四 破防法裁判で何をかちとるか
 
 破防法裁判開始以来三年余をへた七三年九月の二九回公判における意見陳述である。裁判長の交代にあたって、あらためてこの破防法裁判の性格と目的にかんする被告側の見解、すなわち、当裁判がその本質からして、あくまでも政治裁判としてのみまっとうされるべきことを明解な論理をもって強調したものである。
 
 
 一、破防法裁判は政治裁判である
 二、三年間の法廷はわれわれの主張の正しさを証明している
 三、われわれは何をめざしてたたかうか
 
 
 服部裁判長の更迭、門馬裁判長の新任にともなう弁論更新手続にあたって、破壊活動防止法の被告の立場から、われわれは本裁判をとおして何をかちとろうとしているのか、という一点にかんして、簡潔に意見をのべることにする。
 
 一、破防法裁判は政治裁判である
 
 七〇年七月二〇日の第一回公判期日において、われわれは、破壊活動防止法にかかわる本裁判は、政治裁判としての本質を徹頭徹尾まっとうするものでなくてはならない、と主張した。三年たったこんにち、われわれは、いっそう深い確信をもって、当初の主張をひきつづきのべなくてはならない。
 本裁判が政治裁判でなくてはならない根拠は何か。
 第一には、破壊活動防止法という法律そのものの反革命的本質である。
 もともと、破壊活動防止法の本質は、ブルジョア的私有財産制度とそのためのブルジョア独裁の維持を目的として、階級闘争の革命的、内乱的な発展を予防的に鎮圧するために革命党の思想的、組織的な活動を弾圧し、もって革命党と革命勢力の絶滅、階級闘争の体制的な鎮静をはかろうとするところにある。戦後日本の階級闘争との関連でより具体的に規定するならば、それは、(1)戦後民主主義の反動的本質、その反動的な推転の基軸、(2)戦前の治安維持法、占領下の団規令を継承した革命の予防鎮圧法、(3)日帝の世界政策、侵略の政治とその体制を護持するための法制的支柱、(4)在日アジア人、日本の被差別諸階層の人民にたいする抑圧と敵対を組織するための武器、(5)革命党と革命勢力を孤立させるための治安政策上の手段、という五つの特徴をもっている。
 破壊活動防止法は、求釈明の過程をとおして、国家権力の側から明確な解答がひきだされたように、国家の基本秩序を革命的に変革しょうとする政治活動を鎮圧することを政治目的としているのであり、それゆえ、その裁判もまた、破壊活動防止法のこのような政治目的にそうものとして共産主義革命の正否を真正面から問わなくてはならないのである。
 第二には、破壊活動防止法の発動の政治的な事情である。
 
 周知のように、破壊活動防止法は、一九六九年の沖縄奪還闘争の前夜、国家権力の手によって革命党の指導中枢に適用された。当時、日本階級闘争は、七〇年問題として生起した安保政策、沖縄政策の反動的再編の攻撃をめぐって壮大な政治的対決をうみだしつつあった。われわれは、佐藤政府の安保政策、沖縄政策を「日帝のアジア侵略と侵略体制の攻撃」の重大なつよまりとしてとらえ、その粉砕のために全力をあげてたたかうとともに、このたたかいをとおして「沖縄奪還、安保粉砕・日帝打倒」「闘うアジア人民と連帯し、日帝のアジア侵略を内乱へ」の戦略的総路線の重大な突破口をきりひらこうとしていた。国家権力による破壊活動防止法の歴史的な発動は、日本階級闘争のこのような革命的、内乱的な発展にたいする体制の存亡をかけた弾圧の政治であった。
 もとより、国家権力による破壊活動防止法の発動とその系統的な弾圧の攻撃は、そのもっとも根幹的な部分において失敗した。二つの十一月決戦の巨大な爆発、七〇年代中期高揚にむかっての革命闘争と革命党建設の堅実で全面的な発展がすなわちそれである。破防法攻撃の全面的、系統的なつよまり、その特殊な継続としての警察=カクマル連合の形成と反革命カクマルの白色テロの激化、という密集した反革命は、かれらの反動的な意図とはまったく逆に、革命闘争をいっそうつよめ、革命党建設をいっそう促進する現実の条件となっている。
 破壊活動防止法にかかわる本裁判は、その発動の政治的な性格に規定されて、日本帝国主義の侵略と抑圧、搾取と弾圧の政治をめぐる革命と反革命の対決の場とならざるをえないのである。
 第三には、破壊活動防止法とその攻撃にたいするわれわれの態度である。
 
 二〇年前、日本帝国主義国家権力による破防法の成立とその攻撃にたいし日本共産党は全面的に屈服し、合法主義、議会主義の道を決定づけた。二段階戦略と民族主義を基調とした反プロレタリア的総路線の破産を右翼日和見主義的に総括することによって、その反動的な維持をはかろうとしたのである。
 しかし、われわれ革命的共産主義者は、日本共産党の反プロレタリア的な軍事路線の破産とも、また、その当然の帰結としての反プロレタリア的な合法主義、議会主義の路線とも、まったく無縁である。われわれの革命的な総路線は、反帝国主義・反スターリン主義を基本戦略とするプロレタリア革命の道であり、日帝のアジア侵略を内乱に転化し、プロレタリアート人民の革命的暴力をもってプロレタリア独裁をかちとることを戦略的総路線とする勝利の道である。それゆえ、われわれは、同家権力の破防法攻撃にたいして「内乱・内戦――蜂起」の旗を正々堂々とかかげ、その勝利のためにたたかいつづけるであろう。法廷であろうとも、われわれは、革命的共産主義の総路線をくもりなくおしだし、その勝利のためにたたかわなくてはならない。
 破壊活動防止法にかかわる本裁判は、このような被告側の革命的、原則的な態度に規定されて、内乱・内戦――蜂起の不可避性を照らしだす過程とならざるをえないのである。
 
 二、三年間の法廷はわれわれの主張の正しさを証明している
 
 一九七〇年七月以来の三年間の本裁判の経験は、われわれの主張が、まったく理にかなったものであり、まったく現実的なものであることをはっきり証明している。
 本裁判の当初、服部裁判長は、破壊活動防止法にかかわる本裁判が政治裁判でなくてはならないことを十分に理解していなかった。看守問題、録音問題、特別弁護人問題などにしめされた裁判長の誤った訴訟指揮は、それじしんとして被告人の防御権、弁護権にたいする重大な侵害を意味するものであるが、同時にそれは、本裁判の政治裁判としての本質にかんする無理解にむすびついている。しかし、政治的な事件をあたかも「刑事事件」であるかのように事務的に処理していこうとするこんにちの裁判所に支配的な傾向、こうした政治主義的なやり方は、破壊活動防止法をめぐる裁判において、もっともドラスティックな破綻をしめさざるをえないのである。
 事実の問題として、本裁判を「事務処理的訴訟過程」におしとどめようとする努力は、二九回にわたる公判をとおして、ことごとく破産してきた。被告団、弁護団、支える会の一致団結したたたかい、理にかなった追及のまえに、本裁判は、一歩一歩、政治裁判としてのあるべき姿を本質的にかたちづくりはじめている。誤った訴訟指揮、誤った訴訟行為は、法廷の混乱と渋滞をもたらすだけであり、まさに、このような混乱と渋滞をつきやぶり、本裁判に一個の論理をつくりだしてきたものこそ、われわれ被告団、弁護団、支える会のたたかいである。
 求釈明をめぐる破壊活動防止法の法益、立法目的の明確化は、破壊活動防止法の反革命的本質とその法規範的な形式との矛盾を赤裸々にあばきだす論理的な根拠をつくりだした。本裁判は、日共の破防法裁判を革命的にのりこえる政治的根拠をつくりだしつつあるばかりでなく、裁判の論理という次元においても、強力な理論的根拠をつくりだしはじめたのである。
 新しく任につかれた裁判長は、いっさいの予見と予断を排し、本裁判の真の道すじをしっかりと理解し、その理解にもとづいて本裁判にのぞむべきである。
 
 三、われわれは何をめざしてたたかうか
 
 国家権力の破壊活動防止法の攻撃にたいし、われわれは何をめざしてたたかうのか。
 第一の柱は、反帝国主義・反スターリン主義の基本戦略とそれにもとづく七〇年代革命の戦略的総路線の勝利にむかって、革命闘争と革命党建設をおしすすめることである。
 第二の柱は、破壊活動防止法とその全面的、系統的な弾圧にたいし、破防法攻撃に反対する広大な人民の共同戦線をつくりあげることである。その端緒的な萌芽として被告団、弁護団、支える会のたたかいをとらえかえし、そのいっそうの強化と前進をはかることである。
 第三の柱は、破防法裁判闘争に勝利することである。すなわち、われわれは、破壊活動防止法にかかわる裁判をとおしてつぎのたたかいに勝利しなくてはならない。
 第一には、国家権力の破壊活動防止法の攻撃、国家権力の治安体系の中枢をなす破防法攻撃との全面的な対決をとおして、われわれの側の革命の論理を徹底的にみがきあげることである。
 第二には、破壊活動防止法の反革命的な本質を政治的、法律的にあばきだすことである。
 第三には、破壊活動防止法の法規範上の矛盾を徹底的につきだすことである。
 第四には、破壊活動防止法の攻撃の政治的な特徴、その政治的な根拠をあますところなく照らしだすことである。とりわけ、日本帝国主義のアジア侵略、安保・沖縄政策にたいする革命的態度をいっそう明確にすることである。
 かくして、われわれは、日本帝国主義とその国家権力の破壊活動防止法の攻撃が、政治的にも、法律的にも、道義的にも、ひとかけらの道理をもっていないことを全人民のまえにあきらかにし、革命の決意と態勢をいっそう強固にうちかためるであろう。
    (一九七三年九月一〇日、四・二八破防法裁判第二九回公判での意見陳述)
         (『破防法研究』第二二号一九七五年四月 に掲載)