関西・沖縄県人会が一同に 辺野古反対で団結
1日、大阪大正区で、「普天間飛行場の辺野古移設に反対する関西沖縄県人会・郷友会の集い」が開催された。
大阪沖縄県人会連合会、沖縄県人会兵庫県本部、京都沖縄県人会、奈良沖縄県人会、近畿八重山郷友会、関西宮古郷友会、関西今帰仁村人会、関西地区読谷郷友会の各代表が壇上にならんだ。親睦団体である県人会が、「普天間飛行場の辺野古移設に反対」の一点で団結し、行動するという画期的な集会となった。
写真上:新里さんのお話は、沖縄の政治家のスケールの大きさを感じさせた。写真下:壇上にならぶ県人会・郷友会。発言は大阪沖縄県人会連合会会長・嘉手川重義さん(いずれも1日 大正区民ホール) |
党派こえる団結
沖縄県議で4・25大会実行委事務局長の新里米吉さんが講演した。
今年2月、沖縄県議会で、「普天間飛行場の国外・県外移設を求める意見書」を、一人の退場もない文字通りの全会一致で可決し、4月25日の沖縄県民大会が、県議会主催でおこなわれた。そこに至る過程で、沖縄県民の思いが、党派をこえた団結をつくりだしていった様子を、新里さんはその動きの中心にいた立場から、感動的に報告した。
新里さんは、本土の労働者人民にむかって、本当の連帯とは何かという問いを発した。たとえば5・15平和行進にくることで終わりにしていないか。自分の地元・地域で議論してほしい。沖縄に基地を押しつけることで成り立っている安保の問題を、これでいいのかと論議することこそ、本当の連帯だと訴えた。
ふるさと沖縄への思いを胸に声援を送る。参加人数554人、会場カンパ24万円 |
ふるさと沖縄への思い
各県人会からは、ウチナンチュの誇りをそこまで傷つけるのかと民主党政権に怒り、島ぐるみで立ち上がるふるさと沖縄へ思いを寄せて、基地のない平和な沖縄のために行動するという発言がなされた。
この集会は、本土の労働者人民の心を揺さぶり、「本土の4・25」の展望をしめす集会となった。
関西の県人会の動きは、やがて東京に波及し、全国の在本土沖縄県民をうごかすうねりになっていくだろう。
飛行差し止め棄却 普天間爆音訴訟
「悔しい。我慢しろというのか」「金が欲しいんじゃない。静かな生活を取り戻したいだけだ」 判決にたいし、原告・住民の怒りが渦巻いた。
米軍・普天間基地の周辺住民が、国を相手に、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めなどをもとめた提訴。その控訴審判決が7月29日、福岡高裁那覇支部であった。
判決は、基地の殺人的爆音を違法と認定、「世界一危険な飛行場」とも認めた一方で、飛行差し止め請求は棄却し、違法状態にたいする具体的な解決策を示さなかった。
原告団長の島田善次さんは、「独立国の日本に、米軍基地の管理権がない。憲法ではなく安保条約が『国体』になっている矛盾を強く感じる」と批判した。
「世界一危険」と認定したながら放置することは許されない。
11月沖縄知事選が焦点に
報道によれば、「8月末としていた辺野古新基地建設の最終案発表を、日米両政府は、11月沖縄県知事選への影響を配慮し、12月以降に先送りする」という。
この意味は、ひとつは、5・28日米合意で辺野古を明記したものの、沖縄県民の怒りの前に、新基地建設はゆきづまっているということだ。
いまひとつは、沖縄県知事選(11月28日投開票)で、事態の打開をはかろうとしていることだ。埋め立て許認可権は知事にある。基地容認派を当選させ、それを「民意」として、工事に突入しようしているのだ。
日米両政府は、知事選に、あらゆる不正と暴力、アメとムチを投入してくるだろう。
98年知事選では、自民党政権は、基地反対の大田知事を落とすために、沖縄県への予算支出を締め上げて「県政不況」を演出、大手広告代理店の企画で失業率「9・6%」の数字を大書きしたポスターを張り巡らした。大規模な世論誘導作戦だ。当時の内部事情を知る鈴木宗男の証言によれば、官房機密費だけでも3億円が投入されたという。
名護市議選も重大
建設候補地とされている名護市では、反対派が市長となり、防衛省は、米軍再編交付金の交付を先延ばしし、対象の継続事業が立ち往生する事態がおこっている。
基地容認の仲井真知事は、名護市議選(9月12日投開票)で、基地容認・推進の候補の応援にうごいている。名護市議会の定数は27、現在の勢力関係は、稲嶺与党12、野党12、中間派3。基地容認派は、ここで過半数をとることで、稲嶺市政の転覆をねらうとともに、知事選へのテコにしようとしている。
知事選へたたかい開始
7月26日、県知事選にむけて、沖縄の社民党、共産党、社大党が選考委員会をひらき、統一候補の「基本姿勢」を決めた。「普天間基地の早期閉鎖・返還、海兵隊撤退、県内移設断念、日米共同発表撤回を政府に求めます」など5項目。
統一候補には伊波洋一宜野湾市長が前向きな意向を示している。伊波市長は、普天間基地や米軍再編の実態やペテンを暴き、米日の支配から自立・自決した沖縄を構想し、行動している。
勝機はある。名護市議選、沖縄県知事選に勝ちぬこう。
本土にとわれるもの
沖縄県民は、「沖縄に基地を押しつけるな。本土にもって帰れ」と突きつけている。 われわれは、これを正面から受け止めているか。本土の反戦運動が、基地を沖縄に押しつけていることに無自覚な上になりたっていないか。それが本土の運動の大きな限界をなしている。この痛苦な現実から出発しよう。
11月には、APECにオバマが来日し、日米首脳会談が予定されている。これにたいして、本土の人民が、沖縄に連帯したたたかいを作り出せるかどうか。このたたかいが知事選への大きな連帯になることは間違いない。ただちにたたかいを開始しよう。
グアム移転ゆきづまり
在沖海兵隊グアム移転計画のゆきづまりが報じられている。
・米議会の3つの委員会が、相次いで、移転計画にかんする予算を、最大75%削減を決定。
・米海軍の統合グアム計画室が、7月27日公表の報告書で、急激な人口増加に対応できるインフラがグアムに整備されていないとして、計画の3年延期を提示。
総人口約17万人のグアムに、新たに米軍と工事関係者8万人が押し寄せる。インフラの破綻は必至。グアム人民の反発が強まっている。
沖縄では、県民のたたかいによって辺野古新基地建設が阻止され続けているが、グアムでも、新基地建設計画の行き詰まりがあらわになった。
米軍再編自体が破綻の危機にある。これはチャンスだ。もちろん普天間への居座りも許さない。日米合意を白紙にせよ。グアムと辺野古への新基地計画を中止せよ。移転経費を凍結せよ。普天間基地を即時撤去せよ。
2面
戦後初の海外恒久基地も
民主党政権下ですすむ侵略派兵
ソマリア派兵を延長
海賊対処の名目で、ソマリア沖アデン湾に派兵されている自衛隊の派兵期限切れ(7月23日)を前に、政府は16日、安全保障会議と閣議で、派兵期間の1年延長を決めた。
現地では、海上自衛隊の護衛艦「むらさめ」「ゆうぎり」の2艦とP3C対潜哨戒機2機、海自・陸自部隊の約570人が展開中。
さらに、航空自衛隊の第1輸送航空隊(愛知県小牧市)が、大型輸送機C130を使用して、日本とジブチの間を運行している。
この軍事行動の対象は、ソマリア沖のみならず、イラク、イランをもカバーする広大な地域となっており、P3C対潜哨戒機が収集した情報は、すべて米軍に提供されている。
アデン湾での活動が、他国との事実上の共同軍事作戦になっているのみならず、米軍とは文字通りの共同作戦になっているのだ。
自衛隊が海外に恒久基地
ソマリア沖派兵の自衛隊は、ジブチ国際空港滑走路の南側にある米軍基地のなかに居候している。
ソマリア派兵の無期限化をねらう日本は、現地で自衛隊基地建設にのりだした。自衛隊の海外派兵だけでも憲法破壊の事態だが、さらに海外基地を自衛隊が持つというのだ。
ジブチ国際空港の北西に12ヘクタールの土地を確保(ジブチ政府から賃借)。近く着工し、来年春ごろには完成予定という。それにあわせて、派兵部隊も増員し、約600人に増やす計画だ。日本政府は「基地ではなく活動拠点」とごまかしているが、海外のメディアはそろって「日本軍が初の海外基地を建設」と報道している。
ジブチにはアメリカとフランスが海軍基地を持っているが、日本は3番目となる。アフリカでの日本軍基地建設は近代日本はじまっていらいのこと。第二次大戦後、日本が初めて海外に持つ基地となる。また、この基地は、米軍のいう「不安定の弧」の最先端に位置する。
ソマリア沖に補給艦も
さらに、海自補給艦をソマリア沖に派兵する策動を開始した。インド洋でアフガニスタン侵略戦争をおこなっている各国艦船に海自補給艦が燃料を無料で洋上補給していたが、それとおなじことをソマリア沖でやろうというのだ。NATOからの要請などを口実としているが、アデン湾の軍事的制圧に自衛隊がさらにふみこむものだ。
これにより、日本は、アデン湾で護衛艦と補給艦による海上制圧行動、空からはP3Cによる活動、ジブチに基地建設、そこに海自と陸自が駐屯するという3軍の恒常的派兵、および米軍や他国軍との共同作戦体制にはいる。
現行の海賊対処法(海賊対処を口実にすれば地球上のどこにでも軍隊を派兵できるとする法)では、補給艦の派兵は想定していないため、政府は秋の臨時国会に、新法案か海賊対処法の改悪案を提出するとしている。上程を許すな。
ハイチ派兵
1月12日に発生したハイチ大地震への災害援助と称し、日本政府は自衛隊を2月から派兵している。これは断じて災害援助ではない。
ハイチは、04年に反大統領派による武装反乱が起き、米帝がアリスティド大統領を拉致し、国外追放した。その後、国連安保理決議に基づき暫定国際部隊(MIF。米、仏、など)が、乗り込み、さらにそれを継承するかたちで、国連ハイチ安定化ミッション
空自輸送機C130Hから、ハイチの首都ポルトープランスに降り立つ自衛隊員(2月5日) |
今も内戦が継続しているハイチに、日本政府はPKO法の「参加5原則」でうたわれている「紛争当事者間の停戦合意」がないまま自衛隊派兵を強行した。軍事力による介入であり、米軍の軍事支配を助けるものだ。
貨物検査法の施行
5月に成立した貨物検査法が7月4日に施行された。
これは、朝鮮民主主義人民共和国に出入りする船舶を対象に、日本が一方的に日本領海内のみならず公海上で臨検できるとする戦争挑発法だ。
日本がいかなる法律をふりかざそうとも、公海上での他国船舶に、日本の国内法が適用できるわけがない。そのできもしないことを軍事力を行使してでもやろうというのだから、これが戦争挑発、軍事的威嚇でなくてなんであろう。
この法には、自衛隊が出動することは明記されていないが、それは法案成立時に連立与党にいた社民党に配慮したもの。政府は、自衛隊うんぬんの文言があろうとなかろうと、自衛隊は自衛隊法82条(海上警備行動)にもとづき、必要とあれば出動すると明言している。実際には、海上保安庁と自衛隊が共同作戦として実施することになる。
米韓演習に初参加
米韓が7月25日から4日間、日本海で朝鮮民主主義人民共和国を標的とした大軍事演習「不屈の意思」を強行した。米韓の陸海空軍と海兵隊が約8000人、イージス艦、潜水艦など艦艇約20隻、航空機約200機が参加。以降も、韓国や、黄海を含む周辺海域で連続的に挑発的な演習を繰り広げるとし、これがその第一弾となる。
この米韓軍事演習に、史上初めて自衛隊がオブザーバーというかたちで4人参加した。オブザーバーだから、憲法解釈で禁じられている集団的自衛権行使にはあたらないと政府は開き直った。
海自が多国間訓練
6月23日から8月1日までハワイ沖でおこなわれた環太平洋合同演習(リムパック2010)で、海上自衛隊は「各国海軍の合同部隊による多国間訓練」に参加。
リムパックは、1971年からほぼ1年おきに開催され、海自は80年から参加しているが、「多国間訓練」への参加は史上初。
赤星・海上幕僚長は「特定の国や地域を対象とした訓練ではないので、集団的自衛権の行使には抵触しない」と発言。
南中国海で事実上の日米軍事演習
昨年、鳩山首相(当時)がうちだした友愛ボート構想。その第1弾として、海上自衛隊の輸送艦(強襲揚陸艦)「くにさき(8900トン)」が、米国主導のパシフィックパートナーシップ(PP)に参加した。5月23日に呉を出航、7月15日に帰国。
PPは、07年から東アジア地域で米軍が毎年おこなっているもので、米軍艦船を軸に各国政府、軍、関係機関、NGOが一体となって医療活動、文化活動をおこなうというもので、実態は米軍・アジア各国政府・民間による準軍事活動。
海自は、これまで医官や歯科医官を1人ずつ派遣した程度。今回は大型輸送艦(強襲揚陸艦)が初参加。
中国紙は、「人道支援や現地住民との交流という旗印の下、海自は南海(南中国海)で、(米軍と)軍事演習を実施する《夢》を実現させた」と論評。
非核3原則の見直し
菅首相の私的諮問機関である新安保防衛懇の報告書案で、非核3原則の見直しが明記された。「一方的に米国の手を縛ること(「持ち込ませず」)だけを事前に原則として決めておくことは、必ずしも賢明ではない」として、これまでの実態(自由に持ち込んでいた)を追認するかたちで、公然と認めるべきだと言いはじめた。
武器輸出を推進
日本経団連が7月13日、武器輸出3原則の緩和を求める提言を発表した。
くわえて、26日に明らかになった「新安保防衛懇」報告書案でも「武器輸出3原則の見直し」が明記されている。この報告書案は、民主党政権下で初となる防衛計画の大綱のたたき台となるもの。
さらに政府は「見直し」をまたず、例外を作り実質突破を狙いだした。日米両国が共同開発中の次世代型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)を武器輸出3原則から例外的にはずし、第三国への供与を認める方向で調整中。官房長官談話ひとつで実施にふみきるという。
インドへ核技術の輸出
日本政府は、核技術・機材をインドへ輸出することをねらい、「日印原子力協定」締結
P3C機上からアデン湾の洋上を監視する海上自衛隊員(3月20日) |
日本政府は朝鮮民主主義人民共和国にたいして、核不拡散条約(NPT)や、国際原子力機関(IAEA)をダシにして、攻め立ててきた。当のインドは核兵器を保有し、NPTにも加盟しておらず、軍用施設へのIAEA査察を拒否しているが、日本政府は、そのことはおくびにも出さない。
民主党政権による帝国主義外交・通商と軍事大国化をうちやぶろう。
三里塚 現闘本部裁判 控訴審はじまる
天神峰現闘本部裁判の控訴審が、7月23日始まった。
早朝から、東京高裁一帯で、三里塚芝山連合空港反対同盟と支援の仲間がビラ配布と宣伝活動。午前10時には傍聴券をもとめて列ができた。
控訴審の初弁論では、反対同盟・北原事務局長、萩原進事務局次長が、現闘本部建設の経緯・事実関係や背景を明らかにし、千葉地裁・仲戸川裁判長の一審判決を「結論先にありきのずさんな判決」と厳しく批判、適正な手続きと全面的な検証をもとめた。
弁護団は、一審判決を全面的に批判する控訴理由書の核心点について展開した。
なお成田空港会社(NAA)は、一審で認められなかった現闘本部建物撤去の「仮執行付き」を、控訴審でもとめている。
高裁は、NAAの反証やその他の準備書面の提出をもとめ、次回公判を11月5日に指定して裁判は終了した。
次回公判とその過程は、全面的な検証をめぐって、高裁との厳しい攻防になる。早期結審の策動をゆるさず、同盟・弁護団・支援が一体となってたたかおう。
NAA(成田空港会社)が暴挙
市東さん農地にフェンス
7月26日、市東さんと反対同盟が耕作権裁判に参加している最中に、NAAは、第3誘導路の着工を発表、その日に、市東さんの農地をフェンスで囲いこむという暴挙をおこなった。
これにたいする緊急の反撃が、7月31日、現地でたたかわれた(上写真)。
三里塚闘争は、市東さんの農地を守るたたかいを焦点に、いよいよ重要な局面に入った。
夏秋の攻防に勝利し、10・10全国闘争に全国から結集しよう。
フェンスを指差し「これ以上形を変えさせない。廃港まで持っていく」と緊急闘争で力強く発言する市東さん(7月31日 成田市内) |
3面
8・11 世界同時水曜デモin大阪
ソウル930回目に連帯
「慰安婦」問題の解決を訴え
「『私は今83才です。数えの13才で連れて行かれてから、70年の歳月が経ちました。どんなにつらい、どんなに永い70年だったか・・・』 慰安所で性病をうつされ、子宮を切り取られてしまったキルウォノクさんは、今、糖尿病でインシュリン注射を打ちながらも世界を回って、『慰安婦』問題の解決を訴えておられます・・・」
これは、8・11世界同時水曜デモin大阪への参加を呼びかけるビラの冒頭部分だ。
日本帝国主義が、朝鮮・中国・アジアで侵略戦争と植民地支配をくりひろげ、その中で無数の蛮行をひきおこしたが、日本軍「慰安婦」制度は、その中でも、もっとも許しがたい、人間性を蹂躙した戦争犯罪だ。ナチスの「ガス室」と並ぶものだ。
被害者の告発
被害者は、戦後長らくその被害をうちあけることすらできなかった。91年、金学順さんの衝撃の訴えから、ようやく被害者は重い口をひらき始めた。
被害者の証言と数多くの動かしがたい事実の前に、日本政府は、93年河野官房長官談話で「おわびと反省の気持ち」を述べたが、国家責任と国家賠償を拒否し、「国民基金」で決着を図ろうと画策した。
しかし多くの被害者はそれを拒否し、あくまでも国家責任を問いつづけた。国連やILOなどで何度も日本政府を指弾する報告書や勧告が出され、2000年の女性国際戦犯法廷では天皇ヒロヒトに有罪の判決が下された。
だが、日本政府はそうした事実すら隠蔽し、開き直り、むしろ教科書から「慰安婦」の記述さえ抹殺し、マスコミも裁判所もそれに追随した。
しかし被害者と支援団体はたたかいを強め、アメリカ下院をはじめ世界各国の議会で、「日本軍が女性に性奴隷制を強制したことについて、公的に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れるべき」との決議を採択させてきた。そして、「今こそ解決のとき」として、たたかいを呼びかけている。
4つのとりくみ
民主党は、野党時代に、社民党や共産党とともに、解決をもとめる立法を何度も提出してきた。政権を取った今こそ、それを実現する責務がある。被害者と支援団体は、民主党の裏切りをゆるさず、「今こそ解決せよ」とせまるたたかいをくりひろげている。
1つは、全国の地方議会での意見書採択の運動。08年3月の宝塚市を皮切りに、すでに30の地方議会で意見書・決議が採択されている。
とりわけ沖縄では、読谷村議会をはじめすでに5つの市町村議会で意見書が採択されている。基地撤去に向けて島ぐるみで日米帝国主義とたたかう沖縄が、日本軍「慰安婦」問題の解決に向けて全力でとりくんでいることの思いと重さを、われわれは噛みしめてたたかわねばならない。
2つは、緊急120万署名運動。8月15日を最終集約として国会への提出が準備されている。
3つは、全国各地での日本軍「慰安婦」被害者を招いた証言集会の開催。
4つは、関西各地で開催されている水曜デモ。
これら4つのとりくみは相互にむすびあい、地域運動の高揚と全国的な運動の結集をつくりだしてきている。
妨害はねのけ
在特会が、各地の証言集会や意見書を採択した自治体におしかけ、中心になった議員に脅迫をくりかえしている。大阪・梅田の水曜デモには、警察と在特会が連携して妨害している。この妨害にたいして一歩も引かず、たたかいが進められている。
8月11日、この日はソウルの日本大使館前で、930回目の水曜デモが開催され、全世界同時水曜デモがおこなわれる。これと連帯する大阪の水曜デモが呼びかけられている。ぜひ参加しよう。
医療観察法廃止へ全国集会 京都
7月25日、京都府部落解放センターで、「『ともに地域で暮らしたい』心神喪失者等医療観察法に反対する全国の集いin京都」がひらかれた。全国各地から約200人が参加した。観察法なくす会など4団体の主催だ。
この全国集会は、関西の「精神障害者」や精神医療従事者が中心になって準備を進めてきた。会場の手配からチラシの準備、参加の呼びかけなど「精神障害者」が担った部分は大きい。呼びかけにこたえて、全国各地から「精神障害者」や労働者などが参加。当初予想を大きく上回る参加者数となった。
無期限に拘束
集会は「精神障害者」による寸劇やライブをはさみ、「精神障害者」、精神科医、医療労働者や弁護士などが発言した。
「再犯予測という予測不可能な要件で、無期限に拘束できる制度だ」「重大な犯罪をした人が対象といいながら全治5日の傷害事件も対象となっている」「『精神障害者』は危険で何をするか分からない者だという偏見を煽り、差別を助長している」「最近では推進派は、保安処分で何が悪いかと開き直っている」「日弁連が一部の部会の意見だけで、反対派から賛成派になってしまった」などの発言があった。
廃止のための共闘を
保安処分病棟に反対する有志連絡会からは18人が参加。
その代表の発言。「観察法のもとでの自殺者が判明しているだけで14人に上り、推進側が『重厚な医療を施すから保安処分ではない』などと言っているのは全くの虚構だ。最初の入院患者の自殺事件について、病院と厚労省の責任を追及してきた。最近、観察法病棟に収容されていた人から有志連に連絡があり、2年間の入院中に苦しさから自殺未遂を繰り返したこと、退院しても最長5年間監視の下に置かれている苦しさを訴えられ、その聞き取りを一冊のパンフレット(『保安病棟からの生還〜人生を返せ〜心神喪失等医療観察法病棟収容者は語る』)にまとめた。また、この集会は極めて幅の広い結集で行われている。法の廃止のためには好き嫌いではない共闘が必要だ」と訴えた。
パンフレットなどは68冊販売された。(GT)
演壇には主催の仲間が描いたデコレ(7月25日 京都市内) |
地域・職場からユニオン運動を
関西合同労組 定期大会
6月27日、関西合同労組第17回定期大会が開催された。
冒頭、被災地雇用と生活要求者組合、在日フォーラム、国労熊本闘争団などからあいさつをうけた。
活発な議論で団結をかためた関西合同労組第17回定期大会(6月27日 尼崎市内) |
不安定雇用の仲間と
総括提案では、年度末に組合独自の派遣村をたたかい、12人の相談者、6人の生活保護申請があったこと、派遣法抜本改正のたたかいとともに、非正規雇用労働者の組織化の重要性が訴えられた。
10春闘では、解雇争議の解決や、下請け労働者を組織し、組織された労働者が組織拡大したケース、現役で働く執行委員の活躍、孤立のなかで苦闘する1人分会の前進などの報告があった。大阪支部の躍進、青年部の取り組みが報告された。
情勢議案では、政権交代の問題、貧困と非正規雇用増大の問題にふれて、労働運動・合同労組の運動の再生こそが、社会のゆがみを正す大きな力となることが強調された。
方針議案では、秋に新入組合員を対象とした研修会を行うことが提案された。また、各地域に自立的なユニオンをつくり、各ユニオンが、地域・職場に根ざした柔軟な組織を目指し、そのために、組織的あり方を、不安定雇用労働者の現状にあわせていくことが提案された。
仲間と交流の場を
討議の場では、代議員から、「非正規雇用労働者が寄り合え、気軽に相談できるカフェ的なたまり場をつくって欲しい」との意見があった。
年配組合員からは、「若いとき、サークルに入ってダンスやハイキングをやり、そこで知り合って結婚した。仕事が終わって集まる場所があった。みんなそこへ行く。次はこれをやろうと決まっていく。そういう場があれば、組合も発展していく」と提案があり、それをめぐって議論になった。
執行部から、「港合同の温泉や落語もそういう場をつくるためと聞いている。兵庫支部でのミニデイサービスや企業組合も同じ趣旨。交流会を積極的に開催している。予算をつくって投入していく」と答弁があった。
そのほか低賃金労働者の組合員を考慮して、組合費を若干下げる提案がおこなわれ採択された。
地域・職場からユニオン(合同労組)運動を巻きおこしていこう。(労働者通信員I)
4面
新自由主義による国家改造
民主党「地域主権改革」批判が急務
春山 武志(関西「障害者」解放委員会)
民主党の進める「地域主権改革」が、「障害者自立支援法」撤廃をもとめる運動の中で重要課題と指摘されている。すでに政府与党などに要望書を提出するなどの動きもおこっている。これについて、私たちは、認識も武装も遅れている。
地域主権改革の問題は、福祉政策にとどまらず、教育をはじめ、生活に直結するあらゆる分野にかかわっている。また、本稿では充分検討ができないが、国の統治機構の再編にかかわる大問題だ。研究と批判が急務である。
本稿では、その概要を、「障害者」運動の問題意識から検討してみたい。
T.一丁目一番地
「地域主権の確立は鳩山政権の一丁目一番地だ。自民党政権でできなかった改革の実現に努力してほしい」(鳩山首相昨年10月6日)
民主党は、政権の戦略的課題として地域主権改革をかかげている。
昨年11月、内閣府に「地域主権戦略会議」(以下、戦略会議)を設置、12月には「地方分権改革推進計画」を閣議決定、今年6月22日、「地域主権戦略大綱」(以下、戦略大綱)を閣議決定。
また通常国会で、3月に、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(以下、一括法案)および「国と地方の協議の場に関する法律案」「地方自治法の一部改正法案」が提出され、継続審議となっている(参議院は通過)。
地域主権改革の旗振り役の原口(総務相・地域主権推進特命相)作成の「地域主権改革の工程表」によると、戦略大綱策定までがフェーズT、今後2013年夏までをフェーズUとし、「国の形そのものをかえる」としている。
橋下・上田・神野
戦略会議の陣容をみただけでも、その狙いと性格がみてとれる。
戦略会議の議長は鳩山、首相交代後は菅。委員は原口、仙谷、平野、藤井の民主党議員にくわえて、大阪府知事・橋下、埼玉県知事・上田、関西学院大教授・神野など。
橋下は、周知のように、公務員攻撃や朝鮮学校攻撃の急先鋒で、関西州を主唱。上田は、「従軍慰安婦などいなかった」と公言する極右反動。神野は、「福祉はNPOやボランティアに」を持論とする新自由主義者。こういう連中によって推進されている。
U.むき出しの弱肉強食の論理
小泉改革を踏襲
もともと、自公政権が「地方分権改革」を推進してきた。小泉政権下で、01年、地方分権改革推進会議が発足。安倍政権下で、06年、地方分権改革推進法が成立。翌07年、内閣府に地方分権改革推進委員会が発足。
それが、昨年の政権交代で、地域主権戦略会議にとってかわった。
地域主権戦略会議は、自公政権時代の地方分権改革の流れを踏襲している。前述の一括法案も、自公政権時代に検討されてきたものを踏まえて出されている。
主権・分権のまやかし
そもそも地方分権改革、地域主権改革とは何か。
一般には、《国に集中している権限や財源を地方(市町村・県)に移譲し、国の関与を減らして、住民の生活や福祉にかかわることは、自治体が自らの判断でできるようにすること》などと言われている。
しかし、「分権」や「主権」という唱い文句にだまされてはいけない。政府と財界が検討している内容は、端的に言って次のようなものだ。
《国は、グローバル企業が国際競争にかちぬく観点から、その役割を国防や外交、金融に集中する。それ以外の労働者人民の生活・福祉などについては、国は責任をもたない。それらは地方自治体にゆだねるので、必要なら労働者人民の自己責任・自己負担でやってほしい》ということだ。
「国民の自立」
戦略会議・第1回会合で、平野(内閣官房長官・当時)は、「中央集権の統治機構は非常に高コスト。自立した国、地方、国民であって欲しい。国と地方自治体が最低限しなければならない部分は何か。国民の自立を前提として施策を打っていく」と発言している。
「国民の自立」とは、《国民は、国の世話になるな。一人で勝手に生きて行け。それができない者は死ね》という考え方だ。地方分権改革、地域主権改革は、この考え方に貫かれている。
憲法25条で規定された生存権を、国が保証する責任があるということを、完全に放棄している。
自民党以上
小泉改革は、まず、資本の活動にたいする規制緩和で、報酬や投機で何億円もの収益を手にする者と、大量の不安定雇用労働者、ワーキングプアの存在という格差社会をつくりだした。
さらに、小泉の「三位一体の改革」は、地方に一定の権限や財源を譲渡しながら、それ以上に補助金、交付金を大幅にカットし、毎年2200億円の社会保障予算を削るということをやった。
「地方分権改革」「地域主権改革」は、それをもっと巨大な規模でおこなうものだ。しかも単なる量的な拡大ではない。戦後憲法下の制度や価値観を解体し、むき出しの弱肉強食の論理に置き換える。新自由主義の思想による体制変革だ。
自民党政権でもできなかったことを、民主党政権がやろうとしている。
V.福祉・生活を切り捨て
6月22日閣議決定された戦略大綱は、10項目からなる。@地域主権改革の全体像、A義務付け・枠付けの見直しと条例制定権の拡大、B基礎自治体への権限委譲、C国の出先機関の廃止、Dひも付き補助金の一括交付金化、E地方税財源の充実確保、F直轄事業負担金の廃止、G地方政府基本法の制定(地方自治法の見直し)、H自治体間連携・道州制、I緑の分権改革の推進。
@で理念や工程が述べられ、A〜Iで主な課題を述べている。主な課題の中でも、「A義務付け・枠付けの見直し」と「Dひも付き補助金の一括交付金化」が柱になっている。
1 ツケは住民に
@で、地域主権改革の理念として、「住民に身近な行政は、地方公共団体が自主的・・・に・・・担う」「地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組む」と、労働者人民の生活や福祉にたいする国の責任はいっさいふれられず、先にも指摘した「国民の自立」という考え方がうち出されている。
また、「おのずと地方公共団体間で行政サービスに差異が生じてくる」「地方公共団体の首長や議会の議員を選ぶ住民の判断と責任は極めて重大」などという。「間違ったリーダーを選べば、そのツケは、そのリーダーを選んだ地域の人にくる」(原口 戦略会議第1回会合)と自業自得を説き、福祉が削減されるのも、高負担を強いられるのも、財政が破綻するのも、「選ぶ住民の判断と責任」に転嫁している。
2 最低基準の切り下げ
「A義務付け・枠付けの見直し」とは、法令による義務付け・枠付けがあって、自治体が条例で自主的に定める余地を認めていないものの一部を見直し、自治体の裁量にゆだねるものだ。施設などの設置基準を規制緩和して自治体の勝手にさせるというこだ。
これは、すでに自公政権時代に詳細な検討がなされ、継続審議となった一括法案の中で、先行的に法案化されている。
具体的には、福祉関係では、老人ホームや「知的障害児」施設、「障害者」福祉サービスなどの関係施設・サービスの設備・人員・運営などの基準を、・(国が定めて自治体が)「従うべき基準」、・「標準」(事情があれば国の基準と多少違ってもいい)、・「参酌すべき基準」(充分検討すれば、地方独自の基準にできる)と3種類に分けるとしている(たとえば、入居施設における「居室定員4人以下」といった基準は・とされる)。
省令制定を義務づけられていた厚労大臣にとっては、「最低基準」制定義務から解放される。もともと法律ではなく省令でもって「最低基準」を定めてきたこと自体が問題だが、戦略大綱では、この省令による「最低基準」を削除することで、国は、ナショナルミニマム(最低限生活保障)の責任を放棄できる。
労働者人民の生活・福祉を保障するため、法令によって全国共通の最低基準や規制が設けられてきたが、それが廃止され、その多くが地方自治体の判断にゆだねられる。
地方自治体においては、すでに、徹底したリストラ、人員削減が押しつけられているが、これを機に、条例で基準を切り下げ、専門職の削減、有料化、施設整備や事業の縮小、民営化が促進されることは疑いない。そのために、「標準」「参酌すべき基準」が活用されることは明らかだ。
3 「一括交付金」のワナ
例えば、福祉分野で「障害者」福祉関連と高齢者福祉関連がまとめて交付されるという具合だ。そうなった場合、その裁量は自治体にゆだねられる。しかも、巨額の財政赤字を抱える自治体では、赤字解消が優先される。そういう中で、「障害者」と高齢者が、予算の取り合いをさせられるということがおこる。
あるいは、「障害者」福祉のどこに重点をおくかは自治体の自由裁量になる。そうすると、「身体」「知的」「精神」の各「障害者」間でも分断がひきおこされる。
また、自治体間格差の拡大も必定だ。
4 道州制と一体
道州制については、戦略大綱では、「検討も射程に入れていく」という表現にとどまっているが、財界が強く求めている道州制へ向かうことは明らかだ。
道州制とは、制度的には、現在の都道府県を廃止し、全国を10程度の新たな広域自治体=道州に再編することだが、その狙いは、財界の戦略にそった国家改造計画だ。その柱を大雑把にまとめれば、@国は、その役割を、国防や外交、金融に集中する。A道州は、その力を、グローバル企業が国際競争にかちぬくための条件整備にそそぐ。B労働者人民の生活・福祉などは、地方自治体の下で、労働者人民の自己責任・自己負担にゆだねる―ということになる。
「地域主権型道州制」という用語が「道州制ビジョン懇談会中間報告」(08年3月 内閣官房)で使われているように、道州制と地域主権改革とは表裏一体ないし同じことの別の表現といえる。
W.グローバル企業の利害
地域主権改革や道州制は、大資本、グローバル化した多国籍企業の利害にほかならない。
アメリカ帝国主義を先頭に世界経済のグローバル化が進行、しかも世界恐慌情勢が深化している。資本は生き残りをかけ、競い合って多国籍企業化していている。そしてその利害に沿って国家の再編が押し進められている。
日本経団連が07年に発表した『希望の国、日本』(御手洗ビジョン)では、「今後、グローバル化は国内にも浸透し、各地は、地域間競争のみならず国際競争にもさらされる。地方は、それぞれ差別化戦略を展開し、グローバルな地平でコンペティション・エッジ(競争の優位性)を確立しなければならない。このような地方分権の担い手となる地方を実現するために、経団連は、2015年を目途に『平成の廃藩置県』として道州制の導入をめざす」としている。
グローバル企業が、地域主権改革・道州制に求めるのは、@企業施設建設(例えば農地の工業用地への移転)やインフラ整備、大学等の企業との連携などの施策を、広域的かつ迅速に行う、Aそうした施策に財源を重点的に投下する、B行政コストの削減などだ。
民主党の側も、「経団連の電子行政や道州制の方向は正しい。経団連と共通のプラットホームをつくり、タスクフォースで一緒に推進していきたい」(原口『日本経団連タイムズ』09年10月29日付)と応じている。
官僚は財政削減から
地域主権改革は、官僚の利害とも一致する。官僚は財政削減を最大の動機として、この流れにのっている。
喧伝される「省益」に基づく「官僚の抵抗」もあるが、政・官・財の利害がからみ合いながら、全体として進められていると見ていいだろう。
X.地域主権改革と対決を
4月27日、「障害者自立支援法」の改正案なるものが、議員立法で、突然国会に提出された(本紙59号に記事)。
周知のとおり「障害者自立支援法」は、自己責任の論理で「障害者」にさまざまな負担を強いる悪法だ。全国各地で違憲訴訟がおこされ、毎年10月には東京・日比谷公園で1万人以上の大集会をつづけ、政権交代の中で、ついに「撤廃」の約束をかちとった。
政府は、その約束を履行するために、内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置した。そのもとに、「障害者」当該とその家族が半数を構成する障がい者制度改革推進会議がおかれ、「障害者自立支援法」後の新制度を含む、「障害者」制度全般の改革にむけた議論が進められていた。
ところが、その障がい者制度改革推進会議には、事前に一言の説明もなく、改悪以
突然の「障害者自立支援法」の「改正案」の動きに、全国から2000人の「障害者」が国会前に(6月8日) |
全国の違憲訴訟原告団は、当該の意見を反映させるとの国の約束を信じて和解に応じた。それを踏みにじる暴挙に、全国の「障害者」が国会前にかけつけた(右写真)。
この「改正案」の動きが、どのような流れで出てきたのか、その時点で現場からは見えなかった。
2つの会議
実は、民主党政府は、昨年12月、「地方分権改革推進計画(案)」(「戦略会議」第1回会合配布資料)で、「義務付け・枠付けの見直し」の項目で、「障害者自立支援法」について言及していた。
つまり、一方で、障がい者制度改革推進会議の流れの中では、《当事者の声を反映した新たな制度》を議論しているが、他方では、戦略会議の流れでは、地域主権改革の中で、「障害者」福祉を切り捨てる方策を推進していたのだ。さらに、「ひも付き補助金の一括交付金化」が実現されれば、障がい者制度改革推進会議で当事者の望む制度をいくら議論しても、それを執行する予算がつかないということになる。
民主の抱える矛盾構造
ここに、民主党の構造と性格という問題がつきだされている。
民主党は、性格の異なる3つの構成部分からなっている〔渡辺治・一橋大名誉教授の分析に依拠〕。ひとつは、民主党執行部を構成する新自由主義路線の部分。ふたつは、執行部内にありながら、利益誘導型政治に反対しない小沢グループ。みっつは、中堅議員グループで、社会保障や雇用、教育などの分野で現場と連携してきた部分。
これに従えば、 障がい者制度改革推進会議は、民主党中堅グループが現場で動き、戦略会議は、党執行部のグループが主導しているということができるだろう。
その上で、国家構想といったものは、執行部を構成する新自由主義路線の部分しか持っていない。その中身は、「政治主導」「地域主権」といった新自由主義的国家構想。現場と連携している中堅議員グループは、個別の政策には通じているが、めざすべき国家となると、党執行部の新自由主義的国家構想にとりこまれるしかない。
この民主党の内部の矛盾は、運動の中で徹底的につきまくるべきだ。
その点で、厚労省の山井政務官が、障がい者制度改革推進会議の総合福祉部会でおこなった二つの発言は象徴的だ。山井は、一方で、「政務官という立場上、議員立法については何も言えない」(6月22日)と開き直り、他方で、「自立支援法の廃止というスケジュールは政府として変更はない」(7月27日)と言わざるをえなかった。依然として、「障害者自立支援法」の撤廃を約束させた大衆運動の力が、現場を規定しているのだ。
労働者人民は、ぎりぎりの状態で苦しみ怒っている。「障害者」を先頭に、あらゆる怒りを糾合し、政府と財界にたたきつけよう。地域主権改革にたいする批判と対決を強めて、運動を前進させよう。
5面
侵略責任いなおり ここまでいうか!
安田派『国際労働運動』8月号
安田派の機関誌『国際労働運動』8月号が、「特集/8月広島―長崎反戦反核闘争へ」と題する3本の論文を掲載した。
敗北主義と無力感
米オバマ政権と日本の民主党政権にたいする敗北主義と無力感に満ちみちている。
◇客観主義の核戦争論
・「米帝・オバマ政権は、本気で核戦争をやるつもりなのだ」「恐るべき大軍核」「ブッシュ政権以上の戦争政権」
・「民主党政権は日本の核武装を推進する政権であり、核戦争への道を進もうとしている」「日米安保体制とは、核戦争のための体制にほかならない」「そのための沖縄基地問題」
客観主義そのものの核武装、核戦争論議だ。
◇反核を国鉄に解消
「新たな国鉄闘争の闘いの発展の中にこそ、・・・オバマも鳩山も打倒し、・・・戦争と核を廃絶できる反戦反核闘争を切り開く展望がある」。
反核闘争を、安田派流の国鉄闘争に解消する。帝国主義の核兵器と核戦争への無力感と反核闘争への絶望をあおりたてたのはそのためだ。
◇ふまえふみにじる
日米安保を論じて、在日米軍基地とのたたかいを論じず、沖縄を論じて沖縄人民の自決・自己決定のたたかいを論じない。究極の「ふまえ、ふみにじり」論だ。
被爆者の主体否定
被爆者が出てこない。沖縄闘争の主体から沖縄人民を追放し、今度は反核闘争の主体から被爆者を追放した。
70年闘争の革命的被爆者解放闘争の地平(被爆者青年同盟を結成)、戦後革命期の「人類初の原爆で壊滅したヒロシマの証しを後世に残す」と決起した峠三吉らのたたかい―これらすべてを無にするのが安田派の反戦・反核闘争論だ。
原爆容認の心情も
論文では、「血債主義」を、「労働者にも帝国主義者同等の戦争責任を負わせようとするもの」と批難している。労働者階級ではなく、個々の労働者の意味に取れる「労働者」とし、しかも「同等の」などと誤魔化しているところがミソだ。
要するに、《労働者(階級)には侵略戦争の責任はない。その労働者が被爆したから原爆は非難されるべきだ》というのだ。 これは、裏を返せば、《原爆投下は「資本家どもが起こした帝国主義戦争の結果なのである」から、資本家だけが原爆の被害を受ければよかった。それなら原爆投下も容認できると》ということだ。
「侵略弾劾はスタの手先」!?
論文は、「血債主義者はしばしば中国スターリン主義の日帝に対する政治運動と一体化し、中国スターリン主義の日本におけるサポーターにもなっている」と言う。
南京大虐殺や重慶空爆、731部隊など、日帝の中国侵略を弾劾すること―このこと自体を非難しているのだ。
安田派は、中国スターリン主義指導部と中国人民との区別さえ行わない。正真正銘の排外主義にほかならない。
しかも安田派は、この弁解として、中国は原発大国になろうとしているから、「中国スターリン主義と一体化した運動が反戦反核闘争であるわけがない」と言う。それならアメリカ人民やロシア人民はもとより、朝鮮人民やイラン人民とも連帯できないことになる。
総じて、安田派の反戦・反核闘争論は、被爆者と反核闘争をふみにじるイデオロギーに満ちている。
6面
原子力の嘘と幻想あばく
原子炉実験所・小林さん講演
7月24日の夜、神戸市勤労会館にて、《「原子力発電」という恐怖》と題する講演会が開催され、60人以上が集まった。主催は「ききたい、つなげたい 8・6ヒロシマを」実行委員会。
ビラや新聞などで講演会を知った市民が多数参加(7月24日 神戸市内) |
反戦を力あるものに
冒頭、集会実行委員会から、この間の活動報告。
この実行委員会の発端は、戦時下といえるような現状に危機感をもつ者たちが集まり、議論をはじめたこと。反戦運動を力あるものにするために、《あらためて反戦・反核の原点、8・6ヒロシマをとらえかえし、そこから学ぶことが重要ではないか》と、昨年春、実行委員会がたちあげられた。
以降、電車内被爆者の米澤鐵志さん講演会を企画、8・6には現地ヒロシマの行動にとり組んだ。今年は、「普天間基地即時閉鎖・辺野古新基地建設阻止」のたたかいに力を注ぎ、沖縄現地へもかけつけた。1月の名護市長選の支援、4・25県民大会、5・16普天間基地包囲行動に参加、その報告会を兵庫で開催。そして今回この反核・反原発の講演会を企画した。
講演は、元京大・原子炉実験所講師の小林圭二さん。小林さんは、70年代始め、日本で最初に原発の安全性を科学的に問う裁判である四国電力伊方原発の裁判に参加。以後、高速増殖炉もんじゅの裁判にも参加、反原発の取り組みを続けている方だ。
地球温暖化対策の嘘
民主党が政権をとって、温室効果ガス25%削減を宣言、それを受けて今年3月、地球温暖化対策基本法案の閣議決定。菅内閣の新成長戦略におけるインフラ輸出政策などで、原発推進が激しくなっている。自民党政権でさえ及び腰だったものを民主党政権は、はるかに積極的にうちだしている。
◇因果関係不明
「温暖化対策」に原発が有効というのは、最大のごまかし、嘘である。温暖化とその原因が炭酸ガスであるというのは、いまだ科学的な確証を得ていない。イギリスの研究所がそれにかんするデータをごまかしていたこともわかり、ますます怪しくなっている。
炭酸ガスの濃度と気温には関係があるというのは明らかだが、どちらが原因でどちらが結果なのかはわかっていない。
◇大量生産・消費こそ
仮に、炭酸ガス濃度がふえたために温暖化したということが正しいとしても、その真の原因はエネルギーの使いすぎ。「先進国」の大量生産、大量消費を競い合う仕組みを不問にしたままで、炭酸ガスの排出量だけ減らそうとしても、温暖化は防止できない。
◇無害な炭酸ガス
炭酸ガスは人間が出す廃棄物としては、もっとも無害なもので、植物の成長に必要なもの。そういう意味では単に廃棄物と言えるものではない。
これにたいして放射性廃棄物は、地球上でもっとも恐ろしい廃棄物だ。炭酸ガスの排出削減と言って原発を推進することは、無害な廃棄物を一番有害な毒性の強いものに置きかえるということ。本末転倒だ。
◇原発が温暖化促進
また、《原発は運転中炭酸ガスを排出しない》と言われているが、大量の廃熱を海に捨て、直接地球を暖めている。さらに原発は、電力需要にあわせて運転を止めることもできず、常にフル出力運転しなければならず、エネルギーの大量消費をますます促進する。結局、根本的なところで地球温暖化を促進するものとなる。
死の灰の危険性
◇五感を超越
人間の五感は危険なものから身を守るためにある。いわば防衛本能のセンサー。放射線はこの人間の五感、センサーをすべて超越する。生命、生命力そのものに直接敵対するのが放射線というものの本質。放射線は生命力が旺盛な人ほど影響を大きく受ける。まさに生命、生命力そのものに敵対するもの。人類と共存はできない。
◇封印できない死の灰
死の灰を、原発推進派は、閉じ込めればいいと言うが、閉じ込められない。死の灰は、原子炉を停止しても発熱しつづける。冷却しつづけなければならない。
◇社会差別と一体
原発や再処理工場、放射性廃棄物などは、国内では過疎の地域、海外では弱い国や地域に押し付けられる。被曝労働は下請けの労働者に押し付けられる。
高速増殖炉
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツは1990年前後には開発から撤退したが、日本だけが継続。高速増殖炉は核兵器製造への最短技術で、日本がこれにこだわるのは核武装の意図があるから。
講演を聞き終えて、最後に実行委員会代表がまとめ、「8・6ヒロシマ平和の夕べ」への賛同と参加を訴えた。(実行委員会 N)
※「翻訳資料 クイック・サービス運転士労組組織化事例(下)」は、次号に掲載します。