三里塚闘争勝利のために

掛川徹


3・29闘争は決定的な勝利の地平を勝ち取った。清水・安田中央派の姑息な関実排除の策動を完全粉砕し、動員の基本的増勢をかちとったのみならず、知花氏が沖縄闘争と三里塚との歴史的合流を宣言したのである。彼の発言がもつ意味はきわめて大きい。
再建協議会の立場から、この事態をいかに受け止めるべきか、以下提起する。

(1)三里塚と沖縄の合流
この間、反対同盟は、農地法を用いた市東さんの土地取り上げという前代未聞の攻撃を、日帝の農業切り捨て政策の最先端の攻撃としてとらえ、日本農民の総反乱を組織する立場でこれを迎え撃ってきた。彼らは農民総体を獲得しようとしている。また、激しい農民切捨ての状況が進むなかで、それが可能な趨勢にある。反対同盟のたたかいと提起に応えきらねばならない。
知花発言の背景には、明らかに農業問題が大きく存在する。現在進められている日豪FTA協定で、農業重要品目の無関税化に反対を掲げ、自治体をあげて運動しているのが北海道、沖縄などの農業県なのである。ホームページを開けば、彼らが食と農の問題について独自にパンフレットを作成し、地域の存立をかけて農業防衛のために取り組んでいることがわかる。
かつて読谷村では、「行政の第1の任務は村民の生命・財産を守ることである」という山内村長の下、読谷飛行場のパラシュート降下訓練反対闘争に村ぐるみの実力闘争をたたかったが、このエピソードを思い起こさせるような事態が、農業問題をテーマに進行していると見るべきである。これが知花発言の背景にある。

(2)農業・農民問題は、土地問題、環境問題(「持続可能性」)、食料問題、食品の安全問題、都市と農村(地方)、エネルギー問題、民族問題など、帝国主義と人類の存立に関わる広範な内容をはらむ。これを個別の努力でまとめきることは不可能である。革共同再建協議会の組織的英知を傾注して、このテーマに取り組むことを呼びかける。
未整理だが、その内容を箇条書きしてみる。
@帝国主義と農業・農民問題。レーニン「帝国主義論」とロシア革命における農民問題の取り組み。過渡期政策における農業問題の扱いとその解決の道筋。
・レーニン「帝国主義論」
・渡辺寛「レーニンの農業理論」
・アレック・ノーブ「ソ連経済史」
・プレオブラジェンスキー「新しい経済―ソビエト経済に関する理論的分析の試み」
※資本主義が帝国主義段階へと蓄積様式を高度化させるなかで、資本主義は農業を自らの再生産構造に組み入れることができないまま、農民を農民として金融資本が収奪する構造を内在化する。農民は農業資本と農業労働者へと階級分岐することなく、農民のまま金融資本の収奪、支配にたいして立ち上がらざるをえない。したがってプロレタリア革命は、農民を同盟軍として獲得し、金融資本の支配を転覆することを通じて、労働者の解放と同時に農民の解放をもかちとり、農工対立・都市と農村の対立を止揚する世界史的課題を自らに課す。この点を理論的にはっきりさせたのがレーニン「帝国主義論」である。
ロシア革命は近代的大工業のもとで組織されたプロレタリアートによるプロレタリア革命であると同時に、1億農民が自発的に決起した農民革命でもあった。ロシア革命によって地主の大土地所有は解体され、膨大な自作農が生み出されたが、この農民たちが旧地主の復興から自らの土地所有を守るために赤軍に参加することで、帝国主義の後押しを受けた白軍を撃退することが可能となった。
革命ロシアの経済政策は農業問題を重要な環とする国内建設をめぐって、戦時共産主義→ネップ→工業化と試行錯誤を繰り返す。農村でソビエト政府の権威や影響力は当初はきわめて乏しく、赤軍を通じた労働者と農民の政治的同盟として労農政府はかろうじて存立していた。だが、ネップから工業化論争を通じて、経済政策の領域における労農同盟の基本的な方向性はほぼ出し尽くされたといえる。工業化論争のなかで反対派の経済綱領として提出されたプレオブラジェンスキーの論文はその内容をよく示している。
A現代帝国主義と農業・農民問題
・現代帝国主義の農業・農民問題は、まずもって多国籍農業資本による農民収奪の問題としてある。これは米帝傘下のアグリビジネスの問題としてまずは対象化される。
95年を画期としてWTOが進めてきた世界的な農業自由化も、アグリビジネスによる収奪を主要な動機としている。
・民族問題の主要な経済的内容は農業問題、土地問題である。
中国革命しかり、ベトナム戦争しかりである。フィリピン革命の経済的要求も今もって土地問題が主要なテーマだと思われる。
・労働者と農民の人口比でみると、例えば日本をとりあげれば工業人口が大半を占めているものの、国土の過半は今もって農業県である。しかも、朝鮮・中国まで視野を広げてアジア革命という規模で考えれば、農工の人口比はロシア革命当時とほぼ変わらなくなる。そういう見地から見れば、ロシア革命当時の労農同盟をめぐる苦闘は今日のわれわれにとってもきわめて喫緊の課題を提起しているといえる。
・イラク戦争の経済的内実も、イラクの組織労働者が石油と公務員以外にほとんど存在しない点を考えると、残る過半は農民あるいは農村地域の零細事業主であり、そういう観点でイラク戦争の階級的内容を再検討する必要がある。イラク農民の立場から石油を論じるということである(基本的な階級構造は沖縄に近いのではないか?)。
B日本帝国主義と農業・農民問題
・日本帝国主義は、アグリビジネスによる世界的な農業支配という構図の下、独自の日本的な農民収奪の機構をつくりあげてきた。
その全容を提起する力量はないが、日本の場合は農業に特化したアメリカ型のアグリビジネスは存在せず、ゼネコンを通じた農民収奪という問題が大きい。その他にも農業機械、化学産業、食品・流通などを通じて重層的な農民収奪機構が形成されてきた。
これが86年前川レポートを機に、基本的に工業製品輸出のために農業は切捨て、食料は輸入で賄う方向に舵を切っている。この農業切捨て政策は20年間にわたって日本の農村に激震をもたらし続けているが、現在この方向性をもっとも鋭く示しているのが日豪FTA交渉である。
・日本の農業政策は農民収奪の段階から農民切り捨てへと完全に軸が移っており、この点で他の帝国主義と位相が若干異なる。
これに対応して、土地所有制度をめぐっても大きな変動がある。農民の耕作権保護に重点をおいた農地法の解体がその最たるものである。その全容を解明することは喫緊の課題となっている。
Cブロック化と食糧問題
ユーロ・ブロックとドル・ブロックの対立構造のなかで、食糧問題はブロック間対立の主要な争点として浮上しつつある。EU加盟国は次々と「GMO(遺伝子組み換え食品)フリーゾーン」を宣言して米帝の穀物を締め出し、BSEを契機に米国産牛肉を拒否している。その主要な起動力は独帝であり、この対立はアフリカに波及して、2002年から2003年にかけて、飢餓人口が拡大するアフリカ諸国が米帝の食糧援助を相次いで拒否する前代未聞の事件に発展した。EUは公式には認めていないが、遺伝子組み換え作物を栽培すればEUが輸入をストップするためにアフリカ諸国は食料援助を拒否している、というのが米帝の主張である。米帝は遺伝子組み換え作物推進のためにアフリカに支援金をちらつかせ、これに対抗して独帝が遺伝子組み換え規制強化のために230万ドルを寄付する、といった具合である(天笠啓介「世界食料戦争」)。
食糧問題がこれほど激しい争闘戦の戦場となっているさなかに、日帝は食糧自給を断念するというとてつもない決断を下している。ある意味で、食糧補給も含めて日帝は日米軍事同盟にかけきっていることの一つの表れではないか。これは日米安保同盟論を検討するうえでも重要な視点だと思う。日豪FTAは米軍再編とワンセットだという見方もできるのである。
D農業・農民問題および労農同盟という基本的な枠組みを打ち立てたうえで、食料問題、環境問題、都市と農村の対立などの重層的なテーマを、労働者階級の農業政策という枠組みにおいて掘り下げていく必要がある。これが民族差別・抑圧とたたかう場合の経済的な実体をなす。

(3)実践的には、以上のような観点から、自治労・沖縄を先頭とする農業問題への沖縄全体の取り組みを念頭に置き、三里塚闘争と沖縄闘争の歴史的合流をかちとっていくことである。農民と組織労働者の力でもって三里塚闘争、沖縄闘争に勝利し、日本革命の水路を切り開こうではないか。

追記)知花氏の米軍再編問題にたいする危機感は、日米安保同盟論の再構築を喫緊の課題としてわれわれに課していると思う。ドル・ブロックとユーロ・ブロックの対立構造のなかで日米安保同盟論を位置づけなおすことは切迫したテーマである。帝国主義論、ブロック化と世界戦争、農業・農民問題、という重層的な綱領的諸問題に肉薄しながら、三里塚・沖縄の戦略的位置づけをつかみなおし、革命戦略を練り上げていくことだと思う。
(09年04月)


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