未来・第67号


            未来第67号目次(2010年10月19日発行)

 1面  「日米合意の撤回を」
     名護市議会が決議 15日

     10・10三里塚全国総決起集会発言要旨

     新宿ど真ん中デモ150人

     沖縄知事選勝利カンパをお願いします

 2面  トラクター先頭にデモ 三里塚全国集会

     派遣法の抜本改正へ 大阪でフォーラム

     関西合同労組 暴処法裁判
     検察のストーリーは虚構

 3面  「障害者自立支援法」撤廃 関西で集会
     10/29日比谷1万人へ

     国会行動から全国集会
     医療観察法なくせ

     ユニオンの現場での取り組み

 4〜5面
     11月APEC反対 横浜行動へ
     米帝の対中包囲と輸出攻勢

 6面  石川一雄さんは無実だ
     全ての証拠を開示せよ 狭山事件再審請求

       

「日米合意の撤回を」
名護市議会が決議 15日

15日、名護市議会は、《米軍普天間飛行場「県内移設の日米合意」の撤回を求める決議》および同意見書を、17対9の賛成多数で可決した。
同決議は、5・28日米合意にたいして、以下のように強く弾劾している。
「(5・28日米合意は)県外移設を求める名護市民及び県民の意思に沿うものではなく、頭越しに行われたものであり、民主主義を踏みにじる暴挙として、また沖縄県民を愚弄するものとして到底許されるものではない」。
「沖縄県内には全国の米軍専用施設の約74%が集中しており、今日まで沖縄県民は65年以上もの間、基地負担という犠牲を強いられている。本市においても総面積の約11%を占める軍用地が存在しており、これ以上の基地負担を押し付けられることは、県民への差別的政策にほかならない」。
「市民の生命及び財産を守る立場から、辺野古への移設は容認できない。したがって、政府に対して名護市民、沖縄県民の総意を踏みにじる『県内移設の日米合意』に、激しい怒りを込めて抗議し、その撤回を強く求めるものである」。
決議のあて先は、米大統領、国防長官など。同意見書のあて先は、内閣総理大臣、防衛大臣など。議会代表が意見書をたずさえて上京し、政府に日米合意撤回を直訴することも決定した。
同日、《米海兵隊・垂直離着陸機MV22オスプレイの沖縄配備計画の撤回を求める決議》および意見書も可決した(全会一致)。
米日両政府を、さらに追いつめる沖縄県民の決起だ。この決起に連帯し、沖縄知事選勝利と11月日米首脳会談反対に立ち上がろう。

10・10三里塚全国総決起集会発言要旨

トラクターを先頭にデモ隊が暫定滑走路の誘導路をくぐり、市東さん畑方向へ(10日 成田市内)

〔10・10三里塚全国総決起集会の発言要旨を掲載する。文責は編集委員会。集会報道は2面〕

農民が労働者と国際的にたたかう
萩原 進さん (三里塚芝山連合空港反対同盟事務局次長)

「空港は国策だ」と言われ、それに反逆するものは「国賊だ」という扱いを受けてきた。沖縄的に言うならば、「基地は抑止力なんだ」と、そういう形で国民をだましてきた。
支配者は、自分の延命のためならなりふり構わない。常識では考えられないやり方で攻撃してくる。国益とはなんだ。人民のためじゃないんだと突きつけて、闘いを挑んでいくしかない。
三里塚闘争をこれからどう闘うか。@現地闘争を闘いぬく。裁判闘争も並行してたたかう。A民主党政権打倒を掲げて、労働運動や、あらゆる階層、階級、戦線との連帯を深めていく。B農地強奪、農業つぶし阻止。FTA反対。C沖縄をはじめとする反戦・反基地の闘いとの連帯。沖縄の人たちの声を聞き、学びながら沖縄の人たちとの連帯を勝ち取っていく。本土で渦を作っていく。その旗振りを三里塚でやる。D労農連帯とインターナショナル。全世界の圧倒的な人口は農民だ。そういう意味では、農民階層の闘い、農民の姿というのは過去の残存物ではない。農民が労働者とともに、たたかいを国際的に展開する。動労千葉、関西生コンと連帯してたたかう。
11月5日、東京高裁での現闘本部裁判で、高裁包囲のデモをやる。

農業こそ公共 耕すものに権利あり
市東 孝雄さん (空港敷地内農民)

世の中おかしくなっている。三里塚でもおかしなことが44年続いている。この三里塚で、安全に飛行機を飛ばせる状態がどこにあるのか。成田空港はもう破綻している。
空港は国策事業だというけれど、農業こそ公共だと私は信じている。農地を守り、畑を守ることが公共だ。三里塚ではそれが罪になる。
人間は土を耕し生きてきた。このあたりまえの原点をまもることが、みなさんと連帯し団結をつくり、労働者、基地問題の沖縄につながることになる。
耕すものに権利あり。

辺野古で絶対に勝利する
安次富 浩さん (市東さんの農地取り上げに反対する会・沖縄)

市東さんの農地強奪に対する体を張ったたたかいに敬意を表します。
沖縄は、日米両政府と真っ向対峙して、現在に至っている。日米合意を撤回せよという名護市議会決議を15日に採択することで準備中だ。辺野古から、イラク、アフガニスタンに海兵隊が出撃している。沖縄戦の体験をふまえ、人殺しの軍事政策には加担しないという立場でたたかっている。県知事選に、宜野湾市の伊波市長が私たちの思いを背にして立候補する。
民主党政権は尖閣列島問題をてこにして、宮古、八重山、与那国に自衛隊を配備するといっている。沖縄を中国侵略の出撃基地にするたくらみだ。与那国町議選において定員6人のうち、自衛隊配備反対の町議がはじめて2人誕生した。グアム、韓国、ハワイの民衆とも連携を密にし、この太平洋から軍隊をなくしていこう。
辺野古、普天間で勝ったら、次は嘉手納以南の4つの米軍基地の撤退をかちとっていきたい。辺野古で絶対に勝利する。

新宿ど真ん中デモ 150人

10日、「米軍だけじゃない!自衛隊も沖縄を踏みにじるな!」と、新宿繁華街をアルタ前まで練り歩いた。今回で5回目。数万人の人びとにアピール、いろいろな企画ももり込み効果は絶大。今回はストリートミージュシャンが多数参加。

沖縄知事選勝利カンパをお願いします

沖縄県知事選(11月11日告示、28日投票)が迫っています。立候補を表明している伊波洋一・宜野湾市長が、普天間基地撤去・辺野古新基地建設反対をかかげ、米日両政府と真っ向から対峙しています。沖縄と日本の未来をかけた決戦です。選挙戦勝利のために、多くのカンパをお願いします。

《カンパ送り先》
 ◎郵便振替
   口座番号: 00970-9-151298
   加入者名:前進社関西支社
 ◎郵送
   ¥〒532-0002  大阪市淀川区東三国 6-23-16  前進社関西支社

2面

トラクター先頭にデモ 三里塚全国集会

頭上をジェット機が着陸する直下で、反対集会
(10日 成田市内)

10日、三里塚現地で全国総決起集会がひらかれた。前日までの大雨と、当日も降ったり止んだりの悪天候のなか、1560人が集まった。会場となった成田市東峰の畑は、頭上を大型ジェット機がひっきりなしに着陸する直下だ。
萩原富夫さん、宮本麻子さん、両反対同盟員の司会で集会は始まった。反対同盟・森田恒一さんが開会宣言。
つづいて北原鉱治事務局長が主催者あいさつ。44年にわたる三里塚空港建設は、環境破壊などの次元を越え、日本の将来を沈没させる癌であると喝破。今の支配階級の権力闘争と混迷ぶりも、三里塚闘争が日米安保や戦争政策と対峙してきた結果の破産で、日本はいまや夢が描けない時代になっている。三里塚では、農民の市東孝雄さんを空港の中に囲い込み、生活できないようにしているが、こんな空港は必要ない。労働者・農民・学生が自己の持ち場で展望をもって闘おうと訴えた。

ぶざまな成田空港

基調報告は萩原進事務局次長がおこなった。空港に反対する者を国賊扱いしてきたが、三里塚空港建設はぶざまな破産をとげていると宣言し、勝利にむかって五つの方針を提起した(別掲)。
つづいて特別報告が、動労千葉・田中康宏委員長、沖縄の安次富浩さん、関西実行委員会の永井満さん・山本善偉さんから行われた。
田中委員長は国鉄闘争を訴えた。
沖縄の安次富さんからは、三里塚44年の闘いに敬意が表されるとともに、沖縄闘争の重大な局面が報告された(別掲)。
永井さんと山本さんは、三里塚の闘いが砂川闘争を引きつぎ、北富士や沖縄や全国の反基地・住民闘争とつながり、反戦平和の砦となってきた。今また沖縄の闘いが10万単位の決起となっている。この闘いと繋がり、関西空港の軍事使用阻止と、三里塚での農地取りあげを阻止しようと訴えた。
長期ストライキを闘いぬいている全日本建設運輸連帯労組・関西生コン支部からのメッセージが読み上げられた。

農業破壊に怒り

このあと鈴木謙太郎さんから、父親(鈴木幸司さん)の遺志をつぐという決意と農民アピールがなされ、市東孝雄さんの発言(別掲)、市東さんの農地取りあげに反対する会の発言が続いた。いずれも、この国の農業政策の破産をあばき、空港建設よりも農業のほうが国策ではないのかとの核心をつく発言であった。
さらに反対同盟顧問弁護団、婦人行動隊の鈴木加代子さんからカンパアピールとつづき、部落解放同盟全国連、「障害者」団体など多数の団体からアピールをうけ、最後に集会宣言を確認して、デモに出発した。

未買収地が多数

デモは、幟をたてた反対同盟の4台のトラクターを先頭に、反対同盟、「障害者」団体、関西実行委員会など住民団体が続いた。頭上をジェット機が轟音を立ててひっきりなしに離発着する。未買収地が多数残存しており、空港完成にはほど遠い状態であるのがわかる。市東さんの南台の畑まで、3・5キロのコースを元気よく行進した。

派遣法の抜本改正へ 大阪でフォーラム

派遣労働をめぐるドイツのたたかいの報告は教訓に満ちていた(8日 大阪市内)

8日夜、大阪市内(エルおおさか)で派遣法共同行動フォーラム「今しかない!派遣法抜本改正」がひらかれた。主催は、労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動・大阪。100人が集まった。
冒頭、おおさかユニオンネットワークの垣沼陽輔さんから主催者あいさつがあった。ねじれ国会の中で派遣法改正は厳しい状況にある。派遣業界も巻き返しをしており、予断を許さない局面だ。東京で25日に国会前行動(主催:派遣法の抜本改正をめざす共同行動)と院内集会(主催:日本労働弁護団)が取り組まれる。今日の集会をきっかけにして、なんとしてもこの大阪から、臨時国会での成立に向けてたたかいをつくっていきたいと決意を述べた。
国会議員3人からのメッセージ紹介の後、会場にかけつけた服部良一衆院議員からあいさつがあった。

国際的なたたかい

神戸大学准教授の岩佐卓也さんが「提言 派遣労働の規制に向けて―ドイツから学ぶ」と題する講演を行った。
ドイツも02年に派遣法の大幅な規制緩和が行われ、派遣期間制限が撤廃され、登録型派遣も解禁された。日本と違うのは「みなし」規定があること、均等待遇規定が作られたことである。
しかし、この規定も労働協約を締結すれば均等待遇を適用しなくてもよいという大きな抜け穴がある。これを悪用して御用組合のキリスト教労組は派遣会社と協約を結び、日本の最低賃金よりも低い時給5ユーロ(1ユーロ=110円〜130円)という劣悪な労働条件をつくりだし、多数派のドイツ労働総同盟も同様に派遣会社と労働協約を結び低賃金を強要している。ドイツでは均等待遇は名ばかりで、激しい賃金格差が生まれており正社員賃金の40%にされている。
これに対して労働組合はどのようにたたかっているのか。鉄鋼や電機などを組織しているIG(イーゲー)メタル(金属産業労組)は、派遣先での組織化に力を入れ、「組織なき派遣労働者は無力」「派遣労働を人間的なものに」「同一労働同一賃金」等のスローガンを掲げ、ジーメンス社では派遣による正社員代替禁止を約束させ、賃金は1年目の派遣労働者は正社員の70%、その後75%、16カ月経過後には同一賃金にすることを約束させ、18カ月目からは正社員化を請求する権利(2009年)もかちとっている。BMW社では、正社員との同一賃金を約束させた。これは56%の賃上げに相当する。さらに、下請け労働者にもこれを適用(2008年)させた。
ドイツの労働組合は、労働協約による抜け道をなくし均等待遇の貫徹を強く求めてたたかっている。さらに登録型派遣の禁止も掲げている。ドイツの労働組合も日本と同じような要求だ。日本における派遣法抜本改正のたたかいは、各国の労働者と連帯する国際的な闘いだ。

現場の取り組み

寸劇「法改正?私たちの待遇は?」につづいて、報告「ユニオンの現場での取り組み」がおこなわれた。JMIUダイキン工業支部、派遣パートユニオン・関西、北地域労組はらから、なにわユニオンの4つの労組から報告があった。

10・25国会へ

最後の行動提起は、なにわユニオンの中村研さんが、10・25国会前行動と院内集会に大阪からも多数参加しようと訴えた。(3面に関連記事)

関西合同労組 暴処法裁判
検察のストーリーは虚構

第3回公判は、4日午前10時半から大阪地裁でひらかれた。関西合同労組の組合員・支援者・友人が多数、傍聴にかけつけた。
5月31日の不当逮捕以来、4カ月を超える勾留にもめげず、沼田さんが元気な姿を法廷に現わした。公判参加者は、全員が立ち上がり、大きな拍手で迎えた。
この日は、沼田さんから「脅迫された」とする検察側証人Tが、証言台にたち、検事による尋問がおこなわれた。

遮へいで姿みえず

前回の公判と同じく、この日の公判も遮へい措置がとられた。T証人が入廷してくる入り口から証言台まで全面的に、高さ2mほどのついたてが設置され、証人の姿は沼田さんの席からも、傍聴席からも一切見えない。公開法廷を否定する「密室裁判」に等しい。憲法82条「裁判の公開」に反するものだ。

検事が証人を誘導

T証人が関西合同労組と知り合い、加入した経緯、その後の沼田さんから「脅迫された」とされる過程の尋問を検事がおこなった。あらかじめ検事によって組み立てられたストーリーを復唱させられていることがありありとした証言となった。
検事はありもしない「組合加入3条件」なるものを持ち出して、それがあたかも事実であるかのように証言させようとした。事実でないことは、身につかないもので、いったんは暗記していたであろうT証人は、3つめの条件が言葉に出てこず、絶句。とうとう、検事がみずから「電話が(組合から)かかってきたら出ること、と言われたのでは」と全面誘導するしまつ。弁護人が異議を申し立て、裁判長も検事をたしなめた。

次回は反対尋問

次の公判は、T証人にたいする弁護側からの反対尋問なので、重要な公判となる。警察・検察によって組み立てられた虚構のストーリー、でっちあげを許さず、暴処法適用を粉砕しよう。
裁判所は沼田さんの保釈をただちに認めよ。

3面

「障害者自立支援法」撤廃 関西で集会
10/29 日比谷1万人へ

3日、兵庫県尼崎市内で、「約束違うよ、長妻さん!! やっぱり障害者自立支援法の撤廃をもとめる集い」が行われ、80人が集まった。
昨年の政権交代で民主党政権は「自立支援法の撤廃」を約束し、「障害者」とその家族が半数をしめる「障がい者制度改革推進会議」が発足した。そこで自立支援法にかわる新たな制度の検討を始めているさなか、突然5月に議員立法で自立支援法の「改正案」が出され、成立寸前までいった(本紙59号4面記事参照)。そうした中で、改めて自立支援法の撤廃を求めると同時に、自立支援法にかわってどのような制度が必要なのか、原点に立ち返って考えていくという集会だった。

自立支援法撤廃の集会は毎年秋にひらかれ、今年で5回め(3日 尼崎市内)

便利だが不自由に

最初に、重度の「身体障害者」で、現在は重複「障害者」のネットワークの代表理事をしているSさんから、自身の40年のたたかいが語られた。
昔は車椅子で電車に乗ると言ったら貨物車に乗せられたこと、駅にエレベーターを設置させるために、多くの仲間と大挙して電車に乗る活動を展開したことなどが紹介され、「こういった僕ら『障害者』のたたかいがあったから、今では高齢者や子ども連れの人も便利に移動できるようになった」「声をあげて社会を変えていく、それが僕たちの社会参加。労働だけが社会参加じゃない」と話した。
また、昔は介助の制度が全く不十分で、大学でビラまきして介助者を自分で獲得した。学生の介助者は生活力がなく、僕らが教えた。介助者と対等の関係で、お互いに成長した。今はヘルパーなど制度が拡充して便利になったが、これはできない≠ニか時間はこれだけ≠ニか、制約は厳しい。地域との関係も疎遠になった。便利にはなったが、不自由になった。まるで地域という施設に入れられているようだ。僕たちは便利さを求めてきたのではない、自由を求めてきたんだと、根本的な問題提起がされた。
そうした中で、現存の制度をも活用しながら、行政や制度に頼るのではないかたちでの取り組みをしていると紹介した。

日常の中で共同性を

後半、怒りネット世話人の古賀さんから、自立支援法改悪案の国会攻防報告などがあった。
一方で「障がい者制度改革推進会議」は、よい内容の第1次報告書を出している、他方で福祉を切り捨てる動きが強まっているという、複雑な情況にあって、今が重大な局面である。06年の10・31の1万5千人の結集が政府に「自立支援法見直し」を言わしめたように、今度の10・29が重大だ。5〜6月の息詰まる国会攻防をたたかった「障害者」は、さらに闘いを拡げようとしている。沖縄の怒りや在日の方々の怒りが吹き出す中で、それらと結びついて闘っていこうと、よびかけた。
また、Sさんの提起を受けて、求める方向性について、次のように語った。「障害者」が求めているのは共同性だ、しかしそれは、制度の中には位置づかない。生活の中で主体的につくりあげていくもの。制度がなくても一人ひとりがすぐにでもできる。同時に、その共同性を求めて、共同性を破壊するような社会を変えていくことが必要。お互いに共同性をつくりあげることは、今日からでも実践できるということが重要だ。

自立支援法撤廃へ

10月29日、日比谷に1万人の結集がよびかけられている。「障害者」とともに10・29を成功させ、自立支援法を撤廃させよう。日常の中で「共同性を築く」という問題提起を受け止めよう。(春山武志)

国会行動から全国集会
医療観察法なくせ

9月28日「心神喪失等医療観察法」の廃止を求める全一日行動が行なわれた。「医療観察法をなくす会」などの呼びかけによる。
「医療観察法」は今年施行5年を迎え、法に定められた国会報告と見直しの時期にあたる。今国会で厚労省等からの報告が行われる見込みだ。
全一日行動は、午前8時半からの国会議員会館前の座り込みとビラまきから始まり、昼の衆院第一議員会館での院内集会をはさんで、夜の東京芸術劇場での全国集会まで続いた。
院内集会には国会議員5人、議員秘書7人の参加があった。

院内集会(9月28日 衆院第一議員会館)

1702人が対象、14人が自殺

報告によれば、施行から今年3月までの期間、法の対象となった人は1702人で、入院決定となった人は60%、989人。
08年12月までのスパンで、医療観察法による処遇を終了し同法の対象外となった人は124人。その中には、観察法以前からの精神保健福祉法による入院23人が含まれる。強制入院の可能性が高い。
観察法病棟は入院費が一人年間2000万円以上かかり、全額国費だ。だから、入院費がはるかに安上がりな旧来の精福法による強制入院とするわけだ。この人たちは社会の受け皿がないから退院できず長期入院、すなわち「社会的入院」になっていく可能性が限りなく高い。
さらに死亡による終結となった人が18人もいる。うち、14人は自殺であることが確認されている。
また、2009年度の調査では、入院者の自殺未遂が23人いることが明らかになっている。現在までに入院者の自殺者は3人確認されている。保安病棟では自殺を防ぐために道具となるものは取り上げられており、そのなかで未遂23人、既遂3人という数字はただ事ではない。
また強制通院の決定を受けた者は今年3月までに297人だが、その中から11人の自殺が確認されている。これは4%という高率だ。

「手厚い医療」というウソ

民主党国会議員で「観察法」問題を中心的に取り上げてきた人物が、「観察法病棟では手厚い医療が行われている」と発言したが、とんでもない認識だ。
入院処遇を受けてきた人からの聞き取りが発刊されているが、それを読めば、そうした認識はとてもありえない。夜の全国集会では「保安処分病棟に反対する有志連絡会」の代表が発言し、このパンフレット(*)の中身を紹介、多くの共感を呼んだ。
(GT)

*『保安病棟からの生還〜人生を返せ〜 
   心神喪失等医療観察法病棟収容者は語る』
 400円 2010年8月発行
 編集 保安処分病棟に反対する有志連絡会
 郵便振替 00960-1-140519 加入者名 共生舎

ユニオンの現場での取り組み

〔8日、派遣法共同行動フォーラム(記事2面)での労働者の発言。要約・文責:編集委員会〕

期間工の総入れ替えと
たたかうダイキン工業の労働者2人の発言

ダイキン工業(本社・大阪市、空調メーカー)堺製作所は、偽装請負を摘発されたため、労働局の是正指導を受け入れ有期間社員(=期間工)として直接雇用とした。雇用期限の2年半が経過した今年8月末、一斉に雇い止めした。有期間社員203人を8月末で雇い止めにする一方で、新規に200人以上の有期間社員を採用した。さらに摂津工場、滋賀工場でも今後300人から500人近くの契約期間満了者が続出する。雇い止めされた期間社員のうち、4人の労働者が雇い止め(=事実上の解雇)撤回と損害賠償を求めて9月1日に大阪地裁に提訴した。
:今回の派遣法「改正案」では派遣先が不法行為を行った場合、「その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申し込みをしたものとみなす」となっている。例えば1年契約で働いていて3ヶ月目で不法行為が明らかになったときは残り9ヶ月のみ直接雇用したものとみなすというのである。ダイキン工業は、こうした抜け道だらけの派遣法「改正案」を見越して、残りの契約期間が満了すれば雇い止めできる前例を作ろうとしている。〕

ほか、3人の労働者の発言から

管理栄養士のCさんは、国・法務省・神戸刑務所による不当労働行為、偽装請負とたたかっている。
大阪市内の印刷会社で一般事務として派遣され働いていたDさんは、派遣先で契約違反を質したところ、派遣元から更新拒否(=事実上の解雇)された。現在、派遣先での正社員雇用を求めて闘っている。
派遣労働者のEさんは、組合の団交で産前産後休暇と育児休暇を取得した。派遣で働いている人たちが使い捨てにされている状況の改善を訴えた。

4面

11月APEC反対 横浜行動へ
米帝の対中包囲と輸出攻勢

T 強硬策にでた日本

釣魚台=「尖閣諸島」問題をめぐり、「中国の強硬な外交に、日本が屈した」という論調が、マスコミを覆っている。
事実は、まったく逆だ。そもそも、釣魚台=「尖閣諸島」は日本の領土ではない。(本紙前号4〜5面参照)従来の日中関係を強硬に踏みこえたのは日本帝国主義の側だ。

日中関係の転換
従来の日中関係とは、72年日中共同声明と78年日中平和友好条約の線だ。ここで日中両政府は、《釣魚台=「尖閣諸島」問題は棚上げ》に合意している。その後一貫して、双方とも政治的には主張するが、外交的には《棚上げ》の線で問題を処理してきた。04年、中国の活動家が釣魚台に上陸するということがあったが、日本政府の対応は《棚上げ》の線を越えなかった。
ところが、今回、日本政府は、「国内法にのっとって粛々と処理する」(前原)と宣言、中国船船長の逮捕・起訴の方針を固めた。これは、日本側から、一線を踏みこえ、政府として、中国と対決する政策に踏み出したことを意味する。

対米追随・対中強硬
その後、揺れ戻しもあり、事態は一旦、収束に向かったが、日本政府のとった方針の画歴史的な意味は変わらない。前原が青年将校的に突っ走った面も指摘できるし、その拙劣さを言うこともできるが、事態の本質はそういうところにあるのではない。
@鳩山から菅に移行する中で、対米追随・対中強硬の勢力が、対米相対化の勢力を追い落として、政権中枢にすわった。この背後に、アメリカの強力な圧力があったことはいうまでもない。
Aオバマ政権が、09年11月の「太平洋国家」宣言をもって、新たな東アジア政策をうちだし、巻き返しとそのための対中国包囲の政策を展開している。このことが、日本の対中強硬策への転換を規定した。
B日本は、アメリカの新たな東アジア政策を突きつけられ、アメリカの要求に沿って、日本の東アジア政策の修正・再編を余儀なくされた。
そして、アメリカの展開する対中国包囲への参戦に踏み出した。それが今回の事態だ。

U オバマ「太平洋国家」宣言

オバマは、09年11月アジア歴訪の際、東京で演説をおこなった。その中で、「アメリカは太平洋国家だ」と宣言し、東アジアにおけるアメリカの覇権の危機にたいし、巻き返しの政策をうちだした。(骨子右下別掲)。

米覇権後退と巻き返し

オバマ東京演説(09年11月14日)の骨子

@東アジアにおける巻き返しを宣言。
A中国にたいして、アメリカ排除や単独行動は許さないと突きつけ、アメリカの覇権の下に入ることを要求。
B輸出を一層重視するとし、そのために、世界中の市場解放を要求。輸出こそ、雇用創出戦略だと主張。
C日米同盟については、・辺野古新基地建設を迅速にやること、・東アジアにおけるアメリカの政策に完全に協力することの2点を日本に突きつけた。

その背景には、東アジアにおけるアメリカの覇権の後退という事実がある。
90年代、日本が、独自のアジア政策と日米安保の相対化の動きをみせた。このとき、アメリカは、朝鮮半島危機と日米安保再定義を日本に突きつけ、APEC(アジア太平洋経済協力)での主導権奪取にでてきた。
ブッシュ(子)の下でアメリカは、外交の軸を「テロとの闘い」に移し、イラク侵略戦争にのめり込んだ。その間、アジアでは、日本、中国、ASEAN(東南アジア諸国連合)などが、東アジア域内統合の動きを進めた。とくに、中国が大きな存在となってきた。
さらに、08年以降の世界経済危機の中で、各国が輸出に活路を求め、東アジアに殺到した。
アメリカは、危機感に駆られて再び巻き返しに動きはじめた。オバマの「太平洋国家」宣言は、こういう流れの中でうちだされた。

対中国包囲
オバマ東京演説での中国にかんする部分は、以下のようだ。
・中国が、アメリカを排除してアジアを勢力圏にしたり、単独で行動したりすることを、アメリカは許さない。
・アメリカは、中国にたいして、アメリカの国益で対処し、実利を求める。アメリカの景気回復のために、中国は役立ってもらう。中国だけの利益を追求することは許さない。
・中国が協力的ならば、アメリカは、中国封じ込めはしない。戦略的・経済的に対話する。
・アメリカ的価値観で、中国の制度を問題にすることは、やめない。
以上のように、アメリカが、軍事・外交・経済の全面で、中国を包囲し、統制下に戻そうという意志をむき出しにした、強硬なものだ。
オバマ東京演説と軌を一にして、アメリカは、対中国の包囲を強めている。(右下別掲)

市場開放と輸出攻勢
オバマの東京演説は、アジア市場をこじ開け、市場を奪い返し、輸出攻勢をかけ、景

アメリカの中国包囲

・1月台湾への武器売却決定
・2月、「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」で、中国の動きを「接近阻止・地域拒否能力だ」として、米軍前方展開プレゼンスの増大へ
・7月および8月、米韓が韓国天安艦沈没事件を口実に黄海などで合同軍事演習
・7月ASEANフォーラムで中国が南中国海を「核心的利益」と主張したことにたいし、米は「航行の自由」原則で応酬
・8月、「中国の軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書」(米国防総省)
・10月ASEAN+8国防相会議において、米が南中国海の紛争問題で中国を牽制
・10月、中国の反体制作家劉氏にノーベル平和賞
・11月、米海軍と海自が、釣魚台侵攻作戦を模した日米軍事演習
・来年1月、米陸軍・海兵隊と陸自による日米指揮所演習で、南西諸島防衛訓練

気回復と雇用創出をはかるとし、アメリカのグローバル企業の利益ををむき出しにしている。
・アメリカは、太平洋国家として、アジアにおける地域統合に全面的に参加する。
・東アジアの経済が、アメリカへの輸出に依存しているのは問題だ。
・アメリカは、世界にたいする輸出を一層重視する。これが、アメリカの雇用創出の戦略だ。
・いままで世界にたいして、アメリカが市場を開放してきた。これからは、世界の市場を開放し、アメリカの輸出を増やす。

FTAAPとTPP
アジア太平洋地域で進んでいる経済統合の枠組み
オバマの東アジアにたいする貿易・投資政策の柱は、FTAAP(アジア太平洋自由貿易協定)推進であり、その布石としてのTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)だ。(右図参照)
◇FTAAP
FTAAPを主唱してきたバーグステン(米シンクタンク所長)は、「(ASEAN+3やASEAN+6で進んだFTA構築の動きは)アジア・ブロックにむかうもの」と警戒・非難。この動きを牽制するために、アメリカがFTAAPを、APECの場に持ち込んだとしている。
FTAAPの特徴は、まず、東アジアという枠組みで進んでいる動きにたいして、「アジア太平洋」という枠組みをねじ込むということがある。
さらに、APECが非拘束的であるのにたいして、FTAAPは、締約国を法的に拘束する。APEC以上に自由化に重心をおき、先進国が、新興国・後進国にたいして、市場開放をより強く要求するものになっている。
◇TPP
TPPは、オバマの09年11月の東京演説を機に、押し出されてきた。
TPPも、アメリカの主導性が強い。100%自由化と自由化度も高い。中国、インド、日本にとって厳しい。
ASEAN+3やASEAN+6の動きを牽制することが、アメリカの狙いだ。
オバマは、11月APECに、以上のような方針で日本を屈服させ、中国と対決しようとしている。

通貨戦争しかける
ここにきて、「通貨安競争」の問題が急浮上している。アメリカは、中国などを、「為替介入で自国通貨の上昇を抑えている」と非難しているが、実際は、アメリカが輸出競争力を高めるために、金融緩和でドル下落を推進しているのだ。
「米経済は異例な不確かさにある」(バーナンキFRB議長)という中で、金融政策も財政政策も手詰まり。残された手段が輸出拡大。そのためになりふりかまわず通貨戦争に踏み出している。

V 「経済外交」かかげた前原

釣魚台=「尖閣諸島」問題で強硬方針を主導した前原が外相となった。
前原は、APECを意識して、外国特派員協会講演(5日)と日米財界人会議スピーチ(7日)をおこなった。
2つの前原演説は、アメリカの新たな東アジア政策を突きつけられた日本が、アメリカの要求に沿って、日本の東アジア政策を修正・再編することを、内外に明らかにするものであった。(骨子別掲)

「東アジア共同体」構想からの軌道修正
かつて鳩山が「東アジア共同体」構想を掲げたが、これは鳩山自身の発案ではない。この10年の間、東アジアで進んだ事態、ASEAN+3やASEAN+6で進んだF

2つの前原演説(10月5日/7日)の骨子

@「経済外交を外交の基本にすえる」とした。「経済外交」とは、グローバル企業のための利益獲得競争と輸出攻勢だ。
AFTA/EPAの立ち遅れは、新自由主義改革の不徹底が原因だとして、グローバル企業をさらに支援し、労働者人民をさらに犠牲にする方向を示す。
B「経済外交の前提は安全保障」であるとして、権益確保のために、戦争発動を当然視。さらに、「日米同盟は、アジア太平洋地域の安定と繁栄を支える共有財産」だとして、アメリカのアジアでの巻き返しに日本を組み込んで、侵略と戦争を共同で遂行する。
C日米同盟の深化については、
(1)日米の自由貿易体制の整備
(2)対中国包囲への全面参加
(3)アメリカと一体の国際貢献
――アメリカの戦略にどこまでもしがみつき、アメリカの威を借りて日本の対外戦略を展開する、これ以上ない対米追随を明確にした。

TA構築の動きを反映したものに過ぎない。
この動きを見たアメリカは、中国と日本が連携し、アメリカ排除を狙うものだと警戒した。
小泉改革にたいする抵抗と反乱に押し上げられて政権についた鳩山・小沢らは、小泉の急進的な改革路線にたいして漸進的中間的路線をかかげるとともに、安保政策やアジア政策では、対米相対化の傾向を示した。
これにたいするアメリカの反応は激甚だった。これに力を得た日本の支配階級内部の対米追随勢力は、マスコミや官僚を総動員して小沢潰しに走った。
2つの演説で前原は、「私は、東アジア共同体構想はアメリカを排除するものではないといったが、(もっといえば)アメリカを含むものだ。(いや)日本とアメリカの自由な貿易体制を整えていくことが同盟の深化だ」と、苦しい弁明と軌道修正を表明している。
そして、オバマが強く要求するTPPについて、菅が所信表明でTPPに触れた上で、前原は「TPPに踏み込めるのかどうかが試金石だ」「TPPがアジア太平洋地域の経済統合の重要な枠組み」「APECまでに日本の基本方針を決める」とまで決意表明して見せた。
これは、日本経団連が「2010年APEC議長国 日本の責任」(6月)で描いていた道筋とも違う。日本経団連は、日本もTPPに参加するが、TPPと並行して、ASEAN+3、ASEAN+6でのFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)を追求していた(下表参照)。APECを前にして、軌道修正を迫られたのだ。

日本経団連が描いているアジア太平洋地域での経済統合の道筋
 ※AFTA=ASEAN自由貿易圏

利益獲得競争と輸出攻勢
2つの演説で前原は、「日本が今なすべきことは、経済を成長させることに尽きる」と述べ、「経済外交を外交の基本にすえる」とうちだした。
「成長」とは、トヨタやパナソニックなどのグローバル企業の利益確保だ。アメリカをはじめ各国経済が一段と落ち込み、財政出動も金融緩和も効果が薄れる中で、「成長」のために各国は、競い合って輸出に走るしかない。
「経済外交」とは、グローバル企業のための利益獲得競争と輸出攻勢だ。国が乗り出して、グローバル企業を支援するという。具体的には、 ・FTA/EPA推進、・資源・食料外交、・技術・インフラ輸出 ということをうちだした。

農業を犠牲に
韓国とEUのFTA正式署名が、大きく報じられている。韓国・EUのFTAで、家電や自動車など、年2500億円規模の輸出が韓国に奪われる(ジェトロ・アジア経済研究所の試算)と、日本のグローバル企業が悲鳴をあげている。
FTA/EPA交渉では、農業市場開放問題が大きな問題になる。
韓国は、大統領が企業経営者出身の李明博で、サムスン電子や現代自動車などの韓国のグローバル企業の利益を優先し、国内農民の反発を力で抑え込んで、輸入農産品にたいする関税を撤廃し、FTAを推進している。
日本の場合でも、農産物で高関税なのは、コメ、麦、でんぷん、牛肉、乳製品など一部産品だけ。農産物の平均関税率は、自民党政権時代の輸入自由化により、相当低くなっている。
そこへ日本がTPPに参加し、FTAAPを締結すれば、アメリカ、カナダ、中国という農産物輸出国が加わり、関税が完全撤廃され、農水省試算で、日本のコメは90%減、小麦99%減、牛肉79%減、豚肉70%減など、壊滅的な打撃となる。
自国の農民を犠牲にして、グローバル企業の利益をはかることを競い合っているのだ。
そのうえ、日本は食料外交と称して、アジアから食料の収奪を狙っている。

アジアを開発の犠牲に
日本は、「官民連携」で、海外のインフラ整備事業への進出に着手している。01年に凍結を決めたJICA(国際協力機構)の海外投融資業務の再開をすすめ、ODA(政府開発援助)の一環として、後進国政府に円借款を行い、水道、鉄道、電力、原発などのインフラ事業を、日本企業が受注するという仕組みだ。
グローバル企業が、後進国を食い物にし、ライフラインを支配し、乱開発をくり広げるというわけだ。
とりわけ、アジア各国への原子力発電の売り込みに躍起だ。被曝労働者を生みだし、処理不可能な放射性廃棄物を蓄積させ、原発事故による人命への影響、深刻な環境破壊の危険性をもたらす原発で、もうけようとしているのだ。

不安定雇用の拡大
日本のグローバル企業の進出によりアジア全域で、弱肉強食の市場原理がまかり通ることになる。
日本では、中小の製造業が成り立たなくなり、賃下げ、労働条件の悪化、失業、不安定雇用の拡大など、下に向かって熾烈な争いが展開される。非正規雇用労働者の増加、野宿者の増加に拍車がかかる。
またアジアにおいても、製造コストの削減圧力がかかり、企業が安い賃金労働者を求めて工場移転を繰り広げ、無権利で過酷な労働条件で労働者を使い捨てにする事態が展開される。

「自由化」反対
「自由化でもうけるのは多国籍企業だけ。輸出する側の農民も、輸入する側の農民も苦しめられる」(新潟の農民)
11月横浜で、APEC首脳会合が開催される。APECは、米日が、互いに自由化を競い合い、権益を奪い合う場だ。
そこでいう自由化とは、労働者の権利保護・生活防衛のための規制、安全や衛生上の規制、零細産業や農業の保護、乱開発や環境破壊を防止する規制、悪徳商法や闇金融などの規制を全部取り払うという意味だ。
グローバル企業の収益確保のために、搾取・収奪を自由化し、市場競争を激化させ、富の偏在と格差拡大をもたらし、雇用を破壊し、環境破壊と乱開発、農業破壊と食料収奪がくり返される。犠牲にされるのは、どこの国でも、労働者、先住民、農民、女性、子どもだ。
しかもその権益確保のために、沖縄に基地を押しつけ、日米同盟を発動し、中国を包囲し、アジアの反乱を叩きつぶすというのだ。
農業破壊・貧困・戦争をもたらすAPECに反対しよう。

W 11月 日米首脳会談反対

11月13・14日のAPEC首脳会合の際に、日米首脳会談がおこなわれる。ただし菅政権が喧伝している「日米同盟深化」宣言は見送られるという。

アメリカの要求
オバマは、09年東京演説で、「日米同盟の深化」に言及したが、述べているのは、・辺野古新基地建設を迅速に履行する、・東アジアにおけるアメリカの戦略に協力せよ―この2点だ。
05年10月「日米同盟: 未来のための変革と再編」で合意した内容を、《さっさと履行しろ》《合意の枠を越えるな》ということだ。いままでにもまして、このことを日本に迫っている。

覇権国の台頭阻止
「いかなる覇権国、あるいは覇権的国家連合の台頭も阻止する」(「東アジア戦略報告」1995年)。これがアメリカの一貫したアジアにたいする態度だ。
その点で、アメリカは、自国の権益を脅かす覇権国として、日本以上に、中国の存在に危機感を抱いている。
日米同盟は、中国の包囲に日本を動員するものだ。
同時に、アメリカは、日本が日米同盟の枠を越えて、ひとり歩きすることを許さない。とくに、日中関係が進展して、アメリカのコントロールを離れたり、逆に、日中関係が緊張しすぎて、アメリカが本意でない形で軍事介入を余儀なくされないようにしている。
アメリカは、中国市場をめぐる競争で、日本より優位に立つために、中国との緊張を激化させつつ、日本をはじき飛ばそうとする。アメリカは、中国と敵対しつつも交渉し、米国企業を中国市場で儲けさせる体制を維持している。
アメリカは、対中国の緊張をつくり出すことで、日米同盟の維持、沖縄と日本における米軍基地の存在を日本に飲ませようとする。
日本の支配階級の側も、その圧力に乗じて、沖縄を犠牲にする。

これ以上ない対米追随
2つの前原演説で、「日米同盟深化」について、・日米の自由貿易体制の整備、・対中国包囲への全面参加、・アメリカと一体の国際貢献―この3点を述べている。
アメリカの戦略にどこまでもしがみつき、アメリカの威を借りて日本の対外戦略を展開するという点で、これ以上ない対米追随を明確にした。
また、「新安保懇報告」(8月)や「2010年版防衛白書」(9月)にも示されように、アメリカの対中国包囲に参戦し、その一環として「南西諸島防衛」に力をいれるということだ。

沖縄が破綻点
「日米同盟深化」を掲げた日本は、これ以上ない対米追随を明確にしているが、普天間基地問題と辺野古新基地建設問題については、何の打開策も示し得ていない。
米日が、その権益確保のために、日米同盟を発動し、中国を包囲し、アジアの反乱を叩きつぶすというのだが、それは、沖縄に基地を押しつけることで成り立っている。しかし沖縄は、そういう基地のための犠牲になることを拒否すると宣言している。
沖縄県民のたたかいに連帯しよう。アジア太平洋の人民、中国人民、沖縄と日本の労働者人民の連帯で、米日帝国主義の侵略と戦争を阻止しよう。
【中国の体制の評価と動向の分析は、いまひとつの大きなテーマだが、この小論では論及していない】

農民がAPECに怒りの抗議行動
日韓の農民が、「農産物輸入自由化ゆるすな!」とデモ。写真前列右端が、韓国から参加した全国農民総連盟のイ・チャハンさん(16日 新潟市内 APEC食料安全保障担当大臣会合への対抗市民行動)

6面

石川一雄さんは無実だ
すべての証拠を開示せよ 狭山事件再審請求

寺尾判決から36年

1974年10月31日、機動隊の放水車と盾が周囲を埋め尽くす東京高裁で、寺尾裁判長は、無実の石川一雄さんに無期懲役判決を下した。この日、高裁を包囲したわれわれは、無念にも石川さんを奪還することができなかった。
77年8月に上告棄却されながらも、石川さんは、高裁・寺尾判決との闘いを一身に背負い、1963年5月のでっちあげ逮捕から1994年12月の仮釈放まで31年7カ月の獄中生活を闘い抜き、ついに昨年12月、東京高裁・門野博裁判長(当時)による8項目の証拠開示勧告をかちとった。
今年5月、勧告された証拠の一部分だけが開示された。石川さんの無実を示す証拠は、検察が今なお隠しつづけている。狭山弁護団は、9月に行われた第4回三者(裁判所、検察、弁護団)協議において、非開示証拠についての釈明を求めたが、検察の回答は次回12月の三者協議に持ち越された。
石川さんは、12月に向かって証拠の全面開示を訴え、「国民的闘争陣形」を呼びかけている。今こそ、74年寺尾判決を乗り越え、石川さんのよびかけにこたえよう。

国家権力の差別犯罪

1963年、埼玉県狭山市で発生した女子高生誘拐殺人事件(狭山事件)は、警察が犯人を取り逃がすという大失態により、警察庁長官が辞任に追い込まれるという政治問題に発展した。威信回復のために犯人逮捕を至上命題としながら、容疑者の自殺という事態に追い詰められた国家権力は、被差別部落に見込み捜査を集中。その中から無実の石川一雄さんをでっちあげ逮捕し、死刑においこむことで事態の収拾を図った。
部落への見込み捜査そのものが「犯人はよそもの(部落民)に違いない」という地域住民の差別意識を煽りたてた。警察の大失態に対する当初の住民の不信は、捜査への全面協力へと一気に塗り替えられていった。そして、石川さんが逮捕されるや否や、マスコミによって「部落は悪の温床」という差別キャンペーンが巻き起こされた。部落差別による孤立無縁の中で、石川さんは24時間睡眠をとることも許されず、「やったと言わなければ兄さんを逮捕する」と責め立てられ、虚偽の自白に追い込まれていった。家族を思い、無実の罪を背負った石川さんの胸中はいかばかりであったか。
警察は、この虚偽の自白に沿って万年筆などの証拠をねつ造し、自白と矛盾する客観的証拠を隠ぺい。一審・浦和地裁は、わずか半年で死刑判決を下した。
この時、部落解放同盟埼玉県連の野本氏ら一部の人びとが警察の差別捜査に抗議の声をあげたが、われわれはそれを受け止めてたたかうことができなかった。

一貫した差別裁判

この恐るべき権力犯罪に対して、1964年の二審冒頭、石川さんは無実の叫びをあげた。これにこたえ、全国部落解放研究会の青年らは、1969年11月、浦和地裁を実力で占拠・糾弾し、二審判決を目前にした74年9月、「60年安保以来空前」と言われる11万人集会が東京・日比谷公園でひらかれた
しかし高裁・寺尾は、前任の井波裁判長が決定した弁護側証人尋問を取り消し、ひとつの証拠調べも行わずに有罪判決(無期懲役)を下した。虚偽の自白を擁護し、それを盾に証拠調べを一切拒否する、この狭山差別裁判の一貫した手口が、現下の三者協議においても貫かれようとしている。

なぜ開示を命令しない
昨年、勧告を出した門野裁判官(現在は退官)自身は「再審事件でも、こんにちの公判前整理手続きが行われていれば開示されたであろう証拠は、開示されてしかるべきだ」「今回整備された証拠開示制度は、検察官側と弁護人側の証拠収集能力についての決定的な格差があることを前提として・・・格差を是正し、裁判の公正を図り、えん罪を防止することを究極の目的としている」(原田國男判事退官記念論文集所中・抜粋要約)と述べている。
だが、「整備された証拠開示ルール制度」とはどのようなものか。それは現実の狭山再審請求において守られているのか。
一例として他の事件の判例をあげてみよう。最高裁第三小法廷決定(07年12月25日)は、東京高裁の「取り調べメモ等は『犯罪捜査規範』により警察官に作成・保存が義務づけられている以上、検察官がメモの存否を明らかにしようとしない場合には、裁判所としてはこれが存在することを前提とせざるを得ず、開示の必要性が認められる証拠にあたる」との決定を支持し、「証拠開示命令の対象となる証拠は、検察官が現に保管している証拠に限られず、捜査の過程で作成・入手した書面等である」として、開示を拒否する検察の抗告を棄却、取り調べメモの開示を命じた。
つまり、証拠開示命令の範囲は捜査の過程で作成された「本来あるべき証拠」の一切であり、検察が「ない」と言えばまかりとおるものではない。裁判所には開示を命令する権限が与えられているのだ。判例から言っても、狭山事件での検察の証拠隠しは許されない。もしそれがまかり通るならば、開示を命令しない裁判官の意図的なサボタージュというほかない。
そもそも、門野が勧告した証拠はほんの一部でしかない。とくに証拠リストが開示されていないことは、開示請求そのものに困難を強いている。リストの開示を抜きに「格差の是正」も何もないのだ。

検察の証拠隠し
検察の証拠隠しは理不尽きわまりない。
特に、「殺害現場とされる雑木林で血液反応は出なかった」という元鑑識員の証言(1984年)により存在が明らかになった血液反応報告書は、「殺害現場」がでっちあげであることを示すものとして、石川さんが26年間開示を求めてきたものだ。
門野は「『血液反応報告書が存在しない』ことの合理的な説明を行え」との勧告を出したが、検察は説明を回避するためにのみ、「存在しない」という回答を「見あたらない」に変更した。こんなペテンが許されるのか。
さらに検察は、石川さんが自白させられて以降の録音テープだけを開示し、一カ月にもわたって否認していた当時のテープは隠している。これは5月の三者協議で、裁判所の勧告なしに行われたものだ。検察は、証拠隠しを居直り、客観的な証拠調べを阻止するために、再び、強要された「自白」を有罪の決め手としてつきつけてきた。石川さんを拷問にかけ自白においやったおぞましい権力犯罪を記録した否認時のテープ、この非開示こそ差別裁判の根幹をなしている。

10・31狭山行動へ

かつて日本共産党は「石川さんはクロかシロかわからない」「裁判に差別性などない」と言いなし、狭山闘争の分断と破壊に明け暮れた。今や安田派も「狭山裁判は(差別裁判ではなく)階級裁判だ」「三者協議路線粉砕」と叫んでいる。共通するのは、自ら引き起こした差別事件を居直ることを通して、狭山闘争への敵対を深めていったことだ。部落差別を支柱とする日本帝国主義への屈服・荷担に他ならない。
石川さんと部落大衆は、こうした敵対を突き抜け、寺尾判決の重圧を乗り越えて、狭山再審の実現へ、新たな闘いに起ちあがっている。広島差別事件の自己批判を出発点として、石川さんと部落大衆に学び、狭山再審へ、ともにたちあがろう。部落解放同盟全国連合会の呼びかける集会をはじめとして、各地の10・31寺尾判決36カ年行動に参加しよう。12月三者協議における証拠の全面開示に向かって、差別裁判に対する煮えたぎる怒り、徹底糾弾の闘いを東京高裁・高検に叩きつけていこう。(NN)