている」と報告された。
現場のきびしい状況のもとで、不屈に異議を申し立てているみなさんに出会い、元気づけられた。

Mさん 「勤務評定」は教職員の管理・統制が目的であり、教育の資質向上などに何の効果もない。これがまかり通れば、次にくるのは教育内容への介入だ。かつて「勤評は戦争への一里塚」と言われた所以もそこにある。
橋下は、学力テスト結果も全国に率先して公表した。かつての一斉学力テストのとき、成績をあげるために答えを教える、テストの日に「できない子」を仮病で休ませるということまで起こった。
教育現場には、「ヒラメ」という自嘲的な言葉があった。子どもたちの方を向かず「上」(校長、教委)ばかり見ている教師のこと。それを給与格差で無理強いしようとするような方策が、学校や教育をよくすることにはならない。
「わが子」の成長はもとより、「成績向上」にも何一つつながらないことを、保護者も考えなければ。

Fさん 橋下の言っているのは、一部の「勝ち組」優遇策にすぎない。それも「大阪をカジノで活性化させ、子どものころから勝負勘を養う」というのが、彼の教育観の基本らしいのだから・・・(笑)。

橋下「教育改革」に反対する全国集会とデモがおこなわれた(12月19日 大阪市内)

政府による朝鮮学校の無償化除外と、橋下による補助金凍結に反対する集会(12月14日 大阪市内)

民族差別を扇動 ―朝鮮高校を除外―

Kさん 高校授業料無償化で「拉致問題」「教育内容」を口実に介入し、民族差別をむき出しに、朝鮮高校への適用除外の旗ふりをしている。教育基本法改悪のときでさえ、「地方公共団体は教育条件整備の役割を果たすべき」という条項までは改悪できなかった。

Mさん 今回の無償化法は「高校に類する課程」をもつ省令で定める専修学校、各種学校も対象とされている。
この問題にくわしい田中宏氏は「類する課程かの判断は、(内容ではなく)法に則り外形的、客観的基準に委ねるもの」と述べている。
しかも、授業料無償化はすでに実施されている施策。文科省も決定済みのものを、民主党政権の反動化で、朝鮮高校生にのみ実施を遅らせている。在日朝鮮・韓国人が多く在住する大阪の知事が、法にそむいてまで民族差別を煽動するなど言語道断。

「痛み分かち合う」のペテン ―沖縄問題と関空―

Fさん 橋下は「沖縄の痛みを関西も分かち合う」と、沖縄普天間基地の訓練を関空で引き受けるかのようなことを言ったが・・・。

Kさん さすがに、そんなことを真に受ける人はいないと思うが。「県外移設」で民主党政権が混迷し、マスコミが連日「面白おかしく叩く」なか、全国知事会でも誰一人「本土受け入れ」を言わない。
それを見ての「人気とり」。あわよくば関空への財政支援、関空利権を有利にしようというねらいが透けて見える。沖縄基地問題を利用し、関空軍事使用に道を開き、あわせて赤字対策の政府支援を引き出す糸口にという、これこそ橋下流というべき。
かろうじて再選を果たした仲井真・沖縄県知事が「せっかくだから、関空を視察に・・・」と言ったとたん、「それなら神戸空港へ。赤字の神戸を活用するべき」と言をひるがえした。
もとより沖縄の負担軽減や、関空を軍事使用しない、などとはまったく無縁なのが橋下だが。

3面

19年におよぶ組合つぶしとの闘い
佐藤新理事長宅を100人で包囲
南労会闘争 元旦デモ

デモで佐藤理事長宅の包囲に向かう
(1日 和歌山県かつらぎ町)

医療法人・南労会は、もともと「労働者診療所」「労災職業病闘争の拠点」として、1976年に設立されたものだが、南労会における労働組合つぶしとのたたかいは、19年余におよんでいる。
この中で、昨年8月、理事会の内部分裂という事態が発生した。若杉常務理事が、松浦理事長を解任して新理事長をたてる「クーデター」に走った。これにたいし松浦が、理事長としての地位保全をもとめる仮処分裁判をおこした。
新理事長となった紀和病院の佐藤副院長は、就任のあいさつさえおこなわず、組合の団交要求から逃亡。彼らは、争議解決や医療に責任をとる立場とは無縁のところで、権力闘争を展開してきた。

元旦に集会とデモ

小雪が舞い散る元旦、和歌山県かつらぎ町に約100人があつまり集会をひらいた。この無責任な佐藤新理事長の自宅にむけて、抗議と団交要求のデモをたたかった。
集会では、当該南労会支部と港合同各支部からの報告と決意表明、港地区平和人権連帯会議、関西地区生コン支部、関西合同労組、非正規雇用労働者の権利と組織化のために闘う公務臨職の労働者、新空港反対東灘区住民の会から連帯発言がおこなわれた。
歴史のある静かな田園地帯にこだまするシュプレヒコール。民家はまばらだが、大きな反響を呼んだ元旦行動であった。

卑劣な兵糧攻め

南労会による組合つぶしのための未払い賃金は、4億円を超える。主な部分は、34人の組合員にたいする90年代の13回の一時金未払いと、5回の賃上げ未実施である。
これは、非組合員と別組合の労働者には全額支払われている。
未払いの手口は、賃上げ・一時金交渉において、労働組合が到底認めることができない不当な減額条件をつけ、「労働組合がすべてに異議を唱えることなく合意すること」、すなわち全面屈服の態度をしめさなければ、妥結・協定書締結は拒否し、一銭の賃金も支払わないというやり方。
労働組合は、「減額条件は違法。違法な条件は無効である」とキッパリと争う意志を表明。基本回答にたいしてのみ、妥結通告をおこなってきた。
しかし、南労会は、自ら回答した額の仮払いも拒否し、供託や経理上の処理をすることもなく、未払いのまま放置してきた。
労働委員会は、この悪質な兵糧攻めを不当労働行為と認め、何件もの救済命令を出してきたが、南労会は一切履行してこなかった。
他方、組合は、95年以来、賃金請求裁判や損害賠償請求裁判をたたかってきたが、裁判所は、協定書の不存在を理由に賃金請求を棄却してきた。

緊急命令と過料5百万

こうした中、08年4月、東京地裁は、中労委命令を後退させ、12回の未払い一時金についてのみ、「減額条件は不当労働行為なので、これを撤回して誠実に団体交渉を行い、妥結したら支払え」という判決を出した。同時に、これを直ちに履行せよという「緊急命令」も発した。
労働組合法により緊急命令の不履行は、過料制裁の対象となる。南労会は、それまで「未払い賃金はない」と強弁してきたが、ついに追い込まれて、09年3月、個々の組合員の具体的な額を初めて示した《一覧表》を団交で提示してきた。(本来の額の3分の2程度)
それとてポーズでしかなかったため、10年5月、別件とあわせて5百万円の過料が確定。南労会は、これを国に支払った。
組合員には一銭の未払賃金も支払わず、国には過料を納める南労会。本当に許しがたい。

不当判決弾劾

組合は、09年5月、《一覧表》のうち、懲戒解雇および退職で離職した組合員の分について、未払い一時金の一部として請求する裁判を提訴した。総額は5千5百万円。
労働基準法23条2項は、離職した労働者が請求した場合、使用者は、7日間以内に、労働者に属する金品を返還しなければならないという規定がある。争いがある場合は、「異議のない部分」の返還を規定している。労働者の足止め防止、離職した労働者の権利保護のためだ。
《一覧表》は、南労会が示してきた額であるから、この「異議のない部分」に当たり、南労会には速やかに支払う義務がある。
しかし大阪地裁は、「一覧表の額は、たたき台」「協定書が不存在」と、南労会の主張を採用し、不当にも請求を棄却した。
署名運動なども展開しながらたたかった控訴審の判決が12月22日にあった。一審よりもさらに不当な棄却判決であった。

賃金の考え方に誤り

判決は、「労基法23条の『異議のない部分』とは使用者が異議のない部分のことだが、南労会は払うとは言っていないのだから23条には当たらない」という。
判決は、《南労会が払いたいときに、払いたい額だけ払えばよし》とするも同然。労働者のもっとも基本的な権利である賃金について、根本的に考え方が誤っている。

署名・傍聴の支援を

この訴訟も含めた、全組合員の賃金未払いにたいする6億6千万円の損害賠償請求裁判が、早期結審をゆるさず、平行して大阪地裁でたたかわれている。
組合側は、12月の判決を厳しく弾劾し、この裁判の勝利をめざして、署名・傍聴など支援を呼びかけている。(N)

アメリカの教育は今
勤務評価がインターネットに

一人の教員の自殺

昨年8月、米ロサンゼルス・タイムズが、「教員の業績評価」をウェブサイトに掲載した。ロサンゼルスの公立小学校の教師、約6千人の「指導力」を評価するとし、実名を公表。
教員のリゴベルト・ルーラスさんは、「平均値以下」と評価されており、それがサイトで公表された。
それから約1月後、ルーラスさんは遺体で見つかった。警察は自殺と結論づけたが、その理由は定かでないという。
彼は、貧しい地域にある小学校の5年生の担任で、その多くがラテン系移民だった。週末や放課後には、個人指導や家庭訪問などもして、14年間ほとんど休むことなく勤務してきたという。

教員の「有効度」

タイムズ紙は、教員ランキングデータを州の公文書法によって取得、教員の「有効度」を「付加価値評価」という統計的方法で分析した。
タイムズ紙は、「教員は重要なサービスを提供する公務員の仕事にかかわっており、保護者や市民がその情報を知る権利がある」と主張してはばからない。
「付加価値評価」については、以下のような問題点が指摘されている。

・数学と英語の点数を評価の対象とするため、それが過度に重視される一方、他教科は軽視される。
・欠席やストレス、問題行動、食事状況など、生徒の状況が、成績にどう影響しているかが考慮されない。
・成績が教員にとってプレッシャーとなり、本当に支援を必要とする子どもたちを、おろそかにしてしまいかねない。
・「教員の優秀さ」を、こうした要因から切り離して判定するのは困難だ。何をもって「優秀」と評価するのか、それは測れるものなのか、という根本問題がある。

こうした中、ワシントンDCでは、低い評価を受けた165人の教員が解雇されている。
ロサンゼルスでは組合(UTLA ロサンゼルス統一教員組合)が、タイムズ紙の不買運動を呼びかけ、抗議行動にも取り組んでいる。また、労働協約の交渉で当局の姿勢を批判、生徒のテスト結果に基づく教員評価とそれによる賃金カットは簡単には受け入れないと表明している。
ニューヨークでも同様の動きがあり、教員組合が差し止めの提訴をおこなっている。

落ちこぼれゼロ法

アメリカには、ブッシュ政権下の02年に成立した「落ちこぼれゼロ法」なる法律がある。
この法律によって、州による一斉学力テストが義務づけられ、成績の悪い学校は、最終的には廃校になるか、チャータースクール(※)にとってかわられる。教職員の評価の手段としてもつかわれる。
また、この法律は、軍のリクルーターを学校に入れて、兵士の勧誘を許可し、生徒の個人情報を学校から入手できるようにしている。
オバマ政権は、こうした「改革」を加速させ、「Race to the Top(トップへの競争)」という43億ドル規模の教育助成基金を立ち上げ、州ごとに「教育改革」を競わせている。その狙いは、教員評価の業績給、学校選択制、「問題」教員を解雇しやすくすることなどだという。
最近のニュースの中には、教育財政の困窮で、解雇を含む教職員の削減、学級定員の拡大などが報じられている。また、アメリカ最大の学校組織をもつニューヨーク市では、三期連続で、教育経験のない民間人教育長が指名されたという。
一方で、「落ちこぼれゼロ法」が成立したときに教育次官補だったダイアン・ラビッチという研究者が、最近になって、「これまでの教育改革はまちがっていた」と批判を展開している。

※チャータースクール
親、教員、地域団体、企業などが、州や学区の特別認可(チャーター)を受けて設ける初等中等学校。公費によって運営。州や学区との間で結ばれる契約内容―一定水準の学力の確保など―を遂行できないと、契約が解除され、閉鎖される。教育における格差、人種間の分離を拡大するものだと批判されている。

日本の行く末

日本では、子どもたちや教育労働者が、長らくアメリカのまねを強いられてきた。しかし、上述のようなアメリカの状況は、日本の「教育改革」の行く末を示している。
(堀場)

4面

新自由主義がもたらした生活破壊と貧困
『労働経済白書』2010年版と労働運動の課題
森川 数馬

T.「異例の白書」

昨年8月、厚生労働省が、2010年版の『労働経済白書』を発表した。その内容が、大きな反響を呼んだ。「国の責任を初めて認めた」(朝日)、「異例の白書」(産経)、「白書が過去の政策に言及するのは異例である」(神戸新聞)、「政府自らの責任を認めた『自己批判』の白書だ」(琉球新報)。
ここ数年、『労働経済白書』の基調は、構造改革がもたらす労働者生活の破壊にたいして、「批判」を強めてはいた。が、2010年版では、08年リーマンショック、年越し派遣村、09年政権交代という情勢の激動をうけて、踏み込んだ中身にならざるを得なかった。《この20年間の規制緩和が「格差社会」を生み出した》と、結論づけたのだ。
巷では、『経済財政白書』対『労働経済白書』といわれている。構造改革をめぐって、官僚の間に一定の軋轢があるからだ。そういう背景もある。
しかし、ここまで踏み込まざるを得ないほど、労働者の生活がひどい状態にあり、なぜそこにいたったのかを、厚生労働省としても「長期的、歴史的に分析」「整理と検討」せざるをえなくなったということなのだ。
『労働経済白書』は、1949年以来、政府白書の中でも長い歴史をもつもの。労働省(のちに厚生労働省)が、「労使の真摯な話し合いの資料」として、「労使安定」に誘導する意図をもって、作成してきたものだ。
そういう思惑を、労働運動の側からも資本の側からも突き破り、階級闘争の生きた戦場で労資関係は形成されてきた。
にもかからわず、今回ここで『労働経済白書』(以下、白書)をとりあげるのは、踏み込んだがゆえの「貴重」な資料だからだ。この分析の中から、新自由主義攻撃とたたかう労働運動のあり方を再形成していかなくてはと考える。
労働運動の側も、現実と向き合い、打開の道を提示していく責任がある。「労働者の反乱をおさえこむための予防反革命文書」などという評論だけで済ますことはできない。

U.ブラック企業の全国化

労働分野の規制緩和に手をつけ、推進し、それに歯止めをかけられなかったことが、低賃金と失業の長期化という深刻な今日の労働者の状態を引き起こしたと、白書は認めた。そして、「今後の保健医療や教養娯楽」などの「成長分野」のためには「年功序列型」「長期雇用」の良き日本型資本主義こそ「有効」で、それに戻れと言っている。
単純な景気後退論などでは説明できないと、過去の労働政策の反省に踏みこまざるを得なかった。そのことを、作成者は正直に語っている。「これまでは構造改革がもたらした格差の是正を訴え続けてきた。今後は長期雇用のもと、技能や付加価値の高い人材を育てることで、所得の向上や経済の発展をめざすべきだ」と、この数年、白書をとりまとめてきた石水厚生労働省・労働経済調査官が、昨年8月、記者にコメントしている。
小泉構造改革をはじめとする日本の新自由主義政策は、従来の労資関係をぶち壊してすすめられた。それは、厚労省官僚の思惑をもこえたものであった。
85年、労働者派遣法の成立(86年施行、その後、次々と改悪)、国鉄分割・民営化(87年JR発足)とその手法の他産業への拡大、労働分野での規制緩和への踏み切り。95年の日経連「新時代の『日本的経営』」〔注1〕、90年代半ば以降の「労働ビッグバン」という労働市場の抜本的改革の名による「雇用の流動化・多様化」。
それらが、骨太方針や経済諮問会議など、新たな政治手法をもって強行されていった。挫折したとはいえ「ホワイトカラー・エグゼンプション」(残業代ゼロ法案)、「解雇の金銭解決の制度化」まで進もうとしていた。それは労働基準法と労働組合法への死刑執行ともいうべきものであった。
しかし、労働現場の実態は、リーマンショク後、「ブラック企業の全国化」(東部労組 10年11月労働相談報告)と言われるような状態に行き着いている。
このことが、労働者の生活をどれほど変貌させ、破壊したか。今日、「無縁社会」(NHK)、「孤族の国」(朝日新聞)という新語さえ登場しているが、そこまで労働者の団結と社会的絆はこわされている。
白書は、政府統計に独自の分析視角を加え、こうした労働現場の現実を、数字で語っている。

派遣法抜本改正をめざし国会前で集会(昨年10月25日)

V.非正規雇用の増大

〔図表1〕を見てほしい。80年代後半から、30人未満の中小零細や、500人未満の事業所では非正規雇用比率が上昇。そのことが、労働者の平均賃金を押し下げてきたと指摘している。
ところが90年代後半からは、500人以上の大企業でも非正規雇用比率の上昇が始まった。2000年代に入ると、その上昇テンポは、さらに高まった。
バブル崩壊後の93年以降は、まず大企業で採用抑制がはじまり、97年以降は、全ての企業規模(大企業ほど)で正規雇用を減らし、非正規雇用比率を高めていった。
2000年の景気拡張以降も、大企業ほど非正規雇用を増やす傾向をつよめた。「相対的に賃金が低い者を活用」「即戦力の確保が重視された」「また労働者派遣事業の規制緩和が、こうしたことを尻押しした面があったものと考えられる」(白書)と指摘するかつてない状態に入った。
〔図表1〕でわかるように、現在の大企業の就労構成は、90年代前半頃の中小零細企業の非正規雇用比率30%と同様の状態にある。06年以降、非正規雇用30〜33%(正規雇用67〜70%)と、比率が固定化している。
さらに、〔図表2〕からわかるように、非正規雇用化は、製造業、卸売・小売業、サービス業で急速に進んだ。

分断と階層化
企業は採用形態を、かつてのあり方から完全にかえた。95年『新時代の「日本型経営」』路線が、実践にうつされていったのだ。これが就業形態を大きく変化させた。
このことを、白書は明らかにした。
「雇用柔軟型」と資本が呼ぶ、膨大な非正規雇用労働者層が生み出され、あとは少数の長期蓄積能力型の正規雇用労働者と高度専門能力活用型と呼ぶ比較的高給な有期雇用労働者という、労働者の間の分断と階層化が10年ぐらいの短期で進んだ。
それは「身分制度」ともいうべき様相を呈している。

W.低賃金 日本の特異性

「2009年の賃金は3年連続減少し、・・・その総額減少率は統計調査以来最大のものとなった」(白書)。さらに〔図表3〕を見ると、97年以降は対前年比マイナスが続く状態に入っていった。01年からは4年連続で前年比マイナスとなり、05年、06年に若干プラスになるも、07年から再びマイナスに転じている。20年前の水準にもどっている。
こうした低賃金状態は、1%台の成長率にあえぐ世界の「先進国」でも日本だけ。雇用所得〔注2〕の推移を各国比較すると、95年を100として、08年時点で、日本は98、英200、米192、仏162、独122となっている。低下しているのは日本だけ。日
本の特異性がきわだっている。
09年賃金(対前年比)でみると、製造業で7%減、その他でも4%前後の減、とりわけ500人以上の大企業で7・5%減と大幅な減少。
これらが、ワーキングプア、ホームレス、ローン地獄や家庭崩壊をひきおこしていった要因であることは間違いない。
90年代以前の景気後退局面では、経常利益が減少した場合でも賃金総額の低下はなかったが、このかんは賃金の低下に直結する構造へ変化。デフレ下でも相対的に経常利益を確保する企業へと、異常なほどの変貌をとげている。

非正規化と低賃金化
この低賃金化を促進していったのが、雇用を正規から非正規に大量におきかえ、そのことで企業収益を維持するという企業動向だ。
かつては生産性の向上などで景気後退から脱してきたが、それが変貌してきている。年齢を重ねても賃金が上昇しないのが非正規雇用労働者であり、50代になっても年収200万円前後の状態が継続している。〔図表4〕
勤続年数も、30歳以下の人では「数年」という状態で次々と転職をくりかえさなくてはならない現状が示されている。
〔図表5〕は、雇用者の年間収入と就業形態別内訳のグラフであるが、低賃金層の増加と非正規雇用の増加が大きく作用し、雇用者全体の格差が拡大したことを示している。
このように、賃金の低下に歯止めがかかっていない。若年層の実態は残酷だ。20〜34才で、「自身の収入のみ」で生活できている人は、35・7〜49・7%だけ。他の人は、「自身の収入と他の収入」、つまり多くが親とかその他収入に頼る状態で生活している。(総務省 10年「労働力調査詳細集計」)
世帯形成期の世代が、結婚も子育ても不可能な状態におかれている。

X.高失業時代へ突入

もうひとつの重要な事態は、深刻な高失業の国となった日本の姿だ。
白書では、各所に「高い失業率」「失業率は高い水準で推移」の文言が出てくる。「完全失業率は改善することはなかった」「ほぼ横ばい」「改善させることができなかった」(白書)とその深刻さを認めている。完全失業率は、99年から4・5〜5%台が続いている。男性の場合は5・5%を幾度か突破。さらに失業が長期化し、潜在化してきている。就労をあきらめ、非労働力化(政府統計の失業者数にカウントされない)層が増大している。
非自発的失業者数〔注3〕が増大し、若年層に集中する傾向も強まっている。統計分析では、非自発的失業数が97年から99年にかけて48万人増、00年から02年にかけて49万人増だったのにたいして、07から09年にかけては62万増と増加幅が最大になっている。

若者層の無業者60万人
大学新卒の就職内定率が56・7%(10年11月1日時点)と社会問題になり、政府、経団連もあたふたしている。今春の卒業は迫っており、このままでは半数近い卒業生が失業か半失業においやられる。
就職結果統計をみると09年春は高卒18・2%、大卒68・4%である。この傾向は、〔図表6〕をみれば、ずっと続いている。若者(15〜34才)の無業者(家事も通学もしていない)人口は、02年の64万からずっと60万人台であり、09年63万人である。
日本資本主義は、若年層の非正規雇用化、ワーキングプア、ホームレスをつくりだす構造に陥っている。その中で菅政権は、09年政権交代時の公約も投げすて、新成長戦略のもと、新自由主義路線をごり押しし始めた。法人税率の引き下げ、消費税増税、TPP参加は、そのあからさまな表明だ。

Y.新自由主義うち破ろう

「つながり断ち 27歳暴発」(「連載 孤族の国」10年12月30日、朝日)。昨年12月、茨城県取手駅で、青年労働者がバスを襲った事件。
「ひとりが好きなのだと思っていた。実は違っていたのかもしれない。してやれることがあったんじゃないか」(工場の元上司)。これが正直な感想だろう。同じ働く仲間として互いに接することがなくなっている労働現場の深刻さがつき出されている。団結の破壊、歯止めない低賃金と失業の不安が忍耐を越え、追いつめられる労働者の姿だ。
まずこの現実から出発する労働運動が問われている。

派遣村の教訓
第一に、この現実と向き合い、働く仲間としての団結をあらゆる水路を通して作り出すことだ。
矛盾が集中する非正規雇用の仲間の待遇改善のための一歩二歩を作り出すことではないだろうか。
旧来の労働運動のパターンを当てはめるあり方を改め、必要とおもうことをやりぬいていくことだ。そのために働く仲間は力を出し合おう。
08年・年越し派遣村とその後の全国で続く運動の経験は重要である。それを活かし、地域で非正規・正規が一体となり、壁を越えて、相談・たまり場活動を恒常的につくりだそう。

共同と統一
第二に、奪われてきた労働者の権利を取りもどすために真剣にたたかうことである。
企業の壁、労働組合の壁をこえた共同と統一のたたかいが不可欠だ。労働者派遣法の抜本改正からその廃止を進めるたたかいはその試金石だ。ホワイトカラー・エグゼンプションを粉砕した行動をよみがえらせよう。
バラバラにされた状態を一旦こえていくために、地域団結形態、産別・職種、課題別などのまとまりをつくりあげよう。その実践が求められている。

生きられる賃金よこせ
第三に、低賃金状態打破のためのたたかいだ。
働く者すべての一律賃上げ要求をかかげてたたかおう。地域・産別の統一行動をつくりだし、「生きることができる賃金を」の声をもっとあふれさせなくてはいけない。
このとき労働組合の団結権を駆使したたたかいの有効性も実感されていくだろう。要求を実現し、「ユニオンが希望!」という状態まで労働運動を層としてつくり出そう。

たたかう論理を
第四に、いまひとつ重要なのは、イデオロギー闘争の領域だ。
新自由主義攻撃は、ポピュリズム政治手法を用いて、マスコミを使い、世論を操作することによって進められた。
「連載 孤族の国」(朝日)に見られる労働者の現実は、人間としての自由や権利、労働者の権利とはかけ離れた「自己責任」世界の泥沼に陥れられている。左翼、労働運動は、こういう攻撃に、無防備で無反撃ではなかっただろうか。
新自由主義イデオロギーとたたかう論理とともに、たたかいの手法を共同でつくりだそう。

互いを尊重して
以上のようなとり組みをすでに開始している先進的な運動に学び、各所で旧来の枠組みをこえて、どしどし開始していこう。
この20年間の新自由主義攻撃によってもたらされた労働者の団結破壊の状況を転換させるためには、このようなとり組みを大量につくりださなければ、次の展望も語れない。
とり組みの一つひとつは小さくても、それがいたるところで生まれ無数に広がれば迫力をもつ。
そのためにも、とり組みを開始している者同士が互いを尊重しあうことではないだろうか。またそういうとり組みを、自己の「路線」に当てはめ、それ以外は排除するスタイルをやめることが必要だ。
可能なところから協議や共同、連合をつくり出して行こう。旧来の労働運動にあったセクト主義の悪弊をふりはらおう。深刻な自己反省をもって訴える。
真剣な実践は、労働者・民衆の真の力をみるみる引き出していくだろう。それは、必ずや新自由主義を打ち倒す。そのとき資本家にかわって、未来を担う労働者・民衆の21世紀の運動が立ち上がっていくだろう。

〔注1〕 『新時代の「日本型経営」』
日経連(当時)が発表した提言。副題は「挑戦すべき方向とその具体策」。労働者全体の9割を非正規雇用化するというものであり、今日にいたる本格的な非正規雇用化の出発点となった。連合は、「組合員の雇用の確保」を名目に、大規模な非正規雇用化を積極的に受け入れた。

〔注2〕 雇用所得
労働者の賃金をはじめ、法人企業の役員、特別職の公務員、議員なども含む雇用者全体の所得を合計したもの。

〔注3〕 非自発的失業者
本人の意思とは関係なく、勤務先の倒産・リストラなどにより離職を余儀なくされ、その後、新しい職探しをしている人のこと。


6面

三里塚の真価を発揮する
萩原進さん(三里塚芝山連合
空港反対同盟 事務局次長)の発言要旨

〔三里塚芝山連合空港反対同盟の団結旗開き(9日、成田市内)における、反対同盟事務局次長・萩原進さんの発言要旨を掲載します。文責・編集委員会〕


萩原進さんがまとめの発言(9日 成田市内)
あらためておめでとうございます。全国のみなさんから年賀状や激励を受けて、新たな気持ちをでたたかいぬいていきたい。
闘争宣言〔別掲〕に網羅されている。読み直して、自らのものにしていただきたい。

追いつめられた姿

今年一年、文字通り決戦の年である。そして昨年のたたかいは勝利の年だったと総括している。
第1番目は、昨年のたたかいを無にすることなく、そのことを一面にしながら、攻勢的にたたかいぬいていきたい。
支配階級は、彼ら自身経験したことのない事態に追い込まれている。三里塚、国鉄、沖縄、医療問題、老人問題、福祉問題。どれ一つ解決できる状況ではない。だから凶暴な攻撃にでてきている。
千葉県知事森田。東京まで15分くらいで行けるリニアモーターカーを成田から走らせると言っている。賭博場もと言う。これは思いつきではない。三里塚空港がこのままではつぶれてしまう。そのために仁川空港の真似をして、観光客を集めるにはどうするのか。これを真剣に考えざるを得ないところまで、彼らは追い込まれている。
こういう世の中で、1兆円を超える乗り物をつくり、新たなホテルや建物を建て、賭博場をつくるんだと。こんなことが、今の世の中で許されるのか。
これは、われわれにとってみれば、ものすごいチャンスだ。このことが、あらゆる戦線の中に、はびこっている。ここを、今までの殻をうち破って、大胆にたたかいぬこう。

農地武器に 農地死守で

第2番目は、原則的にたたかう。
農地を売らない。農地を死守する。それを武器にしてたたかう。一切の話し合いを拒否し、ときには実力でもって、体を張って、命を懸けてたたかう。
われわれは、人民におしつけることはしない。われわれがたたかい、そして勝利する。その道を見ていただきたい。それを体で体験していただきたい。
一人でも多くの人を三里塚に来させることだ。今までの生き方を自ら撤回し、今の社会を見つめなおしてもらう。そして、これが勝利の道だということを示す。
そういうたたかいを今年はやろう。

全戦線での旗振り

第3番目。反対同盟は、全国のあらゆる階層の人たちから支援を受け、自らの課題として取り組んでいただいて、勝利の大道を歩んでいる。これは、人民のたたかいとして、存在しているからだ。
空港の持つ意味。農地を守ってたたかいぬく大きな柱。輸入貿易の問題、農業問題だ。もう一つは、空港のもつ軍事性の問題、反戦・反核のたたかいとしてある。
それが、今こそ発揮できる状況だ。「国策だから人民はひれ伏せ」と言うことにたいし、「これこそが正義だ」とたたかいぬくことが必要だと、声を大にしてうって出ていく。
今年は、あらゆる戦線に、「この指とまれ」「こうして一緒にたたかおう」と、その旗振りを反対同盟はやる。
しかも、あらゆる戦線、市民のたたかい、とりわけ沖縄のたたかいの中に、もう一度、反対同盟の旗をかかげてたたかいぬく。こういうたたかいを今年は実現したい。
3月、10月の全国集会と、あらゆる地域に三里塚集会を波及させたい。

1〜2月が決戦

団結街道閉鎖取り消し仮処分申し立てにおいて、3人の審尋の要求を千葉地裁が却下、1月31日に終結するという文書を年末に送りつけてきた。2月4日の現闘本部裁判終結の意図と一体で、反動判決を強行しようとしている。
このことを肝に銘じて、1〜2月をたたかいぬいて、3月27日の大集会を実現しなければならない。
もう2月4日の裁判まで、日にちがあるわけではない。明日からまたビラまきだ。
迂回路トンネル化・道路切り替えを1月冒頭から始めると、市東さんに通告してきた。これは宣戦布告だ。これを受けて立つ。うち破ってたたかう。このことを通して裁判闘争も勝利する。
今まさに決戦のただ中にいることを自覚していただいて、本日の旗開きのまとめとしたい。

体張って闘うのは圧倒的な正義  2011年 闘争宣言
三里塚芝山連合空港反対同盟

〔反対同盟が、団結旗開きで発表した「2011年闘争宣言」を掲載します。見出しは編集委員会〕

朝鮮侵略くり返すのか

世界を覆う恐慌が、ついに戦争の予感を現実のものとした。韓国・延坪島(ヨンピョンド)の砲撃戦は、この危うい現実を衝撃的に突きだした。ふたたび朝鮮侵略戦争を繰り返すのか─すべての人々にこのことが問われ、反戦の力がとめどもない奔流となって世界を動かす時がきた。
危機と混迷を深める菅政権は、延命の道を財界にすがり、その意を受けてブロック化と戦争に向かって暴走している。TPP(環太平洋経済協定)はその象徴であり、日本農業を壊滅させ、労働者の首切りを極限にまでおし進める暴政にほかならない。成田空港は沖縄と一体の米軍事拠点である。

絶対反対でたたかう

この動乱のさなかにおいてなお、死活的なインフラ=成田空港は、闘いに阻まれ破たんにあえいでいる。昨年激しく進行した三里塚闘争破壊の攻撃は、起死回生をはかる民主党・菅政権の凶暴なあがきであった。
反対同盟は、現闘本部撤去仮執行を粉砕し、団結街道封鎖と闘う市東孝雄さんの実力決起で、この攻撃をあざやかに打ち破った。そして一つの確信を新たにした。理不尽きわまる国策=空港建設に対して、「軍事空港建設反対」「農地死守」を掲げ、身体を張って闘うことは圧倒的な正義である。
絶対反対で闘うことはたやすいことではないが、この道の正しさを反対同盟は確信する。農地と農民の権利を守り、改憲・戦争に反対する三里塚がいよいよ真価を発揮する時がきた。

共闘の砦・三里塚

2011年、攻勢的に大胆に、闘おう。基地全面撤去へと闘う沖縄の火はいよいよ燃え広がるであろう。労農連帯の旗の下、検修全面外注化と闘う動労千葉を先頭に、大失業・戦争と闘う労働者の決起が国境を越えて広がるであろう。学生の鮮烈な決起が始まった。三里塚は沖縄や関西住民を始めとする広範な住民運動、市民運動と完全にひとつだ。三里塚は共闘と結集の砦である。
第3誘導路粉砕! 暫定滑走路南進のための東峰地区破壊策動を許すな! 2・4現闘本部控訴審闘争は審理打ち切り・仮執行を阻止する大決戦である。大結集を呼びかける。迂回道路トンネル化のための1月道路切り替え阻止! 団結街道仮処分に勝利しよう。市東さんの農地裁判を闘い、3・27全国集会に空前の大結集を闘いとろう。
                     2011年1月9日 三里塚芝山連合空港反対同盟

冬期カンパをお願いします

《カンパ送り先》
 ◎郵便振替
  口座番号:00970-9-151298
  加入者名:前進社関西支社
 ◎郵送
  〒532-0002 大阪市淀川区東三国6-23-16 前進社関西支社