未来・第71号


            未来第71号目次(2010年12月21日発行)

 1面  沖縄に来るのは筋違い 帰れ!二度と来るな!
     菅首相訪沖 基地押しつけに沖縄の怒り

     「沖縄は基地を甘受せよ」 仙谷官房長官が暴言

     第2期・沖縄意見広告 日米の世論うごかそう
     来年5月 米国紙・国内紙に掲載

 2面  沖縄連帯の草の根運動
     第2期沖縄意見広告・発足集会

     米軍機 激しい着陸訓練
     米軍再編と侵略戦争を実感 12/4〜5岩国

     高速増殖炉もんじゅ「最終章」へ 福井で全国集会

 3面  破綻した石原都政・石原教育行政
     学校・地域の力で終わりに

     視点 休職が唯一の食事
     子供の貧困の実態

 4面  朝鮮侵略を想定し日米が大演習

 5面  本の紹介 『消費税のカラクリ』(斉藤貴男 著)
     大企業が儲かる不公平税制

 6面  石川さん「前進あるのみ」 狭山市民集会
     決戦は来春に持ち越し

     第2期沖縄意見広告

     人間の尊厳を破壊し自殺を招く内省プログラムに批判
     医療観察法廃止で集会

     冬期カンパのお願い

       

沖縄に来るのは筋違い 帰れ!二度と来るな!
17日 菅首相訪沖 基地押しつけに沖縄の怒り

17日 沖縄県庁前
「撤回せよ」と書かれたボード、そして、空き缶、一斗缶―。県庁前に集まった人びとが、缶をカンカンと打ち鳴らした。「菅」に引っかけた抗議の意志表示だ。
「菅首相は何をしに来るのか。アメリカの奴隷だ。いまも沖縄は日米両政府に占領されている。安保闘争をもう一度おこそうかと思うくらい」(50代女性)、「沖縄に首相が来て交渉するのは筋違いだ。県民の意思を持って米国に行って交渉すべきだ」(60代男性)
午後3時すぎ、菅首相が県庁に到着すると、怒号とともに缶を鳴らす音がさらに激しく響いた。
東京でも、17日夕方、沖縄と連帯して、新宿アルタ前と首相官邸前で抗議行動が行われた。

首相官邸前で菅訪沖に抗議(17日 夕方)

わずか3分
18日昼前、辺野古に自衛隊ヘリが飛んできた。菅が乗っている。
辺野古の浜では、「NO BASE」という大きな文字が、菅を迎え撃つ。全国からのメッセージがかかれた布、約100枚を敷き詰めた。座り込みを続けるオジイ嘉陽宗義さんをはじめ、辺野古の住民、テント村の仲間が抗議の声をあげた。
ヘリは、上空を旋回したと思ったら、すぐに飛び去った。わずか3分。

中身のない空き缶
菅は、警察や軍に守られて、1人の住民とも言葉を交わさず、沖縄を後にした。
嘉陽さんは怒りを込めて語った。「視察はアメリカにおべっかを使うため。われわれの熱意にひるんで逃げていったように見える。菅首相は中身のない空き缶だ」。

菅「辺野古がベター」

「沖縄の皆さんにとって、辺野古はベストでないが、ベターではないか。万一事故が起きても、人口密集地帯ではない意味で危険性が削減される」。
17日午後、仲井真知事との会談で、菅が放った言葉だ。沖縄を愚弄した発言だ。厳しい批判が飛んでいる。
「ベターというのは失礼だ。騒音に悩まされ、海を壊されるのは、私たちだ」(名護市辺野古50代女性)。
「これだけ県民が意思表示しているのに、押しつけようとする。政府の態度はまるでストーカーだ。すごく沖縄が差別されている」(名護市瀬嵩40代女性)。
沖縄県民は、1月名護市長選、4月県民大会、9月名護市議選、11月県知事選と、繰り返し意志表示してきた。「新しい基地はいらない」、これが沖縄県民の総意だ。しかし菅は、その沖縄県民の総意を頭から否定した。
どうして菅が勝手に「沖縄にとって辺野古がベター」などと言えるのか。なぜ「人口密集地帯ではない辺野古」だといいのか。名護市とくに東海岸の住民の命はどうなってもいいというのか。「危険性」などというが、口先だけだ。
また菅は、「県外・国外の方向を模索したができなった」と述べた。これはウソだ。「できなかった」のではなく、「最初からしようとしなかった」のだ。沖縄に押しつけ、さらに辺野古に押しつければいいという二重の差別だ。
さらに菅は、会談で、沖縄振興に関する新法制定の必要に言及、地方への一括交付金(来年度から実施予定)で「沖縄は別枠」と述べた。アメを与えれば黙るだろうという侮蔑した発想だ。
まさに、菅の発言の全体が、構造的沖縄差別に貫かれている。
沖縄と連帯し、本土こそ、5・28日米合意撤回に立ち上がろう。

「沖縄は基地を甘受せよ」  仙谷官房長官が暴言

仙谷官房長官が、13日の会見で、沖縄県民にたいして、辺野古への新基地建設を「甘受してもらいたい」と発言した。
沖縄に犠牲を強制して恥じない暴言だ。
「逆らえば、いつでも踏みつけてやるぞという脅しだ」「沖縄差別を絵に描いたようだ」「市長選から県知事選までの状況を、政府が全く受けとめていないということだ」―沖縄県民の怒りが渦巻いている。

甘受できない

沖縄がおかれている異常な状況をどう考えているのか。
今月上旬の日米共同統合演習で、沖縄は戦場のような状況におかれた。戦闘機の爆音、ミサイルが公道を移動、実弾射撃の爆発音と火災、海上には軍艦が集結。嘉手納基地・普天間基地周辺の小中学校では、米軍機墜落を想定した避難訓練がおこなわれた。これが戦後65年間続いている沖縄の異常な状況だ。
仙谷はこの現実を知らないのか。当然知っていて、今後も「甘受せよ」と迫っているのだ。
さらに仙谷は、批判を受けて、「沖縄が総反発するような受けとめをしているとすれば、撤回もやぶさかでない」と述べた。なぜ県民が反発したのか、わかろうともしない。沖縄は繰り返し犠牲にされてきた。そして本土がそれを一度も引き受けようとしてこなかった。沖縄が何度も拒否の意志を示しているのに、基地を押しつけようとする。その差別に沖縄県民は怒っているのだ。

オール沖縄vs政府

仙谷の「甘受」発言は、単なる失言ではない。菅政権の本音、日本の政治体制そのものの本質だ。
日本の政治体制・日米同盟体制は、沖縄県民の民意は無視、沖縄には「民主主義」はなし、犠牲だけは集中させるということで成立してきた。
今、そういう沖縄のマグマのような怒りが、日本の体制を揺さぶっている。
「県知事選挙で、保革を超えて県内移設に反対する人の得票が98%に上った。オール沖縄と政府との戦いになる」(山城博治・県内移設反対県民会議事務局長)
沖縄と連帯し、日本の政治体制・日米同盟体制をうち倒そう。

第2期・沖縄意見広告 日米の世論うごかそう
来年5月 米国紙・国内紙に掲載

「普天間即時閉鎖・辺野古(海・陸)やめろ、海兵隊はいらない」をかかげた、第二期沖縄意見広告運動が、9月東京での出発集会でスタート、11月23日には、関西でも発足集会が開かれた。〔2面に集会報道〕

第一期の反響

今年5月15、16日沖縄二紙と朝日新聞に、1ページの意見広告が掲載された。沖縄の少女の真剣なまなざしと、「普天間基地は撤去、米海兵隊は撤退を」の大書。沖縄と連帯する運動を大いに喚起した。
この運動は、2カ月たらずの短期にもかかわらず、賛同者総数4629の人びとが参加した。

ワシントンで行動も

今回の第二期運動は、来年5月、米紙、沖縄現地紙、本土紙で、意見広告の掲載を目指している。呼びかけ人は、すでに500人近くとなり、沖縄現地、労働運動、宗教者、知識人、弁護士、市民など広範なひろがりをみせている。
来年の米紙への掲載予定と結合して、アメリカの反戦団体、環境団体との連帯も進んでいる。節目には米国世論を動かすべく、ワシントンDCでの行動も検討されている。
沖縄連帯の草の根運動として、全国の職場・地域でひろげよう。今年5・28日米合意の撤回、来春の新たな日米共同声明の粉砕をめざし、運動を発展させよう。
〔6面に意見広告要項〕

2面

沖縄連帯の草の根運動
第2期沖縄意見広告・発足集会

11月23日、第二期沖縄意見広告運動の関西での発足集会が、大阪市内の協同会館・アソシエに265人をあつめて開催された。

11月23日 大阪市内 協同会館・アソシエ

米反戦運動と結合を

冒頭、連帯あいさつにたった服部良一・社民党国会議員は、沖縄県知事選挙について「辺野古(新基地建設)は、やめてくれ」と熱気あふれる現地の終盤情勢を紹介した。そして、この意見広告運動で、アメリカの反戦・環境運動と結合してアメリカ世論を動かし、〈海兵隊撤兵・辺野古NO!〉を作り出そうと訴えた。
続いて、全港湾大阪支部、部落解放同盟大阪府連からも連帯あいさつがあった。
講演・提起として、3人の講師から、それぞれ意見広告運動への訴えがおこなわれた。

米軍こそ脅威

まず、琉球新報記者の滝本匠さん。
滝本さんは、沖縄の人びとにとって「脅威となっている米軍」の姿を、9・11以後の嘉手納基地での住民に銃を向けた警戒態勢や、海兵隊の上陸訓練などの事実をあげて弾劾した。
04年沖縄国際大への米軍ヘリ墜落事件については、事故直後の貴重な映像を上映しながら、米軍が治外法権的に振る舞い、住民をけちらしていること、放射性物質が拡散したことなどを暴露。
これが、「沖縄差別の歴史がうみだしたもの」と鋭く弾劾した。米軍に「安全を守ってもらう」「抑止力」論などということが、いかにデタラメかを訴えた。

TPPは植民地の手法

次は、同志社大教授の田淵太一さん。
田淵さんは、いまのデフレスパイラル状態の経済危機は、米金融緩和策が根源であると指摘。アメリカが策すTPPは、かつてのイギリスによるインド植民地支配の手法そのものであると弾劾した。
差別と分断、排外主義があおられる危機的状況を、労働者民衆の連帯の闘いでうちやぶろうと訴えた。

「安保破棄」かかげ

さらに全日建連帯労組関生支部委員長の武建一さん。「(面積で日本の)0・6%しかない沖縄に、在日米軍基地の75%がおしつけられている。この現状を許してはならない。抑止力などデタラメだ。労働運動が『安保破棄』をかかげてたちあがろう」と檄をとばした。
最後に、意見広告運動の東京事務局・生田さん。「来春に新たな日米共同声明が出されようとしている。5月をめざし、米紙、沖縄現地紙、本土紙で、意見広告を掲載予定である。第一次をうわまわる意見広告運動を全国規模で展開しよう」と方針を提起した。
集会後、スタッフ会議が別室で行なわれ、運動展開について熱心な討議が行なわれ、関西事務局がスタートした。

米軍機 激しい着陸訓練
米軍再編と侵略戦争を実感 12/4〜5 岩国

岩国闘争に参加した。4日午後、岩国市役所前に集合、まずフィールドワークに出た。
愛宕山東側の中腹から、岩国基地の全貌が見えた。
岩国基地の沖合移転事業の完了は2011年3月の予定だが、日本政府は沖合移転事業が完了していないまま、新滑走路と関連施設を米軍に提供。新滑走路は5月29日から運用が開始されている。その新滑走路や米軍住宅の状況を見た。
次に新滑走路の北側へ移動。米軍機が激しく着陸訓練をおこなっていた。3日から日米共同演習が開始されていた。米軍機を直下から見た。朝鮮・中国への攻撃ということが現実に迫ってきた。

3訴訟へ支援要請

その後、岩国住民との交流会に参加。岩国基地4訴訟原告団連絡会事務局の大月純子さんから、現在の4つの訴訟(注)の現状について説明があった。
「テーブルの裁判(注)」については、10月6日に一部開示の判決が出て、控訴せず判決は確定。今回の判決で、情報審査会の答申を無視した岩国市の対応の違法性が認められた。これを活かし、岩国市に情報開示を求めていくことが報告された。
継続している3訴訟への支援の要請があった。

攻撃が新たな局面

午後6時から、2010岩国・労働者反戦交流集会(第4回)に参加。参加者は約250人。
司会はきょうとユニオンの船場さん。
冒頭、9月に米軍属の運転する車に轢かれて亡くなった愛宕山を守る会の方を追悼して黙祷。
集会実行委を代表して、おおさかユニオンネットワークの垣沼さんがあいさつ。さらに愛宕山を守る会、社民党衆議院議員の服部良一さんに続いて、韓国の民主労総の訪日団11人が登壇、連帯のあいさつがあった。
◇基調報告
やまぐち連帯ユニオンの寺中さんが基調報告。
「岩国への攻撃が新たな局面にある。
愛宕山跡地の買取経費199億円を、米軍再編関連施設用地として計上。厚木から岩国への空母艦載機部隊の移駐を閣議決定。新滑走路の運用が開始されるとともに、使われないはずの旧滑走路をヘリが飛行している。
民主党政権の米軍再編・日米軍事一体化の攻撃だ。沖縄の攻撃と一体。
沖縄・岩国・神奈川の闘いの結合をもって、米軍再編とのたたかいを進めていこう。
貧困、排外主義、戦争動員が一体で襲いかかる中で、労働者は、団結して反戦闘争をたたかうことが問われている」。
その後、多数の発言があった。集会後の懇親会も盛況だった。
岩国集会に参加して、米軍再編の実態と朝鮮・中国侵略戦争の緊迫を実感した。
翌日は、岩国国際集会2010がひらかれ、デモを行った。(TS)

注 「4つの訴訟」
@海の裁判:沖合移転事業埋立承認処分取消請求訴訟、A空の裁判:岩国爆音訴訟、B山の裁判:愛宕山開発事業認可取消処分取消請求訴訟、Cテーブルの裁判:愛宕山開発等に係る市長協議報告書非開示決定取消請求訴訟

愛宕山の中腹から岩国基地の全貌が見える(4日 岩国市内)

高速増殖炉もんじゅ「最終章」へ 福井で全国集会

白木海岸から「もんじゅ」(右奥)にむけて怒りの拳(4日 敦賀市内)

4日、「もんじゅ」をにらむ白木海岸で開催された抗議集会と、その後の原子力機構への申し入れが、氷雨のなか、午前11時からおこなわれた。
原水禁の藤岡・副事務局長は「運転再開後の炉心確認試験では、900回を超える警報が鳴り、8月には炉内中継装置が落下した。運転再開どころか、もう原子炉の機能が喪失しており、廃炉を決断すべきだ」と話した。
海岸での集会後、もんじゅゲート前までデモ行進し、抗議文を手渡した。

重大事故に怒り

午後からは、敦賀市内の屋内会場に移り、「もんじゅを廃炉へ 全国集会」が開催された。参加者数は850人、5月運転再開と8月炉内装置の落下事故に対する不安と怒りの深さを反映した。
福井県民会議の小木曽さんは「95年の事故も、今回の事故も初歩的で基本的な設計ミスからきている。もんじゅ監視委員会と原子力機構との討論会を再開させよう。原子力に依存しない社会をめざそう」と訴えた。
その後、青森(再処理工場)、石川(プルサーマル)、大阪(風向調査)から報告。環境ジャーナリストの鈴木真奈美さんから「高速増殖炉計画は、電力供給、温暖化対策とも破綻しており、世界各国は撤退している」との講演があった。
京大原子炉実験所・元講師の小林圭二さんから「炉内中継装置」の落下事故について発言。
「これまでの調査から、落下の衝撃で装置の途中が破損していることがわかった。一歩まちがえば装置の一部がちぎれ、燃料集合体の上に直接落下する危険があった。そうなると、燃料の破損から放射性物質の漏洩へとつながる恐れもあった。そういう重大な事故だった。今回の事故はもんじゅの中枢・原子炉容器内で、初めておきた重大な事故だ。
原子力機構は、引きぬくための大工事を考えているようだが、その準備だけで数カ月かかるといわれている。試験運転計画の大幅な延期どころか、運転再開じたいに黄信号が点灯した」と話した。
原爆の材料プルトニウムをつくりだす「もんじゅ」を廃炉へ。

3面

破綻した石原都政・石原教育行政
学校・地域の力で終わりに

10日夜、都内で「石原都政・石原教育行政にピリオドを! 12・10集会」がひらかれ、200人が集まった。主催は、12団体(注)で構成する集会実行委員会。
この集会は、「10・23都教委通達」が出た03年に初めて開催し、以降、毎年12月集会としておこなわれてきた。
集会冒頭、主催者は「来年は都知事選がある。来年(12月)は、同じタイトルの集会をしなくてすむように」と、石原打倒を訴えた。
主催者あいさつに続き、「現場からの告発」と題して、3人の教員と1人の特別支援学校保護者から発言があった。(2人の教員の発言を下に紹介)
カンパアピールの後、パネルディスカション「激動の時代! この国の未来と、東京の教育を考える」にうつった。パネリストは上原公子(前国立市長)、金子勝(慶応大学教授)、世取山洋介(新潟大学准教授)、渡辺治(一橋大学名誉教授)の4氏。都立高校の教員がコーディネータをつとめ、約2時間にわたり討議がおこなわれた。

「学校に自由の風を! ネットワーク」、「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟をすすめる会、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会など

10日 東京・豊島区民センター

現場からの告発1 新宿区教員
学校はメチャメチャ 教員はクタクタ

新規採用の教員が自殺
06年、新規採用の教員が自殺においこまれるというとんでもない事件がおきた。新宿区の新規採用のかたで、亡くなったのは6月1日。大学を3月に卒業し、現場に入ってわずか2カ月。
この原因を考えていくと、石原が進めてきた管理体制が見えてきた。
全国的状況でいうと、08年、病気休職者が8500人、そのなかで精神疾患が5400人、過去最高。精神疾患の休職者が10年前と比べて3・15倍、10年間で3倍以上に増えた。それだけ現場にプレッシャーがかかってきている。
東京都の場合、病気休職者が788人、精神疾患がその約70%にあたる540人。それだけ追い込まれている。

過重労働で教員疲弊
指導要領が改定され、授業日数が増え、勤務時間内で仕事がかたづかない。過重労働になってきている。土日出勤をしないと仕事がかたづかない。
60歳前に退職する教員がすごく増えている。義務制(小中学校)で退職者の57%が、定年前退職。
教職員が疲弊している。そういうことが、病気や早期退職につながっている。
主任制が導入され、教員が6段階に分断されている。職場集団が分断され孤立感がでてきている。

管理職のなり手ない
主幹制度(教員だが、管理職の補佐もする)を導入したが、義務制でいうと、約60%の充足率。だから、主幹がいない学校がかなりある。みな、主幹になりたくない。だから今年から都教委は、いままでは試験で論文があったが、今度は校長からの推薦だけでよいとした。面接もなし。それでも、まだ充足してない。
副校長になりたがらない教員も増えている。去年は希望が1・1倍、それが、今年は受験者が1倍をきった。再募集をしているが、まだ足りない。
小学校は校長も足りない。なので、中学校の教頭が小学校の校長に来ている。
制度だけ強引に入れて、もう東京の学校はメチャメチャ。教員は上からしめつけられ、管理職もクタクタになって、現場は疲労している。

現場からの告発2 定時制教員
タイムスパソコン 直轄管理の恐怖政治

定時制つぶしの破綻
定時制高校の入試不合格者が300人にものぼり、社会問題になった(定時制を減らしすぎたため)。それで都教委は、すでに入試が終わっている10校の定時制にたいし、始業式の前日の4月5日に1クラス分30人を追加募集せよと命令した。
しかも、「4年生の2クラスを1クラスに統合しなさい。うかせた担任を新入生の担任にまわしなさい」という前代未聞の手法をつかった。
突然クラスを統合されたあるクラスの生徒は、「どうせ教育委員会は定時制の生徒のことなんか考えていない」と言い放った。彼らの心に与えた傷ははかりしれない。定時制を乱暴につぶしてきた(02年には101校あった都立定時制高校は、現在55校)からこうなった。
今後10年にわたって中学の卒業生が増えるという資料を、都教委は示している。まさに都教委の戦略的破綻だ。
私たちは、この事態を予測し、何年も前から募集再開を含む定時制の募集枠拡大を求めてきた。

タイムスパソコン
都教委の直轄管理下にあるタイムスパソコン(都教委に回線でつながっている)が、教職員のほぼ全員の机上におかれた。
自己申告書、成績処理、出張旅費、こういうものがすべて、いままで紙ベースや普通のパソコン(都教委に回線がつながっていない)でやっていたことが、すべてタイムスパソコンに統合されつつある。
新学期当初は、自己申告書を紙ベースで書いてもOKだった。2学期に追記を紙で出したら、都教委から「紙で出したものは、不提出とみなされる」と通告がきた。
私が属している組合の支部のアンケートでも、「タイムスパソコンは必要ない」という声が7割をしめている。教員をタイムスパソコンで直轄管理していく、この恐怖政治ともいうべき現状を変えていこう。

抵抗をやめない
私は(「日の丸・君が代」強制反対)予防訴訟の原告のひとり。10月26日に高裁で結審した。私も最終陳述にたった。地裁での難波判決につづいて、ぜひ高裁でも勝利をかちとりたい。
10・23通達から7年、今でも職務命令体制はつづいている。しかし、私たちは、異議申し立て、抵抗をやめていない。たたかう。

視点 給食が唯一の食事
子どもの貧困の実態

子どもの貧困について訴えたい。『子どもの貧困白書』で実態を見る。本書は、現代日本の子どもの貧困の実態をデータと事例で明らかにした初めての白書。子どもの貧困白書編集委員会によって刊行された。(明石書店09年9月刊)

教育費が家計の56%

学校に通うための経費はだいたい一定しているので、所得が低いほど家計に占める比率は高くなる。
「小学校以上の子ども全員にかかる在学費用」は、「年収400〜600万円層では33・8%」だが、「年収200〜400万円の層では家計の55・6%」(白書39p)にものぼる。

7人に1人の子が貧困

子どもの貧困率とは、18歳未満の子ども全体の中で何%の子どもが貧困世帯に属しているかという数値。
日本の子どもの貧困率は13・7%(子ども7人に1人)。OECD22カ国中、上から8番目の高さ。
親が、1年未満の契約・内職・家族従業者の場合、子どもの貧困率は、2倍以上の29・05%にはねあがる(同24p)。親の雇用情勢の悪化が子どもの貧困率を押し上げる。
また、「野宿する子ども」のケースがたびたびあることも報告されている(同43ページ)。

若い父親と子の貧困

父親の年齢別に、子どもの貧困率を調べた資料が掲載されている。それによれば、若い父親を持つ子どもの貧困率は01年から04年にかけて強まっている。
04年では「20歳代前半の父親を持つ子どものなんと半数近く(48・15%)が貧困状態」(同23p)というショッキングなデータが出ている。

倍増する就学援助児童

「小中学校では、給食費や修学旅行等の積立金が滞る家庭が増えている。」「06年2月の文部科学省の調査によると、就学援助を受けている子ども数は95年度の77万人から、04年度には、134万人と急増している」(同85p)。95年から04年で、就学援助児童は倍増している。とすると、現在この数字はさらに激しく増加しているだろう。

子どもに自己責任論

「『給食費を滞納すると給食が停止されても止むをえません』という承諾書・誓約書・保証人付の学校給食申込書の提出を保護者に求める教育委員会・学校」が増えてきている(同81p)。「給食が1日で唯一食事らしい食事の子どもが珍しくはない」状態も生まれいる(同81p)。
そして「給食費が払えずおなかをすかした子どもがいても、自己責任として指導できる教員が優秀と見なされる」(同86ページ)という実態が報告されている。

制度が格差を拡大

税制度や社会保障制度によって所得は再配分されるというが、再配分後に逆に子どもの貧困率があがる唯一の国が日本だ。このような国はOECD22カ国で他になく、例えばイギリスは再配分後には半分以下に下がり、韓国も下がっている。
日本の税制度や社会保障制度は、貧富の差をますます拡大させるものとなっている。

労働組合の課題

急速に壊れていっているこの日本社会の中で、社会の現実に即した議論を深めていく必要がある。賃下げ、派遣切り等の労働条件の悪化に対して、それが子どもたちの生活に与える破壊的影響をも、きちんと考えていくあり方が大切だ。(Y)

4面

朝鮮侵略を想定し日米が大演習

米軍と韓国軍が、合同軍事演習を黄海に踏み込んで強行(11/28〜12/1)、続いて、米軍と自衛隊が、日米共同統合演習を、沖縄周辺海域をはじめ日本各地で強行した(12/3〜10)。
形式的には演習といっているが、これは、米・韓・日が一体で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の体制転覆をねらう作戦計画であり、中国を包囲し封じ込める軍事戦略だ。
しかも日本は、従来の枠を越えて、米・韓と一体で参戦するための共同作戦計画の策定に踏み出そうとしている。
政府が、17日、新たな『防衛計画の大綱』を閣議決定したが、そこでいう「基盤的防衛力から動的防衛力へ」の転換とは、日本がこの侵略戦争に踏み出していくことに他ならない。今回の日米演習はその入り口だ。

黄海に空母打撃群が突入

今回の米韓演習で、米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW)とそれを中心とする空母打撃群が、黄海に踏み込んだ。
GWは、艦載機約70機、乗員約5500人。防空を担うイージス艦、海中哨戒を行う潜水艦などをともなって、空母打撃群を編成している。空母打撃群の航空攻撃力は、1日に攻撃可能な目標数が600個。これを16日間続行できる。
この米韓合同軍事演習がおこなわれた黄海は、朝鮮半島西側、平壌など北朝鮮西部が射程に入る位置だ。〔地図参照〕
「米韓軍の本当の狙いは、北朝鮮の長距離砲部隊、空軍基地、首都・平壌、核施設のある寧辺など、北朝鮮西部への攻撃だ。黄海に進出した空母の艦載機が主力。今回は北朝鮮の砲撃で、格好の口実ができた」(米軍筋)

北朝鮮転覆の計画
訓練は、様々な攻撃を想定した海上・空中の防衛、空母による敵地の地表目標攻撃作戦、戦闘中の艦艇への弾薬・燃料などの補給、対潜水艦作戦、核関連物資搬出を阻止する船舶検査など。
米軍は、「作戦計画5026」から「作戦計画5030」までのコード番号がついた《北朝鮮の体制転覆をねらう侵略戦争計画》を5つ策定している。上述の訓練内容からみて、今回の演習は、この一連の作戦計画に沿ったものであることは明らか。
◎5026と5027
「作戦計画5026」は、核施設などを標的とする限定的な先制空爆の作戦計画。「作戦計画5027」は、北朝鮮の体制転覆と占領までを含む全面戦争計画。
演習では、GWを中心とした空母打撃群が、平壌など北朝鮮西部を射程に入れた黄海に踏み込んだ。そこで、空母による敵地の地表目標攻撃作戦の訓練をおこなっている。海上・空中の防衛、補給、対潜水艦作戦などの訓練も含め、これらは、「作戦計画5026」「作戦計画5027」の計画に沿ったものだ。
◎5028
「作戦計画5028」は、有事に至らない偶発的な戦闘を想定した作戦計画。先月発生した、延坪島砲撃戦などがそれだ。今回の演習は、この作戦計画の想定そのものだ。
◎5029
「作戦計画5029」は、北朝鮮の国内で内乱や騒擾が発生したら介入する作戦計画。(現時点では作戦計画の一段階前の概念計画)。中心は核兵器・核物質の確保だ。
今回の演習では、核関連物資の搬出を阻止する船舶検査の訓練を実施したが、これは「作戦計画5029」の一部だ。
◎5030
「作戦計画5030」は、北朝鮮に軍事的・政治的圧力をかけて、内部崩壊を誘引する作戦計画。中心は、米韓軍が演習や偵察飛行で挑発、北朝鮮軍に頻繁に臨戦態勢をとらせ、燃料を浪費させ、消耗をねらうもの。
米韓軍は、今年だけで、北朝鮮周辺で10回の演習を強行。
韓国軍も、今月6日から12日まで、海上射撃訓練(周辺海域29カ所)を実施、続く13日から17日まで再度、同訓練(周辺海域27カ所)をくり返した。延期されている延坪島から黄海に向けた射撃訓練も、「気象などの条件」を考慮しつつ、強行するとしている。
この演習自身が、「作戦計画5030」の発動であり、体制転覆をねらう侵略戦争計画に沿って北朝鮮を追い詰めている。

中国を丸裸に
黄海に米空母打撃群が踏み込んだことは、中国にたいする攻撃でもある。
「黄海に米空母が入れば、中国の国家主権にたいする挑戦」(中国軍)。「(黄海での演習は)北京、天津が米軍の攻撃範囲に」(中国メディア)。「中国の防御系統や行動が丸裸。対中国の包囲網が形成される」(在日中国筋)
中国側がこのように、強く警戒し拒否している海域に、米軍は踏み込んだ。中国を包囲し封じ込める軍事戦略として発動されたのだ。

中国敵視で日米が演習

「今回は陸海空を本格的に統合運用する。米軍との連携も、これまでにないレベルで実戦的」(防衛省筋)。
今回の日米演習では、@「島嶼防衛」、A「ミサイル防衛」、B「対テロ基地警護」などの訓練がおこなわれたが、それはこれまでにないレベルで、北朝鮮・中国への侵略戦争の作戦計画に沿うものだ。

「島嶼防衛」
沖縄周辺海域で、GWなど日米で20隻以上の艦船が展開。沖縄の第31海兵遠征隊と佐世保基地の強襲揚陸艦エセックスなども参加。海自幹部がエセックスに乗り込み、東中国海で海兵隊と強襲上陸訓練をおこなった。
「島嶼防衛」というが、中国が支配する地域に、米軍と自衛隊が上陸侵攻する作戦だ。「釣魚島に照準をあわせた日米演習」(中国メディア)。中国を敵視して、米日が軍事演習をおこなうという点で一線を越えた。
◎戦略爆撃機B52
日米演習にはB52も投入された。B52は、核爆弾や空中発射巡航ミサイルなどを搭載できる。
米空母打撃群が中国支配地域に侵攻する際に、中国側が対艦弾道ミサイルや大型艦で阻止行動にでると想定。これをB52や、F16戦闘機(三沢基地)の航空戦力で爆撃・破壊する作戦だ。航空機は約180機が参加。
◎海上封鎖の突破
さらに、米軍は、東中国海で、機雷を探査・破壊する訓練をおこなった。中国の機雷による海上封鎖を想定し、それを突破して攻め込む訓練だ。
台湾有事などの際に米軍が中国支配地域に侵攻することを想定している。

「ミサイル防衛」
米ミサイル巡洋艦シャイロー、ミサイル駆逐艦フィッツジェラルド、海上自衛隊護衛艦「みょうこう」「くらま」が、日本海を中心に、「ミサイル防衛」(MD)演習を実施。シャイローと「みょうこう」は弾道ミサイルを迎撃するスタンダードミサイル・SM3を搭載。
他方、空自小松基地を拠点に、日本海上空で、自衛隊F15戦闘機と米空軍F16戦闘機(三沢基地)が対空演習。
さらに、沖縄では、嘉手納基地のMD部隊が運用する地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)を、普天間基地、キャンプ・コートニー、キャンプ・シュワブに展開〔右頁の地図参照〕。
自衛隊のパトリオット・ミサイル(PAC2)も、南城市の空自・知念分屯地からうるま市の陸自・勝連分屯地に移動。
「ミサイル防衛」というが、相手のミサイル攻撃能力を封じ込め、一方的に攻撃できるようにするものだ。

「対テロ基地警護」
「テロ」を想定し、各自衛隊基地で警護訓練を大規模に実施した。
実際におこなわれたのは、基地ゲートの突破を図るなどの侵入者に対処する訓練。「テロ」というが、自衛隊が対北朝鮮・対中国の侵略戦争を強行することにたいして、朝鮮・中国・日本の人民が抗議し、阻止行動に出るという想定だ。
自衛隊が、労働者人民に銃を向ける訓練だ。

帝国主義の侵略戦争
マスメディアは、あたかも、釣魚台(=「尖閣諸島」)事件や延坪島砲撃事件が発生したから、米韓・日米が軍事演習を始めたかのように報じている。
しかし事実は逆だ。米韓日が、中国や北朝鮮を攻撃する作戦計画をつくり、それにに沿って軍事演習をくり返し、重圧を加えている。その結果、衝突事件が発生したのだ。
軍事演習から侵略戦争開戦に突入していくのは、帝国主義の常とう手段だ。

日米が「共同対処」計画

「北朝鮮国内の混乱や難民の大量発生などの非常事態への対応策」と称して、日米が外交当局の実務者による政策協議を、年内にも始めるという。
その際、米軍の概念計画「5029」も参考にするという。これは、北朝鮮で内乱や騒擾が発生したら介入するという計画で、核兵器・核物質の確保を中心に、難民の大量発生への対応、朝鮮にいる米国人・日本人の救出ということが中心問題だ。
さらに、この協議を進めながら、日米の軍事関係者も入れた協議にエスカレートさせるかどうかも検討するとしている。
こうした政策協議を始めること自体が、北朝鮮、中国に対する激しい軍事挑発だ。
日本側は、来春の日米首脳会談での共同声明に「北朝鮮の脅威への共同対処」を盛り込むことを狙い、検討中。当面、日米で共同対応策を作り、将来は韓国との意見交換も想定している。

朝鮮半島侵攻ねらう
新たな日米共同作戦計画で、日本は、自衛隊が米軍のみならず、韓国軍とも一体で動き、朝鮮半島で展開することをも狙っている。それは、以下の事実から見て取れる。

・日米演習(12・3〜10)に韓国軍がオブザーバーとして初参加。実質上、日米韓3カ国の軍事行動となった。
・韓国軍との協議のため訪韓した米軍マレン統合参謀本部議長が「米韓演習に日本が参加することを望む」と異例の発言。
・菅首相が、朝鮮危機の際に「拉致被害者を含む邦人救出に、自衛隊の出動を検討」と発言。韓国世論が強く反発。

日本の軍隊が再び朝鮮を侵略しようとしているのだ。

軍部の自己運動

「日米間の政治レベルでの関係は最悪だが、米軍は自衛隊を強く信頼している。日米同盟はMM(軍・軍)関係で支えられている」(森本敏・拓殖大大学院教授)
これは、重大発言だ。沖縄県民の抵抗、労働者人民の怒りと不信の中で、激しい政治危機にあるが、日米の軍事当局者は、政治のことなどお構いなしに戦争計画を進めるという意味だ。官僚や軍部が、政治的な制約を突破して、反動的な自己運動を始めている。
米軍・自衛隊が、朝鮮人民、中国人民に侵略の銃を向けているのだ。日本人民は、このことを絶対に許してはならない。「朝鮮侵略戦争阻止、辺野古新基地建設阻止・普天間基地即時撤去、5・28日米合意撤回、来春日米共同声明粉砕」の行動に立ち上がろう。

日本の艦隊が集結。手前が米原子力空母G・ワシントン(10日)

G・ワシントン艦内の航空司令室で、海自部隊と通信する海自幹部(4日)

沖縄全土にMD展開 沖縄がふたたび戦場に

沖縄では、日米演習で、地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)が、06年に沖縄県内に配備されて以来、初めて沖縄中北部(普天間基地、キャンプ・コートニー、キャンプ・シュワブ)に移送され展開した。
移送は、深夜に幹線道路を通過、自治体や住民に何の通告もなしにおこなわれた。
キャンプ・シュワブではレーダーを設置。空軍のF15やF16、海兵隊のFA18などの戦闘機、海軍のイージス艦、自衛隊との連携を確認。
このパトリオット・ミサイルの展開は、沖縄県民を守るためではなく、米軍基地を守るものだ。

被害続出
沖縄は、日常的に基地被害に見舞われているが、今回の日米演習は、沖縄県民に、一層の被害をもたらした。
◇騒音
嘉手納町では、嘉手納基地近くで、演習中104デシベルを最高に、70デシベル以上の爆音が130回近く記録。(列車が真上を通過する騒音が90デシベル)
◇貨物が遅配
演習のために、沖縄に向かう航空機に遅れが出て、航空貨物が遅延。
「台風で遅れることはあったが、軍事演習では初めて」(ヤマト運輸)
◇軍事一色
うるま市の米海軍ホワイトビーチには、米海軍と海上自衛隊の艦船20隻以上が集結。「沖縄が軍に埋め尽くされている現実を見せつけられた。紛争が起きると海は沖縄のものではなくなる」(住民)
◇射撃音
金武町のキャンプ・ハンセンでは、住宅地に近い基地内の訓練施設から射撃訓練の発砲音。銃を手にした兵士たちの姿が見えた。
◇久志岳に火柱
名護市のキャンプ・シュワブでは、米軍が実弾射撃訓練。「ドーン」という着弾音が響き、標的となった久志岳には炎や白煙が立ち上った。
名護市の自粛要請を無視して訓練は強行された。


5面

本の紹介 『消費税のカラクリ』(斉藤貴男 著)
大企業が儲かる不公平税制

講談社現代新書
10年7月刊
斎藤貴男著『消費税のカラクリ』を読んだ。この本は、6月に菅首相が消費税増税を含む税制改革をぶちあげた直後に発刊された。
冒頭で「本書は消費税論の決定版である」と宣言されている。「税制(消費税)の最も重大な本質を、余すところなく明らかにすることができたからだ」という。
消費税の問題点はいろいろ論じられてきたが、今回、私はこの本を読んで、とくに以下の2つの点に注目した。

@非正規雇用を促進

「消費税の納税義務者は、売上高に消費税率5%を乗じた金額を丸ごと召し上げられているわけではない。税務署に納付するのは、そこから仕入れのために支払った消費税額を差し引いた額になる」。この《仕入れのために支払った消費税額を差し引く》ことを「仕入れ税額控除」という。ただし、正社員に支払う賃金は、所得税法で「給与」とよばれ、この控除の対象外。
ところが、派遣社員を導入した場合はそうならない。たとえば、製造業A社が、派遣会社Bから派遣労働者を迎えた場合、A社は派遣労働者に「給与」は払わない。B社が払う。その金は、A社がB社に支払った派遣代金である。この派遣代金は、法律上は「給与」ではない。帳簿上は物品費などとして処理される。そのため、「仕入れ税額控除」の対象となる。つまり、給与なら控除対象でなく、派遣代金なら控除対象になるということ。
つまり、正社員でなく派遣労働者を使えば、もともとの賃金が安くできるだけでなく、合法的な脱税ができるのだ。
この場合、派遣労働者を派遣した派遣会社(派遣元)の利益に税金がかかる。では、大企業などが、子会社として派遣会社をつくり、そこからの派遣というかたちをとった場合、グループ全体では、結局消費税を払っているから差し引きゼロではないかという疑問もあろう。
ところが、資本金1千万円未満の法人には、「設立後2年間は納税免除」の規定があり、派遣会社の設立と閉鎖を繰り返せば、合法的な抜け道となる。
こうして、ますます派遣労働者の増加に拍車がかかる。

A輸出大手に有利

次に、輸出比率の高い大企業にとって、消費税が有利に働く仕組み。
消費税は国内取引に課税される。では、輸出の場合、どうなるのか。
たとえば、A社がB社から部品を仕入れて、完成品を作り、それを国内で販売すれば、最後の消費者だけが、実質、消費税を払うことになる。
輸出だと、この最終段階の消費者に(日本国内での販売ではないから)消費税がつかない。すると、A社が仕入れ段階でB社に支払った消費税分の回収ができない。そのため、税法上は、この消費税分がA社に還付される。これを「輸出戻し税」という。
もともと、立替払いをしたのだから、戻ってきてもA社は一銭の得にもなっていないのではという疑問が出てくる。著者は、これを「机上の空論」と退ける。
なぜか。ほとんどの場合、B社は下請けであり、A社に逆らえない。そのため、現実はどうなっているかというと、仕入れ段階で、A社は消費税分を値引きさせて、仕入れ単価を設定し、消費税分はB社が負わされているケースが実態だという。
その結果、A社が受け取る「輸出にともなう還付」は、まるまるA社の利益=不労所得になる。
いったい、どれぐらいの額が還付されているのか。08年度の還付総額は、約6兆6700億円にのぼるという。これは、同年度の消費税収16兆9829億円の約40%にあたる。これで法人税も下げろというのだから、あきれるほかはない。

税制全体も概観

本書は、消費税問題だけでなく、税制全体も概観されている。1940年、日本帝国主義が朝鮮・中国侵略戦争をくりひろげているさなか、対米開戦の前年、戦時税制として、有無を言わせぬかたちで源泉徴収が導入された話も出てくる。一読 をお勧めする。(三谷)

6面

石川さん「前進あるのみ」 狭山市民集会
決戦は来春に持ち越し

16日、都内で「狭山事件の再審を求める市民集会―開示勧告から1年〜今こそ全証拠の開示と事実調べを」(狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会主催)がひらかれた。参加者は千人をこえた。

石川一雄さんと早智子さん(16日 日本教育会館)

三者協議の報告されず

昨年、証拠開示の勧告があり、今年5月の三者協議で、不十分とはいえ36点の証拠が開示された。しかし、石川さんの無実を証明する、事件現場にかかわる証拠、殺害現場とされる場所のルミノール検査報告書など3点について、検察は「不見当」と回答し、開示していない。
9月の三者協議では、その回答が12月にもちこされ、今回何らかの回答がなされると見られていた。だから石川さんは「12月が正念場」と、全力で訴えていた。
この日の集会は、前日の三者協議の報告集会という性格だった。
しかし集会では、三者協議でなにが論議されたのか、また開示されたのか、されなかったのかについて、残念ながら報告されなかった。

新証拠を提出

集会では、市民の会事務局長の司会のもと、開会あいさつ、来賓あいさつにつづいて、石川さんと連れ合いの早智子さんが決意表明をおこなった。
前日の三者協議に先立つ14日に弁護団が提出した、〈脅迫状の筆跡と石川さんが書いた上申書の筆跡は異なる〉とする鑑定書について、石川さんは発言の冒頭に述べた。「(逮捕当日の筆跡は)まことに拙い字」であり、「脅迫状」とはまったく違うと、怒りをもってでっち上げを断罪。完全無罪をかち取るまで「前進あるのみ」と烈々と決意を述べた。
また早智子さんは、「足利事件や布川事件の流れの中で勝利を確信した。来年こそ」と、来春のたたかいへの決起を訴えた。
弁護団の報告につづいて、足利事件の菅家利和さん、布川事件の杉山卓男さんと桜井昌司さん、袴田事件の袴田巌さんの姉の秀子さんと「救援する市民の会」の楳田民夫さんが、それぞれのたたかいを報告。検察の証拠隠し・証拠改ざんを弾劾し、石川さんと連帯して、これからもたたかいぬくと熱いアピールをおこなった。

来春3月 第1波へ

決戦は来春に持ち越された。しかし、検察をまちがいなく追い詰めている。このような検察の態度こそが、今日の司法の部落差別の姿なのだ。
岡田裁判長をさらに糺し、検察にたいしてさらなる証拠開示勧告を出させよう。
来年3月に予定される三者協議を2011年第1波闘争として、石川さんの「前進あるのみ」を合言葉に、狭山闘争に決起しよう。

第2期 沖縄意見広告

第1期の意見広告(今年5月15日、琉球新報・沖縄タイムス、同16日、朝日新聞に掲載)
@広告の掲載紙、時期、賛同金の目標
 ・2011年に米国紙と国内紙へ掲載
 ・目標額は2000万円
A賛同金
 個人:1口1000円で1口以上
 団体:1口5000円で1口以上
 振替口座 加入者名:「意見広告」 口座番号:00920-3-281870
Bネット上でも賛同を受付け
C広告掲載の時期、予定原稿及び掲載予定紙は、ホームペイジにてお知らせ

連絡先
○東京連絡先
 東京都中野区中野2-23-1-309 協働センター・アソシエ内
 Tel:03-6382-6537
 Fax:03-6382-6538
○関西連絡先
 大阪市東淀川区淡路3-6-31 協同会館アソシエ内
 Tel:06-6328-5677
 Fax:06-6328-5777
 メールアドレス:okinawaikenkoukoku@berita.jp
 ホームページURL:http://www2.nikkanberita.com/okinawaiken/

発起人・呼びかけ人
 安次富浩(名護・ヘリ基地反対協議会共同代表)
 新崎盛暉(沖縄大学名誉教授)
 伊波洋一(前宜野湾市長) 他多数

人間の尊厳を破壊し自殺を招く内省プログラムに批判
医療観察法廃止で集会

11月28日午後、「医療観察法廃止!」全国集会が都内で開かれ、92人が参加した。

11月28日 東京都・南部労政会館

自殺者が18人に

05年の施行以来、医療観察法による自殺者が18人にのぼると報告された。入院者で3人、通院者で14人、鑑定入院中で1人となった。
法で定められた施行5年後の国会報告が政府からおこなわれたが、自殺者にかんする報告はない。政府は、議論が起きないように、議員への冊子配布だけで終わらそうとしている。
集会では、様々な方向から焦点をあて、著名人を集めて、共同声明運動を進め、巻きかえしを図ろうと提起された。
谷村弁護士から報告を受けた。「拘置され、医療が一番必要なときに、医療が保障されない。医療と福祉の連携を妨げている。鑑定中の身体拘束は法的根拠もなく、やりたい放題だ。精神病院の人権侵害状況は改善されない。観察法は保安処分だ」。

内省プログラムは問題

収容された当事者からの訴えなどがあった。
息子が1年半入院中という女性の訴え。「内省プログラムは問題が多く、何の意味もない。息子は発達障害のため、内省などできない。そのために症状の改善がないとされ、退院ができない」。
会場からは、内省プログラム自体に問題があるという提起がされた。
一般病棟では、「内省」ではなく「内観」と言われている。「親の恩」を考え、「感謝の気持ち」を持つようにさせるという内観療法だ。
観察法病棟での内省プログラムは、妄想が起きる前提を問うていく。直接道徳を問わないが、道徳を実現するために内省させ、内心の自由を奪うものだ。この内省プログラムが自殺を招き、人間の尊厳を破壊している。
集会後、銀座マリオン前で街頭宣伝。全国から参加している「病者」が次ぎつぎとマイクを握り訴えた。(TK)

冬期カンパのお願い

戦争・貧困・排外主義が、人民に襲いかかっています。こういう時代だからこそ、新しい、そして本物の変革の潮流を、私たちの手でつくり出しましょう。
カンパをお願いします。

《カンパ送り先》

◎郵便振替
  口座番号:00970-9-151298
  加入者名:前進社関西支社
◎郵送:〒532-0002
  大阪市淀川区東三国 6-23-16  前進社関西支社