七 浜野哲夫統一候補の決定に際して
 
 六五年二月七日の北爆開始によるアメリカ帝国主義のベトナム侵略戦争のエスカレーションと日本帝国主義・佐藤内閣による南朝鮮・韓国への新植民地主義的侵略策動の本格的激化=日韓条約調印攻撃の切迫化、ならびに米原潜寄港問題の焦点化という内外情勢の急展開のもとで、わが革共同は日本における革命的共産主義運動のあらたな飛躍をかけて六月参院選挙への積極的参加にふみきった。本稿は、候補者決定に際して全革命的左翼にむけて発せられたアピールである。『前進』掲載時は革共同・全国委員会政治局の署名入り。
 
 
    (一)
 
 社会主義労働者戦線の旗のもとに結集した革命的共産主義者同盟全国委員会、長崎造船社会主義研究会、共産主義者同盟の三団体は、きたる参院選挙にわが同盟関西地方委員会副議長・同志浜野哲夫を革命的左翼の統一候補として立て、総力あげて参院選挙闘争をたたかうことを決定した。
 わが同盟は、マルクス主義青年労働者同盟、マルクス主義学生同盟(中核派)とともに、社会主義労働者戦線の責任ある推進部隊として、いまこそ、浜野哲夫統一候補を先頭に立て参院選挙闘争の勝利めざして大進撃を開始せねばならない。選挙闘争のための準備態勢は極度に遅れている。自民党から共産党にいたる既成の候補者たちがすでに終盤戦に入ったと呼号しているというのに、われわれはいまから序盤戦をはじめようというのだ。したがって、社会主義労働者戦線の旗のもとに結集した革命的左翼は、打って一丸となって当面する春闘、日韓闘争をたたかいぬき、四・一七、原潜、春闘、日韓のもっとも戦闘的部隊としてその革命的前衛として、参院選挙にむけて全社会のまえに登場せねばならない。
 革命的共産主義者同盟全国委員会は、日本革命運動の階級的前進のためにたたかっているすべての団体、すべての人びとが社会主義労働者戦線の旗のもとに結集し、当面する春闘・日韓・参院のたたかいの勝利をめざしてともにたたかうことを訴えるとともに、参院選挙闘争にたいするわが同盟の基本的態度についてあらためていくつか強調しておきたい。
 
    (二)
 
 第一点は、社会主義労働者戦線の結成とそれを共同母体とする参院選挙闘争の展開の意義である。
 前回の参院選挙において、わが同盟は黒田寛一議長(当時)を候補として立て、社共にかわるたたかう労働者党の創成の必要を鋭く呼びかけるとともに、議会主義的腐敗と決定的に決別した選挙闘争の展開という未知の領域を追求した。だが、われわれは、自分たちの弱さから、この参院選挙闘争を支配階級の反動攻撃と社共の腐敗に抗してたたかうすべての革命的左翼の共同の闘争にまで発展させることができなかった。むしろ、われわれは選挙闘争のなかで長崎造船社会主義研究会との革命的・戦闘的交通を破壊する傾向すら許してしまった。三全総以後のわが同盟の内部闘争は、わが同盟を階級闘争の基本的動向に則して正しく発展させ、わが同盟の内部に残存する極左空論主義とセクト主義を追放し克服するための苦闘であり、再武装の過程であった。
 今回の参院選挙に際し、わが同盟は、わが同盟関西組織の創立以来の指導的メンバーであり、関西労働運動の献身的な組織者である同志浜野哲夫を候補として立て、ふたたび参院選挙闘争をたたかおうとしている。だが、われわれはいま、三年前とは決定的に飛躍した段階に立っている。こんにち、わが同盟は、三年前とは比較にならないほど広範な階級的基盤のうえに前進している。しかしながらもっと重要なことは、革命的左翼のあいだの統一行動の発展と相互討論の推進、社会主義労働者戦線の結成という革命的共産主義運動の決定的に新しい段階のなかで、そしてこの段階をよりいっそうおしすすめるものとして、われわれがいま参院選挙闘争をむかえようとしている点である。
 革命的左翼の続一行動の前進と社会主義労働者戦線の結成は、安保敗北以後、既成左翼の内外で日本左翼戦線の階級的転換のために苦闘してきた多くの人びとに、はやくも新鮮な感動を呼びさましている。旧い世代に属している人びとのあいだにも、一方における中ソ対立の発展と四・一七をめぐる日本共産党の動揺、他方における革命的左翼の統一行動の前進と原潜・日韓闘争の中核部隊としての登場という新しい階級情勢のなかで、<革命的な第三潮流>にたいする関心と好意が急速に拡がっている。
 われわれは、四・一七、原潜・日韓、春闘のなかで労働者階級の内部に成長している若い戦闘的力に大胆に依拠し、革命的左翼の統一行動を誠実にまもり抜くとともに、「トロ=分裂」という神話を事実をもって打破していく第一歩として参院選挙闘争をたたかわねばならない。
 
    (三)
 
 第二点は選挙闘争にかんするわが同盟の基本的立場である。
 周知のように、わが同盟は、フルシチョフ=トリアッチの平和移行論と社会党の平和革命論にたいし、マルクス主義革命論の反階級的修正として絶対に反対する。日本共産党の「支配階級の出方による」論は、火炎びん闘争と議会主義のジグザグを必然化する反労働者的現象論である。このような反革命的な「革命」論にたいし、わが同盟は、ブルジョア支配機構の粉砕=労働者評議会を基礎とするプロレタリア独裁の実現というマルクス主義革命論の立場を支持している。
 だが、このことは、わが同盟がいつでもどこでも議会と選挙にたいする直接的否定を意味するものなのでないことは明らかである。こんにちでも、革命的左翼の一部には既成左翼の議会主義的腐敗を慨嘆し、選挙の雑音からできるだけ遠ざかることをもって議会主義から決別したかのように考える人びとがいる。われわれは、このような観念論的な小児病を完全に駆逐せねばならない。なぜならば、われわれが実現せんとしているものは、国家と議会の現実的打倒であって、断じて精神における否定ではないからである。国家と議会にかんする精神的否定は、ただ国家と議会を上部構造とする資本制的経済社会構成の危機を革命に転化(国家と議会の打倒)するための精神的媒介として、大衆の意識として物質化することによってのみ現実の力となる。
 したがって、われわれは、国家を打倒し議会を粉砕する現実的条件をつくりだす立場から、議会と選挙にかんする大衆の意識と行動の様式について重大な関心をはらわねばならない。現代日本の議会と選挙にかんする政治構造、とりわけ大衆の内部に存在する巨大な議会主義的幻想の存立条件にかんする全面的検討はここではその余裕がないが、一言でいって大衆の議会主義的幻想と帝国主義的存立条件の相応関係が不均衡となりはじめていることである。現代日本の政治過程は、議会制の位置を従来にもまして低下させる方向に傾いている。だが、そうであればあるほど、支配階級は選挙における勝利をより決定的な政治的藩塀とせねばならないジレンマにある。
 われわれは、労働者人民大衆の内部に存在する議会主義的幻想にたいして、直角に衝突したり平行に同化することなく、革命的候補への支持をとおして議会主義的幻想の矛盾を発展させていくことが必要である。革命的左翼の議会=選挙への参加が矛盾であるように、大衆の革命的候補への投票も矛盾である。このように、二つの矛盾が革命にむかって二つの方向から複合的に発展する過程こそ革命的議会主義である。だからこそ、革命的候補への一票はその内部に反乱の鋭い契機が存在しており、その増大は支配階級と反革命的中間主義者の恐怖の的となるのだ。
 
    (四)
 
 第三点は、選挙闘争における政治思想宣伝の意義についてである。わが同盟は、すでに発表したいくつかの文書においてきたる参院選挙で、(1)戦闘的労働運動の防衛と前進、(2)革命的理念の復興と発展、(3)革命的労働者党の創成、(4)革命的候補への支持、の四つの基本課題をかかげてたたかうことを訴えてきた。
 このようなわが同盟の政策にたいして一部の諸君から、選挙はあくまで大衆闘争の課題を中心とすべきであり、思想的課題は出すべきではないという主旨の批判がよせられている。もちろん、われわれは、多くの場合、日本帝国主義の侵略と抑圧、搾取と収奪の政策にたいする全面的暴露、そして労働者階級の大衆的闘争課題の実現のためのたたかいから出発するであろう。だが、革命的左翼が選挙闘争にかんする宣伝・扇動をこのような大衆的闘争課題にのみ限定することは、自己の思想的貧困をあざむき、大衆の議会主義に迎合し、革命的左翼の敗北を約束するものである。
 自民党などの帝国主義勢力は、イデオロギー攻撃をふくめて全面的な政治攻撃をかけてくるであろう。社会党、共産党などの既成左翼指導部は、旧態依然たる主張をくりかえすことによって、かえって若い戦闘的労働者のあいだに、既成左翼を決定的にのりこえる道は何かという疑問を広範につくりだすであろう。われわれは、自民党、民社党、公明党などの御用党にたいして容赦なき階級的攻撃を加えるとともに、社会党、共産党が現実の階級闘争においてはたしている裏切り的役割を具体的にあばきだし、<第三の革命的潮流>の登場の必然性を徹底的に明らかにしていかねばならない。
 日本共産党の一連の政策的誤謬と裏切りを偶然的事件の連続としてでなく、まさに偶然をとおして実現する必然の法則性として把握し、暴露し、克服していく必要がある。社共にかわる<第三の革命的潮流>の登場の必然性は、じつに反スターリン主義のたたかいの必然性と結合しているのだ。世界的激動と日本帝国主義の危機を日本革命の勝利の条件に転化するためには、まずもって、労働者階級の前衛部分を社会民主主義とスターリン主義の規範から解放し、マルクス主義の革命的理念にもとづく<たたかう労働者党>のもとに結集していかねばならない。
 わが同盟は、革命的左翼の統一行動を断固として発展させ前進させるためにたたかうとともに、革命的左翼諸潮流に内在するスターリン主義的のこりかすの克服のためになお困難なたたかいの遂行を決意せねばならない。
 
    (五)
 
 最後に、きたる参院選挙闘争の重要性にかんしてあらためて指摘しておきたい。
 本年六月の参院選挙は、佐藤内閣成立後はじめての選挙であり、原潜寄港・日韓基本条約の強行、健保・失保の改悪、消費者物価の値上げなど日本帝国主義の体制的危機をかけた攻撃のなかでたたかわれる最初の選挙である。社会主義労働者戦線の旗のもとに結集したすべての革命的左翼は、日本帝国主義の侵略と抑圧、搾取と収奪の攻撃にたいする階級的反撃の一環として参院選挙闘争を徹底的にたたかいぬき、革命的左翼を<社共にかわる第三の革命的潮流>として明確に全社会のまえに登場させねばならない。参院選挙闘争を勝利的にたたかいうるかどうか――まさにこの一点に日本革命的共産主義運動の命運は大きくかかっている。
 全力をあげてたたかいぬこう!
     (『前進』二二三号 一九六五年三月一日に掲載)