五 革命的共産主義運動の現段階と同盟の任務
 
 六四年八・二大阪反戦集会と四全総の圧倒的成功を足場に、あらたな前進を開始した革共同と革命的共産主義運動の課題、任務について、あらためて基本的問題点を明確にした論文である。『前進』発表時(六四年九月一四日付)は革共同・全国委員会政治局の署名入り。
 
 
 帝国主義諸国における戦後革命の敗北と世界革命のスターリン主義的変質を前提として第二次大戦後に成立した現代世界の帝国主義とスターリン主義による分割支配、その結果としてのウォール街を専制君主とする帝国主義世界とクレムリンを盟主とするスターリン主義世界という二つの擬制的世界の形成は、帝国主義諸国間の争闘の激化とスターリン主義諸国間の対立の深化、その複合的発展を基礎とした解体と再編のための死闘の時代にとってかわろうとしている。一方におけるアメリカ帝国主義と西欧帝国主義(EEC)の対立の激化、フランス帝国主義と西独帝国主義の域内抗争の顕在化、他方におけるソ連スターリン主義と中国スターリン主義の国家的対立の深化、東欧スターリン主義(「コメコン」=セフ)の分解と対立の進行、そして部分核停条約をめぐる両世界の中心国と対抗国の同盟関係と対立関係の複合的形成は、ヤルタ――ポツダム協定を軸として第二次大戦後に成立した現代世界の分割支配体系がいま、分解と再編の巨大な構造的変動過程に直面していることを示している。
 現代世界の分割支配と帝国主義本国の戦後危機の間隙をぬって次つぎと政治的独立を実現した旧植民地諸国は、帝国主義諸国とスターリン主義諸国のあらたな複合的争闘のまえに、ふたたび勢力圏争奪の舞台となろうとしている。コンゴ・ベトナム・南朝鮮などにおける危機の激化は、このような勢力圏争奪の死闘とそれにたいする人民大衆の抵抗の増大を意味している。
 いまや、帝国主義の延命と世界革命のスターリン主義的変質を前提とする現代世界の分割支配と階級闘争の平和的発展は、分解と再編のための複合的な争闘と階級闘争の死活をかけた激動の過程に転化しはじめた。アメリカにおける黒人解放運動の激化とオートメ大量失業にたいする反対闘争の萌芽、西欧におけるインフレの深刻化と労働運動のあらたな興隆、スターリン主義諸国における反官僚闘争の拡大、インド・インドネシア・中南米における経済危機の深刻化と政治的動揺の激化――こうした一連の事態は、階級闘争の国際的激動の過渡への客観的条件がしだいに成熟しつつあることを明白に示している。戦後、帝国主義の擬制的繁栄と植民地支配の政治的後退を背景として労働運動への支配を保持してきた社会民主主義とスターリン主義は、現代世界の構造的変動の激化と階級闘争の国際的激動の過渡の成熟のなかで、かつてない巨大な危機と動揺を経験しようとしている。
 日本帝国主義と日本階級闘争は疑いもなく、このような現代世界の構造的変動と階級闘争の世界的激動の過渡期の矛盾のもっとも先鋭な表現である。
 超保護主義的な管理為替制度のもとで飛躍的な<高度成長>を謳歌してきた日本帝国主義は、貿易・為替自由化への不可避的移行期をアメリカ帝国主義および西欧帝国主義のブロック化の争闘の開始のなかでむかえることによって、国際独占への参加の弱さと敗戦による植民地の喪失=勢力団の不安定性、国際収支の構造的悪化、過当競争・設備過剰と自己資本の決定的低さ、労賃の高騰と時間=労働管理の合理化の立ち遅れ、重点集中投資による社会資本部門のネック化、そして帝国主義政治支配の脆弱性という諸矛盾の集約的な先鋭化に遭遇しようとしている。
 したがって、日本帝国主義は、帝国主義諸国とスターリン主義諸国の複合的争闘をのりきるためには、(1)日韓会談=南朝鮮の植民地支配を突破口とする日帝勢力圏の確立、(2)賃金抑制と労働=時間管理を軸とする第三次合理化、(3)軍事力強化、行政権の絶対化、労働権の全面的制限を三本の柱とする帝国主義政治支配の強権的確立という三つの攻撃を一挙的に達成せねばならない。そして、このような日本帝国主義の基本的動向は、日本労働運動の職場的基礎をゆるがし、民同的指導部の右傾化を促進せしめるとともに、日本労働者階級の内部に新しい抵抗の要因を蓄積させずにはおかない。
 一方における現代世界の構造的変動の激化と日本帝国主義の国際的国内的矛盾の先鋭化、他方における中ソ論争の非和解的深化と日本社会民主主義およびスターリン主義の危機と分解の深刻化、そして労働者階級の戦闘的抵抗闘争のあらたな増大と日本革命的共産主義運動の前進――まさに、現代世界の激動は、日本帝国主義と日本階級闘争のなかに、もっとも先鋭な矛盾の集中をみいだしている。わが同盟を前衛とする日本革命的共産主義運動は、世界的激動と日本帝国主義の危機の先鋭化、そして日本階級闘争の激動への序曲のなかでいま、(1)革命的左翼の統一行動と革命的党派闘争の進展、(2)スターリン主義および社会民主主義の相互対立と内部分解の深化という二つの戦線の交差し転移する階級情勢の政治的過渡期をむかえている。
 このような情勢の到来は、けっして特殊日本的な例外ではない。現代世界の激動が階級関係にもたらしつつある巨大な流動化の、日本革命的共産主義運動の階級的前進を媒介とした典型的表現以外のなにものでもない。
 したがってこのような現代世界の解体と再編のための闘争の開始と階級闘争の国際的激動への過渡を世界プロレタリア革命の舞台に転化するためには、国際プロレタリアートの革命的前衛は、まずもって(1)スターリン主義へのいっさいの幻想を放棄し、明確に<反帝国主義・反スターリン主義>の綱領的立場の深化のためにたたかうこと、(2)現代世界の構造的変動と危機の深化が国際プロレタリアートの政治的流動化と革命的潮流の創成のための巨大な条件をもたらしていることをはっきりと把えること、(3)反レーニン主義的なサークル的・地方的分散性と非組織的手工業性を克服し前衛党創成のたたかいを今日的に開始すること、(4)労働組合運動にたいする極左的召還主義と外在的命令主義を一掃し、改良主義的・スターリン主義的労働組合の内部における活動の検討と強化のために全力をあげてたたかうことが必要である。
 <反帝国主義・反スターリン主義>を綱領的立場とする革命的左翼の党的結集と労働組合における戦闘的・組織的活動の全面的強化――まさにこの二つの課題を一挙的に実現することにこんにちの国際的階級闘争の危機を突破する実践的環が存在している。日本革命的共産主義運動は、世界的激動と日本階級闘争の先鋭化のなかで、このような世界史的要求に理論的にも実践的にも応えるためにあらたな前進と飛躍を準備すべき秋である。
 大阪における八・二集会の戦闘的展開とわが同盟の圧倒的勝利はわが同盟が山本派との分裂という試練に勝利的にたえぬいて社会党・共産党にかわる<第三の革命的潮流>の<責任ある多数派>として名実ともに力強く成長してきたことを事実をもって示すとともに、わが同盟を前衛とする日本革命的共産主義運動が新しい歴史的段階をむかえつつあることを告げている。じつに八・二集会は、四全総以後の同盟の前進を全党派のまえで公然と点検し、つぎの飛躍を示威した一大観兵式であった。
 ところで、八・二集会の基本的意義が、(l)日本における革命的左翼の全潮流が<日韓・改憲・反戦>という政治課題のもとに統一行動を実現したこと、(2)わが同盟が動員でも政策でも革命的左翼の<責任ある多数派>としての実力と役割を示したこと、(3)以上を前提として革命的左翼諸潮流間の統一行動と革命的党派闘争のための実践的展望がきりひらかれたことの三点にあることはいうまでもない。だが、われわれは、以上の三点の確認にふまえながら、さらにつぎの二点についてとくに強調しておく必要がある。
 第一には、わが同盟の綱領的立場の決定的優位性と、現代世界の構造的変動および日本階級闘争の基本的動向にかんする評価および戦術の基本的正当性についてである。昨年末から今年にかけてのわが同盟の宣伝・扇動の基本的重点は、(1)中ソ論争を契機とする現代世界の構造的変動の激化と日本階級闘争への影響、スターリン主義とくに中国共産党・日共の「世界戦略」の反プロレタリア性の暴露、(2)日本帝国主義の<抑圧民族>としての再登場のもつ質的重要性の指摘と日韓闘争、とくに南朝鮮人民のたたかいにたいする排外主義的評価の批判、(3)日本帝国主義の攻撃および日本階級闘争の基本的動向の明確化、日本労働者階級内部における新しい<反逆の契機>の増大と<戦闘的労働運動の防衛>と前進のためのたたかいの意義の指摘、(4)米英ソ部分核停条約の欺瞞性の暴露、中仏核武装と日本帝国主義の核武装・帝国主義軍隊の創設に反対する反戦闘争の意義の強調、にあった。
 われわれはこれらのたたかいの蓄積のうえに、<経済主義反対><政治闘争の終末><労働運動主義反対>などの形態で革命的左翼の内外に残存する労働者階級の戦闘性にたいする<不信の理論>を徹底的に粉砕し、原潜闘争と年末闘争→来春闘の大衆的爆発のために前進せねばならない。
 第二には、いわゆる統一行動と革命的党派闘争の問題であるが、これを革命的左翼諸潮流間のみの問題として矮小化することができないということである。もちろんすでに諸論文で指摘されているように、八・二集会が実践的にきりひらいた革命的左翼諸潮流の統一行動と革命的党派闘争の展望は、日本革命的共産主義運動の一時期を画すものであり、報告討論会などをとおして各地でその成果は定着しはじめている。だが、同時にわれわれは、日本共産党と決別し構改派にも所属していない少なからぬ数の労組活動家や社青同の戦闘的潮流の圧倒的部分――しかもそれらは日に日に増えている――がいぜんとして八・二集会には参加していないという事実を明確に直視せねばならない。
 われわれは、八・二集会を基礎として革命的左翼の統一行動と革命的党派闘争を断固として展開しながら、さらに一歩すすんで社会民主主義運動およびスターリン主義運動の分解過程への革命的介入を徹底的に強化し、社青同内の戦闘的部分や日共内外の良心的労組活動家を革命的左翼の統一行動と革命的党派闘争の渦のなかに力強く包含していかねばならない。中ソ対立の激化を背景とする日共の分裂の深化と社会党の分解の進展は、労働者階級の戦闘的翼のなかに巨大な政治的流動化の過程をもたらしている。われわれは、志賀・神山らのソ連派共産党設立の策動と社会党佐々木派への中国接近のもつ相互補完的な流れの反動的本質を徹底的に暴露するとともに、社会民主主義運動およびスターリン主義運動の分解過程を革命的共産主義運動の創成過程に転化するためにいっそうの努力が必要である。
 だが、一般的にいって、このような局面のたたかいは、八・二集会のような集会への参加という方法だけではきわめて限定されたものとなるであろう。したがって、われわれは、原潜闘争および来春闘にむかっての過程のなかで各種の産別活動家会議、春闘総決起集会の準備と開催をとおして二つの戦線上の統一行動と革命的党派闘争を展開するとともに、ありとあらゆる創意的方法のもとに戦線を拡大していかねばならない。
 しかもその際とくに留意すべきことは、全国的闘争であれ産別的闘争であれ、いっさいの統一行動と革命的党派闘争は、闘争課題の実現のためのたたかいをつねに前提とすべきだということである。組合、自治会を基礎とした大衆行動の組織化と指導の過程こそ、われわれにとって、当画する最大の統一行動と革命的党派闘争の場であり過程である。マホメットではないが、山を呼ぶとは山に向かって歩いて行くことなのだ。
 原潜闘争および年末闘争→春闘にむかう総評・単産のいっさいの集会と行動をわれわれの統一行動と革命的党派闘争の舞台に転化するために、空論的・自己満足的なセクト主義と追従的・無原則的なベッタリ主義のいっさいの危険をたたきだして前進しよう!
 現代世界の構造的変動と階級闘争の国際的激動への過程は、日本における階級闘争の動向にまず最初の回答をみいだすであろう。すべては、わが同盟と日本革命的共産主義運動の強化と前進にかかっている。
       (「前進』二〇〇号一九六四年九月一四日に掲載)